Cities: Skylines II|100万人都市を育てる深すぎるシム

道路を一本引いた。住宅区画を設定した。最初の市民が引っ越してきた。
「ちょっと待って、この道路、もうちょっと広くしておくべきだったかも」——そう思い始めた瞬間から、数時間が蒸発していた。気づいたらラッシュアワーの渋滞を眺めながら、信号のタイミングを1秒単位で調整している自分がいる。今日はもう5時間が溶けた。でも渋滞が解消された瞬間の達成感は、何にも代えられない。
これがCities: Skylines II(シティーズ:スカイライン II)というゲームの引力だ。
2023年10月24日にリリースされた本作は、フィンランドのColossal Orderが開発した都市建設シミュレーションだ。2015年にリリースされた前作「Cities: Skylines」の正統続編で、Steamでの最高同時接続数は約10,484人を記録している。発売から2年以上が経過した現在、大型アップデートを重ねてゲームとしての完成度は別物レベルに向上した。
「発売当初はパフォーマンスが酷かったと聞いているけど、今はどうなの?」「前作との違いって何?」「どれくらいのPCスペックが必要?」「初心者でも楽しめる?」——そういった疑問を持っている人のために、ゲームの全貌を正直に書いていく。市民一人ひとりのAIから、交通渋滞の解消法、Economy 2.0での大改革、序盤の攻略コツ、MOD環境まで。全部まとめていく。
こんな人にハマる
- 「計画→建設→観察」の繰り返しに無限の楽しさを感じる人
- 渋滞を見ると解消したくて仕方なくなる人
- Minecraftで街づくりにはまった経験がある人
- SimCityやA列車シリーズが好きだった人
- 住民の生活動線を観察していたい人
- MODで何十時間でも遊べるコンテンツ量を求めている人
- 「完成」のない開かれた目標でのんびり遊びたい人
- 電車・バス・交通ネットワーク設計が好きな人
こんな人には合わないかも
- アクションや戦闘がないと物足りない人
- 短時間でサクッとクリアしたい人
- 明確なストーリーを楽しみたい人(ほぼない)
- PCスペックが低めの人(要求スペックがかなり高い)
- 最初から完成形を求める人(育てていく過程を楽しむゲーム)
- コンソールでプレイしたい人(現在PS5/Xbox版は無期限延期中)
Cities: Skylines IIとはどんなゲームか——全体像
一言で言えば「市長になって街をゼロから育てるシミュレーション」だ。ただ、この一言ではまったく伝わらない部分がある。
道路を引いて、ゾーンを設定して、電気と水道を整備する。住民が来たら商業施設を増やし、工場を誘致し、公共交通機関を整備する。人口が増えたら学校、病院、警察署、消防署が必要になる。収支が悪化したら税率を調整し、補助金を検討する。渋滞が起きたら交差点の設計を見直す。ゴミが溢れたらゴミ処理場を増設し、収集ルートを最適化する。これらが複雑に絡み合って、プレイヤーの街が動いている。
前作で都市シム界に革命を起こした「Cities: Skylines」から8年。続編となるCities: Skylines IIは、市民シミュレーション、交通AI、経済システムのすべてを根本から作り直した野心作だ。住民は一人ひとり固有のAIを持ち、仕事に行き、買い物をし、余暇を楽しみ、年をとって引退する。市民個人を追いかけて「この人の今日のスケジュール」を観察する機能まで搭載されている。
このゲームはシングルプレイ専用だ。競争もPvPもない。ただ自分の街と向き合い続ける。なのに「終わった」という感覚が来ない。街は生き物で、永遠に改善できる余地がある。それがこのゲームが数百時間プレイヤーを生み出す理由だ。
ゲームを起動するたびに、前回と違う問題が待っている。「昨日は交通渋滞を解消したから今日は経済を見直そう」と思って開くと、ゴミ処理が限界に達していたり、大気汚染で住宅地の幸福度が急落していたり、電力が不足し始めていたりする。予定と違う問題が出てくるのが常態だが、それを「また問題が出た」と捉えるのではなく「次は何を解決する?」という感覚で楽しめると、このゲームとの付き合い方がわかってくる。都市は常に変化している——その変化に寄り添っていく感覚が、このゲームの根幹にある。
マップの種類も豊富で、プレイスタイルによって選べる。平坦なマップは道路設計がしやすく初心者向き。山地や川が多いマップは地形を活かした設計の楽しさがあり、中級者以上向けだ。海に面したマップは港湾都市を作れて、将来の「Bridges & Ports」DLCとの相性が良い。マップ選択だけでも、自分がどんな都市を作りたいかを考えるプレセッションが始まる。
夜景の美しさも特筆しておきたい。ゲーム内には時間帯のサイクルがあり、朝・昼・夕・夜と街の表情が変わる。夜になると建物に照明が灯り、道路に車のヘッドライトが走る。フォトモードで夜の街を撮影すると、現実の都市写真と見紛うほどの仕上がりになることがある。「プレイするゲーム」であると同時に「見るゲーム」でもある——この視覚的な満足感が、長時間プレイを支えている。ゲーム内に自分が育てた街の景観が生まれると、ゲームを閉じたくなくなる。公園に人が集まり、橋の上で車が行き交い、夜空の下でビル群が輝く——その光景が「自分が作った街だ」という実感を与えてくれる。
ゲームの成長は「マイルストーン」と呼ばれるシステムで管理される。前作では単純に人口が増えれば自動で施設がアンロックされたが、今作ではXP(経験値)を蓄積して達成する仕組みに変わった。マイルストーンは「ちっぽけな村」から「メガロポリス」まで全部で20段階ある。XPは道路を敷設したり、新たな設備を設置したり、ゾーン設定をしたり、住民の幸福度が上昇したりすることで獲得できる。単に人口を増やすだけでなく、「市民が満足している街」を作ることがXP獲得の近道だ。
各マイルストーンでは金銭的報酬・開発ポイント・マップの拡張権が得られる。特に「開発ツリー」システムがユニークだ。施設や道路の種類は自動でアンロックされるのではなく、マイルストーン達成で得た「開発ポイント」をプレイヤーが自分で割り振ってアンロックする。「地下鉄を早く使いたい」のか「まず公園を充実させたい」のか「産業系を伸ばしたい」のか——街のコンセプトに合わせて開発の方向性を選べる。同じゲームをプレイしても人によって全く違う街ができあがる理由はここにある。
ゲームの難易度設定は3段階ある。「イージー」では政府補助金が多めに出て財政が安定しやすく、「ノーマル」が標準的なバランス、「ハード」では資金管理が厳しくなる。都市シムが初めての人はイージーから入って、ゲームの仕組みを覚えてからノーマルに切り替えるのがおすすめだ。Economy 2.0以降はノーマルでも財政難になりやすいため、最初の1〜2時間はイージーで基本操作を覚えることをすすめる。
前作を1600時間遊んだけど、2では住民の動きが本当に変わった。通勤ルートを見ていると、こいつ毎朝この道を通ってるな、って愛着が湧いてくる
引用元:電撃オンライン レビューコメントより
市民AI——住民たちの「本物の生活」
Cities: Skylines IIで最も大きく進化した要素が、市民シミュレーションの深度だ。
前作の市民は、正直なところ「歩き回るアイコン」に近かった。ゾーンに適切な施設を置けば、なんとなく幸福度が上がって人口が増えるという仕組みだった。続編では話が違う。市民一人ひとりに名前があり、年齢があり、職業があり、ライフスタイルがある。子どもは学校に通い、若者は就職または進学を選択し、成人は働いて税金を払い、老人は引退して余生を過ごす。さらに、市民はSNSに「つぶやき」を投稿する機能まであり、街の状況についての本音が見える仕組みになっている。
市民のライフサイクルは5段階に分けられている。子ども期は小学校・中学校に通う。通学路の安全と距離が重要で、学校が遠すぎると子どもたちが通えず教育レベルが下がる。青年期は高校・大学への進学か就職を選択する。学歴は生涯の収入に影響するため、高等教育施設の整備が都市の知的水準を決める。成人期はフルタイムで働き、税金を払い、街の中心的な担い手になる。中年期は安定した生活を送るが、健康問題が起き始め病院への需要が高まる。老年期は引退し、年金生活に入る。老人ホームや公園などが幸福度に影響する。
この年齢層の分布が街の性格を決める。若者が多い街は税収が多いが医療需要も高い。老人が多い街は年金費用が増えるが、経験豊かな労働者が退場することで産業需要のバランスが崩れる。「死の波」と呼ばれる現象——特定の世代が一斉に老衰する時期に人口が急減する問題——はこのライフサイクルシステムに起因しており、都市計画で意識すべき点のひとつだ。
市民の幸福度(Happiness)は19項目のパラメーターから決まる。住民の資産、郵便サービス、医療カバー率、犯罪率、税金、家の大きさ、娯楽施設へのアクセス、小学校への距離、余暇時間、インターネット接続、渋滞の深刻さ、騒音公害、大気汚染、土壌汚染、水質汚染、水道料金、電気料金、水道サービスの質、下水システムの安定性——これらすべてが幸福度に影響する。
幸福度が低下すると市民が街を出ていき、人口が減り、税収が落ちて街が衰退するサイクルが始まる。どこが問題かを特定するため、各市民個別のプロフィールを確認したり、街全体の幸福度ヒートマップを眺めたりしながら原因を探る。「あの地区の幸福度が低い。騒音なのか汚染なのかゴミが溜まっているのか」——この診断作業が楽しい。
移動のロジックも複雑だ。経路を選ぶとき、市民は「時間」「快適さ」「費用」「行動パターン」の4つの要素を組み合わせて判断する。徒歩が一番早くても、バスが安くて楽なら公共交通を選ぶ人もいる。若い人は節約志向で自転車を選びやすく、年配者は少し高くてもタクシーを使う傾向がある。このリアルな行動パターンが、交通設計の難しさと面白さを生み出している。
キャラクターを一人選んで一日中追いかけることもできる。朝7時に自宅を出て、バスに乗り換えて会社に到着し、昼は近くのカフェで食事を取り、夜は公園を散歩してから帰宅する——そのルートをカメラで追いながら、「この人のために交通を整備した」という実感が得られる。キャラクターのプロフィールには学歴・職歴・収入・幸福度まで表示される。「税金が高すぎて不満げ」「近所にゴミ処理場があって気分が悪い」など、リアルタイムの不満が一覧できる。プレイヤーはこれを見ながら都市改善のヒントを得ていく仕組みだ。
こういう「住民の顔が見える」感覚は、The Sims 4で住民を作り込んでいくような楽しさとどこか似ている。「数百人の市民のひとりひとり」ではなく「この人の生活を改善したい」という気持ちになる。それが都市シムとしての没入感を何倍にも高めている。
市民のつぶやきには具体的な内容が書かれる。「近所に新しい公園ができた、最高」「毎朝バスが混んでいて最悪」「家賃が先月よりまた上がった」——こうした声がゲーム内の「SNSフィード」として流れてくる。街の現状を数値ではなく「声」として受け取れるため、問題への共感度が上がる。前作では「幸福度:72%」という数字を見るだけだったが、続編では「田中たかし(37歳)が通勤ストレスで幸福度が下がっています」という情報として伝わってくる。
「市民の声を直接聞きながら街を改善する」というプロセスは、ゲームとしての没入感を大幅に高めている。「誰のために街を作っているのか」が具体的に感じられるからだ。この感覚は他の都市シムではなかなか味わえない。

交通AI・道路設計・公共交通——渋滞との終わりなき戦い

Cities: Skylines IIで「絶対に逃げられない問題」がある。渋滞だ。
人口が増えるほど車が増え、交差点が詰まり、救急車が渋滞に巻き込まれて病人が手遅れになる。消防車が到達できずに建物が燃える。ゴミ収集車がたどり着けずに街が汚染される——渋滞はゲームオーバーには直結しないが、放置すると街がじわじわ崩壊していく。
このゲームの交通AIは前作より大幅に賢くなった。車は信号に合わせて動くだけでなく、複数の車線を積極的に使い分け、渋滞が起きているルートを避けて別の経路を探す。加速・制動・追い越し・車線変更・合流——これらをリアルタイムで計算しながら動く。歩行者と車が同じ交差点で交互に動く様子は、本物の街を上から見ているような錯覚を覚える。
道路設計の自由度も大幅に上がった。片側2車線、4車線、中央分離帯あり・なし、自転車レーン付き、路面電車が走る道など、選択肢が豊富だ。さらに交差点ごとに車線の優先度、右折禁止、バスレーン設定などを細かく調整できる。MODの「Traffic」を入れると、さらに詳細な制御が可能になる。
道路設計で最も多いプレイヤーの悩みが「T字路か十字路か、ラウンドアバウトか」という問題だ。シンプルな格子状の街は管理しやすいが、すべての交差点が信号機になるので渋滞しやすい。一方でラウンドアバウト(環状交差点)は、信号待ちがなく常に流れ続けるため渋滞に強い。ただしラウンドアバウトは設置面積を取るため、密度の高い都心部には向かない。郊外や主要交差点での活用が定番だ。
ラウンドアバウトを作ったら渋滞が嘘みたいに解消された瞬間の快感は異常。あれだけで30分溶けた
引用元:Steamレビュー(日本語)
高速道路の設計も重要な要素だ。インターチェンジの設計を間違えると、高速を降りた車が一斉に一般道に流れ込んで詰まる。「高速は速い、でも降り口を作りすぎると詰まる」という現実の道路と同じ問題が起きる。インターチェンジの場所と数のバランスが、都市の交通流量を左右する。
公共交通機関のシステムも一新された。バス、地下鉄、路面電車、モノレール、船、飛行機——それぞれのルートを設定し、停留所を置き、ダイヤを調整する。乗り換えノードを作って市民がスムーズに移動できるネットワークを設計するのが、このゲームの大きな楽しみのひとつだ。
路線ごとの乗客数・収益・コストがリアルタイムで見える。赤字路線はどこか確認して路線の見直しや廃止を検討するなど、交通ビジネスとしての側面もある。各交通手段の特性をまとめておく。バスは安価で柔軟に路線変更できるため、序盤から中盤にかけての主力だ。路面電車は大量輸送ができて地上を走るが、道路スペースを占有する。地下鉄は設置コストが高いが大量輸送かつ地上交通を邪魔しないため、人口10万を超えてから真価を発揮する。モノレールは中量輸送で観光地的な演出にも使える。船はマップに河川や海がある場合の選択肢で、港湾エリアの発展に貢献する。
「乗り継ぎハブ」の設計が上手くなると交通が飛躍的に改善される。バスから地下鉄への乗り換えをスムーズにするため、ハブ駅の近くにバス停を集中させる。市民が乗り換えやすいネットワークを作ると、自然と車の利用者が減って渋滞が緩和されていく。公共交通は最初は赤字になりやすいが、利用者が増えるにつれて採算が取れるようになる。短期的な赤字を許容して長期的な交通インフラを整える判断が、中盤以降の重要な意思決定になる。
交通設計のセオリーとして「TOD(Transit-Oriented Development)」という考え方が有効だ。駅や主要バス停の周辺に高密度住宅とオフィスを集中させ、郊外は低密度住宅にする——これにより公共交通の利用率が上がり、渋滞が減りやすくなる。現実の都市計画でも採用されているアプローチで、Cities: Skylines IIではそれをゲームの中で実験できる。「理想の都市計画を試す場所」として楽しめるのも、このゲームの魅力のひとつだ。
この交通設計の楽しさは、Total Warシリーズで戦略マップを読み解きながら兵站を管理する思考の深さとは異なる。より「生活者目線」の問題解決で、「市民の通勤時間を短くしてあげたい」という動機で設計する感覚だ。交通が上手く機能している街を眺める達成感は、このゲームならではのものだ。

インフラ管理——電力・水道・ゴミ・汚染の全貌
交通と並んで都市建設の根幹をなすのが「インフラ管理」だ。Cities: Skylines IIでは電力・水道・ゴミ・公害の4つがインフラ管理の中心となる。これらを放置すると街が静かに崩壊していく——しかも一度に複数のインフラが連鎖して崩れることがあるため、常に状況を把握しておく必要がある。
電力システム
電力は「低圧」と「高圧」の2種類がある。序盤に使う風力発電機や太陽光パネルは低圧電力を直接建物に供給する。都市が大きくなると大型の発電施設(蒸気発電、原子力など)と高圧電線を組み合わせた送電網が必要になる。
電力が不足すると建物の機能が低下し、市民の幸福度も落ちる。過剰に発電した電気は隣接エリアに売電できるため、地熱発電所などを使って電力を売りさばく「売電戦略」が序盤の黒字化定番テクニックとして知られている。地熱発電所を川や地熱エリアに設置すれば、維持費は低いのに大量発電できる——この黒字化ルートを知っているかどうかで序盤の財政が大きく変わる。
発電方法は環境への影響も考慮が必要だ。石炭発電所は安価で大量発電できるが、大気汚染が激しい。太陽光や風力は環境に優しいが発電量が少ない。原子力は安定した大量発電ができるが設置コストが高く、万が一の事故リスクもある。都市の規模と財政状況、環境ポリシーに合わせて発電ミックスを考えるのが楽しい。
上下水道システム
水道は「取水」「浄水」「供給」「下水処理」の4工程がある。川や地下水源から取水し、浄水場で処理して街に供給する。使用済みの水は下水処理場で処理してから放流する。
前作と異なり、道路を引くと自動で地下に水道管が設置される。ただし、取水ポンプと下水排水口の位置関係には注意が必要で、下流に下水を流して上流で取水すると汚染水を飲むことになる。これを知らずに病気が蔓延して大混乱になった、というのは定番の失敗談だ。「川の上流から取水して下流に排水する」——この鉄則を覚えておけば序盤の水道問題の大半は避けられる。
地下水という新要素も追加されており、河川がなくても地下水取水施設を使って水を確保できる。ただし取りすぎると地下水位が下がるため、回復を待ちながら管理する必要がある。水不足は市民の健康度を急激に下げるため、人口が増えるたびに供給能力を確認する習慣をつけておくといい。
ゴミ処理システム
人口が増えるにつれてゴミの量も増える。収集車が回収して処理施設(ゴミ焼却場、リサイクルセンター、埋め立て地)に運ぶ仕組みだが、処理能力を超えると街にゴミが溢れ始める。
ゴミが溜まると市民の幸福度が大きく下がる。それだけでなく、施設内にゴミが蓄積すると電力や水道の供給効率も落ちる——インフラが連鎖的に崩壊していく怖さがある。収集車が渋滞に巻き込まれてゴミを運べない、という問題も起きる。「ゴミ問題は交通問題でもある」という気づきが、このゲームらしい繋がりだ。ゴミ処理施設の場所と収集車のルートを最適化することも、都市計画の重要な一部だ。
大気汚染と騒音、土壌汚染
Cities: Skylines IIで新たに追加された「風向き」システムが、大気汚染の管理を前作より複雑にした。工場、火力発電所、ゴミ焼却場などから発生する排気が、風に乗って住宅地に流れ込む。汚染された空気は市民の健康度と幸福度を下げる。
マップの端に風向きの矢印が表示されるので、「工業地帯は風下に作る」という基本ルールを覚えておくと序盤のトラブルが減る。騒音公害も同様で、高速道路や工業地帯の近くに住宅地を置くと騒音による幸福度低下が起きる。防音壁を設置したり、緑地を挟んだりして緩和するのが定番だ。
土壌汚染も見逃せない。産業地帯が長期間存在すると周辺の土地が汚染される。汚染された土地に住宅を建てると市民の健康度が下がる。産業地帯を移転した後に土地が浄化されるまで時間がかかるため、最初の配置計画が重要だ。「最初に産業地帯をどこに置くか」がその後の都市設計全体に影響する。
これだけ多くのシステムが絡み合っている。最初は「こんなに覚えられない」と感じるかもしれないが、ゲームが丁寧にチュートリアルで順番に教えてくれるので、少しずつ街を育てながら自然に覚えていける。チュートリアルを終えた後も、失敗しながら試行錯誤する過程そのものが楽しい。
インフラ管理で面白いのは「すべてが繋がっている」という点だ。電力不足が起きると水道ポンプが止まり、水不足が起きると市民の健康度が落ちる。健康度が落ちると病院の需要が急増して医療費が膨らみ、財政が悪化する。財政が悪化すると施設の維持費が払えなくなり、インフラ全体が劣化する——という連鎖崩壊が起き得る。この危機を早期に察知して対処するのが上級者の腕の見せどころだ。
インフラの「見える化」ツールがよくできている。電力の供給状況ヒートマップ、水道圧力の可視化、大気汚染の拡散マップ、土壌汚染の分布図、交通量の色分け表示——これらを切り替えながら街の状態を把握する。問題のある場所が視覚的に一目でわかるため、どこを修正すればいいか迷いにくい設計になっている。
Economy 2.0——大型無料アップデートで生まれ変わった経済

2024年6月24日、Colossal OrderはCities: Skylines IIに「Economy 2.0」と呼ばれる大型無料アップデートを配信した。
発売当初から指摘されていた経済システムの問題——政府補助金に頼りすぎた設計、家賃の計算ロジックの崩壊、住民が際限なく家賃を払い続けて街が黒字になりすぎる問題——これらをほぼ全面的に作り直したアップデートだ。Colossal Orderはこのアップデートを発表するにあたって「発売当初の経済システムは機能していなかった」と率直に認めた。その誠実さが、多くのプレイヤーに好意的に受け止められた。
Economy 2.0の主要変更点を整理する。まず「政府補助金の廃止」だ。ノーマルモードでは序盤の「お金が無限に出てくる補助金」がなくなり、財政管理が本物の難題になった。イージーモードでは一部補助が残る。次に「家賃計算の刷新」——「地価 × 区画タイプ × 建物レベル × 土地サイズ」という公式に基づく家賃体系になり、高級住宅地は本当に家賃が高くなる。低収入市民が高地価エリアに住めなくなる現象が発生するようになった。
「教育システムの改善」も大きな変化だ。子どもは必ず小学校に通うようになり、住民の学歴分布が適切に機能するよう調整された。教育施設の重要性が増した。さらに「需要と供給の見直し」で商業・工業・オフィスゾーンの需要バランスが現実的な数値に調整された。以前は工業ゾーンの税収が不自然に高すぎたが、修正されてより現実に近いバランスになった。
Economy 2.0以降、財政黒字化の難易度は上がった。発売初期は「とりあえず住宅と商業を建てていれば勝手に黒字になる」という感じだったが、今は税収と維持費のバランスを真剣に考えないと赤字が続く。住宅税率の設定が特に重要で、あまり高く設定すると新しい市民が来なくなり、既存の市民も出ていく。Economy 2.0以降の推奨は「住宅税を10%前後に抑えて、商業・産業税でカバーする」という方針だ。
序盤の黒字化には「売電戦略」が有効だ。地熱発電所や風力発電機を多めに設置して余剰電力を隣接エリアに売る。これだけで序盤の赤字を一気に解消できることがある。知っているかどうかで序盤の難易度が全然違う。
Economy 2.0には「既存セーブへの影響」という副作用もあった。古いデータに適用すると高齢市民の大量死亡——いわゆる「死の波」が発生するケースが続出した。新システムに合わせた住民の年齢分布再計算が原因で、ある時期に街に引っ越した市民が同時期に老衰で亡くなる現象だ。対策としては、あらかじめ墓地・火葬場・病院を増設しておくことが有効だ。
Economy 2.0を当てたら瞬間的に人口が2割近く消えた。病院が溢れて収支も崩れて一時はパニックだったけど、立て直したあとの街は明らかに動きが自然になった
引用元:Steamコミュニティフォーラム
2024年12月には「パッチ1.2.0f1」がリリースされ、さらに安定性が向上。2025年1月の「1.2.3f1」でも細かいバグフィックスが続いている。発売当初から比べると、ゲームとしての完成度は別物と言っていいレベルまで改善されてきた。
ゾーニングの設計もEconomy 2.0以降はより重要になった。7種類のゾーンそれぞれに適切な配置がある。低密度住宅は郊外の静かな場所に、高密度住宅は地下鉄駅の近くに、オフィスゾーンは高地価エリアに、産業ゾーンは風下の郊外に——こうした配置の「理屈」がゲーム内の経済に反映されるようになった。「なぜここに何を置くか」を考えながら設計する楽しさが増している。
地価の仕組みも理解しておくと有利だ。公園・学校・警察署の近くは地価が上がる。反対に、産業地帯・高速道路・ゴミ処理場の近くは地価が下がる。地価が高いエリアには高収入の住民が来て税収が多いが、低収入の労働者は住めなくなる。地価が低いエリアは安価な住宅が建つため低収入労働者が住みやすいが、税収は少ない。この「地価の地図」を読みながらゾーニングを設計するのが、Economy 2.0以降の楽しみ方だ。
「House Flipper」で一軒一軒の物件を管理するような細かい視点での不動産経済の面白さとは違うが、街全体の経済フローを設計するという点でどちらも「お金の流れを考える楽しさ」がある。

パフォーマンス・MOD・コンテンツ拡張——気になる点を全部まとめて
Cities: Skylines IIについて語るとき、絶対に避けられない話題がパフォーマンス問題だ。ゲームのシステムとしての完成度が高くても、それを動かすPCスペックが問題になるなら遊べない。特に発売当初のひどさは今でも語り継がれている。
2023年10月の発売直後、Steamのレビューは「賛否両論」——肯定的評価はわずか55%だった。理由の大半はパフォーマンスへの不満で、「グラフィックをLowに落としても30fps出ない」「RTX 4080でも都市規模が大きくなると重くなる」「クラッシュが多すぎる」という声が溢れた。Cities: Skylines 2の発売を「SimCity 2013と同じ失敗」と比較するメディアも複数あった。
問題の根本には「市民一人ひとりのAIを全員同時計算する」という設計思想がある。前作は市民の挙動をある程度「省略」していたが、続編では妥協なく全市民分の計算をリアルタイムで行う。人口が増えるほどCPUへの負荷は大きくなる。RTX 4090 / i9-13900Kという最高級のスペックでも、人口30万を超えたあたりからシミュレーション速度が落ちるという報告があった。
Colossal Orderも問題を認め、発売直後に公式でパフォーマンス最適化ガイドを公開。段階的なパッチを繰り返しながら改善を続けた。また有料DLCの展開計画を一旦棚上げにして「まず基本品質の改善を最優先する」と声明を出したことが、多くのプレイヤーに誠実さとして受け止められた。
RTX 4070 / Core i7-14700Kの環境で、人口10万の都市でも安定して動いている。1年前とは別ゲームみたいに改善された
引用元:Steamレビュー(2024年)
2026年4月現在の目安スペックとして以下を参考にしてほしい。CPUはCore i7-12世代かRyzen 7 7000シリーズ以上が推奨で、市民AIはCPUのマルチコアを全力で使うためコア数が多いほど有利だ。GPUはRTX 3070かRX 6700 XT以上が目安で、都市が小さいうちはRTX 3060でも快適に動く。RAMは16GBで動くが32GBが強く推奨で、16GBだと大都市でメモリが足りなくなるケースが多い。ストレージはSSDが必須で、HDDではロード時間が長くなり動作が不安定になるケースが多い。
コンソール版(PS5/Xbox Series X|S)については、2024年11月にColossal Orderが「コンソールの限界に突き当たっている」として無期限延期を発表した。PCでの重い処理をコンソールで再現するのは技術的に非常に困難で、現時点では発売の見通しが立っていない。コンソールでのプレイを期待していた人には残念なニュースだが、逆に言えばそれだけ高度なシミュレーションをPC版では実現できているということでもある。
Rusty’s RetirementのようにほぼどんなスペックのPCでも動く軽量な都市系ゲームとは対極にある。

MOD環境については、前作はSteamワークショップで手軽に導入できたが、続編ではParadox Mods経由に移行した。当初はMOD環境が整っておらず、これも発売直後の不満の一因だったが、2024年以降はMODの数と質が急速に向上している。
現在は以下のようなMODが特に人気だ。「Anarchy」は建物の高さ制限や衝突判定を無効化し、より自由な配置が可能になる。これがないと実現できない都市デザインがかなりある。「Traffic」は交差点ごとに車線の優先度や禁止事項を細かく設定できる渋滞対策の必需品だ。「Skyve」はMODの管理・有効化・更新をまとめて行えるマネージャーで、複数のMODを入れるなら必須レベルの存在だ。「Line Tool」は建物や木を等間隔に並べるための便利ツールで、美しい街並みを作りたい人向けだ。
公式コンテンツとして「リージョンパック」も順次リリースされている。2024年12月に日本のリージョンパックがリリースされ、日本風の建物・サービス施設・居住区が無料で追加された。日本リージョンパックはコミュニティクリエイターが監修し、和風の商店街、低層住宅、公共施設などが含まれている。中国、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカなど計8種類のリージョンパックが展開されており、2025年3月時点で全リージョンのコンテンツが揃った形だ。
自分の都市を撮影してスクリーンショットを公開する「シティービルダー文化」もコミュニティで盛ん。Paradox Forumやredditでは毎日のように「俺の街を見てくれ」という投稿が上がっており、他プレイヤーの街から設計の参考にするという楽しみ方も定着している。「上空からの美しい航空写真風スクショ」「夜景が輝く都心のビル群」「日本風の下町の街並み」——プレイヤーたちが思い思いのビジョンで都市を作り上げている光景は、このゲームの自由度の高さを証明している。
有料DLCとしては「Bridges & Ports」拡張が開発中で、可動橋や港湾システムが追加される予定。発売は2025年後半に延期されているが、海辺の都市建設に新たな選択肢が生まれることへの期待は高い。都市の沿岸エリアに港を作り、船の航路を設計する——このゲームにとって新たな楽しみ方が広がる予定だ。
序盤攻略——初心者が知っておきたいこと
Cities: Skylines IIを初めてプレイする人が最初に躓くのが「序盤の財政赤字」だ。人口を増やすためにインフラを整備したいのに、整備するためのお金がない。この問題をどう乗り越えるかが、序盤攻略の核心だ。
まずやることは「時間の一時停止」だ。ゲームを開始した瞬間から時間は進んでいるが、時間が進むと建物の維持費がかかり続ける。道路の設計中も、ゾーンを設定している間も、お金が減り続けるため、慣れないうちは一時停止しながら作業するのが定石だ。
次に「マップ外の道路との接続」を確認する。Cities: Skylines IIでは、プレイヤーが建設したエリアはマップの外側にある「外部接続道路」と繋がっていることで、市民が移入できる仕組みだ。この接続が切れていると住宅を増やしても市民が来ない。マップを見渡して外部接続ポイントを見つけ、そこから幹線道路を引くことが最初のステップだ。
道路を引いたら、住宅ゾーン(低密度から始める)と商業ゾーンを設定する。最初は小さく——住宅地に100区画、商業地に20〜30区画程度で十分だ。広げすぎると電気・水道のインフラコストが膨らんで赤字が加速する。
住宅と商業を設定したら、次に電気と水道を整備する。電気は序盤では「小型風力発電機」が定番だ。設置コストが安く、維持費も低い。水道は「取水ポンプ」と「浄水場」と「下水処理場」のセットで、ポイントは位置関係——取水ポンプは川の上流側に、下水排水口は下流側に設置する。この順番を守らないと汚染水を供給することになり、市民の健康度が急落する。
電気と水道が整ったら市民を受け入れる。最初の市民が引っ越してくると税収が始まる。この段階では赤字が続いているはずだが、人口が300〜500人を超えたあたりから税収が安定してくる。
Economy 2.0以降の序盤で最も有効な黒字化戦略は「売電」だ。小型風力発電機や太陽光パネルを余分に設置して余剰電力を生み出し、隣接エリアに売却する。この売電収入が序盤の財政を安定させる大きな助けになる。知っているかどうかで序盤の難易度が全然違う。
税率の設定も重要だ。住宅税はあまり上げすぎず10%以下に抑えるのが基本。商業税は12〜15%程度、産業税は15%程度に設定しておくと、住民の満足度を保ちながら税収を確保できる。
人口が1000人を超えたら、公共交通機関の導入を考え始める時期だ。まずバス路線を1〜2本引いて、住宅地と商業地・職場を結ぶ。警察署と消防署も早めに設置する。これがないと犯罪率が上がって幸福度が下がり、やがて市民が流出し始める。病院は人口2000人を超えたあたりから必要になってくる。
産業ゾーンを置く場合は、必ず風下に配置する。風向きを確認してから産業地帯の位置を決めると、排気による幸福度低下が防げる。また産業地帯の近くには低密度住宅ではなく、工場で働く低所得者向けの低収入住宅ゾーンを設定するのが自然な街の構造だ。
人口が1万人を超えると、街の問題が複雑になってくる。渋滞が本格化し始めるため、バイパスや環状道路の設計を検討する時期だ。住宅地の地価が上がりすぎると低収入の市民が住めなくなって労働力不足になるため、低収入住宅ゾーンを計画的に確保する必要がある。
人口が5万人を超えると「地区ポリシー」が使えるようになる。特定のエリアに「低排出ゾーン(ガソリン車の乗り入れ制限)」「賃貸規制(家賃の上限設定)」「スマートシティ化(インターネット整備の推進)」といった政策を適用できる。都市計画の醍醐味が広がる段階だ。
人口10万を超えると、街はもはや「生き物」として動いている感覚が強くなる。毎朝のラッシュアワー、週末の公園利用者の増加、夜中の物流トラックの動き——時間帯ごとに街の顔が変わる。このゲームを「眺めているだけで楽しい」というレビューが多い理由がわかる段階だ。
大規模都市になると「特区」的な計画も視野に入る。例えば「IT産業特区」として特定エリアにオフィスゾーンを集中させ、地下鉄のアクセスを整備して高学歴の若者が集まる地区を作る。あるいは「観光エリア」として港湾近くに娯楽施設・ホテル・公園を集約し、外部からの訪問者を引き込む経済モデルを作る——こういう「都市のビジョン」を描きながら設計できるのが人口規模が大きくなったときの楽しみだ。
「実績」システムもゲームを長く楽しむ要素のひとつだ。特定の条件を達成すると実績が解除される。「人口10万人達成」「全路線黒字達成」「死の波を乗り越えた」などの実績が並ぶ。コンプリートを目指してプレイを続けるもよし、特定の都市テーマ(「全部再生可能エネルギーで賄う環境都市を作る」など)に挑戦するもよし。プレイの目標は自分で設定できる。
Cities: Skylines IIは都市計画の楽しさと難しさを同時に教えてくれるゲームでもある。現実の都市設計者が直面する「限られた予算の中で最大の効果を出す」「住民の多様なニーズに応える」「環境と経済のバランスを取る」——こうした問題が、ゲームの中でリアルに再現されている。都市シムをプレイした後に現実の街を歩くと、「この道路、もっと広げた方がいいんじゃないか」「このバス路線、効率悪いな」という視点が生まれる。そういう発見ができるゲームというのも珍しい。
前作との比較・正直な評価・今後の展望
前作「Cities: Skylines」は2015年にリリースされ、「SimCity 2013の失敗を救ったゲーム」として都市シムの定番となった。10年近く現役で遊ばれ続け、Steam同時接続数のピークは8万人を超えていた。前作が成功した理由は「MODのSteamワークショップ統合」「軽量で多くのPCで動く」「プレイヤーが直感的に楽しめるインターフェース」の3点が大きかった。
その続編であるCities: Skylines IIは「前作の全要素をより複雑に、よりリアルに作り直す」という方向性で開発された。明らかに良くなった点を整理する。市民一人ひとりのAIが格段に高度になり、住民の「顔」が見えるようになった。ゾーニングの種類が増え(低収入住宅、複合用途ゾーンなど)、街の多様性が表現できるようになった。道路の地下に水道管や電力線が自動で敷設されるため(前作では手動で引く必要があった)、作業が大幅に簡略化された。風向きが経済に影響し、工場の排気が住宅地に流れ込む問題が生まれてリアリティが増した。交通AIが現実の挙動に近くなった。マップサイズが前作の5倍以上に拡大された。マイルストーンと開発ツリーによって、成長の方向性を自分で選べるようになった。
一方で課題が残る点も正直に書く。発売時点でのMOD環境が前作より大幅に貧弱だった(現在は改善途上だが前作レベルにはまだ届いていない)。パフォーマンスの要求が大幅に上がり、前作が動いたPCでは動かないケースが多い。コンソール版が無期限延期で、PCだけでしか遊べない。大都市(人口20万以上)になるとシミュレーション速度が低下する設計上の問題が残る。
前作を2000時間やってたけど、2では住民が「個人」として動いているのが分かる。前作の市民は正直ただの数字だったが、こっちは名前を覚えてしまう
引用元:Steamレビュー(日本語)
前作ファンの間では「前作の方が軽くて快適」という声も根強いが、「ゲームとしての深みは明らかに2の方が上」という評価も多い。手軽に都市を育てたいなら前作、じっくりとシミュレーションの深さを楽しみたいなら2が向いているだろう。
2024年以降のSteamレビューを見ると、評価のトレンドは明らかに改善している。「最近始めた人」の評価は「最高」「買って後悔なし」という声が増えており、発売当初の「返金した」「クソゲー」という声の比率が下がっている。時間とともに評価が変わっていくゲームというのは珍しくないが、Cities: Skylines IIほど急激に改善されたケースはあまり見ない。それだけColossal Orderが本気で改修に取り組んできたということだ。
発売から2年以上が経過した現在のCities: Skylines IIを正直に評価すると、「発売当初の悪印象とは別のゲームになっている」という言い方が一番近い。Colossal Orderは2023年に謝罪声明を出し、有料DLCのリリースを後回しにして基本品質の改善を最優先する方針を表明した。その約束通りにEconomy 2.0やリージョンパックなど無料コンテンツを積み上げてきた。こういう誠実な開発姿勢は、長期的なコミュニティの信頼につながる。
発売直後に買って即返金した人間だけど、2年後に改めて買い直した。あれは別のゲームだった。今はすごく満足している
引用元:Steamレビュー(2025年)
崩壊都市のような、経済と人口のダイナミズムを楽しむ国産ゲームと比べると、Cities: Skylines IIはインフラ設計という点でより自由度が高く、自分の手で道路や交通網を設計する感覚が強い。

都市シムというジャンルを他の戦略系ゲームと比較してみると、Cities: Skylines IIの立ち位置がよくわかる。Total Warシリーズは「軍事征服と政治支配」が中心で、Cities: Skylines IIとは根本的に方向性が異なる。The Sims 4は「個人の生活」にフォーカスするのに対し、Cities: Skylines IIは「都市全体の仕組み」を設計する。どちらにも「キャラクターの生活を見守る楽しさ」はあるが、スケールが全く違う。House Flipperは「一軒の物件をリノベーションする」楽しさで、こちらも都市全体を扱うCities: Skylines IIとはアプローチが異なる。
Cities: Skylines IIが独自のポジションを占めているのは「マクロな都市設計とミクロな市民生活の両方を楽しめる」という点だ。上空から街全体を俯瞰しながら道路を設計し、次の瞬間には一人の市民に寄り添って通勤ルートを観察する——このスケールの切り替えができるゲームは少ない。
10年後も遊ばれているゲームになるかどうかは、今後のアップデートとMOD文化の発展次第だ。前作が10年現役だったことを考えると、続編が同じ道を歩む可能性はある。ただし、それには「今のPCスペック問題がどう解決されるか」が大きな鍵になる。CPUの処理能力が今後上がっていけば、現在の重さは自然に解消されていく可能性がある。Colossal Orderが地道な改修を続けている姿勢を見ると、長期的なサポートへの意思は感じられる。
ゲームの本質的な面白さ——市民の生活を観察しながら、交通を設計し、経済を回し、理想の都市を育てていく体験——は、都市シムとして間違いなくトップレベルだ。「街が生きている」という感覚を味わえるゲームとして、他に類を見ない。高スペックPCを持っていて、都市建設の深みにハマりたい人には、今が最もおすすめのタイミングだ。
Cities: Skylines IIは「完成のないゲーム」だ。人口100万人を達成しても、「もっと渋滞を減らしたい」「あの地区の幸福度を上げたい」「新しい地区を開発したい」という欲求が次々と湧いてくる。終わりのない街づくりの旅——それがこのゲームの本質だ。
都市建設ゲームに興味があって、でも「自分に合うかわからない」という人は、まず前作「Cities: Skylines」(かなり安価で手に入る)を試してみるのもひとつの選択肢だ。前作で楽しめたなら、2はさらに深い体験が待っている。前作で「もっと住民が生きているように感じてほしかった」「交通AIをもっとリアルにしてほしかった」と思ったなら、その答えが2にある。
Cities: Skylines IIをプレイするなかで、戦略系ゲームが好きな人は「こういう長期思考のゲームもいいな」という発見があるかもしれない。Total Warのように国家規模の戦略を立てる楽しさとは異なるが、「情報を読んで判断を積み重ねる」という点では通じるものがある。また、のんびりとした成長を楽しむゲームが好きな人にとっても、Cities: Skylines IIは良い選択肢だ。Rusty’s Retirementのような、急かされることなくじっくり観察するゲームに近い感覚を、もっと複雑なシステムで楽しめる。
一方で、同じ建設・経営ジャンルでも目指している方向性はゲームによってかなり違う。崩壊都市は「ランダム性の中でどう生き残るか」というローグライク的な緊張感があり、Cities: Skylines IIの「計画して積み上げる」感覚とは異なる楽しさだ。好みに合わせて使い分けるのも悪くない。
都市建設という行為は、社会の縮図を作ることでもある。住宅地と工業地をどう配置するか、低所得者向けの住宅をどう確保するか、公共交通と自家用車のバランスをどう取るか——これらは現実の都市計画者が毎日考えている問題だ。Cities: Skylines IIはそれをゲームとして体験させてくれる。「街づくりとはこんなに難しくて、こんなに楽しいものなのか」という気づきがある。
最後に、Cities: Skylines IIを始めるにあたって知っておくと便利な細かいポイントをまとめておく。スクリーンショットはゲーム内の「フォトモード」で撮ると美しい構図が取りやすい。フォトモードでは露出・コントラスト・色温度などを調整でき、映画のような一枚が撮れる。セーブは頻繁に行うことをおすすめする——特に大規模な道路改修前には必ずセーブしておきたい。改修後に「やっぱり元に戻したい」と思うことがよくある。ゲームのアップデートとMODの互換性には注意が必要で、メジャーパッチの後はMODが正常に動かないことがある。その場合はMODの更新を待つかMODをオフにしてプレイする。
都市シムというジャンルは「完璧な街はない」という真実を教えてくれる。どんなに計画しても問題が起きる。でもその問題を解決する過程がこのゲームの醍醐味だ。Cities: Skylines IIは、街を完成させるゲームではなく、街を育て続けるゲームだ。
「どんなゲームが自分に向いているかわからない」という人への案内として言うと、Cities: Skylines IIが向いているのは「プロセスを楽しめる人」だと思う。ゲームをクリアすること自体を目的にするタイプより、「今日も街が少し良くなった」という積み重ねに満足感を覚えられる人が長く楽しめる。作業ゲームというより観察ゲームに近い側面があり、画面の中で街が動いている様子を眺めているだけで楽しめるなら、何十時間でも遊べる。
発売当初の失敗を乗り越えて改善を続けているColossal Orderへの応援の意味でも、今このゲームを評価することには意義があると感じる。「面白いと思うなら、正直にそう言う」——それがゲームを愛するプレイヤーとして大切なことだろう。Cities: Skylines IIは、正直に「面白い」と言える都市シムだ。発売当初の評判を信じて距離を置いていた人がいたなら、2026年の今こそ改めて見てほしい。
このゲームで何百時間も費やしたプレイヤーが口を揃えて言うのが「気づいたら朝になっていた」という体験だ。設計の問題を一つ解決すると別の課題が現れ、その課題に取り組んでいるうちに街が育ち、育った街に新しい問題が生まれる——このサイクルが止まらない。都市を育てるということは、問題を解決し続けることだ。それが苦痛ではなくて楽しいという感覚を持てる人なら、このゲームは何年でも楽しめる。
ゲームの面白さの一つに「自分の街の歴史」という感覚がある。ゲームを長くプレイしていると、街のあちこちに過去の決断の痕跡が残る。「この高架橋は人口3万の頃に作った渋滞対策だったが、今は逆に流れを阻害している」「あのエリアは最初に住宅を置きすぎて商業が少なくなってしまった」——こういう歴史が積み重なって、自分だけの都市が育っていく感覚は独自のものだ。セーブデータを見直すと「あの頃はこんな小さな街だったんだ」という感慨がある。プレイヤーの思い出と都市の成長が重なるゲームだ。
Cities: Skylines IIのコミュニティは健全で熱量が高い。Steamのコミュニティフォーラム、Reddit(r/CitiesSkylines2)、日本国内ではゲーム実況やブログなど様々な場所でプレイヤーが情報を共有している。「こんな渋滞解消法を見つけた」「このマップがおすすめ」「序盤でこれをやると黒字になりやすい」——困ったときに情報を探せるコミュニティの充実度は、長期プレイを続ける上で重要な環境だ。初心者が詰まっても、ほぼ必ず同じ問題を経験して解決策を書いている先人がいる。
都市建設シムというジャンルへの入口として、Cities: Skylines IIは現時点で最良の選択肢のひとつだ。コンテンツの量、システムの深さ、Colossal Orderの継続的な改善姿勢——これらを総合すると、都市シムに興味がある人にとって今がプレイを始めるには良い時期だと思う。発売当初は「時期尚早」だったかもしれないが、2026年の今はシステムとしても安定していて、コンテンツも充実している。街づくりの楽しさを体験したい人にとって、この先も長く遊び続けられるゲームだ。
人口20万を達成したとき、上空から街を眺めながら「自分がここまで育てたんだ」という達成感が来た。ゲームで泣きかけたのは初めてかもしれない
引用元:Steamレビュー(日本語、2024年)
Cities: Skylines II
| 価格 | ¥6,990 |
|---|---|
| 開発 | Iceflake Studios, Colossal Order |
| 販売 | Paradox Interactive |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows |
| プレイ形式 | シングル |

