Human: Fall Flat|ふにゃふにゃ物理演算で友達と爆笑できる協力パズル
「何これ、動かせない!」と叫んだのは、プレイ開始から5分後のことだった。
箱をつかもうとしたら、キャラクターが前のめりに倒れた。壁をよじ登ろうとしたら、指がツルツル滑って落下した。梯子を上ろうとしたら、なぜか両腕がブラブラして全く前に進めなかった。そして隣で見ていた友人が、腹を抱えて笑っていた。
Human: Fall Flatは、そういうゲームだ。全身がふにゃふにゃの人間「ボブ」を操り、物理演算に翻弄されながら謎解きパズルをクリアしていくアクションパズルゲーム。操作がうまくいかないこと自体がゲームの面白さになっていて、失敗するたびに笑いが起きる。
リトアニアのインディースタジオ「No Brakes Games」が2016年にリリースしたこのゲームは、2025年12月時点で全世界累計販売本数5,800万本を超えた。スマッシュヒットどころか、インディーゲーム史上でも指折りの大ヒット作だ。Steamでのレビューは16万件以上で、そのうち94%が好評という圧倒的な数字が並んでいる。
YouTubeやTwitchでの実況プレイ動画は総再生数6億回を超えており、日本でも配信者に人気のゲームとして広く知られている。「最笑」という造語があちこちのレビューに登場するくらい、笑えるゲームとして定着している。
ただ、このゲームには「一人だとキツい」という側面もある。ソロでも楽しめるが、マルチプレイとの差は歴然だ。そのあたりも正直に書いていく。
こんな人に読んでほしい
Human: Fall Flatが特に刺さるのは、こういうプレイヤーだ。
- 友達とオンラインで一緒に遊べる協力ゲームを探している人
- 本格的なゲームより「笑える体験」を求めている人
- 物理演算を使ったトリッキーな謎解きが好きな人
- ゲームが得意じゃない友達とも一緒に楽しめるゲームを探している人
- Steamワークショップのカスタムコンテンツで長く遊び続けたい人
- 最大8人まで同時接続できるワイワイゲームを探している人
- パーティーゲームとして使えるが、ちゃんと謎解き要素もあるゲームが欲しい人
逆に、一人でじっくり攻略したいタイプや、ストーリー性を重視する人には向いていないかもしれない。このゲームにはほぼストーリーがなく、謎解きとコミュニケーションが全てだ。「とにかく笑いたい、友達と騒ぎたい」というニーズには完璧に答えてくれるが、重厚なゲーム体験を求めるプレイヤーには物足りなく感じることもある。
操作の習得にも少し時間がかかる。最初の30分は「何もできない」という感覚に苦しむかもしれないが、それ自体が笑いのネタになるので諦めずに続けてほしい。操作に慣れてくると、謎解きの難易度やルート探索の楽しさが本格的に見えてくる。
ゴルフゲームで笑いながら遊ぶのが好きな人にも合うかもしれない。物理演算を活かした操作感という意味では、Golf It!と通じるものがある。

Human: Fall Flatとはどんなゲームか
まず基本的な構造を説明する。Human: Fall Flatは、ふにゃふにゃした人間「ボブ」を操作して、夢の世界に浮かぶ様々なステージをクリアするアクションパズルゲームだ。開発はリトアニアのNo Brakes Gamesで、創業者のTomas Sakalauskas氏がほぼ一人で作り上げたインディー作品として知られている。
Sakalauskas氏はもともとIT業界で働いていたが、2012年にゲーム開発に転身した。最初はモバイルゲームを手がけていたが資金難に陥り、フリーミアムモデルへの疑問も重なって、PCゲーム開発に方向転換した。その後、Intelのモーションセンシングカメラ「RealSense」向けのプロトタイプとしてゲームを作り始め、最終的に通常のキーボード・マウス操作に切り替えてHuman: Fall Flatが誕生した。
ゲームは2016年7月にSteamでリリースされ、その後PlayStation 4、Xbox One、Nintendo Switch、iOS、Android、そして2026年3月にはNintendo Switch 2にも展開された。これだけ多くのプラットフォームに移植されたのは、そのシンプルな面白さが機種を超えて支持されているからだろう。
ボブというキャラクター
プレイヤーが操作するキャラクター「ボブ」は、白くてまん丸な体をした普通の人間だ。超能力も特殊な武器も持っていない。できることといえば、走る、ジャンプする、両手でものをつかむ、それだけだ。
ところがその「つかむ」という動作が、とんでもなく難しい。右クリックで右手を伸ばし、左クリックで左手を伸ばす。視点を上げると手も上がり、視点を下げると手が下がる。これだけ読むと「なんだ簡単じゃないか」と思うかもしれないが、実際にやってみると話が違う。
ボブの体は物理演算に完全に支配されている。壁によじ登ろうとすれば手が滑り、重い箱を持てばよろけ、足場を飛び渡れば着地の衝撃でバランスを崩す。思い通りに動かない体を騙しながら、どうにかして先へ進む方法を考えるのがこのゲームの核心になる。
カスタマイズ性も高く、ボブの見た目は服の色やスキンを変えて自分好みにできる。Steam版では8,000種類を超えるコミュニティ製スキンが用意されており、スーパーヒーロー、野菜、動物、有名キャラクターのコスプレなど、想像力の限り着替えられる。マルチプレイで全員が別々のコスチュームでステージを歩き回る光景は、それだけで絵になる。
ゲームの世界観とステージ構成
舞台は「夢の世界」という設定で、現実と幻想が混ざり合ったような独特の雰囲気がある。お城、豪邸、山岳地帯、工場跡、古代遺跡、水中施設など、ステージごとにまったく異なるロケーションが用意されている。
2025年2月の無料アップデートでは「カッパーワールド(銅の機械工場)」「ポート(港湾施設)」「アンダーウォーター(海中世界)」の3つのステージが追加され、現在は公式ステージだけで20以上が収録されている。
ステージの名前を順番に並べると、マンション、トレイン、オハコビ、マウンテン、コウジゲンバ、キャッスル、ウォーター、ハツデンショ、アステカ、タワー、ミニチュア……といった具合で、日本語の混在具合がまた妙な味わいになっている。「コウジゲンバ」でクレーンを動かしたり、「キャッスル」でお城の仕掛けを解いたり、それぞれのロケーションに合った謎解きが用意されている。
ステージをクリアする順番は一応決まっているが、ゲームとしては「どう進むか」に強制はほぼない。あるルートを行けば正攻法でクリアできるが、まったく別のアプローチで突破することも物理演算の性質上できてしまう。「こんな解き方してもいいの?」という体験がそこかしこにあって、これが攻略情報を見ずに自力でクリアする楽しさにつながっている。
物理演算の仕組みと独特な操作感
Human: Fall Flatの最大の特徴は、物理演算の再現度の高さにある。ゲーム内の世界は「幻想的な夢の世界」という設定だが、物理法則はリアル世界とほぼ同じ挙動をする。
重いものを動かすには力がいる。滑らかな表面では手が滑る。てこの原理を使えば重いものも動かせる。振り子の原理を活かせば遠くへ飛べる。ガラスに硬いものをぶつければ割れる。水の中では浮力が働く。こういったリアルな物理法則が、ゲームの謎解きに直結している。
単純に「スイッチを押す」「ゴールに到達する」という目標に対して、どの道具を使って、どういう順番で、どんな物理法則を活用すれば達成できるか、を考えることになる。手で直接押せないなら箱を置いてスイッチを踏ませる。届かない場所なら梯子を立てかけるか、長い棒を使って届かせる。重いドアなら滑車とロープを組み合わせる。
操作の習得と学習曲線
正直に言うと、最初の操作習得はそれなりにしんどい。特にPC版でのマウス操作は独特で、視点移動と手の動きが連動しているため、「手を上げたいのに視点が回転してしまう」という混乱が最初は続く。
壁のよじ登りは特に難易度が高い。左右の手を交互に使い、ミリ単位で位置を調整しながら登っていく必要があり、一般的なゲームのよじ登り動作とは感覚がまったく違う。慣れれば自然にできるようになるが、最初は「これ本当にクリアできるの?」と不安になる場面もある。
ただ、この「うまく動かない」感覚こそが笑いの源泉でもある。真剣に操作しているのに体がいうことを聞かない、それをそばで見ている人間が吹き出す。一人でプレイしていると「なんでこんなに難しいんだ」と感じることが、複数人でプレイしていると「なんでこんなに動けないんだ!」という笑いに変わる。
Steamレビューには「操作が難しくて序盤は苦労したが、慣れてきたら最高」という声が多く見られる。難易度の高い操作性を前提として楽しめるかどうかが、このゲームとの相性を決める大きな要因になっている。
複数の解法が存在するパズル設計
Human: Fall Flatのステージは、ほぼ全てのパズルに複数の解法が用意されている。正攻法ルートがある一方で、物理演算の特性を使ったトリッキーな突破法も多数発見されている。
たとえばある扉を開けるために本来はスイッチを探してパズルを解く必要があるが、物理演算の力を使えば扉ごと壊して別のルートから侵入できることもある。箱を積み重ねて本来届かない場所に登ることもできる。「バカな解き方」がゲームとして成立してしまうのが、このゲームの奥深さだ。
マルチプレイでは、一人が「バカ解き」を実践している間に、もう一人が正規ルートを探すという分担もできる。それぞれが別の解法を試して、先にゴールしたほうが正解というカオスな状況もしばしば起きる。
同じように謎解きを楽しみたいなら、動物たちが協力して山を登る「Climber: Animals Together」も似たような「試行錯誤の楽しさ」がある。

マルチプレイの面白さ:最大8人での協力プレイ
Human: Fall Flatのマルチプレイは、このゲームの本当の魅力が凝縮されている部分だ。2人でも8人でも、人数が増えるほどカオスになり、カオスになるほど笑いが増える。
オンラインマルチプレイ機能は2017年10月のアップデートで追加された。当初は2人限定だったが、その後のアップデートで最大8人まで対応した。現在は友達とのプライベートセッションだけでなく、見知らぬプレイヤーとのランダムマッチングも可能だ。
8人でプレイするとどうなるか。答えは「全員が同時に失敗し続ける」だ。誰かが箱を掴もうとして倒れる。それを助けようとした人間も一緒に倒れる。そこに別の人間が絡んできてさらに混乱する。まるでコントのような状況が、特に序盤のステージでは頻発する。
ただし、混乱の中でも協力が必要な場面は多い。一人が重いものを持っている間にもう一人がスイッチを押す、一人が足場になって別の人間を高い場所へ上げる、といった本格的な連携プレイもある。笑いの中に「ちゃんとやらなきゃいけない場面」があって、そのメリハリがゲームとして成立している理由になっている。
2人プレイの黄金比
個人的に最も推奨するプレイスタイルは、2〜4人でのプレイだ。この人数帯がコミュニケーションと協力のバランスが一番取れている。
2人プレイでは、お互いの失敗が全部見えているので笑いが最大化される。「なんで今そこに落ちるんだよ」「待って、今ちょっとつかまれる!」「やばい、一緒に落ちた」というやりとりが延々と続く。カップルや親友同士でのプレイに人気があるのは、このコミュニケーションの密度の高さが理由だろう。
4人では分担できる場面が増えて、パズルの解法を複数方向から試せる。「一人がここで待機して、二人があっちから回って来て、最後にもう一人が橋を渡れば行けるはず」みたいな作戦会議が自然と発生する。うまくいったときの達成感はひとしおだ。
8人は……もはやカオス祭りなので、それを楽しめる精神的余裕があるときに限定したほうがいい。
ボイスチャット不要で成立するゲームデザイン
特筆すべきは、ボイスチャットがなくてもゲームが成立する点だ。プレイヤーのボブ同士は直接物理的に干渉できるので、「手を引っ張って引き上げる」「一緒にものを押す」という協力が言語なしでできる。
知らない人とのランダムマッチングでも、お互いのキャラクターの動きを見ながら「次はこうしよう」というコミュニケーションが自然と発生する。言語の壁を越えて遊べるゲームデザインで、だから全世界で5,800万本という数字が出たのも納得できる。
ただ、ボイスチャットありのほうが圧倒的に楽しいのも事実だ。特に難しいパズルでは作戦を言葉で伝えられるかどうかが攻略の速度に直結する。仲の良い友達とプレイするなら、DiscordなどでVC繋ぎながらやることを強くおすすめする。
ステージの多様性と謎解きの幅
Human: Fall Flatのステージは、それぞれが独立した謎解きのテーマを持っている。単純に「ゴールまで走る」ではなく、そのロケーションならではのギミックと仕掛けが用意されている。
マンション・トレイン・マウンテン:序盤ステージ
最初のステージ「マンション(Mansion)」は、文字通り大きな屋敷が舞台だ。物理演算の基本操作を覚えながら、扉を開けたり、箱を積み重ねたり、ロープを使ったりする入門的なパズルが続く。「これくらいならできそう」という自信をつかませてから、次第にハードルが上がっていく構成になっている。
「トレイン(Train)」は走る列車が舞台で、移動する足場の上で謎解きをする必要がある。列車の速度と物理演算が組み合わさって、静止した状態より格段に難しくなる。落ちると列車に置いていかれるプレッシャーもある。
「マウンテン(Mountain)」は山岳地帯を登るステージで、よじ登り操作が本格的に要求される。ここで「壁のよじ登りが難しすぎる」とくじける人も多いが、乗り越えると一気に視野が広がる感覚がある。山の上から見える景色も、地味に美しい。
コウジゲンバ・キャッスル:中盤の面白さが増すステージ
「コウジゲンバ(Demolition)」は解体工事中の建物が舞台で、クレーンや重機を操作する場面がある。重い機械を動かすために物理法則を活用する必要があり、「てこの原理」「引っ張りと押し」を意識する場面が増える。このあたりから謎解きの難易度が本格的に上がってくる。
「キャッスル(Castle)」はお城が舞台で、中世ヨーロッパ風の重厚な雰囲気の中で跳ね橋や石造りの仕掛けと格闘する。特に跳ね橋を上げ下げするシーンは、協力プレイでの連携が映える場面の一つだ。「あなたがあっちで綱を持って、私がこっちで引く」みたいな作戦が自然と立ちやすい設計になっている。
2025年追加の新ステージ
2025年2月の無料アップデートで追加された3つのステージは、それぞれに新しい物理演算のギミックが盛り込まれている。
「カッパーワールド(Copper World)」は巨大な歯車や電気回路が並ぶ機械工場が舞台で、電気と機械の仕掛けが特徴。「ポート(Port)」は港湾施設が舞台で、大型クレーンや船舶を使ったパズルがある。「アンダーウォーター(Underwater)」は海中が舞台で、浮力を活かした独特の物理演算が体験できる。
長くプレイしているファンにとっては、無料でこれだけのコンテンツが追加され続けていることは、開発チームへの信頼感につながっている。リリースから10年近く経ってもアップデートが続いているゲームは、そうそうない。
Steamワークショップと5,000本超のカスタムステージ
PC版Human: Fall FlatのSteamワークショップは、このゲームの寿命を大幅に延ばしている機能だ。コミュニティクリエイターが作った5,000本を超えるカスタムステージが無料で利用でき、公式ステージを全部クリアしてもコンテンツに困らない。
ワークショップへのアクセスはゲーム内から直接できる。ステージ選択画面から「Steamワークショップを開く」を選び、気に入ったステージの「+」ボタンを押して登録するだけだ。登録したステージは「登録済みレベル」から遊べる。
カスタムステージの多様性
ワークショップのカスタムステージには、ありとあらゆる種類がある。
スーパーマリオのステージを再現したもの、人気映画の舞台を物理演算パズルにアレンジしたもの、デスゲーム的な難易度の鬼畜ステージ、逆に超簡単なチュートリアルステージ、完全に笑いを目的としたカオスなステージなど、作者のセンスが全力で発揮されたコンテンツが山ほどある。
Golf It!のようなゴルフゲームっぽいコースを作ったステージや、パルクール特化のアクション系ステージなど、公式ステージとは違う方向性のものも多い。
注意点として、ワークショップはPC版(Steam版)限定だ。Switch版やPlayStation版にはこの機能がない。「長く遊びたい」「コミュニティのコンテンツを楽しみたい」という人にはSteam版を選ぶことをすすめる。
スキンとカスタマイズの充実
ステージだけでなく、ボブの見た目(スキン)もワークショップで大量に配布されている。公式が用意しているスキン以外に、コミュニティ製の8,000種類以上のスキンが存在する。
全員が別々のキャラクターになって、たとえばミニオン、サメ、サンタクロース、宇宙飛行士、ゾンビが一緒に物理演算パズルをクリアしようとしているシュールな光景は、それだけでスクリーンショット映えする。
マルチプレイの集まりで「全員で事前にスキンを統一しよう」「今日は全員食べ物系スキンで」みたいな縛りを設けて遊ぶのも面白い。コスチュームで笑い、操作で笑い、笑い要素が重層的に積み重なっていく。
ソロプレイのリアルな話
正直に言う。ソロプレイはマルチプレイの2〜3割くらいの面白さだ。
一人でプレイすると、笑いの相手がいない。誰かに失敗を見せる相手がいないので、「また落ちた」というのが純粋に「また落ちた(イライラ)」になってしまう。物理演算パズルの試行錯誤が、楽しい探索ではなく地味な作業に感じられる瞬間が出てくる。
Steamレビューにもその声は多い。「一人でやるのは正直しんどかった」「友達がいてこそのゲーム」「ソロでクリアしたが達成感より疲労感が強かった」。これらは嘘ではない。
ただし、ソロプレイが全く楽しめないかというとそうではない。謎解きパズルとして純粋に面白い部分はあるし、じっくり一人で考えながら攻略する楽しさは確かにある。全公式ステージのソロクリアに要する時間は、慣れてくれば30時間程度。謎解き好きなら十分楽しめる量のコンテンツだ。
「友達がいる日はマルチ、一人の日はソロでワークショップのステージを探索」という使い分けが、このゲームの最も長く楽しめる遊び方かもしれない。
ソロでの攻略感について
ソロでは「正解を自力で見つける」楽しさが前面に出てくる。物理演算の法則を頭の中で組み立てて、「こうすれば解けるはず」という仮説を試して、うまくいったときの「読みが当たった!」という爽快感は、マルチプレイでは少し薄れる部分だ。
マルチでは「誰かが正解を見つけてしまう」という速さがある一方、ソロでは自分だけのペースで考えられる。謎解きゲームとしての純粋な楽しさを味わいたいなら、ソロで攻略するのも一つの選択肢だ。
同じ「一人でじっくり考える系」のゲームといえば、ローグライク要素も入ったBaronyが好きな人には、謎解きとゲーム性の充実感という意味で参考になるかもしれない。

なぜ5,800万本売れたのか:このゲームが刺さる理由
Human: Fall Flatが世界中でこれだけ売れた理由を、正直に分析してみる。
「ゲームが下手でも楽しい」という設計
このゲームの最大の強みは、「ゲームが下手な人でも笑えて楽しめる」という設計にある。普通のゲームは、下手なプレイヤーが足を引っ張ると全体が楽しくなくなる。下手な人は居心地が悪くなり、うまい人はイライラする。
Human: Fall Flatは違う。下手な人が失敗するほど笑いが増え、うまい人も「さっさと進めない」という状況をむしろ楽しめる設計になっている。「下手さが面白さに変換される」ゲームデザインは、本当に珍しい。
ゲームをほぼやらない人を誘っても楽しめる。「ゲームするの久しぶり」「操作が全然わからない」という人が一番笑いの核心になれるゲームというのは、コミュニケーションツールとして抜群の機能を持っている。
配信と実況との相性の良さ
実況動画・配信との相性が抜群にいいのも、このゲームが広まった大きな理由だ。
プレイヤーが失敗するたびに見どころが生まれる。視聴者は「また失敗した!」「どうやってそこで引っかかるんだ」という突っ込みを入れながら見られる。プレイヤー自身が笑えていれば視聴者も笑え、笑いが連鎖するコンテンツとして非常に優れている。
実況動画の総再生数6億回超という数字は、ゲームそのものの面白さ以上に「見ている人も楽しい」という特性があるから成立した数字だ。有名YouTuberやVtuberがこのゲームを取り上げるたびに購入者が増えるという好循環が、長期にわたって続いた。
低価格と高コンテンツ量のバランス
Steamでの定価は1,520円(セール時には500円前後まで下がることもある)。この価格帯でマルチプレイ対応、20以上の公式ステージ、5,000本超のワークショップコンテンツが遊べるというコスパは、かなり優秀だ。
Steamのセール期間に購入者数が急増するタイトルの一つで、セール中には価格が定価の70〜80%オフになることもある。「安いから友達全員分買ってしまおう」という購買行動が起きやすい価格帯を維持しているのも、拡散につながっている。
Bananaのような「思ったより面白くて友達に話したくなる」系のゲームと同じ匂いがある。一人が買って、遊んでみて、面白くて、友達に紹介して、みんなで買って、という連鎖が起きやすい。

継続的なアップデートとコミュニティの維持
2016年のリリースから10年近く経過しても定期的なアップデートが続いていることは、プレイヤーコミュニティへのリスペクトとして受け取られている。
2025年の新ステージ3本追加は無料で提供された。ワークショップのコンテンツも年々増え続けている。完成品として売り切りにせず、長期間かけてゲームを育てていくスタンスが、ファンベースの維持につながっている。
Steamのレビューには「2年ぶりにフレンドと再会して遊んだら、新しいステージが増えていて嬉しかった」という声がある。こういう体験ができるゲームは長く続くし、続くからこそ「新しいフレンドに紹介する」という機会が何度もやってくる。
気になる点・向いていない人に正直に話す
このゲームを全力で勧めたいが、正直に書かなければいけない部分もある。
操作の難易度とストレスの問題
操作が独特すぎて、慣れるまでは本当にしんどい。「なんでこんなに動かせないんだ」という純粋なフラストレーションは一人プレイ時には特に積み重なる。マルチプレイなら笑いに変換されるが、一人だと笑えない状況になることがある。
特に壁のよじ登り操作は、一般的なゲームの感覚とは全く違う。「なぜうまく登れないかがわからない」という状態が続くと、攻略できているかどうかの判断すら難しくなる。この壁を超えられないと、ゲーム全体が楽しくならない。
「操作を受け入れた上で笑う」という姿勢になれるかどうかが、このゲームを楽しめるかの分岐点だ。
ストーリーがほぼない
Human: Fall Flatにはほぼストーリーがない。なぜボブが夢の世界にいるのか、どこへ向かっているのか、何のためにパズルをクリアするのか、明確な答えは提示されない。「夢から醒めようとしているのかもしれない」という解釈はできるが、ゲームが積極的に語ることはない。
ゲームとしての楽しさはシステムと体験に全振りしているので、ストーリーを楽しみたいプレイヤーには向いていない。「なぜ進むのかわからないまま謎を解き続ける」という感覚が合わない人もいる。
ソロでの中盤以降の失速感
ソロで進めていくと、中盤以降でパズルの難易度が上がり、試行錯誤の時間が増える。これが楽しい「考える時間」になるか、つらい「詰まっている時間」になるかは人によって大きく異なる。
正直に言うと、難しい謎で行き詰まったとき、マルチプレイなら「やばい、どうすればいいんだろう」という会話が楽しさを維持してくれるが、ソロでは「答えを調べるか、諦めるか」の二択になりやすい。攻略情報を見るのに抵抗がない人は問題ないが、自力で解きたい人にはソロはかなりストレスフルな場面が出てくる。
Switch版とPC版の差
Nintendo Switch版はタッチ操作非対応で、コントローラーのみ対応だ。操作感はPC版と少し異なり、マウスで細かく動かせるPC版のほうが謎解きの精度は出しやすい。ワークショップのカスタムステージもSwitch版では遊べない。
「持ち運んで遊びたい」「友達と画面分割でやりたい」という場合はSwitch版が便利だが、「長く遊びたい」「コミュニティコンテンツを楽しみたい」ならPC版(Steam版)を選ぶほうがいい。
続編「Human: Fall Flat 2」の話
Human: Fall Flatの大ヒットを受けて、続編「Human: Fall Flat 2」が発表されている。発売時期は2026年以降が予定されており、本稿執筆時点(2026年4月)ではまだリリースされていない。
Human: Fall Flat 2は、新しい物理エンジン、新しいゲームインタラクション、新しいアートスタイルとアニメーションが予告されている。最大8人のマルチプレイは継続で、新しい「おもちゃ」と新しい世界が用意されるとのことだ。
Devolver Digitalがパブリッシャーとして参加することも発表されており、前作よりも大きな規模での展開が期待されている。Devolver Directでの発表映像が公開されたとき、ファンのコメント欄は「早くやりたい」という声で埋め尽くされた。
ただ、前作の面白さは「あのふにゃふにゃ感」にあったので、新しいシステムに移行してもその本質が維持されるかどうかは、リリースまでわからない。期待しながら待っている状態だ。
VR版「Human: Fall Flat VR」も2024年10月31日にリリースされている。VRコントローラーで直接ボブの腕を動かせるという体験は、通常版とはまた違う感覚が楽しめる。VRデバイスを持っているなら試す価値はある。
他のゲームと比べてどこが違うか
Human: Fall Flatと似たジャンルのゲームとして名前が挙がるのは、Gang Beasts、Totally Accurate Battle Simulator(TABS)、Moving Out、Fall Guysあたりだ。それぞれとの違いを整理する。
Gang Beastsとの違い
Gang Beastsは物理演算キャラクター同士が戦うバトルロイヤルゲームで、Human: Fall Flatと同じ「ふにゃふにゃキャラクター」を使っている。ただし、Gang Beastsは対戦ゲームなのに対して、Human: Fall Flatは協力パズルゲームだ。「殴り合いたい」か「協力したい」かで選択が分かれる。
ガチャガチャした感じと笑いは似ているが、目指す方向が違う。毎回短時間のバトルを繰り返したいならGang Beasts、じっくりパズルを解きながら笑いたいならHuman: Fall Flatという棲み分けだ。
Moving Outとの違い
Moving Outも物理演算を使った協力ゲームで「家具を運ぶ」というシンプルな目標がある。Human: Fall Flatより操作が少しやりやすく、謎解き要素よりアクション要素が強い。「カジュアルに笑える協力ゲーム」という位置づけは似ているが、謎解きの深さはHuman: Fall Flatのほうが上だ。
Moving Outが好きなら、Human: Fall Flatは間違いなくハマる。逆も然りで、Human: Fall Flatを気に入ったならMoving Outも楽しめるはずだ。
Fall Guysとの違い
Fall Guysは同じ「コロコロした体の人間が転び回る」という見た目でよく比較されるが、ゲームとしての方向性はまったく違う。Fall Guysはバトルロイヤル形式の競争ゲーム、Human: Fall Flatは協力パズルゲームだ。
「勝ち負けのあるゲームが好き」ならFall Guys、「協力して一緒にクリアする体験が好き」ならHuman: Fall Flatという選択になる。両方やることもできるし、どちらも「見た目がコミカルで笑える」という点では共通している。
放置系やカジュアル系のゲームが好きな人には、Cookie Clickerのような「シンプルだけど深みがある」ゲームも気に入るかもしれない。

Steamレビューから見えるプレイヤーの本音
Steamの16万件以上のレビューから、プレイヤーの生の声を拾ってみた。
圧倒的に多いのは、マルチプレイの笑いに言及したレビューだ。
友達と4人で遊んだら3時間があっという間に過ぎた。誰も進めないのに誰も諦めないし、失敗するたびに爆笑が止まらない。こんなに笑ったゲームは久しぶり。
引用元:Steamレビュー
ソロプレイへの正直な評価も目立つ。
一人でやってみたが、これは絶対に友達と遊ぶゲームだと確信した。ソロでも謎解き自体は面白いが、笑いがないとジワジワくる。
引用元:Steamレビュー
操作への慣れについての声も多い。
最初の30分は何もできなかった。「このゲームバグってる?」と思ったが、友達に「それが仕様だよ」と言われて笑った。慣れてくると謎解きが本格的に面白くなる。
引用元:Steamレビュー
ワークショップについてのポジティブな声も目を引く。
公式ステージ全部クリアしてもまだ遊べる。ワークショップに変なステージが大量にあって、そっちのほうが面白かったりする。
引用元:Steamレビュー
ネガティブなレビューも紹介する。
操作が難しすぎて序盤で諦めた。「ゆるいゲーム」だと思って買ったのに、物理演算が本格的すぎて頭が痛くなった。
引用元:Steamレビュー
一人で真剣に謎解きしようとすると、思ったより攻略に時間がかかる。ロープ操作とかが直感的じゃなくて、答えがわかっても実行できないことがある。
引用元:Steamレビュー
これらのレビューに共通しているのは、「マルチで笑えるゲームとしては最高」「ソロは想定外の難しさ」という評価軸だ。94%の好評率は、マルチプレイ前提の遊び方でゲームを評価しているプレイヤーが多数を占めている結果だと思う。
ゲーム配信や動画制作が好きな人にとっては、録画コンテンツとしての価値も高い。Super Auto Petsのような「見せるゲーム」としての側面でいえば、Human: Fall Flatはその筆頭格だ。

購入前に確認したい価格とプレイ環境
購入を検討している人のために、実用的な情報を整理する。
価格とコスパ
Steam版の定価は1,520円(2026年4月時点)。Steamのセールでは70〜80%オフになることもあり、セール時なら500円以下で購入できることもある。Steamのウィッシュリストに入れておいて、セール通知をもらうのが賢い方法だ。
マルチプレイで遊ぶ場合、一緒に遊ぶ人全員がゲームを所持している必要がある。ただし、Steam版には「ゲストアクセス」機能があり(リモートプレイ機能を使う場合)、一人が購入すれば別の人が無料で参加できるケースもある。詳細はSteam公式の機能説明を確認してほしい。
推奨スペック
必要なPCスペックはそれほど高くない。ゲームが2016年のリリースであることもあり、少し古いPCでも動作する。Steamのゲームページに掲載されている推奨スペックで問題なく動作する。「ゲームに使えるPCがあるか微妙」という人でも、比較的動作させやすいタイトルだ。
マルチプレイのセットアップ
Steam版でのオンラインマルチプレイは、フレンドを招待してのプライベートセッションか、ランダムマッチングから選べる。フレンドリストに相手がいれば、ゲーム内から直接招待を送れる。設定が複雑な部分はほぼなく、Steamアカウントを持っていれば基本的な操作でマルチを開始できる。
ICARUSのような本格的なオープンワールド系ゲームを遊んでいる人が、息抜きに友達を誘う口実としてこのゲームを使うケースも多い。

コントローラーへの対応
PC版はXbox系のコントローラーに対応している。マウスとキーボードとコントローラーのどちらが合うかは人によって異なるが、多くのプレイヤーは「マウスのほうが細かい操作ができる」と感じている一方で、「コントローラーのほうが直感的」という声もある。両方試してみて自分に合う方を選ぶのがいい。
まとめ:Human: Fall Flatをどんな人に勧めるか
Human: Fall Flatは、「ゲームで笑いたい、友達と一緒に体験を共有したい」という人に向けた、現時点で最高峰のゲームの一つだと思っている。
5,800万本という数字は、誇張でも偶然でもない。「誰でもすぐに始められて、すぐに笑える」という体験のハードルの低さと、「謎解きパズルとしての深み」と「Steamワークショップによる無限のコンテンツ」が組み合わさって、幅広いプレイヤー層を取り込んできた結果だ。
特に「ゲームが苦手な友達を誘いたい」「みんなで笑えるゲームがしたい」「Steamのセールで安いゲームを探している」という状況にあるなら、このゲームは間違いなくオプションの筆頭に入れていい。
ソロプレイとマルチプレイの体験差は大きい。それを理解した上で「友達と一緒に」という前提で購入するなら、コスパと楽しさのバランスは今のSteamライブラリの中でもトップクラスだ。
Across the Obeliskのように長時間かけてじっくり遊ぶゲームとは方向性が違うが、Human: Fall Flatにしかない「失敗が笑いになる瞬間」の体験は唯一無二だ。Steamのセールで見かけたら、友達を道連れにして購入してみてほしい。

続編のHuman: Fall Flat 2の情報も少しずつ出てきているので、1を遊んでおくと続編が来たときに周回遅れにならずに済む。このゲームを知っているプレイヤーが次の世代に引き継ぐ流れが、すでに始まっている。
Human Fall Flat
| 価格 | ¥2,050 |
|---|---|
| 開発 | No Brakes Games |
| 販売 | Curve Games |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows / Mac |
| プレイ形式 | シングル / マルチ |
