「Hollow Knight」虫たちの王国を探索するメトロイドヴァニアの傑作

目次

Hollow Knight — 滅びた虫の王国を旅する手描き2Dメトロイドヴァニア

初めてダートマウスの地下に降り立ったとき、正直なところ「なんて暗くて静かな場所なんだろう」と思った。BGMはピアノが低く響くだけで、あたりは薄闇に包まれている。主人公の小さな虫——名もなき旅人——は、ただ剣を持って佇んでいる。なぜここに来たのかも、この場所が何なのかも、最初は何もわからない。

それでも、気づいたら40時間以上プレイしていた。マップのどこかに未探索のルートが残っている気がして、チャームの組み合わせをあれこれ試して、ボスに何十回も挑戦しながら少しずつ動きを読んでいく。Hollow Knightはそういうゲームだ。強引に引っ張られるわけじゃない。でもいつの間にか、この世界から離れられなくなっている。

開発したのはオーストラリアのインディーチーム「Team Cherry」。Kickstarterで目標額AU$35,000を掲げ、2,158人のバッカーからAU$57,138を集めてリリースにこぎつけた小規模スタジオだ。2017年2月にPC版が配信され、その後SteamでのレビューはStoreの評価で「圧倒的に好評」に。517,000件以上のレビューのうち約97%が好意的で、世界累計販売本数は1500万本を超えた。インディーゲームとしては異例ともいえる記録だ。

2025年9月には続編「Hollow Knight: Silksong」も正式リリースされ、発売2週間足らずで320万本を突破。それでもなお、原点となるHollow Knightは今でもSteamで毎日何千人というプレイヤーに遊ばれている。それほどまでに長く愛され続けるゲームには、何か特別なものがある。その理由を、できるだけ丁寧に書いていこうと思う。

「Hollow Knight」公式トレーラー

こんな人にHollow Knightはハマる

Hollow Knight その他アクション スクリーンショット1

Hollow Knightはすべての人に向けたゲームではない。ただ、刺さる人には「こんなゲームを待っていた」と感じてもらえる可能性が高い。

  • ダークソウルやElden Ringのような、死んで学んで越えていく達成感が好きな人
  • メトロイドやキャッスルヴァニアのような探索型横スクロールアクションが好きな人
  • 手描きアニメのような美しいビジュアルと雰囲気重視のゲームが好きな人
  • 謎めいた世界観を自分で読み解いていく体験が楽しめる人
  • 20〜40時間以上、一つのゲームにどっぷり浸かりたい人
  • 価格以上のボリュームを求めている人(定価約1,500円、セール時は800〜900円前後)

逆に、親切なガイドやチュートリアルを求めている人や、詰まったときのストレス耐性が低い人には最初の数時間が壁になるかもしれない。Hollow Knightは「自分で考えて、自分で乗り越える」というプロセスを楽しめる人が最も輝くゲームだ。

ローグライクやデッキ構築系ゲームが好きな方は、

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朽ちゆく地下王国——ハロウネストの世界

Hollow Knightの舞台は、「ハロウネスト(Hallownest)」と呼ばれる地下の虫の王国だ。かつては「蒼白なる王(The Pale King)」が治め、高度な文明と強大な力を誇っていた。しかし今や王国は滅びかけている。感染した虫たちが廃墟をさまよい、崩れかけた都市には誰もいない。

滅亡の原因は、「ラディアンス(Radiance)」と呼ばれる存在だ。古代から虫たちの夢の中に潜んでいたとされる神的な存在で、意識を持った虫たちに感染を広め、理性を奪っていく。蒼白なる王はその感染を封じ込めるために、ある決断を下した——その決断の重さとその結末が、ゲーム全体のストーリーの核心になっている。

物語のほとんどは直接的には語られない。NPCとの断片的な会話、各エリアに散らばった碑文や日誌、ボスを倒したときに見える幻視——それらを集めて自分でパズルを組み立てていく形式だ。最初は「よくわからない」と感じるかもしれないが、プレイを続けるうちに少しずつ全体像が見えてくる。

ゲームは「ダートマウス(Dirtmouth)」という寂れた集落から始まる。ここが唯一の「安全な場所」で、地上の小さな村だ。そこから地下へと降りていくと、世界が一気に広がる。

広大なマップとエリアの多様性

ハロウネストは複数の大きなエリアで構成されており、それぞれが独自の生態系・ビジュアル・BGM・敵キャラクターを持っている。

「忘れられた交差路(Forgotten Crossroads)」は最初に訪れる地下エリアで、薄暗い洞窟が続く比較的穏やかな場所だ。しかし感染が進むと、このエリアの見た目が変わる——その変化に気づいたときの衝撃は、単なるビジュアル演出を超えて「世界が本当に変化している」という実感を与えてくれる。

「菌類の廃墟(Fungal Wastes)」は淡く光る菌類が生い茂る不思議な空間で、「水晶の山(Crystal Peak)」はクリスタルが輝く鉱山地帯。「忘れられた都市(Forgotten City)」はかつての繁栄の面影を残す遺跡で、「深き巣(Deepnest)」は暗闇に包まれた蜘蛛の巣の迷宮だ。各エリアを訪れるたびに「ここはどんな歴史を持っているんだろう」と思わずにいられない。

エリアをつなぐルートは複雑に絡み合っており、新しい移動アビリティを手に入れるたびに「あの場所に行けるようになった」という発見がある。メトロイドヴァニアの醍醐味である「バックトラック(引き返し探索)」が本当によく機能している作りだ。

マップを広げるたびに「こんなに広いのか」と何度も驚かされた。これが1,500円のゲームとは信じられない。

引用元:Steamレビュー(日本語)

手描きの世界が作り出す雰囲気

Hollow Knightの最初に目を引くのが、そのビジュアルだ。すべてのキャラクター・背景・アニメーションが手描きで作られており、動くたびに「これは絵本の中の世界だ」と感じさせてくれる。

キャラクターデザインは一見すると「かわいい」虫の姿をしているが、世界観はずっと暗くてシリアスだ。廃墟、死、封印、犠牲——重いテーマが、その「かわいい」外見との対比でより刺さってくる。Team Cherryはこのギャップを意図的に設計しており、見た目の親しみやすさで入口を広げながら、深みのある世界へと引き込んでいく。

音楽はオーストラリア出身のクリストファー・ラーキン(Christopher Larkin)が担当しており、ピアノを中心とした静謐な楽曲からオーケストラが力強く展開するボス戦のBGMまで、場面に応じた音楽が世界観を支えている。サウンドトラックは単体でも配信されており、Steamで単独購入して日常的に聴いているファンも多い。

メトロイドヴァニアとソウルライクの融合

Hollow Knight その他アクション スクリーンショット2

Hollow Knightはよく「メトロイドヴァニア」と分類されるが、実際に遊んでみると「ソウルライク」の要素がかなり強い。レビュアーの中には「メトロイドソウル」と呼ぶ人もいるほどで、この二つのジャンルの特性を非常にうまく融合させている。

メトロイドヴァニアとしての探索設計

探索面でHollow Knightがメトロイドヴァニアらしいのは、「アビリティを手に入れるたびに行ける場所が増える」という設計だ。

ゲーム序盤は移動手段が限られており、特定の場所には物理的に行けない。しかしボスを倒して新しいアビリティを習得したり、特定のアイテムを入手したりすることで、今まで素通りしていた場所に入れるようになる。

代表的なアビリティを挙げると、「マント(Mothwing Cloak)」は空中ダッシュで短距離を素早く移動できる。「水晶の心(Crystal Heart)」は壁や床を高速で横断できるスーパーダッシュだ。「影のダッシュ(Shade Cloak)」は攻撃を無敵で回避できる強化版ダッシュで、「影のウィング(Isma’s Tear)」は酸の液体を通過できる。これらを手に入れるたびに、マップが再び「未探索の場所」として輝き始める。

マップは自分で手に入れて広げていく仕組みだ。エリアに着いたとき、最初はマップが真っ暗で何も見えない。地図商人のコルニファーが各地に先行して入り込んでいて、彼を見つけてマップを購入することで、そのエリアの大まかな地形が見えるようになる。マップを片手にどこに行こうか考える時間が、探索の楽しさを底上げしている。

ソウルライクとしての戦闘設計

戦闘面では、ダークソウルシリーズから強く影響を受けた設計が見える。

死亡するとその場に「シェード」と呼ばれる影の分身を残して復活地点に戻される。シェードを倒すと落としたジオ(通貨)とソウル(魔法ゲージ)を回収できるが、シェードを倒す前にもう一度死ぬと積み重ねが消える。ダークソウルのソウル回収システムとほぼ同じ構造で、「あの死に場所に戻らなければ」という緊張感が生まれる。

体力はマスク(ハート)で管理され、初期は5マスクから始まる。ソウルというリソースを使って自己回復(「集中(Focus)」)もできるが、回復中は動けないため敵の攻撃のスキを見て使う必要がある。この「回復するかどうかの判断」がボス戦の駆け引きを生んでいる。

剣(ネイル)による近接攻撃が基本で、攻撃によって敵を倒すとソウルが溜まる。溜めたソウルは回復に使うか、魔法(スペル)として攻撃に使うかを自分で判断する。この「ソウルの使い道」の選択が戦況によって変わり、戦略性を生んでいる。

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チャームシステム——自分だけのスタイルを作る

Hollow Knightのキャラクターカスタマイズの核心にあるのが「チャーム」システムだ。チャームとは、装備することで様々な効果をもたらすアイテムで、全部で45種類が存在する。

チャームにはそれぞれ「ノッチ(スロット)」が必要で、初期状態では3ノッチから始まる。ノッチはゲームを進めることで増やせるが、有限なリソースのため「どのチャームをどう組み合わせるか」という選択が重要になる。

チャームの種類と効果の幅広さ

チャームの効果は探索向け、戦闘向け、特定のビルドを強化するものなど多岐にわたる。

「傷ついた魂(Fragile Strength / Unbreakable Strength)」はネイルのダメージを1.5倍にする攻撃特化型で、アグレッシブなプレイヤーに人気だ。「グラス ソウル(Glass Soul)」は体力を1マスクに固定する代わりにダメージを大幅アップする超高リスク型で、使いこなせる人がいれば一種の称号になる。「コア・キャッチャー(Soul Catcher)」はソウルの回収量を増やして魔法や回復の頻度を上げられ、回復重視のプレイスタイルに合う。

また、特定のチャームを組み合わせると「コンボ効果」が発生するものがある。たとえば「クイック・スラッシュ(Quick Slash)」と「マークオブプライド(Mark of Pride)」を組み合わせると、攻撃速度が上がりながらリーチも延びるという強力な組み合わせになる。チャームコンボの研究は、Hollow Knightを長く遊び続けるプレイヤーが共通して楽しんでいる要素だ。

チャームの組み合わせが面白すぎてボス前なのに装備を変えてしまう。試したいビルドが多すぎてどれが正解かわからなくなってきた。

引用元:Steamレビュー(日本語)

チャームはセーブポイントでしか変更できない

チャームはダンジョン内では変更できない。変更できるのはベンチ(休憩場所・セーブポイント)に座ったときだけだ。これが一種の制約になっており「このボスに合ったチャームを装備してこなかった」という後悔を生む。でもその「ベンチに戻るかそのまま挑むか」という判断も、ゲームプレイの一部として機能している。

ボス戦——繰り返し挑みたくなる設計の秘密

Hollow Knight その他アクション スクリーンショット3

Hollow Knightのボス戦は、このゲームの中で最も語られる要素の一つだ。本編だけで数十体のボスがおり、DLCや高難易度コンテンツを含めるとその数はさらに増える。

多くのボスが複数のフェーズを持ち、体力が減るにつれて攻撃パターンが変化する。最初は「どうやって避けるんだ」と感じるような攻撃でも、10回・20回と繰り返すうちに自然と体が動くようになっていく。「この攻撃は左に飛んで下段スラッシュ」「このフェーズ移行後は中央に寄せてはいけない」という知識が積み上がっていく感覚は、他のゲームではなかなか味わえない。

序盤〜中盤のボスたち

序盤のボスで多くのプレイヤーが最初の壁として体験するのが「フォルス・ナイト(False Knight)」だ。巨大なハンマーを持つ大型の虫で、派手な攻撃が多い。ただ、慣れると比較的シンプルなパターンなので、最初の「死んで覚える」体験として機能している。

中盤で登場する「ホーネット(Hornet)」は速くて厄介なボスで、多くのプレイヤーが「Hollow Knightらしい」ボス戦と評する。攻撃の隙が短く、糸を使った移動で距離を取ったり接近したりと、行動の読みが難しい。ちなみにこのホーネットが、続編「Silksong」の主人公だ。

「コレクター(The Collector)」は暗闇の中で小さな敵を次々と召喚してくる戦闘で、「マンティス・ロード(Mantis Lords)」は精密な回避が求められる舞踏のような戦いだ。各ボスが明確に「このボスならではの戦い方」を持っており、単調な繰り返しにならない設計になっている。

終盤のボスと最終決戦

終盤になるとボスの難易度が一気に跳ね上がる。「霊魂の主(Soul Master)」や「ウォッチャー・ナイト(Watcher Knights)」あたりから「ああ、これが本番か」と感じるプレイヤーが多い。

特に語り継がれるのが最終ボス「ラディアンス(Radiance)」だ。真エンディング「夢の果てに」を目指す場合に戦うことになるこのボスは、剣の光線、棘の床、移動式プラットフォームなど多彩な攻撃を組み合わせてくる。ほとんどの攻撃が2ダメージという痛さで、足場も極めて悪い。

「ラディアンスで100回以上死んだ」という声はSteamレビューや攻略サイトに数多く残っており、それでも「諦めなくてよかった」と書き添えているプレイヤーがほとんどだ。倒したときの達成感は、それまでの死の数に比例して大きくなる。

ラディアンスに60回以上挑んでようやく倒せた。倒した瞬間に思わず声が出た。こんなに達成感を覚えたのはElden Ring以来かもしれない。

引用元:Steamレビュー(日本語)

高難易度のボスRPGが好きな方には、

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4つの無料DLC——拡張され続けた世界

Hollow Knightの購入者が驚く点の一つが、4つのDLCがすべて無料で配信されたという事実だ。Team Cherryは本編リリース後も追加料金なしでコンテンツを追加し続け、ゲームを買えばその拡張もすべて含まれている。

Hidden Dreams — 最初の拡張

2017年8月にリリースされた最初の無料DLC。新ボス「夢を守る者(Dream Guardians)」として「ホワイト・ディフェンダー(White Defender)」と「グレイプリンス・ゾーテ(Grey Prince Zote)」が追加された。また、エッセンス(夢見の素材)を集めることで使えるワープポイント「夢見の門(Dreamgate)」も実装。広大なマップの移動が快適になり、探索体験が大きく改善された。

The Grimm Troupe — 火と影の一座

2017年10月リリースの第2弾DLC。謎めいた「グリム一座」がダートマウスにやってくる新規ストーリーが追加された。グリムの子供ブリュームチャイルドを見つけて炎を集めるクエストで、最終的には強烈な難易度のボス「ナイトメア・キング・グリム(Nightmare King Grimm)」と戦える。ゴシックな美術スタイルのグリムはビジュアル面でも特に人気が高く、ファンアートも多い。

Lifeblood — 調整とUI改善

2018年4月リリース。新チャーム「ライフブラッド・ハート(Lifeblood Heart)」や「ライフブラッド・コア(Lifeblood Core)」の追加のほか、既存コンテンツのバランス調整とUI改善が中心のアップデートだ。単体では地味に見えるが、ゲームプレイの快適さに直接影響する重要な調整が含まれていた。

Godmaster — 究極のボスラッシュ

2018年8月リリースの最終DLC。新エリア「神の家(Godhome)」が追加され、5つのパンテオン(ボスラッシュ)に挑戦できる。各パンテオンは複数のボスを連続で倒すことを要求し、最終パンテオン「ハロウネストの覇者」ではゲーム内のほぼすべてのボスと戦う必要がある。Hollow Knightをクリアしても「まだ上がある」というプレイヤーに向けた、究極の高難易度コンテンツだ。

このGodmasterのクリアは、Hollow Knightコミュニティの中でも「トップクラスの実績」として扱われる。特に「純粋なる器(Pure Vessel)」は本編の最終ボスを上回る強敵で、クリア動画に「神かよ」というコメントがつくレベルだ。

本編クリアしてからGodmasterに手を出したら抜け出せなくなった。ボスラッシュって言葉で伝わるものじゃない。これはもう修行に近い。でも楽しい。

引用元:Steamレビュー(日本語)

ゲームの「難しさ」と向き合う方法

Hollow Knight その他アクション スクリーンショット4

Hollow Knightは難しいゲームだ。これは前置きでも警告でもなく、ゲームの「売り」の一つだ。ただ、その難しさにはいくつかの種類がある。

ボス戦の難しさ

ボス戦の難しさは「理不尽な難しさ」ではなく「覚えれば超えられる難しさ」だ。攻撃パターンには必ず法則があり、何度も見ていると「次はこの攻撃が来る」という予測ができるようになる。チャームの選択でも対応力が変わるため、「詰んだ」と感じたときは装備を変えてみると突破口が開くことも多い。

探索の難しさ

「次にどこへ行けばいいかわからない」という迷いは、Hollow Knightでは頻繁に起きる。ゲームはプレイヤーに「ここへ行け」と教えてくれない。マップの未探索部分を自分で調べ、新しいアビリティを使えばどこに行けるかを考え、エリアを行き来しながら道を切り拓く。この「自分で発見する」プロセスを楽しめるかどうかが、向き・不向きを大きく分ける。

「迷いすぎてつらい」という声も確かにある。特にDeepnest(深き巣)は暗くて入り組んでいて、多くのプレイヤーが「ここが一番つらかった」と語るエリアだ。恐怖感を演出するための設計でもあり、それが成功しているということでもある。

ファストトラベルの少なさ

ゲーム内にあるワープポイント(スタッグステーション)の数は限られており、ジオを消費して使う必要がある。序盤〜中盤は移動コストが気になる場面もある。ただしDLC「Hidden Dreams」で追加された「夢見の門」をうまく活用することで、後半の移動はかなり快適になる。

「移動が面倒くさい」という批判は一定数あるが、その「移動の過程でも発見がある」という設計意図は理解できる。通り道でチャームのヒントを見つけたり、前回素通りした部屋に入ってみたりと、移動そのものを探索として楽しめる人には苦にならない要素だ。

ストーリーのわかりにくさ

ストーリーは直接的に語られないため、初回プレイでは全体像がよくわからないことが多い。エンディングを迎えた後で考察サイトやRedditを読み始めると、「そういうことだったのか」という体験が生まれる。謎解きを楽しむ層にとってはこれが大きな魅力だが、明快なストーリー展開を求めている人には合わない可能性がある。

エンディングで泣いた。何が起きたかわかったのは後から考察を読んでからだったけど、その「後から理解する感動」も含めてこのゲームの体験だったと思う。

引用元:Steamレビュー(日本語)

なぜHollow Knightはここまで愛されるのか

販売本数1500万本、Steamレビュー97%好評というのは、インディーゲームとしては破格の数字だ。なぜHollow Knightはここまで支持されたのか、いくつかの角度から考えてみたい。

価格に対してのボリュームの異常さ

定価約1,500円(セール時は800〜900円前後)でプレイできるのに、クリアまで20〜25時間、真エンディングまで30〜35時間、全要素を探索すると40〜50時間以上かかる。4つのDLCもすべて無料で含まれている。これだけのボリュームを考えると、コストパフォーマンスは異常なほど高い。

「1,500円でこんなに遊べるのか」という驚きは、多くのプレイヤーが口を揃えて言う感想だ。Steam以外のプラットフォームに移植されたときも同様の声が上がり続けた。

全要素のクオリティが高水準で揃っている

Hollow Knightが特別なのは、一部だけが優れているのではなく、あらゆる要素が高水準で揃っていることだ。ビジュアル、音楽、操作感、ボス戦のデザイン、世界観の作り込み、探索の構造——これらすべてが「手を抜いた部分が見当たらない」という品質で作られている。

インディーゲームの中には「コンセプトは面白いが荒削り」というタイトルも多い。Hollow Knightは小規模なチームが作ったにもかかわらず、大手スタジオに匹敵するレベルの仕上がりを持っている。それが「これを3人チームが作ったのか」という驚きにつながっている。

「自分で乗り越えた」という体験の価値

Hollow Knightの達成感は、ガイドされた達成感ではなく「自分で考えて、自分で乗り越えた」という達成感だ。何十回も死んだボスをようやく倒したとき、迷いに迷ったルートを突破したとき——その瞬間の喜びは、他のゲームでは替えがきかない。

「難しいから楽しい」ではなく「乗り越えた喜びが設計されている」という表現が近い。Team Cherryは「死ぬこと」を罰ではなく「学習のプロセス」として設計しており、シェードを倒して取り戻す仕組みも含めて「挑戦→失敗→学習→再挑戦→成功」というループが気持ちよく回るようになっている。

コミュニティの熱量

Hollow Knightは発売から7年以上経った今でも、活発なコミュニティを持っている。Steam Workshopにはファンが作ったMODが多数あり、Redditやニコニコ動画・YouTubeでは考察動画・実況動画が継続的に投稿されている。続編Silksongへの期待感もコミュニティを維持してきた要因の一つだが、それ以上に「このゲーム自体が面白い」というシンプルな理由でプレイヤーが戻ってくる。

デッキ構築系でコミュニティが盛り上がっているゲームとして

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Hollow Knight Silksong——続編は何が変わるのか

Hollow Knight その他アクション スクリーンショット5

2025年9月4日、長年ファンが待ち続けた続編「Hollow Knight: Silksong」がリリースされた。発売2週間足らずで320万本以上を販売し、Xbox Game Passでも多くのプレイヤーにプレイされた。

Silksongは前作のDLCキャラクター「ホーネット」が主人公となり、「ファールーム(Pharloom)」という新しい王国を舞台にしている。シルクと歌に支配されたこの地で、200種類以上の敵と40を超えるボスが待ち受ける。

ホーネットのアクションは前作の主人公とは大きく異なり、シルクを使った縄張り攻撃や素早いアクロバット移動が特徴だ。Gamescom 2025のプレイアブルデモでは「マップが上下左右に広がっていて探索が楽しい」「ホーネットのアクションが爽快」という好評が多く寄せられ、発売後も高い評価を維持している。

さらにTeam Cherryは2025年12月に、無料の追加コンテンツ「Sea of Sorrow」を2026年内にリリースする予定と発表。原作Hollow KnightのNintendo Switch 2版アップグレード対応も進めており、スタジオとしての勢いは続いている。

続編がリリースされたことで「じゃあ今から始めるなら前作と続編どっちから?」という質問をよく見かける。答えは迷わず「前作Hollow Knightから」だ。Silksongはスピンオフではなくれっきとした続編であり、前作の世界観と登場キャラクターへの理解がSilksongの体験を深めるために欠かせない。まずHollow Knightを40時間かけてたっぷり楽しんでからSilksongに移行するのが、最もこのシリーズを堪能できる順序だ。

Team Cherryという3人チームの奇跡

Hollow Knightの制作チーム「Team Cherry」は、オーストラリアのインディースタジオだ。中核となったのはアーサー・レイランズ(ゲームデザイン・アート)とウィリアム・ファーマー(プログラム)の2人で、後に技術ディレクターのデイヴィッド・カジー、サウンドコンポーザーのクリストファー・ラーキン、マーケティング担当のマシュー・グリフィンが加わった。

2014年11月にKickstarterキャンペーンを開始したとき、目標額はAU$35,000という控えめなものだった。30日間で2,158人のバッカーから約AU$57,138を集め、目標を達成。この資金を元に開発を続け、2017年2月にSteamでリリースした。

注目すべきは、Kickstarterキャンペーン当時から「これだけの規模のゲームを作るつもりだった」わけではなかったという点だ。プロジェクトは資金調達の成功に伴ってスコープが広がり、最終的に当初の想定を大きく超えたボリュームになった。それでもクオリティを落とさず完成させたのは、Team Cherryの徹底したこだわりの結果だ。

インディー開発者の間で「どうやってこんなものを作れたんだ」という議論になるのがHollow Knightだ。Team Cherryはその後BitSummit Vol.6(2018年)などで開発の裏側を語っており、プレッシャーの大きさと情熱の量の両方が伝わってくる内容だった。

小規模チームが世界を揺るがすゲームを作る——Hollow Knightはその象徴的な例として、インディーゲーム史に残るタイトルになっている。

これが3〜4人チームの作品だと知ったとき本当に驚いた。大手の作品と比べても見劣りしない。いや、むしろ上回っている部分が多い。

引用元:Steamレビュー(日本語)

Hollow Knightに似たゲームを探しているなら

Hollow Knight その他アクション スクリーンショット6

「Hollow Knightをクリアしたけど次に何を遊べばいい?」という声をよく聞く。同じメトロイドヴァニア系でおすすめできるタイトルがいくつかあるので紹介しておく。

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難しいゲームをもっとやりたいなら

Hollow Knightで「高難易度ゲームが好きになった」という人には、同ジャンルの別タイトルよりもまずGodmaster DLCを完全クリアすることをすすめる。そのあとにSilksongへ進めば、2024〜2025年のインディーゲームシーンの頂点に触れられる。

バーティカルシューターや協力プレイが好きな方には、

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プレイ前に知っておきたい実用的な情報

プレイ時間の目安

本編クリアだけなら、アクションゲームに慣れているプレイヤーで20〜25時間程度。真エンディング(「夢の果てに」ルート)まで含めると30〜35時間。全チャーム収集や全ボス撃破などをやり込むと40〜50時間以上かかる。さらにGodmaster DLCの全パンテオンクリアを目指すなら、追加で20〜30時間は必要になる可能性がある。

日本語対応はある?

Hollow Knightは日本語完全対応している。テキストはすべて日本語で読めるため、言語の壁は関係ない。ただしボイスはなく、BGMと効果音のみのサウンド設計だ。

コントローラーは使える?

コントローラーでのプレイが推奨される。Hollow Knightはアナログスティックでのアクション操作が快適に設計されており、PS/Xbox両コントローラーに対応している。マウス・キーボードでも遊べるが、操作感はコントローラーの方がしっくりくるというプレイヤーが多数派だ。

セーブはどうやってするの?

セーブはベンチ(休憩場所)に座ることで行われる。死亡すると最後にセーブした場所から復活する。死亡したエリアにはシェード(影の分身)が残っており、シェードを倒すと消費したジオとソウルを一部回収できる。

攻略サイトは使っていい?

これは完全に個人の判断に委ねられるが、「迷ってストレスが溜まってきた」と感じたときに攻略サイトを参照するのは全然アリだ。ただしネタバレには注意してほしい。Hollow Knightのストーリーはプレイしながら少しずつ理解していく体験そのものが価値を持っているので、核心的なネタバレを先に知ると体験が損なわれる可能性がある。「行き方がわからない場所の地図だけ参照する」という使い方が特に多い。

まとめ——Hollow Knightは「本物」のゲーム体験だ

Hollow Knightについて長々と書いてきたが、結局のところ「やってみればわかる」という部分が大きい。文字で伝えられる魅力には限界があり、ダートマウスから地下へと降りていく最初の10分、初めてのボスに何度も挑んで倒した瞬間、マップの端に小さなルートを発見したときの感覚——これらは実際に体験してみるまで本当の意味では伝わらない。

定価約1,500円というコストに対して、40時間以上の濃密な体験が保証されている。DLCもすべて無料で、Steam評価97%という実績もある。「買って後悔した」という声は、Hollow Knightのレビューをいくら探してもほとんど見つからない。「自分には難しすぎた」という声はあっても、それはゲームへの文句ではなく自己申告に近い。

メトロイドヴァニアもソウルライクも「聞いたことはあるけど未体験」という人にとって、Hollow Knightは最初の一本として最適な選択肢の一つだ。このジャンルの何が面白いのかを、価格的なリスクを最小限に抑えながら体験できる。

もし「難しそうだから迷っている」という方がいれば、とりあえず試してみてほしい。ダートマウスの地下に降りて、最初のエリアを10分歩いてみてほしい。そこで「あ、これは時間を忘れるやつだ」と感じたなら、それは間違いない。Hollow Knightはそういうゲームだ。

探索の道中で迷ったりローグライク要素を楽しみたいなら

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も合わせてチェックしてみてほしい。Hollow Knightとは全く異なるアプローチで「選択と積み重ね」の面白さを体験できる。

Hollow Knight

Team Cherry
リリース日 2017年2月24日
サービス中
価格¥1,700
開発Team Cherry
日本語非対応
対応OSWindows / Mac / Linux
プレイ形式シングル
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