「No More Room in Hell」無料で遊べるリアル志向Co-opゾンビFPS

目次

No More Room in Hell|無料で遊べるリアル志向Co-opゾンビFPS

No More Room in Hell FPS スクリーンショット1

暗い廊下の先に、何かがいる。懐中電灯の光がかすかに届く範囲で、うめき声が聞こえた。

手元にあるのは、拾った消防斧と、残弾3発のリボルバー。仲間は4人いたはずなのに、さっきの曲がり角で2人がやられた。生き残った2人の声が、近距離ボイスチャットでかすかに聞こえる。「右に行け」「いや左だ」。どっちが正しいかわからない。でも立ち止まっている余裕はない。背後から、足を引きずる音がじわじわ近づいてきている。

角を曲がった。目の前に5体。走るタイプじゃない。ゆっくり歩いてくるシャンブラーだ。斧で1体ずつ倒せばいける——そう思った瞬間、背後の足音が急に速くなった。振り返ると、ランナーが全力で突っ込んでくる。噛まれた。画面の端に血管のようなエフェクトが浮かんだ。感染した。

もう治療薬は持っていない。あと数分で死ぬ。死んだら自分もゾンビになって、生き残った仲間を襲い始める。

これがNo More Room in Hellだ。

2011年にHalf-Life 2のMODとしてリリースされ、2013年にSteam Greenlightを経てスタンドアローン化。開発者Matt “Maxx” Kazanを中心としたコミュニティチームが作り上げたこの無料ゾンビCo-opゲームは、Steamレビュー約6万4,000件で「好評(89%)」を維持している。PC Gamer誌の2011年Mod of the Year、ModDBのMultiplayer Mod of the Year 2011をダブル受賞。最盛期にはSteam同時接続数が1万人を超え、2026年4月現在も約526人が日々プレイを続けている。

タイトルの元ネタは、ジョージ・A・ロメロ監督の映画『ゾンビ(Dawn of the Dead)』に登場する台詞——「When there’s no more room in hell, the dead will walk the earth(地獄に空きがなくなったとき、死者は地上を歩く)」。この映画が描いた「じわじわと追い詰められる恐怖」を、マルチプレイFPSとして再現しようとしたのがNMRiHだ。

Left 4 Deadが「爽快に撃ちまくるゾンビアクション」だとしたら、NMRiHは「弾がない、仲間が見えない、噛まれたら終わり」というサバイバルホラーの緊張感をCo-opに持ち込んだゲーム。クロスヘアなし、HUD最小限、弾薬は極端に少ない。13年前のSource Engineで動くMOD出身の無料ゲームが、なぜ今もプレイされ続けているのか。

この記事では、No More Room in Hellの魅力、ゲームシステム、良い点もダメな点も全部まとめて書いていく。

「No More Room in Hell」公式トレーラー

こんな人に読んでほしい

  • 無料で本格的なゾンビCo-opゲームを探している
  • Left 4 Deadは好きだけど、もっとリアルで緊張感のあるゾンビゲームがほしい
  • 弾薬管理・近接戦闘・感染リスクといったサバイバル要素を重視するプレイヤー
  • Source EngineのMOD文化やコミュニティ主導のゲーム開発に興味がある
  • 友達と8人までの大人数Co-opを楽しみたい
  • ロメロ映画のような「走らないゾンビ」の恐怖を体験したい

ロメロ映画をFPSにした——NMRiHの基本設計

No More Room in Hell FPS スクリーンショット2

No More Room in Hellを初めて起動して、最初に感じるのは「親切じゃないな」ということだと思う。

チュートリアルは最低限。画面の中央にクロスヘア(照準)がない。体力バーも弾薬カウンターも常時表示されない。自分が今どれくらいのダメージを受けているのか、残弾が何発あるのか、直感ではわからない。弾薬を確認するにはキーを押してマガジンを目視する必要がある。

これは不親切なのではなく、意図的なデザインだ。

開発チームがNMRiHで実現したかったのは、「ゾンビ映画の登場人物になる体験」だった。映画の中の主人公は、画面の端にHPバーが見えたりしない。残弾が何発あるかなんて、自分で数えるしかない。暗い廊下の先に何がいるかは、実際に懐中電灯で照らすまでわからない。NMRiHは、そのリアルさをゲームメカニクスに落とし込んでいる。

最大8人のプレイヤーが協力して、ゾンビが蔓延する世界を生き延びる。シンプルに聞こえるけど、実際にプレイすると「協力する」というのがいかに難しいかを思い知らされる。

近距離ボイスチャットが生む連帯と孤独

NMRiHの最も特徴的なシステムの一つが、近距離ボイスチャット(Proximity Voice Chat)だ。

一般的なCo-opゲームでは、チーム全員がどこにいても会話できる。でもNMRiHは違う。ボイスチャットの聞こえる範囲が物理的な距離に依存する。仲間が近くにいれば声が聞こえるけど、離れるとフェードアウトして聞こえなくなる。マップ内に落ちているトランシーバー(ウォーキートーキー)を拾えば、離れた仲間とも通信できるようになる——ただし、トランシーバーの数は限られている。

これが何を意味するか。

仲間とはぐれたら、本当に一人になる。声が聞こえない。助けを呼べない。暗い廊下を一人で歩いて、仲間を探さなきゃいけない。ゾンビのうめき声だけが環境音として聞こえてくる中で、「あ、これ映画のワンシーンだ」と気づく瞬間がある。

逆に、仲間が近くにいるときの安心感は格別だ。「俺が前行くから、後ろ頼む」「弾ある?」「ない」「じゃあ斧で行こう」——こんな会話が、ゲーム内の物理空間で自然に発生する。Discord通話で全員つながっている状態とは質の違うコミュニケーションが生まれる。

NMRiHの近距離ボイスチャットは他のどのゲームにもない没入感がある。仲間の声がだんだん聞こえなくなっていく瞬間が、純粋に怖い

引用元:Steamレビュー

Co-opホラーで近距離ボイスチャットを採用しているゲームは他にもある。DEVOURやPhasmophobiaなどがそうだ。でもNMRiHは2011年の時点でこのシステムを実装していた。先見の明があったと言っていい。2020年にPhasmophobiaがこのシステムで大ヒットしたとき、NMRiHの古参プレイヤーは「俺たちは9年前からやってたぞ」と笑っていた。

トランシーバーの使い方にも戦略がある。マップ内にトランシーバーは数個しか落ちていない。全員が持てるわけではないので、「誰がトランシーバーを持つか」という判断が必要になる。先行偵察するプレイヤーが持つのか、後方で全体の状況を把握するプレイヤーが持つのか。このリソース配分の議論自体が、Co-opゲームとしての面白さを増している。

あわせて読みたい
「DEVOUR」悪魔に取り憑かれた仲間を救う4人Co-opホラー 悪魔に取り憑かれた仲間を救う、4人協力の"本気で怖い"ホラー 「ヤギ捕まえた!早く焼いて!」と叫んだ瞬間、背後から白い服の女がすさまじい速度で迫ってきた。 UVライ...

弾がない。だから怖い

NMRiHの武器システムは、「足りない」をデザインの軸に据えている。

マップ内に落ちている武器を拾って使う。火器と近接武器の2カテゴリに大きく分かれるが、火器の弾薬は極端に少ない。リボルバーを拾っても、弾が6発しかない。ショットガンがあっても、弾は3発。ライフルを見つけても、マガジンが空——なんてことがザラにある。

だからプレイヤーは自然と近接武器に頼ることになる。消防斧、バール、ハンマー、バット、パイプレンチ、マチェーテ、はてはフライパンまで。一撃で倒せる武器もあれば、3〜4回殴らないと倒せない武器もある。片手武器なら懐中電灯(Maglite)を同時に持てるが、両手武器では暗闇を照らせない。

武器の重量システムも効いている。重い武器を持つと移動速度が落ちる。SKSライフル(銃剣つきで近接攻撃もできる唯一の銃)やSako 85スナイパーライフルは強力だけど、重い。逆にリードパイプやキッチンナイフは軽くて取り回しが良いが、火力は低い。何を持つかで立ち回りが変わる。

この「弾がない問題」が、NMRiHの恐怖の根幹を支えている。Left 4 Deadでは弾薬が潤沢で、ゾンビの群れを撃ちまくる爽快感がある。NMRiHにはそれがない。5体のゾンビの群れに出くわしただけで、「弾を使うべきか、斧で行くべきか、逃げるべきか」という判断を強いられる。この判断の連続が、プレイの緊張感を支えている。

さらに言えば、NMRiHでは「弾薬の共有」も重要な要素だ。仲間が持っている弾を渡してもらうことができる。「俺はショットガン持ってるけど弾がない」「俺がショットシェル2発持ってる、あげるよ」——こうやって限られたリソースを分け合う行為そのものが、チームの連帯感を強める。ゾンビ映画で生存者が残り少ない物資を分け合う場面があるが、NMRiHではそれがゲームプレイとして毎回発生する。

一噛みで終わる——感染システムの恐怖

NMRiHの感染システムは、ゾンビゲーム史上でもトップクラスに厳しい。

ゾンビに噛まれると感染する。一度の噛みつきで感染確定。治療法は「Gene Therapy」という超レアアイテムのみで、マップ内にほとんど落ちていない。感染すると画面の端に血管のようなエフェクトが現れ、視界が徐々に暗くなり、やがて死ぬ。死んだ後はゾンビとして復活し、生きている仲間を攻撃し始める。

感染の進行を遅らせる鎮痛剤(Pills)は比較的見つかるが、止めることはできない。時間稼ぎにしかならない。

そしてここからがNMRiHらしいところなのだが——感染したプレイヤーには「自分で自分を撃つ」という選択肢が用意されている。頭に銃を当てて、自ら命を絶つ。そうすればゾンビ化して仲間を襲うリスクを消せる。

この「自己犠牲」のメカニクスが、ロメロ映画のドラマ性をゲームプレイに持ち込んでいる。「俺、噛まれた」と仲間に告げる瞬間の空気。「まだ大丈夫だから、先に進もう」と言いながら、画面が暗くなっていく焦り。「もうダメだ、先に行ってくれ」と言って銃声が聞こえるあの瞬間——。

Co-opゲームでこんなドラマが自然に生まれるのは、NMRiHならではだ。

友達4人で遊んでて、1人が噛まれて「俺のことは置いていけ」って言ったあの瞬間、完全に映画だった。無料でこの体験ができるのは信じられない

引用元:Steamレビュー

ゾンビの種類と脅威——「特殊感染者なし」の設計哲学

NMRiHのゾンビデザインには、はっきりとした設計哲学がある。

Left 4 Deadには「タンク」「ハンター」「スモーカー」といった特殊感染者がいて、それぞれユニークな攻撃パターンを持つ。Killing Floorにはフレッシュパウンドやスクレイクといった巨大な敵がいる。Back 4 Bloodも同様に、特殊なリーデンが登場する。

NMRiHには、そういった「ボスゾンビ」が存在しない。

代わりにいるのは、3種類の一般ゾンビだ。

シャンブラー(Shambler)——ロメロ映画でおなじみの、ゆっくり歩くゾンビ。1体なら怖くない。でも5体、10体と群れになると話が変わる。狭い廊下で10体のシャンブラーに囲まれたら、近接武器だけではどうにもならない。スタミナが切れた瞬間に掴まれて噛まれる。

ランナー(Runner)——走るゾンビ。体力はシャンブラーより低いが、突然ダッシュで突っ込んでくるので対処が難しい。暗い角から急に飛び出してくるランナーに心臓を掴まれるプレイヤーは多い。

チルドレン(Children of the Dead)——子供のゾンビ。小さくて当たり判定が狭い。攻撃速度が速く、近接武器が当てにくい。体力は低いが、混戦の中で足元にまとわりつかれると厄介。なお、この子供ゾンビの存在はリリース当時にコミュニティ内で議論を呼んだ。賛否はあったが、開発チームは「リアリズムの一環」として実装を続けている。

さらに、ナショナルガード・ゾンビという亜種がいる。元軍人のゾンビで、防弾チョッキを着ているためダメージが通りにくい。シャンブラー、ランナー、クローラー(這いずりゾンビ)のどの形態にもなり得る。

特殊感染者がいないことで、NMRiHの恐怖は「量」と「状況」から生まれる。1体のゾンビは弱い。でも弾がなくて、暗くて、仲間が見えなくて、10体が角の向こうにいたら——その状況自体が脅威になる。ボスを倒すための「攻略パターン」を覚えるゲームではなく、「この状況をどう生き延びるか」を毎回考えるゲームだ。

この設計思想は、Don’t Starve Togetherの「環境そのものが敵」という考え方に通じるものがある。どちらも派手なボス戦よりも、日常的なリソース管理と状況判断にスリルを見出すタイプのCo-opゲームだ。NMRiHの場合、ゾンビ1体1体は脅威ではないが、「弾がない」「暗い」「仲間が遠い」「感染した」という複数の不利条件が重なったとき、普通のシャンブラー3体が絶望的な壁になる。

あわせて読みたい
「Dont Starve Together」友達と飢えを凌ぐゴシックCo-opサバイバル 友達と「飢えるな」を生き延びるCo-opサバイバルの決定版 「3日目の夜に、焚き火の燃料が切れた」 何が起きたか、分かるだろうか。Don't Starve Togetherでは、夜に光源...

2つのゲームモード——オブジェクティブとサバイバル

No More Room in Hell FPS スクリーンショット3

NMRiHには大きく分けて2つのゲームモードがある。どちらもCo-opだが、プレイ感覚はかなり違う。

オブジェクティブモード(nmo_)——脱出を目指せ

これがNMRiHのメインモードと言っていい。

プレイヤーはマップ内のミッション(目標)を順番にクリアしながら、最終的に脱出地点を目指す。アイテムを集める、ドアを開錠する、発電機を起動する、ヘリの到着を待つ——目標はマップごとに違い、さらにNMRiHの「オブジェクティブ・ブランチング」システムによって、同じマップでもプレイするたびに違うルートや目標が提示されることがある。

2026年4月時点で、公式オブジェクティブマップは19種。nmo_Broadway(ブロードウェイの街路を脱出する)、nmo_Brooklyn(ブルックリンの住宅街を抜ける)、nmo_Cabin(山小屋からの脱出)、nmo_FEMA(連邦緊急事態管理庁の施設)、nmo_Lakeside(湖畔の町)など、それぞれロケーションもシチュエーションも違う。

印象的なのはnmo_Broadwayだ。ニューヨークのブロードウェイを舞台にした都市マップで、ビルの屋上から路地裏まで使った立体的なレベルデザインが光る。序盤は比較的穏やかだが、途中からゾンビが大量に沸き、限られたリソースでどうやって最終地点まで到達するかが試される。Source Engineの限界を感じさせないほど雰囲気が作り込まれていて、「これが無料のMODなのか」と初めて遊んだとき驚いた。

脱出の瞬間は、毎回カタルシスがある。ヘリが来る。全員が乗り込む。でも間に合わない仲間がいる。ゾンビに囲まれて倒れる仲間を見ながら、ヘリが飛び立つ——。この「全員が生き残れるとは限らない」という緊張感が、オブジェクティブモードの核だ。

サバイバルモード(nms_)——防衛戦

サバイバルモードは、ウェーブ制の防衛ゲームだ。プレイヤーはマップ内の「セーフゾーン」を守りながら、押し寄せるゾンビの波を凌ぐ。一定のウェーブを耐え抜くと、救助車両が到着する。

公式サバイバルマップは13種。ウェーブが進むにつれてゾンビの数が増え、ランナーやナショナルガード・ゾンビの割合も上がる。各ウェーブの合間にヘリコプターから物資が投下されるので、弾薬や医療品を確保しつつ次の波に備える。

サバイバルモードはオブジェクティブモードよりもアクション寄りで、弾薬の供給もやや多い。それでもLeft 4 Deadのような爽快感ではなく、「あと何ウェーブ耐えられるか」というギリギリの生存戦になるのがNMRiHらしいところ。仲間が倒れるたびに防衛ラインが薄くなり、最終ウェーブでは文字通り最後の一人が斧一本で踏ん張る——みたいな展開が珍しくない。

どちらのモードも、ソロプレイは想定されていない。NMRiHは徹底的にCo-opゲームだ。一人でオブジェクティブマップに入ることもできるが、弾薬と体力の制約上、まず生き残れない。最低でも3〜4人、理想は6〜8人のフルパーティで遊ぶことを強くおすすめする。

19のオブジェクティブマップ——どのマップが面白いのか

NMRiHの寿命を支えているのは、マップの多さとバリエーションだ。19のオブジェクティブマップは、どれも個性的なロケーションとシナリオを持っている。全マップを詳細に語ると本が一冊書けてしまうので、ここでは特に印象的なマップをいくつか紹介する。

nmo_Cabin——ホラー映画の王道

山奥のキャビン(山小屋)からの脱出を目指すマップ。「死霊のはらわた」を連想させるロケーションで、森の中の閉塞感がたまらない。室内は狭く、窓からゾンビが侵入してくる。外に出れば暗い森が広がっていて、木の間からランナーが飛び出してくる。

マップの規模は小さめだが、その分プレイの密度が高い。短時間で遊べるので、「あともう1回」が止まらなくなるタイプのマップだ。初心者が最初に遊ぶのにも向いている。

nmo_FEMA——政府施設の崩壊

連邦緊急事態管理庁(FEMA)の避難施設が舞台。かつて生存者たちの避難所だった場所が、ゾンビに制圧されている。テントや仮設ベッド、散乱した書類——「ここはかつて安全だった」という痕跡が残る空間を進んでいく不気味さがある。

このマップは目標の分岐が豊富で、毎回違うルートを通ることになりやすい。オブジェクティブ・ブランチングシステムの面白さを最も実感できるマップの一つだ。

nmo_Lakeside——湖畔の惨劇

湖のほとりの小さな町が舞台。郊外の穏やかな風景が、ゾンビによって地獄に変わっている。昼間のマップなので暗さによる恐怖は薄いが、開けた場所が多いためゾンビの接近に気づきにくい。住宅街を進みながらアイテムを集め、最終的に湖のボートで脱出する。

ボートで脱出するシーケンスが印象的で、桟橋にたどり着くまでの最終ダッシュは毎回アドレナリンが出る。仲間全員が桟橋にたどり着けるとは限らない。「あと1人!」と叫びながら、遠くで仲間がゾンビに囲まれるのを見る。助けに行くか、先にボートに乗るか。その判断が問われる。

nmo_Brooklyn——都市部の絶望

ブルックリンの住宅街が舞台のマップ。アパートメント、路地裏、地下室——都市部ならではの閉塞的な空間が連続する。このマップは建物内部の探索が多く、部屋のドアを開けるたびに「中にゾンビがいるかもしれない」という緊張が走る。

都市マップ特有の特徴として、車のアラームがある。不用意に車に触れるとアラームが鳴り響き、周囲のゾンビが一斉にプレイヤーに向かってくる。この「音を立てたら終わり」という緊張感が、ブルックリンの街を慎重に歩かせる設計になっている。

ワークショップマップ——3,700以上のコミュニティ作品

公式マップだけでなく、Steamワークショップには3,700件以上のコミュニティ制作マップが公開されている。ショッピングモール、病院、空港、学校、刑務所——ゾンビ映画で登場しそうなロケーションのマップが、有志の手で次々と作られてきた。

中にはクオリティが公式マップに匹敵するものもあり、「NMRiHの真の寿命はワークショップにある」と言うプレイヤーもいる。Source Engineのマッピングツール(Hammer Editor)は学習コストがそれなりに高いが、長年のコミュニティの蓄積により、高品質なカスタムマップが豊富に揃っている。ショッピングモールを舞台にしたマップ、刑務所マップ、病院マップ——ゾンビ映画のロケーションをことごとくカバーしている。「あのゾンビ映画のあのシチュエーションを再現したい」というクリエイターの情熱が、3,700件以上のマップに詰まっている。

公式マップを全部クリアしたあと、ワークショップマップにハマって500時間溶けた。正直、一部のワークショップマップは公式より面白い

引用元:Steamレビュー

この「コミュニティがコンテンツを作り続ける」構造が、13年間ゲームを生かし続けている大きな要因だ。

NMRiHはなぜ人気なのか——無料・リアル・コミュニティの三角形

No More Room in Hell FPS スクリーンショット4

2013年にスタンドアローン化してから13年。無料ゲームとはいえ、ゾンビCo-opというジャンルは競合がいくらでもある。Left 4 Dead 2、Killing Floor 2、Back 4 Blood、World War Z、そして同じ無料枠ではUnturned。なぜNMRiHが今も生き残っているのか。

理由1:「無料で本格的」という唯一無二のポジション

ゾンビCo-opゲームで「無料」かつ「リアル志向」という組み合わせは、NMRiH以外にほぼ存在しない。

Unturnedは無料だけどボクセルグラフィックのカジュアル路線。Left 4 Dead 2はリアル寄りだけど有料。Killing Floor 2は無料化イベントがあるが基本有料。NMRiHは「完全無料」「リアリスティックなグラフィック」「ハードコアなゲームプレイ」の三拍子が揃っている。

PCスペックの要求も低い。Source Engineベースなので、10年前のPCでも動く。高校生や大学生が「とりあえず入れてみようぜ」と気軽に始められるのは、コミュニティの新陳代謝にとって大きい。実際、NMRiHのプレイヤー層には「低スペックPCでも動く無料ゲームを探していたらたどり着いた」という人が多い。ゲーミングPCを持っていなくても遊べるゾンビCo-opゲームとして、唯一無二の存在だ。

課金要素も一切ない。スキン販売もバトルパスもない。ダウンロードしたら、すべてのコンテンツが最初から使える。2026年の基準では珍しいほど「ピュア」なゲームだ。

理由2:「不親切さ」がコアファンを生む

NMRiHはプレイヤーに優しくない。クロスヘアがない。弾薬が少ない。マップの目標がわかりにくい。感染したら治せない。仲間とはぐれたら声が聞こえない。

この「不親切さ」が、皮肉にもコアファンを生み出している。

「自分で考えて、自分で判断して、自分で生き延びる」というプレイ体験は、手取り足取り案内されるゲームでは味わえない。マップの構造を覚え、武器の特性を把握し、仲間との連携パターンを構築していく——その学習プロセス自体がゲームの面白さになっている。

Maximum PC誌が「NMRiH is a stand-out take on survival and the scariest multiplayer game we’ve ever played(NMRiHはサバイバルの傑出した解釈であり、私たちがプレイした中で最も怖いマルチプレイゲームだ)」と評したのは、この不親切さが生む恐怖を正確に捉えている。PC Gamer誌も「No More Room in Hell feels uniquely more like a horror game than an FPS(NMRiHはFPSというよりホラーゲームに近い独自の感覚がある)」と書いている。

Gray Zone Warfareのような「不親切だけどそこが良い」タイプのFPSに惹かれるプレイヤーなら、NMRiHのハードコアさは間違いなく刺さる。

あわせて読みたい
「Gray Zone Warfare」42km2の密林を這う本格ミリタリーMMO FPS Gray Zone Warfare——42km²の密林を這う本格ミリタリーMMO FPS 初めてGray Zone Warfareのマップに降り立ったとき、正直面食らった。 ヘリコプターが着陸して、ドアが開...

理由3:MOD文化とコミュニティの力

NMRiH自体がHalf-Life 2のMODとして生まれたゲームだ。だからコミュニティ主導の文化がDNAに刻まれている。

先述のワークショップマップだけでなく、ゾンビスキン、武器スキン、サウンドMODなど、カスタマイズの幅は広い。専用サーバーを立てれば、独自のルールやMODを適用してプレイできる。日本にも有志が運営するサーバーが存在し、日本語コミュニティも小規模ながら活動を続けている。

開発チーム自身もコミュニティ出身だ。MODを作っていた人たちが集まって、一つのゲームを作り上げた。2003年にプロジェクトが発足し、2009年に新チームが引き継ぎ、2011年にベータ版リリース、2013年にスタンドアローン化——この歴史自体が、コミュニティの力を物語っている。

2016年には、開発チームがLever Gamesとして法人化し、続編「No More Room in Hell 2」の開発を開始。その後、Chivalry 2の開発元であるTorn Banner Studiosに吸収され、人員も予算も大幅に拡大した。MODチームがAAAスタジオの傘下に入るというのは、インディーゲーム界でもなかなか珍しいサクセスストーリーだ。

MORDHAU(中世剣戟FPS)もコミュニティから生まれたタイトルだが、NMRiHは「MODからスタンドアローンへ、さらにAAAスタジオへ」という道を辿った点でユニークだ。

あわせて読みたい
「MORDHAU」10人のインディーが作った本格中世マルチプレイ剣戟FPS 初めてMORDHAUの戦場に放り込まれたとき、何が起きたかを正直に書く。 2019年の春。64人対戦の「Frontline」モードで、中世の城壁前に立っていた。周囲には鎧をまとった...

武器システムの奥深さ——何を持つかで生死が分かれる

NMRiHの武器は、「選択」と「妥協」のシステムだ。

マップ内に落ちている武器を拾うスタイルで、どの武器がどこにスポーンするかはランダム要素がある。「今回はショットガンが見つかった」「今回は近接武器しかない」——この運要素が、毎回のプレイを変化させる。

火器:強力だが弾がない

NMRiHに登場する火器は、リアリスティックな銃器モデルが揃っている。

リボルバー、ベレッタ92FS、グロック17、MP5、ショットガン(レミントン870)、SKS、Sako 85——いずれも実在の銃をモデルにしている。Source Engineの制約の中で、リロードアニメーションやサウンドデザインにこだわりが見える。

SKSは特に個性的で、ゲーム内で唯一「銃剣による近接攻撃」ができる。通常の火器は近接で使うと「押し返す(シャブ)」動作になるが、SKSだけは銃剣を突き刺す専用モーションがある。弾が切れても近接武器として機能するので、見つけたら確保しておきたい。

Sako 85はゲーム内最強クラスの火器で、.308弾がゾンビの頭を貫通して後ろのゾンビにも当たる。ただし重量が大きく、持っているだけで移動速度が落ちる。スナイパーライフルを担いで狭い廊下を歩くのはリスクが高い。

どの銃も共通して言えるのは、「弾がなくなったらただの重い棒」ということ。弾薬管理がNMRiHの戦闘における最重要スキルであり、「ここで撃つべきか、温存すべきか」の判断が生死を分ける。

近接武器:メインウェポンは斧

現実的に、NMRiHのメイン武器は近接だ。弾薬が限られている以上、ゾンビの大半は殴って倒すことになる。

近接武器は片手武器と両手武器に分かれる。片手武器(リードパイプ、ハチェット、キッチンナイフ、マチェーテなど)は、もう片方の手で懐中電灯を持てる。暗いマップでは視界確保が生死を分けるので、この「片手+懐中電灯」の組み合わせが基本装備になる。

両手武器(消防斧、スレッジハンマー、ピックアクス、チェーンソーなど)は火力が高い代わりに、懐中電灯が持てない。仲間に照らしてもらうか、フレアで一時的に明かりを確保するしかない。この「火力と視界のトレードオフ」が、チーム内の役割分担を自然に生む。

「俺が斧で前に出るから、お前は懐中電灯で照らしてくれ」「了解、でも俺はリードパイプしか持ってないから、大群が来たら任せる」——こんな即席の役割分担が、プレイのたびに生まれる。

手榴弾・火炎瓶・TNT

爆発物も少量ながら存在する。手榴弾、火炎瓶、TNTは大群を一掃できる強力な武器だが、味方にもダメージが入る。狭い空間でうっかり火炎瓶を投げて仲間を巻き込む——というのはNMRiHあるあるだ。フレンドリーファイアがデフォルトでオンなので、火器の取り扱いには細心の注意が必要。

フレンドリーファイアが常にオンという設計は、ある意味でこのゲームの思想を端的に表している。「仲間は信頼できるが、ミスは許されない」。火器を持っているプレイヤーは、射線上に仲間がいないか常に確認しなければならない。暗闘の中で影が動いた——撃つべきか?ゾンビか仲間か判別がつかない。この一瞬の判断ミスが、チームを崩壊させる。

だからこそ、NMRiHでは「声」が武器になる。「俺は今2階にいる」「右の部屋は俺が入る」「そっちに撃つな」——近距離ボイスチャットでの情報共有が、フレンドリーファイアを防ぐ最大の手段であり、同時にチームの結束を強める仕組みにもなっている。

マルチプレイの現実——サーバーブラウザとマッチングの課題

No More Room in Hell FPS スクリーンショット5

NMRiHの良いところを語ってきたが、正直に書かなければいけないこともある。

このゲーム最大の課題は、マルチプレイの導線だ。

NMRiHはマッチメイキングシステムを採用していない。サーバーブラウザから手動でサーバーを選んで接続する、昔ながらのスタイルだ。2013年当時はこれが一般的だったが、2026年の基準で見ると、初心者にとってハードルが高い。

サーバーの数も減っている。最盛期には世界中に何百ものサーバーが稼働していたが、現在は同時接続500人前後の規模に見合った数に落ち着いている。遊びたいマップを指定してサーバーを探すと、「人がいない」「ラグが酷い」「途中からの参加になる」ということがしばしば起きる。

サーバーを探すのが大変。やりたいマップのサーバーがあっても、人が集まらなかったり、途中参加で何が起きてるかわからなかったりする

引用元:Steamレビュー

途中参加の問題は特に痛い。オブジェクティブモードのサーバーに途中から入ると、すでに死亡済みの場合がある。生きているプレイヤーのプレイを観戦するしかなく、自分がプレイできるのは次のラウンドから。10〜15分ほど待つことになり、その間チャットもできない(死者は生者と通信できないため)。

この「待ち時間」は、NMRiHの不評レビューで最も頻繁に挙げられる不満点だ。

対策としては、フレンドと一緒にプレイするのが最善だ。自分たちでサーバーを立てるか、空いているサーバーにまとまって入る。ソロでランダムにサーバーを探す遊び方は、正直なところストレスが溜まりやすい。

コミュニティサーバーの文化

一方で、サーバーブラウザ方式には良い面もある。

コミュニティサーバーには、それぞれ独自のルールや雰囲気がある。「初心者歓迎」サーバー、「ハードコアのみ」サーバー、「日本語OK」サーバー——自分に合った居場所を見つけると、そこに常連が集まり、顔なじみと毎晩遊ぶようになる。2010年代のオンラインゲームの空気感がそこにある。

Overwatch(チーム対戦FPS)のような自動マッチメイキングの効率性はないが、「毎回同じメンバーで遊ぶ」ことで生まれるチームワークの深みは、NMRiHの大きな魅力でもある。

あわせて読みたい
「Overwatch」ヒーローの個性がぶつかり合う5v5チーム対戦FPS 初めてオーバーウォッチをプレイしたときの衝撃は、今でもはっきり覚えている。 2016年5月。トレーサーのブリンクで敵の背後に回り込み、パルスボムを貼り付けて一瞬で3...

Source Engineの限界と味わい——グラフィックの話

2026年にNMRiHのグラフィックを語るなら、正直に言わなきゃいけないことがある。

古い。

Source EngineはValveが2004年にリリースしたゲームエンジンで、Half-Life 2やCounter-Strike: Sourceに使われていた。NMRiHはこのエンジン上で動作するMODだ。テクスチャの解像度、ライティングの品質、キャラクターモデルのポリゴン数——どれを取っても、2026年の基準では見劣りする。

Unreal Engine 5で動くゲームを見慣れた目には、最初は「これ大丈夫か?」と思うかもしれない。

でも、不思議なことに、プレイし始めると気にならなくなる。

理由は2つある。まず、NMRiHの大半のプレイ時間は「暗い」から。懐中電灯の光の届かない範囲は真っ暗で、テクスチャの粗さが見えない。見えるのは、光の先にいるゾンビのシルエットと、近距離で振り下ろす斧の軌跡だけ。この「闇」が、Source Engineの古さをカバーしている。

もう一つは、Source Engineの物理演算が独特の味を出しているから。ゾンビを斧で叩いたときのラグドール(物理演算によるキャラクターの崩れ方)、物を投げたときの挙動、ドアを開け閉めしたときの「重み」——Source Engineには、新しいエンジンでは再現しにくい「手触り感」がある。Half-Life 2やGarry’s Modが今でも遊ばれている理由の一端がここにある。

グラフィックは古いけど、暗い環境と音響設計が怖さを完璧に演出している。見た目がきれいなゲームより、こっちのほうがよっぽど怖い

引用元:Steamレビュー

とはいえ、「古さ」が障壁になるプレイヤーがいるのも事実だ。特にCyberpunk 2077やRed Dead Redemption 2のようなAAAタイトルの映像美に慣れている人にとっては、最初の印象で「無理」となる可能性がある。

あわせて読みたい
「Cyberpunk 2077」炎上から復活したナイトシティのオープンワールドRPG 「発売日に買って、3時間でアンインストールした。2年後に再インストールして、200時間溶かした」 これ、サイバーパンク2077(Cyberpunk 2077)のSteamレビューでよく見...

NMRiHは「映像で魅せるゲーム」ではなく、「体験で魅せるゲーム」だ。その前提を受け入れられるかどうかで、評価は大きく分かれる。

正直に書く——NMRiHのダメなところ

No More Room in Hell FPS スクリーンショット6

好きなゲームだからこそ、ダメなところも正直に書く。

1. 新規プレイヤーに優しくない

チュートリアルが貧弱。「このゲーム、何すればいいの?」がわかるまでに、最低でも数プレイかかる。オブジェクティブモードでは目標の光るマーカーとコンパスが一応あるが、それでも初見では何をすべきか迷う。

サーバーに入ったら途中参加で即死亡。次のラウンドまで10分待ち。再開したけど目標がわからず迷子。ゾンビに噛まれて感染。味方に撃たれて死亡。——こんな「初心者あるある」が、1時間以内に全部起きる。

Steamの日本語Wikiや初心者ガイドは存在するので、プレイ前に目を通しておくことを強くおすすめする。

2. AIパスファインディングの不具合

ゾンビのAIは基本的にシンプルだが、たまにおかしな挙動をする。壁に引っかかって動けなくなるゾンビ、ドアの前で立ち往生するゾンビ、階段を登れないゾンビ。Source Engineのナビメッシュの限界で、マップによってはAIの挙動が不安定になることがある。

特にカスタムマップ(ワークショップマップ)では、ナビメッシュの設定が不完全なものがあり、ゾンビが特定のエリアに到達できないといった問題が起きやすい。公式マップでは比較的安定しているが、ゼロではない。

3. 同時接続数の減少

最盛期に1万人を超えた同時接続数は、2026年4月時点で500人前後。ゲームとして「死んでいる」わけではないが、以前と比べてサーバーの選択肢が減っているのは事実だ。特にアジア圏のサーバーは少なく、日本からプレイすると遅延が気になる場合がある。

続編「No More Room in Hell 2」が2024年10月に早期アクセスを開始したことで、プレイヤーの一部が移行した影響もある。ただし、続編は早期アクセス開始直後にバグの多さやコンテンツ不足で賛否が分かれ、「NMRiH1のほうが面白い」と戻ってくるプレイヤーも少なくない。

NMRiH2が出たから1はもう終わりかと思ったけど、2のバグがひどくて結局1に戻った。1のほうが完成されてる

引用元:Steamコミュニティ

4. アップデートの停滞

開発チームの主力がNMRiH2に移ったため、NMRiH1への大型アップデートはここ数年行われていない。既存コンテンツとワークショップマップで遊び続ける形になっている。新しい公式マップや新武器の追加は、現実的には期待できない。

ただ、裏を返せば「完成されたゲーム」とも言える。13年間のアップデートで積み重ねた19のオブジェクティブマップ、13のサバイバルマップ、数十種類の武器——これだけのコンテンツが無料で遊べるのは、客観的に見てすごいことだ。

NMRiH2はどうなっている?——続編の現状

NMRiH1の記事ではあるが、続編の状況にも触れておきたい。

No More Room in Hell 2は、2024年10月22日にSteam早期アクセスを開始した。開発はTorn Banner Studios(Chivalry 2の開発元)傘下のLever Games。エンジンはUnreal Engine 5に切り替わり、最大8人のCo-opは継承。パーマデス、感染メカニクス、近距離ボイスチャットといったNMRiH1の特徴的なシステムも引き継がれている。

しかし、早期アクセスの開始は波乱含みだった。

初日の同時接続は約15,000人と好調だったが、重大なバグが次々と報告された。テレポートするゾンビ、消えるゾンビ、キーバインドが効かない、ボイスチャットが壊れている、浮遊する頭部——。初期はマップが1種類しかなく、コンテンツ不足も指摘された。Steamレビューは一時「圧倒的に不評」にまで落ち込んだ。

PC Gamer誌は「No More Room in Hell 2 might be too early for early access(NMRiH2は早期アクセスにすら早すぎるかもしれない)」と報じた。

ただし、開発チームは月次アップデートを継続しており、マップの追加、ゾンビバランスの調整、インベントリシステムの改善などが行われている。2025年以降のレビューは改善傾向にあり、「ゲームの土台は良い」「将来性がある」という声も出始めている。2026年4月時点でSteamレビューは全体で52%好評(約10,500件)、直近では改善が見られる。

NMRiH1が好きなプレイヤーとしては、続編の成長を見守りつつ、NMRiH1を遊び続けるというのが現実的な選択肢だろう。NMRiH1は13年分の完成度がある。NMRiH2は「まだこれから」の段階だ。

他のCo-opゾンビゲームと何が違うのか

No More Room in Hell FPS スクリーンショット7

ゾンビCo-opというジャンルは飽和状態に近い。その中でNMRiHが独自のポジションを占めている理由を、他タイトルとの比較で整理してみる。

Left 4 Dead 2との違い

最もよく比較されるタイトル。「ゾンビを撃つCo-op」という表面的な共通点はあるが、中身はまるで違う。

Left 4 Dead 2はアーケード的な爽快感が軸。弾薬は豊富、特殊感染者との駆け引き、テンポの速い展開。一方、NMRiHはサバイバルホラーの緊張感が軸。弾薬は不足、特殊ゾンビなし、ゆっくりしたペース。

Steamコミュニティでは「NMRiHとL4D2を比べるな」という声がよく出る。ジャンルは同じでも、提供する体験が根本的に違う。L4D2は「楽しいゾンビ映画」、NMRiHは「怖いゾンビ映画」だ。

DEVOURとの違い

Co-opホラーという点では近いが、DEVOURは「ボスを倒すための儀式」という明確な目標があり、1プレイが20分程度で終わる。NMRiHはもっとオープンで、マップの探索・脱出という大きな流れの中で自由度が高い。DEVOURが「短距離走の恐怖」なら、NMRiHは「マラソンの恐怖」。

Phasmophobiaとの違い

近距離ボイスチャット、暗い環境、仲間との協力——共通点は多いが、Phasmophobiaは「調査・特定」がゲームの軸で、NMRiHは「生存・脱出」が軸。Phasmophobiaでは死ぬことが珍しいが、NMRiHでは死ぬことが日常。

Don’t Starve Togetherとの違い

ジャンルは違うが、「リソース管理」「環境そのものが脅威」「不親切さ」というデザイン哲学は驚くほど似ている。Don’t Starve Togetherはサバイバルクラフト、NMRiHはFPS。でもどちらも「世界が自分に優しくない」ことから生まれる緊張感を楽しむゲームだ。

ユーザーの声から見えるNMRiHの本質

Steamレビュー6万4,000件以上、13年間のプレイヤーの声。そこから浮かび上がるNMRiHの本質を読み解いてみたい。

「怖い」——最も多い評価

ポジティブレビューで圧倒的に多いのが「怖い」という言葉。「マルチプレイで一番怖いゲーム」「L4D2より怖い」「友達と叫びながらプレイした」。ゾンビゲームで「怖い」という評価を13年間もらい続けているのは、NMRiHの設計が根本的に正しいことの証拠だ。

one of the best zombie survival games I ever played. I love this game and miss playing it

引用元:Steamレビュー

「miss playing it」——「プレイしていた頃が懐かしい」。このフレーズが象徴するように、NMRiHは「思い出のゲーム」として多くのプレイヤーの心に残っている。学生時代に友達と毎晩遊んだ記憶、初めてオブジェクティブマップをクリアした達成感、仲間が感染して自決したあの瞬間——そういう「エピソード」が生まれやすいゲームなのだ。

「雰囲気が最高」——音響と環境デザインへの賞賛

もう一つ多いのが、雰囲気への賞賛。特に音響設計は高く評価されている。ゾンビのうめき声、遠くで聞こえる銃声、暗闘の中で響く自分の足音。Source Engineのサウンドシステムを最大限に活かした音響デザインが、視覚的な古さを補っている。

「暗い廊下を懐中電灯だけで進む」という体験は、どんなにグラフィックが綺麗なゲームでも、NMRiHほどの恐怖は出せない。それは音と光の使い方が絶妙だからだ。

不満の声——「人がいない」「入りにくい」

ネガティブな声で最も多いのは、やはりプレイヤー人口の問題。「サーバーに人がいない」「マッチング待ちが長い」「途中参加で何もできない」。これは先述した通りで、NMRiHの構造的な課題だ。

ゲーム自体は面白いけど、サーバーを探して、人が集まるのを待って、途中参加で死んでて、また待って……。ゲームにたどり着くまでが長い

引用元:Steamレビュー

この問題は、友達と一緒にプレイすることでかなり緩和される。逆に言えば、一緒に遊ぶフレンドがいないと、NMRiHの魅力の半分しか体験できないとも言える。

ソロでも完結するゲームとは対照的に、NMRiHは「仲間がいてこそ」のゲームだ。一緒に遊ぶ仲間がいるかどうかで、このゲームの体験価値は天と地ほど変わる。

NMRiHを今から始めるなら——2026年の遊び方ガイド

No More Room in Hell FPS スクリーンショット8

2026年にNMRiHを始めるプレイヤーに向けて、実用的なアドバイスをまとめておく。

まずフレンドを集めろ

これが最重要。ソロでサーバーを探すのはストレスが大きい。最低3人、できれば5〜6人集めて遊ぶのがベスト。Discordのゲームサーバーや、NMRiHの日本語コミュニティを活用するのも手だ。

初心者におすすめのマップ

オブジェクティブモードなら、nmo_Cabinかnmo_Broadwayから始めるのが良い。Cabinは小規模で構造がシンプル、Broadwayは大規模だが目標がわかりやすい。どちらもNMRiHの基本メカニクスを学ぶのに適している。

サバイバルモードは、防衛の要領を掴むのに良い。オブジェクティブモードで「どう戦えばいいかわからない」という人は、まずサバイバルモードでゾンビとの戦闘に慣れてからオブジェクティブに挑むのも一つの手だ。

懐中電灯は命

Maglite(懐中電灯)は最優先で確保する。暗いマップで照明なしで動くのは自殺行為に等しい。片手武器+Magliteが基本装備だと覚えておこう。

弾は温存、斧がメイン

銃を見つけても、すぐに撃ちまくらないこと。弾は大群が来たとき、ランナーに追われたとき、脱出の最終局面——ここぞという場面のために温存する。普段のゾンビ処理は近接武器で行う。

感染したら仲間に伝えろ

噛まれたら、すぐに仲間に伝える。鎮痛剤で延命しつつ、Gene Therapyを探す。見つからなければ——覚悟を決める。仲間をゾンビ化した自分が襲うよりは、自決するほうがチームのためになる。つらい選択だけど、それがNMRiHだ。

コンパスを使え

意外と知られていないが、Cキーでコンパスを表示できる。オブジェクティブモードでは、次の目標の方向をコンパスが示してくれる。これを使わないと、マップ内で迷子になりやすい。特に広いマップでは、コンパスなしで目標を探すのは困難だ。

スタミナ管理を忘れるな

近接戦闘ではスタミナ(体力)が消費される。斧を振り続けるとスタミナが切れて、振る速度が激減する。スタミナが切れた状態でゾンビに囲まれると、抵抗できずに掴まれて噛まれる。「3体倒したら少し離れて回復を待つ」「スタミナが半分を切ったら無理しない」——こういった判断ができるかどうかが、生存率に直結する。

NMRiHは「荷物の重さ」も移動速度に影響する。重い武器や大量のアイテムを持っていると、走る速度が落ちる。「何を持って、何を捨てるか」のインベントリ管理が、サバイバルの基本スキルだ。

ワークショップマップを入れよう

公式マップを一通り遊んだら、Steamワークショップからカスタムマップをサブスクライブしよう。3,700件以上の中から、高評価のものを試していくだけで数百時間は遊べる。サーバー側がワークショップマップを導入していれば、自動でダウンロードされる仕組みなので、手動で探す手間も少ない。

NMRiHが残したもの——Co-opホラーへの影響

NMRiHが2011年にMODとしてリリースされてから15年。この間にCo-opホラーというジャンルは大きく成長した。

Phasmophobia(2020年)は近距離ボイスチャットを全面に押し出して大ヒット。Lethal Company(2023年)はホラーとコメディの融合でSteamを席巻。DEVOUR(2021年)はワンコインCo-opホラーの新たな形を示した。

これらのゲームが「当たり前のように」採用しているシステム——近距離ボイスチャット、限られたリソースでの協力、暗闇の中の恐怖——の多くは、NMRiHが2011年の時点で実装していたものだ。もちろんNMRiHが「すべての元祖」というわけではないが、「マルチプレイでもちゃんと怖いゲームは作れる」ということを証明した作品の一つであることは間違いない。

SWORNのようなCo-opローグライクが注目を集める2026年においても、NMRiHの「不親切だけど奥深い」デザイン哲学は色あせない。

あわせて読みたい
「SWORN」闇に堕ちたアーサー王を4人で倒すCo-opローグライク 闇に堕ちたアーサー王を4人で倒す、Co-opローグライクの新星 ボス部屋の扉が開いた瞬間、画面の向こうでフレンドが「うわ、ガウェインでかすぎない?」と叫んだ。かつて...

ジョージ・A・ロメロの映画が描いた「ゾンビの恐怖は、ゾンビそのものではなく、極限状態に追い込まれた人間のドラマにある」というテーゼ。NMRiHは、それをマルチプレイFPSという形で見事に翻訳した。感染した仲間に別れを告げる瞬間、最後の弾を誰に渡すか迷う瞬間、脱出ヘリに全員が乗れないとわかった瞬間——そのすべてが、プレイヤーの手で紡がれるドラマだ。

まとめ——地獄に空きがなくなったとき

No More Room in Hell。「地獄に空きがなくなったとき、死者は地上を歩く」。

2003年にプロジェクトが発足し、2011年にMODとしてリリースされ、2013年にスタンドアローン化。PC Gamer Mod of the Year、ModDB Multiplayer Mod of the Year。Steamレビュー6万4,000件以上で89%好評。最盛期同時接続1万人超。そして2026年の今も、500人以上が毎日ゾンビと戦っている。

グラフィックは古い。サーバーブラウザは不便。新規プレイヤーに優しくない。アップデートは止まっている。これ全部本当のことだ。

でも、暗い廊下を懐中電灯だけで進む恐怖。弾がない中で5体のゾンビと向き合う緊張。仲間の声がだんだん聞こえなくなる孤独。噛まれた仲間が「先に行ってくれ」と言うドラマ。全員で脱出できた瞬間のカタルシス——。

これらの体験が、全部無料で手に入る。

13年前のSource EngineのMODが、なぜ2026年にも遊ばれているのか。答えは単純だ。「怖い」から。そして「怖さの中で仲間と協力する」体験が、今でも唯一無二だから。

Red Dead Redemption 2のような映像美はない。Cyberpunk 2077のようなストーリーテリングもない。でもNMRiHには、あの2つのゲームにはない「生存の切迫感」がある。8人の生存者が、弾もなく、光もなく、治療薬もなく、それでも前に進む。その体験は、どれだけグラフィックが進化しても色あせない。

あわせて読みたい
「Red Dead Redemption 2」1899年アメリカを生きるオープンワールドの到達点 馬に乗って、草原を走っていた。夕焼けが西の空を焼いて、遠くのグリズリー山がオレンジ色のシルエットになった。BGMはなく、聞こえるのは馬の蹄の音と風の音だけ。気づ...

もしあなたが「ゾンビゲームは撃ちまくるもの」と思っているなら、NMRiHは考え方を変えてくれるかもしれない。

もしあなたが「マルチプレイゲームは怖くない」と思っているなら、NMRiHはその認識を壊してくれるかもしれない。

ダウンロードは無料。必要なのは、一緒に地獄を歩いてくれる仲間だけだ。

No More Room in Hell

No More Room in Hell Team
リリース日 2013年10月31日
サービス中
価格基本無料
開発No More Room in Hell Team
販売Lever Games
日本語非対応
対応OSWindows / Linux
プレイ形式マルチ
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次