「Limbus Company」韓国インディーが生んだ神曲と罪のダークRPG

目次

韓国インディーが生んだ「神曲RPG」、その中毒性の正体

Limbus Company 未分類 スクリーンショット1

「このゲーム、3章までは正直よくわからなかった。でも4章から急にストーリーが化けて、気づいたら朝4時だった」

こういう感想、リンバスカンパニーのプレイヤーなら一度は聞いたことがあるだろう。Steamレビューでも、Twitter(X)でも、掲示板でも、同じことを言っている人がたくさんいる。あるいは自分自身がそうだった、という人も多いんじゃないだろうか。

『Limbus Company(リンバスカンパニー)』は、韓国のインディースタジオProject Moonが2023年2月27日にリリースしたターン制RPGだ。基本プレイ無料のガチャゲーでありながら、Steamレビューは10万件を超えて92%が好評という「圧倒的に好評」の評価を獲得。2025年にはSteam同時接続者数が11万人を突破し、リリースから3年以上経った今もなお右肩上がりでプレイヤーを増やし続けている。

正直に言うと、最初の印象は「ちょっと取っつきにくいな」だった。UIは独特だし、戦闘システムの説明は少ないし、キャラクターの名前はダンテにファウストにドンキホーテ。「これ何のゲーム?」と戸惑うプレイヤーは少なくない。人格? E.G.O? 罪悪共鳴? 専門用語が飛び交う中で「もういいや」と投げ出す人がいるのも無理はないと思う。

でも、その最初のハードルを超えた先にあるものがとんでもなかった。

ダンテ・アリギエーリの『神曲』をベースにした重厚な世界観。ターン制でありながらリアルタイムの読み合い要素が絡む独特の戦闘。そして「ガチャゲーなのにここまでやるのか」と言いたくなるほど容赦ないストーリー。カフカの『変身』、カミュの『異邦人』、メルヴィルの『白鯨』——世界文学の名作をモチーフにしたキャラクターたちが織りなす物語は、スマートフォンの小さな画面で読んでいることを忘れさせるほどの密度を持っている。

このゲームには、一度ハマると抜け出せなくなる何かがある。そしてその「何か」を言語化するのが、思いのほか難しい。

だからこの記事では、リンバスカンパニーがどんなゲームなのか、何がそこまでプレイヤーを惹きつけるのか、そして正直に気になるポイントも含めて、できるだけ丁寧に掘り下げていく。「名前は聞いたことあるけど手を出していない」という人にこそ読んでほしい。

「Limbus Company」公式トレーラー

Project Moonという開発者を知ると、楽しさが倍になる

Limbus Company 未分類 スクリーンショット2

三部作で紡がれるディストピア世界

リンバスカンパニーを理解するには、まずProject Moonというスタジオの歩みを知っておくと楽しさが倍増する。というか、正直なところ「Project Moonのゲームだから」という理由だけでプレイしている人が大量にいる。それくらい、このスタジオにはファンの信頼が厚い。

Project Moonは韓国のインディーゲームスタジオで、従業員数は約30人。大手の100分の1以下の規模だ。そんな小さなチームが、これまでに3本のゲームを世に送り出している。

1作目が『Lobotomy Corporation(ロボトミーコーポレーション)』。2018年にリリースされたこの作品では、プレイヤーはL社(ロボトミーコーポレーション)の管理人として「幻想体」と呼ばれる異形の存在を収容・管理する。SCP財団にインスパイアされたような収容シミュレーションで、一見かわいらしい見た目の幻想体が突然職員を殺し始めるという、見た目と中身のギャップに心を折られるゲームだった。海外のインディーゲーマーの間で熱狂的なファンを獲得し、Project Moonの名を知らしめた作品だ。

2作目が『Library of Ruina(ライブラリーオブルイナ)』。2021年8月にリリースされ、1作目の結末で発生した「白夜と暗黒の日」と呼ばれる事件を経て生まれた「図書館」を舞台に、カードバトルで物語が展開される。1作目のAIであるアンジェラがロボトミーコーポレーションの「光の種」から図書館を創り出すという壮大な設定で、ストーリーの濃密さと伏線回収の鮮やかさに多くのプレイヤーが衝撃を受けた。「Project Moonのシナリオは信頼できる」という評判を確固たるものにした作品であり、難易度も高く、やりごたえがあるゲームとして今もSteamで高い評価を維持している。

そして3作目がリンバスカンパニー。この3作はすべて同じ世界を共有している。舞台は「都市」と呼ばれるディストピア世界。26の巨大企業——通称「翼」——が社会を支配し、一般市民は企業の思惑に振り回されながら生きている。エネルギー資源の独占、階層化された居住区、企業間の武力抗争。格差と搾取と理不尽が日常に溶け込んだ世界観だ。

現代社会の暗部を煮詰めて、SFとファンタジーのフィルターを通したような世界。「巨大企業に支配された社会」というテーマは、現実の経済格差や労働問題と重なる部分も多い。だからこそ、フィクションでありながら妙にリアルに感じる瞬間がある。

この世界観の作り込みは、ゲームの隅々にまで行き届いている。街の掲示板に貼られたチラシ、NPCの何気ない会話、敵キャラクターの設定文——すべてが「都市」という世界の一部として整合性を持っている。世界観に没入できるRPGが好きな人にとって、この緻密さはたまらないだろう。ペルソナシリーズが現代日本の日常をリアルに描写することで没入感を生み出しているように、リンバスカンパニーはディストピア世界の「日常」を丁寧に描くことで、プレイヤーをその世界の住人にしてくれる。

リンバスカンパニーの位置づけ

リンバスカンパニーでは、プレイヤーは時計の頭を持つ管理人「ダンテ」となり、12人の囚人を率いてL社(ロボトミーコーポレーション)の各支部を巡り、「黄金の枝」を回収するミッションに挑む。

ゲームの構造自体がダンテ・アリギエーリの『神曲』をなぞっている。案内人のヴェルギリウスとともに「地獄」を旅するという構造。メインストーリーの大枠が「地獄」編と括られていることからも、原典へのリスペクトの強さがうかがえる。

ダンテは特殊な存在だ。時計の頭を持ち、チクタクという音で囚人たちと意思疎通を行う。外部の人間には単なる時計の音にしか聞こえないが、囚人たちにはダンテの意図がちゃんと伝わる。そして何より、囚人たちが致命傷を受けたとき、その凄絶な痛みをダンテがすべて肩代わりする。管理人としての代償は、想像を絶するほど過酷だ。

前2作をプレイしていなくても物語は楽しめるように設計されている。リンバスカンパニー単体でも充分に成立するストーリーだし、「都市」の世界観は本作だけでも理解できるようになっている。でも、前2作をプレイしていると、物語の深みが段違いになる。「あのキャラが!」「あの組織が!」「1作目のあの結末が、ここに繋がるのか!」という興奮が至るところにある。

特にロボトミーコーポレーションで描かれた「幻想体」という概念が、リンバスカンパニーのE.G.Oシステムの根幹に関わっている。前作を知っていると「この幻想体のE.G.Oが使えるのか!」という感慨があるし、前作では恐怖の対象だった存在の力を自分で振るえるという逆転が気持ちいい。シリーズファンにとっては感涙ものの仕掛けが随所に散りばめられていて、リンバスカンパニーをきっかけに前2作を遡ってプレイする人も後を絶たない。

12人の囚人——文学の名を冠する個性派集団

リンバスカンパニーの主役は、ダンテが率いる12人の囚人たちだ。イーサンゴ、ファウスト、ドンキホーテ、良秀、ムルソー、ホンル、ヒースクリフ、イシュマエル、ロージャ、シンクレア、リュオシエン、グレゴール。全員が世界文学の登場人物から名前を取られている。

ダンテの『神曲』、ゲーテの『ファウスト』、セルバンテスの『ドン・キホーテ』、芥川龍之介の『地獄変』(良秀)、カミュの『異邦人』(ムルソー)、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』(ヒースクリフ)、メルヴィルの『白鯨』(イシュマエル)、ドストエフスキーの『罪と罰』(ロージャ)、ヘッセの『デミアン』(シンクレア)、カフカの『変身』(グレゴール)——Project Moonの教養の深さが光る人選だ。

しかもこれは単なる名前借りじゃない。各章のストーリーテーマが元ネタとなる文学作品の主題と呼応するように作られている。ムルソーの章にはカミュ的な不条理が漂い、グレゴールの章にはカフカ的な疎外感が満ちている。ヒースクリフの章には『嵐が丘』の激情と復讐が反映されているし、ロージャの章にはドストエフスキーの『罪と罰』における「許されざる罪」のテーマが色濃く出ている。

文学を知らなくても楽しめるけど、知っていると「だからこのキャラはこういう選択をしたのか」「この展開は原典のあのシーンのオマージュだ」という二重の読み方ができる。考察好きなプレイヤーの心を鷲掴みにしている理由のひとつだ。

12人それぞれの個性も抜群だ。ドンキホーテの猪突猛進っぷりは見ていてハラハラするし、ファウストの冷静で辛辣な皮肉は毎回キレ味がいい。イシュマエルはどんなシリアスな場面でも食べ物に目がなく、シンクレアは年少ゆえの繊細さが胸に刺さる。ホンルの知性と観察眼、ムルソーの徹底した無関心、リュオシエンの謎めいた佇まい——12人全員が立っていて、「推し」が見つからないプレイヤーの方が珍しい。

シリアスな展開の合間にも彼らの掛け合いがクスッと笑わせてくれて、「このメンバーでずっと旅をしていたい」と思わせる魅力がある。そしてだからこそ、ストーリーで彼らに過酷な運命が降りかかるとき、プレイヤーの受けるダメージも大きい。「好きになったキャラを容赦なく追い詰める」——Project Moonはそれが本当にうまい。うまいからこそ辛い。でもその辛さが、物語の深みになっている。

そしてゲームシステムの根幹にあるのが「人格」の仕組み。各囚人には複数の「人格」が存在し、装着する人格によって性能がガラリと変わる。たとえばファウストに「七協会の人格」を装着すれば支援型になり、「裏街道の人格」を装着すれば攻撃型になるといった具合だ。同じキャラクターでも役割が変わる——RPGにおけるジョブチェンジに近い感覚で、編成の自由度が広い。

人格はガチャ(ゲーム内では「抽出」と呼ぶ)で入手する。最高レアリティ(星3)の排出率は2.9%。原神やスターレイルの星5排出率(0.6%)と比べるとかなり高い。体感としても「10連回せば1体は出る可能性がある」レベルで、ガチャ運が普通であれば大きなストレスにはならない。

そしてガチャで出なくても「欠片」を集めることで確定交換できるシステムがあるのが大きい。人格欠片はミラーダンジョンの周回やシーズンパスで入手できるもので、コツコツ集めれば欲しい人格を確実に手に入れられる。無課金でも月に2体前後の星3人格を交換で入手できる計算で、これはガチャゲーとしてはかなり良心的だ。「ガチャ運に左右されず、プレイ時間が報われる」という安心感がある。

サービス開始2週間目にして、もう課金する必要がほぼないレベルの優良ゲーとして話題になってる。バトルパスも1,500円の買い切りで、課金圧はガチャゲーの中でもかなり低い

引用元:あにまん掲示板

この評判はリリースから3年経った今もほぼ変わっていない。ガチャゲーにおいて「課金しなくてもちゃんと遊べる」という信頼感は、長期的なプレイヤー定着に直結する。Project Moonはそこをしっかり理解しているスタジオだと感じる。

戦闘システム——「罪悪共鳴」と「E.G.O」が生む独自の戦略性

ターン制なのに「マッチ」がある

リンバスカンパニーの戦闘システムは、一般的なターン制RPGとはかなり毛色が違う。「ドラクエやFFのようなコマンドバトル」をイメージしていると、最初はちょっと面食らうかもしれない。

最大の特徴は「マッチ」と呼ばれるシステムだ。基本的な流れはこうだ。まず各ターンの開始時に、味方キャラクターのスキルスロットにランダムでスキルが配置される。ターンが経過するほどスロット数が増え、より多くのスキルが使えるようになる。プレイヤーはそれらのスキルを選択して、敵のスキルとぶつけ合う。これがマッチだ。

マッチでは双方がダイスを振り、出目の合計が高い方が勝つ。勝てば相手にダメージを与え、負ければこちらがダメージを受ける。つまり、ただスキルを選ぶだけじゃなく「どの敵のどのスキルに、こちらのどのスキルをぶつけるか」という判断が毎ターン求められる。

さらに戦闘は「通常戦闘」と「集中戦闘」の2種類に分かれている。通常戦闘では各ユニットのスキル使用対象が自動的に決まるので、雑魚戦ではある程度テンポよく進められる。一方、集中戦闘(主にボス戦や幻想体との戦闘)ではスキルの使用先を手動で指定できる。ボスが複数の攻撃を同時に繰り出してくるとき、「このスキルをボスのどの攻撃にぶつけるか」「優先的にマッチで勝つべきはどの攻撃か」を細かく考える必要があり、これが戦略性を大きく高めている。ボスの行動パターンを読み、次のターンでどのスキルが来るかを予測してマッチを組む——その駆け引きは、対戦格闘ゲームの読み合いに似た緊張感がある。

ターン制でありながら、この読み合いの要素がバトルに緊張感を与えている。強いスキルを持つ敵に弱いスキルをぶつけたら負けてしまうし、かといって強いスキルを温存しすぎると他のキャラが押し負ける。12人の囚人——最大6人まで出撃可能——のスキル配置を見ながら、最適な組み合わせを考えるのが楽しい。

「ターン制なのに退屈じゃない」というのは、まさにこのマッチシステムのおかげだ。ペルソナシリーズの弱点システムやSea of Starsのタイミングアクションのように、「ターン制にひとひねり加える」ことで戦闘を面白くしているゲームはいくつかあるけど、リンバスカンパニーのマッチはその中でも特に独創的だと思う。

Sea of Starsはクラシカルなドット絵RPGの中にタイミングアクションを組み込むことで、ターン制の「待ち」の退屈さを解消した。リンバスカンパニーのマッチシステムも同じ問題に対する解答だけど、アプローチはまるで違う。こちらは「攻撃の読み合い」という対戦的な要素を持ち込んでいて、味方のダイスが敵のダイスに勝つ瞬間の快感は、カードゲームの駆け引きに近い手応えがある。同じ「ターン制RPGの戦闘を面白くする」という課題に、まったく別のアイデアで挑んでいるのが興味深い。

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罪悪共鳴——属性を繋げるパズル的快感

戦闘のもうひとつの柱が「罪悪共鳴」だ。これが最初はとにかく分かりにくいんだけど、理解すると戦闘の楽しさが一段階上がる。

このゲームのスキルには、それぞれ「罪悪属性」が設定されている。憤怒、色欲、怠惰、暴食、憂鬱、傲慢、嫉妬の7種類——キリスト教の「七つの大罪」がモチーフだ。同じ属性のスキルが連続して発動すると「共鳴」が起こり、ダメージにボーナスが乗る。

3つ以上連続すると「完全共鳴」になり、さらに大きなダメージ増加が発生する。しかも完全共鳴を構成するスキルの数が多いほどダメージ増加量も上がっていくので、理想は「チーム全体で同じ属性を揃えて一気に完全共鳴を叩き込む」ことだ。

つまり、パーティ編成の段階から「このメンバーなら憤怒属性で共鳴を狙える」「この組み合わせだと色欲と怠惰が混在して共鳴しにくい」「このボスには傲慢属性が有効だから、傲慢寄りの人格を選ぼう」といった戦略が生まれる。人格の選択がそのまま戦闘の有利不利に直結するわけだ。

最初はこのシステムが複雑に感じるかもしれない。実際、ゲーム内のチュートリアルの説明は正直に言って不親切だ。「罪悪共鳴って何?」という疑問に対してゲームが返してくる答えが分かりにくすぎて、攻略wikiやnoteの解説記事に頼らざるを得ない場面が多い。

でも仕組みがわかってくると、「このターンは完全共鳴が狙えるぞ」「ここで憤怒を4つ繋げたら一気にダメージが出る」という瞬間がたまらなく気持ちいい。パズルを解くような快感がある。編成を練る段階でワクワクする——そういうゲームだ。

E.G.O——必殺技であり、狂気の象徴

リンバスカンパニーの戦闘を語る上で絶対に外せないのが「E.G.O(エゴ)」だ。これはProject Moonの前作『ロボトミーコーポレーション』に登場した「幻想体」の力を具現化した装備のようなもの。シリーズを通して重要な概念であり、リンバスカンパニーではいわゆる「必殺技」としてバトルに組み込まれている。

戦闘中にスキルを使うと、罪悪属性ごとのE.G.O資源が蓄積していく。資源は味方全員で共有されており、一定量溜まるとE.G.Oスキルを発動できる。ド派手な演出とともに大ダメージを叩き込む——その爽快感は格別だ。

ただしこの必殺技、ただ強いだけじゃない。E.G.Oには「覚醒スキル」と「侵蝕スキル」の2種類がある。ここがProject Moonらしいところだ。

覚醒スキルは制御された状態での発動で、安定したダメージを出せる。言ってみれば「正気のまま使う必殺技」だ。一方の侵蝕スキルは、キャラクターの精神状態が「侵蝕」——要するに正気を失った状態——のときに発動し、桁違いの威力を発揮する代わりにリスクも大きい。精神力が下がりすぎるとキャラクターがパニック状態に陥り、制御不能になることもある。

「正気を保つか、狂気に身を委ねるか」——この二律背反が、Project Moonの世界観をゲームプレイに見事に落とし込んでいる。ストーリーで描かれる「都市」の住人たちが、理不尽な世界の中で正気と狂気のあいだを揺れ動く——その構造がそのまま戦闘システムに反映されているわけだ。

強敵相手に追い詰められたとき、あえてキャラクターの精神力を下げて侵蝕状態に持っていき、侵蝕E.G.Oの超火力で局面をひっくり返すか。それとも安全に覚醒スキルで堅実に戦い、少しずつ敵のHPを削るか。そのギリギリの判断がめちゃくちゃ熱い。特にボス戦では、残りHPわずかの状況で侵蝕E.G.Oに賭ける「最後の一発」のドラマが生まれやすく、それが勝ったときの脳汁はちょっと異常なレベルだ。

E.G.Oには解析段階(レベルのようなもの)もあり、第2段階まで解析すると永続パッシブが追加、第3段階で威力増加と追加効果が解放される。育成要素としても深みがあり、「どのE.G.Oを優先して育てるか」という悩ましい選択がプレイヤーを楽しませている。

リンバスの戦闘、最初は「よくわからん」で終わるんだけど、マッチと罪悪共鳴が噛み合い始めると急に面白くなる。E.G.Oを最適なタイミングで撃ち込んだときの快感は他のゲームにない

引用元:Steamレビュー

この感想はかなり共感できる。リンバスカンパニーの戦闘は「最初のハードルを超えたら急に面白くなる」タイプだ。逆に言うと、最初の数時間で「よくわからないまま終わる」人が一定数いるのも事実で、ここは改善の余地があると思う。

ちなみに、マッチ・罪悪共鳴・E.G.Oの3つのシステムが本当に噛み合い始めるのは、ストーリーの難易度が上がる4章以降。つまり、ストーリーが面白くなるタイミングと、戦闘が面白くなるタイミングがほぼ一致している。ここまで耐えられるかどうかが、このゲームを楽しめるかどうかの最大の分岐点だ。

高難度コンテンツの鏡屈折鉄道に至っては、マッチの勝率を1%でも上げるためにスキルの組み合わせを最適化し、完全共鳴のチェーンを最大限に伸ばし、E.G.Oの発動タイミングを1ターン単位で計算する——そこまでやって初めて最高ランクに手が届く。ここはもう完全にガチ勢の領域だけど、この深さがあるからこそ、やりこみ派のプレイヤーが離れないんだと思う。

ストーリー——ガチャゲーの枠を完全に超えている

Limbus Company 未分類 スクリーンショット3

序盤の我慢と4章からの覚醒

リンバスカンパニーのストーリーについて正直に書くと、序盤はちょっと退屈だ。これはプレイヤー間でもほぼ共通認識になっている。

1章から3章は、12人の囚人の個別エピソードを順番に消化していく構成。各章でひとりの囚人にスポットが当たり、彼らの過去や人間性が丁寧に描かれる。キャラクター紹介としては重要なパートなんだけど、全体のメインストーリーがなかなか動かない。「いつ話が動くの?」「面白くなるの?」と思いながらプレイしていた人は多いはずだ。

ところが4章あたりから、ストーリーの歯車が一気に噛み合い始める。

個別に描かれていたキャラクターたちの物語が交差し、「都市」という世界の全体像が浮かび上がってくる。巨大企業「翼」の暗躍、囚人たちが背負う「罪」の正体、ダンテ自身に隠された秘密——それまでバラバラに見えていた点と点が、線で繋がり始める瞬間のゾクゾクする感覚。Project Moonのストーリーテリングの真骨頂がここから始まる。

リンバスカンパニーの3章をクリアしたんですが、急にストーリーが濃くなって、ここから先が楽しみで仕方ない。最初は何がなんだかわからなかったけど、ようやくこのゲームの本領がわかってきた

引用元:Yahoo!知恵袋

「最初は耐えろ、4章から本番」——これはリンバスカンパニーのコミュニティで定番のアドバイスになっている。序盤の退屈さは確かにマイナスポイントだけど、その先にある物語の密度を考えると、「あの退屈な時間があったからこそキャラクターに愛着が湧いた」と後から思える構成になっている。焦らず、じっくり読み進めてほしい。

特に6章の評価は突出している。プレイヤーの間では「FGOの2部6章に匹敵する」という声まで出ているほどだ。FGO2部6章といえば、ソーシャルゲームのストーリーとしては最高峰の評価を受けているエピソード。そこと比較されるということ自体が、リンバスカンパニーのシナリオのクオリティの高さを物語っている。

そして、この「序盤は我慢」という構造は、意図的なものだと思う。Project Moonは12人の囚人ひとりひとりをきっちり描写してから、全体の物語を動かしにかかる。序盤の個別エピソードで各キャラクターに感情移入させておいて、中盤以降で彼らが過酷な運命に直面するからこそ、プレイヤーの心が揺さぶられる。「あの穏やかだった日常が……」という落差が、物語の衝撃を何倍にも増幅している。

テキスト量の多さも特筆すべき点だ。各章のストーリーは、一般的なソーシャルゲームの1イベント分をはるかに超えるボリュームがある。1章を読み切るだけでも2〜3時間かかることは珍しくない。「小説を読んでいるのに近い体験」と表現するプレイヤーもいるほどで、ゲームというよりインタラクティブな文学作品に近い側面がある。

緩急の絶妙さ——重いだけじゃない

Project Moonのストーリーテリングで特筆すべきなのが、緩急のつけ方だ。

リンバスカンパニーの物語は基本的に重い。人が理不尽に死に、裏切りがあり、取り返しのつかない選択を迫られる。ダンテという存在の特殊性——囚人たちが死ぬ瞬間の痛みをすべて肩代わりする——は、読んでいるこちらにも精神的なダメージを与えてくる場面がある。

でも、その重い展開の合間にクスッと笑えるシーンがちゃんと用意されている。ドンキホーテが勢いで突っ走って大惨事を引き起こしたり、ファウストが辛辣な皮肉でツッコミを入れたり、イシュマエルが食べ物に目がなくて話の腰を折ったり。12人の個性的な掛け合いが、物語の息抜きとして絶妙に機能している。

「控えめに言ってもめちゃくちゃ面白い」というレビューが多いのは、この緩急のバランスによるところが大きい。シリアスなだけでも、コメディだけでもダメで、両方のバランスが取れているからこそ長時間読み続けられる。Project Moonはその加減を熟知している。

このバランス感覚は、同じくダークな世界観を持つRPGとして比較されることがあるMetaphor ReFantazioにも通じるものがある。重いテーマを扱いながらも、キャラクターの魅力と掛け合いの面白さで最後まで読ませる力があるという点で、両作品は共通している。アトラスが「身分制度の不条理」をテーマに据えたように、Project Moonは「企業社会の理不尽」をテーマの中核に置いている。現実世界の問題をファンタジーの衣で包んで語る——このアプローチが、物語に普遍的な説得力を与えている。

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文学的な深み——考察が止まらない

リンバスカンパニーのストーリーが他のガチャゲーと一線を画しているのは、文学的なバックボーンの厚みだ。

キャラクター名が文学作品由来であることはすでに触れたけど、それは氷山の一角に過ぎない。ゲーム全体が文学的なモチーフで構成されている。メインストーリーの章構成はダンテの『神曲』における地獄の層を反映しているし、各章のボスやNPCにも文学・哲学からの引用が散りばめられている。

たとえば「黄金の枝」というメインクエストの目的自体が、フレイザーの人類学的名著『金枝篇』へのオマージュだと解釈するファンもいる。Project Moon自身が明言しているわけではないけど、こうした「考察の余地」がコミュニティを活性化させている。

「別に文学なんて知らなくても楽しめる」——これは本当だ。ストーリー単体で十分面白いし、文学的な素養がなくてもキャラクターへの感情移入に支障はない。でも元ネタを知っていると、物語に隠された意味がもうひとつ浮かび上がってくる。この重層的な構造が、考察好きなプレイヤーにとっては無限の楽しみを提供している。

SNSや掲示板では日常的にストーリー考察が活発に行われていて、「このセリフの元ネタはここじゃないか」「この展開はあの文学作品のあのシーンに対応している」「メインクエストの『黄金の枝』はフレイザーの『金枝篇』へのオマージュではないか」という議論が尽きない。ゲームを起点にして文学や哲学の知識を深めていく——そんな体験ができるタイトルは、世界を見渡してもそう多くはない。

世界観の作り込みという点では、ペルソナ3 リロードがギリシャ神話やタロットの象徴体系をベースにした物語を紡いでいたのと似たアプローチだ。ゲームのストーリーに「もう一段深い読み」を用意してくれるのは、プレイ後に考え続けたくなる贅沢な体験だと思う。

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課金設計と周回——光と影の両面を正直に書く

「ガチャゲーの良心」と呼ばれる理由

ガチャゲーの記事で避けて通れないのが課金の話だ。結論から言うと、リンバスカンパニーの課金圧はガチャゲーの中でもかなり低い。「ガチャゲーの良心」と呼ばれているのは伊達じゃない。

まず、最高レアリティ(星3)の人格の排出率が2.9%。これは原神やスターレイルの星5排出率(0.6%)の約5倍にあたる数値だ。体感としても「回せば普通に出る」レベルで、ガチャ運が極端に悪くなければそこまで困らない。

さらに大きいのが「人格欠片」による確定交換システムだ。ガチャで出なくても、欠片を一定数集めれば好きな人格と交換できる。この欠片は毎週のコンテンツ消化(主にミラーダンジョン)で自然に貯まっていく。バトルパスを購入していなくても、毎週コツコツやれば月に2体前後の星3人格を交換で入手できる計算だ。

バトルパスは1,500円の買い切りで、更新頻度は4〜5ヶ月に一度。つまり年間3,000〜4,500円程度の出費で、かなり快適にプレイできる。月額課金がないのも大きなポイントだ。「ガチャゲーだけど、普通の買い切りゲームより安く済む」という声はコミュニティでもよく見かける。

リンバスは本当に課金圧が低い。バトルパス1,500円だけでほぼ困らない。ガチャは欠片交換があるから天井するよりコツコツ集めたほうが効率いいし、無課金でもストーリーは全部楽しめる

引用元:note ユーザーレビュー

ただし注意点もある。バトルパスなしだと欠片の獲得効率が約3分の1に落ちるので、「完全無課金で全人格コンプ」は現実的ではない。とはいえ、対人戦のないゲームなので「課金者に負ける」というストレスはゼロだ。ストーリーを楽しむだけなら無課金で十分だし、育成をやりこむにしてもバトルパスだけで事足りる。

龍が如く8のように完全買い切りのRPGと比べると、もちろん「買い切りの方がスッキリする」という気持ちはわかる。ガチャという仕組み自体に抵抗がある人は一定数いるし、その感覚は否定しない。でもリンバスカンパニーの場合、ガチャに頼らなくても欠片交換という確実なルートがあり、課金しなくてもメインコンテンツをフルに楽しめる。基本プレイ無料でここまで遊べるなら文句は言えないというのが正直な感想だ。

龍が如く8は買い切りで60〜80時間のストーリーRPGを楽しめるタイトルだ。ストーリーの完成度は高いし、課金要素がないぶん心置きなくプレイできる。一方のリンバスカンパニーは、無料〜年間4,500円で数百時間楽しめる。更新が続く限り新しいストーリーが追加される。どちらが得かは人それぞれだけど、「お金をかけずに長く遊びたい」というニーズにはリンバスカンパニーの方が圧倒的に応えてくれる。

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コンテンツ量とシーズン制

リンバスカンパニーはシーズン制でコンテンツが更新される。メインストーリーはシーズンごとに新章が追加され、それに合わせて新人格やE.G.Oも実装される。2023年2月のリリースから2026年現在まで、ストーリーは着実に積み重なっている。

テキスト量は膨大だ。全章を読み終えるには相当な時間がかかるし、「今から始めて追いつけるの?」という不安は当然あるだろう。

結論から言えば、追いつける。メインストーリーの戦闘難易度はそこまで高くないので、ストーリーを読み進めること自体はスムーズだ。ただし、テキストを飛ばさずにちゃんと読むなら1ヶ月半くらいは見ておいたほうがいい。あるブログでは「1ヶ月半でストーリー最新に追いついた」というプレイヤーのレポートが公開されていて、参考になる。

メインストーリー以外の大きなコンテンツとしては「ミラーダンジョン」と「鏡屈折鉄道」がある。ミラーダンジョンは、ローグライク要素を持つ周回コンテンツだ。ランダムに出現するバフを選びながらダンジョンを攻略していく。人格欠片やE.G.O欠片の主要な入手源で、週3回のクリアが推奨されている。

鏡屈折鉄道は、シーズンごとに開催される高難度エンドコンテンツ。敵をどれだけ少ないターン数で倒せるかを競う、育成の到達点だ。全囚人のレベルを最大まで上げ、E.G.Oの解析を第3段階まで進め、最適な人格編成を練り上げて挑む——最高ランクの報酬を獲得するには、かなりやりこむ必要がある。適正スペックを満たしていればクリア自体はそこまで難しくないけど、限定バナー(最高報酬)を獲得するとなると話は別だ。リンバスカンパニーにおける実質的なエンドコンテンツとして、ガチ勢を熱狂させている。

百英雄伝が「仲間を108人集めるワクワク感」を軸にした一本道のストーリーRPGだとすれば、リンバスカンパニーは「12人の囚人を深く掘り下げつつ、ライブサービスで長く遊ばせる」タイプのゲームだ。方向性はまるで違うけど、「仲間との旅路を楽しむRPG」という点では共通している。どちらが好みかは、プレイスタイル次第だろう。

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ミラーダンジョンのローグライク要素も言及しておくべきだろう。ランダムに提示されるバフ(「E.G.Oギフト」と呼ばれる)の中から最適なものを選びながらダンジョンを攻略していくのだが、このバフの組み合わせによって毎回違った体験になる。運に左右される部分はあるけど、「今回はこの組み合わせで攻めてみよう」という試行錯誤の面白さがある。ローグライク好きなら、周回コンテンツの中にも楽しみを見出せるはずだ。

虚無期間と周回の問題——正直に書く

一方で、コンテンツの更新頻度については不満の声もある。ここは正直に書いておきたい。

メインストーリーの更新はシーズンに1回程度。イベントもシーズンに1回程度。つまり、メインコンテンツを消化し終わると「次のアップデートまでミラーダンジョンを回すだけ」という期間が発生する。いわゆる「虚無期間」だ。

ミラーダンジョン週3回が正直しんどい。新しいストーリーが来るまでの虚無期間が長すぎて、気づいたら週1でしかログインしなくなってた。面白いのに、面白い部分以外が作業すぎる

引用元:はてなブログ ユーザー感想

ミラーダンジョン1回にかかる時間は30分から1時間程度。ストーリーの更新がない時期だと、これがプレイ時間のほぼすべてになる。「ソーシャルゲームとしてはプレイ時間が重い」「もう少しサクッと回せるようにしてほしい」という声は、特にスマホメインのプレイヤーから上がっている。

この問題は、約30人という小さなチームが開発しているという事情を考えれば仕方ない部分もある。大手のように数十人のライターと数百人のエンジニアがいるわけじゃない。限られたリソースの中で、クオリティを維持しながらコンテンツを供給し続けるのは、どの開発者にとっても難題だ。

Project Moonもこの点は認識しているようで、コラボイベントの実施(2025年9月にはアークナイツとのコラボが実現した)や、ミラーダンジョンのリニューアルなど、虚無期間を埋める努力は見られる。とはいえ、「ストーリーとボス戦は10点、周回は5点」という評価がコミュニティの本音だろう。光る部分が圧倒的に光っているからこそ、周回の退屈さが余計に目立ってしまう。

ストーリーもバトルも最高なのに、周回コンテンツだけが足を引っ張ってる感じ。ミラーダンジョンをもう少しサクッと回せるようにしてほしい。あと虚無期間のやることなさをなんとかしてくれ

引用元:Steamレビュー

最適化と技術的な問題

もうひとつ正直に触れておきたいのが、最適化の甘さだ。30人規模のインディースタジオが開発していることを考えれば驚くほどの品質ではあるけど、AAA級の安定性を期待すると肩透かしを食らう場面がある。

メニュー遷移時のカクツキ、ボス戦でのフレームレート低下、時折発生するクラッシュ。特にモバイル版は問題が顕著で、古いスマートフォンだとボス戦がまともにプレイできないという報告もある。

PC版(Steam版)は比較的安定しているので、環境が許すならSteam版でのプレイを強くおすすめする。モバイル版は外出先でストーリーを読み進める程度なら問題ないけど、高難度コンテンツに挑むならPC版の方が快適だ。

Project Moonは小規模チームながらアップデートのペースは早く、バグ報告への対応も概ね迅速だ。「バグがあるけど、次のアップデートで直してくれるだろう」という信頼感がプレイヤーの間にある。完璧ではないけど、誠実に改善し続けている——この姿勢は評価したい。

なお、序盤のチュートリアル不足については再度強調しておきたい。人格、スキル、マッチ、罪悪共鳴、E.G.O、精神力——システムの要素が多いのに、ゲーム内の説明が追いついていない。攻略wikiやnoteの解説記事、YouTubeのチュートリアル動画が充実しているので、「わからないことがあったらすぐに外部情報を参照する」という心構えで始めたほうがいい。ゲーム内だけで理解しようとすると、かなりの確率で挫折する。ここはProject Moonに改善を期待したいところだ。

なぜ今、リンバスカンパニーが盛り上がっているのか

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リリースから3年で迎えた第二の全盛期

リンバスカンパニーは2023年2月のリリース直後も話題にはなった。しかし本当の爆発が起きたのは2025年だ。

Steam同時接続者数は2025年に11万5,000人を超え、リリース初期のピークを大幅に更新した。Steamのレビュー件数は10万件を突破し、最近のレビューも89%が好評。Google Play Best of 2023では「インディーゲームが輝いた部門」で2位に入賞し、その後もじわじわとプレイヤーベースを拡大し続けている。

2026年4月現在のSteam同時接続者数は約31,000人前後で安定推移。これはインディーゲーム、しかもスマホ版もある基本無料ゲームとしては驚異的な数字だ。ペルソナ3 リロードのSteam同接ピークが約6万人だったことを考えると、リンバスカンパニーの「31,000人が日常的にプレイしている」という状況がいかに凄いかわかると思う。しかもこれはSteam版のみの数字で、iOS・Android版のプレイヤーは含まれていない。

なぜリリースから2年以上経って、ここまで伸びたのか。

最大の要因はストーリーの蓄積だと思う。リリース直後は「序盤が退屈」という壁があったけど、2025年の時点では4章以降の怒涛の展開まで一気にプレイできる。「友達に勧められて始めたら止まらなくなった」「SNSでストーリーの考察を見て興味が湧いた」「YouTubeの解説動画を見たら自分でもプレイしたくなった」というパターンが増えている。

ストーリーが良いゲームは、時間が経てば経つほどコンテンツが蓄積して新規プレイヤーを引き込む力が強まる。リンバスカンパニーはまさにその好循環に入っている。しかも基本プレイ無料だから「ちょっと試してみるか」のハードルが極めて低い。興味を持った瞬間にダウンロードして、お金を一切かけずにストーリーを最後まで読める。この参入障壁の低さが、口コミによる新規プレイヤー獲得の効果を最大化している。

もうひとつの要因は口コミの力だ。Project Moonのファンは熱量が桁違い。二次創作、考察記事、解説動画、ファンアート——コミュニティの創作活動が活発で、それ自体がゲームへの入り口の役割を果たしている。YouTubeにはストーリー考察動画が大量にアップされているし、noteやはてなブログにはプレイレポートが次々と投稿されている。公式が大規模なマーケティングキャンペーンを打たなくても、ファンが自発的にゲームの魅力を発信してくれる。インディーゲームにとって、これほど心強いことはない。

特に韓国・日本・英語圏の3つのコミュニティが、それぞれ独自の考察文化を形成しているのが面白い。韓国コミュニティはナムウィキを中心に膨大なデータベースを構築し、日本コミュニティはpixiv百科事典やwikiで情報を整理し、英語圏コミュニティはRedditで活発に議論を交わしている。ゲームの情報がグローバルに共有・蓄積されていく様子は、それ自体がProject Moon作品の持つ求心力の証だ。

ストーリーの評判が口コミで広がるタイプのゲームは、「バイラルの波」が数年遅れでやってくることがある。Undertaleがそうだったし、Outer Wildsもそうだった。リンバスカンパニーも同じパターンで、リリース直後の初速より、口コミが蓄積した後の「第二波」の方が大きくなった。このタイプの成長曲線を持つゲームは、長く愛される傾向がある。

今後の展望——メインストーリー完結まで

Project Moonは「メインストーリーの『地獄』編が完結するまで開発を続ける」と明言している。ダンテと12人の囚人の旅はまだ途中であり、ゲームの寿命はまだまだ長そうだ。

2025年9月にはHypergryph開発の人気タワーディフェンス『アークナイツ』とのコラボイベントも実施された。2025年9月25日から10月23日の約1ヶ月間にわたるコラボで、両作品ともにダークな世界観と濃密なストーリーで知られるタイトルだけに、ファン同士の親和性は抜群だった。「リンバスの世界観とアークナイツの世界観、相性良すぎだろ」という声がSNS上で多数見られた。こうした他タイトルとの交流が、新規プレイヤーの獲得にも繋がっている。

さらに、Steamの大型セールやゲームフェスティバルのたびに、リンバスカンパニーがランキング上位に浮上するケースも増えている。基本プレイ無料のゲームはセール対象にはならないが、話題性によって検索流入やストアページへの訪問が増える。「Steamの無料ゲームを探していたら見つけた」という新規プレイヤーの存在も無視できない。

ライブサービス型のゲームにとって、大事なのはピーク同接数よりも「日常的にどれだけの人が遊んでいるか」だ。その意味で、リンバスカンパニーは極めて健全なプレイヤーベースを維持していると言える。

ちなみに、Project Moonの前2作もSteamでは高い評価を受け続けている。ロボトミーコーポレーションは「圧倒的に好評」、ライブラリーオブルイナも「圧倒的に好評」だ。3作連続で高評価を維持しているインディースタジオというだけで、どれだけ品質管理に力を入れているかがわかる。「次のProject Moon作品も期待できる」という安心感が、ファンをつなぎ止めている。

ストーリーが完結するその日まで、このゲームのファンは離れないだろう。むしろ、完結が近づくにつれてプレイヤー数はさらに増えるんじゃないかと予想している。「完結前に追いつきたい」という動機で始める人が増えるからだ。

結局、リンバスカンパニーは誰におすすめなのか

こんな人にはハマる

まず、ストーリー重視のRPGが好きな人。ペルソナ、FGO、アークナイツあたりが好きなら、リンバスカンパニーのストーリーは刺さるはずだ。特に文学や神話をモチーフにした物語が好きな人、「ゲームのストーリーで泣きたい」という人にはたまらない。序盤の退屈さを乗り越えた先に待っている体験の密度は、ガチャゲーの枠を完全に超えている。

次に、課金圧の低いガチャゲーを探している人。バトルパス1,500円だけでほぼ困らないし、無課金でもメインストーリーは全部楽しめる。「ガチャゲーは課金がきつくて手が出ない」「以前やっていたソシャゲで課金疲れした」という人にこそ試してほしい。対人戦がないから、課金額の差で勝ち負けが決まるストレスもゼロだ。

そして、戦略的なターン制バトルが好きな人。マッチ、罪悪共鳴、E.G.O——複数のシステムが有機的に絡み合うターン制バトルは、他のゲームにはない独自の面白さがある。「ただコマンドを選ぶだけのターン制RPGは退屈」と感じている人にこそ体験してほしい。

Project Moonの前作をプレイしたことがある人は言わずもがな。シリーズの集大成と呼ぶにふさわしい世界観の広がりが、ここにある。ロボトミーコーポレーションやライブラリーオブルイナで描かれた伏線が回収される瞬間は、シリーズファンにしか味わえない特別な体験だ。

あとは、「ゲームをきっかけに文学に興味を持ちたい」という人にも意外とおすすめできる。リンバスカンパニーをプレイしてからカミュの『異邦人』やカフカの『変身』を手に取ったという人は実際に多い。ゲームが文学への入り口になるというのは、なかなか珍しい体験だと思う。

こんな人には合わないかも

逆に、周回が嫌いな人にはおすすめしにくい。ミラーダンジョンの週3回周回は避けて通れないし、虚無期間の退屈さは人を選ぶ。「ストーリーだけ読みたい」という人は楽しめるけど、育成もやりたいなら相応の時間を覚悟してほしい。

序盤で判断する人にも厳しい。「最初の1時間で面白くなければやめる」タイプの人には、正直なところハードルが高い。4章まで我慢できるかどうかが分水嶺だ。テキスト量も多いので、文字を読むのが苦手な人にも向かない。

安定した動作を求める人は、特にモバイル版だと不満を感じるかもしれない。PC版(Steam版)なら比較的安定しているので、PCでプレイできる環境があるなら迷わずSteam版を選ぼう。なお、Steam版とモバイル版はアカウント連携が可能なので、「普段はPCで遊んで、外出先ではスマホでストーリーを読み進める」という使い分けもできる。

もうひとつ。「ダークな雰囲気が苦手」という人にも正直に言っておきたい。このゲームの世界観は容赦なく暗い。人が死ぬ描写はあるし、社会の理不尽さを直視させられる場面もある。Project Moonの作風自体が「美しくて残酷」なので、ほのぼのとした雰囲気のゲームを求めている人には合わない。その代わり、ダークファンタジーが好きな人にとっては最高の体験が待っている。

Project Moonの「信頼」が最大の武器

最後にひとつ書いておきたいことがある。リンバスカンパニーに限らず、Project Moonのゲームに共通しているのは「開発チームを信頼できる」という感覚だ。

課金設計は良心的。ストーリーは毎回期待を超えてくる。バグがあれば迅速に対応してくれる。ユーザーからのフィードバックにも耳を傾ける姿勢が見える。30人の小さなチームが、自分たちの信じるものをコツコツと作り続けている。その真摯な姿勢が、ファンの強い信頼を勝ち取っている。

ゲーム業界では「運営への信頼」が崩壊して一気にプレイヤーが離れるケースが後を絶たない。課金設計の悪化、コンテンツの質の低下、ユーザーの声を無視した運営方針——そういった「裏切り」を経験したプレイヤーほど、Project Moonの誠実さに心を打たれるんだと思う。「このスタジオなら、最後まで裏切らない」という信頼。それがリンバスカンパニーのファンコミュニティを支えている基盤だ。

「このゲームは完結まで付き合う価値がある」——リンバスカンパニーのプレイヤーにそう確信させているのは、ゲームの出来だけじゃなく、Project Moonというスタジオそのものへの信頼なんだと思う。

Project Moonを信じろ。序盤は我慢かもしれないけど、4章から先は本当にすごい。こんなに「続きが気になる」ガチャゲーは初めてだ。しかもほぼ無課金で全部遊べる。神か

引用元:Steamレビュー

Metaphor ReFantazioが王道ファンタジーRPGの最前線を走っているとすれば、リンバスカンパニーはダークファンタジーRPGの最前線にいる。方向性は違うけど、「ストーリーで人の心を動かすRPG」という点では、どちらも一級品だ。

また、「インディースタジオが作った濃密なストーリーRPG」という文脈で言えば、Sea of Starsにも通じるものがある。大手にはできない小回りの利いたゲームデザインと、一切の妥協を許さないストーリーへのこだわり。インディーだからこそできる尖り方が、両作品の共通点だ。

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リンバスカンパニーは、見た目のハードルの高さとは裏腹に、一度ハマると底なし沼のように引き込まれるゲームだ。序盤を乗り越えた先にある物語の深み、戦闘システムの奥深さ、そしてProject Moonという開発者への信頼感。「ガチャゲーだから」「インディーだから」と敬遠している人がいるなら、もったいないと本気で思う。

Steamのレビュー欄を見ると、プレイ時間が1,000時間を超えているレビューがゴロゴロ転がっている。しかもそのほとんどが「おすすめ」評価だ。1,000時間遊んでなお「おすすめ」と言える。それだけの深みと魅力が、このゲームにはある。10万件を超えるレビューの中で92%が好評——この数字は、長期運営型のゲームとしては異例の高さだ。

基本プレイ無料なのだから、まずはダウンロードして4章まで読んでみてほしい。それで合わなければやめればいい。失うのは時間だけだ。でもきっと、4章のラストを読み終えた頃には「もう少しだけ」が止まらなくなっているはずだ。

ガチャゲーなのに文学的。インディーなのにスケールが大きい。無料なのに体験が濃い。ターン制なのに退屈じゃない。リンバスカンパニーは、あらゆる「なのに」を覆してくるゲームだ。時計の頭を持つダンテと12人の囚人の旅路は、まだ終わっていない。この先にどんな地獄が待っているのか、どんな真実が明かされるのか——それを自分の目で見届ける覚悟があるなら、このゲームは必ず応えてくれる。

Limbus Company

ProjectMoon
リリース日 2023年2月26日
サービス中
価格基本無料
開発ProjectMoon
日本語非対応
対応OSWindows
プレイ形式シングル
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