「Chained Together」鎖で繋がれ地獄から脱出するCo-opクライミング

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Chained Together:鎖で繋がれ地獄から脱出するCo-opクライミング

友達と一緒にゲームをやっていて、「こいつのせいで何回落ちたか分からない」と思いながらも、結局また声をかけて一緒にプレイしてしまう——そういう体験をしたことがあるなら、このゲームは確実に刺さる。

2024年6月20日にSteamでリリースされた「Chained Together」は、最大4人のプレイヤーが文字通り鎖で繋がれたまま、地獄の底から天国の頂上を目指して登り続けるCo-opクライミングアクションだ。価格は580円前後。ピーク時の同時接続者数は94,480人に達し、2024年のSteam販売本数ランキングで4位に食い込むほどのバイラルヒットを記録した。

一人が落ちれば全員が落ちる。その単純なルールが、驚くほど深いドラマを生み出す。笑いあり、絶叫あり、沈黙あり——全部ひっくるめて「体験」と呼べるゲームが、580円でここまで丁寧に作られているのは正直驚いた。

にじさんじのVTuberたちが配信で取り上げ、海外のストリーマーたちが次々と実況動画をあげ、口コミで爆発的に広がった——このゲームがなぜここまで人々を引きつけたのかを、できるだけ具体的に掘り下げていく。「地獄から天国へ」の旅は短いが、その道中に詰まっているものが多い。

こんな人に読んでほしい

Chained Together アドベンチャー スクリーンショット1
  • 友達と一緒に笑えるCo-opゲームを探している人
  • 「Getting Over It」「Only Up!」系の登りゲーが好きな人
  • 失敗を笑いに変えられる、あるいはそういう体験がしたい人
  • 配信や動画の撮れ高を作りたいストリーマー・YouTuber
  • 500円台でしっかり遊べるコスパ重視のゲーマー
  • 2〜4人でオンラインプレイできる仲間がいる人

逆に、「絶対にクリアしたい」「効率よく進みたい」「ひとりで静かに遊びたい」「長時間遊べるボリュームを求めている」という人は正直きつい。このゲームはプロセスそのものを楽しむ設計になっていて、ゴールへ向かう道中の混乱や叫び声こそが本番だ。

「Chained Together」とはどんなゲームか

Chained Together アドベンチャー スクリーンショット2

地獄から天国へ——シンプルな目標、シンプルな操作

ゲームの舞台は文字通り「地獄」だ。プレイヤーは溶岩と炎に囲まれた最下層からスタートし、ひたすら上を目指す。地獄の岩場、浮かぶ廃ビル群、雲の上の世界、そして天国の頂上……ステージが進むにつれて景色が変わり、最終的にはるか上空の明るい空間に辿り着くのがゴールとなる。

ゲームの基本操作は走る・ジャンプ・ダッシュの3つだけ。操作方法自体はシンプルで、初めて遊ぶ人でも5分で動き方は理解できる。難しいのは「鎖で繋がれた状態で全員が同じ方向に向かって動く」という部分だ。

ソロプレイのときは「ただひたすら登る」ゲームなのだが、これが2人・3人・4人になった瞬間、まったく別のゲームになる。1人が先走れば鎖が張り、全員を引っ張る。1人が落ちれば全員が道連れになる。そして誰かが「Eキーで引き上げる」操作をミスした瞬間、今度は助けに来た人まで落ちていく。

この「連帯責任」の仕組みが、単なるCo-opゲームでは生まれないドラマを作り出している。

ジャンルの名前を付けるなら「上昇型プラットフォーマー(Vertical Platformer)」と呼ぶのが近い。横スクロールでも俯瞰視点でもなく、縦方向への移動が全てで、上に行くほど進んだことが分かる。このシンプルさが「もう少し、もう少し」という感覚を継続的に生み出す。

視点はサードパーソン(三人称)で、キャラクターの後方やや上から見下ろすカメラが基本だ。狭い足場を渡るときにカメラ角度が難易度に影響することはあるが、全体的に視認性は良好で、「カメラのせいで死んだ」という感覚は少ない。この点はフラストレーションを抑えるうえで地味に重要な設計だ。

鎖メカニクスの仕組みを理解する

Chained Togetherで中心になるのは「鎖の物理挙動」だ。プレイヤー同士を繋ぐ鎖は、視覚的な演出ではなく、ゲーム内に実際に作用する物理オブジェクトとして扱われている。

鎖には長さの限界があり、前後のプレイヤーが一定の距離以上離れると張り始め、引っ張り合いが生まれる。この「引っ張り」は単純な邪魔要素ではなく、うまく使えば足場になる。たとえば、1人がクレーンのフックにぶら下がっている間に、鎖を伝って別のプレイヤーが上に進む——という動きが可能だ。落下した仲間をEキーで引き上げる「救助」アクションも用意されており、落ちた瞬間に即ゲームオーバーではなく「助けに行ける時間」が存在する。

ただし、助けに行く過程で自分まで引っ張られて落ちることが多い。このリスクとリターンの設計が絶妙だ。

3〜4人プレイでは、鎖の接続順をある程度設定できる。誰が誰と繋がれるかによって動きのパターンが変わるため、グループの人数や技量に応じてカスタマイズできる。

また、鎖は環境オブジェクトにも干渉する。柱の周りに巻きついたり、ギミックに引っかかったりすることもある。これは「意図しない事故」を生む原因でもあるが、同時に「地形を利用した鎖の活用法」という発見にもなる。プレイをしながら「こういう使い方もあるか」という発見が積み重なっていくのが、このゲームのゲームプレイ的な楽しさの一つだ。

鎖の長さはデフォルト設定のままだと固定だが、プレイヤーごとに位置を調整する自由度がある。全員がバラバラに動いてはダメで、かといって全員が密着しすぎると足場選びが難しくなる——この絶妙な距離感の管理が、繰り返しプレイするほどに洗練されていく感覚がある。

ゲームを彩るステージ構成と世界観

ゲームは縦長の一本道で構成されており、下から上へ向かう構造になっている。各エリアはテーマが統一されており、プレイしながら世界観の変化を感じられる点が気持ちいい。

スタートは地獄の溶岩地帯だ。赤黒い岩場、流れる溶岩、炎の柱——ここから逃げ出したいという気持ちが自然と生まれる。中盤になると廃墟化した都市のような場所が現れ、高層ビルの骨格を渡り歩くような場面が続く。Aqua Maze(水の迷路)、Subway Station(地下鉄駅)、The Harbor(港湾地帯)といったロケーションが続き、The Cityを越えた先にはThe Templeのような神殿的な空間もある。

終盤にかけて景色が徐々に明るくなっていき、最終的には雲の上の空白い世界に到達する。「ここまで来た」という視覚的な達成感が積み重なっていく設計で、落ちてもまた登りたくなる理由のひとつになっている。

ストーリーは基本的にほとんどない。「地獄に来てしまった人間が、地上への帰還を目指す」という設定だが、それ以上の説明はあまりない。重厚なナラティブを期待するとズレるが、逆にいえばゲームプレイに集中できる。

道中に仕掛けられた多彩なギミック

単純なジャンプとダッシュだけでなく、各エリアにテーマに合ったギミックが仕込まれている。これが「ただの登りゲー」にならない理由のひとつだ。

レーザー回避ギミックでは、全員が同じタイミングで動く必要がある。1人でも遅れれば全員がやり直し。ワイヤー渡りは鎖の引っ張り合いが最も激しくなる場面で、前後の人間が同調してワイヤーを進んでいかないと必ず落ちる。

ゴーカートのような乗り物は中盤の名物ギミックで、操縦する人間とそれに乗っている人間が意識を合わせないとコースアウトする。「左!右!違う!そっちじゃない!」という叫び声が飛び交う場面として、多くの実況動画で切り抜かれている。ハンドルを持った人が方向感覚を失い、乗っている全員が「待って待って待って!」と叫ぶ画が、このゲームの象徴的な瞬間のひとつになっている。

ドローン操作もある。こちらも複数人での協調が必要で、ドローンに乗った人間と操作する人間が分かれる場面では、初見プレイでほぼ全員が混乱する。

はしごやリフトを使った登り方も随所に用意されており、純粋なジャンプ以外の移動手段が多い。これによってエリアごとに求められるスキルが変わるため、「またジャンプだけか」という単調さが緩和されている。

また、特定の箇所ではオブジェクトを押したり引いたりする仕掛けもある。1人が装置を操作し続けている間に、残りのメンバーが先に進む——という役割分担が自然に生まれる場面だ。鎖で繋がれているため、「操作役が先に来られない」という問題も起きるが、そこで「どうするか話し合う」ことがまたゲームの一部になっている。

3つの難易度が「苦行」の度合いを変える

難易度は「ビギナー(初心者)」「ノーマル」「ラバ(溶岩)」の3段階。

ビギナーモードは、ポーズメニューから「これまでに到達した最高点にテレポートできる」オプションが使える。さらにゲーム内のチェックポイントも活用できるため、大きな落下があっても完全に最初からやり直す必要がない。初めてプレイする人や、友人グループに初心者がいる場合はここから始めるのが無難だ。「ビギナーは手抜きじゃないか」と思うかもしれないが、ビギナーでも十分に笑えるし、十分に難しい。

ノーマルモードは落ちたら基本的に落ちた場所付近に戻される。チェックポイントは存在するが、大きく落下すれば大幅に戻ることになる。「苦行ゲー」としての本領はここから。一度クリアした達成感と、何度も落ちる悔しさが共存する、このゲームの主戦場だ。

ラバモードは、溶岩が常に上昇し続ける。つまりゆっくりしている余裕がなく、立ち止まって相談する時間もない。次の一手を素早く判断しながら全員で上り続けなければ飲み込まれる。ノーマルで何度もクリアした経験者向けのモードで、初見でやるのは相当きつい。

これとは別に、Steamのリーダーボードシステムも実装されている。クリアタイムを世界のプレイヤーと比較できる機能で、ノーマルモードとラバモードのみが対象となる。スピードランコミュニティもあり、Speedrun.comには記録が集まっている。

なぜ2024年のSteamでここまで爆発したのか

「Getting Over It」以来の土壌に「Co-op」を乗せた

「Getting Over It with Bennett Foddy」が2017年に流行し、「Only Up!」が2023年にバイラルヒットを記録した流れがある。要するに「シンプルな操作で理不尽に落ちる」ゲームに対して、プレイヤーは既に免疫と好奇心を持っていた。

Chained Togetherはその「土壌」の上に「Co-op要素」を乗せた。落ちて怒るのは一人でも起きるが、友達と一緒に落ちることで笑いに変換される——この変換が面白さの核心だ。

ソロの苦行ゲーは、プレイヤーが自分の失敗と向き合う孤独な体験だ。Chained Togetherの失敗は、常に「誰か」との共同作業として起きる。「あいつが先走った」「俺の助けが遅れた」「全員のタイミングが合わなかった」——失敗の責任が分散されているから、怒りよりも笑いが優位になる。これがこのゲームの本質的な面白さだと思う。

ゲームデザインの観点から言うと、「失敗を笑いに変換する仕組み」を意図的に設計することは難しい。失敗はフラストレーションを生む方向にも作用しうるからだ。Chained Togetherが上手かったのは、「失敗の共有性」を担保したことだ。1人の失敗が全員の失敗になるとき、「あいつだけが悪い」という感情より「みんな一緒に落ちた」という共有体験になりやすい。ここが、このゲームが「友情破壊」ではなく「友情強化」になる場面が多い理由だと思う。

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配信・動画映えが別格

このゲームの人気爆発には、配信コンテンツとしての適性が決定的に貢献している。

落下の瞬間の絶叫、仲間への怒鳴り声、「助けに行ったら自分も落ちた」という二次災害、乗り物ギミックでの大混乱——これらはすべて映像として映える。文字で読んでも面白いが、実際の声と映像で見ると10倍面白い。

2024年6月のリリース直後から大量の実況動画・配信がアップされた。にじさんじのVTuberたちは複数のコラボ配信でこのゲームを取り上げており、Luxiem(4人グループ)が7時間14分でクリアした配信や、TEAM CHEESEが4人でビギナーモードを4時間37分でクリアした配信などが記録されている。最短で何時間クリアできるかを競う配信スタイルも生まれ、コンテンツとして定着した。

海外でも同様で、一部の動画は70万回再生を超えた。「鎖で繋がれた協力ゲーで全滅した瞬間の反応集」というだけでコンテンツになる。ストリーマーにとってこれほど使いやすいゲームはなかなかない。

実際、リリースから最初の1週間で約8万人が同時接続したという数字は、口コミと配信の連鎖的な拡散なしには生まれない。

500円台という絶妙な価格設定

このゲームの価格は580円前後(セール時は400円台)だ。

「2人でプレイして4時間楽しんだ。1人300円の体験でこれはコスパ最高」というSteamレビューが、このゲームの価値提案を完璧に言語化している。高品質なAAAタイトルが1万円前後する中で、580円でこの体験量を提供できるというのは、インディーゲームの強さを体現している。

さらに重要なのが「Remote Play Together」の活用だ。Steamのこの機能を使えば、Chained Togetherを持っているのが1人だけでも、最大4人で一緒に遊べる。つまり「580円で4人分の体験が作れる」わけだ。この事実がSteamレビューで何度も言及されている。

リリース記念セールで552円!鎖に繋がれながらみんなで協力して頂上目指すぞ!ワーキャー言いながらプレイが面白い!Remote Playだと4分割で遊べる

引用元:Steamユーザー

「友達に気軽に薦められる価格」という点も口コミを加速させた要因だ。1,000円以下なら「面白いからとりあえず買ってみて」という誘い方ができる。Discordのサーバーで「580円のゲームあるんだけど一緒にやらない?」という声かけが成立する価格帯だ。

友情のリトマス紙として機能する

「友情破壊ゲー」というキャッチフレーズで語られることが多いこのゲームだが、実際にはその逆——「友情強化ゲー」になる体験も多い。

落ちて怒鳴り合い、助け合い、成功して歓声を上げる。一緒に苦しんで一緒に達成する体験は、普通のゲームではなかなか生まれない結束感を作る。「あのとき全員で落ちたね」という記憶は、クリアした記憶と同じくらい鮮明に残る。「このゲームで仲良くなった」という感想も一定数ある。

もちろん、本当に仲が壊れるケースもある。「ケンカになった」「友情崩壊した」というSteamレビューも存在する。ただ、こういうレビューの多くは文脈を読むと冗談半分で書いているものが多い印象だ。本当に揉めるかどうかはプレイヤーの相性次第であって、ゲームの欠点とは言いにくい。

「友情のリトマス紙」という表現が出てくる理由もここにある。「失敗を笑えるか」「他人を責めすぎないか」「諦めずに続けられるか」——このゲームで遊んでいると、一緒にプレイしている人のキャラクターが見えてくる。良い意味でも悪い意味でも。むしろそれがこのゲームの醍醐味とも言える。

「鎖に繋がれているだけで信じられないほど難しくなる」——これはゲームウィズのレビューの表現だが、まさにそれが核心だ。単純な登りゲームに「繋がれている」というメカニクスを加えるだけで、人間同士の関係が反映されるゲームになっている。このシンプルな足し算が、Anegar Gamesが持ち込んだ本当の「発明」だと感じる。

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実際にプレイして感じること——良い点と気になる点

Chained Together アドベンチャー スクリーンショット3

良い点:鎖メカニクスの完成度が高い

鎖でつながれているという制約が、単なる縛りプレイではなく、ゲームプレイの根幹になっている点が素直に上手いと思う。

鎖は「足手まとい」でありながら同時に「道具」にもなれる。クレーンのフックに1人がぶら下がって全員の位置を安定させる、落下中の仲間を鎖で食い止める、鎖を使ってスイングするように移動する——こういった応用が自然とプレイの中で生まれてくる。ゲームが明示的にチュートリアルを用意しているわけでなく、「そういうこともできるんだ」という発見がある。

特に救助システムが良く出来ている。落ちた瞬間に即ゲームオーバーではなく、Eキーで仲間が引き上げるチャンスがある。このワンクッションが、「もう少しで助かった」という緊張感と「助けようとして一緒に落ちた」という笑いの両方を生み出している。

救助が成功したときの「よっしゃ!」という達成感は、通常のクリアとは別の種類の達成感だ。「俺が仲間を救った」というヒーロー感がある。逆に救助に失敗して2人で落ちたときの「え〜!」という脱力感もセットで、このゲームの感情的な振れ幅を作っている。

良い点:景色の変化がモチベーションを維持させる

「なんでこんなゲームをやっているんだろう」と思いながらも続けられる理由のひとつが、ステージの景色変化だ。地獄の底の赤黒い世界から始まり、廃都市的な中盤を経て、終盤には明るく開けた空間へと変化していく。登れば登るほど世界が変わる体験は、単純に気持ちいい。

「あそこまで来た」という視覚的な達成感があるから、落ちてもまた登りたくなる。この「もう1回やる気」を維持させる設計がしっかりできている。Getting Over Itのような閉塞感はなく、前進していることが視覚的に分かる設計になっている。落ちても「また同じ場所から」ではなく「また景色を見ながら進む」という感覚がある。

地獄エリアから地上エリアに切り替わる瞬間が特に気持ちいい。背景の色が変わり、BGMのテイストが変わり、「脱出できた感」が生まれる。苦労して登り続けた先に「別の世界」が広がっているという体験は、このゲームを単なる「落ちるゲー」ではなく「旅」として感じさせる。短い旅ではあるが、旅の感覚はある。

良い点:ボイスチャットとの相性が最高

Discord通話やSteamのボイスチャットを使いながらプレイすることで、このゲームの面白さは数倍になる。落ちる瞬間の絶叫、助けを求める声、「お前のせいだ!」という笑いながらの非難——これらすべてが体験の一部だ。

テキストチャットだけだと「またかよ」で終わるような場面が、ボイスチャットだと「えー!うそ!」という笑いになる。Co-opゲームにおけるボイスコミュニケーションの重要性を改めて感じさせてくれる作品だ。「友達の悲鳴、焦り、そしてときおり漏れる笑い声」が楽しさの源——という4gamerのレビューの表現が、的確にこのゲームの体験を言い表している。

良い点:グラフィックが価格の割に質が高い

580円のインディーゲームに対して正直なところ「まあそれなりかな」と想定していたが、予想以上に映像が綺麗だ。地獄のエリアの溶岩の光沢、廃墟ビルの質感、雲の上の空の青さ——3Dグラフィックのクオリティは価格帯を超えている。

キャラクターデザインも独自性がある。性能差はなく、見た目のカスタマイズができるスキンが用意されているが、デフォルトのキャラクターたちは「真剣な眼差しをした謎のランナー」という感じの、ちょっと笑える格好よさがある。コンセプトと見た目のずれ具合が、このゲームのゆるさを象徴している。

フレームレートも安定していて、低スペックのPCでも動かしやすい設計になっている。「グラフィックに力を入れた結果、動作が重くなる」という問題がなく、気軽にプレイを始められる。高解像度モニターでプレイするとディテールがより楽しめるが、そこまで要求しなくても十分に綺麗に見える。

気になる点:ソロプレイは正直物足りない

1人でプレイすると、鎖メカニクスが機能しないため「ただの登りゲー」になる。ステージのギミックは1人用に調整されているものもあるが、体験の8割はCo-opから生まれている。Steamでは「ソロは物足りない」「友達が必要なゲーム」という意見が一定数ある。

worth playing solo? (ソロでプレイする価値ある?) → It’s too easy solo and not really worth buying just for that. (ソロだと簡単すぎるし、そのためだけに買う価値はない)

引用元:Steamコミュニティ ディスカッション

ソロで完全クリアを目指すならそれはそれで楽しめるが、このゲームの真髄を体験するには少なくとも2人必要だ。

気になる点:本編のボリュームはコンパクト

メインルートのクリアに要する時間は平均5〜8時間程度で、慣れた2人組なら4時間を切ることもある。Steamの統計データでは全体の平均プレイ時間は5時間36分、コンプリートプレイヤーの平均は13時間15分と出ている。インディーゲームとしては妥当なボリュームだが、「しっかりしたボリュームのCo-opゲームを求めている」という人には物足りなく感じるかもしれない。

ただし、バージョン1.8.4からSteamワークショップ対応が追加されており、コミュニティが作ったカスタムマップをプレイできるようになった。本編クリア後も遊び続けたい人にとっての出口が用意されている点は評価できる。

気になる点:人数の多いほうが実は楽になる場合がある

「4人でやると難しそう」と思われがちだが、プレイヤー数が増えると難易度が下がる側面もある。鎖の使い方の選択肢が増え、助け合いの手段も増えるためだ。逆に2人プレイは「鎖の管理を少人数で担う」ため、それはそれで独特の難しさがある。

どの人数でも楽しいが、ゲーム内には「プレイヤーが少ないほど難しい」という設定が明示されており、慣れてきたらあえて少人数に挑むという遊び方もできる。

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Steamレビューから見えるリアルな声

喜んでいる人たちの言葉

Steamには5万件以上のレビューが集まっており、全体の89〜90%がポジティブ評価だ。日本語レビューだけでも240件以上が「圧倒的好評」評価となっており、国内でも高い支持を得ている。

ポジティブな声で多いのは「笑いが止まらない」というものだ。

100回くらいまで、ただ落ちるだけで大爆笑だった。それが終わってもまだ登りたくなる。こんなに中毒になるゲームは久しぶり。

引用元:Steamレビュー

Remote Play Together(ゲームを持っていない友達でも一緒に遊べるSteamの機能)での遊び方を紹介しているユーザーも多く、「1本買えば4人で遊べる」という点が高く評価されている。

2人でプレイしてクリアまで4時間弱。500円でこのボリューム・満足感は十分すぎる。腹を抱えて笑いながらプレイできた。

引用元:Steamレビュー

「達成感」についての声も多い。クリアしたときの喜びよりも「一緒に苦労した記憶」が強く残るという感想が目立つ。このゲームで仲良くなった、あの時の体験は忘れられない、という種類の感想だ。

友人と一緒に努力を重ねてゴールしたときの達成感は忘れられない。このゲームで一緒になって頑張ってきた思い出は、一生の宝になっていく気がする。

引用元:Steamレビュー

批判的な声も正直に拾う

全体的に高評価ではあるものの、批判的なレビューも存在する。

Way too overhyped for what it is. Nothing really new—just players literally chained together climbing absurd obstacles. Casual gamers will quit after 10 minutes.

引用元:Steamレビュー(英語)

「過剰に話題になりすぎ。新しさがない」という意見だ。これは正直否定しにくい。ゲームシステム自体の新規性はそれほど高くなく、「Only Upの友達版」と言われればそれまでだ。ハイプに乗って買ったが期待値との差に不満を感じた人が一定数いるのは事実だろう。

ソロでやるためだけには買わないほうがいい。友達がいないと意味がない。

引用元:Steamレビュー

これも正直なところで、このゲームは「一緒に遊べる友達がいる人向け」であって、ソロゲーマーには明確に向いていない。買う前に「一緒に遊べる相手がいるか」を確認することが重要だ。

I loved and enjoyed the game, but it was over far too quickly for the full price. It would have been perfect at half the price. (ゲーム自体は楽しかったが、クリアが早すぎる。半額なら完璧だった)

引用元:Steamレビュー(英語)

ボリュームの短さへの不満も根強い。「楽しかったが短い」という声は、ゲームの質が高いからこそ出てくる不満でもある。もっと遊びたかったという気持ちの裏返しとも読める。

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「Only Up!」「Getting Over It」との比較

Chained Together アドベンチャー スクリーンショット4

ジャンルとしての系譜

「Getting Over It with Bennett Foddy」(2017年)は、壺から生えたおじさんがハンマーを使って山を登るという独創的なゲームで、落ちても怒らない哲学を問いかける体験として有名になった。「Only Up!」(2023年)はグラフィックを強化したアップデート版のような位置づけで、高品質なビジュアルとやはり理不尽な落下で話題になった。Chained Togetherはその流れの中に位置しながら、決定的な差別化ポイントを持っている。

3作品に共通するのは「高く登り、落ちたら大きくやり直し」という基本構造だが、Chained Togetherがそれまでの作品と違うのは「Co-op専用設計」という点だ。Getting Over ItもOnly Up!もソロプレイが基本で、Co-opはあったとしても後付け的な要素だった。Chained Togetherは最初から複数人での体験を中心に据えて設計されており、鎖のメカニクスがその証明だ。

「Jump King」(2019年)も苦行ジャンルの重要な作品だ。バッドエンドの城に閉じ込められた主人公が、ジャンプだけで塔の頂上を目指す。操作系はシンプルで理不尽な落下設計のゲームで、クリアまで数十時間かかるプレイヤーも多い。Chained Togetherはこれらの先達が積み上げた「苦行ゲーというジャンルへの親しみ」の上に立っている。

なぜChained Togetherのほうが「笑える」のか

Getting Over Itで落ちたとき、怒りや絶望は自分一人で抱える。Chained Togetherで落ちたとき、その瞬間を友達と共有する。この違いが、感情の体験を根本的に変える。

「あいつのせいで落ちた」という他責性と、「でも一緒に頑張った」という連帯感が同時に存在するのが、このゲームの独自性だ。ソロの苦行ゲーにはない「誰かと共有する失敗体験」が、笑いに変換される仕組みになっている。

類似の設計を持つゲームとして「Climber Animals: Together」がある。470円でプレイできる動物たちのCo-opクライミングで、Chained Togetherよりもパーティゲー寄りのカジュアルな設計だ。同じ「Co-op登りゲー」でもテイストが違うため、Chained Togetherを遊んでから次のCo-op体験を探す人には選択肢として面白い。

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Chained Togetherの独自性は「鎖という物理的な繋がり」と「地獄から天国への一本道」というシンプルかつ明快なコンセプトにある。余計なものが削ぎ落とされているからこそ、初めて遊ぶ人でも5分でゲームの本質を理解できる。理解した上で全員が笑えるゲームになる。

また、このゲームは「Co-op苦行ゲー」というニッチに最初に飛び込んだ作品でもある。後から「鎖で繋がれて登る」系のゲームは増えたが、2024年の時点でその先駆けとして話題を独占したことが、このゲームの歴史的な位置づけを作っている。先発優位は強い。

Steam ワークショップで広がるリプレイ性

コミュニティが作るカスタムマップ

バージョン1.8.4で追加されたSteamワークショップ対応は、このゲームのリプレイ性を大きく引き上げた。コミュニティが作成したカスタムマップを自由にダウンロードしてプレイできる。

遊び方はシンプルで、ゲーム内のスタートメニューにある「ワークショップ」ボタンからサブスクライブし、ゲーム作成時にモードとして選択するだけ。本編以外の追加ステージとして機能するため、本編クリア後も楽しみ続けられる。

マップ制作ツールも公式が提供しており、作ったマップをゲーム内から直接Steamワークショップに投稿できる。公式開発者はDiscordサーバーを運営しており、マップ制作の相談やフィードバックを受け付けている。小さな開発チームながら、コミュニティとの連携を大切にしていることが伺える。

ワークショップマップのバリエーションも幅広く、本編より難しいマップ、コメディ的なコンセプトのマップ、ショートカット中心の上級者向けマップなどが存在する。「本編を10回以上クリアした」というリピーターが次に進む先としての機能も果たしている。

本編以外の楽しみ方

本編クリアの達成感はもちろん重要だが、クリアした後も遊べるコンテンツがある点は評価できる。ワークショップマップの中には本編より難しいものも易しいものも存在し、「友達のカスタムマップで遊ぶ」という体験も可能だ。

リーダーボードでタイムアタックに挑む遊び方もある。ノーマルモードとラバモードのみが対象で、世界のプレイヤーとクリアタイムを競う。スピードランの記録はSpeedrun.comにも集まっており、タイムを縮めることに特化した層も存在する。

同じジャンルのゲームで長時間遊べるものを求めるなら、「ICARUS」のようなセッション制Co-opサバイバルという選択肢もある。プレイのベクトルは全く異なるが、「友達と一緒に何かに挑む」という体験は共通している。

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開発チーム「Anegar Games」とゲームの背景

Chained Together アドベンチャー スクリーンショット5

小規模チームが作ったバイラルヒット

Chained Togetherを作ったのは「Anegar Games」という小規模インディーデベロッパーだ。大手パブリッシャーのバックアップなしに、Steamで自分たちのゲームを売るという形でリリースされた。

2024年のSteam販売本数ランキングで4位に入り、推定売上は1,100万ドル以上(開発者への純売上は約337万ドル)という数字は、インディーゲームとしては破格の成功だ。リリース後1週間で8万人同時接続を達成し、ピークでは94,480人に達した。

このゲームが成功した背景には「コンセプトの明快さ」と「価格の手頃さ」がある。複雑なメカニクスを詰め込まず、「鎖で繋がれて登る」という一点に集中した設計が、シンプルな口コミを生みやすかった。「友達に話したくなる体験」を作ることがインディーゲームの生存戦略として正解であることを、このゲームは証明している。

インディーゲームとして見たとき、このゲームが示したもの

ゲーム業界全体で見ると、Chained Togetherの成功は「何が売れるか」の参考事例として注目されている。大手スタジオのAAAタイトルが多額の開発費を投じながら思うように売れない事例が続く中、Anegar Gamesのような小規模チームが580円で数百万本を売った事実は、インディーゲームの可能性を改めて示した。

「コンセプトがシンプルで伝わりやすい」「友達に話したくなる体験がある」「価格のハードルが低い」——この3点が揃ったインディーゲームは、大きなマーケティング費用がなくても口コミだけで広がれる。Chained Togetherはその理想形に近い。

同じく口コミで広がったインディーゲームとして「Super Auto Pets」がある。動物を並べるだけのオートバトラーが無料でプレイできるというシンプルさで、気づいたら数百時間プレイしていたという人が続出した。ゲームの複雑さとゲームの面白さは比例しない——というのがこれらのゲームが示した命題だ。

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ゲームの技術的な背景と更新状況

リリース後もパッチを重ねており、バランス調整やバグ修正が続けられている。日本語対応はバージョン1.7.8で実装されており、現在は日本語でプレイできる。

ただし、「大型の新コンテンツは今後大幅には追加されない可能性がある」という情報も出ている。本編のボリューム自体がコンパクトに設計されているため、「大型アップデートで遊び方が根本から変わる」という期待は持ちすぎないほうがいいかもしれない。それよりもワークショップのコミュニティコンテンツに期待するのが実際的だ。

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具体的なプレイ体験の解剖

最初の30分で何が起きるか

最初のエリアは地獄の溶岩地帯だ。溶岩が周囲に見える中、キャラクターが鎖で繋がれた状態でスタートする。最初のうちはジャンプのタイミングを合わせることさえ難しい。1人が飛んで、もう1人がまだ動いていない——それだけで鎖が引っ張り合い、両方が落ちる。

最初の落下後、ほとんどのプレイヤーは笑う。「えっ何これ」という混乱が笑いに変わる瞬間が、このゲームへの入口だ。最初の10分で3〜5回は全員が笑うような場面が生まれる。これが最初のフックになっている。

15分も経てば「鎖の感覚」がなんとなく分かってくる。相手の位置を意識しながら動く習慣がつく。「前の人が飛ぶのを待ってから飛ぶ」という当たり前のルールを体で覚える時間帯だ。30分を過ぎる頃には、「一緒に登る楽しさ」と「一緒に落ちる絶望」が交互に来るようになり、それが心地よいリズムになっていく。「次の足場まで行けたら今度こそ大丈夫」という感覚が、プレイヤーを前に引っ張る。

ゲームの最初のエリアはチュートリアル的な設計になっていて、極端に難しい場所はない。プレイヤーが「鎖がある状態での動き方」を自然に学べる難易度配置になっている。この点で、Chained Togetherは「いきなり理不尽な難しさで叩き落とす」タイプではなく、「徐々に難しくなっていく」設計を選んでいる。Getting Over Itが冒頭から全力で理不尽だったのとは対照的だ。

初心者がよくやるミスのパターン

一番多いのは「先走りすぎ」だ。自分が登れそうな場所を見つけて飛び込んでしまうと、鎖が伸びきって後ろの人を引っ張る。後ろの人が準備できていなければ当然落ちる。チームでプレイしているにもかかわらず「ソロのクセ」で動いてしまうのが最初の壁だ。「全員の状況を確認してから動く」という習慣をつけるだけで、クリア率が大幅に上がる。

次に多いのが「助けに行って一緒に落ちる」パターン。Eキーで落下中の仲間を引き上げようとするのだが、操作タイミングがズレると自分まで引っ張られる。「助けに来た人まで落ちた」という体験は、このゲームの名物的な瞬間だ。最初のうちは救助を試みることで状況が悪化することが多いが、それが笑いになる。

乗り物ギミックでのパニックも定番だ。ゴーカートのような乗り物は複数人で動かすのだが、1人が操作方向を間違えると全員でコースアウトする。「左!右!違う!」という絶叫は、中盤ステージで必ず一度は起きる。

「全員の声が届いていると思っていたが、誰かだけボイスチャットが繋がっていなかった」という通信系のトラブルも実際には多い。プレイ前にDiscordで全員の声が聞こえているか確認しておくことが地味に重要だ。ボイスなしで鎖を管理するのは、難易度が体感で倍になる。

上達するとどうなるか

何時間かプレイすると、プレイヤーたちは自然と「鎖の使い方」を身につける。1人が先行して足場を確認し、もう1人が追随するという役割分担が生まれる。落下しそうになった仲間を正確なタイミングで引き上げられるようになると、そこに「おお!」という感動が生まれる。

上手くなると鎖を積極的に活用する場面が増える。足場がない場所でも鎖で体を支え合ってジャンプするテクニックや、1人が固定点になって残りのメンバーが鎖伝いに移動する「人間足場」戦法も生まれてくる。こういったアドホックな連携が生まれたとき、Co-opゲームとしての達成感がある。

ある程度上達したグループでのプレイは、初回プレイとは別のゲームになる。混乱から笑いへ、笑いから連携へ、連携から達成へ——この成長のカーブが、プレイヤーをリピートさせる理由のひとつだ。「あのときはあんなに笑えていたのに、今は慣れちゃった」と感じたとき、ラバモードやワークショップマップに挑戦するのが自然な流れになる。

スピードランの視点でいえば、このゲームはルート選択の最適化が重要になる。翼(Wings)のショートカットをどう使うか、どのギミックをどの順番で攻略するか——こういった要素が上級者の遊び方として確立されている。Speedrun.comのコミュニティではソロ・2人・4人のそれぞれのカテゴリで記録が争われており、純粋なタイムアタックとしての競技性も持ち合わせている。

クリアした後に残るもの

このゲームをクリアしたとき、「達成感」よりも「一緒にやった記憶」のほうが強く残る。「あの乗り物で全員落ちたとき本当に笑った」「あの崖で10回落ちてやっと越えた」「あのときお前のせいで落ちたよな」という具体的な瞬間の記憶が、ゲーム体験として刻まれる。

ゲームクリア後に「またやろう」となるか「お腹いっぱい」となるかは人によるが、「一緒にやってよかった」という感想はほぼ全員が持つ。580円でそういう体験が作れるなら、このゲームは十分に価値がある。

クリアタイムのデータが表示される仕様も良い。「自分たちは何時間かかったか」という記録が残り、「次はもっと早くできるか?」という動機になる。初クリアが6時間かかったグループが、2周目は3時間で終えた——という体験は珍しくない。上達の実感がある。

そしてクリア後の話題として「次は誰を誘うか」という発想が自然と生まれる。「これ、○○と一緒にやったら絶対面白い」というシェア衝動は、このゲームが口コミで広がった最大の理由だ。体験した人が「伝えたくなる」設計になっている。

プレイするときのちょっとしたヒント

Chained Together アドベンチャー スクリーンショット6

初めて遊ぶならビギナーモードから始める

「ビギナーモードは手抜き」という考えは最初から捨てたほうがいい。ビギナーモードでも十分に難しいし、十分に笑える。最初からノーマルで遊んで「つらすぎる」となり、途中でやめてしまうよりも、まずビギナーでゲームの感触をつかんでから難易度を上げるほうが結果的に楽しめる。

一度クリアした後のラバモードは確実に別ゲームとして楽しめる。「ノーマルで一通り楽しんだ」という状態で挑むのがベストタイミングだ。

ボイスチャットは必須と思っておく

このゲームはテキストチャットでは体験の半分しか楽しめない。Discordか何かでボイスを繋ぎながらプレイすることを強くすすめる。声での「待って!」「右!」「落ちる!」がこのゲームの体験の半分を占めている。テキストで「m9(^Д^)プギャー」と送るのと、直接笑いながら「お前のせいやんけ!」と言うのでは体験が全然違う。

Remote Play Togetherを活用する

全員がゲームを持っている必要はない。ゲームを持っている人が1人いれば、Remote Play Togetherで最大4人まで一緒に遊べる。「友達はゲームを買う気はないけど一緒に遊びたい」という状況でも使えるため、ハードルをかなり下げられる。ただしRemote Playはホスト側の接続環境に依存するため、回線が安定している環境で使うことをすすめる。

翼(Wings)コレクションはクリア後でいい

マップ内に隠された金の翼10枚はショートカットとして使えるようになるアイテムだ。初回プレイ時に全部集めようとするとルート外を探し回って余分に落ちるリスクが高い。まず普通にクリアして、「もう一度遊びたい」と思ったタイミングで翼コレクションに取り組むのが効率的だ。

「絶対クリアしたい人」は慎重に選ぶ

グループの中に「絶対クリアしたい」「失敗が許せない」という気持ちが強い人がいると、空気が重くなりがちだ。このゲームは失敗を笑えるかどうかが体験の質を決める。失敗を笑える人、もしくは笑えるようになりたい人とプレイするのが一番楽しい。

配信・動画コンテンツとして見たChained Together

なぜストリーマーたちがこのゲームに殺到したのか

Chained Togetherが2024年に爆発した背景に、配信コンテンツとしての適性が絡んでいることはすでに触れたが、もう少し掘り下げてみる。

ゲームを配信するとき、視聴者が最も反応するのは「プレイヤーの感情の動き」だ。驚き・笑い・怒り・達成感——これらが連続して起きるゲームは視聴者を引きつける。Chained Togetherは構造的に、1〜2分に1回は何かが起きる設計になっている。落下、救助、乗り物事故、ギミック失敗——空白がない。

さらに「全員が同じ画面に映っている」という視覚的な分かりやすさがある。4人が画面内で同時に動いていて、全員が落ちる瞬間は映像的に一目で分かる。視聴者が「あ、落ちた!」と理解するのに説明が要らない。複雑なUIや多くの情報を整理する必要がなく、見ているだけで状況が把握できる。

コラボ配信としての設計も完璧だ。複数の配信者が一緒に遊んでいるとき、それぞれの反応の違いが見える。慎重な人とガンガン進む人が鎖で繋がれると、必ず衝突が生まれる。この「キャラクターの違いが衝突を生む」構造が、コラボコンテンツとして機能する。にじさんじのVTuberたちが次々とこのゲームでコラボを組んだ理由はここにある。

視聴者側から見ても面白い理由

プレイしている本人だけでなく、見ている側も楽しめるのがChained Togetherの配信としての強みだ。「次にどこで落ちるか」「誰が原因になるか」というサスペンスが常に存在する。落ちる瞬間の「あー!」という視聴者の反応と、プレイヤーの絶叫がシンクロするとき、配信体験として完成する。

また、「自分でもできそう」という感覚がある。操作が複雑ではないため、視聴者が「俺も友達と試したい」と思いやすい。実際にこのゲームが口コミで広がった経路の多くは「配信で見て、すぐ友達を誘った」というパターンだ。これがゲームの販売に直接結びついた。

このゲームが向いている人・向いていない人を整理する

こういう人には強くすすめる

「一緒にプレイできる友達がいる人」には迷わずすすめる。Discord通話しながら、2〜4人で遊べる環境があるなら、580円という価格でここまで笑えるゲームは他にほとんどない。

配信や動画制作をしている人にも向いている。落下の瞬間、絶叫、全員同時落下——これらはすべて撮れ高になる。実際、リリース直後に大量の動画が上がり、それが口コミを加速させた。コンテンツとして使いやすいゲームは珍しくないが、ここまで「映える失敗」が連続するゲームは少ない。

「苦行ゲーが好き」「Getting Over It」や「Jump King」を経験してきた人にも刺さる。Co-opという軸が加わることで、ソロの苦行とは違う体験ができる。既に登りゲーのジャンルを知っている人ほど、このゲームの「鎖」という追加の仕掛けの妙を理解できる。

「新しいものを試してみたい」という好奇心ドリブンのゲーマーにも合う。流行りものをとりあえず体験してみたい、という動機でも580円なら「試してみる」ハードルは低い。

「久しぶりに友達と一緒にゲームをやりたい」という人にも刺さる。普段あまりゲームをしない友達でも、このゲームのシンプルな操作と「笑える失敗」のおかげで参加しやすい。ゲーマーとノンゲーマーが混在するグループで遊べる数少ないゲームのひとつだ。

こういう人には正直向いていない

ソロでじっくり遊びたい人は、本当に向いていない。ゲームとして成立はするが、このゲームの面白さの8〜9割はCo-opから来ている。ソロでプレイするなら、Getting Over Itのほうが明確なコンセプトで作られているぶん体験として整っている。

「長時間遊べるボリューム感」を重視する人も少し考えたほうがいい。2人でビギナーモードなら4〜5時間でクリアできてしまう。コンパクトな体験として割り切れるならいいが、「10時間以上遊べるゲームを求めている」という人には物足りなく感じる可能性が高い。ワークショップマップで補完できるとはいえ、本編のボリュームは短めという事実は変わらない。

「失敗することが苦手」「効率的に進めたい」という人にも向かない。このゲームは非効率さこそが楽しさで、思い通りにいかないことを笑いとして受け入れられるかどうかが分岐点になる。Co-opゲームなのに「俺はちゃんとやっているのに相手がミスする」という状況に強いストレスを感じるタイプの人は、プレイ前に自分の気質を確認したほうがいい。

「一緒に遊べる友達がいない」という状況の人も購入を急ぐ必要はない。友達ができてからでいい。このゲームは2026年時点でも遊べる状態で存在しているし、これから友達ができたときに「こんなゲームがあるよ」と誘う材料として覚えておくだけでも十分だ。ゲームは逃げないし、セール時を狙えば400円台で買えることも多い。

「競争が好き」「勝ち負けを明確にしたい」という人にも少し向かないかもしれない。このゲームは勝敗がなく、全員で協力するか全員で落ちるかのどちらかだ。誰かが特別に上手くて「俺が引っ張っている」という状況になりがちで、それがストレスになる場合がある。全員が同じくらいの実力だと最も楽しい。

Co-opサバイバル系やCo-op RPG系のゲームが好きで、「しっかりとした物語と世界観のあるCo-opゲームが欲しい」という人は、Chained Togetherは合わない可能性がある。このゲームにはストーリーがほぼない。「なぜ地獄にいるのか」「誰が助けを求めているのか」という背景は薄く、あくまでゲームプレイの体験がすべてだ。

まとめ:580円で買える「友達との体験製造機」

Chained Togetherは、ゲームとして複雑なことは何もしていない。鎖で繋がれて、地獄から登る。それだけだ。

でも、その「だけ」の中に、Co-opゲームの本質が詰まっている。一緒に失敗する体験、一緒に達成する体験、笑いながら怒る体験——これらは映画を見たり音楽を聴いたりするような消費型の体験ではなく、自分たちで作り上げる参加型の体験だ。

2024年のSteamバイラルヒットは決して偶然ではない。ピーク94,480人の同時接続も、販売本数4位という実績も、「遊んだ人が友達に話したくなる体験」を届けられたからこそだ。インディーゲーム開発チームのAnegar Gamesが580円という価格設定とシンプルなコンセプトで証明したのは、「面白さのコアを見極めてそこに集中する」というゲームデザインの力だ。

気になる点として挙げたソロ向きでない点、本編のコンパクトなボリュームについては正直に書いた。これらは事実として存在する制限だ。でも「友達と遊べる環境がある人」という条件が揃っているなら、このゲームは今すぐSteamカートに入れていい。

一緒に笑えて、一緒に怒れて、そして一緒に達成できる——それが「Chained Together」だ。地獄の底から出発して、全員で天国に辿り着いたとき、その4〜6時間のカオスはきっと宝になる。

「ジャンプ1つで驚くほど盛り上がる」という感想が多くのレビューに書かれているが、これはまさにこのゲームの本質を言い当てている。豪華な演出も、複雑なシステムも必要ない。鎖で繋がれた仲間と一緒にジャンプをするだけで、あの笑いが生まれる。インディーゲームができる最高の仕事を、このゲームはやり切った。2026年現在も現役で遊べるゲームとして、友達を誘うのに遅すぎるタイミングはない。

長く続くCo-opゲームを求めるなら、「Across the Obelisk」のような最大4人のデッキ構築ローグライクという選択肢もある。ボリュームも戦略性もChained Togetherとは異なるが、「友達と一緒に何かに挑む」という共通体験は持っている。

Chained Togetherは580円のゲームだが、580円以上の体験を生む可能性がある。その体験は遊んだ仲間との「あのとき全員で落ちたね」という会話として、ゲームが終わった後も続く。こういうゲームが、ゲームの持つ本当の価値だと思う。

Steam評価は5万件以上で89〜90%のポジティブ評価、同時接続ピークは94,480人、販売本数は2024年のSteamで4位——数字で見るとこのゲームがどれだけ多くの人に受け入れられたかが分かる。でも数字よりも大事なのは、それだけ多くの人が「一緒にプレイした誰か」との記憶を持っているという事実だ。そのうちの1人になる機会は、まだある。

Chained Together

Anegar Games
リリース日 2024年6月19日
サービス中
価格¥580
開発Anegar Games
日本語非対応
対応OSWindows
プレイ形式シングル / マルチ
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