「Sea of Stars」ターン制コンボで戦うドット絵ファンタジーRPG

Sea of Stars レビュー|クロノ・トリガーの魂を宿した現代の傑作ドット絵RPG、その実力を正直に語る

ゲームを起動した瞬間に流れ出した音楽で、すぐにわかった。「あ、これは本物だ」と。光田康典さんが手がけたオープニングトラックが鳴り響いて、スーパーファミコン世代の記憶を持つ人なら、最初の10秒で喉の奥がちょっとだけ熱くなるはずだ。ドット絵のキャラクターが草原に立ち、太陽の光が水面に揺れ、あの頃の感覚が全身に流れ込んでくる。

Sea of Starsは、カナダのケベックシティに拠点を置くインディースタジオ・Sabotage Studioが開発したターン制RPGだ。2023年8月29日にSteam・Nintendo Switch・PS4・PS5・Xbox One・Xbox Series X|Sで同時リリースされた。発売初日で購入本数10万本、初週で25万本を突破——これは開発チームが「年間目標」として掲げていた数字だった。それが1週間で達成されてしまったのだから、いかにこの作品が多くの人に求められていたかがわかる。

「クロノ・トリガーやFF6が好きだった」「最近のJRPGについていけなくなってきた」「ドット絵のRPGをもう一度やりたいけど、古いゲームは動作が不安」——そういう人たちが30年分の渇きを癒やすために集まった。実際にプレイして感じたことは、単なる懐古趣味ではなく、90年代JRPGの「気持ちよさ」を完全に再現しながら、2023年のゲームとして正しく成立させているという驚きだった。

この記事では、Sea of Starsの魅力を戦闘システム・グラフィック・音楽・ストーリー・弱点まで正直に書いていく。「買って後悔しないか」「どんな人に合うゲームか」という問いに、プレイした立場からきちんと答えたいと思う。

プレイ動画

こんな人に読んでほしい

  • クロノ・トリガー・FF6・ライブ・ア・ライブなど90年代JRPGが好きな人
  • ドット絵のRPGをPC・コンソールで探している人
  • インディーゲームの中でもボリュームのある作品が欲しい人
  • 光田康典さんの音楽が好きな人
  • 戦略性のある戦闘と謎解きを両方楽しみたい人
  • 「久しぶりにRPGを最後まで遊び切りたい」と思っている人
  • Steam評価88%という数字が何を意味するのか知りたい人
目次

Sea of Starsとはどんなゲームか——基本情報と開発背景

Sea of Stars ゲーム全体の世界観

Sea of Starsはターン制コマンドRPGだ。主人公は「至点の子どもたち(Children of the Solstice)」と呼ばれる2人のキャラクター、ヴァレール(月の力を操る少女)とゼイル(太陽の力を操る少年)。2人が合わさって発動できる「エクリプスマジック」のみが、邪悪な錬金術師フレッシュマンサーと彼が生み出す怪物たちを退けられるとされている。

舞台は群島が点在するファンタジー世界。プレイヤーはこの2人のソルスティスウォリアーとして、幼馴染のガール(パーティのムードメーカーで料理担当)を含む仲間たちと共に世界を旅する。物語の骨格はシンプルながら、後半になるにつれて前作「The Messenger」との繋がりが明かされる構造になっていて、Sabotage Studioが積み上げてきた世界観の奥行きを感じさせる。

開発したSabotage Studioは2018年にリリースした「The Messenger」(忍者アクションプラットフォーマー)で業界から注目を集めたスタジオで、Sea of Starsはその第2作にあたる。2020年3月にKickstarterキャンペーンを開始し、目標金額9万カナダドルをわずか6時間で達成。最終的に2万5000人以上のバッカーからCA$160万以上の支援を集めた。2021年にはゲーミング投資ファンドのKowloon Nightsから追加資金も調達し、「コンテンツを削ることなくセルフパブリッシングを続けるために必要な投資だった」と開発チームは語っている。

この経緯を知ると、ゲームのあちこちに込められた「絶対に妥協しない」という意志が見えてくる。タイムリミットなし、パブリッシャーの干渉なし、作りたいものを作り切る——そのための資金調達を積み上げてきた結果が、2023年のSea of Starsだ。

項目 内容
タイトル Sea of Stars(シーオブスターズ)
開発・販売 Sabotage Studio
リリース日 2023年8月29日
対応プラットフォーム PC(Steam)/ PS4 / PS5 / Nintendo Switch / Xbox One / Xbox Series X|S
ジャンル ターン制RPG
プレイ人数 1〜3人(協力プレイ対応)
日本語対応 テキスト・インターフェース日本語対応(音声は英語のみ)
クリア時間目安 25〜35時間(実績・探索込みで40時間超も)
Steam評価 88%好評(1万1000件以上のレビュー、2024年時点)
価格(Steam) 4400円前後(セール時50%OFFになる場合あり)
無料DLC Throes of the Watchmaker(2024年5月リリース、8時間以上)
Steam Deck対応 動作確認済み(Verifiedバッジ取得)

基本情報をひとまとめにしたが、特に注目してほしいのは「Steam評価88%」と「無料DLC8時間以上」の2点だ。1万1000件以上のレビューでこの評価を維持するのは容易ではない。そして通常1000〜2000円相当のコンテンツが無料という事実は、Sabotage Studioが既存プレイヤーをどれだけ大切にしているかを示している。

戦闘システムの全貌——「ロック解除」と「タイミングアタック」が生む戦略的な読み合い

Sea of Stars 戦闘システム

Sea of Starsの戦闘は、「ターン制なのに止まっていない」という感覚を与えてくれる。その根幹にあるのが「ライブアクション要素」と「スキルロック」の2つの仕組みだ。この2つが組み合わさることで、ターン制RPGの「自分のターンを待つ受動的な時間」が能動的な「読み合い」に変換される。

まず「タイミングアタック」について。攻撃が敵にヒットする瞬間にボタンを押せば「強ヒット」が発動し、通常の1回攻撃が2ヒットに変化してダメージが増える。防御時も同様で、敵の攻撃が着弾する瞬間にボタンを押せば「強ブロック」が発動してダメージを軽減できる。この仕組みはマリオRPGシリーズが採用したシステムの発展形で、「見ている時間」を「遊んでいる時間」に変えるエレガントな設計だ。

プレイし始めた最初の30分でこの気持ちよさを確認できて、「ああ、このゲームは全部こういう感じで作られているんだな」と感じた。タイミングアタックに成功した瞬間の「カキン」という音と、モーションの変化——このフィードバックの設計が丁寧だ。失敗しても「次こそ」と思わせてくれる。

もうひとつが「スキルロック」だ。敵がパワフルな技を発動しようとすると、画面上に属性アイコンが並んだロックゲージが表示される。このロックにマッチする属性の攻撃を当てるたびにロックが1個ずつ壊れ、全破壊に成功すれば敵の行動そのものをキャンセルできる。全壊できなくても、壊した数に応じて敵技の威力が段階的に下がる仕組みになっている。

ここで「タイミングアタック」との連鎖が活きる。強ヒットを成功させると1回の攻撃が2ヒットになるため、ロック解除に使える打撃数が実質2倍になる。つまり「タイミングよく強ヒットを出せるか」が「ロック解除の効率」に直結している。この二重の連鎖設計が、戦闘ごとに「このターンをどう使うか」という思考を引き出す。

Sea of Starsの戦闘めちゃくちゃ面白い。クロノトリガーのコンビ技みたいなのあるし、タイミングアタックあるし、ロック解除あるし…要素が多いのに全部噛み合ってる感じがすごい

— Steamユーザーレビューより
出典:Steamユーザーレビュー

さらに戦闘では「コンボポイント(CP)」の管理も重要になる。通常攻撃やスキルを使うたびにCPが蓄積され、それを消費することで2人のキャラクターが連携する強力なコンビ技が発動できる。クロノ・トリガーの「連携技」を思い出す人は多いはずで、実際にSabotage Studioも影響を公式に認めている。コンビ技は視覚的にも派手で、「このコンビ技を見たいからCPを貯める」というモチベーションになる。

通常攻撃→CP蓄積→コンビ技発動という流れの中に、タイミングアタックとロック解除という2つの判断が入り込む。「どの攻撃をロック解除に充てるか」「CPをいつ使うか」「防御タイミングは合わせられるか」——この複数の思考が同時に走る瞬間が、戦闘の気持ちよさの核心だ。

難易度については「秘宝(Relics)」システムと呼ばれるアシスト機能が用意されていて、攻撃がすべて強ヒットになる「秘宝:スナックの達人」や、受けるダメージを半減させるオプションなど、プレイヤーが自分でカスタマイズできる。「ストーリーを楽しみたいけど戦闘が苦手」という人にも「骨のある難易度で挑みたい」という人にも対応できる柔軟な設計だ。

難易度も秘宝のオンオフで調整できるのがいい。詰まっても「秘宝つければいいか」って気持ちで進めるのが精神的にラク

— ゲームレビューブログより
出典:ゲームログブック

ただし、ロック解除を重視した戦略性を楽しみたいなら秘宝なしの設定を強くお勧めする。敵の強力技をキャンセルできた瞬間の達成感は格別で、RPGのターン制戦闘として「考える面白さ」と「操作の楽しさ」を両立させている点でこの作品は頭ひとつ抜けている。

ひとつ正直に書いておくと、後半の一部の長期戦では「ロック解除して削るだけ」のルーティンになりやすい場面もある。ボスの体力が厚すぎて、ロック解除を繰り返しながらひたすらダメージを与える展開になると、少し作業感が出てくる。「ボス戦の快感」と「通常戦闘の効率」のバランスが、後半に向かうほどやや崩れる印象だった。とはいえ、この点は気になったプレイヤーの一部が感じた感覚であり、全体の体験を損なうほどではない。

同じくターン制RPGのジャンルで戦略性を楽しみたいなら、リプレイ性の高い選択肢も探してみてほしい。

ボス戦を中心に戦闘の歯ごたえを求めるなら、死を繰り返しながら強くなるローグライクRPGとして高評価を得ているHades IIも視野に入れてみてほしい。

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ドット絵グラフィックの完成度——2Dの「限界」を軽々と超えた表現力

Sea of Stars ドット絵グラフィック

Sea of Starsのビジュアルについて語るとき、「ドット絵なのに」という枕詞はいらない。むしろ「ドット絵だからこそできる」表現が随所にあり、それが美しさの根拠になっている。

まず圧倒されるのがフィールドのダイナミックライティングだ。太陽が昇れば草原に温かみのある影が伸び、夜になると月明かりが水面に反射して揺れる。ドット絵のキャラクターが、リアルタイムに変化する光と影の中を動く。この組み合わせを初めて見たとき「これを2Dのドット絵RPGと言われても」と思った。ポリゴンで作られた3Dゲームがライティングで雰囲気を演出するのはわかる。しかし、ドット絵のキャラクターに動的な影が落ちて、それがゲームの世界に説得力を与えている様子は独特の体験だった。

背景との奥行き表現も巧みだ。プレイヤーキャラクターが建物の陰に隠れると半透明になり、水中に潜るとキャラクターの周囲の色合いが変化する。「いつの間にこんな場所にいたんだ」という発見が繰り返し起きる設計で、フィールドを歩くこと自体が楽しい。

エンカウントが「接触型」なのも現代のゲームとして正しいアップデートだと感じた。敵の姿がフィールド上に見えていて、それを避けるか向かうかをプレイヤーが判断できる。ランダムエンカウントで「また出た」と消耗することがない。これだけで心理的なストレスがかなり軽減される。

ドット絵のクオリティが想像以上だった。スクリーンショットをSNSに上げたら「これが2Dインディー?」って反応がいくつも来て笑った

— Steamユーザーレビューより
出典:Steamユーザーレビュー

ダンジョンのギミック設計も見どころのひとつだ。壁を押して隠し通路を開けたり、光源を操作して影を動かして謎を解いたり、ロープを使って高所へのルートを切り開いたりと、アクションゲームのパズル要素がRPGのフィールド探索に自然に組み込まれている。ゼルダの伝説シリーズのダンジョン感覚に近く、「戦闘だけ」で進むRPGとは明らかに体験の質が違う。

フィールド移動の自由度も高い。壁を駆け上がったり、ロープを滑降したり、水面を跳躍したりとアクション的な移動操作が随所で要求される。これがドット絵の「カリカリ」した動きで気持ちよく、探索していると時間を忘れる。隠しエリアや宝箱を見つける楽しみがフィールド全体に散りばめられていて、「全部歩いてみたい」という気持ちにさせてくれる。

フィールドの移動が楽しくて探索してたらどんどん時間が過ぎてた。ドット絵でジャンプとか壁走りができるのが新鮮すぎた

— Steamコミュニティレビューより
出典:Steamコミュニティ

ビジュアルのこだわりはキャラクターアニメーションにも表れている。戦闘時のスキルモーション、コンビ技のカットイン、NPCの日常動作——どれもドット絵の動きとして丁寧に作られていて、「ただドット絵を置いただけ」という雑さを一切感じない。インディーゲームのドット絵RPGとして、ビジュアルクオリティは現時点でも最高水準にあると思う。

船での海上移動、空中移動と世界の広がりが後半に開けていく体験も良かった。「もっと先を見たい」という好奇心を地図の広がりが常に刺激してくれる。ただ後述する移動の不便さという問題もあり、この「広い世界」が後半では若干のストレス源にもなる。それについては後のセクションで詳しく書く。

同じくドット絵の世界観探索が楽しめるゲームが好きなら、インディー系で高評価を得ているこちらも要チェックだ。

広大な地下世界を自分の足で探索し、隠されたルートや謎を少しずつ解き明かすドット絵アクションが好みなら、Hollow Knight: Silksongも注目しておきたい一本だ。

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光田康典とEric W. Brownが作り上げた音楽——SFCの音を2023年に蘇らせる試み

Sea of Stars 音楽と雰囲気

クロノ・トリガーとゼノギアスの楽曲で知られる光田康典さんが、このインディーゲームにゲストコンポーザーとして参加している。メインコンポーザーはEric W. Brown(Sabotage Studioの内製コンポーザー)が担当し、光田さんが10曲以上のゲストトラックを提供した形だ。

光田さんのアプローチが特に印象的だった。彼はSea of Stars用の楽曲を「少しアップグレードされたSNES(スーパーファミコン)から出てくるような音」として制作したと述べている。具体的には音声を32kHzでリサンプリングし、SFCの「エコー」と同じ設定でエフェクトをかけるという手法を取った。最新技術でスーファミの音を再現するという逆転の発想で、これがゲームの世界観と見事に融合している。

この選択が正解だったと感じる理由がある。「懐かしい音」を出すのに、本当に古い技術を使う必要はない。光田さんは「あの感じを出す」ために最新の技術を使って「あえて制約をかけた」。その結果、SFCのゲームを遊んでいたときの記憶と、2023年のクオリティが不思議に共存した音楽になっている。

光田さんのトラックで泣きかけた。クロノトリガーのあの感じが30年経って戻ってきた感じがして、なんかやばかった

— Steamユーザーレビューより
出典:Steamユーザーレビュー

OSTは全3枚組で、各楽曲の昼・夜・海賊バージョンが収録されている。フィールドの昼夜サイクルに合わせて同じ楽曲がシームレスにアレンジ変化する仕組みで、音楽がゲームプレイと一体化している体験が得られる。夜の静かな水辺を歩くとき、昼とは異なる落ち着いたアレンジが流れる——この演出は何度体験しても飽きなかった。

2023年12月1日からSpotifyやApple Musicでもストリーミング配信が開始されている。ゲームをプレイしていなくても楽曲だけで楽しめる作品として単独の価値がある。

メインコンポーザーのEric W. Brownのスコアも光田さんのゲストトラックに引けを取らない。特に戦闘BGMはテンション管理が巧みで、「ボス戦の音楽を聴きたいからもう一度ボスと戦いたい」という逆転現象が起きた。これは純粋な褒め言葉として受け取ってほしい。

批判的な意見として「ぶっちゃけショボイ」という声が一定数あるのは事実だ。ただ、これはほぼ全員が「クロノ・トリガーの完全再現」を期待した場合の感想だ。独立した作品として聴けば、インディーゲームのOSTとして最高水準にある。期待値の設定の問題であって、音楽自体の問題ではないと思う。

「光田康典さんの曲が好き」という理由だけでも、このゲームをプレイする価値はある。その楽曲目当てでゲームを買って、結果として「ゲーム自体も最高だった」という体験をした人が、Steam評価88%の一部を構成しているはずだ。

ストーリーとキャラクター——世界観の奥行きとテンポの問題

Sea of Stars ストーリーとキャラクター

Sea of Starsのストーリーについては、「良いところ」と「気になるところ」を分けて書く。まとめて「良かった」とも「悪かった」とも言えない作品なので、正直に両面を書いていきたい。

まず良いところ。ヴァレールとゼイルの関係性の描き方がうまい。2人は幼少期から「至点アカデミー」で共に育ってきた幼馴染で、お互いへの深い信頼が戦闘のコンビ技として視覚化されている。「このキャラはなぜ戦うのか」という動機が、ゲームシステムと連動している設計は物語とゲームプレイの統合として秀逸だ。「2人でなければ世界を救えない」というテーマが、ゲームメカニクスのレベルで表現されている。

パーティのムードメーカーであるガールも印象的なキャラクターだ。料理システムを通じて彼の存在感が自然に組み込まれており、「このキャラクターがここにいる理由」がゲームプレイの中に溶け込んでいる。彼のユーモアと温かさが、時にシリアスになる物語のトーンを程よく和らげてくれる。

ビランであるフレッシュマンサーの描き方も一方的な「悪者」に終わらない。彼の目的と動機が単純な征服ではないところにSabotage Studioの世界観設計の巧みさがある。「なぜ彼はこうなったのか」という背景が少しずつ見えてくる展開は、後半の没入感を支えている。

クリア後にThe Messengerとの繋がりがわかって「そういうことか!」ってなった。Sabotage Studioが何を作ろうとしているかがやっとわかった気がした

— ゲームブログより
出典:ゲームコミュニティブログ

そして弱点について正直に書く。序盤〜中盤は情報開示がゆっくりすぎて「これは伏線なのかただのセリフなのかわからない」という場面が多い。キャラクターたちが「訳ありそうな顔」でつぶやき続ける演出が多用されており、「いつ真相が明かされるんだ」というフラストレーションを感じたプレイヤーが少なくない。物語の牽引力という点で、序盤はやや弱い。

クロノ・トリガーと比べてキャラクターへの感情移入の深さが「薄い」と感じた人もいる。クロノ・トリガーはクリア後も「あのキャラクターたちのことが好きだった」という記憶が残るが、Sea of Starsは「システムが面白かった」という印象が強くなりやすい。これは設計の優先順位の問題で、「ゲームプレイファースト」の姿勢が貫かれた結果だとも言える。

日本語ローカライズの質については、テキストは全文日本語対応していて翻訳の品質も問題ない。音声は英語のみ。セリフ量は90年代JRPGと同程度でボイスも少ないため、テキスト読み上げに慣れているプレイヤーなら完全に楽しめる水準だ。

「The Messenger」との繋がりについてはネタバレになるため詳細は省くが、クリア後に「The Messengerをプレイしたい」という気持ちが生まれる設計は見事だった。Sabotage Studioが積み上げてきた世界観の設計図が、クリア後に見え始める感覚がある。

ファンタジー世界の奥深い設定を探索したいなら、世界観の作り込みで高く評価されているこちらも合わせて読んでみてほしい。

プレイヤーの選択が物語を根本から変える独自のストーリー設計に興味があれば、インディーRPGの金字塔として今なお語り継がれるUndertaleも押さえておく価値がある。

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移動の不便さ——正直に書く最大の弱点

Sea of Stars 移動と探索

このゲームの弱点として、最も多くのレビューで言及されているのが「移動の不便さ」だ。これは単に「ちょっと不便」というレベルではなく、ゲーム体験の中盤以降に積み重なってくる問題なので、正直に書いておきたい。

RPGで言うところの「ルーラ」「リレミト」に相当するファストトラベルが、ゲームのかなり後半まで存在しない。中盤以降は過去に訪れたエリアへの再訪が増えるのに、その都度徒歩(+乗り物)での移動が強いられる。エリアをまたいだ長距離移動の途中で「なぜこんな遠回りをさせられているのか」と感じる場面が複数あった。

エリア間の移動が苦痛すぎた。ワープ手段が全然ないのに「あっちのダンジョンに戻れ」みたいな展開が続いてさすがにキツかった

— ゲームレビューより
出典:超ゲーム批評

この問題はゲームの後半に向かうほど深刻になる。前半は「探索している感覚」として楽しめた移動が、後半のバックトラッキングでは単純な時間消費になってしまう。「広い世界」という強みが、移動コストの高さによって「面倒な世界」に反転する瞬間がある。

謎解きの難易度については「簡単すぎる」という声も一定数ある。少し考えれば答えが出る難度に設定されているため、本格的なパズルゲームを期待している人には物足りないかもしれない。ただ、これは「ゲームの流れを止めない」という設計思想の結果でもある。謎解きで詰まってゲームを中断するプレイヤーを出したくない、という判断があったと推測できる。見方による評価だ。

戦闘の後半について前のセクションでも触れたが、改めて書いておく。中盤以降の一部の長期戦は「ロック解除して削るだけ」のルーティンになりやすく、エンカウントを避けてボスだけ倒す立ち回りをしたプレイヤーも少なくない。ランダムエンカウントがない設計なので自分でエンカウントを避けられる点は良いのだが、「戦闘が義務になった瞬間」の消耗感は否定できない。

これらの弱点を踏まえて、どの程度「許せるか」は人によって違う。移動の不便さに対して「探索の延長線上」と感じられる人と、「時間の無駄」と感じる人とで評価が分かれている。Steamの88%という評価は、これらの弱点を差し引いた上での評価だ。逆に言えば、弱点があってもなお88%のプレイヤーが「お勧め」を押しているということでもある。

「74点」と評価するメディアがある一方で「88点」と評価するメディアもあり、クロノ・トリガー世代かどうか、移動の不便さに寛容かどうかで評価が分かれている印象だ。自分がどちらに近いかを考えながら判断してほしい。

完成度の高いインディーRPGを探しているなら、同じく高い評価を維持している作品もある。インディーRPGの傑作として多くのプレイヤーに語り継がれているDeltaruneも、ぜひチェックしてみてほしい。

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3人協力プレイ対応——「コープ・タイムドヒット」という新しい体験

Sea of Stars 協力プレイ

あまり語られない機能だが、Sea of Starsは最大3人での協力プレイに対応している。ゲーム本編の全コンテンツを通じてコープモードでプレイ可能で、これは発売前から公表されていた特徴のひとつだ。

協力プレイ時には「コープ・タイムドヒット」と呼ばれるメカニクスが追加される。2人目・3人目のプレイヤーがそれぞれのタイミングでボタンを押すことで、連携攻撃のコンボが伸びる仕組みだ。ソロプレイで「1人でタイミングを合わせる」ゲームが、協力プレイでは「全員でタイミングを合わせる」ゲームに変化する。同じシステムを使いながら体験の質が変わる、という設計は面白い。

「ボタン押してる?」「今は無理だった」「次のターン行くよ」——こういう会話がコープ・タイムドヒットのやり取りとして生まれる。ボードゲームやカードゲームのように、プレイしながらコミュニケーションが生まれる設計だ。

注意点として、コントローラーが複数台必要なのと、画面分割ではなく同一画面での協力プレイになる点がある。PCでプレイするなら、同じモニターの前に複数人が集まる状況を想定している。「ソファ協力プレイ(couch co-op)」文化が浸透している欧米向けの設計で、日本のプレイヤーには利用率が低いかもしれないが、家族や友人と試してみる価値は十分にある。

複数人で楽しめるコープゲームを探しているなら、協力プレイを軸に設計された作品もある。

友人と2人で同じ画面を前に協力しながら進むスタイルが好きなら、co-opを前提に作り込まれたSplit Fictionも一緒にチェックしてみてほしい。

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無料DLC「Throes of the Watchmaker」——8時間以上の新ストーリーが完全無償

Sea of Stars 無料DLC

2024年5月20日、「Throes of the Watchmaker(時計職人の苦闘)」という無料DLCがリリースされた。PC・Nintendo Switch・PS4・PS5・Xbox One・Xbox Series X|Sの同日対応で、既存プレイヤーへの大型コンテンツ追加だ。

DLCのストーリーは、ヴァレールとゼイルが「オルロージュ」というミニチュアの時計仕掛けの世界に迷い込み、呪われたカーニバルに脅かされた住民たちを救うというサイドアドベンチャー。本編とは切り離された独立したエピソードで、本編クリア後から開始できる。

コンテンツ量は8時間以上。新エリア・新音楽・新ダンジョン・新ミニゲーム・新ボスが追加されており、「本編と同規模の制作予算をかけた」と開発チームは説明している。さらに本編でNPCとして登場していた「アーティフィサー」が新たなプレイアブルキャラクターとして参加し、独自のスキルセットによってパーティ編成に新しい戦略的選択肢が生まれる。

「無料DLC」という言葉が信じられないくらいのボリュームで、通常であれば1000〜2000円相当のコンテンツが無償で提供された形だ。Sabotage Studioが既存プレイヤーに対してどれだけリスペクトを持っているかが伝わってくる。

Throes of the Watchmaker最高だった。本編と同じ丁寧さで作られてて「これが無料?」ってなった。ポップコーンの2粒目みたいにちゃんとおいしい

— ゲームレビューより
出典:リアルサウンドゲーム

時計仕掛けの世界という設定がビジュアル面でも新鮮で、本編とは異なる色彩設計と美術スタイルが採用されている。「ミニチュアのカーニバル」という舞台は、本編の島々を旅する感覚とは別の魅力を提供してくれた。本編を楽しんだプレイヤーなら、このDLCのために再びSea of Starsを起動する価値は間違いなくある。

DLCのミニゲームについても言及しておく。本編のゲームシステムをベースにしながら、新たな体験として設計されたミニゲームが複数追加されており、コンテンツとしての多様性が増している。単純に「本編を延長する」のではなく、「DLCならではの体験」を設計しようとした姿勢が伝わってくる。

今からSea of Starsを始めるプレイヤーは、本編(25〜35時間)+無料DLC(8時間以上)で合計30時間以上のコンテンツを楽しめる。この規模のゲームが4400円前後というのは、2023〜2024年のゲーム市場において相当なコストパフォーマンスだ。

Kickstarterから始まった夢のプロジェクト——Sabotage Studioの開発哲学

Sea of Stars 開発背景

Sea of Starsの開発背景を知ると、このゲームへの見方が変わってくる。単に「良いゲームを作った」のではなく、「良いゲームを作るための体制を整えることから始めた」という話だからだ。

Sabotage StudioはカナダのケベックシティにあるAAA出身のメンバーで構成された小規模スタジオだ。「The Messenger」で業界から注目を集めた後、2018年からSea of Starsの開発を開始した。2020年3月に立ち上げたKickstarterキャンペーンでは、目標金額をわずか6時間で達成。最終的に2万5000人以上のバッカーが集まった。これは「The Messenger」を通じて積み上げた信頼の結果だ。

2021年にはゲーミング投資ファンドのKowloon Nightsから追加資金を調達。「コンテンツを削ることなくセルフパブリッシングを続けるために必要な資金だった」と開発チームは語っている。大手パブリッシャーに頼らず、セルフパブリッシングを維持しながら作りたいものを作り切る——この判断が、ゲームの完成度に直結していると感じる。

Sabotage Studioが明確にしていた姿勢が印象的だった。「ノスタルジアを売るのではなく、なぜ昔のRPGが面白かったのかを解析して2023年のゲームとして再構築する」というものだ。それがロック解除システムであり、タイミングアタックであり、フィールドのアクション要素として具現化された。

「懐かしさにすがるゲーム」ではなく「懐かしさを素材にして新しいものを作るゲーム」——この違いがSteamのレビューで88%という評価として返ってきたのだと思う。同じ時期に発売されたBaldur’s Gate 3という怪物タイトルと並んで語られるほどの注目を集めたインディーゲームは、2023年でも数えるほどしかない。

Sea of Stars、クロノトリガーの完全再現を期待すると違うけど、「2023年版ターン制RPG」として見たら本当によくできてる。Sabotage Studioにまた作ってほしい

— Steamユーザーレビューより
出典:Steamユーザーレビュー

発売初日10万本、初週25万本という数字は、ゲームパスやPSプラスのサブスク登録者は含まれていない「購入数」だ。実際にプレイしたプレイヤー数はこれを大幅に上回る。年間目標を1週間で達成してしまったことに、開発チームは「言葉が出てこない」とコメントしていた。

Xbox Game Passへの対応も発売直後から実現した。サブスク加入者は追加費用なしでプレイできた期間があり、これが「試しにプレイしてみた」という層の拡大につながり、Steam購入者の増加にも貢献したと見られている。インディースタジオがサブスクとセルフパブリッシングを組み合わせた成功事例として、Sea of Starsは業界でも注目された。

同じくインディースタジオが情熱を込めて作り上げたRPGに興味があれば、こちらも見てみてほしい。独立スタジオが手がける物語RPGとして高い評価を受けているCitizen Sleeper 2も、Sea of Starsと同じくインディーゲームの可能性を体現した一本だ。

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Sea of Starsが2023年に立つポジション——同ジャンルのゲームとの比較

Sea of Stars やり込み要素

Sea of Starsが2023年8月に登場したとき、同月にBaldur’s Gate 3というRPGの歴史に残る怪物作品も発売されていた。「なぜSea of Starsを選ぶのか」という問いに答えるなら、「手軽にフルに楽しめるRPGとして」という答えになる。

Baldur’s Gate 3は100時間以上の圧倒的ボリュームを誇る3DのCRPGで、D&Dシステムへの理解と大量の選択肢を処理するための集中力が必要だ。Sea of Starsは25〜35時間でクリアできるコンパクトなJRPGで、覚えるべきシステムも適切な量に抑えられている。「夏休みにがっつり1本終わらせたい」「でも100時間は無理」というニーズにはSea of Starsのほうが合っている。

日本製のJRPGと比較するとどうか。ドラゴンクエスト・ファイナルファンタジー等の「本家」と比べて、Sea of Starsはシステムの洗練度で引けを取らない。むしろコンパクトなボリュームの分だけテンポが良く、「最近のJRPGは重くて最後まで遊べない」という人には刺さりやすい。

久しぶりにRPGを最後まで遊んだ気がする。30時間くらいでちゃんと完結するのが最高だった。最近のRPGは長すぎて途中で飽きちゃうので

— Steamユーザーレビューより
出典:Steamユーザーレビュー

同時期に登場した別のインディーターン制RPGとの比較もしておく。2022年リリースのChained Echoesも高評価を得た作品だが、難易度とシステムの複雑さという点でSea of Starsのほうが間口が広い。Chained Echoesはヘビーユーザー向けのやり込み要素を含むが、Sea of Starsは「25時間でちゃんと終わる体験」に最適化されている。どちらが優れているというよりも、プレイヤーが求めるものによって選ぶべき作品が変わる。

クロノ・トリガーと直接比較するのは「35年のゲーム史の名作との比較」なので公平ではないが、「クロノ・トリガーが好きだった人が2023年に楽しめるRPG」という枠でSea of Starsに勝てる作品は多くない。それだけ特定のプレイヤー層へのフィット感が高い。

「クロノ・トリガー世代ではないが、評価の高いターン制RPGを探している」という人にも、Sea of Starsは機能する作品だと思う。スキルロック・タイミングアタック・コンビ技というシステムは、クロノ・トリガーを知らなくても純粋に面白い。懐古補正なしで評価しても、2023年のターン制RPGとして上位に入る完成度がある。

ローグライク要素のあるRPGも好きなら、リプレイ性の高いこちらも合わせてどうぞ。

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こんなプレイヤーに特にお勧め——向き・不向きの整理

ここまで書いてきた内容を整理する。Sea of Starsには明確な「合う人」と「合わない人」がいる。購入前に自分がどちらに近いかを確認してほしい。

特にお勧めできるプレイヤー

  • クロノ・トリガー・FF5・FF6・ライブ・ア・ライブなどSFC時代のRPGに思い入れがある
  • 光田康典さんの音楽が好き、あるいはOSTの質を重視する
  • 25〜35時間でクリアできるコンパクトなRPGを探している
  • タイミングアタックやロック解除など「考える戦闘」が好き
  • ドット絵のビジュアルに抵抗がない、むしろ好き
  • ダンジョンの謎解きとフィールド探索が楽しめる
  • 久しぶりにRPGを最後まで遊び切りたいと思っている
  • 家族や友人と協力プレイを楽しみたい
注意が必要なプレイヤー

  • 深い物語と感情移入できるキャラクターを最重視する
  • 長期プレイ・やり込み要素を求めている(本作は比較的コンパクト)
  • ファストトラベルが当然あると思っている(後半までほぼない)
  • 本格的なパズル難易度を期待している
  • クロノ・トリガーそのものを求めている(別ゲームなので期待値の調整が必要)
  • 後半の戦闘で作業感が出ることを許容できない

「夏休みに1本RPGを遊ぼう」という状況なら、Sea of Starsは極めて優れた選択肢だ。時間対満足度という観点で、2023年のゲームの中でも上位に入る。特に「最近のRPGは重すぎて途中で投げてしまう」という経験を持つ人にとって、このゲームのコンパクトさは長所として機能する。

農業・生活系ゲームと並行してRPGを楽しみたい場合も、25〜35時間というボリュームは管理しやすい。「今週は3時間プレイして、来週また戻ってくる」というペースでも十分に楽しめる構造だ。

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Sea of Starsのやり込み要素と実績——コンプリートを目指す人へ

Sea of Starsをクリアした後、「まだまだ遊べる」要素がいくつか残っている。やり込みプレイヤー向けの情報をまとめておく。

フィッシング(釣り)が1つの柱だ。各エリアに釣りポイントがあり、希少な魚を集めることでNPCとの交流や特定のアイテム入手につながる。釣りのミニゲーム自体が独自の操作感を持っており、「釣り目的でフィールドを周回する」プレイスタイルが生まれやすい。

料理システムも探索と連動している。ガールが担当するキャンプ料理は素材の組み合わせによって各種の効果を持つ料理が作れる。素材入手のためにフィールド各所を探索するモチベーションになっていて、「次はどんな料理が作れるか」という楽しみが探索欲求につながる設計だ。

隠しエリアや隠しアイテムの収集も用意されている。壁の向こう、水中の通路、特定の条件を満たして解放されるエリアなど、「見えていないところ」を探す楽しみが各フィールドに仕込まれている。Steam実績の取得を目指すプレイヤーなら、メインストーリークリアから追加で10〜15時間は楽しめるコンテンツ量がある。

ミニゲームとして「輝石の盤(Wheels)」と呼ばれるボードゲーム風の要素もある。各地のNPCと対戦する形式で、本編の戦闘とは完全に異なるゲームとして設計されている。Steam実績の一部はWheelsで特定の成果を達成することで解放される。

ニューゲームプラス(2周目)は直接的な意味での存在はないが、クリア後のコンテンツとしてDLC「Throes of the Watchmaker」が待っている。本編をクリアしてDLCに移行するという流れが、「もう少しこの世界にいたい」という気持ちに自然に応えてくれる。

トゥルーエンディングについては触れておきたい。本編には条件を満たすことで解放される「真のエンディング」が存在する。この条件に気づかずにクリアして「なんか普通に終わったな」と感じたプレイヤーも少なくない。攻略情報を見ずにトゥルーエンドを目指すか、プレイ前に「トゥルーエンドのための条件がある」ということだけ頭に入れておくか、どちらかを選んでほしい。

タイムアタック的な要素としては、特定のボス戦を最短ターン数で倒す「タイムドキル」の概念が一部のコミュニティで自然発生している。公式にランキング機能があるわけではないが、Steamのコミュニティハブでは「何ターンでクリアしたか」を競う投稿が多数見られる。戦闘システムの奥深さをフル活用するプレイスタイルとして、ストーリークリア後に試してみる価値がある。

コレクション要素として見逃せないのが「レリック(秘宝)」のコンプリートだ。プレイ中に入手できる秘宝は難易度調整だけでなく、ゲーム体験そのものを変えるユニークな効果を持つものも含まれている。すべての秘宝を集めるには各エリアの隅々を探索する必要があり、「実績コンプリート」を目指すプレイヤーにとって主要なチェックリストのひとつとなっている。

隠し要素の中でも特に印象的なのが、条件を満たすことで出現する「ウィッシュポンド」と呼ばれる特殊なエリアだ。メインストーリーのルートから外れた場所に存在するため、攻略情報なしで発見できた瞬間の驚きは格別だ。こうした「知る人ぞ知る」隠し要素が複数仕込まれており、2周目プレイや攻略サイト確認後の再プレイを促す設計になっている。

実績(Steam実績)の数は全部で40以上あり、そのすべてを取得するには本編クリアに加えてかなりの探索と試行が必要だ。一部の実績はWheelsで特定の相手に勝利することや、釣りで特定の魚を釣ること、特定のキャラクターの組み合わせでコンビ技を発動することなど、本編の進行では自然には達成されない条件が設定されている。やり込みプレイヤーにとって、実績コンプリートは本編と同程度のモチベーションを維持できるコンテンツ量として機能している。

全体として、コンプリートを目指すなら40〜50時間は見ておいたほうがいい。本編のみなら25〜35時間というコンパクトな作品だが、やり込もうとすると十分な深度がある。この「間口の広さと奥行きの両立」も、Sea of Starsの設計として優れている点だと思う。

「The Messenger」との繋がり——Sabotage Studioが作り続ける世界

Sea of Starsは単独の作品として完結しているが、Sabotage Studioの前作「The Messenger」(2018年)との関係性がラスト付近で明かされる構造になっている。ここはネタバレになるので詳細は書かないが、クリア後に「The Messengerをプレイしたい」という気持ちが自然に生まれる設計は見事だった。

The Messengerはメトロイドヴァニア的なアクションプラットフォーマーで、Sea of Starsとはゲームジャンルが全く異なる。しかし世界観は同じ「Sabotage Universe」として設計されていて、両作をプレイした人だけが理解できる物語の繋がりが存在する。

「なぜSabotage StudioはRPGを作ったのか」という問いに、Sea of Starsをクリアした後なら自分なりの答えが見えてくる。「彼らが語りたい世界のために、最も適したゲームジャンルを選んだ」という印象を受けた。The Messengerでアクションプラットフォーマーを選んだ理由も、Sea of Starsでターン制RPGを選んだ理由も、「世界観を最もよく伝えるための媒体選択」として繋がっている気がする。

Sabotage Studioの次の作品が何になるのかは未発表だが、「この世界観のどの側面を、どのジャンルで語るのか」という期待感は高い。インディースタジオとしての一貫した姿勢と、2作連続での高い評価——これは偶然ではなく、明確なビジョンを持つチームの成果だと思う。

The Messengerとの繋がりがわかってから「ああ、Sabotage Studioはこういう規模で世界を設計してたのか」ってなった。次の作品が楽しみすぎる

— Steamコミュニティより
出典:Steamコミュニティ

「前作を知らなくてもSea of Starsは楽しめるのか」という問いには「十分に楽しめる」と答えられる。ただ「もっと深く楽しみたい」という場合は、The Messengerもプレイしてから改めてSea of Starsのエンディングを見直してほしい。同じシーンが全く違う意味で迫ってくる体験が待っている。

なお、The Messengerは現在Steamで1000円前後で購入できるメトロイドヴァニア系のアクションゲームだ。プレイ時間は10〜15時間程度とコンパクトで、Sea of Starsをクリアした勢いでそのままプレイできるボリューム感だ。Sea of Starsが気に入ったなら、Sabotage Studioという開発スタジオそのものへの信頼として、The Messengerにも手を伸ばしてみることをお勧めする。2作を通じて「Sabotage Universe」の全体像が見えてくると、次回作への期待がさらに高まる。クリアしたあとにもう一度Sea of Starsのエンディングシーンを見直すと、最初のプレイとはまったく異なる感情が湧き上がってくるはずだ。これがSabotage Studioの語り口の巧みさであり、インディースタジオでありながら大きなスケールの世界観設計を実現できている証明でもある。

プレイ環境と推奨スペック——Steam DeckやMacでも動くのか

PC(Steam)でプレイする場合の動作環境について整理しておく。Sea of StarsはSteam Deck対応ゲームとして「Verified(動作確認済み)」バッジを取得しており、携帯モードでの動作が保証されている。

Steamの推奨スペックは以下の通りだ。CPU:Core i5-6600 / Ryzen 5 1600、GPU:GTX 1070 / RX Vega 56、RAM:8GB、ストレージ:8GB。最低動作スペックはCPU:Core i5-3570K / Ryzen 3 3300X、GPU:GTX 960 / RX 580、RAM:8GBとなっている。2Dドット絵RPGのためスペック要件はかなり低く、数年前のゲーミングPCや普通のノートPCでも快適にプレイできる作品だ。

MacOSへの正式対応は現時点では公表されていないため、Macユーザーは確認が必要だ。ただしSteam経由でのプレイという形で対応している場合があるため、最新情報はSteamストアページを確認してほしい。

コントローラーの対応については、Xbox・PlayStation・Switchコントローラーすべてに対応しており、キーボード+マウスでのプレイも可能だ。ただしタイミングアタックの操作を考えると、アナログコントローラーのほうが圧倒的にプレイしやすい。PC版でプレイする場合はコントローラーを用意することを強くお勧めする。

画面解像度については、ドット絵のゲームとしてピクセルパーフェクトの表示に最適化されており、4Kモニターでも特に問題なく表示される。ドット絵RPGにありがちな「解像度が高いと粗くなりすぎる」という問題は、Sea of Starsではほぼ感じない。

セーブデータについては複数スロットに対応しており、誤ってセーブを上書きする心配が少ない。クラウドセーブ(Steam Cloud)にも対応しているため、PCを変えても続きからプレイできる。

まとめ——30年待ったRPGが、ちゃんとここにあった

Sea of Starsは「ノスタルジーを売る」ゲームではない。クロノ・トリガーの「あの感覚」が好きだった人に向けて、「なぜあのゲームが面白かったのか」を解析して再構築した作品だ。その違いは、プレイしてみると確かに感じられる。

タイミングアタックとスキルロック解除が噛み合う戦闘、ダイナミックライティングを備えたドット絵グラフィック、光田康典さんとEric W. Brownが作り上げた音楽——これらが「25〜35時間」というちょうどいいボリュームの中に詰め込まれている。コンパクトさは「手抜き」ではなく、「テンポを守り抜く設計」の結果だ。

移動の不便さ、情報開示の遅いストーリー展開、後半の戦闘に出てくる作業感——これらの弱点は確かに存在する。88%という評価はそれを差し引いた上での評価だ。弱点があってもなお、1万1000件を超えるレビューの88%が「お勧め」を押しているのは、「このゲームが刺さった人には深く刺さる」という純度の高さの証明だと思う。

年間目標販売本数を1週間で達成してしまったこと、無料DLCを8時間以上のボリュームで提供したこと、Steam Deck対応を発売直後から完備したこと——Sabotage Studioが何を大切にしているかが、これらの行動から伝わってくる。

「最近RPGから離れていたけど、もう一度ちゃんと楽しみたい」という人に、Sea of Starsは間違いなく応えてくれる。無料DLC「Throes of the Watchmaker」も込みなら、今から始めても十分すぎるボリュームだ。

「クロノ・トリガーの完全再現」ではない。でも「クロノ・トリガーが好きだった」という記憶を持つ人が今プレイして、ちゃんと満足できる作品がここにある。それだけで、Sea of Starsは存在する意味を持っている。

セール時には2000円台まで下がることもあるため、価格的な障壁を感じているなら Steamのウィッシュリストに入れておくのが賢い選択だ。無料DLC込みで30時間以上の体験が保証されていることを考えると、セール価格でのコストパフォーマンスはほぼ完璧と言ってもいい。「迷っているなら買い」と言い切れる数少ない作品のひとつだ。Sabotage Studioの次回作への期待とともに、今一度この作品を手に取ってみてほしい。

Sea of Stars 購入チェックポイント

  • Steam価格:4400円前後。セール時(年数回)は50%OFFまで下がることがある
  • Xbox Game Pass・PlayStation Plusへの対応歴あり(現状の対応可否は各サービスで要確認)
  • DLC「Throes of the Watchmaker」は無料(Steam・各コンソールストアより別途ダウンロード)
  • 日本語テキスト対応。音声は英語のみ
  • Steam Deck動作確認済み(Verifiedバッジ取得)
  • コントローラープレイ推奨(タイミングアタックの操作感が大きく変わる)
  • 推奨スペックが低いため、古めのPCでも快適動作の可能性が高い

Sea of Stars

Sabotage Studio
リリース日 2023年8月28日
サービス中
同時接続 (Steam)
66
2026/04/08 アジア圏ゴールデンタイム計測
レビュー
14,334 人気
89.1%
全世界
非常に好評
14,334件のレビュー
👍 12,775 👎 1,559
79.4%
やや好評
165件のレビュー
👍 131 👎 34
価格¥4,000
開発Sabotage Studio
日本語非対応
対応OSWindows
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