4人で動物になって落ちて笑って——470円で買えるCo-opクライミングパーティゲームの魔力

友達3人と声を上げながら画面を見ていたら、気づいたら1時間経っていた。
回転するハンマーをなんとかかわして、「行けるって!行けるって!」と叫びながらタイミングを合わせようとしたら、先頭のブタが盛大に踏み外して奈落へ落ちていった。次の瞬間、全員が笑いながら「もう1回!」を押していた。
これがClimber Animals: Togetherの体験の核心だ。
2024年3月22日にSteamで発売されたこのゲームは、発売当初は同時接続400人程度のひっそりしたタイトルだった。ところが2025年2月11日、中国の人気配信者・陈泽(チェン・ズー)がDouyin上でプレイを開始した。彼のフォロワーは2114万人。その影響でゲームは爆発的に広まり、同年2月19日に同時接続のピーク7370人を記録。その後も中国のDouyin・Bilibiliを中心に200億回以上の動画再生を集め、最終的には累計200万本以上を販売するタイトルへと成長した。
価格は470円。ランチ1回分の価格で、友達最大8人がひたすら転び、怒り、笑い、また挑戦するゲームが手に入る。
なぜこのゲームがここまで広まったのか。「Getting Over It」的な理不尽クライミングにマルチプレイが合わさるとどうなるのか。この記事で全部まとめて書いていく。
こんな人に読んでほしい
このゲームが刺さる人
- 友達2〜8人でわちゃわちゃ遊べるゲームを探している人
- 理不尽な難易度に怒りながらも笑える体験が好きな人
- Getting Over ItやA Difficult Game About Climbingをプレイしたことがある人
- コスパ重視で、500円以下でパーティゲームを探している人
- ゲーム実況・配信ネタになる「リアクションが生まれやすい」ゲームが欲しい人
- 最大8人まで対応のオンラインCo-opゲームを探している人
合わない人もいる
- ソロでじっくり遊ぶタイプの人(ひとりでも遊べるが、多人数の方が圧倒的に楽しい)
- 少しでも進捗が残るゲームが好きな人(落ちたら最初からが基本)
- 長時間のコンテンツ量を求めている人(コースを制覇した後の要素は限定的)
- 競技性の高いシビアなゲームプレイを好む人
Climber Animals: Togetherの概要——470円の「転ぶゲーム」が2百万本売れた理由

まず、このゲームが何をするゲームなのかを一言で説明しよう。
動物キャラクターを操作して、障害物だらけのコースを登りきるゲームだ。落ちたら最初から。友達と一緒に。
開発・パブリッシャーはDevotionInteractive(Payoff Gamesが開発、DevotionInteractiveがパブリッシャーとして展開)。Steamでの定価は3.99ドル(日本円で470円前後)。最大8人でのオンラインマルチプレイに対応し、1人でも遊べる設計になっている。
プレイヤーが選べるキャラクターはブタ、ニワトリ、その他の動物たち。ビジュアルは明るくポップで、ひと目見ただけで「カジュアルゲームだな」とわかる見た目だ。これは意図的な選択だと感じる。アニメ調のポップなキャラクターは、ゲームが苦手な人でも「かわいいから試してみたい」という入口を作る。ホラーゲームや写実的なグラフィックスが苦手な層も、この見た目なら抵抗感が少ない。
コースには回転するハンマー、飛び出してくるボクシンググローブ、くるくると回るポール、バランスを崩す動くプラットフォームといった障害物が配置されている。これらをタイミングよく避けながら、ひたすら上を目指す。
そして最大の特徴がリセットシステムだ。足を踏み外して落下した瞬間、そのプレイヤーは問答無用でスタート地点まで戻される。チェックポイントはない。オートセーブもない。落ちたら全部やり直し。
最初にこの説明を聞くと「それって理不尽すぎない?」と感じるかもしれない。実際にプレイするまでは、筆者もそう思っていた。ところがこの「落ちたら即リセット」こそが、友達と一緒にプレイしたときの最高の燃料になる。
コントローラー・キーボード対応
Climber Animalsはキーボード操作とゲームパッドの両方に対応している。家庭用ゲームコントローラーを繋いでXbox/PlayStation形式の操作で遊ぶことができる。
操作の複雑さは低い。基本的な移動とジャンプが主体で、特殊な技術や複雑なコンボは要求されない。「ゲームパッドの操作方法が分からない友達でも5分で慣れる」という設計は、間口の広さに直結している。
マルチプレイのセットアップも比較的シンプルだ。SteamのフレンドリストからInviteを送ってセッションに招待する形で、特別な知識なく友達を誘える。「どうやって一緒にプレイするの?」という問いへの答えが簡単なことは、カジュアル層へのアクセスを左右する重要な要素だ。
コースの構造——760メートルから1060メートルへ
発売当初のコース高度は760メートルだった。2024年3月27日のメジャーアップデートで地図が拡張され、1060メートルに延長された。同時に4種類の新エモートが追加され、リーダーボードもリセットされた。
コースは大きく分けて序盤・中盤・終盤の3つのゾーンに分かれており、上に行くほど障害物の密度と速度が上がっていく。「どのルートで通り抜けるか」という選択肢が複数あるため、同じコースを繰り返しプレイしても毎回違うアプローチを試せる。「さっきはあの道で通れたのに」という経験の積み重ねが、プレイヤーの記憶に残るゲーム体験を作り出している。
Steam Newsによると、この更新でマップが300メートル拡張されただけでなく、障害物の配置にも変化が加えられた。既存プレイヤーが「知ってるコース」として攻略していた道筋が通用しなくなり、全員が同じスタートラインに立ち直せる状況を作り出した。これがリーダーボードリセットとも連動した、うまい設計だ。コミュニティを均等にリセットすることで、新規参入者と古参プレイヤーの差を縮める配慮が見える。
キャラクターカスタマイズとスキン
ゲームにはキャラクタースキンのシステムもある。シンプルな動物キャラクターながら、複数のスキンが用意されており、仲間内で見た目を揃えるなり個性を出すなりの自由がある。コアなゲームプレイに影響はしないが、「あいつのブタが落ちた」「自分のニワトリが踏ん張っている」といった感覚が生まれることで、キャラクターへの愛着が深まる。
「落ちたら最初から」が生む特有の体験——Getting Over Itとの共通点と違い
Getting Over Itをご存知だろうか。2017年にBennett Foddyが作った、鍋に入った男がハンマーで崖を登るゲームだ。落ちたら一瞬で麓まで戻される。その理不尽さがSteamやYouTubeで大きな話題になり、数多くの実況動画を生んだ。
Climber Animals: Togetherは、その「理不尽落下クライミング」のDNAを引き継ぎながら、マルチプレイ前提に再設計したゲームだと言えば伝わるだろうか。
「Getting Over Itは1人で黙々と苦しむゲームだった。でもClimber Animalsは友達と一緒に苦しんで、笑い合えるゲーム。同じ『落ちたら最初から』でも、感情がまったく違う」
引用元:Steamレビュー
この差は大きい。Getting Over Itでの「落下」は個人の挫折体験だ。一方、Climber Animalsでの「落下」は友達との共有体験になる。先頭にいた仲間が落ちた瞬間に「あーっ!」と笑い、自分が落ちた瞬間に「もう1回!」と言い直す——その繰り返しがゲームを加速させる。
もうひとつの違いは「コースの見通し」だ。Getting Over Itはひとつの繋がった世界を登り続けるが、Climber Animalsはステージ形式のコースになっている。「ここさえ越えれば次のエリアだ」というマイルストーンが見えるため、挑戦のリズムが掴みやすい。
同系統の「A Difficult Game About Climbing」も2024年に話題になったタイトルだが、あちらも基本的にはソロプレイ体験。Climber Animalsの独自性は一貫して「最大8人で一緒に転べる」ことにある。

「競争か協力か」という面白い二択
Climber Animalsのマルチプレイで面白いのは、ゲームが「協力」と「競争」を明確に分けていない点だ。
上手い仲間が先に進んで後ろを引っ張ることもできるし、誰かが落ちた瞬間に自分も巻き込まれて一緒に落ちることもある。「俺は先に行くから!」と宣言したプレイヤーが、残り10メートルのところで派手に踏み外して全員の笑いをかっさらう。
ゲームシステムは明示的に「チームとして頂上を目指せ」とは言っていない。でも自然と「全員で行こう」という空気になる。それは、1人で勝っても後ろに友達がいるからこそ達成感があるゲームだからだ。
「友達が落ちるの見て笑いながら自分も落ちてた。なんでこんなに楽しいんだ」
引用元:Steamレビュー
Steam評価とプレイヤーの声——4738件のレビューから見えること
2026年4月時点でのSteamレビューは4738件。そのうち75%がポジティブ評価という「やや好評」ステータスだ。
数字だけ見ると「普通よりちょっといい」くらいの印象かもしれない。ただ、このゲームの特性を考えると、この75%という数字の意味は少し違う見方ができる。
まず価格が470円という超低価格帯であること。「4倍の値段に見合う品質だった」というポジティブレビューと、「もうちょっとコンテンツがあれば」というネガティブレビューが共存している。期待値と実売価格のギャップから生まれる評価の揺れが、75%という数字に反映されている。
次に、ゲームの性質上「友達と一緒かどうか」で体験が大きく変わること。ソロでプレイして「思ったより単調だった」と書いたレビューと、「友達8人でやったら最高だった」と書いたレビューが混在しており、同じゲームとは思えないほど感想が割れている。
ポジティブな声
「このゲーム、値段がいかれてる。友達と2時間プレイして腹筋が割れそうになった」
引用元:Steamレビュー
「Getting Over Itがパーティゲームになったら最強だなと思ったら、もうあった。これが470円で買えるのがおかしい」
引用元:Steamレビュー
「落ちて怒鳴って笑って、また落ちる。これ以上説明いらないと思う」
引用元:Steamレビュー
辛口な声も正直に
一方でネガティブなレビューもある。主な不満点は2つだ。
ひとつはコンテンツの少なさ。基本コースをクリアした後に遊べるコンテンツが少なく、「もっとコースが欲しい」という声は多い。4738件のレビューの中でも繰り返し言及されているポイントで、これが75%という数字に留まった理由のひとつと推測される。
もうひとつはセーブシステムの不在。「落ちたら最初から」というゲームデザインは体験の核心ではあるが、「プレイ途中で保存できない」ことへの批判は根強い。特にソロでプレイする人からの不満が多く、長時間かけて登り切れなかった場合のダメージが大きい。
「ゲームデザインは好きなんだけど、友達がいないとすごく虚無になる。ソロ向けのモードがほしかった」
引用元:Steamレビュー
この批判は正直なところを突いている。このゲームは友達ありきで設計されており、ソロでのリプレイ体験は同期が大幅に落ちる。「誰かと一緒に遊べる環境があるかどうか」がこのゲームの満足度を決定する最大の変数だ。
Steam Tagから見えるゲームの個性——「パーティゲーム」と「難しい」の共存

SteamのTagはプレイヤーが自発的に付けるもので、そのゲームの本質を端的に表す。Climber AnimalsのTagを見ると、このゲームの個性がよく分かる。
「Party Game(パーティゲーム)」「Physics Simulation(物理演算シミュレーション)」「Platformer(プラットフォーマー)」「Casual(カジュアル)」「Multiplayer(マルチプレイ)」「Difficult(難しい)」「Co-op(協力)」「Online Co-Op(オンライン協力)」「Funny(面白い)」といったTagが並んでいる。
「Casual(カジュアル)」と「Difficult(難しい)」が共存しているのが面白い。一見矛盾するこの2つが同時に成立するのは、「誰でも始められるが、クリアはそれなりに大変」というゲームデザインの証だ。入口は低いが、頂上への道はそれなりに険しい。このバランスこそが幅広い層を巻き込む要因になっている。
「Funny(面白い)」というTagが付いているのも重要なシグナルだ。Steam上で「Funny」Tagが付くゲームは、「ゲームプレイ中に笑いが生まれる体験を提供する」という意味でコミュニティが認識していることを示す。Lethal Company、R.E.P.O.、そしてClimber Animalsが共通して持つこのTagは、「Co-op笑いゲーム」というカテゴリを示す言語化されたシグナルだ。
同接477人という現在の数字が示すもの
本記事執筆時点(2026年4月)の同時接続数は477人前後だ。ピークの34292人と比べると大幅に下がっているが、これをどう読むかは視点による。
バズりの波が引いた後に500人弱が継続してプレイしているという事実は、「ゲームが面白いと思っている人がいる」という証拠だ。100円台〜500円のゲームとしては、この水準の同接を維持していることは健全な状態と言えるかもしれない。
また477人という数字は「ゲームを起動している人」の数であり、「持っているが今は起動していない人」はこれより遥かに多い。累計200万本の購入者が全員離れたわけではなく、「友達が来たら一緒にやろう」という用途でスタンバイしている人も多いはずだ。
月次で定期的に友達を誘って遊ぶゲームとして、Climber Animalsはライフサイクルが長い部類に入る。「先週末また4人でやった」という形で生き続けるゲームは、同接数が低くてもプレイヤーの生活に存在し続けている。
なぜ中国で爆発したのか——ストリーマーひとりが引き起こした2百万本の軌跡
Climber Animalsの奇跡的な盛り上がりを語る上で、2025年2月11日という日付を外すことはできない。
この日、中国の大人気配信者・陈泽(通称チェン・ズー)がDouyin上でClimber Animalsのプレイを開始した。陈泽はもともとLeague of Legendsの配信で有名なストリーマーで、Douyinのフォロワーは2114万人。彼が配信を始めると、視聴者が一気に流入した。
陈泽の配信を見たほかの配信者もこぞってゲームをプレイし始め、Douyin・Bilibiliを中心に「また配信者が落ちて絶叫した」という動画が次々と投稿された。中国のSNSでの総再生回数は200億回、総いいね数は1000万件以上に達した。
その結果がSteamの数字に直接反映された。2月11日以前は同時接続408人という静かなゲームだったものが、2月19日には7370人に到達。さらにその後のデータでは最大同時接続34292人という数字も記録されており、Steamグローバルトップセラーのトップ20入りを果たした。
「ストリーマー効果」が極端に出やすいゲームだった
なぜClimber Animalsがここまでストリーマー起点の拡散に乗りやすかったのかを考えてみると、ゲーム設計との相性が見えてくる。
まずリアクションが見やすいこと。キャラクターが落ちる瞬間は画面上で分かりやすく派手で、視聴者も「あ、落ちた!」と即座に理解できる。配信者が絶叫する理由が画面を見るだけで分かるから、コンテキストを知らない人でも笑える。
次に低価格であること。配信を見て「面白そう」と思った視聴者が、470円という判断コストの低い価格で即購入できる。高額タイトルだと「配信を見て満足」で終わりやすいが、500円以下だと「自分でもやってみよう」という行動に直結しやすい。
そしてシンプルな前提。ゲームの目的は「落ちないように上を目指す」という一行で説明できる。複雑な前提知識や長い導入なしに、配信の途中から視聴しても状況が分かる。これが配信コンテンツとの親和性を高めた。
「チェン・ズーの配信を見て即買いした。ゲームの説明を一切知らなくても笑えた。こういうゲームが一番拡散力ある」
引用元:Bilibiliコメント欄(翻訳)
2百万本達成後の開発チームの動き
売上が急増した後、開発チームのDevotionInteractiveは積極的に中国市場向けの展開を強化した。中国語対応の強化、コミュニティへの返答、そしてアップデートの継続と、急激な注目に対してしっかり受け止めようとしている姿勢が見える。
Steamのコミュニティフォーラムを見ると、開発チームがバグ報告や改善要望に対してレスポンスを返している。2百万本というセールスで得た資金を次の展開にどう活かすかが、今後の注目点だ。
ゲームを支える「物理演算」の細かい話——なぜ同じ場所で毎回違う死に方をするのか
Climber Animalsでの死に方は、毎回少しずつ違う。同じ回転ハンマーに当たっても、弾かれる方向や距離が毎回異なる。この「予測できない失敗」こそが、何度繰り返しても飽きない核心だ。
障害物の動きには物理演算が組み込まれており、プレイヤーキャラクターへの当たり方によって挙動が変わる。完全に正面から当たるか、端をかすめるかで吹き飛びの軌道が変わる。「今のはいけるはずだった」という感覚が毎回あり、「もう1回試したい」という動機を自然に生み出す。
これは意図的な設計の産物だ。「落ちたら最初から」というペナルティを成立させるには、失敗が理不尽に感じすぎてはいけない。かといって毎回同じパターンで回避できると作業になる。物理演算による微妙なランダム性が、「自分の操作を磨けば越えられる」という感覚と「次は違うかも」という期待感のバランスを保っている。
主要な障害物の種類と特性
コース上に配置された障害物にはそれぞれ異なる特性があり、それを把握することが攻略の鍵になる。
回転ハンマーは最も基本的な障害物だ。一定の速度で回転しているため、タイミングを計れば確実に通過できる。ただし複数が連動して配置されているセクションでは、1つをくぐった後の次の動作が問われる。「ハンマーを越えたところで足を踏み外す」という二段階の失敗が頻発する。
ボクシンググローブは予測しにくい軌道で飛び出してくる。ハンマーが「タイミングを読む」障害物なのに対して、グローブは「位置を読む」障害物だ。どこから出てくるかを理解すると、同じ場所でも格段に通過しやすくなる。
回転するポール・プラットフォームはバランスの問題だ。足場自体が動いているため、乗った後にどこへ移動するかを同時に考える必要がある。特にマルチプレイ時は、先にポールに乗った仲間の動きも考慮しなければならない。
これらの障害物は組み合わせて配置されることが多い。「グローブをかわしながらポールに乗り、回転するタイミングでハンマーをくぐる」という複合的なシーンが中盤以降に増えてくる。
8人同時プレイ時のカオス
ソロと2〜3人と8人では、体験がほぼ別ゲームになる。
8人でプレイすると、コース上にキャラクターが密集するため、他のプレイヤーのキャラクターが意図せず障害物になる。前の仲間が弾かれた際に自分のキャラクターに当たって連鎖落下が起きる。障害物を避けようとして仲間を踏み台にして乗り越えようとする人が出てくる。
これは設計上の想定内なのか想定外なのかは分からないが、プレイヤーにとっては最高の笑いのネタだ。「お前のせいで落ちた!」と笑いながら叫ぶのがClimber Animalsの醍醐味でもある。
「8人でやったら障害物より仲間の方が邪魔だった。最高だった」
引用元:Steamレビュー
実績システムとリーダーボード
Climber Animalsには12種類のSteam実績が用意されている。タイトルの例を挙げると「Winner」(1ゲーム勝利)、「First Blood」(友達に初めてダメージを与える)、「First Jump」(トランポリンでジャンプする)、「Dragon」(ドラゴン像に到達する)といった内容だ。
「First Blood」という実績の存在が示すように、このゲームにはプレイヤー同士が絡み合う要素がある。仲間を邪魔する、あるいは意図せず当たってしまう——こういった「他プレイヤーとのインタラクション」が実績として記録されていることは、開発側がそれを「ゲームの面白さの一部」として認識していることを示している。
Steamリーダーボードも存在し、クリアタイムの競争もできる。最速クリアは51分前後という記録があり、中央値は約3時間だ。「友達とわちゃわちゃ」以外に、タイムアタックとしての遊び方も成立している。
類似Co-opゲームとの比較——「パーティで使えるゲーム」として何が違うのか

友達と一緒に遊べるCo-opゲームはSteamに無数にある。その中でClimber Animalsがどういうポジションにいるのかを整理しておこう。
Lethal Company・R.E.P.O.系との違い
Lethal CompanyやR.E.P.O.のようなCo-opホラーは、「怖い体験を仲間と一緒にする」というベクトルだ。緊張があって、パニックがあって、笑いはその副産物として生まれる。プレイセッションの長さも1時間〜数時間単位になる。
Climber Animalsはもっとライトだ。一回の挑戦が数分単位で、「落ちた→笑い→もう1回」のサイクルが短い。ゲームへの集中度もLethal Companyほど要求されない。深夜に友達に突然「一緒にやろう」と誘える手軽さがある。
Fall Guys系との違い
Fall Guysは複数プレイヤーが同じコースを競い合うバトルロイヤル形式で、見知らぬ他プレイヤーとのマッチングが基本になる。Climber Animalsは友達同士のセッション前提で、知っている人と笑い合うための体験に特化している。
また Fall Guysは「誰かが勝つ」ゲームだが、Climber Animalsには明確な勝敗がない。全員が頂上を目指すのか、誰かが先に着くのかは各セッションの性格による。この「競争か協力かを自分たちで決められる」柔軟性が、小さいコミュニティでの遊びに向いている。

Getting Over It(類似ソロタイトル)との関係
Getting Over Itを経験したプレイヤーにとって、Climber Animalsは「あの体験のマルチプレイ版」として明確に定義される。ソロで経験した「落ちる痛み」を仲間と共有できる設計だ。Getting Over Itで積み上げた「落下への慣れ」と「再挑戦のマインドセット」が、Climber Animalsでそのまま活きる。
逆に言えば、Getting Over It的な挫折を全く楽しめないタイプの人には、Climber Animalsも合わないかもしれない。ゲームデザインの根底にある「繰り返す挫折を楽しむ」という哲学は共通している。
470円というコスパの話——安さが生むゲーム体験への影響
価格の話を改めてしたい。470円というのは、他のゲームと比較すると際立って安い。
たとえば最近のインディータイトルの多くは1500円〜3000円帯だ。Lethal Companyは980円、R.E.P.O.は約1500円。その中でClimber Animalsは470円という価格帯は、購買判断のハードルを大幅に下げる。
この価格設定が生むもうひとつの効果は「全員で揃えやすい」こと。8人でマルチプレイするゲームで、全員がそのゲームを持っている必要がある場合、1人あたりの負担が低ければ低いほど「じゃあ全員買おう」という決断がしやすい。3000円のゲームを8人分揃えると2万4千円だが、470円なら3760円だ。
「友達に勧めたら全員480円だから買えるって言って、翌日8人でやった。こういうゲームは安さが命」
引用元:Steamレビュー
ただし、低価格はコンテンツ量の期待値管理とセットだ。「470円のゲームとして見れば十分」という評価と「もうちょっとコース数が欲しかった」という評価が共存しているのは、この価格設定によるところが大きい。開発チームがこの価格でどこまでコンテンツを充実させていけるかが、長期的な評価を左右する。

日本語対応と日本国内でのプレイ環境

Climber Animalsは日本語に対応している。UI・テキスト・字幕ともに日本語で遊べる設定になっており、英語が苦手なプレイヤーでも問題なくプレイできる。
ゲームの性質上、テキストを読む要素はほぼない。コースを登るだけなので、実は言語対応が関係ない場面も多い。ただし、メニュー操作やゲーム内設定が日本語対応しているのは、初見プレイの敷居を下げる上で地味に重要だ。
日本のSteamコミュニティでのClimber Animalsへの言及は、中国でのバズりに連動する形で2025年2月〜3月にかけて増加した。「中国で流行ってるゲームを試してみた」という形での認知が広まった側面が強い。
日本のプレイヤーからの声
日本語のSteamレビューを見ると、中国でのバズりを知ったうえで「自分でも試してみた」という流入が多い。
「中国でバズってると聞いて試しに買ってみた。友達3人と深夜に2時間ずっと笑ってた。コスパは異常」
引用元:Steamレビュー(日本語)
「動画で見て笑ったけど実際やるともっと笑える。Discordで友達呼んで即起動」
引用元:Steamレビュー(日本語)
「動画を見て笑う」から「自分でも買って笑う」という動線が、Steamの購買行動として綺麗に成立している。このパターンはLethal CompanyやR.E.P.O.でも見られたが、Climber Animalsは価格の低さによって更に決断スピードが速い。
推奨環境とマシンスペック
ゲームの動作要件は比較的低い。3Dグラフィックスではあるが描写の複雑さは高くなく、ミドルスペック以上のPCであれば快適に動く。60fpsで安定して動作させるための特別なハイエンドGPUは必要ない。
低スペックのゲーミングPCや古めのノートパソコンでも動くことが多く、「友達に勧めやすい」という面でスペック面の敷居の低さも貢献している。
フレンドを誘う際のポイント
Climber Animalsで最高の体験をするための実用的なアドバイスをひとつ。
最初にプレイするセッションは、2〜4人が最適だ。8人でいきなり始めるとカオスすぎてゲームの構造が掴みにくい。最初は少人数でコースの感触を掴んで、慣れてきたら人数を増やすのがおすすめのアプローチだ。
また、音声通話(DiscordやSteamのボイスチャット)を使いながらプレイすることを強く勧める。声が聞こえないと、誰かが落ちた瞬間の「あーっ!」という反応が共有されない。このゲームの笑いの大半は「声の反応」から生まれるので、テキストチャットだけでは体験の半分しか得られない。
開発元・Payoff GamesとDevotionInteractiveについて
Climber Animals: Togetherを開発したのはトルコのインディースタジオ・Payoff Gamesだ。パブリッシャーはDevotionInteractiveが務めている。
Payoff Gamesはイスタンブール拠点の小規模チームで、「ゲームファンの期待に応えること」を理念として掲げている。業界の最新トレンドを追いながら、「クオリティと楽しさ」を最優先に制作するスタンスでゲーム開発に取り組んでいる。
「完璧主義的なアプローチで各タイトルに向き合う」というのが彼らのチームの姿勢だ。Climber Animalsがシンプルながら完成度の高いマルチプレイ体験を提供できているのは、この「遊びの本質を追求する」スタンスが設計に反映されているからかもしれない。
トルコのインディーゲームシーンから生まれた470円のゲームが、中国を起点に世界200万本を達成したストーリーは、現代のインディーゲーム業界が持つ可能性を改めて示している。有名スタジオや大型予算がなくても、シンプルで確実に面白いゲームを作れれば、ストリーマー文化とSteamの仕組みを通じて世界規模で届く——Climber Animalsはその典型例だ。
小規模チームが作ったゲームとしては、マルチプレイの安定性やリセットシステムの実装精度は高い水準にある。リリース後も継続的にアップデートを行っており、2024年3月のメジャーアップデートでのコース延長と新コンテンツ追加は、ゲームの寿命を延ばす判断として評価できる。
2百万本というセールスを受けてどういう次の展開を見せるのか——新コース追加なのか、別タイトルへの投資なのか、今後の動向は注目に値する。

Co-opクライミングゲームという新しいジャンルの可能性
Climber Animalsの成功は、ゲームジャンルとしての可能性も示している。
「難しい登りゲーム」という概念はGetting Over Itが2017年に確立した。「パーティゲーム」としてのCo-opは長年のゲームジャンルだ。この2つを組み合わせた「難しいCo-op登りゲーム」というポジションは、Climber Animalsが示す前は明示的に存在していなかった。
2025年前後に盛り上がりを見せたPEAKは、登山をテーマにしたCo-opとして別の角度からこのジャンルに迫っている。PEAKはサバイバル要素や物語性も組み込んだ複雑なゲームで、Climber Animalsとはプレイセッションの重さが異なる。ただ両者が同時期に注目されたことは、「友達と一緒に登る体験」へのプレイヤーの需要が確実に存在することを示している。
「Chained Together」との比較——鎖で繋がれた友達と登るゲーム
同じ「Co-op登りゲーム」の文脈で語られることが多いのが「Chained Together」だ。こちらは全プレイヤーが物理的な鎖で繋がれた状態でクライミングするゲームで、「仲間が邪魔をする」という要素をより直接的にゲームメカニクスに組み込んでいる。
Climber Animalsとの違いは「干渉の仕方」だ。Climber Animalsでは仲間との干渉は偶発的なもので、タイミングさえ合えばバラバラに登ることもできる。Chained Togetherは鎖の長さという制約を通じて、強制的にチームの一体行動を求める。難易度の構造と求められるコミュニケーションの密度が異なる。
どちらが優れているという話ではなく、「どういう体験をしたいか」で使い分けが生まれる。「時々ぶつかりながら競うゲーム」はClimber Animals、「常に協調しないと進めないゲーム」はChained Togetherという感じだ。
なぜ「登る」という行為がゲーム映えするのか
少し立ち止まって考えると、「登る」という行為がゲームコンテンツとして機能しやすい理由がある。
まず進行方向が一方向(上)に固定されていること。横スクロールゲームやTPSのような多方向への移動よりも、視点と目標が分かりやすい。画面を見ている人間が「どこに向かっているか」「どのくらい進んでいるか」を直感的に把握できる。
次に「落下」がビジュアルとして分かりやすいペナルティになること。失敗の瞬間が画面上で明確に演出されるため、見ている人間も「あ、落ちた!」と即座に反応できる。配信や実況との相性が良いのはここに起因している。
そして「頂上」という共通の目標があること。ゲームが「どこへ向かうのか」を全員が共有できる状況は、マルチプレイでの一体感を生みやすい。
Getting Over Itが2017年に示した「登りゲームの映え」を、Climber Animalsはマルチプレイに展開することで次のフェーズに持ち込んだ。このフォーマットはまだ成長の余地がある。

「バイラル性」を設計に組み込む
Climber Animalsの設計を改めて見ると、意図的かどうかはさておき、「配信・実況で映える」ための要素が揃っている。
リアクションが分かりやすい落下シーン。複数人の絶叫が重なるマルチプレイ音声。理不尽に見えて実はプレイヤーの判断ミスが原因の失敗。繰り返してもその都度新鮮な笑いが生まれる短いサイクル。
これらは動画コンテンツとして切り取りやすく、途中から視聴しても状況が分かりやすい。「見た人がやってみたくなる」動線が自然に組み込まれた設計だ。2百万本という数字は、この動線が実際に機能したことの証明とも言える。
Game Joltなど他プラットフォームとの関係
Climber AnimalsはSteam版のほか、他のプラットフォームでも展開されている。モバイル版の情報も一部流通しており、PC版のSteamとは別のプレイヤー層への展開も視野に入っている。
ただしPC版Steamが最もコミュニティが充実しており、フレンドと遊ぶ環境としてはSteam版が第一選択になる。Steamのフレンドリスト機能との連携、ボイスチャットの統合を含めたプレイ体験はPC版に軍配が上がる。
将来的にコンソール展開やモバイル版が充実すれば、さらに広いプレイヤー層へのリーチが可能になる。PC版Steamで火がついたクロスプラットフォーム展開の実績がある同ジャンルタイトルは存在するため、この展開は現実的な可能性だ。

Climber Animalsが属する「低価格・高共有性インディー」という市場の話

Climber Animalsの成功パターンを整理すると、ここ数年のSteamで起きているトレンドの典型例と見ることができる。
「低価格・シンプルなゲームデザイン・SNS映え」という3要素の組み合わせが、ストリーマー経由での爆発的な拡散を引き起こす——このパターンはLethal Company(980円)、R.E.P.O.(約1500円)、そしてClimber Animals(470円)と繰り返されている。
ただしClimber Animalsが特異なのは、この爆発が日本や欧米ではなく中国を起点にしたことだ。中国語圏のストリーマーエコシステムは、日本や欧米のTwitch・YouTube文化とは別の独自の動線を持つ。Douyinでのバズりは直接Steamの中国語圏購買層に繋がり、さらにSteamグローバルチャートへの影響を通じて他地域にも波及する。
これはインディー開発者にとって「どの言語・地域のプレイヤーがゲームを発見するかは予測できない」という現代的な課題と機会を同時に示している。
55%セールが示すゲームのフェーズ
Steamのセール情報を見ると、Climber Animalsは55%オフのセールが行われている。元値が470円で55%引きになると、210円程度になる計算だ。
これは「コンテンツ自体への需要が一巡した後の普及フェーズ」のサインとも読める。バズりの最盛期を過ぎたゲームが、セールを通じて「知らなかった人たち」に届けられるフェーズだ。
210円という価格帯まで下がると、「試し買い」のハードルはほぼゼロになる。「もらったSteamクレジットで適当に試すか」という動機でも購入できる価格だ。こうしてカジュアル層への浸透が進み、継続的なレビューの積み上げに繋がっていく。
470円→55%オフ→210円前後というセール展開は、Climber Animalsが「長く生き続けるゲーム」として設計されていることの表れでもある。
「このゲームのここが好き」——プレイして感じたこと
数字やシステムの話だけでは伝わらない部分も正直に書いておく。
友達と一緒にClimber Animalsを初めて起動したとき、最初の10分間で3回落ちた。毎回「え、なんで?」と思いながらスタート地点に戻される。4回目で「あの回転するやつ、ちょっとだけ待てばいい」と気づく。5回目でそのタイミングを掴んで越える。この「試行→気づき→達成」のサイクルが早くて気持ちいい。
ひとりで遊んでいたらここで「そういうゲームか、分かった」で終わったかもしれない。でも隣に友達がいると「お前さっきどうやって越えた?」という会話が生まれる。そこで「ちょっと待ってからジャンプする」という情報が共有されて、全員で攻略するプロセスが始まる。
このゲームは、ゲームに詳しくない人でも参加できる。難しさの質が「複雑な操作を覚える」ではなく「タイミングを体で覚える」ものだから、ゲームが得意ではない友達も「もう1回!」と言い続けられる。普段ゲームをあまりしない人も引き込める間口の広さが、このゲームの隠れた長所だと思う。
「ゲームしない彼女がハマって3時間一緒にやり続けた。こんなことは初めて」
引用元:Steamレビュー
何度でも「ファースト体験」が生まれる設計
このゲームに「初回プレイ特有の体験」というものは存在しない。仮に自分がコースを完全に頭に入れていたとしても、新しい友達を連れてきた瞬間にすべてがリセットされる。
「この障害物、ここが危ない」「この角を曲がったあとのタイミング」といった知識は、自分が教える側に回った瞬間に新しい楽しさに変わる。教えながら自分も一緒に落ちる。あるいは「大丈夫って言ったじゃないか!」と笑われる。
Co-opゲームの多くは「全員が同じ知識レベルにある方が楽しい」という設計になっているが、Climber Animalsは「経験差があっても面白い」設計になっている。知っている人間が先に行き過ぎず、知らない人間のリアクションを一緒に楽しめる構造だ。
GTPOやDEVOURのようなコープホラーでは、初回プレイのビクビク感はコースが分かってしまうと薄れる。Climber Animalsはリセットシステムによってむしろ「新しい友達が来る度に新鮮」という循環が生まれる。
「失敗しても責めにくい」設計の巧みさ
Climber Animalsで誰かが落ちたとき、その人を責める人はほとんどいない。なぜかと考えると、「自分も同じように落ちているから」という前提があるからだ。
全員が平等に失敗するゲームでは、失敗は批判の対象ではなく共有のネタになる。「お前はまたそこで落ちたのか」という笑いは、「あいつのせいで負けた」という不満にはならない。
オンラインマルチプレイでは、見知らぬ人と組むと「チームの重荷」「足を引っ張る人間」という摩擦が生まれやすい。Climber Animalsは友達同士の閉じたセッションを前提にしているため、この種の不快な競争心が生まれにくい。見知らぬ人とのランダムマッチングがないことが、体験の品質保持に貢献している。
「誰かのせいにならないし、誰かを責める気にもならない。みんなで等しく失敗するから面白い」
引用元:Steamレビュー
ネガティブな点も隠さずに書く
このゲームをすべての人に勧めることはできない。正直に言っておきたい点がいくつかある。
コンテンツの薄さ問題
470円という価格で1060メートルのコースが遊べる——というのは事実だが、このコースを一度クリアした後のリプレイ価値は人によって大きく異なる。「もっとコースが欲しい」「ステージのバリエーションが少ない」という声は無視できない。
2024年3月のアップデートで300メートル延長された実績はあるが、その後の大きなコンテンツ追加については2026年4月時点での情報は限られている。開発チームがこの先どれだけ継続的にコンテンツを投入するかが、長期評価の鍵を握る。
「クリアした後に遊べるものがない。コースが2〜3本あればずっと遊んでた」
引用元:Steamレビュー
ソロプレイの体験格差
ソロで起動してプレイした場合、マルチプレイ時とは体験の質が著しく異なる。「落ちたら笑いに変える仲間」がいない状態での純粋な挫折体験は、Getting Over Itのような「孤独な挑戦」の哲学が薄い分、中途半端に感じることがある。
ソロでのプレイを前提として買うのであれば、期待値の調整が必要だ。
「1人でやると普通に辛いだけだった。友達がいる人向けのゲームです」
引用元:Steamレビュー
接続安定性の波
最大8人同時接続のオンラインマルチプレイは、ゲームの賑やかさが高いサーバー負荷時には接続が不安定になることもある。中国でバズった時期のSteamコミュニティには、ラグや切断に関する報告も散見された。開発チームが対応に動いていたが、人数が多いほど通信の安定性は重要な課題になる。
「ゲームバランス」への批判
一部のレビューでは「ゲームバランスが荒い」という指摘もある。コースによって難易度のバラつきが大きく、「ここはすごく難しいのに次は簡単すぎる」という感覚が生まれやすい。プレイヤーが「学習して越える」というゲームデザインの前提で見ればこれは正しい設計だが、「適切な難易度曲線」を求めるプレイヤーには引っかかる部分になる。
こうした批判が「やや好評(75%)」という評価に反映されている。完璧なゲームではないが、470円の価格を踏まえると十分に楽しめるという総評が、このスコアに収束している。
まとめ——470円のゲームが教えてくれたこと
Climber Animals: Togetherは、ゲームデザインとしては非常にシンプルだ。「落ちたら最初から、上を目指すだけ」。複雑なストーリーもなく、育成要素もなく、キャラクタービルドもない。
でもこのシンプルさが、「友達と一緒に笑える」という体験を純粋に追求したことの証でもある。余計なものをすべて取り除いて、「転んで笑う」というコアだけを残した。その潔さが、中国での2百万本という数字に繋がった。
価格が470円だから「まあ失敗しても」という気持ちで試せる。試したら友達を誘いたくなる。友達を誘ったら全員でわちゃわちゃして時間を忘れる。このループが非常に自然に設計されている。
「ゲームで友達と笑いたい」というシンプルな動機に対して、このゲームは誠実に応えている。それがすべてだと思う。
こんな使い方をおすすめしたい
- ゲームに詳しくない友達や家族と遊ぶ「入口ゲーム」として
- オフ会・グループ通話のお供として
- 配信・実況のワンセッションとして
- Getting Over Itをやった仲間との「あの体験のマルチプレイ版」として
- 他のゲームの合間のちょっとした息抜きセッションとして
今後の展開に期待すること
2百万本という成功をどう活かすか、開発チームへの期待もあわせて書いておく。
一番期待したいのはコース数の拡充だ。現在の1060メートルコースが主要なコンテンツだが、まったく異なるテーマや障害物を持つ新コースが追加されれば、リプレイ価値が大幅に上がる。砂漠、水中、宇宙、といった舞台設定の違いだけでプレイ感は変わる。
もうひとつはカスタムコースやエディター機能だ。もしプレイヤーが独自のコースを作れるようになれば、コミュニティが自発的にコンテンツを生み出し始める。Fall GuysのShow Editorのように、クリエイター文化との融合がゲームの寿命を大幅に延ばす可能性がある。
現時点では公式発表があるわけではないが、2百万本を達成した実績のある開発チームが次のステップをどう描くのか——プレイヤーとして注目し続けたい。
「笑いが生まれるゲーム」に共通する設計哲学
少し視野を広げると、「笑いが生まれるCo-opゲーム」というカテゴリには共通した設計上の特徴がある。
ひとつは「誰かの失敗がゲームを前進させる」こと。失敗が単純なゲームオーバーに終わらず、次の展開や笑いに繋がる設計になっている。Climber Animalsでは「落ちた仲間を見て笑う」という反応が、次の挑戦への動機になる。
もうひとつは「偶発性の高さ」だ。プレイヤーが完全にコントロールできないことが常に起きていて、予測できない展開が生まれやすい環境。物理演算による動きのランダム性は、このための重要な要素だ。
そして「結果の可視性」。何が起きているかが画面上で分かりやすく表示されることで、プレイヤーだけでなく観戦者にも楽しみが生まれる。Climber Animalsは動物キャラクターが吹き飛ぶビジュアルで、この視認性が高い。
GTPOやDEVOURのようなCo-opホラーも同じ「笑いが生まれるCo-op」の系譜に属しているが、アプローチが違う。ホラー×Co-opは「恐怖から笑いが生まれる」。Climber Animals×Co-opは「理不尽な障害物から笑いが生まれる」。どちらも友達と笑える時間を提供しているが、そこへの到達ルートが異なる。
この「笑いの設計」への関心を持った人には、Cry of Fearもおすすめしたい。ホラーサバイバルにCo-op要素がある作品で、笑いと恐怖が同居する体験を提供している。

「ゲームが好きな人と、あまりゲームをしない人が同じ画面を見て一緒に笑える」ゲームは、実はあまり多くない。470円でそれが手に入るなら、試してみる価値は十分にある。
Climber Animalsが示したのは「シンプルさには力がある」ということだ。複雑なシステムも長大なストーリーも、圧倒的な映像技術もなくていい。友達と笑える瞬間をどれだけ密度よく生み出せるか、それだけを追求した結果として200万本という数字が生まれた。
このゲームが好きな人が次に求める体験は、「仲間との笑えるCo-op時間」というキーワードで選べる。DEVOURやGTFOのような緊張感のあるCo-opホラーに進むもよし、Don’t Starve Togetherのような長期サバイバル生活を一緒に楽しむもよし。Climber Animalsで「友達とゲームをする楽しさ」を再発見した人が次のステップに踏み出すための起点として、このゲームはよく機能する。
仲間がいるなら、買ってみてほしい。落ちて笑って、また挑戦するだけでいい。それだけで十分楽しい時間になる。
トルコのスタジオが作った470円のゲームが、中国のストリーマーを経由して世界に届いたこのストーリーは、現代のインディーゲームの可能性を体現している。ゲームの力は今も、小さなスタジオから生まれることができる。
同接477人という現在の数字を見て「もう終わったゲーム」と思う人もいるかもしれない。でも毎日500人近いプレイヤーが友達と笑い合っている場所として、このゲームは今日も機能している。発売から2年が経っても、「今日誰かと起動したゲーム」であり続けているということ——それがこのゲームの本当の評価軸だと思う。
「友達と一緒に笑いながら遊ぶゲーム」という切り口が刺さった人には、Don’t Starve Togetherもおすすめしたい。2人〜6人で荒野を生き延びるサバイバルで、失敗を笑い合える体験という点で共通する要素がある。Climber Animalsで「友達とゲームをする楽しさ」の扉を開いた人が、次のステップとして探索してみてほしいタイトルだ。

Climber Animals: Together
| 価格 | ¥470 |
|---|---|
| 開発 | Devotion Interactive |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows / Mac |
| プレイ形式 | シングル / マルチ |

