初めてHUMANKINDで文明を建設したとき、ある瞬間に手が止まった。
石器時代のノマドとして草原を渡り歩いていた部族が、エジプト文明のテクノロジーを吸収してナイル川沿いに都市を築き、やがてギリシャの哲学を学んでアゴラを立て、そのままローマの軍団を組織して征服戦争に乗り出す——。これが一本のゲームの流れだ。「一つの文明を育てるのではなく、時代ごとに文明そのものを乗り換えながら歴史を書き換えていく」というコンセプトを実際に体験した瞬間、Civilizationシリーズとは根本的に違う何かがここにあると分かった。
HUMANKIND(ヒューマンカインド)は、フランスのAmplitude Studiosが2021年8月にリリースした歴史ターン制ストラテジーだ。開発元はEndless Legendシリーズでも知られる。Steamでのピーク同時接続は約6万人を記録し、現在は約534人が日々プレイしている。「新しいCivilization」として大きな期待を背負いながら登場し、賞賛と批判の両方を受け続けてきたゲームだ。
このゲームの最大の特徴は「文明の乗り換え」というメカニクスだ。Civilizationなら最初から最後まで日本文明なり中国文明なり、一つの文明でプレイする。HUMANKINDでは違う。石器時代、古代、古典、中世、近世、近代、現代の7つの時代それぞれに60以上の文明が用意されていて、時代が進むたびに新しい文明を選んで自分の国家に「吸収合併」できる。ネアンデルタールとして旅立ち、エジプト人になり、ローマ人になり、オスマン人になり、イギリス人になり、最終的にどんな固有名詞も持たない「あなただけの文明」になる。
その文明の積み重ねが、そのままゲーム内の「有名度(Fame)」スコアに変換されて勝敗を決める。領土を広げることよりも、人類史に名を残す偉業を積み上げることで勝利に近づく。この設計の違いが、Civilizationとはまったく異なる「歴史の語り方」をHUMANKINDに与えている。
こんな人に読んでほしい

HUMANKINDは2万文字を超える記事になった。全部読んでほしいが、まず「自分が楽しめるゲームか」を確認してほしい。
Civilizationシリーズをやり込んで「新しい体験」を求めている人
Civ6やCiv5で数百時間遊んで、パターンが見えてきた人には特に勧めたい。HUMANKINDの文明乗り換えシステムは、「どの文明で何時代に何の遺産を押さえるか」という計画立案の楽しさが完全に別物だ。石器時代から現代まで一本道で育てるのとは違う手応えがある。歴史ストラテジー好きなら一度は触れておきたいゲームだ。
歴史や文明の交錯に興味がある人
「もしエジプト文明がローマの後継者になったら」「バイキングが東洋の技術を取り込んで近世日本のような国家を作ったら」——そういう「歴史のIF」を自分で書きたい人にとって、HUMANKINDはほぼ理想的なサンドボックスだ。文明の組み合わせによって生まれる固有ユニットや建造物の組み合わせは数千通り以上あって、同じプレイになることがない。
友人と長期間の対戦がしたい人
最大8人でのマルチプレイに対応していて、特に非同期マルチプレイ(「Pass & Play」方式)が充実している。リアルタイムに全員が集まれなくても、それぞれのターンを都合のいいタイミングで進められる設計だ。Steam Deckにも対応しているので、通勤中にターンを進める人もいる。Civilizationシリーズの「ターン回し」感覚でやりたい人には向いている形態だ。

HUMANKINDとは何か ― Amplitude Studiosが作った「歴史の書き換え」

HUMANKINDを語るには、まずAmplitude Studiosというスタジオを知っておいたほうがいい。フランスのパリに本拠を置くこのスタジオは、2011年創業で「Endless Space」「Endless Legend」シリーズを手がけてきた。独自のファンタジー/SF世界観と、練り込まれたマップ生成システムで知られるスタジオだ。
HUMANKINDはこのスタジオにとって「初のリアル歴史ゲーム」だった。ファンタジーの鎧を脱ぎ捨てて、実在の文明と歴史上の出来事に向き合う挑戦だった。2019年にゲームを初公開してから実際のリリースまで2年以上の開発期間があり、その間に延期と改良を重ねた。
ゲームの構造 ― 7つの時代と60以上の文明
HUMANKINDの時代区分は、石器時代(Neolithic)、古代(Ancient Era)、古典期(Classical Era)、中世(Medieval Era)、近世(Early Modern Era)、近代(Industrial Era)、現代(Contemporary Era)の7段階だ。
石器時代だけは特殊で、この時期はまだ「民族」を選べない。プレイヤーはノマド(遊牧民)として六角形マップを探索し、食料・科学・文化・宗教の各リソースを集めながら、どのタイミングで定住して農業文明に移行するかを考える時期だ。早めに定住すれば都市建設のアドバンテージが取れるが、マップ探索が途中になる。遅くまで探索を続ければ良い土地を見つけられるが、他プレイヤーに都市の位置で出遅れる。この最初の判断だけで、ゲームの展開が大きく変わる。
古代以降は毎時代、60以上の文明からひとつを選んで「採用」する。採用した文明は固有ユニット、固有建造物、固有の文化的ボーナスをもたらす。エジプト文明を採用すれば「ピラミッド型の不思議(Wonder)」を建設しやすくなり、固有兵器の「チャリオット弓兵」が使えるようになる。漢文明を選べば行政ボーナスが大きく、広大な帝国の管理コストが下がる。
「有名度(Fame)」が勝利を決める
Civilizationとの最大の違いのひとつが勝利条件だ。HUMANKINDには「科学勝利」「文化勝利」「征服勝利」といった個別の勝利条件がない。すべてのプレイヤーが「有名度(Fame)」という単一のスコアを積み上げ、ゲーム終了時に最も高いプレイヤーが勝つ。
有名度を得る手段は多岐にわたる。世界の不思議を建設する、名士(文明ごとに固有の特別ユニット)を活躍させる、他文明より先に特定の技術を開発する「First Time Bonus」、宗教を広める、外交的な偉業を達成する、戦争で都市を占領する——どの行動もFameに変換される。
これが意味するのは、「必ずしも戦争に強い文明が勝つとは限らない」ということだ。平和的に文化と不思議を積み上げるプレイスタイルでも優勝できるし、軍事力で広大な領土を持つプレイヤーが、外交・文化・科学で先行する競合相手にFame差で負けることもある。
The fame system is genuinely brilliant. You don’t have to rush to one specific win condition—you just try to leave a mark on history in every way you can.
引用元:Steamレビュー
マップ生成とリプレイアビリティ
HUMANKINDのマップは完全プロシージャル生成だ。地形、河川、資源の配置、文明の初期位置、全部毎回違う。プレイするたびに違う地理的制約の中で戦略を考える楽しさがある。砂漠に囲まれた内陸都市を持つ国家と、海岸線を持つ海洋国家では、まったく違う発展の仕方をすることになる。
Endless Legendで培ったマップ生成技術が活きていて、地形の多様性は同ジャンルの中でも高い水準にある。特に河川システムは細かく実装されていて、川沿いの農地ボーナス、河川を使った交易路、川を越えた軍隊移動のペナルティなど、地理が戦略に意味を持つ設計になっている。
文明乗り換えシステム ― このゲームの核心
HUMANKINDを語るうえで、文明乗り換えシステムを避けることはできない。これがこのゲームの全てだ。
なぜ「乗り換え」なのか
Amplitude Studiosがこの仕組みを設計した背景には「歴史上の文明は実際には混ざり合う」という考え方がある。ローマはギリシャ文化を吸収し、イスラム世界はギリシャ哲学を保存・発展させ、ルネサンスのヨーロッパはそれを逆輸入した。「一つの民族が石器時代から現代まで一本道で発展する」というCivilizationの前提よりも、実際の歴史の複雑さに近い。
ゲームメカニクスとして見ると、各時代に採用した文明のボーナスは「完全に上書き」されるのではなく、前時代のボーナスの一部が「後継ボーナス(Legacy Trait)」として残り続ける。古代にエジプト文明を選べば、その後どの文明に乗り換えても「農業地帯の食料ボーナス」という痕跡が残る。中世に日本を選べば「名誉(Honor)リソースの蓄積ボーナス」が残り続ける。
つまり最終的な自国の文明は、7回の文明選択の「積み重ね」で決まる。7つの文明の特性が重なり合って、他のどのプレイヤーとも違う独自の国家になる。これは「自分だけの歴史を書く」という体験として機能している。
文明選択の戦略的深み
文明乗り換えの面白さは、単に「強い文明を毎時代選ぶ」だけではないところにある。
あるプレイヤーが「哲学路線」を選ぶとする。古代でギリシャ(科学ボーナス)、古典期でクシュ(宗教的知識ボーナス)、中世でイスラム帝国(科学・翻訳ボーナス)を積み重ねる。これで「学問の大国」を目指す一本道の計画が立てられる。一方で「征服路線」なら古代でアッシリア(軍事ユニットボーナス)、古典期でローマ(攻城能力)、中世でモンゴル(騎馬軍団の移動力)と組み合わせる選択ができる。
だが計画通りにいかないのが面白さでもある。先に別のプレイヤーが同じ文明を採用すると、その文明は「選択済み」になって自分は使えなくなる。8人の中で同じ文明を選べるのは1人だけ。「狙っていたローマが取られた」「仕方なく別のプランBに切り替える」——この強制的なプラン変更が、毎回異なるゲーム展開を生む。
Watching someone else pick the civilization you planned for your midgame and being forced to completely pivot your strategy is stressful in the best possible way.
引用元:Steamレビュー
実装された文明の顔ぶれ
HUMANKINDに収録されている文明は、基本ゲームとDLC合わせて100以上にのぼる。アジアからはエジプト、ハラッパー(インダス文明)、漢、日本、ヴィジャヤナガラ、オスマン、インカ、アステカ、モンゴルなど。ヨーロッパからはギリシャ、ローマ、バイキング、ノルマン、ガリア、フランク、ハプスブルクなど。アフリカからはヌビア、クシュ、マリ、ザンジバルなど。
日本文明は中世に採用可能で、固有ユニット「侍」と固有建造物「仏教寺院の複合施設」、そして「名誉(Honor)」リソースに関するボーナスを持つ。侍は通常の歩兵より戦闘力が高く、特に「名誉」ポイントが高い状態で戦闘に挑むとさらなるボーナスが付く独特の仕組みだ。
このリアル文明の多様性が、プレイするたびに「今回はアフリカ路線でいこう」「近世にムガル帝国を選んでみたい」という動機を生んでいる。
都市システムとリソース管理 ― 六角形が語る経済学

HUMANKINDの都市システムは、Civilizationよりも「土地への密着度」が高い設計だ。
領土と区画の仕組み
都市を作るとき、都市の周囲の六角形タイル(Hex)を「領土」として組み込んでいく。領土内のタイルに「区画(District)」を建設することで、都市の機能が拡張する。農業区画を農地タイルの上に建てれば食料が増える。採掘区画を山岳タイルに建てれば生産力が上がる。港区画を海岸に建てれば海路の交易ルートが開ける。
Civilizationと比べると、都市の立地がより直接的に発展の方向性を決める。河川沿いの農業大国が作りやすい土地、鉱山だらけの工業都市に向いた土地、海洋交易で繁栄できる港湾都市に最適な土地——マップ生成が毎回異なる意味が、この区画システムで実感できる。
衛星都市(Outpost)の吸収
HUMANKINDにはCivilizationの「都市」に相当するものが2種類ある。「都市(City)」と「前哨地(Outpost)」だ。
最初に開拓地を築くとOutpostとして設立される。Outpost状態では規模が小さく、機能は限定的だ。しかしOutpostを正式な都市に「昇格」させることで、区画をフル展開できるようになる。同時に多くのOutpostを持てるが、正規の都市に昇格させるには「都市人口」リソースを消費する。
さらに面白いのが、他文明の都市をOutpostとして「併合」したり、弱小国家のOutpostを交渉で吸収したりできること。軍事力によらない領土拡張の選択肢があることで、外交的なプレイスタイルも機能する。
リソースの種類と相互作用
HUMANKINDが管理するリソースは食料、生産力、科学、文化、影響力(Influence)、マナ(Money)、安定度(Stability)の7種類プラス文明固有リソースだ。
このうちInfluenceは独特の役割を果たす。外交交渉の通貨として使われるほか、隣接するOutpostを文化的に自文明圏に取り込む「文化的領土拡張」にも使う。軍事的に侵攻しなくても、Influenceを消費することで相手のOutpostを平和的に吸収できる。これは「軟らかい力(ソフトパワー)」の概念をゲームに落とし込んだ設計で、外交を重視するプレイヤーにとっての強力な武器になる。
Stabilityは都市内の「不満度」の逆数だ。領土が広がりすぎると維持コストが上がり、Stabilityが落ちる。Stabilityが低い都市は生産効率が下がり、反乱リスクが高まる。「取れる土地を全部取ればいい」のではなく、インフラの整備と拡張のバランスを管理する必要がある。

戦闘システム ― ターン制の中にある駆け引き
HUMANKINDの戦闘はCivilization 6の「1ユニット1タイル」方式に近いが、より戦術的な要素が加わっている。
戦術マップへの移行
戦闘が始まると、通常のワールドマップから「戦術マップ(Tactical Map)」に切り替わるオプションがある。これはHUMANKINDの特徴的なシステムで、戦闘をより細かく操作したいプレイヤーはこのモードで戦える。
戦術マップでは、ユニットを個別に動かして地形の有利を活用し、包囲攻撃を仕掛けたり、高地から射撃ボーナスを得たりできる。騎馬ユニットの側面攻撃、弓兵の丘陵射撃、攻城兵器による城壁への砲撃——戦術マップはミニチュアのターン制タクティクスゲームとして機能する。
時間がないプレイヤーや戦闘があまり得意でない人向けには「自動解決」もある。ユニットの戦力差に基づいて計算で結果を出すので、戦略的な意思決定に集中したい人はこちらを使える。
ユニットのスタック制限
一つのHexに配置できるユニット数には制限がある。これによって「全軍を一点に積み上げるのが最強」という単純な戦術が通じない。前線の形成、側面の防衛、後衛の補給部隊の保護——ユニットの配置に意味が生まれる。
この制限はCivilization 5のアンチスタック思想を引き継ぎながら、HUMANKINDなりの実装をしている。特に攻城戦では、城壁の外の歩兵と内部の守備隊の配置が攻防の鍵を握り、「城塞都市をどう突破するか」という戦術的パズルになる。
ゲリラ戦と独立勢力
マップ上には「独立部族(Independent People)」と呼ばれる勢力がいる。プレイヤー文明に支配されていない自律的な都市・集落で、攻撃してくることもあれば、交渉で友好的な関係を結べることもある。
独立部族は早期ゲームの軍事バランスに大きく影響する。「この地域の独立部族を早めに従属させて緩衝地帯にする」「あの独立部族と同盟して隣接する強国に対抗する」という地政学的な判断が求められる。
独立部族のシステムは面白い。彼らを単純に倒すだけでなく、外交的に取り込む選択肢があるから、毎回違うアプローチができる。
引用元:Steamレビュー(日本語ユーザー)
外交と宗教 ― 人類史の権力ゲーム

外交の仕組み
HUMANKINDの外交は、条約・同盟・貿易協定・宣戦布告といった基本的な要素に加えて、「会議(Congress)」という多国間協議の仕組みを持つ。
定期的に各文明の代表が集まり、世界的なルールを提案・投票できる。「全文明が宣戦布告前に警告を義務付ける」「特定の地域への核兵器使用を禁止する」といったルール変更を、投票で可決できる。影響力(Influence)が多い文明ほど投票力が強いため、外交をしっかり育てた文明が会議を左右できる設計だ。
この「国際政治」的な設計は、単なる2国間交渉で完結するCivilizationの外交よりも、より複雑な多極外交を体験させてくれる。「あの文明が強くなりすぎているから、ライバル国に意図的に技術援助をして牽制する」といった思考が自然に生まれる。
宗教の扱い方
HUMANKINDでの宗教は、Civilizationよりも「インフラ的なリソース」として機能している。宗教そのものを独立した文明ブランドとして育てるのではなく、宗教ユニット(宣教師など)を通じて周辺地域に文化的影響力を広げるツールとして使う。
特定の宗教ボーナスを持つ文明を採用すれば、宗教区画の建設コストが下がったり、宗教ユニットの移動力が上がったりする。宗教を通じたソフトパワー外交は、特に隣接する小国や独立部族を取り込む際に有効だ。
マルチプレイの実態 ― 534人コミュニティで遊ぶ
HUMANKINDは最大8人でのマルチプレイに対応している。歴史系ターン制ストラテジーのマルチプレイは「時間がかかる」という問題が常につきまとうが、HUMANKINDはいくつかの工夫でこれを緩和している。
非同期マルチプレイの利便性
HUMANKINDの非同期マルチプレイは、Civilizationシリーズと同様の「パス&プレイ」方式だ。全員がリアルタイムに集まらなくても、自分のターンが来たときだけゲームを起動してターンを進め、次のプレイヤーに回す。社会人プレイヤーが集まって週末に少しずつ進める、という使い方ができる。
同時接続が現在534人という数字は、「今ゲームが動いている人」の数であって、非同期でゆっくり遊んでいるプレイヤーは含まれない。ターン制ストラテジーの特性上、実際のアクティブプレイヤーはSteam同時接続数より多い可能性が高い。
マルチプレイの実際の体験
8人フルプレイでのマルチプレイは、ゲームの持つ全ての要素が同時に動いて非常に読み応えがある。序盤に誰が石器時代から定住を決めるか、誰が古代の人気文明を先に取るか——最序盤の行動から外交的な緊張が生まれる。
マルチプレイで特に際立つのが「文明奪い合い」の駆け引きだ。シングルプレイでは自分のペースで計画できるが、マルチでは誰かが狙っていた文明を横取りされる可能性が常にある。「次の時代にローマが使えないと分かっているから、今から代替プランで動く」という読みが求められる。
ただし欠点もある。マルチのゲームはシングルより長くなりがちで、8人で最終時代まで遊ぶと相当な時間がかかる。「途中でプレイヤーが抜ける」問題への対応としてAIが引き継ぐ仕組みはあるが、ゲーム後半でAI引き継ぎが起きると戦略バランスが崩れることがある。
多人数で長期間の戦略ゲームを楽しみたいなら、Don’t Starve Togetherのような協力サバイバルとはまた違う形で仲間との絆が生まれるゲームだ。

グラフィックとUI ― 美しいが学習コスト高め

アートスタイルの方向性
HUMANKINDのビジュアルは「絵画的なアニメーション」と「実用的な情報UIの融合」を目指している。ユニットのデザインはリアル志向ではなくやや様式化されていて、広大なマップを俯瞰したとき全体として美しいアートに見えるよう設計されている。
文明ごとに建造物のデザインが異なるのも見どころのひとつだ。エジプトのピラミッドと日本の塔が同じ都市に混在するカオスな光景も、HUMANKINDの「文明の混在」を視覚的に表現している。自分が選んできた7つの文明の痕跡が都市の景観に残っていく様子は、ゲームの設計哲学が絵として現れている。
UIの学習コストについて正直に
UIは正直に言って「慣れるまでが大変」だ。情報量が多く、最初のプレイでは何をどこで確認すればいいかが掴みにくい。Civilizationシリーズを長年プレイしていた人でも、HUMANKINDのUI設計には1〜2時間以上かかる部分がある。
特に「リソースパネルのどこに何の数字があるか」「区画建設のコストと条件を確認する手順」「外交の会議で誰が何に投票しているかを把握する方法」あたりが初期の混乱ポイントだ。チュートリアルは一通りのシステムを説明してくれるが、実際のプレイで体験して初めて「ああ、そういうことか」となる要素が多い。
コミュニティWikiやYouTubeのガイド動画を序盤で一本見ておくことを勧める。公式のチュートリアルだけで全体像を掴もうとすると、最初の数ゲームはほぼ見当違いの方向に向かって終わる可能性が高い。
チュートリアルは全部やったのに、最初の3ゲームは「何をすればいいか分からないまま終わった」感じだった。Wikiを読んでからようやく楽しくなった。
引用元:Steamレビュー(日本語ユーザー)
なぜHUMANKINDは人気を集めたのか
2021年8月のリリース時、HUMANKINDは同時接続約6万人という数字を記録した。歴史ストラテジージャンルの新タイトルとしては相当な注目度だ。なぜここまで期待を集めたのか。
「Civilizationキラー」という期待
HUMANKINDが注目された最大の理由は「Civilization 6の正統な挑戦者」として市場に現れたことだ。Civ6のリリースから5年が経ち、「そろそろ新しい歴史ストラテジーが欲しい」というファンの需要があった。
Amplitude Studiosの過去作「Endless Legend」は、Civilizationへの強い影響を受けながらも独自進化を遂げたゲームとして高い評価を得ていた。そのスタジオがリアル歴史を舞台にした大作を作ると発表したとき、コミュニティの期待は大きく膨らんだ。
文明乗り換えシステムの新鮮さ
発表時から「文明を時代ごとに乗り換える」というコンセプトは独自性として際立っていた。Civilizationが長年「一文明一周プレイ」という基本ルールを守り続けてきたのに対して、HUMANKINDは「歴史の交錯」を機械的に実現する設計を打ち出した。
このコンセプトへの反応は好意的なものが多く、「ようやく歴史の複雑さを表現できるゲームが来た」という声がレビューに多く見られた。
「有名度(Fame)」勝利システムへの評価
「科学勝利だけを目指してひたすら研究を積む」「文化勝利のためにツーリスト数を管理する」といったCivilization的な「特化プレイ」が通じない設計も評価された。どんな行動をしてもFameに変換されるため、「自分なりの歴史を歩む」という感覚が生まれやすい。
Fameシステムのおかげで「自分の文明の歴史を語る」という感覚が出る。Civとは違う楽しさ。
引用元:Steamレビュー(日本語ユーザー)
HUMANKINDの課題と批判 ― 正直に書く

HUMANKINDが高い期待を受けながら、ピークの同時接続から現在の534人まで減少した背景には、複数の課題がある。これは開発チームへのリスペクトを持ちながらも、正直に書くべき部分だ。
AIの外交と行動の問題
HUMANKINDのAI(CPU文明)の行動は、特に中盤以降の外交で一貫性が薄いという評価が根強い。友好的な関係を長く築いてきた文明が突然宣戦布告してくる、外交的に意味のない戦争を繰り返す、会議での投票行動が読みにくい——シングルプレイヤーを主に楽しむプレイヤーにとって、AIとの対話が「リアルな相手」のように感じられない場面が多い。
Civilizationシリーズも同様の批判を受け続けているジャンル共通の課題だが、HUMANKINDへの批判として特に目立つ。
後半ゲームのテンポ問題
ゲームが現代に近づくほど管理する要素が増え、1ターンあたりの処理時間が長くなる傾向がある。「後半になると毎ターンのクリックが増えて疲れる」という声は、歴史ストラテジー全般に共通する課題だが、HUMANKINDでも解消されていない部分だ。
特にマルチプレイで後半になったとき、全員のターン処理が長くなると1ゲームが相当な時間になる。
バランスの偏り
特定の文明の組み合わせが他の組み合わせよりも明らかに強力なケースが発見されており、パッチで調整が繰り返されてきた。「この組み合わせが最強」というMeta(最適解)が固定化しやすいジャンルの性質はあるが、バランス調整の頻度と速度については「もう少し速く対応してほしい」という意見がコミュニティに根強い。
SEGAへの移管後の開発体制
HUMANKINDは2021年8月のリリース後、SEGAのパブリッシャーサポートのもとで複数のDLCと無料アップデートを受けてきた。ただし開発チームのAmplitude Studiosは2024年以降、次のプロジェクトへの移行を示唆する発言を増やしており、HUMANKINDへの継続的な大型アップデートの期待値についてコミュニティで議論が続いている。
現在のゲームは2021年リリース時点からは大幅に改善されており、発売当初の「致命的なバグ」と言われていた問題の多くは修正済みだ。しかし「まだ追加してほしい要素がある」という声も多く残っている。
DLCと追加コンテンツ
HUMANKINDは基本ゲームのほかに複数のDLCが発売されている。主要なものを紹介する。
文化パック系DLC
「Cultures of Africa Pack」「Cultures of Latin America Pack」「Cultures of East Asia Pack」といった地域文化パックDLCが発売されている。それぞれ新しい文明を追加するもので、基本ゲームに含まれていなかった地域・民族の文明が使えるようになる。
アフリカ、ラテンアメリカ、東アジアの各パックは無料DLC(フリー)として配信されており、これらの追加文明は購入不要で使える。歴史ストラテジーとしての地域的偏りへの批判に応えた形だ。
「Cultures of Oceania Pack」と地理的多様性
オセアニア圏の文明を追加するDLCも登場しており、マオリ、ポリネシア系の文明が追加されている。歴史ストラテジーで見落とされがちなオセアニア・太平洋圏の文明を加えたことは評価されている。
「HUMANKIND – Cultures of China Era Packs」
中国史をより深く掘り下げるため、異なる時代の中国文明をパックとして追加するDLCもある。秦、漢、唐、宋、明など複数の中国王朝が個別の文明として実装されており、中国史好きには特に響く追加コンテンツだ。
CivilizationとHUMANKINDの違いを整理する

両ゲームを比べるとき、どちらが「優れているか」という単純な話ではなく、「何を求めているか」で選ぶべきゲームだという認識が重要だ。
Civilizationの魅力は「一文明を初期から育て上げる愛着」にある。エジプト文明としてクレオパトラを指導者に選び、始まりから終わりまで一貫したナラティブで歴史を作っていく体験は、HUMANKINDにはない。「自分はローマ帝国として世界征服する」という一本のストーリーラインが欲しい人には、Civilizationのほうが向いている。
HUMANKINDの魅力は「時代を超えた文明の混在」にある。「今回の俺の文明は古代エジプトから始まって、中世バイキングの血を引き、近世オスマンの技術で近代化した独自国家だ」という、どの歴史の教科書にも載っていない「自分だけの歴史」を作れる楽しさだ。
戦闘に関しては、HUMANKINDの戦術マップシステムはCiv6より一段階深い戦術体験を提供している。中世ファンタジーを舞台にした近接戦闘ゲームのMORDHAUとは全く異なる体験だが、「戦略と戦術の二層構造」という設計思想は共通点がある。

「歴史を語る」という体験の先にあるもの
HUMANKINDが問いかけているのは、「あなたならどんな文明の歴史を書くか」という問いだ。
Civilizationが「既存の文明のどれかで歴史を繰り返す」体験を提供するなら、HUMANKINDは「自分だけの文明史を創造する」体験を提供する。石器時代から数百ターンを費やして積み上げた、複数の文明の遺産が重なり合ったその国家は、世界のどの教科書にも載っていない「自分が生み出した文明」だ。
エジプト文明の農業基盤の上にローマの軍事インフラを建て、バイキングの海洋探索で新大陸を発見し、日本の精神文化で近代の混乱期を乗り越える——そのゲームの記録は、ある意味で「自分が書いた人類の歴史」だ。
この「ナラティブ生成」としての機能は、シングルプレイでもマルチプレイでも発揮される。特にマルチで8人が異なる文明の組み合わせを積み重ねて対峙したとき、「どの文明の歴史が最も輝かしかったか」という問いへの答えが、Fameスコアとして数字に現れる。
歴史ストラテジーゲームに求めるものが「既存の歴史の再体験」でなく「新しい歴史の創造」であれば、HUMANKINDはその欲求に応えられる数少ないゲームのひとつだ。複雑なUIと学習コストは確かに存在するが、越えた先にある体験は他のゲームでは得られないものがある。
War Thunderのような競技マルチプレイゲームや、VRChatのようなソーシャル体験とは性質が全く異なる遊び方だが、「一人で、あるいは仲間と長時間かけて戦略を磨く」楽しさを求めるなら、HUMANKINDは時間を費やすに値するゲームだ。

まとめ ― HUMANKINDはこんな人のためのゲーム
HUMANKINDは歴史ターン制ストラテジーとして高い完成度を持ちながら、「習得コストが高い」という現実的な壁を持つゲームだ。
良い点をまとめると、まず文明乗り換えシステムによるリプレイアビリティの高さがある。同じゲームが2回と繰り返されない設計は、長期的に遊び続ける理由になる。Fameによる単一勝利条件は「どんなプレイスタイルでも勝利に近づける」という設計的な懐の深さをもたらしている。マルチプレイ、特に非同期プレイへの対応も実用的だ。グラフィックとアートは美しく、文明ごとの建造物デザインの多様性は見ていて飽きない。
課題も正直に言うと、AIの行動の一貫性への不満は根強い。UIの学習コストは高く、最初の数ゲームは手探りになる可能性が高い。後半ゲームのテンポは重くなりがちで、長いゲームセッションが必要だ。
ただ、一度このゲームのリズムに乗ると「自分の文明の歴史を語る」という体験の面白さは唯一無二だ。「Civilizationに飽きてきた歴史ストラテジーファン」「文明の複雑な交錯を体験したいプレイヤー」「仲間と長期間の戦略ゲームを楽しみたいグループ」には、特に勧めたいゲームだ。
同じAmplitude Studiosの系譜を感じながらも、より戦闘重視のゲームが好きなら、死闘が続くDEVOURのような協力プレイや、激しいアクションゲームも一つの選択肢だ。

HUMANKINDはSteam(App ID: 1124300)で入手可能。現在も534人のプレイヤーが歴史を書き続けているこのゲームで、あなた自身の文明史を作ってみてほしい。


HUMANKIND™
| 価格 | ¥5,590 |
|---|---|
| 開発 | AMPLITUDE Studios |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows / Mac |
| プレイ形式 | シングル / マルチ |

