「Lies of P」韓国発ソウルライクの実力と嘘をつくダークなピノッキオの世界

ピノッキオを題材にしたゲームと聞いて、正直なところ最初は「どうせキワモノか」と思っていた。童話の世界観を流用しただけの粗製濫造品か、あるいはソウルライクのスキンだけ替えた二番煎じか——そんな先入観を抱えながらプレイを始めた。
ところが実際に手を動かしてみると、19世紀末の薄暗いクラート市で繰り広げられる死闘は本家ソウルシリーズに肉薄するクオリティで、プレイをやめられなくなってしまった。アールヌーヴォー様式の廃墟に漂う錆と機械油の臭い、暴走した人形たちの不気味な動き、そしてピノッキオという原典を大胆に解釈しなおしたダークな物語。これは間違いなく、2023年に遊んでよかった作品のひとつだ。
開発したのは韓国のNeowizとRound8 Studio。韓国のスタジオが本格的なソウルライクに挑んだ作品として、2023年のリリース当時から海外でも大きな注目を集めた。メタスコアはPC版81点、PS5版82点、Xbox Series X版84点。Steam同時接続数は発売直後に5.7万人を記録した。「フロム以外がソウルライクを作るとこうなる」という1つの回答を、Round8 Studioはしっかり示してくれた。
さらに2025年6月にはプリクエルDLC「Overture」もリリースされ、本編からさらにボリュームが追加された。今から始めるなら、本編+DLCで35〜40時間は遊べる計算だ。ソウルライク好きなら今が買いどきといっていい。
- ダークソウルシリーズを遊んだことがあり、似たゲームを探している人
- 「ピノッキオ」という世界観がソウルライクに合うのか気になっている人
- 韓国発インディーゲームの実力を知りたい人
- 武器カスタマイズを突き詰めたいビルド好きのプレイヤー
- DLC「Overture」が気になっているが本編からプレイすべきか迷っている人
- 死にゲーに興味があるが難易度が心配でためらっている人
基本情報
| タイトル | Lies of P(ライズ オブ ピー) |
|---|---|
| 開発 | Round8 Studio |
| パブリッシャー | Neowiz |
| 発売日 | 2023年9月19日 |
| 対応プラットフォーム | PC(Steam/Epic)、PS4、PS5、Xbox One、Xbox Series X|S |
| エンジン | Unreal Engine 4 |
| ジャンル | ソウルライク・アクションRPG |
| 日本語対応 | 字幕あり(音声は英語) |
| メタスコア | PC:81 / PS5:82 / Xbox Series X:84 |
| DLC | Lies of P: Overture(2025年6月6日リリース) |
| 価格 | 本編約6,500円、DLC約4,700円(Steamでの参考価格) |
ダークな19世紀末クラート市——世界観の圧倒的な密度

Lies of Pの最大の武器は、間違いなくこの世界観の作り込みだ。舞台は19世紀末ヨーロッパ風の架空都市クラート。ベル・エポック時代の華やかな文化と、人形(パペット)が暴走し廃墟と化した恐怖が共存している。
街には豪奢なホテルや劇場、アールヌーヴォー様式の建築物が並んでいるのに、路地を1本入れば血と錆と機械油の臭いが漂ってくるような空気がある。かつての繁栄を示す豪華な装飾と、そこに這いずる人形の残骸と骸骨が混在するビジュアル。このコントラストの設計が本当に巧みで、ゲームの中に入り込むような没入感はソウルシリーズにも引けを取らない。
主人公Pはピノッキオがモデルのパペット(人形)。彼に課されたミッションは「ゲペット(父親)を探すこと」。その過程で人形たちがなぜ暴走したのかという謎が少しずつ解き明かされていく。原作ピノッキオの要素——コオロギ、ブルー・フェアリー、ロバへの変身、木から人間になるという物語——が巧みに組み込まれており、原典を知っていると驚きと発見の連続だ。
ゲペットが住む「グランド・エアライン・ホテル」はゲームの拠点として機能し、物語が進むにつれて少しずつ人が集まってくる。この拠点の居心地がよく、新しいNPCが加わるたびに会話が変化し、物語への理解が深まっていく。「ゲームを進める動力」として機能している拠点の設計は、ソウルシリーズの「火継ぎの祭祀場」に匹敵する。
「世界観が別格。こういう雰囲気のゲームをずっと待っていた。廃墟になった高級ホテルのエリアなんかは特に美しくて、戦闘そっちのけでスクリーンショット撮りまくった。BGMも完璧で、ところどころに流れる生演奏っぽいピアノが雰囲気を完璧に高めてくれる」
Steam レビュー より
グラフィックの水準はかなり高い。UE4を使っているが、パーティクルエフェクト、ライティング、テクスチャのクオリティはAAA作品に遜色ない。特に夜のクラート市を照らすガス灯の柔らかい光と、朽ちた建物の影のコントラストは何度見ても飽きない美しさだ。ここに関しては文句のつけようがない仕上がりだ。
音楽が異色——クラシック名曲のカバーが随所に
Lies of Pのサウンドトラックには、ゲームとしては非常に珍しい試みがある。ゲーム内に「レコード」というアイテムが存在し、それを拾って拠点のレコードプレイヤーに乗せると、クラシック音楽やポップスのカバー曲が流れる。
「月の光」(ドビュッシー)、「剣の舞」(ハチャトゥリアン)、「星に願いを」(ディズニー)——これらが美麗なオーケストラアレンジで流れたとき、クラート市の廃墟との組み合わせが絶妙な哀愁を生んでいる。特に「星に願いを」のアレンジは、ピノッキオという原典と結びついてじんわりとした感情を呼び起こした。
「拠点でレコードを聴きながら武器の整理をするのが好きになった。雰囲気があって、この一瞬だけはクラート市の住人になれたような気持ちになる。地味な要素だけど、このゲームの世界観を象徴している」
Steam レビュー より
レコードはゲーム内各所の宝箱や敵ドロップで入手できるため、収集するモチベーションにもなる。探索意欲を自然に引き出す設計として上手く機能している要素だ。
「嘘をつく」という唯一無二のシステム
ゲームのタイトルにもなっている「嘘」のシステムは、Lies of Pを語る上で外せない要素だ。本来、人形は嘘をつけない存在として設定されている。しかしPは物語を通じて「嘘をつく能力」を持つ特別な存在として描かれる。
ゲーム中、NPCとの会話でいくつかの選択肢が提示される。その中に「嘘をつく」という選択があり、それを選ぶたびにPの「人間性」が高まっていく。人間性の度合いによって物語の分岐が変わり、エンディングにも影響する。
- 会話選択肢で「嘘」を選ぶと人間性ゲージが上昇
- 人間性が高まるとPは感情や涙を持ち始める
- エンディングは大きく3種類に分岐(真実を語り続けた結末、嘘をついた結末など)
- 2周目以降はすべての選択肢を経験できる
- 特定のNPCへの選択次第でアイテムや情報が変化する
嘘システムのおもしろいところは、「嘘をつくこと」がゲームシステムとして明示されているにもかかわらず、何が嘘で何が真実かプレイヤー自身がわからなくなる場面があることだ。Pが嘘をつくたびに「これは本当に嘘なのか、それとも彼にとっての真実なのか」という疑問が生まれる。
たとえば、ゲーム中盤である人物に「あなたは死んだ人の代わりを演じているのか」と問われる場面がある。この質問に「違う」と答えるのは嘘になるのか、それとも彼の内面の真実なのか——この種の哲学的な揺らぎが随所に仕込まれており、深く考えながら進めることができる。
正直、戦闘だけやっていると「嘘をついたかどうか」が結末にどう影響するかを後半まで実感しにくい。でも2周目を始めて過去の選択の意味がわかってくると、ストーリーへの理解がグッと深まる設計になっている。1周クリアしただけで終わりにするのはもったいない。
「2周目で選択を変えたら全然違う展開になってびっくりした。1周目で気づかなかったNPCのセリフの意味がわかってきて、ストーリーの深みに気づいた。特に終盤の展開は嘘の積み重ねによって意味が変わってくる」
4Gamer.net ユーザーレビュー より
武器カスタマイズ——ブレードと柄の「調合」が戦略の核心

Lies of Pの戦闘システムで「これはフロム作品と違う」と感じさせてくれる最大の要素が、武器の調合システムだ。
すべての武器は「刀身(ブレード)」と「柄(ハンドル)」の2パーツで構成されている。このふたつを自由に組み合わせて新しい武器を作ることができる。調合はNPCのユージニーか、スターゲイザー(チェックポイント)から直接アクセスできる。
- 刀身:ダメージ量・属性(炎・電気・酸)・基本的な攻撃力を決定する
- 柄:攻撃モーション・スタンス・使用スキル(フェイタル・ムーブ)を決定する
たとえば、リーチの長い細剣の刀身に素早いモーションの短剣の柄を組み合わせれば、速度重視の長剣スタイルが作れる。重い大剣の刀身に特殊技を持つ柄を付けて、遅いが一撃が重いトリッキーな戦い方にする、といったアレンジも可能だ。
ベースとなる武器は40種類以上あり、理論上の組み合わせは膨大。ビルド沼にハマりたいプレイヤーにとってはたまらない要素で、「この柄のモーションに、この刀身の属性を乗せたらどうなるか」という試行錯誤が楽しい。
さらに、武器にはグリモアシャードを使って強化する「サンドバースト」「エレクトリックブリッツ」などの属性追加も可能。物理ビルドに一部属性を混ぜるハイブリッド構成も十分に実用的で、攻略に行き詰まったボスに対して属性を変えて試すという戦略も取れる。
「武器の組み合わせが楽しすぎて攻略そっちのけで調合ばっかりやってる。ダクソにはないLies of P独自の良さがここにある。どの武器も一長一短があって、完全な最強武器がないのも好き」
Steam レビュー より
義手「リージョンアーム」——左腕の戦略的活用
主人公Pの左腕は機械の義手「リージョンアーム」。これは戦闘における第2の武器であり、右手の武器とは独立した多彩な能力を持つ。
リージョンアームは付け替え可能で、主なバリエーションは以下のとおり。
| アーム名 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|
| ファルコンアイ | 爆発弾を射出 | 遠距離牽制、スタン狙い |
| フレイムバースト | 火炎を継続放射 | 炎上蓄積、近距離圧力 |
| イージス | 灼熱シールドによるガード | 防御重視ビルド |
| ウィンドスラッシュ | 衝撃波を発射 | 多数の敵への牽制 |
| サンダーコール | 電撃を放射 | 電気属性蓄積、麻痺狙い |

リージョンアームの使い方で戦闘スタイルが大きく変わるため、ボスや状況に合わせて付け替えながら攻略する楽しみがある。スタミナとは別の「フェルルム」というゲージで管理されるため、右手の武器攻撃とうまく組み合わせるのがコツだ。
個人的には、ファルコンアイをボス戦の開幕に使ってひるみを取り、その隙に一気に攻め込む戦術がとても便利だった。リージョンアームは決して「おまけ要素」ではなく、戦闘の核心に絡んでくる重要な要素だ。
「義手の切り替えが面白い。ボスによって最適な義手が変わるのでそこも攻略の幅になっている。炎ボスには電気、電気ボスには酸みたいな属性の読み合いがある」
Steam レビュー より
ジャスガとパリィ——戦闘の核心と「慣れるまでの壁」
Lies of Pの戦闘で最初に躓くのが、このジャストガード(ジャスガ)のシステムだ。ブロードソードのような武器でも「盾」は存在せず、防御は基本的にジャスガで行う。
敵の攻撃に合わせてジャストのタイミングでガードボタンを押すと、ジャスガが成立してダメージを大幅に軽減しつつ相手をスタンに持ち込める。成功したときのリターンが大きく、これを使いこなせるかどうかが攻略速度に直結する。
ジャスガが成立すると敵の武器が弾かれる独特のエフェクトが出て、そこから「ブレイク攻撃」という大ダメージの追撃が可能になる。ソウルシリーズのパリィに近いが、タイミングが若干異なり、ガードの「受付窓」がやや広め。その分、リターンはパリィよりも小さい設計になっている。
タイミングが合わないうちは無理に狙わず、まず回避を軸に戦うのが安全。ジャスガのタイミングはエフェクトが出るタイミングより少し早め。体で覚えるしかないが、慣れると爽快感が段違いになる。序盤の雑魚敵でタイミングをつかんでから本格的なボス戦で使うのがコツ。

ただ、ここには正直に言うと不満もある。敵の一部の攻撃モーションと、ジャスガが要求するタイミングがかみ合っていないと感じる場面がある。モーションが長いのにジャスガ受付が狭い技や、逆に早め入力が要求される攻撃の判定が不規則に感じることがあった。特に中盤以降の人型ボスで「見た目は同じモーションなのに、前の攻撃とタイミングが全然違う」という場面が複数あり、ここは改善の余地があると感じた。
「ジャスガの受付が狭いのか敵のモーションが変なのかわからないけど、似たような見た目の攻撃でタイミングが全然違うのがある。ダクソのパリィより覚えにくい感じがした。これは不満点として言っておきたい」
Steam レビュー より
2025年6月のDLCリリースに合わせたフリーアップデートで、新たな難易度選択肢が追加された。「ソウルライクを遊んだことはあるが、死にゲーとしての難度は少し抑えたい」という人には朗報だ。難易度を下げても世界観やストーリーは完全に楽しめる。
スタミナ管理と「ターニングポイント」——連携攻撃の醍醐味
戦闘のもうひとつの核心がスタミナ管理だ。攻撃・ダッシュ・ガードのすべてがスタミナを消費し、スタミナ切れの状態で攻撃を受けると大ダメージになる「ガード崩し」が発生する。
ここで重要になるのが「ターニングポイント」という独自システム。敵を攻撃し続けることでゲージが溜まり、ターニングポイントを発動すると敵がよろめいて大きな隙ができる。このターニングポイントをどのタイミングで使うかが、上位プレイヤーと初心者の分かれ目になる。
「攻め続けることで有利になる」という設計は、守りに入りがちなプレイヤーを自然と前に向かせる効果がある。ダークソウルのように「慎重に待ちながら隙を突く」スタイルより、少し積極的に攻めることを求められる戦闘システムだ。
ボス戦——語り継がれる名戦と理不尽の境界線

Lies of Pのボスは全部で20体以上。ソウルライクのお約束として、何度も死んでパターンを覚えていく設計だ。
序盤のボス「パペット・オブ・フューチャー」は事実上のチュートリアルで、ゲームの操作感をつかむには最適な難易度。しかし「クォーターフィスト・ホテル管理人」あたりから本格的な洗礼が始まる。
特に語り継がれているのが中盤以降のボス群で、「ロミオ」「聖なる名声の騎士」あたりから本格的に死者が増え始める。Steamのディスカッションにも「ロミオで30回以上死んだ」「聖なる名声の騎士が倒せない」という書き込みが多数あり、ここでのハードルの高さは折り紙つきだ。
「ロミオ戦は本当に悔しかった。何度も何度も死んで、ようやく倒した瞬間の達成感はソウルシリーズと同じ気持ちになれた。あの絶望感と達成感の落差が死にゲーの醍醐味だとわかった」
Steam レビュー より
一方で、一部のボスに「理不尽」という声もある。攻撃範囲が広すぎてロールで抜けにくいもの、複数の攻撃をほぼ切れ目なく繰り出してくるもの。ソウルシリーズのような「理不尽に見えて実は覚えれば対処できる」という設計に近いが、一部はその線を超えていると感じた。
特に「防御寄りのプレイヤー」が厳しいと感じるのが後半ボスで、彼らは積極的に距離を詰めてくる上に、攻撃のヒット数が多い。ジャスガを使わずにローリング回避だけで乗り切ろうとすると、スタミナ切れで詰む場面が出てくる。このゲームで生き残るにはジャスガの習得がほぼ必須という設計は、好みが分かれるところだ。
ただ、「クリアできないほど理不尽」ではなく、「理不尽だと思いつつ最終的には勝てる」ラインに収まっているのが巧みなバランスだ。クリアしたときの達成感は本家ソウルシリーズと同等か、それ以上のものがある。
「本家に比べてオリジナリティが薄い」という批判への正直な見解
Lies of Pへのネガティブな評価でもっとも多いのが「ダークソウルのパクリ感が拭えない」という意見だ。これは事実として否定しにくい。
ゲームの骨格——かがり火(スターゲイザー)でのリスポーン、エスト瓶に相当する回復アイテム(スペクトラルバター)、落としたエルグ(ソウルに相当するリソース)を拾いに行くデスペナルティ——これらはどれもダークソウルを強く想起させる。ゲームを始めて最初の1時間は「ダークソウルをうまく再現したゲーム」という印象が先行する。
「良くできているのはわかるんだけど、フロムゲーを知っていると『これはあれだな』という感じが拭えない。独自システムの武器調合を中心に据えてほしかった。世界観は好きだけど骨格がほぼダクソ」
4Gamer.net ユーザーレビュー より
ただ、これを大きな欠点と捉えるかどうかはプレイヤーの立場によって変わる。「フロムゲーが好きで、もっと遊びたい」という人にとっては、このゲームは正解だ。武器調合と義手という独自要素が十分に存在感を持っており、「単なるクローン」を超えた体験が待っている。
また、ソウルライクのシステムを「土台」として使うことで、プレイヤーは操作に慣れる時間を短縮できるという側面もある。独自性が低い分、ソウルライク経験者は最初からゲームの楽しみ方を理解した状態でスタートできる。この「親しみやすさ」は欠点でもあり武器でもある。
韓国ゲームがここまでのクオリティでソウルライクを作り上げたことへの評価は素直にしておきたい。Round8 Studioが次作でどれだけオリジナリティを出してくるか、楽しみにしている。
探索要素と隠し要素——ソウルシリーズより線形だが、発見の喜びはある
マップ構造について正直に言うと、Lies of PはダークソウルシリーズやElden Ringと比べてオープンな探索要素が少ない。ほぼ一本道の進行で、分岐は「この先のエリアに行く前に、脇道を探索するか」という程度だ。
とはいえ、各エリアには隠し部屋やショートカット、隠しボスへの扉が随所に用意されており、丁寧に探索すると「ここに抜け道があったのか」という発見が得られる。また、NPCが特定の条件を満たすと拠点に来てくれる仕組みがあり、「あのエリアでサイドクエストを達成していなかったために、あのNPCが拠点に来なかった」という周回への動機付けがうまく機能している。
- 壁を調べると開く隠し部屋(レコードや上位装備が入っていることが多い)
- NPCの会話に応じることで発生するサイドクエスト
- 特定のアイテムを届けることで変化するNPCの状態
- エリアボスを倒さずに通過できる迂回ルート
- ボス撃破後のエリア再探索(新しいアイテムが出現することがある)
探索の自由度を求めるプレイヤーには物足りないかもしれないが、「一本道を丁寧に作り込む」という方向性は世界観の密度につながっている。散漫にならず、クラート市という一つの都市の物語を深く掘り下げる設計は正しいアプローチだと思う。
DLC「Overture」——プリクエルとして2025年6月リリース

2025年6月6日、Summer Game Fest 2025でのサプライズシャドウドロップという形でDLC「Overture」がリリースされた。価格は約4,700円(Steam価格29.99ドル)。プレイ時間は15〜20時間とアナウンスされており、本編の前日譚にあたる内容だ。
DLCのストーリーは「パペット・フレンジー」——つまり人形が暴走し始めた最初の出来事を描く。なぜクラート市があんな状態になったのか。本編では断片的にしか語られなかった背景が、この前日譚で明らかになる。本編でのキャラクターが「あの頃」どんな立場にいたかがわかり、本編のセリフや出来事の意味が新たに見えてくる。
- 新エリア複数(本編と遜色ない規模・作り込み)
- 新ボス多数
- 新たな敵タイプと戦闘拡張
- ボスラッシュモード2種(通常・ハード)
- 難易度を下げる選択肢の追加(フリーアップデートとして全ユーザーに配信)
- アクセシビリティ改善アップデート
本編をクリアしていないうちにDLCから入るのは難しい。ストーリーの文脈がわかってこそ前日譚が生きてくる作りになっているので、必ず本編から始めることをすすめる。本編クリア後にDLCに入ると、「ああ、あの人物がこういう経緯で……」という発見が連続する体験ができる。
「OvertureはDLCとして見ると破格のボリューム。本編と同じクオリティの新エリアが複数あって、29ドルは安いと思う。ただ本編未プレイで入るのはおすすめしない。本編で積み上げた理解があってこそ楽しめる前日譚だから」
Game Informer レビュー より
ソウルライク初心者はLies of Pから入れるか
「死にゲーに興味はあるけど、ダークソウルは敷居が高い」という人にとって、Lies of Pはどうか。
結論から言うと、ソウルライクの入門として実はかなり向いている。理由を細かく挙げる。
まず、ゲームとしての丁寧な作りが目立つ。チュートリアルが比較的わかりやすく、「何をすればよいかわからない」という初心者あるあるの迷子状態になりにくい。ダークソウルの「理不尽なほどに突き放す」設計と比べると、親切な部分が多い。
次に、2025年のアップデートで難易度選択肢が広がった。今やいきなり高難度からスタートする必要はなく、自分のペースで世界観を楽しみながらスキルを磨いていける。
さらに、世界観の引きが強いのも初心者に優しい要素だ。「次のエリアが見たい」「次のボスはどんな見た目か」という期待感がゲームを進める動力になり、「難しくてやめたい」という気持ちを中和してくれる。
「ダクソは友人に勧められて挫折したけどLies of Pはクリアできた。世界観が好みだったのもあるけど、難易度のバランスがちょうどよかった気がする。初めて死にゲーをクリアできた」
Steam レビュー より
ただし注意点もある。ジャスガのシステムは最終的には覚えないと厳しくなる場面が出てくる。「ガードをしっかり使えれば大丈夫」という感覚でいると、後半ボスで詰まりやすい。ソウルライク初心者でも、序盤のうちにジャスガを積極的に練習しておくことをすすめる。
PCでの動作とスペック
| 最低スペック | 推奨スペック | |
|---|---|---|
| OS | Windows 10 64bit | Windows 10/11 64bit |
| CPU | Intel Core i5-8600 / AMD Ryzen 5 3600 | Intel Core i7-8700 / AMD Ryzen 7 3700X |
| メモリ | 12GB RAM | 16GB RAM |
| GPU | NVIDIA GTX 1060 / AMD RX 5500 XT | NVIDIA RTX 2080 / AMD RX 6800 |
| ストレージ | 50GB以上 | SSD 50GB以上 |

PC版の安定性については発売当初から評判が高く、フリーズやクラッシュの報告がほとんどない。ソウルライク系のPC移植は最適化が甘いことがあるが、Lies of Pは最初からPC向けに丁寧に作られている印象だ。推奨スペック帯のPCであれば60fps安定でプレイできる。
Steam版はコントローラー対応が良好で、DualSenseのハプティクスフィードバックにも対応。PC+PS5コントローラーという組み合わせで遊ぶと、ジャスガ成功時の振動フィードバックが追加され、没入感がさらに上がる。
韓国ゲームとしての歴史的意義

少し大げさな見出しかもしれないが、Lies of Pは「韓国ゲーム史」という視点でも語られる作品になった。
それまで韓国のゲーム産業はMMORPGが主戦場で、シングルプレイのARPGとして世界市場に通用するタイトルを出したスタジオはほとんどなかった。Lies of Pはその状況を変えた一作であり、メタスコア80以上という評価はその証明だ。
日本でも「韓国製ソウルライク」という切り口で話題になり、Steam発売後にはプレイヤーの間で「これは本当に韓国製なのか」という驚きの声が多数上がった。クオリティを疑われるほどの完成度というのは、ある種の最大の賛辞だ。
Round8 Studioという名前は今後のゲーム業界で間違いなく注目され続けるだろう。DLC「Overture」の評価次第では、Lies of P 2(仮)の期待も高まってくる。
良い点・惜しい点——正直な評価まとめ
- 19世紀末ゴシックの世界観とグラフィックが別格に美しい
- 武器調合システムがソウルライクの戦略性をさらに深めている
- 嘘システムによるストーリー分岐が2周目の動機付けになる
- 技術的な安定性が高い(フリーズ・クラッシュがほぼない)
- ボスデザインが個性的で、クリア時の達成感がある
- DLC「Overture」で本編との物語がつながる
- サウンドトラックが特徴的で世界観に深みを与えている
- PC版の安定動作とコントローラー最適化が良好
- ゲーム骨格のダークソウル類似性は否定できず、オリジナリティ不足感がある
- 一部ボスのジャスガタイミングと攻撃モーションの噛み合いに難あり
- 日本語音声なし(字幕のみ)
- 中盤以降の難易度上昇が急で、ソウルライク未経験者には厳しい場面がある
- マップが線形的で探索の自由度はソウルシリーズより低め
- 一部後半ボスの攻撃パターンが「理不尽」と感じる場面がある
まとめ——「ソウルライクが好きなら買って損なし」と言える理由
Lies of Pを一言で表すなら、「丁寧に作られたソウルライクの優等生」だと思う。
独創性という点ではフロム作品に及ばない。でも、19世紀末ゴシックという世界観の再現度、武器調合の戦略的な深さ、嘘システムによるストーリーの重みは、Lies of P固有の魅力だ。これらの要素があるから「単なるクローン」ではなく、独立した体験として記憶に残る。
プレイ中に何度も思ったのは、「このゲームを作ったチームは本当にソウルライクが好きなんだな」ということだ。好きなものをリスペクトしながら、自分たちの世界観で作り上げた誠実さが伝わってくる。その誠実さが、メタスコア80以上という評価につながっているのだと思う。
2025年6月にリリースされたDLC「Overture」は本編との物語を完成させる良質なプリクエルで、今から遊ぶなら本編+DLCのセットで35〜40時間の体験が待っている。
「ダークソウルが好き」「ピノッキオ原作のダークな世界観が気になる」「韓国発ゲームの実力を確かめたい」——どのモチベーションでも、プレイの価値はある。ソウルライク好きなら、今すぐSteamのページを開いてほしい。
- ソウルライク経験者:迷わず買ってよい。本家と比較しながら楽しめる良質な作品
- ソウルライク初心者:世界観が気に入ったなら入門作としてちょうどいい難易度
- DLC「Overture」:本編クリア後に購入推奨。前日譚として本編理解が前提
- Steam定期セール時(30%〜40%オフになることがある)を狙うとコスパが高い
- GamePassに収録された実績あり。加入中なら追加費用なしで試せる可能性がある

