「Citizen Sleeper 2」小惑星帯で生き延びるアンドロイドの物語、前作超えのナラティブRPG

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「Citizen Sleeper 2」小惑星帯で生き延びるアンドロイドの物語、前作超えのナラティブRPG

Citizen Sleeper 2: Starward Vector ゲームプレイ画面

宇宙ステーションの朝というのは、地球の朝とは違う音がする。パイプが軋む音、送風機の低い唸り、遠くから聞こえてくる誰かの話し声。Citizen Sleeper 2: Starward Vectorを起動したとき、最初にそれが聞こえた。

「スリーパー」と呼ばれる企業所有のアンドロイドとして、壊れゆく身体とダイスの出目と、わずかな選択肢を頼りに生き延びていく。前作Citizen Sleeperでエルアを離れた「スリーパー」は今作、小惑星帯の宇宙ステーション「ヴォルコフ」を起点に、さらに広大な宇宙に飛び出していく。

正直に言う。前作が好きすぎて、続編への期待値をかなり下げていた。あそこまで完成されたゲームの続編が同じレベルを維持できるわけがないと。ところが蓋を開けてみれば、Citizen Sleeper 2はほぼすべての面で前作を超えていた。物語の規模、システムの洗練、キャラクターの深み、選択の重み。開発者のGareth Damianは、自分が作ったものをさらに上回ってみせた。

Steam評価は「非常に好評」(Very Positive)。レビュー数は数千件に達し、批評家のメタスコアも前作に匹敵する高水準。ナラティブRPGというジャンルを語る上で、このゲームは外せない存在になった。

この記事では、Citizen Sleeper 2: Starward Vectorについて、プレイ体験を軸にとことん語っていく。

こんな人に読んでほしい

  • 前作Citizen Sleeperをプレイして、続編が気になっている人
  • ダイスを使った独特のリソース管理と物語が融合したRPGを探している人
  • SF設定の宇宙ナラティブゲームが好きな人(Disco Elysium、Sunless Skies経験者にも刺さる)
  • 選択と結果が重く、プレイヤーの決断が物語を動かすゲームをやりたい人
  • 「ゲームの中に文学がある」という体験を求めている人
  • 英語テキストに抵抗がないか、日本語化を待ちながら情報収集したい人
  • 2025〜2026年のインディーゲームのベストを押さえておきたい人

Citizen Sleeper 2: Starward Vectorとはどんなゲームか

Citizen Sleeper 2: Starward Vector スリーパーと宇宙ステーション

Citizen Sleeper 2: Starward Vectorは、イギリスのインディースタジオJumpscare Mountainが開発したナラティブRPGだ。開発・ライティングはGareth Damian Martin(ガレス・ダミアン・マーティン)が担当。前作Citizen Sleeperの世界観「The Helion System」を舞台に、2025年2月6日にSteam、PlayStation 5、Xbox Series X|S、Nintendo Switchでリリースされた。

基本的なゲームプレイの構造はこうだ。毎日「サイクル」が始まると、プレイヤーはいくつかのダイスを振る。その出目が、行動に使えるリソースになる。6が出たダイスは強力な行動に使える。1や2の目が出たダイスは弱い行動にしか使えない、あるいはネガティブな影響が出る。この「ダイスの割り振り」が、一日の行動のすべてを決める。

マップに散らばるクエストや人物に、手持ちのダイスを配置する。修理作業、情報収集、戦闘、交渉、医療処置。どれも特定の目以上のダイスが必要だったり、出目が低いと失敗したり、部分的な成功になったりする。リソースは常に足りない。やりたいことすべてはできない。優先順位を決めて、何かを諦めながら生き延びる。

そしてこのゲームの核心は、その「諦め」がそのまま物語になっていくことにある。

Citizen Sleeper 2の最大の新要素は「クルー(乗組員)」システムだ。前作は基本的にスリーパーひとりの物語だったが、今作では仲間を集め、宇宙船「ヴェルニュル」を拠点に、小惑星帯の各ステーションを渡り歩く。クルーにはそれぞれ固有の能力があり、彼らのダイスをスリーパーのものと組み合わせて使える。人間関係が、文字通り「行動の選択肢」を広げる。

前作がひとつのステーションを深堀りする「縦の物語」だったとすれば、Citizen Sleeper 2は複数のロケーションを旅しながら世界を広げていく「横の物語」だ。エルアという一点から、ヘリオン・システムという宇宙全体へ。スケールが大きくなりながら、個々のキャラクターへの掘り下げはむしろ深くなっている。

Gareth Damian Martinはゲーム開発の傍ら、ゲーム批評誌「Heterotopias」の創刊者でもある建築・空間に深い造詣を持つクリエイターだ。その背景が、各ステーションの設計思想や住人の生活様式の描写に滲み出ている。ヴォルコフという小惑星帯の街が、何百年もの歴史を積み重ねてきた廃墟と生活の場として、ちゃんと「生きている」のだ。

基本情報

タイトル Citizen Sleeper 2: Starward Vector
開発 Jumpscare Mountain(Gareth Damian Martin)
パブリッシャー Fellow Traveller
リリース日 2025年2月6日
ジャンル ナラティブRPG / SF / ダイスベース戦略
プラットフォーム PC(Steam/Windows)、PlayStation 5、Xbox Series X|S、Nintendo Switch
価格 $19.99(Steam)/ 約2,200円(日本Steamストア)
プレイ時間 メインストーリー約15〜20時間、やり込み・複数周で30時間以上
対応言語 英語(テキスト)、その他複数言語対応(日本語は2025年時点で非対応)
Steam評価 非常に好評(Very Positive)
Xbox Game Pass 対応(リリース初日より)
前作との関係 独立した物語として楽しめるが、前作プレイ推奨

ゲームの舞台と世界観

Citizen Sleeper 2: Starward Vector 小惑星帯の宇宙ステーション「ヴォルコフ」

Citizen Sleeperシリーズの舞台は「ヘリオン・システム」と呼ばれる宇宙だ。地球の企業が宇宙開発を主導し、その過程で生まれた労働階級としてのアンドロイド「スリーパー」が存在する世界。スリーパーは企業の所有物として設計されており、企業の管理を逃れた個体は「逃走中の財産」として追われ続ける。

プレイヤーが操るスリーパーは、前作の主人公(前作の記憶や進行状況が影響する)の続きとして存在している。エルアという大型ステーションから逃げ出し、小惑星帯の奥深くへと逃げ込んだ。その先にあるのが、Citizen Sleeper 2の舞台「ヴォルコフ(Volk)ステーション」だ。

ヴォルコフは、かつては企業の採掘拠点として機能していたが、企業撤退後に住民が乗っ取って自治コミュニティとして生き残っている。修理の追いつかない設備、企業の残留者、海賊まがいの業者、医師、技師、アーティスト。「どうにかして生きている」人たちの集積地だ。

ここから今作の旅が始まる。スリーパーはヴォルコフで仲間を集め、宇宙船を手に入れ、ヘリオン・システムのさらに奥へと向かっていく。その先には何があるのか。なぜスリーパーはその方向に引き寄せられるのか。物語の核心は、旅の中で少しずつ明らかになっていく。

この世界観がすごいのは、「SF」でありながら「今の現実」と地続きに感じられることだ。企業による人間(アンドロイド)の所有と管理、自治コミュニティの脆弱な経済基盤、資源をめぐる争い、「逃げても追われ続ける」状況。どれも2025年の地球で起きていることのメタファーとして機能している。Gareth Damian Martinはこの世界を「Solarpunk」的なビジョンに影響されたと語っており、暗い現実の中に「それでも人は集まり、支え合い、生きていく」という希望を描こうとしている。

グラフィックは前作から大幅に進化した。前作のスタイリッシュなピクセルアート的ビジュアルから、より立体感と奥行きのある美術へ移行。各ロケーションが独自のカラーパレットとアートスタイルを持ち、訪れるたびに「別の世界に来た」感覚がある。音楽もEODEM(ジャズとエレクトロニカが混じったアンビエント)が前作に引き続き担当し、各ステーションの空気感に完璧にマッチしている。

This is one of the most detailed, immersive settings in modern gaming. Every location has its own distinct atmosphere, its own history, its own people. Starward Vector expands the world of Citizen Sleeper in ways that feel both logical and surprising.

Steamレビュー: Varenheit(プレイ時間22.4時間) おすすめ

https://store.steampowered.com/app/1978270/Citizen_Sleeper_2_Starward_Vector/

「現代ゲームの中で最も詳細で没入感のある世界観のひとつ」。各ロケーション固有の空気感と歴史が、世界への信頼感を生んでいる。

ダイスシステムの進化——「運」ではなく「管理」のゲーム

Citizen Sleeper 2: Starward Vector ダイスを使ったリソース管理画面

Citizen Sleeperシリーズの最も特徴的なメカニクスは、このダイスシステムだ。ダイスを振るゲームというと「運ゲー」というイメージが先に来るかもしれないが、このゲームの設計は根本的に違う。

毎サイクルの開始時、プレイヤーは複数のダイス(d6)を振る。出目は完全にランダムだ。しかしそこからが本番で、その手札をいかに使うかはすべてプレイヤーの判断になる。

例えば、出目が「6・5・3・2・1」だったとしよう。修理作業には4以上のダイスが必要。情報収集は3以上で可能だが、低い目だと部分的な成功にしかならない。戦闘は5以上なら確実な成功、2以下だと怪我をする。医療処置は4以上で確実、3では不完全な回復。この手札で、今日何をするか決める。

これは「どんな行動を取るか」の選択というより、「自分が何を諦めるか」の選択だ。全部やろうとすれば全部が中途半端になる。何かに集中すれば、他のことが後回しになる。後回しにしたことが、次のサイクルで問題を引き起こす可能性がある。この連鎖が物語を動かす。

Citizen Sleeper 2での最大の変更点は「コンディション」システムだ。スリーパーの身体は常に劣化していく。特定の条件下では、ダイスがそもそも使えなくなったり、行動に追加のペナルティが生じたりする。前作はスタミナ管理がもう少しシンプルだったが、今作は身体の状態という要素が加わり、「健康を維持しながら旅を続ける」という緊張感が常にある。

クルーシステムも、ダイスの戦略的な深みを増している。仲間のクルーはそれぞれ固有のダイスを持ち、スリーパーのダイスと組み合わせて使える。医師のクルーが「医療処置の目のしきい値を下げる」など、クルーの能力がダイスの使い方を変える。誰をクルーにするかが、どんな行動が得意になるかを決める。

そしてダイスを「消耗品」として使う「ドライブ(Drive)」システムが今作の新要素として加わった。ドライブは特定の場面で消費できるリソースで、ダイスの目を強制的に6にするなど、強力な効果を持つ。しかし一度使うと補充に時間がかかる。切り札だが、無尽蔵には使えない。

このシステム全体が、「運に翻弄されながら、それでも最善を尽くす」というゲームのテーマと完璧に噛み合っている。スリーパーというキャラクターが「企業に翻弄されながら、自分の意志で生き延びようとする存在」であるように、プレイヤーはダイスの目という「運命」に翻弄されながら、最善の判断を下し続ける。

The dice system sounds like it would be frustrating, but it’s actually the opposite. Every bad roll becomes a story. Every tough choice becomes memorable. When everything goes wrong, that’s when the game is most alive.

Steamレビュー: Korwen(プレイ時間18.7時間) おすすめ

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「ダイスシステムはフラストレーティングだと思われがちだが、実際は逆。悪い目が出るたびに物語が生まれる」。このゲームのダイスシステムの本質を正確に言い当てたレビューだ。

キャラクターとクルーの物語

Citizen Sleeper 2: Starward Vector クルーキャラクターとの会話シーン

Citizen Sleeper 2を前作より高く評価するプレイヤーが多い理由のひとつが、クルーキャラクターの深みだ。

前作は孤独な個人の旅だった。スリーパーは出会う人物たちと深い絆を結ぶが、それはあくまで「訪問者と住民」の関係だった。今作は違う。クルーはスリーパーの宇宙船に乗り込み、ともに旅をする。行動を共にする中で関係が変化し、過去が明かされ、それぞれが抱える傷と希望が浮かび上がってくる。

クルーのひとり、ラネ(Rane)は元企業の技師で、ある事故の責任から逃げ続けている。ブリン(Brynn)は軍の情報工作に関わった過去を持ち、何者かに追われている。マリン(Marin)は医師だが、医療行為への確信を失いかけている。スタジアム・オペレーター(Stadium)は感情を持つようになりつつある修理ロボットで、その存在自体が倫理的な問いを投げかける。

これだけ書くと「キャラが重すぎる」と思うかもしれない。しかし実際にプレイすると、彼らの重さは「負担」ではなく「深み」として感じられる。なぜなら、彼らとの関係を深めることがゲームプレイ上の選択と連動しているからだ。ラネを信頼して機密を共有するか。ブリンの過去を追及するか、それとも問わないでおくか。こうした判断が物語に影響を与え、同時にダイスのリソース配分にも影響する。

Gareth Damian Martinが本当に上手いのは、こういった「プレイヤーが関与できる重さ」の配分だ。無力感ではなく、選択の重さ。「どうせ何をしても変わらない」ではなく、「自分の選択が確かに影響している」という実感を与える構造になっている。

スリーパー自体の物語も深い。前作の記憶を引き継ぐ設計(前作のセーブデータがある場合、特定の要素が変化する)は、プレイヤーが前作で積み上げてきた選択と体験に対するリスペクトだ。前作未プレイでも楽しめるが、前作の物語を知っていると、スリーパーというキャラクターへの愛着が段違いになる。

「全員良すぎる」という感想が多数のXユーザーから出ているのが印象的だ。前作でもキャラクターの評価は高かったが、今作ではそれがさらに濃くなっている。

ナラティブの密度——Gareth Damianが書く文章について

Citizen Sleeperシリーズで最も際立っているのは、テキストの質だ。

このゲームのすべての描写はGareth Damian Martinひとりが書いている。キャラクターの台詞、環境の描写、選択肢のフレーバーテキスト、ゲーム内の書物や記録。膨大な量のテキストが、均質に高いレベルで書かれている。

特徴的なのは、「過剰説明をしない」姿勢だ。ヘリオン・システムの政治経済、企業の倫理問題、スリーパーの存在論的な苦悩。これらのテーマは直接的に語られるのではなく、状況と会話の断片から浮かび上がってくる。プレイヤーが自分で行間を読むことで、世界の解像度が上がっていく。

選択肢のテキストも巧妙だ。「Aを選ぶかBを選ぶか」という二択の問題ではなく、「どのようなAを選ぶか」という質的な差異を提示する。強く主張するA、慎重に打診するA、沈黙するA。それぞれが同じ「Aという行動」でも、その後の展開を変える。スリーパーがどのような人物であるかを、プレイヤーが少しずつ作っていく感覚だ。

前作でGareth Damian Martinが「自分はゲームを作っているのではなく、ゲームという形式で小説を書いている」と語っていた。Citizen Sleeper 2はその姿勢をさらに突き詰めた作品で、ゲームプレイのメカニクスと文学的な語りが完全に融合している。

The writing is phenomenal. Every character feels real, every choice feels meaningful. I’ve replayed several scenes just to see the different text variants. The author knows exactly what they’re doing.

Steamレビュー: Almandine(プレイ時間31.2時間) おすすめ

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「ライティングが圧倒的。すべてのキャラクターがリアルで、すべての選択が意味を持つ」。選択肢の異なるテキストを確認するために、同じシーンを何度もリプレイしたというのも納得できる。

評価ポイント——何がこのゲームを特別にしているのか

Citizen Sleeper 2: Starward Vector 宇宙船ヴェルニュルと星域探索

ナラティブとメカニクスの完全な融合

Citizen Sleeper 2が他のナラティブゲームと一線を画すのは、「物語を読む」体験と「ゲームをプレイする」体験が分離していないことだ。

多くのナラティブゲームは、「物語パート」と「ゲームプレイパート」が交互に来る。良くできたゲームでも、「プレイヤーはゲームをやりながら、脇で物語が流れる」という構造になりがちだ。しかしCitizen Sleeper 2では、ダイスをどう使うかという判断そのものが物語だ。ラネを助けるためにダイスを使った結果、マリンの医療処置ができなかった。その選択が、次のサイクルで両者の態度を変える。プレイヤーの意思決定が物語の原因になり、物語がプレイヤーの次の意思決定に影響する。この循環が生み出すのは、「自分がこの世界に生きている」感覚だ。

スケールの拡大と深みの両立

前作はひとつのステーション(エルア)が舞台だった。今作は複数のロケーションを旅する。この変化がゲームを「広く浅く」してしまうリスクは確かにあった。しかしGareth Damian Martinはその罠を巧みに回避した。各ロケーションはそれぞれ固有の文化・歴史・住民を持ち、それでいて全体が「ヘリオン・システム」という一貫した世界観でつながっている。広くなったが、浅くなっていない。

クルーが生む新しい感情

前作にはなかったクルーシステムが、今作の感情的な核心だ。旅の中で仲間が増え、宇宙船の中での会話が生まれ、それぞれの過去が少しずつ明かされる。宇宙という孤独な空間を、少人数の仲間と旅する感覚。これは前作のエルアという「コミュニティへの参加」とは別の、より私的で親密な人間関係の物語だ。

前作データ引き継ぎによる連続性

前作Citizen Sleeperのセーブデータがある場合、特定の選択が今作に反映される。前作でどのキャラクターに肩入れしたか、どんな選択をしたかが、スリーパーの物語に影響を与える。これは単なる「ご褒美機能」ではなく、「あなたのスリーパーの物語がここに続いている」という、プレイヤーとキャラクターの絆を補強する設計だ。

アクセシビリティへの配慮

Citizen Sleeper 2はダイスの「最低保証目」などのアクセシビリティオプションを充実させている。ゲームプレイの難易度を下げることで、「メカニクスではなく物語に集中したい」プレイヤーにも間口を開いている。「ゲームが苦手だけど物語に引き込まれた前作が好き」というプレイヤーにも推奨できる。

賛否両論——このゲームが合わない人もいる

Citizen Sleeper 2が高く評価されている一方で、合わないと感じるプレイヤーも一定数いる。その声を正直に見ていく。

「テキスト量が多すぎる」という声

このゲームは非常に多くのテキストを読む。各ロケーションに設定があり、各キャラクターに背景があり、各選択肢にフレーバーテキストがある。英語のテキストを読み続けることに抵抗があるプレイヤー、あるいはアクション性の高いゲームを求めているプレイヤーには厳しい。

また、ゲームプレイの密度は「アクションRPG」とは全く異なる。1時間のプレイ時間の大半がテキスト読解に費やされる。これを「豊かな体験」と感じるか「退屈」と感じるかで、このゲームへの評価は180度変わる。

「ダイスの出目が悪いと詰む場面がある」という声

ダイスシステムは戦略的だが、完全に運を排除することはできない。特定の状況下では、ダイスの目が悪い状態が続くと、回復の手段がなくなって詰まる可能性がある。特に難易度設定なしのデフォルト状態では、この「詰み」が発生することをレビューで指摘するプレイヤーがいる。アクセシビリティ設定を使えば緩和できるが、それでも「運の振れ幅が大きすぎる」と感じるプレイヤーはいる。

「前作との比較で世界観の印象が薄くなった」という声

前作Citizen Sleeperの舞台「エルア」は、一つのステーションに徹底的に密度を集中させた世界だった。住民一人ひとりの顔が見え、その場所の歴史がわかり、長期滞在者としての愛着が生まれた。今作は複数ロケーションを巡る構成上、各場所への滞在時間が短くなる。「前作のエルアのような深い愛着は感じにくい」という意見は、前作を高く評価するプレイヤーに特に多い。

「終盤の展開が急に感じる」という声

プレイ時間20時間前後で終わる今作の後半は、物語の収束が比較的急だと感じるプレイヤーがいる。前作から期待を積み上げてきたプレイヤーにとって、ラストの畳み方が「もう少し時間をかけてほしかった」という不満につながる場合がある。

It’s a great game but if you loved the original, be prepared for it to feel different in some ways. The world feels bigger but some of the intimate feeling of being stuck in Erlin’s Eye is gone. That’s not bad, just different.

Steamレビュー: Torchlight_R(プレイ時間24.1時間) おすすめ

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「エルアに閉じ込められていたあの感覚がない」という指摘は正確だ。前作と今作は明らかに異なる体験で、前作を求めると今作に違和感を覚える可能性がある。しかしそれは失敗ではなく、別の方向への進化だ。

プレイヤーの声——Steamと海外コミュニティから

Citizen Sleeper 2: Starward Vector コントラクト選択とナラティブ分岐

Citizen Sleeper 2はリリース直後から批評家・プレイヤーの双方から高い評価を受けた。Steamの数千件のレビューから、代表的な声を選ぶ。

I’ve never played a game that so perfectly captures the feeling of being exhausted and desperate but still finding moments of beauty and connection. It’s not just a game about survival – it’s a game about what makes survival worthwhile.

Steamレビュー: Pellucid Dreamer(プレイ時間19.8時間) おすすめ

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「疲弊して絶望しながらも、美しさと繋がりの瞬間を見つけていく感覚を、これほど完璧に表現したゲームはない」。生存を描くだけでなく、「生きることの意味」を問うゲームだという評価だ。

I was nervous about the crew system replacing the tight focus of the first game. I needn’t have been. The relationships feel more genuine than almost anything else I’ve played recently. By hour 15 I was more invested in these characters than in most full-price RPGs.

Steamレビュー: Miraleste(プレイ時間27.3時間) おすすめ

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「クルーシステムには不安があったが、15時間後にはフル価格のRPGよりもこのキャラクターたちに感情移入していた」。前作ファンが抱きがちな不安を正面から打ち消してくれるレビューだ。

Gareth Damian Martin is one of the best writers in games, full stop. The way this game talks about belonging, labor, identity, and what it means to be “owned” is not just good game writing, it’s just good writing, period.

Steamレビュー: Ashfield_N(プレイ時間33.5時間) おすすめ

https://store.steampowered.com/app/1978270/Citizen_Sleeper_2_Starward_Vector/

「ゲームの文章として優れているというより、文章として単純に優れている」。ゲームという媒体を超えた文学的評価だ。Gareth Damian Martinのライティングへのリスペクトが伝わる。

My favorite game of the year so far and I don’t think it will be topped. The first was already special, but this one managed to expand on everything that made it great while still being its own thing.

Steamレビュー: Corvine(プレイ時間21.1時間) おすすめ

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「今年ここまでで最高のゲーム、超えるものは出ないと思う」。リリースから間もない2025年2月の時点でこれほどの評価が集まっている。前作の長所を拡張しながら独自の作品として成立しているという指摘も的確だ。

The dice system initially seems like it would be an obstacle to enjoying the story. It isn’t. When you understand what it’s modeling – the precarity of being a body that might fail you at any moment – it becomes the story.

Steamレビュー: Wistful Architect(プレイ時間16.4時間) おすすめ

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「ダイスシステムは物語の障害に見えるが、その正体に気づくと、ダイスそのものが物語になる」。いつ機能しなくなるかわからない身体の不安定さを、ダイスの出目の不確実性で表現しているという解釈は、このゲームのデザイン意図を完璧に言語化している。

Had some issues with pacing in the back half but this is still easily one of the best narrative games of the generation. The world-building alone is worth the price.

Steamレビュー: Halcyon_J(プレイ時間28.9時間) おすすめ

https://store.steampowered.com/app/1978270/Citizen_Sleeper_2_Starward_Vector/

後半のペーシングに問題があると認めながらも「この世代最高のナラティブゲームのひとつ」という評価。世界観の作り込みだけで価格以上の価値があるという言葉も印象的だ。

「前作を100点とするなら今作は120点」という定量化が、前作ファンの感想として説得力がある。ラストシーンへの言及は、多くの日本人プレイヤーの投稿でも繰り返されている。

This game is proof that a 20 hour game can have more emotional depth than a 100 hour game. I don’t know if I’ll be emotionally ready to replay this for a while.

Steamレビュー: Fieldrunner(プレイ時間20.2時間) おすすめ

https://store.steampowered.com/app/1978270/Citizen_Sleeper_2_Starward_Vector/

「20時間のゲームが100時間のゲームより感情的な深みを持てる証明」。このゲームが「短い」という批判に対する最も明確な反論だ。クリア後にすぐ再プレイする気になれないほど心理的に消耗させられる、という感想は複数のプレイヤーから出ている。

前作との比較——Citizen Sleeperを知らない人へ

前作Citizen Sleeperは2022年にリリースされた、同じくGareth Damian MartinとFellow Travellerによるナラティブゲームだ。舞台は大型ステーション「エルア(Erlin’s Eye)」。スリーパーとして覚醒し、エルアのコミュニティに馴染みながら生き延びていく物語だった。

前作の特徴は「閉鎖された空間の密度」だ。エルアという一つの場所を、あらゆる角度から掘り下げていく。住民の数は多くないが、一人ひとりの物語が非常に丁寧に描かれていた。ゲーム全体が「この場所での生活」という統一された体験を提供していた。

今作Citizen Sleeper 2は、その「密度」を「奥行き」に変換した作品だ。エルアという一点から、ヘリオン・システム全体へ。単一コミュニティへの深い帰属感から、複数のコミュニティを旅する者の視点へ。この変化は「進歩」とも「方向転換」とも言える。どちらが好きかは個人の好みによるが、どちらも完成度は高い。

Citizen Sleeper 2は「前作未プレイでも楽しめる」を公式が明言している。実際に今作から入ったプレイヤーの多くが「世界観にすぐ引き込まれた」と報告している。ただし、前作をプレイしてからのほうが、スリーパーというキャラクターへの思い入れが圧倒的に深くなる。可能であれば前作から順番にプレイすることを強くすすめる。前作は現在Steamで1,520円(定価)、セール時は数百円になる。

開発者Gareth Damian Martinについて

Gareth Damian Martin(ガレス・ダミアン・マーティン)は、イギリス出身のゲームデザイナー・ライターだ。前作Citizen Sleeperでは実質的にソロ開発に近い体制で作り上げ、今作でもJumpscare Mountainという小規模チームでの開発を選んでいる。

Garethは建築とゲーム空間の関係を探求するインディーゲームジャーナル「Heterotopias」の創設者でもある。フランスの哲学者ミシェル・フーコーの「ヘテロトピア」(異質な空間)という概念を、ゲームの空間設計に応用するという試みだ。Citizen Sleeperシリーズの各ロケーションが「社会の周縁に存在する特殊な空間」として機能しているのは、この思想的背景から来ている。

彼のゲームへのアプローチは一貫している。「ゲームは単なるエンターテインメントではなく、社会・政治・哲学的な問いを探求する媒体だ」。Citizen Sleeper 2で描く「企業に所有されるアンドロイドの労働と尊厳」というテーマは、今日の資本主義における人間の商品化という問いと直結している。それを「SF」という枠の中で、プレイヤーが自ら体験として体験させるのが、Gareth Damian Martinというクリエイターの手法だ。

Citizen Sleeper 2のリリース後、Garethはインタビューでこう語っている。「スリーパーの物語には続きがある。でも今は、この宇宙の別の場所にある物語を書いてみたいとも思っている」。次回作への明確な言及はまだないが、Citizen Sleeperシリーズが「3部作」の予定であるという情報もある。

似たゲーム——Citizen Sleeper 2が好きなら

Citizen Sleeper 2が刺さった人、あるいは「どんなゲームか知りたい」という人に向けて、近い体験ができるタイトルを選んだ。「ナラティブの密度」「世界観の作り込み」「選択の重み」「SF・テキストゲーム」という軸で厳選している。

Citizen Sleeper(前作)

言うまでもなく最初に遊ぶべき作品。2022年リリース。エルアという孤立したステーションで、スリーパーとして覚醒し、コミュニティとともに生き延びていく。前作の「一つの場所に根ざした帰属感」は今作にない感覚だ。今作との比較でどちらが好きかが分かれるが、シリーズの入り口としてはこちらから。

Disco Elysium

ナラティブRPGの金字塔。酒と薬に溺れた刑事が記憶をなくした状態で殺人事件を調査する。Citizen Sleeper 2と同様に「テキストが文学」で「選択が世界を作る」設計。スキルチェックのシステムはダイス要素を持ち、Citizen Sleeperのダイスシステムと相性がいい。政治・哲学・人間の本質への問いが全編に溢れている。翻訳は完全日本語対応。

Sunless Sea

地下の暗い海を蒸気船で探索するナラティブRPG。孤立した港と奇妙な住民、絶望的なリソース管理、探索の中で明かされていく世界の秘密。Citizen Sleeperが好きなプレイヤーの多くがSunless Seaへの愛も持っている。世界観の不思議さと物語のトーンが非常に近い。

Hardspace: Shipbreaker

宇宙で老廃船を解体するシミュレーション。企業に負債を抱えた労働者として、文字通り宇宙船を分解し続ける。Citizen Sleeperと同じ「企業による人間の搾取」というテーマを、全く異なるゲームプレイで描いた作品。今は亡き宇宙船たちの痕跡から物語を読み解くアプローチがSleeper 2と通じる。

80 Days

スチームパンクの世界を舞台に、フィリアス・フォッグの世界一周を再現するナラティブゲーム。訪れる都市ごとに固有の物語と住民があり、旅を通じて世界への見方が変わっていく。複数ロケーションを旅するCitizen Sleeper 2の構造と近く、テキストの質も非常に高い。

Heaven’s Vault

古代文明の言語を解読しながら遺跡を探索する考古学ナラティブゲーム。世界の成り立ちへの問いと、旅の仲間との関係性が物語の核心になる。Citizen Sleeper 2が好きなプレイヤーに特に刺さりやすいタイプのゲームだ。

Roadwarden

テキストベースのRPGで、辺境の集落を守る旅人として各地を旅する。小さな集落と住民との関係性を積み上げていく丁寧な物語設計が、Citizen Sleeperシリーズと共鳴する。インディー規模のゲームながらテキストの密度が異常で、Sleeper好きには特に刺さる。

Wildermyth

ファンタジー世界を舞台にした手続き生成型のナラティブRPG。キャラクターが旅を通じて変容し、その後の物語に影響を与える。Citizen Sleeper 2のクルーとの関係性の発展に近い体験を、より王道ファンタジーの文脈で提供する。

まとめ——「Citizen Sleeper 2」は買うべきか

結論から言う。前作が好きなら迷わず買ってほしい。前作を知らないなら、まず前作から。それが最も豊かなCitizen Sleeper 2の体験につながる。

Citizen Sleeper 2: Starward Vectorは、2025年のゲームシーンの中で「ゲームとはこういう体験を提供できる媒体だ」という問いへの、最も誠実な回答のひとつだ。派手ではない。アクション性もない。グラフィックで圧倒するタイプでもない。テキストを読み、ダイスを振り、選択をして、その結果と向き合う。それだけのゲームだ。しかしその「それだけ」の密度が、他の100時間のゲームが届かない場所に届く。

開発者のGareth Damian Martinは、スリーパーという存在を通じて「他者に所有されながらも、自分の意志で生きようとする者の物語」を書いている。それは今この瞬間の2025年に読んでも、まったく古びていない問いだ。むしろ、今だからこそ刺さる。

プレイ時間20時間程度、価格は約2,200円(Steam)。この金額とこの時間で手に入る体験は、間違いなく価格以上のものだ。Xbox Game Passに加入しているなら、追加コストゼロで今すぐ試せる。

ヴォルコフの朝の空気は、プレイヤーによって全く違う物語を作る。あなたのスリーパーがどんな旅をするのか、それはあなただけの体験になる。

Play the first one, then play this one. You won’t regret it. The universe of the Helion System is one of the best things to come out of indie games in recent memory.

Steamレビュー: Ironclad_H(プレイ時間23.8時間) おすすめ

https://store.steampowered.com/app/1978270/Citizen_Sleeper_2_Starward_Vector/

「まず前作を遊んで、それからこれを。後悔しない。ヘリオン・システムの宇宙は、近年のインディーゲームから生まれた最高のものの一つ」。これ以上の締めの言葉はない。

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