「Battlefield 1」第一次世界大戦の戦場を駆けるFPS

第一次世界大戦の塹壕に飛び込んだとき、思わず「これは別ゲーだ」と声が出た。

銃声が遠く、爆発が近い。煙が晴れた瞬間、目の前に馬が疾走していた。馬だ。FPSに馬が登場して、プレイヤーがサーベルを振りかざして突撃してくる。2016年に発売されたBattlefield 1は、そういうゲームだった。

近未来設定だった前作Battlefield 4から打って変わって、舞台を1914〜1918年の第一次世界大戦に移したこの作品。当初「WW1のゲームって地味なんじゃないか?」という声も多かった。塹壕戦で膠着した戦場を表現するゲームなんて、退屈じゃないかと。

でも実際に遊んでみると、そのイメージは完全に覆った。ガスマスクをつけながら毒ガスに突っ込んでいく歩兵、空中で格闘する複葉機、砂漠をラクダで横断する騎兵隊。「WW1がこんなにアツいとは知らなかった」——Steamのレビューにはそういう驚きの声が2万件以上並んでいる。

今回はBattlefield 1の魅力を、シングルキャンペーンからマルチプレイヤー、現在のプレイ環境まで全部まとめて書いていく。

目次

こんな人に読んでほしい / こんな人には合わないかも

こんな人におすすめ

  • バトルフィールドシリーズの中で「雰囲気」を重視したい人
  • 第一次世界大戦の歴史に興味がある、あるいはここから興味を持ちたい人
  • シングルキャンペーンもしっかり遊びたいFPS好き
  • BF4・BF3の「大規模戦闘の興奮」をもう一度味わいたい人
  • 近未来・SF要素のないオーセンティックな戦争ゲームが好きな人
  • 馬に乗りながら敵を切り倒したい人(ニッチだがいる)
こんな人には合わないかも

  • 高速スプリント・スライディングなど現代FPSの機動力に慣れ切っている人
  • マルチプレイヤーで常に大人数の試合に入りたい人(過疎が始まっているサーバーもある)
  • スナイパーライフルを使いこなしたい人(WW1時代のボルトアクションは1発ずつ装填が必要で独特の感覚)
  • ガチャや課金で強くなるゲームに慣れていてF2P志向の人(有料タイトル)
  • 戦争描写がリアルすぎるものは苦手という人(このゲームは意外とシリアスな描写がある)

Battlefield 1とは——「WW1」という誰も予想しなかった舞台

Battlefield 1が発表されたとき、業界全体がざわついた。

当時のFPS市場は「Modern Warfare」と「近未来戦争」の二択に二極化していた。Call of Duty: Infinite Warfareが宇宙戦争を発表し、Titanfallがメカを導入し、競合タイトルがどんどん「未来」に向かっていた。そのタイミングでEAとDICEが選んだのが、1世紀前の第一次世界大戦という逆張りだった。

2016年6月にトレーラーが公開された当日のYouTube再生数は2100万回を超え、「いいね」数は当時のゲームトレーラー史上最多記録を更新した。それほど業界に衝撃を与えた選択だった。

なぜWW1なのか——DICEが語ったコンセプト

DICE(スウェーデンの開発スタジオ)がWW1を選んだ理由は、「プレイヤーが何も知らない戦場」だったからだという。

WW2はCoD・メダルオブオナー・BF1942など無数のゲームで描かれてきた。敵はナチス、舞台はノルマンディーかベルリン——そのパターンは完全に使い尽くされていた。一方のWW1は「塹壕戦で膠着した地味な戦争」というイメージが強く、ゲームの舞台としてはほとんど選ばれてこなかった。

でもWW1の実際の戦場は、ゲームで描ける素材に溢れていた。

ヨーロッパだけでなく中東・アフリカ・イタリア・アラビア砂漠が主戦場になった多様な地理。複葉機同士のドッグファイトが初めて行われた空中戦の黎明期。装甲列車、初期の戦車、飛行船(ツェッペリン)——これらすべてが1914〜1918年の4年間に生まれた。

Battlefield 1はその「混沌とした過渡期」を舞台に選ぶことで、「馬に乗った騎兵が戦車と戦い、複葉機が空を飛ぶ」という誰も見たことのない戦場を作り上げた。

「WW1 FPS」の先駆者たち

WW1を題材にしたFPSがまったくなかったわけではない。同じ時期に開発されていた独立系タイトルもあった。

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Over The Top: WWIはインディーFPSとして、塹壕戦のリアルな雰囲気を重視したアプローチを取った作品だ。BF1とは真逆で「派手さよりリアリズム」という方向性だが、WW1というジャンルへの異なる解釈として面白い。

BF1は「リアリズムよりエンターテインメント」の方向に振り切ることで、圧倒的なスケールと視覚的インパクトを実現した。

シングルキャンペーン「戦争の物語」——6つの独立した物語

BFシリーズのシングルキャンペーンは長らく「マルチへの入門チュートリアル」という扱いをされてきた。BF4もBF3も、シングルは「一度やれば十分」というボリュームとクオリティだった。

ところがBF1のキャンペーン「戦争の物語(War Stories)」は、シリーズ最高傑作と評する声が多い。

6つの視点で描くWW1——オムニバス形式の革新

従来のBFシングルキャンペーンは1人の主人公を追う1本道のストーリーだった。BF1はそれを完全に捨て、6つの独立したエピソードで構成されるオムニバス形式を採用した。

それぞれのエピソードは、異なる国籍・異なる立場・異なる戦場の人物を主人公にしている。

嵐の前に(Storm of Steel)は、チュートリアルを兼ねたプロローグ。プレイヤーは西部戦線の一兵士となり、次々と死んでいく。文字通り「プレイヤーキャラが何度も死ぬ」という体験で始まるオープニングは、BFシリーズどころかFPS全体を通して見ても異色の導入部だ。

野獣の本能(Through Mud and Blood)は、イギリス陸軍の戦車乗りが主人公。WW1で初めて実戦投入された戦車「Mark V」に乗り込み、西部戦線を突破しようとする物語。戦車の中での閉所感と、外に出たときの塹壕の泥臭さのギャップが強烈だった。

黄金の道(The Runner)は、オーストラリア・ニュージーランド軍(ANZAC)の伝令兵が主人公。ガリポリ作戦——オスマン帝国に対する上陸作戦で、結果的に甚大な犠牲者を出した作戦——が舞台。海岸から丘の上の司令部まで、ひたすら伝令を届けながら戦場を駆け抜ける体験はほかのエピソードと全然違う。

砂漠の友(Friends in High Places)は、イギリス空軍のパイロットが主人公。複葉機での空中戦がメインで、ドッグファイトの爽快感と当時の飛行機のアナログな操縦感が両立している。

暁の光(Avanti Savoia!)は、イタリア軍のAssaultors(強襲兵)が主人公。イタリアアルプスを舞台に、ケーブルカーや山岳地帯での戦いが展開される。

シャーの使者(The O.T.T. of Arabia)は、アラビア半島でオスマン帝国と戦うアラブ・イギリス連合軍が主人公。広大な砂漠でラクダに乗り、要塞を攻略する体験は他のどのエピソードとも違う開放感があった。

この6エピソード構成の最大の意義は、WW1が「ドイツ対連合軍の二項対立」ではなく、世界中の人々が巻き込まれた複合的な戦争だったことを体感できる点だ。

プロローグの演出が衝撃的だった理由

特に語り継がれているのが、最初のプロローグ「嵐の前に」の演出だ。

西部戦線の戦闘で、プレイヤーキャラが次々と死ぬ。一人の兵士が死ぬと「EDWARD BRAUN・享年20歳」という名前と年齢がスクリーンに表示され、また別の兵士として戦闘が続く。これが繰り返される。

FPSでは通常、プレイヤーキャラの死は「ゲームオーバー」の失敗体験だ。でもこのプロローグでは、死ぬことが「この戦争で何が起きたか」を伝えるための演出になっている。死ぬたびに表示される名前は架空だが、スタッフロールで「WW1の戦死者に捧ぐ」という一文が出てくる。

Steamレビューでも

プロローグで泣いた。FPSで泣いたのは初めてだ。

引用元:Steamレビュー

という声が複数あった。実際に遊んでみると、その気持ちはわかる。あれは単なるチュートリアルじゃなく、作品のトーンを宣言する「序章」だった。

各エピソードの完成度——ゲームプレイの多様性

6つのエピソードは、それぞれ異なるゲームプレイを提供している点も評価が高い。

「黄金の道」では広大なステルスパートがあり、見つからないように要塞を突破するセクションがある。ここはステルスが苦手なプレイヤーには少し難しいが、発見されたら正面突破に切り替えて戦うこともできる。「白か黒か」じゃなく、プレイスタイルに合わせた攻略ができるのがいい。

「砂漠の友」の複葉機セクションは、地上に降りて徒歩で潜入するパートと空中戦が交互に来る構成。複葉機で爆撃してから着地して手動で確保する、という流れが映画的でテンションが上がる。

「シャーの使者」は最もオープンワールドに近い設計で、広大な砂漠マップを自由に移動しながら目標をこなす。馬やラクダに乗って砂漠を横断する時間は、他のどのFPSでも体験できない感覚だった。

トータルのプレイ時間は6〜8時間ほど。FPS一本のキャンペーンとしては標準的だが、内容の密度は高い。購入後「シングルだけ遊んでマルチはやらない」という人が珍しくないのも、このキャンペーンの質があってこそだ。

マルチプレイヤー——64人が塹壕とガスと騎兵隊で戦う大規模戦

BF1の本体はやはりマルチプレイヤーだ。最大64人が参加する大規模対戦は、BFシリーズが長年磨いてきた強みをWW1の舞台で全開に発揮している。

コアゲームモード——「コンクエスト」と「オペレーション」

BF1のマルチプレイヤーには複数のゲームモードがあるが、二大看板はコンクエストとオペレーションだ。

コンクエスト(Conquest)は、シリーズ伝統の拠点制圧モード。複数の拠点をチームで奪い合い、拠点数を多く保持したチームがスコアを稼ぐ。最大64人参加のこのモードが「BFの真骨頂」として常に最大人気を誇っている。

WW1の舞台でコンクエストを遊ぶと、近代戦のそれとは全然違う感触がある。ライフルは1発打つごとにボルトアクション(装填)が必要で、連射できない。機関銃は設置型が多く、一か所でずっと撃ち続けるしかない。その「不便さ」が逆にWW1らしい緊張感を生んでいる。

オペレーション(Operations)は、BF1で新たに追加されたモード。攻撃側が複数のセクターを順番に制圧していき、防衛側がそれを阻止する大規模攻防戦だ。

1試合が60〜90分続くこともあり、複数のマップをまたいで展開するスケールは圧倒的。特に「カイザーシュラハト(Kaiser Battle)」というオペレーションは、3つのマップをまたいで展開し、最大100対100(ボットを含めた換算)に近い規模になる。

Steamレビューでは

オペレーションモードは他のどのゲームでも体験できない。あの規模と緊迫感は本物だ。

引用元:Steamレビュー

という声が多い。筆者も同意見で、最盛期にフルロビーのオペレーションを体験した時の「映画の中にいる感覚」はしばらく忘れられなかった。

ピジョンモード(伝書鳩)——世にも珍しい「鳩視点」

BF1には「ピジョン」という、おそらくFPS史上最も奇妙なゲームモードが存在する。

ゲーム中に伝書鳩を捕まえたプレイヤーは、視点が鳩に切り替わる。鳩として空を飛び、目的地まで届ければ大規模砲撃が味方陣営に降り注ぐ。この鳩を敵が撃ち落とそうと銃を向けてくる、という構図が成立する。

実際のマルチプレイヤーで「鳩を巡って全員が引き寄せられる」という場面が何度もあった。あれは本当に馬鹿馬鹿しくて最高だった。FPSで鳩を撃ち落とす体験ができるゲームは他にない。

兵科システム——WW1にあわせた4クラス

BF1の兵科は4種類。突撃兵(Assault)、衛生兵(Medic)、援護兵(Support)、斥候(Scout)という構成はシリーズの伝統だが、WW1の時代設定に合わせて装備が大きく変わっている。

突撃兵はショットガン・自動小銃・対戦車グレネードが主な装備で、建物内での近距離戦と対車両が得意。衛生兵はセルフロード式ライフル(半自動)で中距離を担いつつ味方を回復する役割。援護兵はルイスガンなどの軽機関銃で制圧射撃。斥候はボルトアクション式スナイパーライフルで遠距離を狙う。

この4クラスに加え、マップ各所に「ビヒクル(乗り物)」が配置されている。戦車、複葉機、馬、装甲列車、戦艦など、WW1に登場した多様な兵器が乗り物として実装されている点が大きな特徴だ。

ビヒクル(乗り物)の種類と魅力

BF1のビヒクルラインナップは、マルチプレイヤーの「視覚的な驚き」の源泉だ。

戦車は3種類の仕様から選べる。「突撃型」は重火力で正面突破向け、「砲撃型」は遠距離から敵拠点を砲撃、「水陸両用型」は沼地や川を渡れる。WW1の戦車は現代のそれと比べて非常に脆く、搭乗員が歩兵に取り付かれると弱い。

複葉機は戦闘機・爆撃機・攻撃機の3種で、それぞれ役割が違う。戦闘機は空対空、爆撃機は地上爆撃、攻撃機は歩兵掃射が得意。これらすべてが複葉機のビジュアルで飛んでいる光景は、BF4の近代ジェット機とはまったく違う世界観がある。

装甲列車は一部マップに登場する、線路の上を走る移動砲台だ。大砲と機関銃を搭載した要塞が線路に沿って突進してくる様子は、はじめて遭遇した時に思わず「え?」と声が出た。

飛行船(ツェッペリン)は最大のインパクトを持つビヒクルで、空から見下ろす巨大な飛行船が出現すると戦場全体の雰囲気が変わる。複数のプレイヤーが乗り込んで各砲台を担当する仕組みで、地上から対空砲撃で撃墜しようとする攻防は映画的なスペクタクルを生む。

マップの種類と「壊せる建物」

BF1のマップは全部で9つ(基本版)+追加コンテンツで16マップ以上が存在する。

特徴的なのはDICEが長年磨いてきた「フロストバイトエンジン」による環境破壊。BF3・BF4でも建物の破壊は可能だったが、BF1ではWW1らしい「土嚢や木造家屋の崩壊」が加わり、戦闘が続くほど地形がどんどん変わっていく。

試合開始時には美しい農村や要塞都市だったマップが、30分後には爆撃で焦土と化している——この変化が「戦争の痕跡」を感じさせる演出になっている。

マップの多様性も評価が高い。「アルガズニー(Argonne Forest)」は鬱蒼とした森林で歩兵戦がメイン。「シナイ砂漠(Sinai Desert)」は広大な砂漠で騎兵と戦車が活躍。「エンパイア・エッジ(Empire’s Edge)」はイタリアの海岸沿いの要塞都市で、狭い路地での近距離戦が多い。同じゲームとは思えないほど異なる戦場体験ができる。

騎兵と砂漠——BF1が描くWW1の「もう一つの顔」

WW1をゲームで描く上でBF1が意識的に取り組んだのが「西部戦線だけじゃないWW1」の描写だ。

一般的にWW1の印象は「塹壕、泥、膠着した西部戦線」で止まっていることが多い。でも実際の第一次世界大戦は地球規模で展開した複合戦争だった。アラビア半島ではオスマン帝国に対するアラブ蜂起が起き、イギリス将校T.E.ローレンスがアラブ義勇軍を率いた。アフリカではドイツ植民地軍とイギリス・フランス植民地軍が戦い続けた。イタリアではオーストリア=ハンガリー帝国と険しいアルプス山脈を挟んでの攻防が繰り広げられた。

BF1はこの地理的な多様性をゲームプレイに落とし込んでいる。

騎兵ユニットの存在感

BF1で「このゲームならでは」と感じる瞬間の筆頭が、騎兵隊との遭遇だ。

馬に乗ったプレイヤーが歩兵をサーベルで切り倒しながら突撃してくる。あるいは馬上から馬を降りた後もモーメンタムを保って特殊な近接攻撃を繰り出す。いまのFPSでは絶対に体験できない「騎馬突撃」がマルチプレイヤーの試合に普通に組み込まれている。

騎兵は速度が速く、平原マップでの機動力は絶大だ。馬で移動しながら爆発物を投げ込んで逃げる「ヒット&ラン戦術」は使いこなすと強力で、対処方法を知らない相手には本当に厄介な存在になる。

ただし騎兵には弱点もある。森や建物の多い地形では動きが制限され、機関銃に正面から突っ込めば簡単に落とされる。「平原で強く、市街地で弱い」というバランスが、騎兵を使うプレイヤーに地形選択のセンスを要求する。

最初に騎兵に切り倒された時の衝撃は今でも覚えている。FPSで「馬に踏まれながら死ぬ」という体験は、ほかのゲームでは味わえない。

砂漠マップ「シナイ砂漠」の広大さ

BF1の代表的なマップの一つが「シナイ砂漠(Sinai Desert)」で、広大なエジプト〜シナイ半島の砂漠地帯を舞台にしている。

特徴的なのはその開放感だ。西部戦線マップの閉塞感とは真逆で、見通しが良く、遠距離狙撃と機動力が極めて重要になる。砂嵐が発生するとほぼ何も見えなくなるため、戦術を変えざるを得ない。

このマップでは騎兵が最も活躍する。砂漠を縦横無尽に駆け回る騎馬部隊と、拠点に立てこもる歩兵、遠くから狙撃する斥候——三者の関係が生み出す戦術的な面白さは、ゲームを設計した人たちの意図がよく伝わってくる。

ビヒートモード(Behemoth)——追い詰められた側への逆転カード

BF1独自のシステムとして評価が高いのがビヒートモード(Behemoth)だ。

試合中、大きくスコアで負けているチームに対して「ビヒート」と呼ばれる超大型兵器が支給される。マップによって種類が異なり、ドレッドノート(巨大戦艦)、ツェッペリン飛行船、装甲列車、A7V戦車などが登場する。

この仕組みはいわゆる「負け犬への救済措置」だが、単純な補助兵器とは規模が違う。飛行船が出現した瞬間、試合の流れが一気に変わる可能性がある。

実際のプレイでは「ビヒートが来た!」という瞬間の戦場全体の雰囲気の変化が強烈だった。敵チームの飛行船が空に出現し、地上の仲間が慌てて対空砲に走り込む。その混乱の中で裏側から拠点を奪いに行く——ビヒートの存在が生み出す動的な状況変化は、他のFPSではなかなか体験できない。

負けていても「ビヒートが来れば逆転できるかもしれない」という希望が残るため、試合途中の離脱が減るという副次的な効果もあった。BF2042や他の現代FPSにはこのシステムがなく、「BF1の好きな点」として挙げるプレイヤーが多い。

塹壕戦の再現——「膠着した戦場」をゲームにするということ

WW1をゲームにする上での最大の難問は「塹壕戦をどう表現するか」だった。

実際のWW1西部戦線では、両軍が塹壕に籠もって膠着した状態が4年近く続いた。100メートルの前進に何千人もの犠牲者が出た。「楽しいゲーム体験」と「歴史的事実の忠実な再現」は根本的に矛盾していた。

DICEはこのジレンマを「エンターテインメント寄り」に解決した。コンクエストの試合はリスポーンシステムによって前線が動き続けるし、1分ごとに拠点の所有権が変わっていく。実際のWW1のような「4年間同じ場所で膠着する」体験はしない。

でも、だからこそプレイヤーが自然にゲームに没入できるという側面もある。

塹壕の使い方——防衛ラインとしての機能

西部戦線をモチーフにしたマップでは、塹壕が実際に地形として実装されている。塹壕に入ることで「銃弾が当たりにくくなる」という効果があり、守る側が塹壕を活用して攻撃側を迎え撃つ戦術は試合でよく見られる。

「全員が塹壕に入って動かない」状態になると試合が膠着するが、タイムリミットによるスコア管理システムがあるため、どちらかのチームが動かざるを得なくなる設計だ。

この「実際のWW1らしい膠着感」と「ゲームとして成立させるための仕組み」の両立は、プレイしていると自然に受け入れられる。「ゲームだから仕方ない」というより「ゲームならこういう解釈でいい」と思える設計の妙がある。

毒ガスの表現

WW1の象徴の一つが毒ガス(主にマスタードガス・塩素ガス)の使用だ。BF1では毒ガスがゲームプレイの重要な要素として実装されている。

ガスグレネードを投げ込んだエリアには黄緑色のガス雲が広がり、ガスマスクを装備していないとHPが継続的に削られる。ガスマスクを装備するとHPダメージはなくなるが、視界が狭まり、移動速度も下がる。

試合中に「ガスを嫌って退く」という判断を強いられる場面が多く、これが戦場の流れを変える要素になっている。「ガスで追い払いながら突撃する」「ガスエリアを迂回して側面に回る」という戦術的な動きが自然に生まれるのがいい。

毒ガスは「WW1の残酷な側面」でもある。ゲームとしてはシステムに落とし込まれているが、ガスに追われながらガスマスクを探すシーンは妙なリアルさを持っていた。

兵器のカスタマイズと成長要素

BF1のカスタマイズは現代のバトルロイヤルゲームと比べるとシンプルだが、WW1の時代背景に合わせた独自の深みがある。

武器のバリアント(変種)システム

各武器には複数の「バリアント」が存在する。たとえばLewis Gunには「Suppressive(制圧)」「Low Weight(軽量)」「Storm(近距離)」などのバリアントがあり、それぞれ命中精度・連射速度・携帯性などの特性が異なる。

WW1時代の銃は現代のそれと違い、「どのバリアントを選ぶか」で体感がかなり変わる。連射重視か命中精度重視か、という選択が戦場での動き方に直結する。

購入または支給のシステムで、プレイを続けることで新しいバリアントが解放されていく。有料DLCでしか入手できない武器も一部あった(現在は販売形態が変わっている部分もある)。

エリートクラスとピックアップ武器

マップ各所に「エリートクラスのピックアップ」が配置されている。

Sentry(センチネル)は機関銃を装備した重装備の兵士で、通常の歩兵よりずっと大きな体と鎧を持つ。Flame Trooper(火炎放射兵)は近距離で恐怖の火炎放射。Tank Hunter(対戦車兵)はゴルガス砲という巨大な狙撃ライフルを装備し、戦車の弱点を狙う。

これらのエリートクラスはピックアップ式なので「次に取りに行こう」という動機が生まれ、それが戦場の動きを活性化させる。「火炎放射兵に突撃したら全員焼かれた」「センチネルが建物から出てきた瞬間、みんな蜘蛛の子を散らすように逃げた」——そういう記憶に残る場面がエリートクラスから生まれる。

DLC拡張コンテンツとその評価

BF1には4つの大型DLC(拡張パック)が存在し、それぞれが新しいマップ・武器・ゲームモードを追加した。現在は「プレミアムパス」にまとめられて購入可能になっている。

They Shall Not Pass(君らは通さない)

フランス軍を追加した第1弾DLC。西部戦線のフランス側の視点から、ベルダン(Verdun)やソンムなど激戦地を新マップとして追加。新兵科「戦闘グループ(Char 2C)」として超重戦車も登場した。

歴史的に見てWW1のフランス軍は最多の死者を出した国の一つ。「Verdun Heights」「Fort De Vaux」といったマップ名は、実際にWW1最大規模の戦闘が行われた場所だ。このDLCでフランス軍という「地獄の中の当事者」の視点が加わったことで、ゲームの世界観が一段と広がった。

In the Name of the Tsar(皇帝の名のもとに)

ロシア帝国軍を追加した第2弾DLC。最大のトピックは「女性兵士」の追加で、歴史的に実在したロシアの女性義勇兵部隊(死の大隊)がゲームに登場した。

マップは東部戦線の広大な平原、アルブチェフ湿地帯、ガリシア地方など。西部戦線のマップとは打って変わって開けた地形が多く、騎兵戦が特に映える。「ツァーリ(Tsar’s Palace)」マップはロシアの宮殿が舞台で、絢爛な内部構造と戦闘のギャップが強烈だった。

Turning Tides(転換点)

海上・上陸戦に特化した第3弾DLC。ガリポリ上陸作戦、ヘルゴラント・バイト海戦などを新マップとして追加。

水陸両用作戦の要素が大幅に強化され、潜水艦の乗り物も追加された。BF4がすでに海上マップを多数持っていたので比較されることもあったが、WW1の海戦という設定ならではの「古い軍艦」の質感は独自の魅力があった。

Apocalypse(黙示録)

第4弾にして最後のDLC。WW1末期の「最も地獄だった戦場」をテーマにした。パッシェンデールの泥沼、ケープ・エレス、ソワソンなど。

名前の通り環境が壊滅的で、マップ全体が灰色の廃墟と化した戦場。毒ガスが漂い、地面はほとんど泥と水で覆われている。ビジュアル的には最も過酷で、「WW1の終わりはこういう光景だった」という衝撃がある。

このDLCで追加された「エア・アサルト(Air Assault)」モードは、波状攻撃してくる敵の複葉機を対空砲で迎え撃つモードで、マルチとはまた違う体験ができる。

Sentry・Flame Trooper・Tank Hunter——エリートクラスの醍醐味

BF1のマルチプレイヤーで「記憶に残る瞬間」を作るのがエリートクラスだ。通常の4クラスとは別に、マップの特定地点にピックアップとして配置されている特殊兵士で、取得したプレイヤーが一時的に強力な装備を使える。

センチネル(Sentry)——鉄壁の歩く要塞

センチネルは人間サイズの鎧(ボディアーマー)を纏い、重機関銃を抱えた兵士だ。通常の歩兵よりずっとHPが高く、機関銃の連射で正面から圧倒できる。

弱点は機動力のなさと「視認性の高さ」。遠距離から狙われると不利で、爆発物に弱い。センチネルに気づいたチームが全員で集中砲火すれば倒せるが、建物の角から機関銃を突き出して連射してくるセンチネルに鉢合わせした瞬間の「あっ、だめだ」という感覚は何度体験しても慣れない。

火炎放射兵(Flame Trooper)——近距離の絶望

狭い建物内や塹壕の中での戦闘で最も恐怖感があるのが火炎放射兵だ。火炎放射器の射程は短いが、当たった相手には継続ダメージが入り続ける。

火炎放射兵と室内で遭遇した時のパニックは他のどんな状況とも違う。逃げても炎がまとわりつき、後退しながら撃とうとしても焼かれる。これを使われた側の体験として書くと、「理不尽」という言葉がぴったりだ。でもそれがWW1の火炎放射器の使われ方に近かったことを後で知ると、複雑な気持ちになる。

対戦車兵(Tank Hunter)——スナイパーライフルで戦車を狙う

「ゲルリッヒ砲(Tankgewehr)」と呼ばれる実在した対戦車ライフルを装備したエリートクラスで、戦車の装甲に直撃弾を与えてダメージを与えられる。WW1に実際に登場した世界初の対戦車ライフルを再現したもので、射程距離が長く、戦車乗りにとっては脅威の存在だ。

これらのエリートクラスは「ピックアップを巡る争い」という形でマップ全体の動きに影響を与える。強力なエリートクラスを取るためにリスクを冒して走り込む、という行動が自然に生まれ、それが予期しない接触戦や逆転劇につながる。

グラフィックと音響——フロストバイトエンジンの集大成

BF1の評価で「ビジュアル」と「サウンドデザイン」は別格の称賛を受けている。

視覚的なインパクト

フロストバイトエンジン5を使用したBF1のグラフィックは、2016年リリース当時は最高水準だった。8年が経過した現在でも「このゲームは今でも綺麗」という感想が多い。

特に印象的なのが「天候の動的変化」だ。試合中に霧が晴れたり嵐が来たりするだけでなく、夕暮れ時の光の差し込み方、朝もやの中のシルエット、砂嵐の中での視界制限など、時刻と天候が実際の戦闘体験を左右する。

WW1の時代背景に合わせた色調も特徴的だ。セピアがかったトーン、煙と霧に覆われた戦場、爆炎の赤と緑の毒ガスのコントラスト。近未来設定のゲームとは真逆の「古い戦争の色」が視覚的な一貫性を生んでいる。

サウンドデザイン——音が「戦場にいる感覚」を作る

BF1のサウンドデザインは、シリーズ全体を通して最高傑作との評価が定まっている。

BFシリーズは昔から音響の品質が高いが、BF1ではWW1の「原初の兵器」の音を徹底的に研究・再現した。ボルトアクションライフルの金属音、機関銃の低く重いサウンド、複葉機エンジンの振動感——これらすべてが「現代の銃声とは別物」の質感を持っている。

特に評価が高いのが爆発音の多層性だ。砲弾が着弾する「ドン」という低音、金属片が飛散する「キン」という高音、その後に来る「ワン」という共鳴——これが距離と障害物によって変化する。BF4を遊んだ後にBF1に触ると、音の重厚さに驚く人が多い。

BGMはスウェーデンの作曲家Johan Söderqvistによる楽曲で、管弦楽と電子音楽を組み合わせた独特のスコア。特にメインテーマ「Warriors」はオーケストラの静けさから始まり、戦場の喧騒へと変化していく構成で、トレーラーと組み合わせて「WW1の悲劇と壮大さ」を余すところなく表現していた。

コンクエストの実際の流れ——1試合を追ってみる

マルチプレイヤーのコンクエストが実際にどう展開するのか、典型的な試合の流れを描いてみる。

試合開始と同時に両チームがスポーン。序盤は各プレイヤーが散らばって近くの拠点を取りに走る。マップの中央にある重要拠点は激しい争奪戦になり、ここで早々に大きな戦闘が起きることが多い。

中盤は拠点の制圧と反撃の繰り返し。一方のチームが3拠点以上を支配するとスコアが加速して積み上がっていく。追い詰められたチームにビヒートが支給されることがあり、この時点で試合の雰囲気が変わる。

終盤は「スコアで負けているチームが全力で攻め込む」対「スコアで勝っているチームが拠点を守り時間を稼ぐ」という攻防になることが多い。試合は1試合20〜25分で完結することが多く、長引いても30分ほどで決着する。

分隊システムとコミュニケーション

BF1は最大4人の分隊(スクワッド)でプレイできる。分隊長はオーダーを出すことができ、分隊員が分隊長にリスポーンできる(スポーン・オン・スクワッドリーダー)という仕組みがある。

友達4人で遊ぶ場合、この分隊システムが最大限に機能する。「俺が前線に出るから後ろでリスポーンポイントを確保してくれ」「今から左翼を回り込む、全員ついてきて」——こういう連携がボイスチャット込みでできると、試合体験が全然変わる。

ソロでランダムマッチに参加する場合でも、分隊員が近くにいることで戦場のどこにでもリスポーンできるため、有利な位置に繰り返し出現できる。

Scout(斥候)の奥深さ——狙撃の難しさとやりがい

BF1で「習得難度が高いが使いこなせると楽しい」クラスがScout(斥候)だ。

WW1のボルトアクションライフルは1発撃つごとに手動でボルトを動かして次の弾を装填する動作が入る。連射できないため、1発で仕留める精度と「次弾装填中に敵に詰められる」というリスクの管理が必要になる。

加えてBF1の弾道には「弾落ち(重力による弾道の曲線)」が実装されており、遠距離では狙点を少し上に合わせないと当たらない。敵が動いていれば「先読み(リード)」して撃つ必要もある。

これらの要素が組み合わさった狙撃は、射撃が決まった瞬間の達成感が大きい。しかも画面左上に「+100 HEADSHOT」と表示されて仲間全員に伝わる演出が入るため、「決まった感」が気持ちいい。

BF1のスカウトで初めて400mの狙撃を決めた時、こんなに嬉しいと思わなかった。CS2の1タップとは全然違う達成感がある。

引用元:Steamレビュー

「歴史を学べるゲーム」か——教育的側面の評価

BF1について語られることが多い話題が「このゲームでWW1に興味を持った」というものだ。

コーデック・データベース——ゲーム内の歴史資料

BF1にはゲーム内データベースが実装されており、登場する兵器・ユニット・戦場についての歴史的解説が読める。

たとえばLewis Gunを選択すると、「1913年にアメリカで開発された軽機関銃で、WW1でイギリス軍に大量採用された。重量10kgで、当時としては軽量な部類」といった説明が表示される。

これは「ゲームをやりながら歴史を学べる」という体験に直結していて、特に10代後半〜20代の「WW1を学校で習ったことはあるがよく知らない」層への入口になっていると言われている。

Steamレビューにも

このゲームのおかげでWW1の歴史書を買った。まさかゲームがきっかけになるとは思わなかった。

引用元:Steamレビュー

という声があり、「歴史への入口」としての評価は珍しい側面だ。

リアリズムとエンターテインメントの間で

一方で「このゲームがWW1をエンターテインメント化することへの批判」も一部ある。

WW1は1400万人以上の戦死者を出した歴史上最大規模の戦争の一つ。毒ガス、塹壕の泥、精神的に壊れていく兵士——その歴史的な現実をゲームのフォーマットに落とし込むことへの倫理的な問いかけは、リリース時から議論の的だった。

DICEはこの問いに対して「リアリティよりエンターテインメントを選んだ」と明言している。プロローグの演出で「戦争の悲劇」に向き合いつつ、マルチプレイヤーでは「楽しい戦闘体験」を提供するという二層構造でこの問題に向き合っている。これが「正しいアプローチか」については今でも評価が分かれているが、少なくともDICEが意識的にこのジレンマと向き合っていた点は評価されている。

現在のプレイ環境——2025年時点でどれだけ遊べるか

BF1が発売されてから約9年が経過した。現在のプレイ環境はどうなっているか。

Steam同接数の推移

BF1はSteamでのピーク同接が発売当時(2016年)は10万人以上を記録したタイトルだ。その後、BF5・BF2042の発売で一時的に人口が分散したが、BF2042の評価が低かったことで「BF1に戻ってきた」プレイヤーが増える現象が何度か起きた。

2025年時点のSteamチャートを見ると、平均同接は1,000〜3,000人前後で推移している。大規模セール時や休日には一時的に跳ね上がることもある。

この数字は「まったく人がいない」ではなく「コンクエストならサーバーを探せば入れる」というレベル。ただし、すべてのゲームモードやすべてのマップに常時人が集まっているわけではない。人気のモード(コンクエスト、ドミネーション)に絞ればマッチングは成立する。

サーバーブラウザの活用

BF1にはサーバーブラウザ機能があり、現在稼働中のサーバーを一覧で確認できる。地域(アジア、北米、ヨーロッパ)とゲームモードで絞り込んで、実際に人がいるサーバーを選べる。

「マッチングに5分以上待っても入れない」という状況はヨーロッパや北米では起きにくいが、日本から接続してアジアサーバーを探すと過疎を実感することがある。Ping(遅延)を諦めてヨーロッパのサーバーに入れば、コンクエストのフルロビーを体験できることが多い。

現在でも活発なコミュニティが独自にサーバーを立て、定期的にイベントを開催している。「HistoricalRealism」系のサーバーでは武器・兵科を実際のWW1に沿って制限するなど、独自ルールで遊んでいるグループもある。

9年経っても週末はフルロビーになる。BFシリーズの中で最も長く遊ばれているのはBF1だと思う。

引用元:Steamレビュー(2025年)

技術的なパフォーマンス

BF1はDX11ベースのゲームで、最新のGPU(RTX 4000番台等)に対する最適化は完全ではない。一部のハードウェア構成でフレームレートが不安定になる報告がある。

ただし、2024〜2025年のパッチでいくつかの修正が入っており、最新のドライバーとの相性は以前より改善している。「GTX 1080やRX 580クラス以上のGPUなら1080p/60fpsは快適に出る」という声が多い。

ハイエンド環境なら4K/100fps以上でのプレイも可能。ただし、ゲーム内の設定でSupersampling(解像度スケーリング)を上げすぎると急激に重くなるため、注意が必要。

他のFPSタイトルと比べたときのBF1の位置づけ

BF1を語る上で避けられないのが、他のFPS・マルチプレイヤーシューターとの比較だ。

CS系タイトルとの違い

Counter-Strike 1.6以来、競技志向のFPSは「コンパクトなマップで少人数が高精度射撃で戦う」というフォーマットを磨き続けてきた。

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CS1.6からCSGO、CS2と続く系譜は「射撃精度とエコノミー管理」の深さを極めていった。BF1はその対極にあるゲームで、射撃精度よりも「チームとしての動き・乗り物活用・陣地の維持」が勝敗を左右する。

「FPSの射撃ゲー」として遊ぶ場合はCS系の方が刺激的かもしれないが、「広大な戦場で多様な戦術を試したい」という場合はBF1に軍配が上がる。どちらが優れているというより、そもそもゲームの設計コンセプトが別物だ。

SplitgateやFragPunkなどの競技FPSとも別物

競技志向の現代FPSが求めるのはスキルの可視化と公平な環境だ。

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Splitgateはポータルガンを使った独自の立体的な戦いを実現した競技FPS。BF1とは目指すゲーム体験の方向が根本から違う。BF1の「大規模戦闘の中でどれだけ個人が活躍できるか」という体験は、競技FPSとは異なる楽しさだ。

タクティカルFPSとの違い

Ready or NotのようなタクティカルシューターとBF1は、どちらも「リアリズム」を謳うが、その内実は全然違う。

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Ready or Notは1人1人の命の重さを感じるゲームプレイで、「死んだらリスポーンなし」の緊張感が本質。BF1は大規模戦闘の「映画的なスペクタクル」が本質で、死んでも10秒後に復活して戦い続けられる。遊びたい「体験の種類」に合わせて選ぶのが正解だ。

WW1・WW2テーマゲームとの比較

同じ戦争ゲームでも、リアルタイムストラテジーのジャンルで第一次・第二次大戦を体験するのとは全く異なる視点を提供してくれるゲームもある。

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Civilization Vは時代を超えた戦略ゲームで、WW1も「時代の一コマ」として俯瞰的に体験できる。FPSの一兵士視点と大局を動かす指導者視点——どちらも歴史への理解を深めるアプローチとして面白い。

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Age of Empires IVも戦争と文明の歴史を扱っているが、近世以前の舞台。「歴史ゲームが好きでBF1に辿り着いた」という人なら逆に興味を持てるかもしれない。

Battlefield 5との比較——「BF1の方が良かった」論争

BF1の後継作であるBattlefield 5(2018年)は、WW2を舞台に選んだ。このBF5がBF1と比較して「不評だった」という評価が定着している。

なぜBF5がBF1を超えられなかったのか

BF5の評価が割れた要因は複数ある。

まず「WW2という使い尽くされた舞台」に対する新鮮味の欠如。BF1がWW1という誰も選んでこなかった舞台で得た驚きを、BF5はWW2では再現できなかった。

次にローンチ時のコンテンツ不足。本来あるべきゲームモードやマップが後から追加される形になり、発売直後の「コンテンツが薄い」という批判が評価を下げた。

そして「TTK(Time to Kill)の変更問題」。発売後にTTKを調整するアップデートが入り、それが大きな反発を招いた。コアプレイヤーが形成した環境を根本から変えるアップデートへの怒りは相当なものだった。

Steamレビューで比較すると、BF1が「非常に好評(87%)」に対し、BF5は「賛否両論(62%)」という評価の差が出ている。

BF5の時に気づいた。BF1がいかに完成されていたかを。

引用元:Steamレビュー

この「BF1が最高峰だった」という評価は、BF2042のローンチ失敗もあって現在では広く共有されている。

BF6(2025年)とBF1

2025年には新作のBattlefield 6がリリースされる予定だ(執筆時点では情報が出ている段階)。BF6が発売されたとしても、BF1の「WW1という独自の舞台」は永久に置き換えられない唯一性がある。

ホラーやサバイバルとは対極——でも「恐怖」もある

BF1は明らかに「アクションゲーム」だが、特定の局面では強烈な恐怖感を生む。

毒ガス攻撃のエリアに踏み込んだ時、ガスマスクを装備していなければ視界がゆがみ、徐々にHPが削られていく。この「ゆっくりと死んでいく感覚」はホラーゲームのそれに近い。

Cry of FearやBioShockのようなホラー要素特化のゲームとはまったく別物だが、BF1の特定の局面が持つ「見えない恐怖」——霧の中から突然現れる騎兵、暗い塹壕の奥に潜む狙撃兵——はアクションゲームとしての緊張感を超えた何かを生んでいる。

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Battlefield 1が証明したこと

BF1が残した最大の功績は「WW1というジャンルを開拓した」ことだけではない。

「ゲームが歴史への入口になれる」ことを証明した。それまで「WW1は地味で退屈」と思っていた人たちが、BF1をきっかけに歴史書を手に取り、映画を見て、WW1の複雑さと悲劇に向き合うようになった。

「FPSにも物語る力がある」ことを示した。プロローグの演出は今でも「FPS史上最も感情的なオープニングの一つ」として語り継がれている。

「逆張りが市場を動かせる」ことを見せた。近未来化一辺倒だったFPS市場に対して「100年前の戦場」で真っ向勝負し、業界のトレンドを変えた。

WW1という「語られなかった戦争」を主題にすることで、ゲームという媒体が持つ「体験させる力」を最大限に引き出したBattlefield 1は、2016年の一タイトルを超えた意義を持つ作品だと思う。

まとめ——2025年から始めても後悔しない理由

Battlefield 1を今から始めることに迷っている人へ、正直に書く。

マルチプレイヤーの人口は2016年の全盛期とは比べ物にならない。コンクエストのフルロビーを日本語圏の仲間と遊ぶのは難しい。その点は割り引いて考える必要がある。

でも、シングルキャンペーンは今遊んでも「時代を超えた傑作」と言える完成度だ。6〜8時間で体験できる「WW1の物語」として、プロローグだけでも遊ぶ価値がある。

マルチプレイヤーは「欧米サーバーのPingを諦めれば今でも遊べる」という状況。週末の夕方(現地時間)ならフルロビーのコンクエストに入れる確率は高い。

セール時の価格は本体とDLC全込みで2,000円前後になることが多い。このコスパで「FPS史に残るキャンペーン」と「WW1を舞台にした大規模マルチプレイヤー」が両方手に入るなら、購入を迷う理由はほとんどない。

WW1のFPSをもっとリアル志向で体験したい人は、冒頭で紹介したOver The Top: WWIもチェックしてみてほしい。BF1のエンターテインメント性とは対照的な「重厚なリアリズム」で同じ時代を描いている。

「WW1の戦場を駆け抜ける」という体験は、今のところBF1にしかできない。その唯一性は2025年になっても変わっていない。

バトルフィールド 1

DICE
リリース日 2020年6月11日
サービス中
価格¥4,300
開発DICE
販売Electronic Arts
日本語非対応
対応OSWindows
プレイ形式シングル / マルチ
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