Hollow Knight: Silksong レビュー|6年間の待望、535,213人が同時接続したインディー史上最大級の傑作メトロイドヴァニア【2026年最新】

6年間待ち続けた。本当に、6年間だ。

2019年2月、突然現れた発表トレーラー。前作『Hollow Knight』のサブキャラクターだったホーネットが主役の独立作品――それが『Hollow Knight: Silksong(ホロウナイト:シルクソング)』だった。あの映像を見た瞬間、世界中のホロウナイトファンが「これは絶対買う」と確信した。

そこから始まった長い旅は、6年間にわたる「シルクポスト」文化を生んだ。r/Silksongサブレディットには16万人が集い、「儀式の生け贄」というミームが生まれ、Steam評価の上でルービックキューブを解いたプレイヤーが「次はシルクソングが来るかも」と呟くほどの熱狂が続いた。そして2025年9月4日、ついにその日が来た。

結果はどうだったか。Steam最高同時接続数535,213人。インディーゲームとして有料タイトル史上最高水準。発売3か月で700万本突破。Metacritic 92点。Steam Awards 2025ではGame of the Yearを受賞。

ただし、「最高傑作か」と聞かれると、それは人によって全然違う答えが返ってくる。難しすぎる、不親切だという声と、6年待った甲斐があったという声が真っ二つに分かれている。そのどちらも正直な感想だと思う。

このゲームの本質は「前作の続編」ではなく、「前作の精神的後継者」だ。同じ世界ではなく、同じ魂を持つ別の物語。それを理解した上で向き合うと、このゲームが何を目指していたのかが見えてくる。

公式トレーラー

目次

こんな人におすすめ / こんな人には合わないかも

こんな人は買い

  • 前作『Hollow Knight』をクリアして、もっと難しいものを求めている人
  • ホーネットというキャラクターが好きで、彼女を主人公として操作したい人
  • メトロイドヴァニアというジャンルの骨格が好きな人
  • 操作の手触り・アクションの気持ちよさを最優先にするプレイヤー
  • 難しくても諦めずにパターンを覚えて攻略する達成感を求める人
  • Team Cherryの世界観・美術・音楽ファンであれば無条件で買って損はない

こんな人は合わないかも

  • 前作『Hollow Knight』を途中でやめたか、クリアできなかった人(難易度は上がっている)
  • 序盤から快適に探索したいタイプ(最初の数時間は特に辛い)
  • ボスに負けたときのランバック(戻り道)が長いと萎えてしまう人
  • 「前作の続き」を期待していた人(舞台も主人公も完全に別)
  • 日本語音声がないと没入できない(テキストは日本語対応、音声は英語のみ)

基本情報

タイトル Hollow Knight: Silksong(ホロウナイト:シルクソング)
開発・発売 Team Cherry(オーストラリア)
発売日 2025年9月4日
価格 $19.99(約3,000円)
ジャンル 2Dアクションアドベンチャー / メトロイドヴァニア
対応機種 PC(Steam)、Nintendo Switch / Switch 2、PlayStation 4/5、Xbox One / Series X|S
Steam評価 非常に好評(93%好評 / 365,496件)
Metacritic 92点(ユニバーサル・アクレイム)
Steam同時接続ピーク 535,213人(インディー有料タイトル史上最高水準)
売上 発売3か月で700万本突破(2025年12月時点)
Steam Awards 2025 Game of the Year / Best Game You Suck At 受賞
日本語対応 テキスト対応(音声は英語)

Team Cherryという小さな奇跡

Hollow Knight Silksong アクション

まず、このゲームを作ったチームの話をしないわけにはいかない。

Team Cherryはオーストラリア・アデレードを拠点とするスタジオで、コアメンバーはわずか3人だった。Ari Gibson、William Pellen、Jack Vine――この3人が作った前作『Hollow Knight』は2017年に15ドルで発売され、気づいたら累計1500万本を超えるインディーゲーム界の怪物になっていた。

前作のSteam評価は現在も97%超の「圧倒的に好評」を維持している。300万件以上のレビューで、だ。これはSteamの歴史の中でも特別な数字で、AAA作品を含めても指で数えられるほどのタイトルしか達していない領域だ。

Silksongはその3人が(スタッフを増員しつつも)6年かけて作り上げた2作目だ。前作がDLCとして企画されていたホーネットのコンテンツが、あまりにも規模が大きくなりすぎて独立作品になったというのが出発点だった。Team Cherryはその選択を「正直に話す」ためにファンに報告し、DLC購入者全員に無料でSilksongを提供すると約束した。

6年間、このスタジオはほぼ沈黙を保った。「近況アップデートはいつ来るの?」という問いに「できたときに出す」という姿勢を貫いた。その沈黙が逆に神話化し、「シルクポスト」という文化が生まれた。Steamのページを無意味に開く儀式、「シルクソングの発表が来るかも」という希望的観測を込めた毎週の投稿、そしてファンによるカウントダウンサイト。Redditには16万人が集い、「儀式の生け贄」としてメンバーが次々と投稿に吸い込まれた。

「After 6 years, I still can’t believe it’s real. The r/Silksong community went through so much ‘silkposting’ and ritual sacrifices… and it all paid off. Team Cherry absolutely delivered.」

— r/Silksong コミュニティ(GamesRadar記事引用)

Team Cherryのイドリス・デュランは後に「開発チームはYouTubeのコメントやRedditをほぼ読んでいなかった」と明かしている。プレッシャーに押しつぶされずに作ることに集中するため、あえてファンの声から距離を置いていたのだという。その判断が正しかったかどうかは、535,213という同時接続数が証明している。


6年間の沈黙が生んだ祭り:発売当日の光景

Hollow Knight Silksong ゲーム画面

2025年8月22日、突然の発売日発表があった。9月4日。わずか2週間後。

インターネットが爆発した、というのが正確な表現だろう。1600日以上待ち続けたファンへの告知は10か国語で同時公開され、ゲームメディアの速報が一斉に走った。その日だけでSteamのウィッシュリスト追加数が記録的な数字を叩き出したという。

2025年8月のGamescom 2025ではデモ版が初公開され、プレイヤーが2時間並んで10分プレイするほどの盛況になった。会場を出てきたプレイヤーたちの表情は、一様に「やばい、これはやばい」という興奮に包まれていたと複数のメディアが伝えた。

9月4日の発売直後、多数のデジタル配信ストアがサーバーダウンした。同時接続数は発売から数時間でSteam歴代18位に到達。インディーゲームの有料タイトルとしては史上最高水準の数字だ。発売120分でレビュー数1,500件超を記録し、最初から「非常に好評」でスタートした。

これは単なるゲームの発売ではなかった。6年間蓄積されたファンの熱量が、一瞬で放出された瞬間だった。


主人公ホーネット:前作騎士との決定的な違い

Hollow Knight Silksong ホーネット

前作のプレイヤーが最初に驚くのは、主人公の動きの根本的な違いだ。

前作の騎士は「落ちていく」ゲームだった。地下深くへ、さらに深くへ降りていく。動きはしっとりと重く、隙間を縫うような精密なプラットフォーミングが要求された。

ホーネットは違う。彼女は「登っていく」。ファールームという虫の王国の頂上を目指して、下から上へと駆け上がっていく。そしてその動き自体が、前作とは別次元だ。

ホーネットの主なアクション

  • 針の突き攻撃 — 上下左右斜めに対応した近接攻撃
  • 斜め下へのポゴ攻撃(diagonal pogo) — 踏み台にして敵や地形を飛び越える技。習得難易度高め
  • 銛投げ(Silkwing) — 銛を投げて、その方向へ高速移動するグラップリング技
  • バインド(空中回復) — 空中で一定時間体勢を整えることができる
  • 猛スピードの疾走 — 前作より明らかに速い移動速度

この動きのセットを習得したとき、何が起こるか。戦闘が音楽のように流れ始める。ポゴで敵を踏み台にしながら高度を上げ、銛投げで壁を蹴り、針の突きでボスに連続ヒットを叩き込む――その連鎖が決まったとき、コントローラーを握る手が自然と力強くなる。

「ホーネットの動きが前作のナイトと全然違う。斜め下への突き攻撃、銛を投げた方向への高速移動、走るスピードの速さ。全部を使いこなしたとき、自分が強くなった感覚がある」

— note「ネタバレ無し!シルクソング途中の感想:ホロウナイト比較」

ただし、これには裏がある。操作の気持ちよさは習熟に比例する。序盤、まだアクションに慣れていない段階では、同じ動きが「難しくて理不尽」に感じる。特に斜め下ポゴはプレイヤーによって評価が真っ二つだ。うまく使えると爽快だが、意図せず発動して崖下に落ちる体験を繰り返すと「なんでこんな技があるんだ」という気持ちになる。

「前作のホーネットのスピード感に期待して買ったのに、序盤はかなり辛かった。雑魚でも2ダメージ食らうのはきつすぎる。ボスへのランバックも長くてモチベが続かなかった。慣れれば楽しいんだろうけど、入門の壁が高すぎる」

— Steam 日本語レビュー

この感想は正直、筆者も理解できる。前作プレイヤーが既存の感覚のまま入ると、最初の2〜3時間は「え、こんなに難しかったっけ」と感じる可能性が高い。前作よりも敵のダメージが高く(雑魚接触で2ダメージ)、ボスの攻撃パターンも複雑だ。チュートリアルは最小限で、ゲームが「自分で覚えろ」というスタンスを取っている。


舞台:ファールームという新世界

前作の舞台「ハロウネスト」は地下に広がる崩壊した虫の王国だった。薄暗く、廃墟的で、どこか物悲しい。その美しさは「滅びたものへの哀悼」に近いものだった。

ファールームはその正反対だ。登っていく世界で、上に向かうほど光が増す。珊瑚の森、苔の洞窟、金色に輝く都市、霧に包まれた湿原。それぞれのエリアが全く異なる色彩とテクスチャを持ち、探索するたびに「次はどんな場所が待っているのか」という期待感を育てる。

エリアデザインの密度は前作を超えている。隠し部屋、縦方向の探索ルート、ショートカットの発見――メトロイドヴァニアの文法に忠実に、しかし前作より立体的な空間の使い方をしている。「地図を埋めていく喜び」はこのゲームの核のひとつで、完全探索を目指すプレイヤーは何十時間でも沈み込める。

「前作のハロウネストとはまったく別の世界なのに、虫たちの造形や文明の廃れ具合に一貫したTeam Cherryらしさがある。新しいのに懐かしい」

— note「ホロウナイトシルクソング感想(ネタバレあり)」

ファールームの住民たちも印象的だ。前作のキャラクターたちと同様に、一見モブに見えるNPCがそれぞれ独自の物語を持ち、繰り返し話しかけることで少しずつ世界の背景が明らかになる。Team Cherryの「すべての生き物に個性を与える」という美学は健在だ。

ただ、前作と比べて物語の「語り」が変わっている。前作は「何も説明しない」ことで謎を謎のまま提示し、それがコミュニティによる考察文化を育てた。Silksongは依然として抽象的だが、ホーネット自身が語るシーンが前作より多く、より直接的に主人公の感情が伝わってくる。前作の完全な余白主義を好むプレイヤーには少し違和感があるかもしれないが、ホーネットというキャラクターへの感情移入は深くなった。


ツールシステム:自分だけのビルドを作る楽しさ

前作には「チャーム」と呼ばれるパッシブ強化アイテムのシステムがあった。装備できる数が限られており、どの組み合わせを選ぶかがビルドの核になっていた。

Silksongではこれが「ツールシステム」に進化している。3色に分類された装備があり、それぞれ役割が異なる。

ツールの3分類

  • 赤いツール(Red Tools) — アクティブ武器。投射物・罠・爆弾など攻撃的な道具。使用回数制限あり(シェルシャードで補充)
  • 青いツール(Blue Tools) — パッシブ型の防御・戦闘強化。ダメージ軽減や体力回復関連
  • 黄色いツール(Yellow Tools) — パッシブ型の攻撃・探索サポート。ダメージ強化や移動補助など

赤いツールは使用回数制限があるため、「ボス戦ではここで使う」という戦略的判断が要求される。青と黄のパッシブを組み合わせてどんなプレイスタイルを構築するかが、リプレイ性の源泉でもある。

「難しいけど理不尽ではない(と思う)。ボスを倒したときの達成感は前作以上かもしれない。ツールのカスタマイズが楽しくて、自分なりのビルドを考えるのが好きな人には刺さる」

— Steam 日本語レビュー

個人的に感じたのは、このシステムが「準備と実行」の二段階になっていることだ。どんなツールセットを持っていくかを考える準備フェーズと、実際のボス戦での実行フェーズ。前作のチャームシステムよりも戦略的な深みがある一方で、「何が正解か分からない」序盤の迷走感は人によって評価が分かれる。


ボス戦:43体の個性、それぞれの感動

Silksongには重複なしで43体のボス(重複含むと47体)が存在する。前作もボスの質は高かったが、Silksongはその密度がさらに上がった。

ボスは大きく分けて「ハンター型」「暗殺者型」「王・貴族型」「モンスター型」「騎士型」など複数のカテゴリに分かれており、それぞれ全く異なる戦闘感覚を持つ。動きが読めないタイプ、パターンを覚えれば必ず勝てるタイプ、体力が高い持久戦タイプ――多様性がある。

特筆すべきは終盤ボスの演出だ。戦闘中にBGMが段階的に変化し、ボスの外見や行動パターンが変わる「フェーズ移行」が複数のボスで採用されている。初めて目撃したとき、思わず「え、まだあるの」と声が出た。そして、それを倒したときの達成感はゲーム屈指のものになった。

「ボス戦は本当に楽しい。ホーネットが前作の騎士より俊敏で、終盤はスマブラのような機敏な戦闘になっていく。クリアしたら100%目指したくなる」

— はてなブログ「のすのゲーム感想ブログ」

問題はランバック(ボス前への帰り道)だ。前作にも存在したが、Silksongの一部ボスはランバックが長すぎるという批判が発売直後から多く上がった。難しいボスに何度も挑戦する中で、毎回数分かけて戻ってくる必要があると、どうしても疲弊する。Team Cherryは発売直後のパッチでいくつかのボスの難易度調整を行ったが、ランバックの長さについては現時点でも賛否が続いている。

「I really wanted to love this game. I loved Hollow Knight. But the difficulty spike is just too much for me. The runbacks are punishing and the enemy damage feels unfair.」(このゲームを愛したかった。前作は大好きだった。でも難易度の上昇が自分には厳しすぎた。ランバックがきつく、敵のダメージが理不尽に感じる)

— Steam英語レビュー(GamesRadar記事引用)

この声は正直な批判だと思う。実際、筆者も序盤の特定ボスで「もう一回戻ってくる気力がない」という場面があった。そこを乗り越えた後の達成感と、そこでやめてしまったプレイヤーの失望感。両方が共存しているゲームだ。


難易度問題:「難しい」と「不親切」の境界線

Silksongについて語るとき、「難易度」の話は避けられない。

前作も決して易しくはなかった。しかしSilksongは明確に難易度が上がっている。雑魚敵の接触ダメージが前作比で約2倍、ボスの攻撃パターンは前作より複雑化している。発売直後のパッチで序盤の一部ボスが緩和されたが、それでも「難しい」という評価は変わっていない。

問題は「難しいのか、不親切なのか」という点だ。

「シルクソングが難しいと感じる理由の多くは、プレイヤーを萎えさせたいとしか思えないような不親切さにある。……難しいのと不親切なのは違う」

— note「シルクソング感想 ~難しいと不親切の違い~」(しぶん)

このnoteの筆者が指摘するのは、ゲームの難しさそのものよりも、「ランバックの長さ」「チェックポイントの配置」「ヒントの少なさ」といった設計の問題だ。純粋な戦闘難易度であれば受け入れられるが、それ以外の「摩擦」が多すぎることが問題だという意見は、日本語レビューでも繰り返し登場する。

一方で、こういう意見もある。

「これもしかして前作より難しいのでは??序盤で出会う雑魚敵に接触しただけで2ダメージ。前作のリズムで立ち回ったら瞬殺された」

— note「ホロウナイト シルクソング 10時間プレイ後レビュー」(みずいろ)

「前作のリズムで入ると瞬殺された」という表現は、多くのプレイヤーの共感を呼んでいる。前作で養った感覚をいったんリセットして、Silksong独自のリズムを学ぶ必要がある。そのリセットにかかる時間とコストが、人によっては「楽しい学習」になり、人によっては「不快な体験」になる。

公平に言うと、Team Cherryは難易度について真剣に取り組んできた。発売直後から複数回にわたるパッチでバランス調整を行い、特に批判が集中したいくつかのボスの攻撃パターンを緩和した。「声を聞いて迅速に改善に動いてくれた」という評価はコミュニティでも多い。完璧ではないが、その姿勢は評価されるべきだと思う。


音楽:Christopher Larkinの世界

前作でも高く評価されたChristopher Larkin(クリストファー・ラーキン)のサウンドトラックが、Silksongでも全曲を担当している。

前作の音楽は「悲劇的な美しさ」が特徴的だった。廃墟の静けさ、地下の薄暗さ、消えた王国の哀愁。あの音楽はゲームのビジュアルと完全に同期していた。

Silksongの音楽は違う。登っていく世界観に合わせて、より躍動的で、明るさと緊迫感が混在する。探索中のBGMは環境の雰囲気を的確に伝え、ボス戦では段階的に激しさを増していく。特にフェーズ移行時の音楽変化は、戦闘への没入感を劇的に高める演出として機能している。

「音楽が本当に良い。ボス戦中もBGMがアドレナリンを刺激してくる。Christopher Larkinの才能は本物だと改めて感じた」

— KeepGamingOn「突き刺さる糸 | 呪われた国を登るメトロイドヴァニア」

「6年待った甲斐がありました。世界観が前作とは全く異なる雰囲気で、最初は戸惑ったけど慣れてくると独自の美しさがわかってくる。音楽も最高。Christopher Larkinさんの仕事は本当に素晴らしい」

— Steam 日本語レビュー

音楽について否定的な声はほぼ見当たらない。これはSilksongの評価の中でも特に一致している部分で、「ゲームプレイは賛否あっても音楽は文句なし」というのがコミュニティの共通認識になっている。サウンドトラックは単体でも聴く価値があり、Spotifyなどでも配信されている。


Steam評価の波乱:中国語ローカライズ問題

Silksongの評価の歴史には、特記すべき出来事がある。

発売当初から「非常に好評」でスタートしたSteam評価が、発売から数週間で「やや好評」まで下落した。原因は中国プレイヤーからの集中的なネガティブレビューで、件数は14,000件以上に上った。内容は「中国語ローカライズの品質が低すぎる」という一点だった。

機械翻訳に近い品質の簡体字中国語テキストが、ゲームの雰囲気を大きく損なっていたという問題だ。Team Cherryはこれに対して迅速に公式声明を出し、改善への取り組みを宣言した。改善パッチが適用されるにつれて評価は徐々に回復し、現在は全言語93%好評の「非常に好評」に戻っている。

この一件は、ローカライズ品質がいかにゲームの印象を左右するかを示す事例として、ゲーム業界でも注目された。Team Cherryの対応は「正直な謝罪と具体的な改善」という点で評価され、コミュニティの信頼を取り戻すことができた。

日本語レビューは1,344件で「やや好評」にとどまっている。前作と比較して難易度や不親切さへの不満が多く、全言語の93%という数字より低い評価になっている。日本のプレイヤーが難易度に対してシビアな評価をする傾向があることも一因かもしれないが、日本語レビューに書かれた批判の多くは内容として具体的で、的を射たものが多い。


やりこみ要素:100%完了への道

メインストーリーをクリアしたとき、このゲームの「本当のゲーム」がまだ残っていることに気づく。

Silksongのやりこみ要素は前作を大幅に超えている。43体のボスを全て倒すだけでなく、各エリアの完全探索、全ツールの収集、特定NPC関連のクエスト解決、そしてボスラッシュ・パンテオンモードへの挑戦が待っている。

パンテオンモードはおそらく最も難しいコンテンツで、複数のボスを連続で倒し続けるチャレンジだ。前作のパンテオンが好きだったプレイヤーなら分かるだろうが、このモードに全力で取り組むと何十時間でも消費できる。

「100%達成まで遊んだ。クリア後もボスラッシュで遊べるし、やりこみ要素が山盛り。値段のわりにボリュームがえぐい」

— note「100%達成したから紹介と感想を語る HollowKnight:Silksong」(XD)

3,000円という価格でこのコンテンツ量は、どう計算しても安い。メインクリアだけで20〜30時間、100%を目指すと50〜80時間以上かかる。前作も同じ価格帯で同じような感想を持ったプレイヤーが多かったが、Silksongはそれを正直に上回っている。


無料DLC「Sea of Sorrow」:2026年、さらなる拡張が来る

2025年12月15日、Team Cherryはホリデーブログポストで重大な発表をした。無料DLC「Sea of Sorrow(悲しみの海)」を2026年中にリリースするというものだ。

内容の詳細は現時点で非公開だが、名前から察するにホーネットが塩の海を航海する新エリアが含まれる模様だ。前作の未使用コンテンツとして存在していた「Pharloom Bay(ファールームベイ)」「LAB」「潜水艦」といった要素が含まれる可能性があるとファンは推測している。

Team Cherryは「Sea of Sorrow前の大型アップデートは行わない」と2026年3月に明言しており、現在の最新バージョン(1.0.29926、2026年3月18日付)が当面の完成形となる。このバージョンでは繁体字中国語ローカライズが追加され、各種バグ修正が施された。

無料DLCというのは、前作でも行われたTeam Cherryの伝統だ。前作は「Hidden Dreams」「The Grimm Troupe」「Lifeblood」「Godmaster」という4つの大型無料DLCが追加され、ゲームの価値を大幅に高めた。Silksongでも同じ姿勢が受け継がれている。

今Silksongを買う意義のひとつは、この無料DLCが自動的についてくることだ。3,000円でSilksong本編+Sea of Sorrow、という計算になる。


前作との比較:どちらが上か、という問いの意味

「シルクソングと前作のホロウナイト、どちらが良いか」という議論はコミュニティでも続いている。筆者の立場を正直に言うと、「前作の方が好き」というプレイヤーの気持ちは理解できる。

前作の「何も分からない状態から徐々に世界の真相が見えていく感覚」は特別なものだった。初めてコロシアムの底に到達したとき、初めてホワイトパレスを踏破したとき、あの体験は唯一無二だった。Silksongはその感覚を再現しようとしたのではなく、意図的に違うものを目指した。

「前作との比較で言うと、前作の方が好き。シルクソングは難しいというより不親切な部分が多い気がした。でもホーネットが好きな人ならやるべき」

— Steam 日本語レビュー

Silksongが前作と比べて客観的に優れている点もある。グラフィックの精度、アクションの技術的な深さ、ボスの多様性、サウンドトラックの完成度――これらは前作からの明確な進化だ。「前作は前作として、シルクソングはシルクソングとして評価すべき」という意見が、長期的にはコミュニティの多数派になりつつある。

海外の批評家は後者の立場が多い。

「When this game is at its best, it’s near-perfect in its design. The combat feels incredible, the visuals are stunning, the story is engaging, and the soundtrack is lovely.」(このゲームが最善の状態にあるとき、そのデザインはほぼ完璧だ。戦闘の感触は素晴らしく、ビジュアルは美しく、ストーリーは引き込まれ、サウンドトラックは素晴らしい)

— PC Gamer レビュー


Steam Awards 2025:「Best Game You Suck At」が語るもの

Silksongは2025年のSteam Awardsで2つの賞を受賞した。Game of the Yearと、Best Game You Suck At(うまくプレイできないゲーム部門)だ。

後者の賞は、コミュニティが投票する「難しくても愛されているゲーム」に贈られるものだ。前作Hollow Knightも同じ賞を受賞した経験があり、シリーズの「難しいけどやめられない」という本質を正確に表している。

「”Best Game You Suck At”(Steam Awardsで受賞)という称号が全てを物語っている。みんな難しいと言いながら、やめられない」

— Steam Awards 2025総評

Game of the Yearの受賞は、Metacritic 92点・OpenCritic 97%推薦という数字と合わせて、2025年という年を代表するタイトルの一つとしてSilksongを位置付けた。同年にはMonster Hunter Willds、Hades IIといった強豪タイトルも多くあった中での受賞だ。

2025年のインディーゲームとして同時接続数2位(1位はMonster Hunter Willds: 138万人)という記録も、このゲームの規格外の影響力を示している。有料のインディーゲームが50万人以上を同時接続させるというのは、ゲーム産業の歴史の中でも珍しい出来事だ。


実際のプレイ感:最初の10時間で起こること

ここからは、プレイ体験を具体的に語ってみたい。

最初の1〜2時間:戸惑い期

ゲームが始まると、ホーネットがファールームの最下層に囚われているシーンから始まる。脱出するまでの流れがそのままチュートリアルになっているが、明示的な説明はほとんどない。「とりあえず上に行け」という方向性だけが与えられ、あとは自分で学べというスタイルだ。

この段階で雑魚敵に接触すると2ダメージ食らう。最初はそれが分からず、「え、なんで2ダメージ?」という感覚が続く。前作プレイヤーは特にここでリズムが崩れやすい。

2〜5時間:慣れ始め期

銛投げを手に入れてからゲームが変わる。空中機動の自由度が一気に上がり、「これが楽しいやつだ」という感覚が来る。この段階で初めて「ホーネットの動きが好き」と思えるプレイヤーが多い。

ただ、この辺りにいくつかの難しいボスが待ち構えており、ここで脱落するプレイヤーも少なくない。

5〜10時間:没入期

ファールームの全体像が見えてきて、探索が楽しくなる。各エリアの個性が際立ち始め、「次のエリアはどんな場所だろう」という好奇心がゲームを前に進める燃料になる。音楽も含めた雰囲気が染み込んでくるのがこの段階だ。

10時間を超えると、多くのプレイヤーが「クリアするまでやめられない」状態に入る。ここまで来られれば、このゲームはあなたに合っている。


クリア後の感想:不便さの奥にある鋭さ

クリアしたプレイヤーたちの感想に、共通するトーンがある。「辛かったけど、やって良かった」という類のものだ。

「クリアした感想としては、不便さの奥に潜む鋭さがある。過酷な試練を乗り越えた先に最高の体験が待っていた」

— 4Gamer「Hollow Knight: Silksongをプレイし、クリアして感じたもの」

「難易度がきつすぎて鬼畜ゲーだと感じた部分もあったけど、クリアしたとき達成感は本物だった。コントローラーを放り出したくなる瞬間と、逆に叩きつけてしまいそうな興奮の瞬間、両方がある」

— KENTWORLD「話題騒然の ホロウナイト シルクソングが鬼畜ゲー過ぎた!!」

「コントローラーを叩きつけてしまいそうな興奮」という表現が面白い。苦痛と快楽が混在する状態。それがこのゲームの本質かもしれない。プレイヤーに強度の感情を引き起こすゲームというのは、それだけで一つの価値だ。プレイ中に何も感じないゲームより、プレイ中に強い感情を感じるゲームの方が、少なくとも記憶には残る。

前作が「物悲しい美しさへの没入」だったとすれば、Silksongは「過酷な試練の後の昂揚感」を目指したゲームだと思う。その昂揚感を最大化するために、敢えて試練の難度を上げた。それが正解かどうかはプレイヤーによるが、Team Cherryが意図的にそれを選んだことは明らかだ。


Silksong Silkposting:6年間のファンコミュニティの話

このゲームを語る上で、ファンコミュニティの存在を無視するわけにはいかない。

r/Silksongには発売前から16万人以上のメンバーがいた。2019年の発表から2025年の発売まで6年間、このコミュニティはSilksongの情報を待ち続けた。情報がない期間は「シルクポスト」と呼ばれるランダムな投稿で埋められ、ミームが生まれ、「儀式の生け贄」としてメンバーが次々と無意味な(しかし愛情に満ちた)投稿をした。

Steamページを開いて何も変わっていないことを確認する「儀式」、インターネット上の無関係な出来事を「これはシルクソングの布石かも」と解釈するジョーク、1600日以上カウントし続けたファンサイト。これはもはやゲームへの期待を超えて、コミュニティ自体が遊びになっていた。

「Team Cherry said releasing Silksong felt like it was going to ‘ruin the community’s fun.’ They were so right. The waiting was half the experience.」(Team Cherryは、シルクソングをリリースすることがコミュニティの楽しさを壊すように感じると言った。彼らは正しかった。待つこと自体が体験の半分だった)

— GamesRadar引用

この発言は示唆深い。発売前の期待感そのものが文化的な現象になっていたため、「ゲームが出た瞬間に待つ楽しみが終わってしまう」という逆説的な悲しさがある。それでもゲームは出た。そして多くのファンが「待った甲斐があった」と言っている。これ以上何を望めるだろうか。


購入前に確認したいこと

購入を検討している人向けに、実用的な情報をまとめる。

スペック(PC版)

OS Windows 7以降
プロセッサ Intel Core i5(推奨)
メモリ 8GB RAM(推奨)
グラフィック GeForce GTX 1060相当(推奨)
ストレージ 約5GB

2Dゲームのため動作要件は低め。多くのミドルクラスPC、ノートPCでも快適に動作する。コントローラー推奨だが、キーボード・マウスでも問題なくプレイできる。ただし、精密な操作を多用するゲームのため、アナログスティックでの操作の方が感覚的に合いやすい。

現在(2026年3月時点)セール中であれば$15.99程度で購入できる。無料DLC「Sea of Sorrow」も自動的に付いてくるため、今が購入の好タイミングと言える。


前作『Hollow Knight』をプレイしていない人へ

「前作を知らなくてもSilksongは楽しめるか」という質問をよく見かける。答えは「楽しめるが、前作をプレイしてからの方が絶対に良い」だ。

ストーリー上の直接的なつながりは最小限で、ファールームという新世界が舞台のため、前作の知識がなくても物語は理解できる。ゲームシステムも独立して設計されており、前作未経験でも入門できる。

ただし、ホーネットというキャラクターは前作で印象的な脇役として登場しており、彼女のキャラクターの重みは前作プレイ経験者の方が深く感じられる。また、前作がメトロイドヴァニアの基礎体力を養う教材として機能し、Silksongの難易度に対応しやすくする面がある。

前作は現在も約1,800円程度で購入できる(セール時はさらに安い)。SilksongよりもSteam評価が高く(97%超の圧倒的に好評)、ボリューム・クオリティともに出色の作品だ。Silksongに興味があるなら、前作から入ることを強くすすめる。


まとめ:6年間の答えが、ここにある

Hollow Knight: Silksongは、一言で言えば「過酷で、美しく、6年分の重さを持ったゲーム」だ。

難しい。序盤は特に辛い。ランバックが長いボスには心が折れそうになる。前作プレイヤーが感覚をリセットするのに時間がかかる。これらは事実で、否定するつもりはない。

しかし、ホーネットの動きが体に馴染んだとき。ボスのパターンを読み切ったとき。隠し部屋を発見したとき。クリスファー・ラーキンの音楽がボス戦の山場に重なったとき。このゲームは確かに「最高」という言葉以外に形容できない瞬間を作る。

「Silksong is incredible, but it’s very selective about who will enjoy it. If you’re willing to put in the time to learn its systems, it rewards you immensely.」(シルクソングは素晴らしいが、楽しめる人を選ぶ。システムを学ぶ時間を惜しまない人には、計り知れない報酬をもたらしてくれる)

— Steamレビュー要約

535,213人が同時にこのゲームをプレイした2025年9月4日。世界中で誰かがボスに負けて、誰かがボスを倒して、誰かが「これ最高じゃないか」と思い、誰かが「難しすぎる」と悪態をついていた。

それが、このゲームの姿だ。一つの答えを持たない、複数の真実が共存するゲーム。Team Cherryが6年かけて作ったのは、全員が同じように楽しめる作品ではなく、「特定の人に刺さったとき、刺さり抜けるほど深く刺さる」作品だった。

あなたが「特定の人」かどうかは、プレイしてみないと分からない。でも前作が好きだったなら、少なくとも試す価値はある。3,000円と数時間の時間を使ってでも、その答えを確かめたいと思わせるゲームが、ここにある。


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