カニが銃を持って島を駆け回る——それだけで1時間が消えた

正直、最初は完全にネタゲーだと思っていた。「Crab Rave」という2018年のインターネットミームで有名な曲をそのまま題材にして、カニが銃を持って戦うゲームを作りましたという話を聞いたとき、「面白いギャグだな」くらいにしか受け取っていなかった。
ところが起動してみたら、30分後も60分後も画面から目が離せなくなっていた。二段ジャンプとダッシュを組み合わせてエネミーの弾を飛び越え、空中に浮いたまま連射して、着地の瞬間に次の島へのドアが開く。ドロップした武器モッドをパズルのように組み合わせて「この構成、完全にぶっ壊れてる」と気づいた瞬間のあの感覚——それがずっと続く。
2023年4月1日、エイプリルフールに早期アクセスを開始したCrab Champions(クラブチャンピオンズ)。開発者は一人——アイルランド出身の音楽プロデューサー兼ゲームデベロッパー、Noisestorm(本名:Eoin O’Broin)。Steamのユーザーレビューは2万5,000件以上で評価は「圧倒的に好評(98%)」を維持し続けている。
同接数は現在約523人と控えめに見えるかもしれないが、これは過去最高8,230人を記録したゲームの今の数字だ。2025年以降も定期的にアップデートが行われ、直近30日で同接数が17.7%増加しているという、着実に息の長い運営を続けている作品でもある。
このゲームが「ネタゲー」で終わらなかった理由を、できる限り具体的に書いていく。
「Crab Champions」公式トレーラー
こんな人に読んでほしい
全員に向けた記事を書こうとすると、誰にも刺さらなくなる。だから正直に書いておく。
Crab Championsが刺さりやすい人
まず、フレンドと気軽にCo-opを楽しみたい人。Crab Championsは最大4人のオンラインCo-opに対応していて、1ランが20〜40分で完結する設計になっている。「今日1時間だけ遊ぼう」という約束が守りやすいゲームだ。
次に、ローグライト系が好きで「ビルド構築の快感」を求めている人。ランごとにドロップするパーク(108種類)・武器モッド(89種類)・アビリティモッド(44種類)の組み合わせが変わり、「今回のビルドはどれだ」という試行錯誤が毎回新鮮に感じられる。
そして、「見た目が笑えるのに中身は本格的なゲーム」が好きな人。カニが銃を構えて島を走り回るビジュアルと、ちゃんと計算された移動システム・ビルドシナジーが同居している珍しさがこのゲームの核心だ。
合わないかもしれない人も正直に書く
ストーリーを重視する人には向かない。Crab Championsにはほぼストーリーが存在しない。「カニが島を渡り歩いて敵を倒す」——それだけだ。世界観の深掘りや物語への期待は最初から持たないほうがいい。
また、ソロメインで「深くやり込みたい」という人は少し注意が必要だ。Co-opでの楽しさがゲームの核になっているため、ソロプレイだとパーク構築の自由度は高いものの、協力ならではの盛り上がりはない。
そして「ループ後の難易度バランス」に不満を感じる人も出てくる。これは後ほど詳しく触れる。
価格帯と遊べる時間の費用対効果
Crab Championsは9.99ドル(日本円で約1,300〜1,500円前後。セール時はさらに安くなる)という価格帯だ。この金額に見合うかどうかを判断するひとつの基準として、「1ランが20〜40分で完結する設計」という点がある。
つまり、1時間のプレイで2〜3ランは回せる計算だ。ローグライトゲームの性質上、ランのたびにビルドが変わるため、同じ時間でも毎回異なる体験ができる。10時間プレイすれば20〜30の異なるランを体験することになり、「同じことの繰り返し」という感覚になりにくい。
Steamの返金基準(2時間以内)の観点からも、まず2時間で1〜4ランほど試してみて、楽しければそのままプレイを続けるという判断がしやすい価格帯だ。
また、友人グループへの布教コストとして考えても、4人で遊ぶとしても全員が9.99ドルを払えばいい。1人あたりの費用としては映画1本分以下で、何時間も一緒に楽しめる可能性がある。
Crab Championsとはどんなゲームか

Crab Championsを一言で表すなら、「カニを操作して熱帯の孤島から火山まで、ランダム生成された島々を渡り歩くローグライトTPSシューター」だ。
プレイヤーはカニのキャラクターを操作し、1回のランが4つのバイオームにまたがる全島踏破を目指す構成になっている。各バイオームには10の島が含まれ、それぞれの島でウェーブ形式の敵を倒してクリアすると次の島へ進む。バイオームの終わりにはエリートボスが待ち構えていて、これを倒してはじめて次のバイオームへ進める。
ゲームの基本サイクルはシンプルだ。島に着く → 敵のウェーブを全滅させる → チェストやトーテムからパーク・武器モッドを入手 → 次の島へ。これを繰り返しながらキャラクターを強化していく。
ゲームの根幹を支えるビルド構築
Crab Championsの面白さの核心は「ビルド構築」にある。ランを通じて入手できるアップグレードは5種類に分かれている。
まず武器モッド(Weapon Mods)。装備している武器の性能を変化させるもので、89種類存在する。例えば「弾丸が貫通するようになる」「リロード時に爆発が発生する」といった変化がある。武器モッドは同じものを複数入手するとスタックして効果が強化されるため、狙ったモッドを重ね引きする喜びがある。
次にアビリティモッド(Ability Mods)。44種類のうち1つを選んで装備する形式で、グレネード、エレクトログローブ、タレットの召喚といった固有アクションに影響する。
パーク(Perks)は108種類。敵のデバフを強化する、幸運値を上げてレアドロップ率を高める、ヘルス回復量を変えるなど、ビルドの方向性を決定づける要素だ。チェスト、トーテム、ショップ(トニーの店)、敵のドロップなど複数の経路で入手できる。
リック(Relics)とメレーモッド(Melee Mods)も存在し、近接攻撃に特化したビルドや特殊効果を付与したビルドも組める。
これら5つのカテゴリが組み合わさって一つのビルドが完成する。「弾丸を炎属性にして、炎ダメージを強化するパークを積み重ねる」「近接攻撃主体でタレットを複数召喚する」といった方向性がランごとに変わるため、毎回違う戦略を試すことになる。
武器は19種類、選択肢は十分
初期段階の早期アクセスコンテンツで19種類の武器が用意されていた。ピストル、ショットガンから始まり、ミニガン、スナイパーライフル、アイスシードスタッフなど個性的な武器が揃っている。武器はランダムドロップとショップ購入の両方で入手できる。
武器ごとに感触が大きく異なり、同じビルド方針でも武器が変わると立ち回りが変わる。ショットガン主体のビルドで近距離特化にするか、スナイパーで遠距離から削るか——武器の選択がビルドの出発点になることも多い。
また、ランを通じて武器を乗り換えることもできる。序盤にピストルで始めて、ショップやドロップでより強力な武器が出たら乗り換えるという判断が常に求められる。「今持っている武器に合ったモッドを積み上げるか、より強い武器に乗り換えて積み上げをリセットするか」というトレードオフが生まれ、この選択自体がゲームの面白さの一部になっている。
エレメンタルアップデートで追加されたアイスシードスタッフは特に評判が高い。氷属性の遅延弾を放つ武器で、敵の動きを鈍らせる効果がある。対ボス戦で強力な選択肢の一つとして定着している。
移動の気持ちよさが全体を支えている
Crab Championsの戦闘で忘れがちな重要な要素が「移動」だ。二段ジャンプ、ダッシュ、スライドという基本的な移動オプションが、スキルフロアを低く保ちながらも高い上限を作り出している。
Noisestormはこの設計について「運動量の保持(momentum retainment)を組み込むことで、低いスキルフロアと高いシーリングを両立させた」と説明している。つまり、初心者でも動けるが、上手い人はその移動スキルをビルドに組み込んで更に強くなれる余地がある設計だ。
ダッシュをうまく使ってボスの攻撃をギリギリで避けながら反撃するあの感覚は、ビルドの強さとは別のところで気持ちいい。
スライドは特に応用の幅が広い。走りながらスライドすることで速度が乗り、密集した敵の間をすり抜けるような立ち回りが可能になる。さらにグラップリングフックが追加されてからは、崖から飛び降りてフックで勢いをつけながら着地するという上級者向けの移動テクニックも生まれた。
「カニなのになんでこんなに動きが滑らかなんだ」というSteamレビューが何件もある理由はここにある。見た目のシュールさと操作感の爽快さのギャップが、ゲームの独自の魅力を形成している。
チェストとクリスタルの収集が立ち回りの核になる
各島のクリア後、チェストが出現する。チェストには武器モッド、パーク、アビリティモッドがランダムに3択で提示され、プレイヤーは1つを選んで取得する。この選択がビルドを形成していく根幹だ。
また島中に散らばるクリスタルを集めることで、バイオーム内のトニーのショップでアイテムが購入できる。クリスタルはすべての島で一定数入手できるが、特定のトーテム(願い事の石)を解いたり、岩を壊したりすることで追加入手できる場合もある。
「今回の島でクリスタルをどこまで集められるか」という収集の徹底度がショップでの選択肢の幅に直結するため、戦闘だけでなく収集の効率化も意識するようになる。このあたりのゲームプレイ密度が、単純なシューターではなくローグライトとして機能している理由の一つだ。
バイオームとゲームモードの全貌
4つのバイオームと特色のある島々
Crab Championsのサバイバルモードは4つのバイオームで構成されている。トロピカル(熱帯)、アークティック(極地)、デザート(砂漠)、そしてボルカノ(火山)という流れだ。各バイオームに10の島が含まれ、計40島を渡り歩くのが一連のランとなる。
各バイオームには固有の敵タイプと環境ギミックがあり、進むにつれて難易度が上がっていく。例えばトロピカルバイオームではカニ系の敵が主体だが、デザートやボルカノに進むとアリやスカルといった異なる系統の敵が現れる。エレメンタルアップデート以降は属性攻撃を持つ敵も増え、バイオームごとの立ち回りの違いが一層明確になった。
バイオームの終わりにはエリートボスが待ち、これを倒して初めて次のバイオームへ進める。ボスは通常の敵と比べて別物の強さを持ち、ビルドが完成していないまま挑むと呆気なく倒される。
島の構造はランダム生成だが、各島にはバイオームのテーマに沿ったビジュアルが反映されている。トロピカルバイオームでは南国風の岩礁や椰子の木が並び、アークティックは雪と氷の平原、デザートは砂丘と岩壁、ボルカノは溶岩流と黒い岩盤という具合だ。同じサバイバルモードを繰り返しても「今回はどんな地形か」という期待感がある。
また一部の島には特殊なイベントが発生することがある。通常のウェーブ撃破だけでなく、特定の条件を満たすと追加ドロップが得られる仕掛けが隠れていることもある。これが「島の隅まで探索したくなる」動機になっている。
ショップのトニーという存在感
各バイオームにはトニー(Tony the Shopkeeper)という巨大なカニが営むショップが配置されている。クリスタルという専用通貨を使って武器、パーク、モッドを購入でき、不要なパークを売り戻してクリスタルに換えることもできる。
ただしトニーを攻撃すると話が変わる。攻撃するとトニーはボス形態に変身して反撃してくる。圧倒的な強さを持つ敵として立ちはだかり、倒せば大量の報酬を得られる——こんな設計をした開発者のユーモアセンスが随所に感じられる。
トニーのショップが反映するバイオームのテーマも細かい。バイオームごとにトニーの外見や店舗の雰囲気が変わり、アークティックバイオームでは冬仕様のトニーが登場する。こういう細部へのこだわりが、プレイ中のクスリと笑える瞬間を生み出している。
不要なパークを売り戻せるシステムは、Crab Championsの他のローグライトゲームにはない特徴的なデザインだ。「序盤に取ったパークがビルドの方向性と合わなくなった」という状況でも、売り戻してクリスタルに換え、より欲しいアイテムをショップで買い直すという柔軟な対応が取れる。これが「詰み」の状況を減らすことに貢献していて、ストレスの少ないゲームプレイにつながっている。
サバイバル以外のゲームモード
Crab Championsにはサバイバル以外にも複数のゲームモードが存在する。
レーシングモードはスピードラン特化のプラットフォーマーで、リーダーボードとデイリーシードが用意されている。ゲームの移動システムを純粋に活かしたモードで、どれだけ速く島を渡れるかを競う。
デュエルモードは1v1から4v4まで対応したPvP形式。ランダムで武器が割り当てられ、プリメイドマップで戦う。ただし開発者自身が「プレイヤー参加がほぼゼロだった」として一時的に削除している経緯があり、バランス調整と再設計が続いている。
また、「ディフェンスレベル」と呼ばれる60秒間拠点を防衛するタイプのステージも追加されており、定期的な新コンテンツ追加でゲームの幅が広がっている。
ループシステムという無限の試練
4つのバイオームを完走してカニアイランド(Crab Island)に到達してもゲームは終わらない。その後、同じバイオームをループして無限に挑戦を続けられる設計になっている。ループするたびに敵が強化され、難易度が段階的に上がっていく。
「どこまでループできるか」という自己ベスト更新の楽しみ方もあれば、「今回のビルドで初めてカニアイランドまで行けた」という達成感もある。プレイスタイルに合わせて目標設定を変えられるのが長く遊べる理由の一つだ。
ループ後はドロップするアイテムの質も変化する。ループを重ねるほどより高レアリティのパークが出やすくなるという仕組みもあり、単純に「敵が強くなるだけ」ではなく「強い装備も手に入りやすくなる」という正のフィードバックが設計されている。ただしこのバランスに賛否があることは後述する。
Crab Championsのコミュニティでは「何ループまでいけたか」という話題がよく出る。2ループ、3ループ、それ以上——ビルドの完成度と操作スキルの両方が求められる高ループへの挑戦は、やり込みプレイヤーの共通の目標になっている。
なぜこのゲームがここまで支持されているのか

ミームゲーから本物のゲームへの変身
Crab Championsが「圧倒的に好評(98%)」という評価を獲得した最大の理由は、「ネタゲーのふりをした本格ゲーム」という期待値の裏切り方が完璧だったことだと思う。
プレイヤーの多くが「どうせネタゲーでしょ」という低い期待値で起動して、実際のゲームプレイクオリティに驚かされた。Steamコミュニティでは「リリース直後に10分だけ遊ぼうと思って3時間経ってた」という種類のコメントが多く見られる。
「Crab Raveのミームゲーかと思ったら、ガチのローグライクシューターで衝撃を受けた。ビルドの幅が思ったより全然広くて気がついたら4時間プレイしてた。」
引用元:Steamレビュー(日本語)
この「期待値を大幅に超えてくる」体験が口コミで広がり、4月1日のエイプリルフールというリリース日のおかげで「最初は冗談だと思った」という語り口が生まれやすくなった。
一人の開発者がここまで作った
Noisestormがどれだけ特異な存在かを理解するには、背景を知る必要がある。
2018年、アイルランド人音楽プロデューサーのEoin O’BroinはMonstercatのエイプリルフール企画として「Crab Rave」という曲のミュージックビデオをリリースした。ビデオはUnreal Engine 4で制作した3Dアニメーションで、カニたちが島で踊るという内容だった。このビデオがインターネットミームとして爆発的に広がり、YouTubeで再生数が跳ね上がった。
Epicのグラントプログラムに評価され、Unreal Engine 4の「最もクリエイティブな使い方」として5万ドルの助成金を受け取ったO’Broinは、その後2018年末からゲーム開発に着手した。音楽プロデューサーとしての本業を持ちながら、一人でUnreal Engine 4を使ってゲームを作り続け、約5年の開発期間を経て2023年4月1日に早期アクセスを開始した。
“Noisestorm started development on Crab Champions at the end of 2018 using Unreal Engine 4, following the viral success of Crab Rave.”
引用元:Wikipedia – Crab Champions
「一人開発でこのクオリティ」という事実がコミュニティに与えたインパクトは大きく、プレイヤーが「この開発者を応援したい」という感情を持ちやすい状況を作り出した。これはDeep Rock GalacticのGhost Ship Gamesや、Vampire SurvivorsのPoncle(当初ほぼ一人開発)が受けたのと同種の支持だ。
ローグライクCo-opシューターの中でも一人開発でここまで仕上げた作品は珍しく、その点だけでも語り継がれる存在感がある。

Risk of Rain 2に似て非なる独自性
Crab Championsを語るとき、必ずといっていいほど比較に出るのがRisk of Rain 2だ。どちらもランダム生成要素を持つローグライトTPSであり、敵のウェーブを倒しながらアイテムを積み重ねてキャラクターを強化していく構造が似ている。
ただし両者には明確な違いがある。Risk of Rain 2はクラス(サバイバー)によってスキルが固定されており、そのクラスの特性を活かすビルドを組む設計だ。一方Crab Championsにはクラス概念がなく、武器の選択とパーク・モッドの組み合わせだけでビルドが決まる。この違いにより、Crab Championsのほうが「今回のランで何が出るかによって方向性が変わる」という意味での純粋なローグライト性が高い。
価格面では、Crab Championsが9.99ドルという低価格なのに対し、Risk of Rain 2は24.99ドルという違いもある。「まずCrab Championsで試してみて、ジャンルを気に入ったらRisk of Rain 2に移る」という入門コースとして使っているプレイヤーも少なくない。
ただし批判的な声も存在する。Steamのディスカッションでは「Risk of Rain 2と比べるとリプレイ性とコンテンツ量で劣る」「敵の弾が避けにくく、ヒットしたときの連鎖ダメージが理不尽に感じる場面がある」という意見も見られる。これらは正直な評価として受け止めておきたい。
定期的なアップデートが続いている
2023年4月の早期アクセス開始から2026年現在まで、Crab Championsは継続的にアップデートを受け続けている。これが長期的な同接維持につながっている一因だ。
2024年9月のエレメンタルアップデートでは、アイスシードスタッフという新武器、エレクトログローブというアビリティ、ピッケルという新近接武器が追加された。属性ダメージシステム全体が見直され、ボスへのデバフスタック削減率が50%から25%に変更されて属性ビルドの有効性が向上した。また敵が環境ハザード(爆発樽、岩など)から受けるダメージが200%増加し、地形を活用した戦術の幅が広がった。
バラエティアップデートではグレネード、グラップリングフック、アーケードやホールドアウトといったミニゲームが追加された。デフェンスレベル(60秒防衛ミッション)という新タイプのステージも実装されている。
アンビルアップデートでは装備の強化・改造に関連するシステムが見直され、より深いビルド管理ができるようになった。特定の強化経路を開放するための素材収集要素も加わり、一度クリアしたランの後も「次は違うルートを試そう」という継続動機が生まれた。
開発者が一人であるにもかかわらず、ここまで継続的なコンテンツ追加が続いているのは驚きだ。「次のアップデートで何が来るか」という期待感がコミュニティを維持する原動力になっている。
O’BroinはSteamアナウンスや開発日記を通じてプレイヤーとの対話を続けており、バグ修正や調整への反応が比較的速い。1人開発の制約がありながらも「開発者がコミュニティの声を聞いている」という安心感が、プレイヤーの長期的な支持につながっている面がある。
Co-opで遊ぶCrab Championsの楽しみ方
最大4人まで、ロビーの立て方
Crab Championsは最大4人のオンラインCo-opに対応している。フレンドとのプライベートセッションはもちろん、ランダムマッチングで知らない人と組むことも可能だ。
重要な点として、Co-op中は各プレイヤーが個別にチェストとルートドロップを受け取る設計になっている。つまり「誰かがアイテムを先に取ってしまう」という競争が生まれにくく、全員が自分のビルドを独立して育てられる。これがCo-opのストレスを大幅に軽減していて、「初対面の人とでも気持ちよく遊べる」という評価につながっている。
マルチプレイのロビー作成はシンプルで、ゲーム内からフレンドを招待するか、公開ロビーを立てて参加者を待つかのどちらかだ。ランが始まった後でも、途中参加に対応している場合があり、「フレンドが後から合流してくれた」という体験もしやすい設計になっている。
Co-op時の難易度はプレイヤー数に応じて調整される。2人でプレイする場合と4人でプレイする場合では、出現する敵の数や体力が変化するため、「2人だから簡単すぎる」「4人だから多人数でのカオスを楽しめる」という違いがある。
「フレンドと4人でやったとき、それぞれ全然違うビルドになってて、お互いの構成を見せ合いながら最終ボスに挑むのが楽しすぎた。終わった後も『次は何のビルド試す?』って話しながら次のランに入った。」
引用元:Steamレビュー(日本語)
Co-opならではの場面として、誰かが先に倒れたときの立て直しがある。仲間が倒れてもすぐゲームオーバーにはならず、残ったプレイヤーが戦い続けることで蘇生のチャンスが生まれる仕組みがある(正確な仕様はアップデートで変更される可能性がある)。ここで起きる「一人になって必死に生き残る」展開が盛り上がりやすく、Co-op特有の記憶に残る瞬間を生み出す。
ビルドを語り合いながら遊ぶ
Crab Championsのビルド構築は個人戦になりがちだが、Co-opではこれが会話のネタになる。「俺、今回ファイアー軸で組んでる」「じゃあ炎デバフ強化のパーク欲しいな」「こっちにあるよ」——ランを通じてこういう会話が自然と生まれる。
全員がキャラクターを自由に育てられるので「誰かが強くて誰かが弱い」という格差も生まれにくい。ビルドの方向性を合わせてシナジーを意識したCo-opを目指すこともできるし、各自が好き勝手に突き進んで最後はボスに全滅させられて笑い合うこともできる。どちらも楽しい。
Co-opプレイ時の定番の盛り上がりとして「誰かが強くなりすぎて無双し始める」展開がある。特定のビルドが完成した瞬間から、その人だけが突出して活躍する状況が生まれ、「うちのフレンド今回また壊れたビルド作ってる」という状況は笑える体験になりやすい。ゲームが「個人の強さを認める」設計になっているのが大きい。
また、仲間が倒れた状況でのサポートプレイも面白い。倒れた仲間を蘇生しながら残りの敵を捌く緊迫した場面は、協力ゲームならではの記憶に残る瞬間だ。「あのとき3人倒れてた最後の1人が粘り勝ちした」という話がCoopゲームの語り草になりやすい。
「4人で毎週集まってCrab Championsをやるようになって半年経つ。クリアするたびに次のランに自然と入る。気づいたら深夜2時になってる。」
引用元:Steamレビュー(日本語)
GTFOのような緊張感の高い協力ゲームと比べると、Crab Championsのハードルはずっと低い。GTFOはコミュニケーションと戦術共有が必須だが、Crab Championsは「来た、倒した、ドロップ取った」だけでも普通に楽しめる。
DEVOURのようなホラーCo-opとも異なり、Crab Championsは常にポップで明るいトーンを保っている。プレッシャーなく遊べるCo-op枠として使いやすい。

Crab Championsのネガティブな面も正直に

ループ後の難易度バランスに賛否がある
Crab Championsに対する一番多い批判がループ後の難易度バランスについてだ。ループを重ねるとボスが指数関数的に強くなる一方、通常ウェーブがループ前と大差ない難易度のままで、ゲームの中で「極端に難しい場面」と「極端に簡単な場面」の落差が大きくなる。
Steamのディスカッションでは「3ループ目あたりで急に理不尽な難易度になって楽しくなくなる」という声がある。ビルドが完成した状態でもボスの攻撃一撃でHPを大きく削られる場面があり、「ちゃんと強化しているのになぜ?」と感じるプレイヤーが出てくる。
“Boss scaling becomes exponentially harder in a way upgrades can’t keep up with, while regular waves stay too easy. After the 3rd loop the game stops being fun.”
引用元:Steam Communityレビュー(英語)
ただし、これは「ループエンドコンテンツ」に挑まず、1〜2ループの範囲でカニアイランド到達を目標にしているプレイヤーにはあまり関係ない話でもある。ゲームとどこで折り合いをつけるか、自分なりのゴール設定が必要になる。
被弾時の連鎖ダメージ問題
もう一つの批判点が「被弾後の連鎖ダメージ」だ。一発被弾するとノックバックや移動制限が発生し、そこに続けて複数の攻撃を受けることになる。Risk of Rain 2などの同系統ゲームと比べて「敵の弾が避けにくく、当たり始めると止まらない」という声がある。
特に近接系の敵が密集する場面では、移動の自由を奪われて集中砲火を受けるケースがあり、ビルドの強さや操作技術に関係なくあっさり倒される経験をしたプレイヤーが少なくない。
Steamのディスカッションでは「Hornet XL Totemという特定の敵が不当に強く、何ランかに一度完全に詰まされる」という声もある。エレメンタルアップデートでは近接系の敵の攻撃頻度が調整されたが、「まだ理不尽に感じる場面がある」という意見は完全には解消されていない。
ただしこれらの批判は「98%好評」という全体評価の中でも少数派であり、多くのプレイヤーは「多少の理不尽はローグライトの一部」として受け入れている。問題を感じるかどうかは、プレイヤーがローグライトゲームに何を求めているかによって変わる。
ビルドシナジーの奥行きは「見た目より浅い」という意見
108種類のパークと89種類の武器モッドという数字は十分に多く見えるが、実際にプレイを重ねると「結局強いパークの組み合わせが固定されてくる」という意見もある。ある日本語レビューでは「シナジー構築が深いように見えてじつは浅い」という評価がある。
これは「最強ビルドを求めて最適化を極めたい」タイプのプレイヤーには物足りなく感じる要素だ。一方で「毎回ランダムで何かが引けて楽しい」というカジュアルな楽しみ方で十分なプレイヤーには気にならない。
Slay the Spireのような深いシナジー設計を求めるなら、現時点では期待値を下げておいたほうがいいかもしれない。

Discordコミュニティとバランス議論
Crab Championsには公式Discordが存在し、プレイヤー間の交流とO’Broinへのフィードバックが行われている。ただしコミュニティの一部では「ネガティブな意見がモデレートされる」という批判もある。これはアクティブなコミュニティを持つゲームでしばしば起きる話で、「好意的な意見と批判的な意見のバランスをどう保つか」という運営課題だ。
現実的なところ、Crab Championsのバランス調整は早期アクセス段階であることを考えれば「継続的な改善が行われている途中」という状態だ。ループ後の難易度、特定の敵の調整、ビルドシナジーの多様化——これらはいずれも改善の余地がある課題として開発者も認識している。
正式リリースまでに解決されるかどうかは不明だが、早期アクセスゲームに対してどこまでの完成度を求めるか、プレイヤー側の判断軸が重要になる。
Crab Championsの開発史と「Crab Rave」という出発点
エイプリルフールのジョークが5年後のゲームになるまで
2018年4月1日、音楽レーベルMonstercatのYouTubeチャンネルに「Crab Rave」という曲のミュージックビデオが公開された。制作したのはアイルランド人の音楽プロデューサーNoisestorm(Eoin O’Broin)。エイプリルフール企画として作ったこのビデオは、熱帯の孤島でカニたちが踊るというシュールな内容で、Unreal Engine 4で制作された本格的な3Dアニメーションだった。
ビデオは予想を超えるペースでインターネットミームとして広がり、「何か嬉しいことが起きた直後にこの動画を貼る」という使われ方で世界中に拡散した。そしてこのミュージックビデオが、Epicからのグラント選考で「Unreal Engine 4の最もクリエイティブな使い方」として5万ドルの助成金を受け取ることになった。
O’Broinはこの経験からゲーム開発への可能性を感じ、2018年末からCrab Championsの開発を始めた。音楽プロデューサーとしての本業を維持しながら、個人開発でゲームを作り続けること約5年。2019年4月1日(ちょうど1周年のエイプリルフール)にゲームを発表し、2023年4月1日(Crab Raveリリースからちょうど5周年)に早期アクセスを開始した。
このタイムラインの一貫性——すべての節目がエイプリルフールになっている——はO’Broinの遊び心と意図的なブランディングの賜物だ。
早期アクセス開始から今日までの歩み
2023年4月1日の早期アクセス開始当初、ゲームは4つのバイオーム、19種類の武器、89種類の武器モッド、44種類のアビリティモッド、108種類のパーク、100以上のアチーブメント、そしてローカル・オンラインCo-opを備えていた。これだけのコンテンツ量を個人開発で用意できていたこと自体が驚きだった。
リリース直後のSteamでのユーザーレビューは圧倒的に好評でスタートし、AUTOMATONをはじめとした日本のゲームメディアにも「カニローグライクTPS、大好評スタートダッシュ」として取り上げられた。同接数は最高8,230人を記録している。
その後も定期的なアップデートが続き、バラエティアップデート、アンビルアップデート、エレメンタルアップデートといった大型アップデートを経て、ゲームの完成度と内容量は当初から大きく増している。
日本でのセールも実施されており、ゲームメディア「電ファミニコゲーマー」が報じた2024年3月のセールでは定価1,320円から990円に値引きされた記録がある。こうした定期的なセール実施がライトユーザー層への普及を促してきた。
2026年現在も早期アクセス段階にあるが、正式リリース時には価格が値上がりする予定とO’Broinは述べている。今が最も安く始められるタイミングでもある。
同ジャンルのゲームとの比較で見えるCrab Championsの立ち位置

Helldivers 2との違い
Co-opシューターという括りで比較されることが多いのがHelldivers 2だ。Helldivers 2は大規模なマップを4人チームで攻略する戦略的なCo-opで、ゲームの規模感と緊張感が全く異なる。
Helldivers 2は1ミッションが30分以上かかることも多く、チームワークと装備選択に事前の戦略が求められる。一方Crab Championsは「とりあえず動いて撃てば何とかなる」くらいのハードルの低さがある。「深く考えずに20分だけ遊びたい」という用途にはCrab Championsが向いていて、「本気のCo-op体験をじっくり味わいたい」ならHelldivers 2が向いている。
また価格帯も異なる。Helldivers 2は約4,000円(通常価格)と本格的なAAA価格帯なのに対し、Crab Championsは9.99ドルの低価格だ。「まずローグライトCo-opをカジュアルに試したい」という入門として、Crab Championsの敷居は低い。
Gunfire Reborn、Roborquestとの位置づけ
Crab Championsと最も近い設計思想を持つゲームとして、Gunfire Reborn(ローグライクFPS)やRoboquest(FPS ローグライト)がよく挙げられる。いずれも「ランダムビルド構築 × ウェーブ撃破」というコアループを持つ。
Gunfire Rebornは一人称視点でキャラクタークラス選択があり、Roborquestも同様にFPS視点でクラス制を採用している。Crab Championsはサードパーソン視点でクラスなしという点が異なり、「移動の視認性が高く、全体像を見ながら戦える」という特徴がある。
価格帯はCrab Championsが9.99ドルと最も低く、ジャンルの入門作として試しやすい位置づけだ。
DEVOUR、GTFOとは別路線
同じCo-opゲームでも、DEVOURやGTFOのようなホラー・緊張感重視の作品とCrab Championsは全く別路線だ。
DEVOURは4人協力でカルト儀式を阻止するホラーサバイバル、GTFOは極度の緊張感と戦術的な連携が求められるFPSだ。これらと比べてCrab Championsはカラフルで明るく、失敗してもすぐ次のランを始められる気軽さがある。
「Co-opゲームの中でどの温度感で遊びたいか」によって選択が変わる。恐怖と緊張を楽しみたいなら前者、笑いながら気軽に遊びたいなら後者という使い分けができる。

また、OverwatchやPlanetSide 2のようなチーム対戦ゲームとも全く異なる。Crab Championsはあくまでもローグライト寄りのPvEが主軸であり、対人戦で勝ちたいという動機のプレイヤーには向かない。


現在の状況と正式リリースに向けて
同接523人という数字をどう読むか
この記事の冒頭で触れた通り、Crab Championsの現在の同接数は約523人だ。2026年4月時点でのこの数字は、ピーク時8,230人と比べると落ち着いた状態に見える。
ただし文脈が重要だ。直近30日で17.7%の増加という上昇トレンドにある。これは大型アップデートの前後に起きやすい動きで、次のアップデートや正式リリースの告知があれば再び同接数が跳ね上がる可能性がある。
また、この規模の同接数は「過疎」とは言い切れない。ランダムマッチングで知らない人と組むには少ない印象を受けるかもしれないが、プライベートセッションのCo-opを主体にするなら関係ない話だ。フレンドと遊ぶ用途であれば、同接数の多寡よりもコンテンツ量とアップデート頻度のほうが重要になる。
早期アクセスの「未完成」部分
2026年4月現在、Crab Championsはまだ早期アクセス段階にある。これは「完成していない部分がある」という意味でもあり、バランス調整や新コンテンツが継続的に入ってくるという意味でもある。
O’Broinは正式リリース時に価格を値上げする予定を示唆している。現在の9.99ドルは「早期アクセス価格」であり、正式リリース後はより高い価格になる可能性が高い。ゲームに興味があるなら今のほうがコスト面では有利だ。
バランス面の課題として、前述のループ後の難易度問題は継続的な調整が続いている。エレメンタルアップデートでボスへのデバフ削減率変更やハザードダメージ倍率変更といった調整が行われたように、O’Broinはプレイヤーのフィードバックを継続的に拾って対応してきた。一人開発という制約の中でよく機能しているほうだと思う。
早期アクセスに対して「完成品と同等のクオリティを求める」スタンスのプレイヤーには向かないが、「開発途中のゲームに参加して、完成に向けての変化を楽しむ」スタンスのプレイヤーには今この時期に遊ぶ価値がある。正式リリース後に「そういえばあの頃からずっとやってた」と言えるゲームになる可能性は十分にある。
早期アクセスゲームに「長期的に付き合う」姿勢があるプレイヤーには、今この時期に参加することで得られる体験の価値が理解できると思う。
ソロ1人でも買う価値はあるか
「フレンドがいなくてもCrab Championsは楽しめるか」という質問をよく見る。答えはケースバイケースだ。
ビルド構築と探索の面白さはソロでも十分に体験できる。ランごとに変わるアイテムの組み合わせを試しながら少しずつ攻略を深めていく楽しみ方はソロでも成立する。ただし、Co-opで起きる「仲間と状況を共有して盛り上がる」体験はソロでは得られない。このゲームの「会話が生まれやすい設計」が一番輝くのはやはり複数人プレイ時だ。
9.99ドルという価格は「試してみる」ハードルとして高くない。ソロで試して気に入ったらフレンドを誘うという入り方が最もリスクが少ない。
「ソロでも十分楽しめるけど、フレンドと一緒にやった後でソロに戻ると物足りなさを感じる。友人を引き込む力があるゲーム。」
引用元:Steamレビュー(英語)
アチーブメントとやり込み要素
Crab Championsは早期アクセス開始時点で100以上のアチーブメントを用意していた。「特定の武器でボスを倒す」「ノーダメージでステージをクリア」「特定のビルド構成を完成させる」といった達成条件が並んでいる。
Steamのアチーブメント100%達成を目指すプレイヤー向けには、それぞれのアチーブメントが「また違う遊び方を試す動機」になっている。普段使わない武器を強制的に試すきっかけになり、「この武器、実は面白かった」という発見につながることもある。
やり込み層向けには、コスメティック要素としてスキン系のアンロックも存在する。プレイを重ねることで入手できるスキンはゲームプレイへの影響がなく、「カスタマイズ要素はあるが課金による優位性はない」という評判の良さにつながっている。この点はService as a Gameにありがちな「課金しないと不利」という批判を避けることに成功している。
Crab Championsをさらに楽しむためのヒント

序盤はビルドの方向性を決めることを優先する
Crab Championsの最大のつまずきポイントは「パークを手当たり次第に取ってビルドが散漫になること」だ。パークは108種類あるが、同じものを積み重ねると効果がスタックする設計になっている。これを活かすには、できるだけ早い段階でその周の「方向性」を決めて、関連するパークに絞って取得していくのが重要だ。
例えば「炎属性ビルドにする」と決めたら、炎ダメージ強化・デバフ延長・炎関連の武器モッドを優先して取り、他のパークは拒否するか最後の選択肢として残す。この一貫性が後半のパワースパイクを生む。
トニーのショップを有効活用する
クリスタルは道中で集まるが、使い道を間違えると中盤以降が苦しくなる。ショップで買うべきタイミングは「ビルドに必要なモッドやパークが並んでいるとき」だ。ショップには乱数の要素があるため、毎回同じ商品が並ぶわけではない。「今のビルドに刺さるものが出たときだけ買う」という選択眼がクリスタルを有効活用する基本になる。
また、ビルドの方向性と合わないパークは積極的にトニーに売り戻してクリスタルを稼ぐという発想も有効だ。要らないパークを手放すことで、後続のショップでより重要なものが買えるようになる。
移動スキルをビルドに組み込む
Crab Championsの戦闘で「倒れにくい」プレイヤーは、ビルドの強さよりも移動の活用が上手い場合が多い。ダッシュと二段ジャンプを使った敵弾の回避は、高難易度でも十分な意味を持つ。パークの中には「ダッシュ後に攻撃力が一時的に上がる」「空中にいる間ダメージ軽減」といった移動に関連したものもあり、移動とビルドを組み合わせた設計も存在する。
「ただ止まって撃ち続ける」スタイルは序盤こそ通用するが、ループ後の高難易度では厳しくなる。移動を攻撃と切り離さず、一体化させる感覚を意識しておくと後半も楽しめる。
レーシングモードでゲームの「動き」を覚える
Crab Championsのレーシングモードは移動システムを純粋に練習できるモードだ。ビルド要素がなく、純粋にどう動くかだけが問われる。タイムアタックやリーダーボードへの参加を通じて、ゲームの物理挙動や最速ルートを体で覚えられる。
サバイバルモードでいきなりビルドとアクションの両方を考えるのが難しいと感じる人は、まずレーシングモードで操作感を掴んでからサバイバルに戻るという使い方が有効だ。
MORDHAUのような純粋なスキルゲームで上達の喜びを求めるプレイヤーには、レーシングモードのタイム詰めが同種の満足感を与えてくれるかもしれない。

ビルドのシナジーを意識して「今回の方針」を決める
より具体的なビルド構築のヒントとして、属性を軸にした方針が初心者でも分かりやすい。エレメンタルアップデート以降、炎・毒・氷・電気という4つの属性ダメージシステムが整備されたため、「この属性に特化する」という一本の柱を作りやすくなった。
炎ビルドなら、炎属性の武器モッドをスタックしながら、敵の炎デバフ持続時間を延ばすパーク、炎ダメージ倍率を上げるパークを優先的に取得する。序盤から一貫した方針を持つことで、後半にパークが積み上がったときの爆発力が格段に上がる。
逆に「迷ったら何でも取る」スタイルだと、ランの後半でどの方向にも伸びきれないビルドになりやすい。Crab Championsを長く楽しむには「今回は何をやる?」と最初の数島で方針を決める習慣をつけることが、満足感の高いランにつながる。
インディー開発の文脈で見るCrab Championsの意味
Crab Championsのような小規模インディーが9.99ドルという低価格でここまでのクオリティを出せた背景には、Unreal Engine 4という強力なツールと、一人の人間が音楽・アニメーション・プログラミングを全て内製できるという特異な能力の組み合わせがある。
これは、Gray Zone Warfareのような大規模な本格的ミリタリーシューターや、PlanetSide 2のような大規模人数対戦ゲームとは全く異なる作り方だ。小さなチームや個人が独自の視点でゲームを作り続けられる環境が、今のSteamには確かに存在している。
Noisestormのケースが示す一つの事実は、「ミームから本物のゲームを作れる」ということだ。インターネットで生まれた笑いを出発点に、そこから5年間の開発を経て、本格的なゲームに育て上げた。これは才能と根気の話であると同時に、「好きなものを突き詰めることで生まれる力」の話でもある。
O’BroinはCrab Championsの開発中も音楽活動を続けており、ゲームのサウンドトラックも自身が手がけている。「音楽プロデューサーがゲームを作る」という前例のない形で成功を収めたことは、ゲーム開発の多様性という点でも意味がある。
インディーゲームに限らず、ローグライト、Co-op、シューターという要素の組み合わせは2020年代を通じて最も成功しやすいゲームジャンルの一つだ。Deep Rock Galactic、Hades 2、Slay the Spire 2といった作品も同じ潮流の中にある。Crab Championsはその中で「一人開発での9.99ドル」という価格と「圧倒的に好評(98%)」という評価を両立させた数少ない例だ。
まとめ——カニのゲームを侮ってはいけない
Crab Championsを「ネタゲー」として片付けてしまうのは簡単だ。だが実際には、一人の開発者が5年かけて作り上げた、ビルド構築の面白さと移動の気持ちよさを持つローグライトTPSシューターだ。
Steamの2万5,000件以上のレビューで98%が好評という数字は、偶然や話題性だけでは説明できない。プレイヤーが「楽しい」と感じた体験が素直に反映された結果だ。9.99ドルという価格で20〜40分のランが何度でも遊べる設計は、「ちょっとだけ遊ぶつもりが気づいたら2時間」になりやすいゲームだ。
ネガティブな点も正直に書いた。ループ後の難易度バランス、被弾時の連鎖ダメージ、ビルドシナジーの奥行きへの物足りなさ——これらは実在する課題で、全ての人に刺さるゲームではない。
ただ、「フレンドと気軽に楽しめるCo-opローグライトを探している」「ネタゲーに見えてちゃんと面白いゲームが好き」「Noisestormというアーティストが作ったゲームを体験したい」という人には間違いなく刺さる。
2026年現在も早期アクセスのままで、正式リリース後は価格が上がる可能性がある今が、最も低コストで試せるタイミングだ。「カニが銃を持って島を駆け回る」という説明を聞いて少しでも笑ったなら、それはこのゲームと相性がいいサインだと思う。
Blade and Sorceryのような「変わった視点から生まれた本格ゲーム」が好きな人にも、Crab Championsは刺さりやすいと思う。「主人公がカニ」というシュールな出発点から本物のゲームプレイが広がる体験は、Blade and Sorceryが「VRで近接戦闘を徹底的に再現する」という一点突破で高い評価を得た構造と近い。

「最初の30分で『これはしばらく続ける』と確信した。カニのくせに動きが滑らかすぎる。」
引用元:Steamレビュー(日本語)
最後に、これだけの規模と品質のゲームを一人で作り続けているNoisestormへの敬意を表しておきたい。音楽からゲームへ、エイプリルフールのジョークから本物のゲームへ——その変遷を体験するために、一度起動してみてほしい。
この記事を読んで興味を持った人は、まずSteamのCrab Championsページでトレイラーだけでも見てほしい。それだけでこのゲームが「ネタ」で終わっていないことが伝わるはずだ。
Crab Champions
| 価格 | ¥1,200 |
|---|---|
| 開発 | Noisestorm |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows |
| プレイ形式 | シングル / マルチ |

