CloverPit ― スロットで借金を返済するローグライトホラー
スロットマシンの前に座って、床の下が奈落だと知りながら回し続ける。それがCloverPitというゲームだ。
2025年9月26日にSteamでリリースされた直後から話題になり、発売初日で10万本以上を売り上げ、最大同時接続約2万1,000人を記録した。わずか6週間で累計100万本を突破。イタリアの小規模スタジオPanik Arcadeが「Balatoとの掛け合わせに、Buckshot Rouletteのヒリつき感を足した」と自称するこのゲームは、スロットを回しながら借金を返済し続けるシンプルな設計で、気づいたら数時間が溶けている。
ゲームの構造自体は本当にシンプルだ。スロットマシンとATMが置かれた薄汚れた独房に閉じ込められ、ラウンドごとに課される借金を期限内に返済しなければならない。返済できなければ床が開いて奈落の底に落とされる。ただそれだけ。でも150種類以上のラッキーチャームを組み合わせてスロットの確率を自分でいじれる要素があることで、純粋な運試しではなく「どのビルドでスロットを壊すか」を考えるゲームになっている。
プレイ開始から2時間後、気がつくと「もう1回だけ」と思いながらリセットしている。スロットの出目に一喜一憂しながら、チャームの組み合わせを試行錯誤し、あと1回デッドラインを越えれば勝てそうな気持ちが止まらなくなる。この記事では、CloverPitがなぜここまで人を引き込むのか、どんなゲームとして設計されているのか、そして正直に言うとどんな欠点があるのかを書いていく。
CloverPitの基本設計——スロットで返済、返せなければ即死
CloverPitの基本的な枠組みはシンプルだ。プレイヤーは錆びついた独房に閉じ込められており、部屋にはスロットマシンとATMが置かれている。ゲームの目標は、ATMに表示されたデッドライン(期限)内に指定された金額を稼いで返済すること。返済できなければ、警告音とともに床が開き、プレイヤーキャラクターは奈落に落ちてゲームオーバーになる。
1つのデッドラインの中に3ラウンドがある。各ラウンドではスロットを最大7回まで回せる。つまり1デッドライン内で最大21回スプリングチャンスがある。この21回のスピンで、ATMが要求する金額を稼いで返済できるかどうかがゲームの構造だ。
スロットの盤面は5列の絵柄から構成されている。左の壁に貼られたボードには、各シンボルの価値と出現確率が表示されている。レモン、チェリー、クローバー、ベル、ダイヤモンド、コイン、セブン——上に行くほど出やすいが価値は低く、下に行くほどレアで価値が高い。タテ・ヨコ・ナナメで3つ以上の絵柄が揃うとコインを獲得できる。獲得したコインをATMに入金して利子を積み上げ、最終的に指定金額まで返済するのがゲームの流れだ。
ここまでなら普通のスロットゲームと変わらない。CloverPitがローグライトである理由は「ラッキーチャーム」の存在にある。
ラッキーチャームはスロットの確率や獲得金額を変化させるアイテムで、ゲーム内に150種類以上存在する。各デッドラインが終わると悪魔(電話番号666)からの電話がかかってくる。この電話でアビリティを取得したり、ラウンド間のショップでラッキーチャームを購入したりしながら、スロットのルールを自分好みに「歪める」のがCloverPitのゲームプレイの核心だ。
最初はただのスロットゲームかと思ったら、チャームの組み合わせ次第でスロットマシンが別物になる。「これはスロットの皮を被ったビルド構築ゲームだ」と気づいてから止まれなくなった。
引用元:Steamレビュー(日本語)
ラッキーチャームの効果は多彩だ。たとえば「ホースシュー(馬蹄)」は、ランダムで発動するチャームの発動頻度を2倍にする。「フェイクコイン(偽コイン)」は10%の確率でスピンを追加する。この2つを組み合わせると、偽コインの発動確率が実質20%になってスピン回数が大幅に増える、というシナジーが生まれる。こういったチャーム同士の相互作用を見つけ、強いビルドを組むことが攻略の醍醐味だ。
序盤から中盤にかけてはデッドラインのノルマが低いので、チャームを集めながら試行錯誤できる余裕がある。しかし後半になると要求金額が急激に跳ね上がり、弱いビルドではまったく歯が立たなくなる。「チャームの相乗効果でスロットをバグらせる」くらいの強さがないと、後半のデッドラインは乗り越えられない。このスケール感がプレイヤーを「もっと強いビルドを探そう」という欲求に駆り立てる。
同じようにビルドを組んで数字をインフレさせていく楽しさを持つゲームとして、デッキ構築型ローグライクのパイオニアがある。

ホラー要素と世界観——悪魔の電話と隠された真実
CloverPitはゲームプレイの構造だけでなく、世界観とホラー演出の作り込みでも評価されている。薄汚れた独房、スロットマシンの錆び、ATMに表示される無慈悲な返済額——プレイヤーは最初から「借金で身動きが取れない人間」として独房に閉じ込められている設定だ。
各デッドラインの後には「666」から電話がかかってくる。明らかに悪魔を示唆するこの電話の主は、プレイヤーに新しいアビリティを与えたり、交渉めいたやり取りをしてくる。ゲームを進めるうちに部屋の中にある引き出しを開けられるようになり、中に入っているものを集めていくと、徐々にこの独房の正体と自分の置かれた状況が明らかになっていく。
さらに進めると、赤い文字の電話が別途かかってくるようになる。この電話は通常の悪魔とは異なり、ギャンブルへの誘惑を押し付けてくる。高リスク・高リターンな選択肢を提示してくるが、ここでの選択がエンディングに影響する。CloverPitには複数のエンディングが存在しており、「通常脱出」「ゲームオーバー」以外にも、特定の条件を満たすことで到達できる「真エンディング」が隠されている。
真エンディングへの道は単純ではない。部屋の中に隠された5つの「遺体の部位(ボーン)」をすべて集め、赤い電話を3回無視し、スロットに「666」が揃った後に特定の行動をとる必要がある。隠しエンディングを解放すると、壁に書かれた数字が「00」から「01」に変わり、さらに真エンディングを重ねるごとに数字が増えていく。このメタ的な演出が、プレイヤーを「もう一度クリアしよう」という気持ちにさせる仕掛けになっている。
なお、スロットで「666」が揃う通常の演出はペナルティが発生する(それまでに貯めたコインが没収される)。しかし「999」と表示された場合はペナルティなしで大きな報酬を得られる確変状態になる。この数字の対比も、ゲームのホラー的世界観と見事に合致している。
Buckshot Rouletteのあのヒリつき感に近いものを感じた。スロットを回すたびに「次で床が開くかもしれない」という緊張感が常にある。でもそれが気持ちいいんだ。
引用元:Steamレビュー(英語レビューより)
ゲームのビジュアルはあえてローファイな作りになっている。テクスチャはザラついており、照明は暗く、部屋全体がくすんだ色調でまとめられている。最初はチープに見えるかもしれないが、このビジュアルスタイルがホラーとしての雰囲気作りに貢献している。「高品質グラフィックのスロットゲーム」より「錆びついた地下室のスロット」の方が、借金で追い詰められた感覚をより強く伝えられる。Panik Arcadeの意図的な選択だと思う。
Buckshot Rouletteが好きで「銃でなくスロットで命をかける感覚」が気になる人には刺さるだろう。あのゲームの緊張感を異なる形で体験できる作品として、CloverPitは良い選択肢だ。
「Balatro × Buckshot Roulette」という評価は正しいのか
開発元のPanik Arcadeはプロモーション段階から「Balatoと Buckshot Rouletteの悪の産物」と自称していた。これは実際にゲームをプレイした感覚と比較して、どこまで正確な表現なのかを考えてみたい。
Balatoとの共通点はビルド構築によるインフレ感だ。Balatoはトランプのジョーカーを組み合わせて点数をインフレさせていく。CloverPitはラッキーチャームを組み合わせてスロットの出目をインフレさせていく。「弱いアイテムの組み合わせが、特定の組み合わせで突然爆発的に強くなる」という快感は非常に似ている。また、シナジーを見つけたときの「あ、これが噛み合った」という感覚も共通している。
ただしBalatoとの決定的な違いは「プレイヤーの直接的なコントロール量」だ。Balatoはデッキから引いたカードをどう使うか、どの順番で出すかをプレイヤーが決める。CloverPitはスロットを回すだけで、出目に直接介入できない。チャームで確率を操作できても、最終的には出目次第という運の要素が強く残る。
Buckshot Rouletteとの共通点はヒリつき感だ。「次のラウンドで返済できなければ終わる」という緊張感は、ショットガンを撃つたびに「当たれば死ぬかもしれない」というBuckshot Rouletteのそれと構造が似ている。どちらも「次の一手で詰むかもしれない」という状況をゲームが意図的に作り出している。
ビルド型のローグライトとして、カードゲームとの相性が気になる人にはデッキ構築ゲームも面白い選択肢だ。

結論として「Balatro × Buckshot Roulette」という表現は、クリエイターのマーケティング的な誇張を含みつつも、ゲームの本質を伝えるキャッチコピーとして機能している。Balatoのビルド構築の快感と、Buckshot Rouletteの死の緊張感が確かに同居している。ただし、どちらともまったく同じではなく、CloverPitとしての独自性も持っている。
特に「スロット」という題材選択が独自性の源泉だ。スロットは「コントロールできない運」の象徴であり、それをチャームで少しずつ「コントロールしようとする」プレイヤーの行動との対比が、このゲームの根本的な面白さになっている。「ギャンブルに抗おうとしているが、結局ギャンブルをやっている」という皮肉な感覚を、ゲームが意図的に演出している。
ラッキーチャームの世界——150種類のシナジーを探す
CloverPitを語る上でラッキーチャームは避けられない。このゲームの戦略性のほぼすべてがチャームの選択と組み合わせに集約されている。
チャームはショップで購入できる。ショップはラウンドの合間に利用でき、クローバーチケット(コインとは別の通貨)で購入する。ショップに並ぶチャームはランダムだが、デッドラインが進むにつれてより強力なチャームが出やすくなる傾向がある。
チャームの効果は大きく分けて4種類ある。「絵柄ブースト系」は特定のシンボルが出やすくなったり、揃ったときの獲得コインが増えたりする。「スピン追加系」は条件を満たすと追加でスロットを回せる。「コイン操作系」は獲得コインに直接ボーナスを加算する。「シナジー系」は他のチャームの効果を増幅させる。
序盤で狙いたい強力なチャームとして、コミュニティではいくつかの定番が知られている。「トレイン(列車)」はスロットに同じ絵柄が続けて出るとコンボが発生し、コインが雪だるま式に増える。「ペッパー(唐辛子)」は特定の条件でスロットのペイアウト倍率を上昇させる。「フェイクコイン(偽コイン)」は追加スピンの確率を上げる。これらは序盤から出れば強い定番チャームだが、チャームのアンロックが進むと全体のプールに追加されるため、目的のチャームに出会える確率が徐々に下がっていく。
強いチャームを知っていても出ないのがこのゲームの本質。わかってはいるけど、それでも毎回「今度こそトレインが出るかも」と思ってショップを開いてしまう。
引用元:Steamレビュー(日本語)
チャームのシナジー探しは、このゲームの最も深い楽しみ方のひとつだ。たとえば「クローバーポット(クローバーの壺)」はクローバー絵柄が揃うと大量のコインを生み出すが、「フォーリーフクローバー(四葉のクローバー)」でクローバーの出現率を上げると爆発的な稼ぎになる。「ループビルド」と呼ばれる、スロットを回すたびに追加スピンを誘発し続ける連鎖型のビルドはバージョン1.2で弱体化されたが、それ以外にもフルーツバスケット系や7絵柄シナジーなど複数の強ビルド方向性が存在する。
チャームの数が160種類以上になると、序盤のショップで狙ったチャームに出会える確率は2.5%まで下がる。初期の約35種類しかない状態の11%と比べると、狙い打ちは難しくなる。「アンロックが進むほど欲しいチャームが出にくくなる」という逆説的な感覚は、このゲームの意図的な設計なのか、それとも課題なのかは判断が難しいところだ。
エンドレスモードではハイスコアを目指しながらチャームを積み重ねていける。デッドラインに縛られず、どこまでスロットをインフレさせられるかを試す遊び方だ。エンドレスモードでのハイスコア争いがコミュニティの話題の中心になることも多い。バージョン1.4のアップデートではオンラインリーダーボードが追加され、通常モードとハードモード、DLCあり/なしで別々のランキングが設置された。
インフレするビルドを組む楽しさが好きなら、クリッカー要素に放置型の進行が組み合わさったゲームも似た満足感がある。

発売初日から話題になった理由——ウィッシュリスト50万件の期待
CloverPitは2025年9月26日にSteam正式リリースされる前から、すでに大きな注目を集めていた。体験版(デモ)が50万ダウンロードを超え、ウィッシュリスト登録は50万件以上に達していた。これはインディーゲームとしては異例の数字だ。
なぜここまで注目されたのかを振り返ると、「コンセプトの明快さ」が大きかったと思う。「スロットで借金を返済するローグライトホラー」というゲームの説明を聞いた瞬間に、ゲーム性のイメージが浮かびやすい。Balatoが「トランプで点数を積み上げる」という説明でバイラルしたのと同様に、CloverPitも「スロットでビルドを組む」というシンプルで具体的な説明がSNSで広がりやすかった。
2025年4月のTriple-i Initiativeというインディーゲームショーケースイベントで初公開されたのが最初だ。「Balatoと Buckshot Rouletteが合体したような悪の産物」というコピーが話題になり、そこから半年でウィッシュリストが急増した。体験版の出来が良く、プレイした海外ストリーマーたちが「デモとして最高クラス」「今まで遊んだデモの中でもトップレベル」と評価したことも追い風になった。
正式リリース当日の同時接続は1万人超え。翌日もプレイヤーが増え続け、最大同時接続は約2万1,000人に達した。Steamの全ゲームランキングでも上位に位置するほどの人気で、4日間で販売本数30万本という記録も残した。
余談として、当初は2025年9月3日にリリース予定だったが、「Hollow Knight: Silksong」のリリース発表と重なったことで延期した。開発元はその理由を「We like a gamble, but this one is too risky(ギャンブルは好きだが、これは賭けすぎだ)」とコメントした。ゲームのテーマに掛けたジョークで、コミュニティには好意的に受け取られた。
リリース直後のSteamレビューでは97%が好評で「圧倒的に好評」を達成。その後アップデートによるバランス変更で一部プレイヤーが離れ、現在は全体レビューで91〜94%前後の「非常に好評」を維持している。
同じ時期に爆発的に売れたカジュアル系インディーゲームとして、シンプルなゲームループで中毒性を出すことに特化した作品がある。

プレイヤーを沼にはめる中毒メカニズム
CloverPitが「中毒性が高い」と言われる理由を、ゲームのメカニズムから分解してみたい。単純に「スロットが面白い」ではなく、設計が意図的に「もう1回」を促す構造になっている。
まずランがそれほど長くない。デッドラインを乗り越えられずにゲームオーバーになっても、次のランをすぐに始められる。1ランの所要時間は序盤のランなら10〜20分程度で終わることもある。「もう1回だけ試そう」が実行可能なコストで済むため、リセットのハードルが低い。
次に「あと少しで強いビルドになれた」という惜しさがある。ゲームオーバーになる直前、「もしあのラウンドであのチャームが出ていたら」という後悔が残る。この「惜しかった」感覚がリトライ意欲を生む。Balatoプレイヤーが「次こそ理想のデッキを完成させる」と思い続けるのと同じ心理だ。
また、ランごとに異なる展開になる。序盤のショップで何が出るかで、そのランの方向性が決まる。「今回はフルーツ系で行ける」「今回は7絵柄シナジーを狙おう」という判断が毎回変わるため、飽きが来にくい。完全に同じランが繰り返されることはほぼない。
さらにアンロック要素の存在が継続プレイを促す。ゲームを進めるとメモリーカードが解放され、次のランでの初期条件が変わったり、新しいチャームがプールに追加されたりする。「次のアンロックまでもう少し」という動機がプレイを続けさせる。
気づいたら5時間経ってた。スロットを回してるだけなのに、なぜか止められない。「もう1回だけ」が本当に「もう1回」で終わったことが一度もない。
引用元:Steamレビュー(日本語)
ただし、この中毒性には裏面もある。「もう1回」が止まらなくなる感覚は、開発元のPanik Arcadeが意図的に設計したものだ。借金返済というテーマ、悪魔からの電話、ギャンブルへの誘惑——ゲームの世界観がリアルのギャンブル中毒と意図的に並行している。「ゲームは本物のギャンブルではない」と開発元自身が明記しているが、それはメタ的な意味でゲームの「ギャンブル的な引力」を認識しているからこそだと思う。
「やめ時がわかりにくい」ゲームとして設計されているからこそ、プレイ時間のコントロールは意識しておいた方がいい。「もう1回だけ」が永遠に続くループに入ったことに気づいたら、ゲームオーバーになったタイミングでいったん休憩する、という習慣が長く楽しむコツかもしれない。
カジュアルに楽しめるローグライト系で、友達と一緒に遊べるタイプが好きなら、別のジャンルのゲームも選択肢になる。

ハードモードと1.2アップデートで変わったこと
CloverPitはリリース後も継続的にアップデートが続けられており、特にバージョン1.2は大きな転換点になった。
バージョン1.2「ハードモードアップデート」は2025年11月13日に配信された。このアップデートでの最大の変更点は「ハードモード(誇大妄想)」の追加だ。ハードモードでは各デッドラインの返済ノルマが通常の2倍になる。第1デッドラインから150コインという要求額で始まり、後半になると数千コインの返済を要求されることになる。通常モードに慣れたプレイヤーでも最初は面食らうレベルの難易度設定だ。
このアップデートと同時に、それまで「壊れ」と呼ばれていたいくつかのビルドが弱体化された。特にエンドレスモードで猛威を振るっていた「タバコ(Cigarettes)ループ」は、再入荷率が80%に低下したことで以前ほどの安定性がなくなった。タバコを使った「脳死ループ」ができなくなり、より多様なビルドを考える必要が生まれた。
このバランス変更に対してはコミュニティの反応が分かれた。「強かったビルドが弱体化されて、工夫の余地が増えた」という肯定的な声がある一方、「せっかく組めたビルドが急に使えなくなった」という不満も出た。Steamレビューで一時的に低評価が増えたのは、この変更が主な理由だ。
一方でハードモードは、ゲームをやり込んだプレイヤーから概ね好評を得た。通常モードでは物足りなさを感じていた層に、新たな挑戦を提供することに成功した。「ノルマ2倍のプレッシャーで臨む緊張感が気持ちいい」という声も多く、コミュニティのハードモード攻略動画・記事が大量に生まれた。
バージョン1.3ではハードモードの細かい調整と複数の修正が加わり、バージョン1.4では2026年4月時点の最新版として、オンラインリーダーボードと初のDLC「Unholy Fusion」が同時配信された。
ハードモードは最初「無理でしょ」と思ったけど、慣れてくると通常モードに戻れなくなった。ノルマが厳しい分、チャームの選択に緊張感が出る。
引用元:Steamレビュー(英語レビューより)
開発元のPanik Arcadeはアップデート速度が速く、コミュニティの声に対して積極的に応答するスタジオだという評判がある。バランス調整の方向性については賛否が出ても、「開発が止まっていない」という安心感がプレイヤー層の信頼を維持している側面がある。
ゲームを長期にわたって楽しむローグライトとして、カード系やタワーディフェンス系など複数の選択肢を比較検討するなら、同ジャンルの人気作も参考になる。

Unholy Fusion DLC——チャームを融合させてゲームを壊す
2026年4月にCloverPit初のDLC「Unholy Fusion(邪悪な融合)」が配信された。バージョン1.4の無料アップデートと同時リリースで、価格は2.99ドル(約450円)。規模の割に安価な設定だ。
DLCのメインコンテンツは「手術マシン(Surgery Machine)」だ。これは2つのラッキーチャームを材料にして、より強力な融合チャームを生み出す新しい機能だ。2つのチャームを投入すると、それぞれの特性を掛け合わせた「融合チャーム」が生成される。30種類のユニークな融合チャームが実装されており、ベースのチャームの組み合わせ次第でどの融合チャームが生まれるかが変わる。
Unholy Fusionに含まれるコンテンツは以下の通りだ。融合チャーム30種類に加えて、新規ベースチャーム11種類、シンボル(絵柄)のルールをさらに歪める「シンボルモディファイア」4種類、新しい電話アビリティ、メモリーカード7枚、そして秘密のフィナーレが含まれる。
コミュニティからの反応は概ね肯定的だ。「既存のチャームで作れるビルドの上限がさらに上がった」「融合の組み合わせを試すのがまた楽しい」という声が多い。一方、「ベースゲームでも十分楽しめるので、DLCの必要性は薄い」という意見もある。DLCが必須という作りではなく、ベースゲームに満足してさらに遊びたいプレイヤー向けの拡張という位置づけが妥当だろう。
オンラインリーダーボードはDLC/非DLCで分けられているため、DLCを購入しなくても通常のランキングでは平等な条件で競える。この判断はコミュニティから好意的に受け止められた。
正直に言うとここが気になる——批判的な視点から見たCloverPit
良い点を書いたので、不満点や課題についても正直に書いておきたい。CloverPitは高評価を得ているゲームだが、すべての人に向いているわけではないし、改善の余地がある部分も存在する。
最も多い批判は「運ゲー感の強さ」だ。チャームで確率を操作できるとはいえ、最終的にはスロットの出目に左右される。「強いビルドを組めても、肝心な場面で絵柄が揃わない」という状況は誰でも経験する。特に難易度が上がる後半のデッドラインでは、チャームの差以上に出目の運が結果を左右することがある。「努力が報われない」と感じる瞬間が定期的に来る。
「初手ゲー」という指摘もある。序盤のショップで何が出るかで、そのランのポテンシャルがほぼ決まるという側面がある。強いチャームが出なければ後半が詰む可能性が高まるため、「最初のショップを見てダメそうならリセット」というプレイスタイルをとるプレイヤーも少なくない。
アンロックが進むほどチャームプールが膨らみ、目当てのチャームに出会いにくくなる問題はバージョン1.2以降も続いている。全チャームアンロック後の2.5%という出会い確率は、特定のビルドを狙う場合のストレスになり得る。
全部解放したら逆に弱くなった。欲しいチャームが全然出ない。もう少し確率を調整してほしい。
引用元:さるサルゲームぶろぐ(レビュー記事より)
また、ゲームの深さとしてBalatoと比較すると「ビルドの多様性」が少ないという意見もある。Balatoはジョーカーの組み合わせが膨大で、毎ランまったく異なる戦略を取れる。CloverPitはチャームの数が多くても、強いビルドの方向性がある程度収束する傾向がある。「結局強いのはトレインかフルーツバスケット」という飽和感を感じるプレイヤーも存在する。
ホラー要素については好みが分かれる部分もある。ゲームプレイとホラー演出が完全に統合されているわけではなく、「スロットゲームとしての面白さ」と「ホラー要素」が別々に楽しめる設計になっている。ホラーが苦手な人でも、ゲームプレイ自体は純粋に楽しめる設計だが、ホラーを期待して買うと「そこまで怖くない」と感じる可能性もある。
総合すると、CloverPitは「運とビルド構築の快感を楽しめるかどうか」が評価の分かれ目だ。運ゲー要素を許容できるプレイヤーにとっては中毒性の高い傑作で、「技術で全てをコントロールしたい」タイプのプレイヤーには合わないかもしれない。
動物たちを育てながら陣地を広げるシンプルなゲームループが好きな人には、また違うタイプのゲームも楽しめる。

スマホ版とXbox版——プラットフォーム展開とその評価
CloverPitはSteamだけでなく複数のプラットフォームに展開されている。Xbox Series X/Sバージョンは2025年11月20日にXbox Game Passのデイワンタイトルとしてリリースされた。Game Passへの収録は販売本数の上積みとは別に、プレイヤーベースを広げる効果があった。
スマホ版はiOS・Androidで2025年12月17日に配信された。価格はiOS版800円、Android版850円で、ゲーム内課金なしの買い切り型だ。Steamでプレイしたユーザーからは「スマホでもサクッと遊べる」という声があり、通勤中や短い隙間時間でのプレイに適している。
ただし注意点がある。スマホ版が配信される前から、ゲーム内課金を組み込んだ悪質な偽アプリが出回っていた。開発元のPanik ArcadeはSNSで注意喚起を行った。公式スマホ版はゲーム内課金が一切なく、買い切り型だという点が正規品の目印になる。
スマホ版の操作感については、スロットをタップ操作で回す形式で、PC版と比べてもゲームプレイに支障はない。ただしチャームの効果や詳細な情報を確認するときは、小さい画面では若干見づらい場面もある。PC版と比較してグラフィック品質の差は感じにくく、ゲームの本質的な体験はどのプラットフォームでも同等に楽しめる。
マルチプラットフォーム展開によって、SteamのPC版リリース時には日本語レビュー591件中80%が好評という数字だったが、現在はさらにレビュー数が増えている。スマホ版でのアクセシビリティ向上がプレイヤー層を広げた側面もある。
スマホでもPCでも楽しめるカジュアル系ゲームとして、気軽に遊べて長続きするタイプが好きなら、他の選択肢も参考になる。

こんな人に向いている、こんな人には刺さらない
CloverPitは特定のプレイヤー層に強くアピールするゲームだ。どんな人に向いているかを整理しておく。
向いている人は、まず「ローグライトでビルド構築が好きな人」だ。BalatoやSlay the Spireでデッキを完成させていく快感が好きなら、CloverPitのチャーム組み合わせも同じ快感を提供してくれる。インフレしていく数字を眺めながら「ここまで積み上げられた」という達成感も共通している。
「短いセッションで遊びたい人」にも向いている。1ランが20〜40分程度で終わることが多く、長時間プレイが難しい社会人や学生でも「今日は2ランだけ」という遊び方がしやすい。スマホ版があるため、移動中の短い時間でも遊べる。
「ヒリつき感が好きな人」にも刺さる。返済できなければ即座に床が開くという設計は、緊張感を絶やさない。「Buckshot Rouletteで死ぬかもしれない緊張感が好き」という人には、その感覚の別バージョンとして楽しめる。
反対に向いていない人もいる。「技術で全てをコントロールしたい人」には運の要素が強すぎると感じるかもしれない。スロットというシステム上、どれほど優れたビルドを組んでも最終的な出目は運に委ねられる。「努力が結果に直結するゲームが好き」というタイプには、このゲームのコア部分が合わない可能性がある。
「ホラー雰囲気が得意でない人」については、CloverPitのホラー要素は背景設定とビジュアルの雰囲気であり、Outlastのような直接的な恐怖体験ではない。びっくり要素もそれほど多くはないが、暗い独房のビジュアルや悪魔的な演出が苦手な人には向かないかもしれない。
「ガッツリ長時間遊びたい人」には、1ランあたりのボリュームが少し物足りない可能性がある。デッドラインを越えていくプレイ時間は、1クリア換算で最長でも数時間程度だ。真エンディングや全実績を目指すやり込み要素はあるが、Balatoのような膨大なビルド多様性を期待すると少し違うかもしれない。
スロット好きとローグライト好きを足して2で割ったような設計。どちらのファンでも楽しめるが、どちらのファンも「完璧ではないな」と思う部分がある。それでも中毒性があって結局毎日起動してる。
引用元:Steamレビュー(英語レビューより)
CloverPitが2025年のインディーシーンに残したもの
CloverPitは2025年9月のリリースから半年で100万本を売り上げ、Xbox版・スマホ版への展開も果たした。イタリアの小規模スタジオPanik Arcadeが作ったインディーゲームが、これほど短期間でこれほど多くのプレイヤーに届いた事実は、2025年のインディーゲームシーンの中でも特筆すべき出来事だ。
CloverPitの成功は「コンセプトの明快さ」と「バイラルしやすいキャッチコピー」の組み合わせで説明できる部分が大きい。「スロットで借金返済するローグライトホラー」というゲームの説明は、一文でゲーム性と雰囲気を伝えられる。「Balato × Buckshot Roulette」という比較表現は、すでにその2タイトルを知っているゲーマーにとって即座にイメージが湧く。この説明の明快さが、SNSでの拡散を助けた。
Panik Arcadeはデモ段階から積極的にフィードバックを収集し、正式リリース後も継続的なアップデートを行ってきた。バランス変更に対して不満が出るたびに素早く反応し、コミュニティとの対話を続けている姿勢が、プレイヤーの信頼を維持する上で機能している。
また、2026年4月にDLC「Unholy Fusion」をリリースしたことで、ゲームの寿命がさらに延びた。新しいチャームと融合システムが加わったことで、やり込んだプレイヤーが再び戻ってくる理由が生まれた。
CloverPitが2025年のインディーシーンに示したのは、「シンプルなゲームループ+明快なコンセプト+既存の人気ゲームとの接続」が、小規模スタジオでも大ヒットを生む組み合わせになり得るということだろう。この方程式はBalatoが先に証明したものだが、CloverPitはそれを異なるジャンル(スロット)で再現してみせた。
ゲームとしての完成度を語るなら、CloverPitはすべてを持っているわけではない。運ゲー感、チャームプールの問題、ビルド多様性の限界——これらは今後のアップデートで改善の余地がある部分だ。しかしリリース時点での完成度と、継続的な改善の姿勢は、1,200円というSteamでの価格に対して十分な価値を提供している。
「スロットを回して借金を返す」という設定だけ聞くと地味に聞こえるかもしれない。でもプレイしてみると、気づいたら数時間が溶けている。それがCloverPitというゲームだ。
まとめ——CloverPitは買いか?
CloverPitは1,200円(2026年4月時点、セール時はさらに割引あり)で購入できるインディーゲームだ。このゲームが自分に合うかどうかを一言で言うなら、「ローグライトとスロットとホラーを同時に楽しめる人向け」という結論になる。
3つ全部好きなら間違いなく買いだ。100万本以上売れているゲームが「非常に好評」以上の評価を維持している事実は、多くのプレイヤーの体験に裏付けられている。プレイしてみて面白くなかった、という報告は少ない。
3つのうち1〜2つが好きなら、デモをプレイしてみることをすすめたい。現在もデモ版が利用できるため、課金前に体験できる。デモの評判が「デモとしての完成度が高い」と言われているゲームだけに、体験版で合うかどうかを確かめてから判断するのが確実だ。
ビルド構築ローグライトが好きで、運の要素を許容できるなら、CloverPitは2025〜2026年のインディーゲームの中でも特に「もう1回」を誘発し続ける設計が完成しているゲームのひとつだ。デッドラインの返済期限が近づいてくるあのヒリつきを、ぜひ自分で体験してみてほしい。
1,200円に対して明らかに遊びすぎた。「やめよう」と思っても「もう1ランだけ」が永遠に続く。開発者に全部持っていかれた気持ち。でも後悔はない。
引用元:Steamレビュー(日本語)
CloverPit
| 価格 | ¥1,200-30% ¥840 |
|---|---|
| 開発 | Panik Arcade |
| 販売 | Future Friends Games |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows |
| プレイ形式 | シングル |
