「ELDEN RING」宮崎英高とマーティンが生んだオープンフィールドの死にゲー

マルギットで20回死んだ。ゴドリックで15回死んだ。ラダーンで数えるのをやめた。

それでもコントローラーを置けなかった。死ぬたびに「次こそは」と思って、気づけば朝4時。翌日の仕事のことなんて完全に頭から消えていた。いや、消えていたんじゃなくて、最初から存在していなかった。このゲームの前では、現実世界のことなんてどうでもよくなる。

それが『ELDEN RING(エルデンリング)』だ。

フロムソフトウェアが『ダークソウル』シリーズで培った「死にゲー」のノウハウを、広大なオープンフィールドに解き放った。その結果がどうなったか。Metacritic 97点。The Game Awards 2022でGame of the Year含む4冠。世界累計出荷3,000万本突破。300以上のGOTY賞を獲得。2022年のゲーム業界を完全に支配した。

しかも、世界観の原案を手がけたのは『ゲーム・オブ・スローンズ』原作者のジョージ・R・R・マーティン。宮崎英高とマーティンという、ゲームとファンタジー文学の頂点に立つ2人がタッグを組んだ。この時点で期待値は天井を突き破っていたわけだけど、実際にその期待を上回ってきたのがこのゲームの恐ろしいところだ。

ただ、発売から4年が経った今だからこそ言えることもある。PC版の最適化問題、後半のバランス崩壊、ストーリーの分かりにくさ。手放しで「完璧」とは言えない部分も確実にある。Steamレビューが発売直後に「賛否両論」まで落ちた事実は、このゲームの「光と影」を象徴している。

この記事では、ELDEN RINGの何がそこまで革命的だったのか、そして正直に気になる点も含めて、徹底的に掘り下げていく。これから始める人も、途中で挫折した人も、クリア済みの人も。全員に読んでほしい。

目次

「ELDEN RING」公式トレーラー

ソウルシリーズの集大成がオープンフィールドになった衝撃

ELDEN RING その他RPG スクリーンショット1

ELDEN RINGを一言で表すなら、「ダークソウルがオープンワールドになったゲーム」だ。でも、それだけじゃ全然伝わらない。

フロムソフトウェアのディレクター・宮崎英高は、本作を「オープンワールド」ではなく「オープンなフィールド」と呼んでいる。この言い方には明確な意図がある。一般的なオープンワールドゲームにありがちな「マップを開いてアイコンを潰していく作業」とは根本的に違うということだ。

実際にプレイすると、この違いはすぐに体感できる。ELDEN RINGの世界「狭間の地」は、リムグレイブ、リエーニエ、ケイリッド、アルター高原、巨人たちの山嶺、聖樹の地など、複数の大エリアで構成されている。それぞれが独自の景観と雰囲気を持っていて、エリアの境界を越えた瞬間に空気ががらっと変わる。リムグレイブの牧歌的な草原から、ケイリッドの赤く染まった荒野へ。リエーニエの美しい湖畔から、アルター高原の溶岩が流れる火山地帯へ。この「風景の変化」だけでも冒険のモチベーションになる。

そしてこの広大なフィールドには、クエストマーカーがほとんどない。NPCが親切に道案内してくれることもない。ミニマップに次の目的地が表示されることもない。プレイヤーは自分の目で見て、自分の足で歩いて、自分で発見していく。遠くに見える巨大な城、地面にぽっかり空いた穴、怪しげな崖の下。「あそこに何かありそう」という直感だけを頼りに進む冒険。これが恐ろしく中毒性が高い。

そしてその直感は、ほぼ毎回正しい。崖を降りた先に隠し洞窟がある。怪しい壁を叩いたら隠し通路が現れる。なんの変哲もない遺跡に入ったら、地下に巨大なダンジョンが広がっていた。こういう「発見の連鎖」が延々と続く。ゲームを起動して「ちょっとだけ探索しよう」と思ったのに、気づけば3時間経っていた……というのは、ELDEN RINGプレイヤーなら全員が経験していることだと思う。

ダークソウルシリーズは「一本道だけど、その一本道が緻密に設計されている」というゲームデザインだった。ELDEN RINGはそれをオープンフィールドに拡張しつつ、密度を一切犠牲にしていない。むしろ濃くなっている。フィールドの片隅にある何気ない洞窟に入ったら、その奥に独自のボスがいて、固有の武器をドロップする。こういうことが何十回も起きる。

「このゲーム、どれだけコンテンツを詰め込んでるんだ」と呆れるレベルだ。メインストーリーを追うだけでも40〜50時間。サブダンジョンを全部回ろうとしたら80時間以上は軽くかかる。トロフィーやアチーブメントのコンプリートを目指せば120時間超え。しかも水増しじゃない。一つ一つのダンジョンに個性があって、「ああ、これ入らなくてもよかったな」と思うことがほとんどない。Steamのプレイ時間を見ると、200時間、300時間プレイしている人がゴロゴロいる。2周目、3周目を別ビルドで遊ぶ人が多いのだ。

特に印象的なのが「レガシーダンジョン」と呼ばれる大型ダンジョン群だ。ストームヴィル城、レアルカリア、火山館、王都ローデイル、ミケラの聖樹。これらはダークソウルのステージをそのまま拡張したような構造で、ショートカットの開通、敵の配置、アイテムの隠し場所、すべてが緻密に計算されている。

ストームヴィル城を例に挙げよう。正面突破しようとすると強力な騎士の群れが待ち構えている。でも脇道を探せば、城壁の裏側を這い回るルートが見つかる。さらに地下からもアプローチできる。どのルートを選ぶかはプレイヤー次第で、それぞれのルートに固有のアイテムとイベントが用意されている。王都ローデイルに至っては、地下に「忌み捨ての地下」という巨大な隠しエリアが丸ごと存在する。メインストーリーとはほぼ無関係だけど、発見したときの衝撃は凄まじい。

オープンフィールドの「自由な探索」とレガシーダンジョンの「濃密な攻略」。この2つの体験が交互に訪れることで、ゲーム全体にリズムが生まれている。広い野原を馬(霊馬トレント)で駆け回った後に、濃密なダンジョンに潜る。この緩急がELDEN RINGの中毒性を支えている。

そして忘れてはいけないのが、地下世界「永遠の都」の存在だ。地上のフィールドだけでも十分に広いのに、その下にさらに巨大な地下世界が広がっている。ノクローンの永遠の都、ノクステラの永遠の都、そしてそれらをつなぐ深根の底。地上とは全く異なる雰囲気の空間で、ここにしか存在しないボスや装備が待っている。「え、まだこんなエリアあったの?」。40時間以上プレイした後にこの驚きを味わえるゲームは、そうそうない。

「勝てないなら、別のところに行けばいい」という革命

ダークソウルで壁にぶつかったとき、選択肢は「ひたすら練習して突破する」か「ゲームをやめる」のどちらかだった。ELDEN RINGは第三の選択肢を用意した。「別の場所に行って、強くなってから戻ってくる」という選択肢だ。

マルギットに勝てない? 南のリムグレイブを探索してレベルを上げればいい。ラダーンが無理? 先にアルター高原を回って武器を強化すればいい。フロムソフトウェアの「死にゲー」が苦手だった人にとって、これは救済であり革命だった。

重要なのは、これが「難易度を下げた」わけではないということだ。ボスの攻撃力やパターンはそのまま。でも、プレイヤー側が強くなる手段が圧倒的に増えた。レベル上げ、武器強化、遺灰の召喚、戦灰のカスタマイズ。「腕前で勝つ」以外のアプローチがたくさん用意されている。腕に自信があるなら初期レベルで突っ込めばいいし、レベルを200まで上げて遺灰と一緒にゴリ押ししてもいい。どちらも「正しい遊び方」だ。

霊馬トレントの存在も大きい。このゲームでは馬に乗ってフィールドを駆け回ることができる。移動速度が劇的に上がるだけでなく、騎乗戦闘もできる。強すぎる敵がいたら馬で逃げればいい。危険なエリアを馬で駆け抜けて、安全な祝福(チェックポイント)まで一気に移動することもできる。この「逃げる自由」が、オープンフィールドの冒険をストレスフリーにしている。ダークソウルでは「逃げたくても逃げられない」ことが多かったけど、ELDEN RINGは違う。逃げて、回り道して、準備を整えて、また挑む。そのサイクルが楽しい。

ダクソで何回も心折れてきた勢だけど、エルデンリングは初めてクリアできたフロムゲー。勝てないボスがいたら別のとこ探索して戻ってくるっていう選択肢があるのがデカい。レベル上げて遺灰連れてけばなんとかなる

引用元:Steamレビュー

この「自由に攻略順を選べる」設計は、ソウルライクの間口を劇的に広げた。実際、ELDEN RINGは従来のフロムゲーと比べてクリア率が明らかに高い。ちなみにELDEN RINGのクリア率と『Hogwarts Legacy』のクリア率はそれほど変わらないというデータもある。「死にゲー」のイメージとはかけ離れた数字だ。

ただし、この「自由度」が完全にプラスに働いているかというと、微妙なところもある。攻略順が自由すぎるせいで、「このエリアに来るべきレベル帯」が分かりにくい。いきなり高レベルエリアに迷い込んで心を折られる初心者も多い。ケイリッドの赤い空の下で巨大な犬に瞬殺された人は、きっとこの文章に頷いてくれるだろう。序盤のリムグレイブから一歩東に出ただけでケイリッドという地獄に放り込まれる。あの「あれ? 急に敵が強くない?」という困惑は、ELDEN RINGの通過儀礼みたいなものだ。

同じオープンワールドのアクションRPGでも、たとえば『ウィッチャー3』が「ストーリーの力で引っ張る」タイプだとすれば、ELDEN RINGは「探索と発見の喜びで引っ張る」タイプ。どちらが優れているという話ではなくて、アプローチが根本的に違う。ウィッチャー3がプレイヤーに「次に何をすべきか」を常に提示してくれるのに対して、ELDEN RINGは「好きにしろ」と突き放してくる。この突き放し方が心地いいと感じるか、途方に暮れるかで評価が分かれる。

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戦闘システムの奥深さ――ビルドの自由度がえげつない

ELDEN RINGの戦闘は、基本的にはダークソウルの延長線上にある。R1で攻撃、L1でガード、ローリングで回避。スタミナを管理しながら、敵の攻撃パターンを読んで、隙を突いて反撃する。ここまでは同じ。でも、そこに膨大なビルドの選択肢が加わったことで、戦闘の幅が桁違いに広がった。

まず「戦灰」システム。これはELDEN RINGで初めて導入された仕組みで、武器に戦灰をセットすることで、武器の性能や特殊技が変わる。同じロングソードでも、「居合」をセットすれば技量寄りの居合斬り武器になるし、「獅子斬り」をセットすれば筋力寄りの叩きつけ武器になる。「猟犬のステップ」をセットすれば回避性能が異常に高い武器になる。これだけで戦術の幅が爆発的に広がる。

しかも戦灰は何度でも付け替え可能だ。「このボスには炎属性が効くから、炎の戦灰に変えよう」「この敵には出血が効くから、血の斬撃にしよう」。状況に応じて武器のカスタマイズができるのは、プレイヤーの「考える楽しさ」を引き出してくれる。

そして「遺灰」。これはNPC霊体を召喚して一緒に戦ってもらうシステムで、フロムゲー初心者への救済措置として機能している。遺灰は消費アイテムではなく何度でも使えて、特定の場所(還魂碑の近く)で召喚できる。種類も豊富で、盾を持ったタンク型、遠距離攻撃をしてくれる魔法型、複数体が出現する群体型など、プレイスタイルに合わせて選べる。

特に「写し身の雫」は自分のキャラクターをコピーして召喚するという壊れ性能で、ボス戦のハードルを一気に下げてくれる。自分が脳筋ビルドなら脳筋の分身が出てくるし、魔術師ビルドなら魔術を撃ちまくる分身が出てくる。自分が強くなればなるほど霊体も強くなるという仕組みで、育成のモチベーションにもなる。もう一体の最強遺灰「黒き刃ティシー」は、スリップダメージが強力でボスの体力をじわじわ削ってくれる。どちらかを連れていけば、大抵のボスは何とかなる。

ビルドの種類も膨大だ。脳筋(筋力特化で巨大武器を振り回す)、技量ビルド(素早い武器やカタナで手数勝負)、純魔ビルド(魔術でひたすら遠距離攻撃)、信仰ビルド(回復や炎の祈祷を駆使)、神秘ビルド(出血や腐敗の状態異常特化)、上質ビルド(筋力と技量の両立)。さらにそれぞれを組み合わせた「技魔」「信魔」なんてハイブリッドも可能だ。200種類を超える武器、100種類以上の魔術と祈祷。組み合わせは文字通り無限に近い。

2周目は完全に別のビルドでやったけど、マジで別ゲーになる。1周目は脳筋大剣でゴリ押してたのが、2周目は魔術師で遠距離からチクチク。同じボスなのに攻略法が全然違うの面白すぎる

引用元:Steamレビュー

このビルドの自由度は、ソウルライク系のゲームの中でも群を抜いている。たとえば『Lies of P』はピノキオをモチーフにしたソウルライクで、武器の刃と柄を組み合わせるカスタマイズ性に定評がある。パリィの気持ちよさではELDEN RINGに勝るとも劣らないという声もある。ただ、ビルドの多様性ではELDEN RINGが頭一つ抜けている。Lies of Pは基本的に近接戦闘中心だけど、ELDEN RINGでは「魔法だけでクリアする」「弓だけでクリアする」みたいなプレイスタイルも成立する。

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ゲーム内のリスペック(ステータス振り直し)も比較的簡単にできるので、「このビルド飽きたな」と思ったら気軽に方向転換できるのも嬉しい。満月の女王レナラを倒した後、彼女に話しかけるだけでステータスを振り直せる。リスペック用のアイテム「雫の幼生」も、特定の場所で何個でも拾える。「一度決めたビルドをやり直せない」というストレスがないのは、この手のゲームでは地味にありがたい。

武器も一つ一つに固有のモーションが設定されていて、「見た目だけ違う同じ武器」がほとんどない。大剣は重量感のある振り下ろし。刺剣は素早い連続突き。ハルバードはリーチを活かしたスイープ。二刀流にすればまた違うモーションになる。この「武器ごとの手触りの違い」がフロムゲーの真骨頂で、新しい武器を拾うたびに「ちょっと使ってみるか」と寄り道してしまう。

魔術と祈祷のバリエーションも豊富だ。定番の輝石の大つぶて(ホーミング弾)からロレッタの大弓(狙撃系魔術)、彗星アズール(極太レーザー)まで、魔術だけでもプレイスタイルが全く変わる。祈祷では回復はもちろん、雷や炎の攻撃、腐敗のブレスなど攻撃手段も充実している。「剣を振るうだけがフロムゲーじゃない」ということをELDEN RINGは見事に証明してくれた。

ボス戦は「死の舞踏」

フロムゲーの真骨頂はやっぱりボス戦だ。ELDEN RINGのボスは、一体一体が「作品」と呼べるレベルで作り込まれている。

ストームヴィル城のゴドリック。序盤のボスでありながら、第2フェーズで自らの腕を切り落としてドラゴンの首を接ぎ木するという衝撃的な展開。この演出を初めて見たとき、思わず手を止めてしまった人も多いだろう。そこからの炎のブレスと斧の複合攻撃が、序盤とは思えない緊張感を生み出す。

満月の女王レナラ。第1フェーズの幻想的な雰囲気、浮遊する生徒たちを倒してレナラを地面に引きずり下ろすギミック。そして第2フェーズの魔法の嵐。アカデミーの美しい建築と相まって、ゲーム全体の中でも屈指の「美しいボス戦」だと思う。

赤獅子のラダーンは、おそらくELDEN RINGで最も「ドラマチック」なボスだ。小さな馬に跨がった巨体が、星をも砕く力で突進してくる。ボスエリアが砂漠のように広く、NPC勢揃いの「祭り」として挑むという演出も熱い。ラダーンを倒した後に空を見上げると、固定されていた星が再び動き出す。ゲームプレイとストーリーが完全に融合した瞬間だ。

そして終盤の「マレニア」。このボスだけで数百時間溶かしたプレイヤーがどれだけいることか。「私はマレニア、ミケラの刃」という名乗りは、死ぬたびに何度も聞かされることになる。あまりに聞きすぎて、このセリフがネットミームになったほどだ。彼女の代名詞「水鳥乱舞」は、フロムゲー史上最も議論を呼んだ攻撃技の一つだ。三連撃の回避タイミングが独特で、初見で対処するのはほぼ不可能。しかもマレニアは攻撃を当てるとHPを回復する「吸血」能力を持っている。盾で防いでも回復されるから、回避が必須。「避けられるように設計されているのか、それとも本当に理不尽なのか」。プレイヤーの間では発売から4年経っても決着がついていない。

一方で、マレニアを「理不尽」ではなく「最高のボス」と評価する声も根強い。完全に動きを覚えれば、彼女のすべての攻撃に対応できる。ノーダメージ撃破を達成した「Let Me Solo Her」という伝説的なプレイヤーは、他のプレイヤーの世界にボランティアで助っ人として参戦し、裸にポットを被った姿でマレニアをソロ撃破し続けた。この話は世界中のメディアで取り上げられ、ELDEN RINGのコミュニティ文化を象徴するエピソードになった。

ボスのモーションは基本的に「読める」ようにデザインされている。理不尽に見えても、パターンを覚えて対処法を見つければ倒せるはず……というのがフロムゲーの哲学だ。この「学習→挑戦→突破」のループがたまらなく気持ちいい。30回死んだボスをノーダメージで倒せたとき、あの達成感は他のどんなゲームにも替えがたい。負けるたびにちょっとずつ上手くなっている自分を実感できる。これがフロムゲーの中毒性の正体だ。

ちなみに、ELDEN RINGのボス戦BGMもかなりの完成度だ。メインボスには一体一体に専用楽曲が用意されていて、第2フェーズに移行するとBGMも劇的に変化する。ラダーン戦の荘厳なコーラス、マレニア戦の緊迫した弦楽器、ラスボス戦の荘厳さ。音楽だけでもこのゲームのクオリティの高さが伝わってくる。サウンドトラックを単体で聴いている人も多い。

ジョージ・R・R・マーティンが紡いだ神話と「語らない物語」

ELDEN RING その他RPG スクリーンショット2

ELDEN RINGの世界観は、『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作『氷と炎の歌』を書いたジョージ・R・R・マーティンが原案を手がけている。ただし、マーティンが書いたのはゲーム内のストーリーそのものではなく、その背景にある「神話」の部分だ。世界がどのようにして生まれ、神々がどのように争い、なぜ今の状況に至ったのか。その骨格をマーティンが構築し、宮崎英高がゲームとして肉付けしていった。

エルデンリングという名の黄金律。それを砕いたデミゴッドたち。女王マリカの二面性。ラダゴンとの関係。ラニが企てた「黒い夜の陰謀」。ミケラの永遠の幼さに隠された真意。彼らの血縁関係と権力闘争は、まさにマーティンの十八番だ。『ゲーム・オブ・スローンズ』を観た人なら、ターガリエン家やラニスター家の陰謀劇と同じ匂いを感じるだろう。王族同士の裏切り、禁忌の恋愛、神をも欺く野望。規模が違うだけで、やっていることの本質は同じだ。

マーティン自身は「キャラクターやプロットに匹敵するほど、設定が重要だ」と語っている。トールキンの中つ国、アシモフの銀河帝国を例に挙げて、それと同じくらいの密度で狭間の地の歴史を構築したという。その言葉に偽りはない。ゲーム内のアイテムテキストや環境描写から読み取れる情報量は膨大で、考察コミュニティが4年経っても新しい発見をし続けているほどだ。

ただし、ここがELDEN RINGの評価が分かれるポイントでもある。ストーリーは能動的に語られない。ムービーシーンは数えるほどしかない。NPCのセリフもどこか意味深で、何を言っているのか一度では理解できないことが多い。「エルデンリングが砕かれた」「破砕戦争が起きた」「デミゴッドがそれぞれ大ルーンを手にした」。これらの背景は、アイテムのフレーバーテキストや建物の配置、敵の種類から推測するしかない。

エルデンリングのストーリー、考察動画見てようやく理解できた。ゲーム内だけだと正直何が起きてるのかよく分からなかった。でも理解した後にもう一周したら、最初のムービーの意味が全然違って見えて鳥肌立った

引用元:Twitter @ゲーム考察アカウント

この「語らないストーリーテリング」はフロムゲーの伝統だ。ダークソウルの時代からずっとそうだった。好きな人にはたまらないし、合わない人にはとことん合わない。YouTube上にはエルデンリングの考察動画が何千本もアップされていて、それぞれが数十万再生を叩き出している。ストーリーを理解するために「外部のコンテンツを見る必要がある」というのは、ゲーム単体の評価としてはマイナスかもしれない。でも、その「分からなさ」が考察という二次的な楽しみを生み出しているのも事実だ。

宮崎英高はインタビューで「醜さだけでも、美しさだけでもだめ」というデザイン美学を語っている。ダークソウルの時代から一貫して、フロムゲーの世界は「美しさと醜さが共存する」場所だ。ELDEN RINGの狭間の地もまさにそうで、黄金樹の神々しい輝きの下に、腐敗した沼や朽ち果てた墓地が広がっている。デミゴッドたちも美しい外見の裏に異形の本性を隠している。この「見た目と実態のギャップ」が、世界の奥行きを生み出している。黄金樹の輝きは一見すると神聖で美しいけれど、物語を紐解いていくと、その輝きの下に隠された暗い真実が見えてくる。この重層的な構造は、何周プレイしても新しい発見がある理由の一つだ。

個人的に一番感心したのは、環境ストーリーテリングの巧みさだ。たとえば、ストームヴィル城のいたるところに「接ぎ木」された死体がぶら下がっている。これはゴドリックが他者の体のパーツを自分に取り込む「接ぎ木」を行っていたことを示している。ボスの攻撃パターン(ドラゴンの首を自分に接ぎ木する第2フェーズ)とも完全にリンクしている。言葉で語らなくても、世界がストーリーを語ってくれる。この手法が、ELDEN RINGの隅々にまで行き渡っている。

もう一つ例を挙げると、火山館周辺のエリアでは溶岩が流れる中に「蛇」のモチーフが繰り返し登場する。蛇の形をした敵、蛇の意匠を持つ武器、蛇に関する記述のあるアイテム。これらを集めていくと、火山館の主「冒涜の君主ライカード」が蛇に飲み込まれた(あるいは自ら蛇と融合した)存在であることが見えてくる。そしてボス戦では文字通り「巨大な蛇の体から上半身が生えた異形」と戦うことになる。環境描写→アイテムテキスト→ボスデザインが一本の線でつながる瞬間は、考察好きにはたまらない。

マルチエンディングの構造も巧みだ。6つのエンディングが用意されていて、どれを選ぶかでプレイヤーの「狭間の地への態度」が表現される。黄金律を修復するのか、星の時代を始めるのか、狂い火で全てを焼き尽くすのか。それぞれのエンディングに至るためのフラグ条件がまた複雑で、1周目で全エンディングを見ることは不可能に近い。でも、だからこそ2周目、3周目のモチベーションになる。

世界観の深さという点では、同じくダークファンタジーの世界を描いた『ドラゴンズドグマ2』も興味深い。こちらはカプコンが手がけたオープンワールドアクションRPGで、従者(ポーン)システムやフィジカルな戦闘が特徴的だ。アプローチはかなり違うけれど、「自分で発見する」探索の楽しさは通じるものがある。ドラゴンズドグマ2も世界の謎を少しずつ解き明かしていく構造になっていて、ストーリーを「教えてもらう」のではなく「自分で掴みに行く」タイプのゲームだ。

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DLC『Shadow of the Erdtree』で証明された底力

2024年6月にリリースされたDLC『Shadow of the Erdtree(影の地のエルドツリー)』。発売3日で500万本。最終的に1,000万本を超えた。DLCとしては異次元の売上だ。本編の購入者の3人に1人以上がDLCを買っている計算になる。

このDLCが何をやったかというと、本編に匹敵するボリュームの新エリア「影の地」を追加した。新しいマップ、新しいボス、新しい武器とビルド。プレイ時間にして40〜50時間分のコンテンツが詰め込まれている。普通のゲームの本編くらいのボリュームがDLC一本に入っている。

影の地のマップデザインは、本編以上に立体的だ。地上を歩いていたと思ったら地下に降りて、地下から別の出口に出たら全然違う景色が広がっている。特に「指の遺跡」周辺のダンジョン構造は、フロムゲーのレベルデザインの到達点と言ってもいい。新しいボスも粒ぞろいで、「串刺し公メスメル」や「約束の王、ラダーン」は本編のどのボスにも引けを取らない完成度だった。

DLCの発売に合わせてSteamの同時接続者数は76万人まで急上昇した。本編発売時のピークが95万人だったから、DLCだけでその8割まで盛り返したことになる。発売から2年以上経ったゲームのDLCで、この数字は異常だ。2024年のSteam年間ベストでは「ピークプレイヤー45万人以上」のカテゴリに選ばれ、DLCの力でランキング上位に返り咲いた。

Metacriticのスコアも95点。拡張コンテンツとしては歴代最高レベルの評価で、「これ一本でゲームとして成立する」「フロムを褒めるのは飽きた」というコメントが海外メディアから相次いだ。

ただし、このDLCもSteamレビューでは一時「賛否両論」まで落ちた。理由は難易度。本編よりも明らかにボスが強くなっていて、「難しさと理不尽をはき違えている」という批判が噴出した。

DLCのボス、敵だけ楽しそうなんだよな。こっちが一発殴る間に3コンボ叩き込んでくるし、攻撃の隙がほぼない。達成感より疲労感が勝つ場面が多かった

引用元:Steamレビュー

この批判は一理ある。DLC独自の強化システム「影樹の加護」を十分に集めないと、ボスのダメージが理不尽に感じるバランスになっている。本編のレベルや武器強化だけでは足りず、影の地で新たに「影樹の破片」を集めて攻撃力と防御力を底上げしないといけない。逆に言えば、加護をしっかり集めてからボスに挑めば適正な難易度になるのだけど、そのことがゲーム内で十分に説明されていなかった。フロムゲーらしいと言えばらしいが、不親切だったのも事実だ。

とはいえ、ひろゆき氏がDLCを186時間かけてクリアしたように、ハマる人はとことんハマるコンテンツだ。ひろゆき氏のプレイ時間のうちDLCだけで50時間以上を費やしている。DLCでこれだけの時間を吸い取るゲームは、そうそうない。

DLCの詳細が気になる人は、こちらの記事でさらに深掘りしている。

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PC版の光と影――最適化問題と4年間の改善

ELDEN RING その他RPG スクリーンショット3

ELDEN RINGのPC版は、発売当初から最適化の問題を抱えていた。これは正直に書いておかないといけない。PC版のレビューをしている以上、ここを避けて通るわけにはいかない。

まず、フレームレートの上限が60fps。2022年の大作ゲームで60fps上限というのは、PC版としてはかなり厳しい制限だ。144Hzや240Hzのモニターを持っているPCゲーマーにとって、60fpsのキャップは「わざわざPC版を買った意味がない」と感じさせる要因になった。しかも、この60fps制限は2026年現在でも公式には解除されていない。上限解放MODは存在するが、あくまで非公式だ。

さらに、その60fpsすら安定しない場面が頻発した。特にオープンフィールドでのカクつき、いわゆる「スタッタリング」の問題は深刻だった。ハイスペックPC(RTX3080クラス)でも発生していたから、プレイヤー側の環境の問題ではない。シェーダーコンパイルの問題やメモリリークが原因と言われている。Easy Anti-Cheat関連の起動エラーや、Discord Overlayとの相性でクラッシュする問題も報告されていた。

PC版の最適化マジでひどい。RTX3080なのにフィールドでカクつくのは勘弁してくれ。コンソール版だと安定してるらしいから余計に腹立つ。ゲーム自体は神ゲーなだけに残念

引用元:Twitter @PCゲーマー

発売直後のSteamレビューは一時「賛否両論」まで落ちた。ゲーム内容への不満ではなく、ほとんどが技術的な問題への不満だ。「ゲームは10点満点だけど、PC版の出来は3点」みたいなレビューが大量に投稿された。

その後のアップデートで状況は改善されている。2023年3月にはレイトレーシングにも対応し、グラフィック品質は大幅に向上した。ただし、レイトレ対応にはRTX 3060 Ti以上が必要で、推奨設定ではRTX 3070 Ti以上を要求する。スタッタリングの問題も完全には解消されておらず、環境によっては今でもカクつきが出ることがある。

フロムソフトウェアはもともとPC版の最適化があまり得意ではないスタジオだ。ダークソウルの初代PC版(2012年)は30fps固定で解像度もロックされていて、有志のMODがなければまともに遊べない代物だった。ダークソウル2で少し改善され、ダークソウル3でまあまあになり、セキロで「普通」レベルに。ELDEN RINGでは規模が一気に大きくなったぶん、問題も大きくなってしまった印象がある。

PC版の設定を最適化するために、プレイヤーコミュニティがさまざまなTipsを共有している。「草の品質」「SSAO」「影の品質」「シェーダーの品質」の順に設定を下げるとフレームレートが改善されるという検証結果が広まっている。また、32GB以上のメモリを搭載している場合はページングファイルの設定変更でカクつきが軽減されるという報告もある。こういった情報が必要になること自体が、最適化不足の証拠ではあるのだけど。

同時期に発売されたオープンワールドゲームと比較すると、たとえば『Hogwarts Legacy』のPC版はDLSS対応やフレームレート上限解放など、PC版ならではの機能がしっかり搭載されていた。グラフィック面の最適化も比較的良好で、ミドルスペックのPCでも快適に動作した。このあたりはELDEN RINGが見習うべき部分だろう。

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とはいえ、PC版の問題がELDEN RINGの「ゲームとしての価値」を損なうかと言われると、難しいところだ。Steamレビューは現在「圧倒的に好評」まで回復している。最初に技術的な問題でネガティブレビューを投稿した人の多くが、アップデート後にレビューを好評に変更している。「ゲームの中身は間違いなく神ゲー。でもPC版の出来は許容範囲ギリギリ」。これがSteamコミュニティの総意に近いと思う。

なぜELDEN RINGは3,000万本も売れたのか

発売3週間で1,200万本。2024年6月に2,500万本。2025年4月に3,000万本突破。この数字は、フロムソフトウェアの過去作と比べると桁違いだ。ダークソウル3の累計販売本数が約1,000万本だから、その3倍。「ソウルライク」というニッチなジャンルから、完全にメインストリームへ躍り出た。KADOKAWAの2025年度第3四半期決算では、ELDEN RING本編およびDLCが牽引してゲーム事業が大幅伸長。ロイヤリティ収入は前年同期比で261.9%増という驚異的な数字を記録している。

なぜここまで売れたのか。いくつかの要因を分析してみたい。

マーティンの名前がもたらした「ゲーマー以外」への訴求力

ジョージ・R・R・マーティンの名前は、ゲーム業界の外にも絶大な影響力を持っている。『ゲーム・オブ・スローンズ』は世界中で社会現象となったドラマシリーズで、そのファン層はゲーマーとは重なっていない部分も大きい。「マーティンが世界観を作ったゲーム」という情報だけで、普段ゲームをやらない層にもリーチできた。

オープンワールドという形式が「死にゲー」の壁を壊した

ダークソウルは「高難度アクション」というイメージが強すぎて、手を出しづらかった。でもELDEN RINGは「オープンワールドの冒険ゲーム」としても訴求できた。SkyrimやThe Legend of Zelda: Breath of the Wildが好きな層にも「広大な世界を自由に探索できるゲーム」として刺さった。蓋を開けてみたら死にゲーだったわけだけど、その頃にはもう手遅れ。狭間の地の魅力に取り憑かれている。

SNS時代の「共有できる苦しみ」

「マルギットに勝てない」「ラダーンヤバい」「マレニアで心折れた」。こういった「共有できる体験」がSNSで拡散され続けた。死にゲーは本来フラストレーションがたまるジャンルだけど、ELDEN RINGの場合はその「苦しみ」すらコンテンツになった。「#エルデンリングワザップ」というハッシュタグでは嘘の攻略情報がネタとして大量に投稿され、コミュニティの遊び場として機能していた。

友達がみんなエルデンの話してて、マルギットで死にまくった報告がTLに溢れてて、自分もやらなきゃと思って買った。結果130時間溶けた。後悔はしていない

引用元:Twitter @ゲーム好きユーザー

「新規勢の阿鼻叫喚、すごく嬉しかった」

宮崎英高はPSアワード2022の受賞インタビューで「新規のプレイヤーさんがたくさん遊んでくれて、その阿鼻叫喚がすごく嬉しかった」と語っている。この発言にフロムソフトウェアの哲学が凝縮されている。プレイヤーが苦しんでいるのを見て「嬉しい」というのは、一見するとサディスティックに聞こえるかもしれない。でも、その苦しみの先にある達成感を確信しているからこその言葉だ。

フロムソフトウェアは「プレイヤーを信頼している」スタジオだと思う。「難しすぎるから簡単にしよう」「分かりにくいからマーカーをつけよう」「面倒だから自動でやっておこう」。そういうユーザーフレンドリーの方向に舵を切らない。プレイヤーが自分の力で壁を乗り越えることを信じている。この信頼が、結果として3,000万人のプレイヤーを生んだ。

KADOKAWAとバンダイナムコの販売力

フロムソフトウェアの親会社はKADOKAWA。パブリッシャーはバンダイナムコエンターテインメント。この2社のグローバルな販売ネットワークが、ELDEN RINGの世界的な展開を支えた。特にバンダイナムコのマーケティングは、発売前のトレーラーの出し方、メディア向けの情報解禁のタイミング、インフルエンサーへのプロモーションなど、すべてが計算されていた。海外人気に支えられ、KADOKAWAの2025年度第3四半期決算ではロイヤリティ収入が前年同期比261.9%増を記録。ゲーム事業全体を牽引する形になった。

2025年5月にはスピンオフ作品『ELDEN RING NIGHTREIGN(エルデンリング ナイトレイン)』もリリースされた。こちらは3人協力型のサバイバルアクションで、本編とはまったく別のゲームデザイン。「ダークソウルのボス戦」と「ローグライク」を掛け合わせたような構造で、毎回ランダムに変化するマップを3人で攻略し、最終ボスの「夜の王」に挑む。発売後1時間でSteam同時接続31万人を記録し、Steamの歴代24時間最大同接数としては4位にランクイン。初日200万本を突破し、最終的に世界累計350万本を突破した。日本ゲーム大賞2025の優秀賞も獲得しており、ELDEN RINGというIPの強さを改めて証明した。

NIGHTREIGNも発売直後はSteamレビューが「賛否両論」だったが、最終ボス「グラディウス」の撃破率が上がるにつれてレビューも改善され、現在は「好評」に落ち着いている。フロムゲーの特徴である「最初は理不尽に感じるけど、慣れるとめちゃくちゃ面白い」というパターンが、ここでも再現された形だ。DLC『The Forsaken Hollows(フォーセイクン・ホロウズ)』の配信も予定されており、今後もコンテンツの追加が続く。

宮崎英高はPSパートナーアワード2024の受賞インタビューで「ELDEN RING 2は考えていない」と明言しつつも、「新たな展開を否定するわけではない」とも語っている。さらに複数の新規プロジェクトが進行中で、ジャンルも多彩だという。フロムソフトウェアの次の一手が何なのか、業界全体が注目している。

正直に言う、ELDEN RINGの気になるところ

ELDEN RING その他RPG スクリーンショット4

ここまで褒めてきたけれど、長い記事で「全部最高です」なんて書くつもりはない。ELDEN RINGには確実に気になる点がある。正直に書く。

後半のボスバランスが崩壊気味

ゲーム後半、特に「火の巨人」以降のボスは、攻撃力と体力がインフレしすぎている。前半の丁寧なバランスが嘘のように、力押しの戦闘が増える。マレニアの「水鳥乱舞」は何度見ても理不尽だし、エルデの獣のカメラワークは正直ストレスフルだ。ラスボスの「エルデの獣」に至っては、広大なアリーナを走り回りながら追いかけっこをする場面が多く、「ダークソウルの良質なボス戦」からはかけ離れた印象を受ける。

前半50時間の体験は文句なしに最高。ゴドリック、レナラ、ラダーンあたりまでは「死んでも楽しい」という奇跡的なバランスが成立している。でも後半20時間は「惰性で進めている」感覚が出てくる瞬間がある。ボスの攻撃パターンが「読めるけど避けられない」タイプが増えるのは、フロムゲーのファンの間でもしばしば指摘されている点だ。特に「巨人たちの山嶺」以降のエリアは、オープンフィールドの密度も明らかに下がっている。前半のリムグレイブやリエーニエでは「歩けば何かある」状態だったのに、後半は広いだけのフィールドを延々と走らされる場面がある。開発後半に時間が足りなくなったのでは……と勘繰ってしまうほどだ。

マップの使い回しとコピペダンジョン

オープンフィールドにはカタコンベ(地下墓)やルーインズ(遺跡)といったミニダンジョンが大量に配置されている。序盤はワクワクするのだけど、中盤以降は「またこの構造か」と既視感を覚える場面が増える。カタコンベは基本的に「石像のギミックを解いて進む」パターンの繰り返しで、マップのレイアウトも似通っている。

ボスも使い回しが目立つ。坩堝の騎士は何体出てくるんだという話だし、ツリーガードも色違いが何度も登場する。メインストーリーのボスはすべてユニークだけど、サブダンジョンのボスは後半になるほどバリエーションが乏しくなり、作業化する。「また坩堝の騎士か……」と思いながらカタコンベの奥へ進む虚しさは、80時間以上プレイした人なら分かるはずだ。

ストーリーが不親切すぎる

これは先にも触れたけれど、改めて。ELDEN RINGのストーリーは「自分で掘り下げないと何も分からない」。NPCのクエストラインも、フラグ管理が複雑すぎてガイドなしでは完遂がほぼ不可能なものがある。ラニのクエストは特に有名で、何十時間もプレイした後に「え、あの時あそこに行かないといけなかったの?」と気づくことになる。ラニのエンディングを見るためには、特定の順序で特定の場所を訪れる必要があって、その導線がほぼゼロ。

NPCも、話しかけるタイミングを逃すとクエストが進行不能になることがある。特定のボスを倒す前に特定のNPCに話しかけないといけない、みたいな条件が攻略サイトなしでは絶対に分からない。フロムゲーの伝統と言ってしまえばそれまでだけど、3,000万人が遊ぶゲームにしては不親切すぎる。

エルデンリング、ゲーム部分は最高なんだけどNPCクエストだけは擁護できない。攻略見ないと絶対進められないやつ多すぎ。せめてジャーナルくらい実装してくれ

引用元:Steamレビュー

UIとチュートリアルの貧弱さ

ELDEN RINGのUI(ユーザーインターフェース)は、お世辞にも使いやすいとは言えない。アイテムの整理が面倒、装備の比較がしにくい、マップに自分でマーカーを置ける機能はあるけど種類が少なくて意味が伝わりにくい。ステータス画面の説明も不親切で、「強靱」「ポイズ」「カット率」といった用語が初見では何を意味しているのかさっぱり分からない。

チュートリアルも最小限だ。基本操作は洞窟の入口で教えてくれるけど、戦灰の付け替え方、遺灰の強化方法、ステータスの意味、属性相性の仕組みなどは自分で調べるしかない。「信仰ステータスを上げると祈祷の威力が上がる」くらいの基本的な情報すら、ゲーム内で明示されない。攻略wikiがなければ、ビルドを組むのはほぼ不可能だ。

協力プレイの仕様が古い

ELDEN RINGの協力プレイは、ダークソウルから続く「召喚サイン」方式。合言葉を設定して、特定のアイテム(「指の薬」)を使って、地面に召喚サインを書いて、ホスト側がそれを見つけて触って……。正直、2022年のゲームとしてはあまりにも面倒くさい。しかもボスを倒すとゲストが強制退出する仕様は、オープンワールドとの相性が最悪だ。「一緒に冒険する」のではなく「ボスを一緒に倒す」だけのマルチプレイ。オープンフィールドを友達と一緒に探索したいのに、それができない。

侵入(対人PvP)の仕様も賛否がある。協力プレイ中は他のプレイヤーが「侵入」してくる可能性がある。これはシリーズの伝統的な仕組みで、緊張感を生み出す要素ではあるのだけど、「友達と一緒に楽しく遊びたいだけなのに、知らないプレイヤーに殺される」のはストレスでしかないという声も多い。

このマルチプレイの不満は、スピンオフ『NIGHTREIGN』では大幅に改善されている。最初から3人協力を前提としたゲームデザインになっていて、マッチングもスムーズ。ロビーに入ってボタン一つで仲間と合流できる。本編の協力プレイがいかに時代遅れだったかを逆説的に証明してしまった格好だ。

協力プレイのスムーズさという点では『No Rest for the Wicked』も注目したいタイトルだ。Moon Studiosが手がけたソウルライク系のアクションRPGで、マルチプレイの統合がよりシームレスに設計されている。トップダウン視点のソウルライクという独自のアプローチで、フレンドとの協力プレイがストレスなく楽しめる。ELDEN RINGのマルチプレイに不満を感じた人は、一度チェックしてみる価値がある。

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ソウルライクの頂点に立つゲーム、その先にあるもの

ELDEN RINGが2022年に成し遂げたことを改めて整理しよう。

Metacritic 97点は、歴代ゲーム全体で見てもトップ15に入るスコアだ。The Game Awards 2022ではGame of the Year、Best Game Direction、Best Art Direction、Best RPGの4部門を制覇。世界中で300以上のGOTY賞を獲得した。売上は3,000万本を突破し、DLCの1,000万本を含めれば4,000万本規模のIPに成長している。2024年のSteam年間ベストでもランキング上位に返り咲き、発売から2年以上が経過しても売れ続けている。

そして何より、ELDEN RINGは「ソウルライク」というジャンルそのものの位置づけを変えた。ELDEN RING以前、ソウルライクは「コアゲーマー向けのニッチなジャンル」だった。「好きな人は好きだけど、万人向けではない」。そういう認識が業界の常識だった。

ELDEN RING以降、その常識は完全に覆された。3,000万本という数字は、「ソウルライクでもメインストリームで通用する」ことを証明した。その結果、ソウルライク系のゲームが明らかに増えている。Lies of P、Lords of the Fallen、No Rest for the Wicked、Stellar Blade。どれもELDEN RINGの成功がなければ、あそこまでの規模では作られなかっただろう。開発者へのインタビューでも「ELDEN RINGの成功を見て、このジャンルの可能性を確信した」という趣旨のコメントが頻出する。

2025年4月時点のSteam同時接続者数は約31,000人。発売から4年経ってもこの数字を維持しているのは、ゲームとしての寿命の長さを物語っている。DLCやNIGHTREIGNのリリースのたびに新規プレイヤーが流入し、コミュニティが活性化する。メッセージ(地面に書かれたヒントや罠)や血痕(他のプレイヤーの死に様)がまだまだ多く、オンラインの体験が損なわれていない。

発売から2年経ってDLCで戻ってきたけど、メッセージも血痕もまだめちゃくちゃ多い。このゲーム、みんなずっと遊んでるんだな。オンラインの人口が全然減ってなくて感動した

引用元:Steamレビュー

宮崎英高は4Gamerのインタビューで「自分たちが世界的デベロッパーとなった実感はない」と語り、「今まで通り、我々らしいものを作り続ける」と述べている。GAME Watchのインタビューでも「今まで通りの作り方をこれからも変えない」と明言した。フロムソフトウェアは「面白いゲームを真剣に作っていればそれでいい」というスタンスを崩さない。このブレなさが、結果として世界3,000万本という数字につながったのだと思う。

ELDEN RINGは完璧なゲームではない。PC版の最適化は不十分だし、後半のバランスには問題があるし、ストーリーの語り方は人を選ぶし、マルチプレイの仕様は時代遅れだ。でも、それらの欠点を補って余りある「冒険の体験」がこのゲームにはある。

ELDEN RINGがゲーム業界に与えた影響は、売上や受賞歴だけでは測れない。このゲームの成功以降、「ソウルライク」は一つのジャンルとして完全に確立された。それまで「ダークソウル系」「死にゲー」と呼ばれていたジャンルが、「ソウルライク」という名前でジャンルとして認知されるようになった。ELDEN RINGが示した「高難度だけどアクセシブル」「オープンワールドだけど密度が高い」という方向性は、後続のタイトルに明確な影響を与えている。Lies of Pがピノキオという意外なモチーフでソウルライクを作り、Lords of the Fallenが本格ダークファンタジーのソウルライクで勝負に出たのは、ELDEN RINGが切り拓いた市場があったからだ。

さらに、ELDEN RINGの「語らないストーリーテリング」と「探索の自由」は、ソウルライク以外のジャンルにも波及している。オープンワールドゲームにおける「マーカーを追いかけるだけの探索」への批判は、ELDEN RING以降さらに強まった。プレイヤーが自分で世界を読み解き、自分のペースで冒険する。この体験の価値を、3,000万人のプレイヤーが証明した。

広大なフィールドの向こうに見える巨大な黄金樹。その下に広がる未知の世界。崖の先に何があるか分からない不安と期待。洞窟の奥で待ち受ける未知の強敵。「あそこに行ってみたい」「あの敵を倒してみたい」と思わせる力が、このゲームの最大の魅力だ。

ELDEN RINGをクリアして「もっとこういうゲームがやりたい」と思った人に向けて、いくつかのタイトルを挙げておきたい。DLC『Shadow of the Erdtree』はもちろん最優先だ。本編に匹敵する、いやある意味では本編を超える体験がそこにある。

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もしまだプレイしていないなら、覚悟を決めて狭間の地に足を踏み入れてほしい。何十回も死ぬことになる。マルギットで心を折られ、ゴドリックで絶望し、ラダーンで何もかもが嫌になるかもしれない。でも、その先にある達成感は、他のどんなゲームにも替えがたい。ボスを倒したあの瞬間の震え、新しいエリアに足を踏み入れたときの興奮、隠し通路を発見したときの高揚感。全部が本物の体験だ。

セール時には大幅な値下げがされることもあるし、DLC同梱版も販売されている。これからELDEN RINGを始めるなら、本編とDLC『Shadow of the Erdtree』がセットになったエディションがおすすめだ。本編だけで80時間以上、DLCを含めれば120時間以上の冒険が待っている。さらにNIGHTREIGNも合わせれば、ELDEN RINGの世界を何百時間でも楽しめる。コスパという観点でも、これほどの体験を提供してくれるゲームはなかなかない。

そしてもし途中で挫折したなら、もう一度チャレンジしてみてほしい。勝てないボスがいたら、別の場所に行けばいい。レベルを上げて、武器を強化して、遺灰を連れて行けばいい。このゲームは「逃げること」を許してくれる。その優しさこそが、ELDEN RINGが3,000万人に愛された理由なのだから。

ELDEN RING

FromSoftware, Inc.
リリース日 2022年2月24日
サービス中
価格¥9,020
開発FromSoftware, Inc.
販売FromSoftware, Inc., Bandai Namco Entertainment
日本語非対応
対応OSWindows
プレイ形式シングル / マルチ
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