百英雄伝(Eiyuden Chronicle: Hundred Heroes)レビュー——幻想水滸伝の魂を受け継いだ120人の物語、その光と影
「これを待っていた」と、最初の10時間でそう思った。仲間が増えるたびに拠点の街が少しずつ賑やかになっていき、気づいたらキャラクター名鑑のページをスクロールしながら「あのキャラはまだ仲間になってないな」と探し始めている——百英雄伝(Eiyuden Chronicle: Hundred Heroes)はそういうゲームだ。
2024年4月23日、PC(Steam / Epic Games Store)およびPS4/PS5/Xbox/Nintendo Switch向けに発売されたこの作品は、かつて幻想水滸伝シリーズを生み出したクリエイターたちが再集結して立ち上げた完全新作JRPGだ。2020年にKickstarterでキャンペーンを開始したとき、約2時間で50万ドルの目標額を達成し、最終的には4万6307人のバッカーから約4億8000万円を集めた。それだけ多くの人が「幻想水滸伝の精神的続編」という言葉に反応したということだ。
だが、この作品を語るうえで避けて通れないことがある。百英雄伝の中心人物であり、Rabbit & Bear Studiosの代表を務めた村山吉隆氏が、発売の2ヶ月半前にあたる2024年2月6日、多臓器不全により急逝した。ゲームがほぼ完成し、発売を目前に控えたタイミングでの訃報だった。残されたスタッフたちが遺志を受け継いでリリースを完遂し、その後2025年2月から4月にかけて村山氏が手がけていた追加シナリオDLCも順次配信された。このゲームには、そういう重みがある。
だからこそ、正直に評価したい。素晴らしい部分は素晴らしいと言い、惜しい部分は惜しいと言う。それが「百英雄伝」という作品に対する誠実な向き合い方だと思っている。
プレイ動画
百英雄伝は現在も現役タイトルです。2025年2月〜4月にかけて追加シナリオDLC「メリサの章」「セイの章」「マーカスの章」の3本が配信されました。これらは村山吉隆氏が遺した「最後のシナリオ」として注目を集めています。シーズンパスは各プラットフォームで購入可能です。
こんな人に読んでほしい
- 幻想水滸伝シリーズを遊んでいて、その系譜のJRPGを探している人
- 100人を超えるキャラクターを集める「仲間集め系ゲーム」が好きな人
- 拠点・街建設の成長要素が好きで、自分の基地が育っていく感覚を楽しみたい人
- ターン制コマンドRPGの懐かしい感触と、現代的なグラフィックを両立したゲームを求めている人
- 群像劇型の重厚なストーリーが好きな人
- JRPGのテンポの悪さをある程度許容できる、古き良きRPGのファン
- DLCを含めた長期コンテンツで1タイトルを遊び込みたい人
百英雄伝とはどんなゲームか——幻想水滸伝の「DNA」を現代に

百英雄伝の舞台は「オールラーン大陸」。多くの国家や民族が共存するこの大陸で、神秘的な力を秘めた「魔導レンズ」をめぐる争いが物語の核心となる。友好的だと思われていたガルディア帝国が突如として侵攻を開始し、主人公ノアや仲間たちが諸国連合を結成して立ち向かっていく——という大きな筋書きはまさに幻想水滸伝そのものだ。
本作の主な特徴を整理すると次のようになる。
- 120人の仲間集め:フィールドのあちこちにいるキャラクターを仲間に加えることができる。加入条件はシンプルなものから、特定アイテムが必要なもの、ストーリーを進めることで解放されるものまで様々だ
- 拠点「本拠街」の成長:仲間が増えるほど廃城から始まる本拠が成長し、新しい施設や商店が解放されていく。RPGの拠点経営としての完成度は高く、施設ツリーを広げる楽しさがある
- 6人パーティの英雄コンボ:ターン制コマンドバトルで最大6人を編成。相性の良い組み合わせのキャラクターが同じパーティにいると強力な「英雄コンボ」が発動し、爽快感がある
- 戦争モード:ストーリーの節目で発生する大規模バトル。戦場を俯瞰し、軍団を動かして敵軍団を撃退する戦略パート。通常の戦闘とは異なる緊張感がある
- ミニゲーム群:ベーゴマバトル、カードバトル(120人から収集)、シャークシップレース、釣り、料理対決など。コンプリートを目指すとかなりのプレイ時間を要する
2.5Dグラフィックも本作の大きな魅力だ。精緻に描き込まれた2Dキャラクタースプライトと、奥行きのある3D背景が融合した映像は、スクリーンショットを撮りたくなる瞬間が何度もある。
世界観やBGM、バトル、仲間、拠点……まごうことなき幻水でした。ファンとして「おおむね求めていたもの」です。
出典:note(百英雄伝クリアレビュー)
幻想水滸伝の精神的続編として、ジャンルのDNAを忠実に継承した作品だという評価は、プレイした者として正直なところ納得できる。
JRPGの系譜を辿るなら、同じく2024年を代表する一作としてMetaphor: ReFantazioも外せない。世界観の構築とキャラクターの深みという点で百英雄伝と比較されることも多い作品だ。

基本情報

| タイトル | 百英雄伝(Eiyuden Chronicle: Hundred Heroes) |
|---|---|
| 開発 | Rabbit & Bear Studios |
| パブリッシャー | 505 Games |
| リリース日 | 2024年4月23日 |
| 対応プラットフォーム | PC(Steam / Epic Games Store)、PS4、PS5、Xbox Series X|S、Xbox One、Nintendo Switch |
| ジャンル | ターン制コマンドRPG / 仲間集め / 拠点建設 |
| 価格 | 6,578円(税込)※Steamの参考価格 |
| プレイ人数 | シングルプレイ |
| 日本語対応 | テキスト・音声ともに完全対応 |
| Steam評価 | 非常に好評(76%)※2024年4月発売時点の数値 |
| Metascore | 79点(PCバージョン) |
| Steam最大同接数 | 約8,445人(2024年4月28日) |
| 推定Steam販売数 | 10万〜20万本(SteamSpy推定) |
| DLC | シーズンパス収録の追加シナリオ3本(2025年2〜4月配信) |
Kickstarterで4億円超えを集めた「約束のゲーム」——開発の経緯

百英雄伝の始まりは2020年7月27日、Kickstarterでのクラウドファンディングキャンペーンだった。「幻想水滸伝の元スタッフが集結した新作JRPG」というキャッチコピーは、長年ファンが待ち望んでいたものに対する答えそのものだった。
キャンペーン開始からわずか2時間で50万ドルの目標額を達成。その後もバッカーが殺到し、約7時間後には100万ドル(コンシューマー機対応のストレッチゴール)に到達した。最終的な支援額は約4億8162万円に上り、2020年にKickstarterで最も資金を集めたビデオゲームプロジェクトになった。
このキャンペーンを主導したのが、幻想水滸伝シリーズの生みの親である村山吉隆氏だ。1995年に第1作が発売されて以来、幻想水滸伝はプレイヤーに「100人を超える仲間集め」と「拠点育成」という体験を届け続けてきたシリーズだった。しかしコナミがゲーム事業の縮小を進める中でシリーズは休眠状態となり、ファンは長く新作を待ち続けていた。
村山氏はRabbit & Bear Studiosを立ち上げ、キャラクターデザインを手がけた河野純子氏、音楽の小牟田修氏ら往年のスタッフを再集結させた。「幻想水滸伝の続編を作ることはできないが、その魂を継ぐ作品は作れる」という信念のもとに動き始めたプロジェクトが百英雄伝だった。
クラウドファンディングが始まったとき、即日で支援した。あの頃の気持ちを取り戻せるゲームがやっと来た、という感覚だった。
出典:Steamユーザーレビュー
しかし開発は順調ではなかった。当初2022年に予定されていたリリースは2024年へと延期された。そして2024年2月6日、村山吉隆氏が多臓器不全により急逝。発売まであと2ヶ月半というタイミングでの突然の訃報だった。残されたスタッフたちは「彼の作り上げた作品世界を守り育てていく」というコメントを発表し、同年4月23日に予定通りリリースを果たした。
2025年には村山氏が手がけていた追加シナリオ3本が「最後のシナリオ」として配信された。ゲームが届けられるまでの経緯を知ってプレイすると、この作品への見え方が少し変わる。
ターン制JRPGにおけるカレンダー進行と仲間との日常を描いた作品として、ペルソナ3 リロードも同ジャンルの好例だ。キャラクターとの関係を積み重ねる感触は百英雄伝の拠点生活とも共鳴する。

仲間が増えるたびに世界が広がる——120人の仲間集めが生む中毒性

百英雄伝で最も熱中した要素を一つ挙げるなら、迷わず「仲間集め」と答える。ゲームを通じて出会える仲間キャラクターの数は全部で120人。それぞれに固有の外見・声・得意武器・スキル・英雄コンボの組み合わせがある。名前のないモブキャラはほぼいない、と言っていいくらいに各キャラクターが作り込まれている。
仲間の加入方法は大きく分けると三種類だ。ストーリーの進行で自動的に仲間になるキャラクター、特定の場所に行って話しかけることで加入するキャラクター、そして特定のアイテムを渡したり条件をクリアすることで仲間になるキャラクターだ。
仲間が増えるたびに本拠街に変化が起きる。料理人が仲間になれば食堂が解放され、鍛冶師が加われば武器強化の選択肢が広がる。彼らが本拠にいるときに話しかけると日常会話が聞けて、それがキャラクターへの愛着につながる。この「街が生きている感覚」は幻想水滸伝から引き継がれた設計で、百英雄伝でも変わらず機能している。
仲間を加入させるたびに「あっ、街にあいつが来た!」ってなる感覚がたまらない。廃城だった拠点が少しずつ賑やかになっていく過程を見るだけで満足感がある。
出典:AppMedia 評価レビュー・口コミまとめ
一方で、仲間集めにはある種の「調査コスト」が伴う。加入条件がわかりにくいキャラクターが多く、攻略情報なしで全員集めようとすると取り逃しが発生しやすい。特定のタイミングを逃すと永続的に仲間にできなくなるキャラクターも存在する。「全員仲間」を目指す人は攻略wikiを見ながら進めることを前提にした設計だ、とゲームがほぼそれを想定している節がある。
全120人コンプリートのやりごたえは本物だが、「仲間を集める旅」をメインの楽しみとして遊ぶなら、やや攻略情報への依存度が高くなることは覚えておいてほしい。
「1人ひとりが個性を持つキャラクターが100人以上いる」というコンセプトに惹かれる人なら、このゲームの底力に触れることができる。
インディーRPGの分野では、ストーリーとキャラクターの個性で圧倒的な支持を得たUndertaleが「少数精鋭の仲間との物語」という点で対照的な魅力を持つ。百英雄伝の120人という規模とは真逆のアプローチだが、RPGが届けられる感動の幅を知るうえで参考になる。

ターン制バトルの快感と、戦闘テンポという最大の課題

戦闘はターン制コマンドバトルだ。最大6人パーティを編成し、通常攻撃・スキル・魔法・アイテムを駆使して戦う。幻想水滸伝ファンなら「これ、まさにあの感触」と思えるはずだ。コマンド選択の感触、エフェクトの演出感、英雄コンボが炸裂したときの達成感——その一つひとつは確かに丁寧に作られている。
英雄コンボは本作の戦闘の目玉だ。相性の良いキャラクターをパーティに組み合わせることで発動し、通常攻撃を大きく上回るダメージが出る。組み合わせは数十通り以上あり、「誰と誰をパーティに入れるか」という編成の楽しさにも直結している。
ただし、戦闘には看過できない問題点がある。それはスキル発動時のアニメーションが長く、バトルのテンポを大きく損なうことだ。敵味方の両方にアニメーション演出が入り、高レベル帯のスキルや魔法になるほどその長さが増す。雑魚戦でも1回の戦闘が2〜3分かかることが珍しくない。
戦闘のアニメーションが長すぎて疲れてきた。倍速ボタンがないと正直きつい。雑魚戦でも毎回待たされる感覚がある。
出典:hal51.click クリアレビュー(2024年)
このテンポ問題はゲーム全体の評価を左右するほど大きな課題で、アルテマ・AppMedia・Steamレビューなど複数の場所で繰り返し指摘されている。その後のアップデートでバトルの倍速機能や一部の高速化対応が実装されたが、発売当初は「倍速なしで遊ぶのが前提なのか」という声が相当数あった。
現在のバージョンでは倍速機能が利用できるため、テンポが気になる場合はそれを活用することで快適度が大幅に上がる。ただし「設定なしで快適に遊べるか」という問いに対しては、正直にノーと答えるしかない。
魔法のMP消費バランスも議論になった。序盤から中盤にかけて強力な魔法を使えるが、消費MPが重く、回復アイテムのコストと釣り合いが取れていないと感じる場面がある。「戦略性があった幻想水滸伝と比べると、このあたりの調整が甘い」という批評も複数見かけた。
それでも、戦争モードは完成度が高い。ストーリーの節目で挿入される大規模バトルパートは、俯瞰視点で軍団を動かしてぶつけるという戦略的な緊張感があり、通常の戦闘では得られない「大陸規模の戦争に関わっている感覚」を演出してくれる。この要素があることで、百英雄伝のゲーム体験にメリハリが生まれている。
大人数のキャストを率いる大規模JRPGという点では、龍が如く8も外せない存在だ。個性豊かなキャラクターたちが繰り広げる群像劇の厚みは、百英雄伝と共鳴する部分がある。

廃城が都市に変わる快感——拠点育成の設計とやりごたえ

仲間集めと並んで百英雄伝の核心をなすのが、本拠街の育成システムだ。ゲームの中盤で手に入る「おんぼろの廃城」がスタート地点で、そこから仲間を集めるたびに、施設ツリーを解放するたびに、街が少しずつ成長していく。
施設は「発展パネル」と呼ばれるツリー構造で管理されており、新しいパネルを解放すると新たな施設が建設される。武器鍛冶、防具強化、食堂(料理バフ)、農場、図書館、劇場、温泉……と施設の種類は多岐にわたり、それぞれが「特定の仲間がいることで解放される」「特定の資材が必要」という条件を持っている。
拠点がどんどん充実していく過程が楽しくて、仲間集めの動機がそっちに向いていった。「次は誰を仲間にすれば何が解放されるか」を考えながら動くのが面白い。
出典:note「百英雄伝を100時間遊んだ感想」
特に劇場コンテンツは印象に残っている。仲間になったキャラクターたちが演じるコメディ劇やショートムービーを観ることができ、シリアスなストーリーの箸休めとして絶妙に機能している。ここで発揮されるキャラクターの意外な一面が愛着をさらに深めてくれる。
農場では食材を育てて戦闘前バフに使えるほか、最終的には温泉まで完成させることができる。「廃城がひとつの生きた街になっていく」という体験は、この手のゲームが提供できる最大の満足感のひとつだと思っている。
ただし、本拠の成長に関しては情報が散逸している点が難点だ。どの施設を開くには誰を仲間にすればいいのか、どのパネルを優先すべきかが初見ではわかりにくい。攻略情報なしで最適な育成順序を見つけるのは難易度が高く、気づいたら後から「あのタイミングで仲間にしておくべきだった」という後悔が生まれやすい設計になっている。
群像劇の重さ——ストーリーと世界観の評価

百英雄伝のストーリーは、主人公ノアを軸にしながら複数の視点で進む群像劇だ。帝国の士官学校で育ったノアが、侵略の実態を目撃したことで帝国に反旗を翻し、諸国連合を率いて戦っていく——という骨格は幻想水滸伝そのものだが、登場人物の造形はより現代的な複雑さを持っている。
帝国の将軍たちにも各々の正義があり、「悪の帝国 vs 正義の連合」という単純な図式にはなっていない。プレイヤーが感情移入するキャラクターによって同じシーンの見え方が変わるように作られていて、「なぜこいつは帝国側についているのか」という問いがストーリーを進める原動力になる。
ストーリーが熱い。主人公側にも帝国側にも感情移入できるキャラクターがいて、「どちらも間違っていない」という葛藤を感じながら進められた。
出典:電撃オンライン ネタバレありレビュー
一方で、批判的な声として「幻想水滸伝ほどの絶望感・緊張感がない」という意見は複数見かけた。幻想水滸伝は仲間が死んだり、選択次第で取り返しのつかない展開が起きるシリアスさがあった。百英雄伝はやや明るい方向に振れており、「良くも悪くも全体的にポップすぎる」という評価がある。
これは好みの問題でもある。幻想水滸伝の暗さや絶望感を求めていたプレイヤーには物足りなく感じるかもしれないし、新規プレイヤーには入りやすい設計とも言える。どちらを重視するかで評価が分かれるポイントだ。
BGMの完成度は高い。小牟田修氏が手がけた楽曲は、拠点のテーマ、フィールド曲、ボス戦の緊張感を高める曲と、各シーンに合わせた作り込みがされている。戦闘BGMのカッコよさは本作のいくつかのポジティブな評価の中でも特に声が多かった要素だ。
2025年に配信された追加シナリオDLC3本は、本編では語られなかった各キャラクターの内面に踏み込んだ内容となっている。特に「セイの章」は帝国側の視点で物語が進む構成が評価されており、本編をクリアしたプレイヤーには追加コンテンツとして強く刺さる内容になっている。
キャラクターとの関係を丁寧に積み重ねながら進むRPGとして、Citizen Sleeper 2も注目の一作だ。登場人物との信頼構築が物語の核心をなす作りは、百英雄伝の仲間集めが持つ感情的な重みと通じるものがある。

テクニカルな問題——ロード時間とSwitch版の出来

百英雄伝の評価において、テクニカル面の問題は無視できない。特に発売当初に多くのレビューで取り上げられたのが、ロード時間の長さだ。
ゲーム内ではマップ間の移動、建物への入退室、戦闘の開始と終了のたびにロードが発生する。PC(SSD環境)やPS5では数秒程度で済む場合が多かったが、Nintendo Switch版では1回の建物入室に数秒〜十数秒かかる場合があり、フリーズやクラッシュも発生したという報告が多数あった。
Switch版のロードが辛すぎる。ちょっと民家に入るたびに待たされるし、戦闘のたびにもロードが入る。フリーズも何度かあった。SSDのPC版かPS5版でやるべきだったと後悔している。
出典:Yahoo!知恵袋 Switch版百英雄伝についての質問より
この問題に対してRabbit & Bear Studiosは比較的迅速に対応し、パッチによるロード時間の短縮を実施した。発売当初よりも快適になっているが、「2Dゲームとして見たときにロード頻度が多い」という構造的な問題はプラットフォームによって差がある。
推奨プラットフォームはSSD搭載のPC(Steam)またはPS5だ。これらの環境では発売当初の問題が大幅に改善されており、快適にプレイできる。Switch版でプレイする場合はロードの重さと戦闘アニメーションの問題が重なるため、かなりのストレスを感じる場面があることを想定しておく必要がある。
バグに関しても発売当初は複数の報告があった。一部のミニゲームや仲間加入フラグに関わるバグが問題になり、トロフィー・実績の取得に支障が出たケースもあった。これらも順次パッチで修正されているが、リリース時点での完成度については「もう少し検証が必要だった」という評価は多い。
Steam評価76%が示すもの——賛否両論の構造を読む
Steam全体での評価は「非常に好評(76%)」と出ているが、これは単純に「好きなプレイヤーが多い」という以上の意味を持っている。Metacriticではメタスコア79点に対して、ユーザースコアが7.2点(10点満点)という評価構造だ。
批評家はゲームとしての完成度——キャラクターの描写、ストーリーの重厚さ、仲間集めのシステム——を高く評価した。一方でプレイヤーのレビューは、テンポ・ロード・バランス調整という体験面の問題が評価を引き下げる要因になっている。
この乖離は「期待値の高さ」とも無関係ではない。Kickstarterで4億円以上を集め、幻想水滸伝の正統後継として期待されていたゲームだ。「幻水のあの絶望感が欲しかった」「倍速なしでもスムーズに遊べてほしかった」「完成度がもう一歩だった」という落胆の声は、それだけ期待が高かった裏返しでもある。
難ありだが最終的には遊んで良かった、というのが正直な感想。難しいポイントを乗り越えた先に、確かな面白さがある。
出典:note「難ありだが最終的には遊んで良かった「百英雄伝」」
「2024年を代表するJRPGの一本」として名前が挙がりながらも、「無条件に万人に勧められるか」というとそうではない。それが百英雄伝という作品の正直な立ち位置だ。幻想水滸伝ファン、仲間集め・拠点育成が好きなプレイヤーにとっては間違いなく刺さるゲームだが、最新のQOLを求めるプレイヤーには「古き良きを履き違えた不便さ」と感じる部分があることも事実だ。
Steam最大同接数は約8,445人(2024年4月28日)。発売後の通常的なシングルプレイRPGの落ち込み幅として見れば想定内の数字だが、Kickstarterで4万6000人以上が支援したタイトルとしては、Steam以外のプラットフォームでの分散がある程度の説明になるだろう。
現在も続く追加コンテンツと、この先の展望
百英雄伝は発売後もコンテンツ拡張が続いている現役タイトルだ。シーズンパスに収録された追加シナリオDLC3本(メリサの章・セイの章・マーカスの章)が2025年2〜4月にかけて配信され、本編で語りきれなかったキャラクターたちの背景が補完されている。
これらのDLCは特別な意味を持つ。村山吉隆氏が手がけた「最後のシナリオ」として、急逝後に制作チームが完成させて届けた内容だからだ。各シナリオのプレイ時間は2〜3時間程度と短めだが、本編クリア済みのプレイヤーには強く響く構成になっている。
DLCのセイの章、本編で見えなかった帝国側の事情が描かれていて泣けた。本編だけで終わらせなくて良かった。
出典:Steamコミュニティ レビュー
DLCの価格は1本あたり920円(PC版)。3本まとめて購入できるシーズンパスのほうがコストパフォーマンスは良い。本編をクリアして「もっとこのキャラクターの話が読みたい」と感じたプレイヤーには価値のある追加コンテンツだ。
Rabbit & Bear Studiosとしての次の動きはまだ公式に発表されていないが、百英雄伝という作品が今後もアップデートで磨かれ続けるタイトルになっているという事実は、このゲームが完成品として終わっていないことを示している。
本拠街の模様替えパックや壁紙といったコスメDLCも含まれているシーズンパスは、「このゲームを長く楽しみたい」というプレイヤー向けの選択肢として機能している。
インディーRPGの進化系として、Deltaruneはシステムと物語が一体化した独自の表現を持つ。百英雄伝が目指した「RPGの感動を現代に再現する」という命題に、まったく異なるアプローチで挑んでいる作品として読み解くと面白い。

百英雄伝を最大限楽しむためのポイント
百英雄伝は「詰まりやすい部分を知ったうえで遊ぶ」と満足度が大きく変わるゲームだ。遊ぶ前に押さえておきたいことを整理しておく。
プラットフォームの選び方
前述の通り、最もスムーズに遊べるのはSSD搭載PC(Steam)またはPS5だ。Switch版は現在もロード問題が他機種より重く、テンポの悪さを倍で受けてしまう。どのプラットフォームで遊ぶかがプレイ体験の快適度に直結する。
仲間集めは攻略情報と並走する
全120人コンプリートを目指すなら、攻略wikiを並走させることを推奨する。特定タイミングでしか仲間にできないキャラクターが複数いるため、「知っていれば防げた取り逃し」が発生しやすい構造になっている。
倍速機能を積極的に使う
戦闘の倍速機能はアップデートで実装済みだ。雑魚戦では積極的に活用することでテンポが大幅に改善される。「倍速ありき」で楽しむことを前提に設定をカスタマイズして遊ぶのが現在の正解に近い。
序盤は焦らず進める
序盤は仲間が少なく、拠点も殺風景な状態が続く。「本当に面白くなるのか?」と感じやすいフェーズだが、中盤以降に拠点に人が増え始めると世界が一気に広がる。最初の15時間を乗り越えたあたりから、このゲームの本領が見えてくる。
ミニゲームはトロフィー/実績を意識しないなら飛ばしてOK
カードバトル(120人から収集)やベーゴマなど、コンプリートには相当の時間を要するミニゲームが複数ある。ストーリーを楽しむだけなら無理に全完成を目指す必要はない。実績・トロフィーを全取得したい場合は計画的に進めることを勧める。
これらを踏まえて遊ぶと、百英雄伝が持っているポテンシャルを十分に引き出すことができる。
幻想水滸伝ファンへ——そしてJRPGを愛する人へ
幻想水滸伝をプレイしていたかどうかで、このゲームへの刺さり方は大きく変わる。幻水ファンにとって百英雄伝は「探していたものがある」という実感のある作品だ。仲間集めの感触、拠点に人が集まる喜び、群像劇の重みある物語——これらが現代のグラフィックと声優演技で体験できるのは、他のどのゲームでも得られない体験だ。
幻水を知らない人にとっても、「100人を超えるキャラクターを集めながら育てた拠点を眺める楽しさ」は十分に伝わる設計になっている。ただし、ターン制コマンドRPGのテンポを「懐かしい」と感じられるか、「古い」と感じるかで評価が分かれる。
幻水ファンとしては「おおむね求めていたもの」が揃っていた。完璧ではないけれど、「これが欲しかった」という気持ちは間違いなく満たしてもらえた。
出典:note「ストーリーネタバレなし 百英雄伝をクリアしたので感想書く」
60〜80時間のプレイ時間でメインストーリーとサブコンテンツを一周できる。全コンプリートを目指すなら100時間以上は想定してほしい。コストパフォーマンスという観点では、ボリュームは十分だ。
百英雄伝は「完璧ではないが、確かな面白さがある」ゲームだ。幻想水滸伝を愛した人たちが情熱を持って作り上げた作品であることは、プレイすると伝わってくる。その重みを受け取る準備ができているなら、このゲームは答えてくれる。
Metascore79点、Steam非常に好評76%という評価は「この作品は間違いなく良いゲームだが、全員に刺さるわけではない」という現実を正確に示している。でもこれは否定ではなく、「刺さる人には深く刺さる」という意味でもある。
村山吉隆氏が見届けることができなかったリリースを、残されたスタッフたちが届けた。そしてその「最後のシナリオ」が2025年に追加配信された。このゲームには制作側と受け取る側、双方の想いが積み重なっている。
もし幻想水滸伝を遊んだことがある人が読んでいるなら、百英雄伝は一度触れる価値がある作品だと断言できる。テンポの問題は倍速で乗り越えられる。仲間集めの楽しさと拠点の成長は、時代を超えて変わらず機能していた。
クロノ・トリガーの系譜を継ぐドット絵RPGとして、海外でも高く評価されている。

まとめ:百英雄伝を買うべき人、慎重に考えるべき人
最後に、百英雄伝をどんな人に勧めるか、そしてどんな人は慎重に考えるべきかを整理する。
こんな人には強くおすすめ
- 幻想水滸伝シリーズのファンで、仲間集め・拠点育成の感触が好きな人
- ターン制コマンドRPGの懐かしさを現代的な映像で楽しみたい人
- 100人以上のキャラクターを集めながら長く遊び込みたい人
- 群像劇型の重厚なJRPGストーリーを求めている人
- SSD搭載PC(Steam)またはPS5でプレイできる人
慎重に考えてほしい人
- 最新ゲームと同等のQOL(快適性・テンポ)を求める人
- Nintendo Switch版でプレイを予定していて、ロード問題が許容できない人
- 「幻想水滸伝の続編」という言葉に過剰な期待をしている人(精神的続編であり、直接の続編ではない)
- 短い作業戦闘が嫌いで、テンポを最優先する人
百英雄伝は「失敗作」でも「傑作」でもなく、「光と影がくっきりと分かれた、誠実な力作」だと思っている。幻想水滸伝が与えてくれた体験をもう一度求めていた人たちに向けて、Rabbit & Bear Studiosのスタッフたちが全力で応えた作品だ。その誠実さは、プレイすると確かに伝わってくる。
村山吉隆氏の遺作となったこの作品が、多くのプレイヤーに届くことを願っている。
百英雄伝
| 価格 | ¥5,680 |
|---|---|
| 開発 | Rabbit & Bear Studios |
| 販売 | 505 Games |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows |
| プレイ形式 | シングル |
