2021年5月7日、Steamでは44,000件を超えるレビューのうち94%が好評。発売から3年で1,000万本を突破し、2024年時点でシリーズ6番目の販売本数を記録——それが『Resident Evil Village(バイオハザード ヴィレッジ)』だ。
最初の10分で、このゲームが普通のホラーじゃないとわかった。雪に埋もれた東欧の村、燃え落ちる家、そして3メートル近い銀髪の貴族が薄暗い城の廊下を歩いてくる——ドミトレスク夫人を初めて見た瞬間のあの圧迫感は、今でもはっきり覚えている。ホラーゲームに怖いボスは山ほどいるが、見ただけで「逃げなきゃ」と体が動いたキャラクターは、なかなかいない。
バイオヴィレッジは「バイオ7(バイオハザード7 レジデントイービル)」の続編として2021年に発売された一人称視点のサバイバルホラーだ。前作で狭くて暗い農家の中を逃げ回っていたイーサン・ウィンターズが、今作では東欧の雪山に建つ村全体を舞台に、四つの領主(貴族)それぞれの拠点を攻略していく。ホラーとアクションが混ざり合った独特のテンポ感、極端に個性的なボスたち、そして誰も予想しなかったイーサンの物語の結末——そういった要素が重なって、Steamで2021年のゲームオブザイヤーを受賞するほどの評価を得た。
ただ、正直に言えば「ホラーとして怖いゲームか」と問われると、前作の方が怖かったという声も多い。アクションとホラーのバランス、ボリューム感、エリアごとの完成度のばらつき——本音で書いていく。そういった部分を含めて、このゲームをどんな人に勧めたいか、最後まで読めばわかるようにした。
この記事では、ゲームの特徴やエリアごとの体験を一通り書いた後で、正直な評価(気になった点)もまとめている。バイオヴィレッジが2万円近くのゲームだった発売当初の時代は終わり、今はセール価格で十分手の届く作品になった。だからこそ「とりあえず試してみる」という気軽な入り方もしやすい時代だ。
ゲームのあらすじ——娘を奪われた父親の話
物語はバイオ7の3年後から始まる。バイオ7でルイジアナの農家でジャック・ベイカーたちの恐怖を乗り越えたイーサン・ウィンターズは、妻のミアと生まれたばかりの娘ローズマリー(ローズ)を連れて、ヨーロッパのどこかの国で静かに暮らしていた。バイオ7からの継続プレイヤーなら「やっと平和な生活か」とほっとするような冒頭だ。
その平和は突然終わる。ある夜、クリス・レッドフィールドが率いる武装集団が家に押し入り、ミアが射殺され、ローズが奪われる。クリス・レッドフィールドといえばバイオシリーズ屈指の主人公であり、前作でもイーサンを助けていた人物だ。その彼がなぜ——そのまま意識を失ったイーサンが目を覚ますと、雪に覆われた見知らぬ村に一人残されていた。
この導入の「不条理さ」がうまい。プレイヤーは「なぜクリスが?」という疑問を抱えたまま、訳もわからず村を歩くことになる。マザー・ミランダという謎の宗教指導者、四人の貴族(四貴族)——ドミトレスク夫人、ベネヴィエント、モロー、ハイゼンベルク——それぞれの領土を巡りながら、ローズを取り戻すためにイーサンは地獄の中を進んでいく。
「娘を守りたい父親」という動機は、バイオシリーズの歴代主人公の中でも異色だ。レオンもクリスもジル・バレンタインも、それぞれ組織や使命のために動いている。イーサンには組織も使命もない。ただ娘を取り戻したい、その一点だけで地獄に飛び込んでいく姿に、プレイヤーの多くが感情移入した理由がある。
なお、「なぜクリスがミアを撃ったのか」という疑問は物語が進むことで明らかになる。序盤でクリスが撃ったのは本物のミアではなく、ラスボスであるマザー・ミランダがミアに変装した姿だった。クリスはミランダがミアに成り代わっていることを事前に把握しており、イーサン一家をミランダの脅威から守るために動いていた。本物のミアはミランダによって別の場所に監禁されており、クリスはその救出も任務に含めていた——この事実が明かされた瞬間の「なるほど」感は、このゲームのストーリーの組み立て方が上手かったと改めて思わせる。
クリスが敵みたいな立ち位置で始まるから最初は困惑したけど、進むにつれてすべての謎が繋がってくる。ストーリーの組み立て方がうまいと思った。
引用元:Steamレビュー

村という舞台——マザー・ミランダとカドゥという「秘密」
ゲームの舞台になる「村」は、単なるホラーの背景ではなく、それ自体が複雑な秘密を持つ場所として設計されている。村人たちは「マザー・ミランダ」という宗教指導者を崇拝しており、彼女の信仰に基づいた独自のコミュニティが形成されている。しかし、その信仰の裏には科学的な支配が隠されていた。
ミランダは村人たちに対して「カドゥ」という寄生体を意図的に接種させ、認識操作によって自分への崇拝を植え付けていた。カドゥを埋め込まれた宿主の多くは適合できずにライカンなどのクリーチャーに変異してしまい、適合に成功した極少数が四貴族となった。つまり四貴族とは、ミランダの人体実験から「たまたま生き残った成功者」であり、お互いに血縁関係はなく、仲も悪い。
この設定は、村を「怖い場所」として成立させるための丁寧な積み重ねだ。「なぜこの村の人間はこんなことをしているのか」という疑問に、ゲームはちゃんと答えを持っている。探索中に見つかるメモや日記を読み込むことで、ミランダが村に君臨するまでの歴史、村人たちがカドゥに感染させられた経緯、四貴族それぞれの成り立ちが少しずつ明かされていく。ゲームをクリアしてから「あのメモの意味はこれだったのか」と気づく発見も多い。
マザー・ミランダ自身のバックストーリーも、ただの「悪の女王」では終わらない。彼女が村を支配し実験を続ける理由には、百年前に失った娘「エヴァ」の復活という個人的な動機がある。バイオヴィレッジというゲームは、イーサンが娘を取り戻そうとする物語であると同時に、ミランダが娘を取り戻そうとした物語でもある。この「父親と母親、それぞれの『娘を取り戻したい』という動機の対比」が、ゲームのテーマを一段と複雑にしている。
村に隠された情報の密度は、ゲームを1周だけ遊んだプレイヤーには全部は伝わらない量がある。2周目以降や攻略情報を見ながらメモを集めていくと、「なぜあのキャラクターはあの行動を取ったのか」という疑問に対する答えが見つかる。バイオシリーズは設定の作り込みという意味でも評価が高いシリーズだが、バイオヴィレッジはその意味で「表面だけでも楽しめるが、深く掘ればもっと楽しい」設計になっている。
村の建物や風景にも、ゲームの世界観を補強する細かいディテールが詰め込まれている。教会の壁に刻まれた「ミランダへの感謝の言葉」、村人の家に残された日記の一節、礼拝堂に飾られたミランダを「神」として描いた絵——これらは攻略に一切関係しないが、ゲームの世界が「本当にそこで生きていた人間がいた」という説得力を高める。このレベルの環境ストーリーテリングは、大作タイトルでも丁寧にやっている作品は少ない。
四貴族という設計——一つのゲームで四つの体験
バイオヴィレッジ最大の特徴は「四貴族」という構造だ。村を取り囲む四つの領土、それぞれに全く異なる個性を持つボスが待っている。ドミトレスク城、ベネヴィエント邸、モロー地区、ハイゼンベルク工場——この四つは、プレイフィールが完全に別物だ。同じゲームを遊んでいる感覚が途中で何度も変わる。
これはバイオシリーズとしては珍しいアプローチだ。通常のバイオは一つの施設や屋敷を丸ごと探索する構成が多い。バイオヴィレッジは村を「ハブ」にして、そこから四方へ進んでいく構造を取っている。広大なオープンワールドではないが、ゲーム進行に応じて村に戻るたびに新しい通路が開き、探索できる範囲が少しずつ広がっていく。隠し宝箱やムーラ(お金)を集めながら村を歩き回る楽しさは、一本道のアクションゲームにはない「探索の余白」を生み出している。
四貴族それぞれについては後の節で詳しく書くが、「四つの体験が一本のゲームに詰まっている」という感覚は、このゲームを語る上で欠かせない特徴だ。どのエリアが一番面白いかは人によって違う。それでいい。ドミトレスク城が好きな人も、ベネヴィエント邸が一番怖かった人も、ハイゼンベルク工場のSFっぽい雰囲気が刺さった人も、同じゲームの中に「自分の好きな場所」を見つけられる設計になっている。
四つのエリアを順番に攻略するのが基本的な流れだが、ゲームはある程度プレイヤーの自由を認めている。次にどのエリアに行くかを選べる場面もあり、「あのエリアが嫌だから後回し」という選択も可能だ。もっとも、ストーリー上の展開で結局は全部訪れることになるため、選択の幅は限られているが「完全一本道ではない」という感覚を与えてくれる設計は、プレイヤーの自律性を尊重している。
村自体にも探索要素が豊富に用意されている。ゲームを進めるごとに閉じていた扉が開き、宝箱の謎が解けるようになる。各エリアをクリアするたびに村の別のルートが開通し、以前は見えなかった場所に行けるようになる——このループが繰り返されることで、村全体を自分で少しずつ把握していく達成感が積み重なる。バイオ4のヴィレッジ地区に近い感触だが、今作はより密度の高い探索体験になっている。
ドミトレスク城——「逃げながら城を探索する」体験
発売前からSNSで爆発的な人気を集めたのが、ドミトレスク夫人だ。身長2メートル90センチ、1940年代のファッションに白い長手袋、エレガントな外見と対照的な野性的な獰猛さ——彼女がトレーラーに登場した瞬間から、プレイヤーの間では「ドミトレスク夫人に踏まれたい」というコメントが溢れかえった。バイオシリーズで、ボスキャラのビジュアルがここまで話題になった例はなかったと思う。Twitterでは「Lady Dimitrescu」「ドミトレスク夫人」がトレンド入りし、ゲーム業界を超えて一般ニュースにも取り上げられた。ゲームキャラクターがそこまで話題になるのは稀な現象で、発売前から本作の認知度を世界規模で押し上げた。
ゲーム内では、彼女が支配するドミトレスク城が最初の大型ロケーションになる。広大な城内を探索しながら、ドミトレスク夫人とその三人の娘(ベラ、カサンドラ、ダニエラ)に追われながら進んでいく。娘たちは飛んで攻撃してくる虫の群れのようなクリーチャーに変身し、特定の弱点で倒さないと再生してしまう。この「追われながら探索する」緊張感は、バイオRE:2のタイラント(Mr.X)を一人称視点にしたような体験だ。
城の内装の作り込みも見どころだ。礼拝堂、調理室、地下牢、バルコニー——それぞれの部屋が時代と文化を感じさせる詳細なデザインで作られている。バイオ7で感じた「カプコンのRE ENGINEはこれほど精密な空間を作れるのか」という驚きが、今度は城という舞台でさらにスケールアップしている。ドミトレスク夫人の過去や城の歴史を断片的に説明するメモや記録が随所に置かれており、読み込めば世界観の深みが増す設計になっている。
ドミトレスク夫人はカドゥという寄生体を埋め込まれており、その結果として巨大な身体と自己再生能力を得た存在だ。本来は1900年代初頭に生まれており、実験が行われたのは1958年頃。カドゥによる変異が彼女を「不老の城主」に変えた。このバックグラウンドが、単なる「大きくて怖い女」以上のキャラクター像を作り上げている。
ドミトレスク夫人との最終戦は城の屋上で行われる。彼女が変身する巨大な竜型のクリーチャーとの対決は、ボス戦のスケール感という意味でゲームの序盤から「これだけの規模の戦いを見せてくれるのか」という期待感を高めてくれる。
ドミトレスク夫人が廊下を歩いてくる音、あの場面は何回見ても心拍数が上がる。怖いというより「圧倒される」感じだった。
引用元:Steamレビュー

ベネヴィエント邸——バイオヴィレッジ最恐の30分
四貴族の中で「一番怖かった」という声が圧倒的に多いのが、第二のエリア、ベネヴィエント邸だ。ドミトレスク城のゴシックホラーとは全く異なる、純粋な精神的恐怖が待っている。
ベネヴィエント邸に入った直後、それまで持っていた武器とアイテムが全部奪われる。無防備になったイーサンは、薄暗い洋館の中をただ歩くしかない。パズルを解きながら先に進んでいくと、あるタイミングで——ここからネタバレになるため詳細は避けるが——このゲームで最も「見たくない」ものが現れる。このシーンについては「来そうで来ない」「引っ張り続ける演出が凄い」という感想が多い。溜めと怖さの使い方がうますぎる。
「プレイヤーが来そうで来ないを引っ張り続けてそれでも来ないという『溜め』の演出が凄い」という感想は、このシーンを体験したプレイヤーから繰り返し語られる。ホラーゲームで最も大切な「恐怖の調理の仕方」という観点で、ベネヴィエント邸のデザインは一つの答えを示している。怖いものを出しっぱなしにしないこと。「いつ来るか」という不安を最大限に引き延ばすこと。
このエリアのボスであるドナ・ベネヴィエントは、人形を操る能力を持ち、邸内の人形たちが動いているという不気味さを演出している。ドナ自身は直接姿を現さず、「気配を感じるのに見えない」という恐怖を作り出している。ホラーゲームにおける最も古典的で有効な手法——「見えない方が怖い」——を丁寧に実装している。
ドミトレスク城ではアクション的な緊張感があった。ベネヴィエント邸ではそれが皆無で、ホラー体験に特化している。この振り幅の大きさがバイオヴィレッジの強みだ。「ホラーが苦手だけどバイオヴィレッジは遊べた」という人が多い一方で、「ベネヴィエント邸だけは本当に怖くて進めなかった」という声もある。それくらい、このエリアのホラー密度は突出している。
武器なしで精神的な恐怖と向き合う体験をより深めたいなら、Outlastシリーズの存在も知っておいてほしい。あちらは全編を通して武器が一切なく、ひたすら逃げ続ける構造だ。

モロー地区とハイゼンベルク工場——後半二つの話
第三の貴族、サルヴァトーレ・モローが支配する湖周辺のエリアは、水辺を舞台にしたサバイバル感が特徴だ。モローは病んだ肉体を持つ老人で、巨大な生物に変身する能力を持つ。ボート上でのチェイスや湖の底の探索など、これまでとは全く異なる環境での戦いが展開される。四貴族の中では「ビジュアル的に最も気持ち悪い」という評価が多い。
モロー地区で印象的なのは、湖に沈んだ過去のロケーションの探索だ。水中に沈んでいる廃屋や遺構を潜って探索するシーンがあり、閉所感と暗さが独自の不安感を生み出している。ボート移動という「水上での機動力」がゲームプレイに新鮮さを加えてはいるが、ドミトレスク城やベネヴィエント邸と比べてやや淡泊に感じた人も多い。プレイ時間も比較的短く「もっと掘り下げてほしかった」という声がある。
第四の貴族、カール・ハイゼンベルクが支配する工場は、バイオシリーズらしくない「SF感」があるエリアだ。磁力を自在に操る能力を持つハイゼンベルクは、工場内で鉄の塊で作ったクリーチャーを生産している。この工場での戦闘は、金属製の敵が多く登場し、後半はプレイヤーも金属製の乗り物(ハイゼンベルクが作ったウェポン)に乗り込んで進む場面がある。ホラーよりもアクションの比重が大きくなるのが工場エリアの特徴で、「バイオヴィレッジらしくない」という感想もある一方で「工場のアクションが一番楽しかった」というプレイヤーも一定数いる。
ハイゼンベルクというキャラクターは、四貴族の中で最も「人間らしさ」が残っているキャラクターでもある。マザー・ミランダへの反感を持ち、イーサンに「一緒に戦わないか」と持ちかけるシーンは、このゲームの登場人物の中で最も複雑な感情を持つキャラクターとして印象に残る。皮肉屋で喋り方が荒っぽいが、ミランダの支配に縛られたまま実験を強いられていたという背景を知ると、一種の哀愁がある。彼のサイドストーリーを描くDLCが欲しいという声は、今でも多い。
ハイゼンベルクはもっと掘り下げてほしかった。DLCでいいから彼のサイドストーリーが見たい。
引用元:Steamレビュー

デューク(武器商人)と戦闘システム——探索とカスタマイズの楽しさ
バイオ7は武器商人がいなかったが、バイオヴィレッジでは「デューク」という謎の巨漢の武器商人が各エリアに登場する。彼から武器を購入し、手持ちのムーラ(ゲーム内通貨)で武器を強化したり、新しいレシピを買ったりしながらイーサンを強くしていく。このシステムがゲームにRPG的な「強くなる楽しさ」を加えている。
武器強化は「威力」「装弾数」「装填速度」「リロード」などのパラメータを個別に上げていく仕組みで、各パラメータが最大値に達すると「特別改造」というさらなる強化オプションが解放される。序盤は弾薬が不足しがちなため、どの武器を優先して強化するかという判断がゲームプレイのコアになる。全武器を均等に育てようとするとムーラが足りなくなるため、使う武器に集中投資するのがコツだ。
デュークでは食材を使った「料理」も楽しめる。村の各所に生息している動物(魚、豚、鳥など)を狩って食材にし、デュークに調理してもらうとイーサンの最大HP・スタミナ・防御力などが永続的に上昇する。このサブシステムが、ゲームの探索にさらなる動機を与えてくれる。攻略に必須ではないが「全レシピ制覇」を目指すやりこみ要素として機能している。村を歩いていると突然猪が飛び出してきて、銃で追いかけながら「ちゃんと倒せるかな」という小さな緊張感が生まれる——こういう細かい体験が積み重なってゲームの世界への没入感を作り出している。
戦闘そのものは一人称視点(FPS)で進む。バイオ7と同様のシステムを踏襲しつつ、今作では銃の種類と数が増え、より多様な戦い方が選べるようになった。ハンドガン、ショットガン、スナイパーライフル、グレネードランチャー——それぞれに強化ルートがあり、プレイスタイルによって使い分けが変わる。近距離でショットガンをぶっ放す爽快感は、一人称視点ならではの迫力がある。
アイテム管理はバイオ4のアタッシュケース方式を採用している。大きいアイテムは多くのマスを占有し、小さいアイテムは少ないマスで収まる。アイテムを「パズルのように詰め込む」あの感覚が帰ってきた。ケースの拡張もデュークから購入できる。「もう一丁ハンドガンを入れたいのに枠が足りない」というジレンマが、ゲームを続けるモチベーションの一つになっている。
ライカンと呼ばれる村の主要な敵は、「ライカンスロープ(狼男)」が語源の二足歩行クリーチャーだ。身の丈以上の段差を飛び越え、壁をよじ登り、弓矢や棍棒で攻撃してくる知能を持つ。ゾンビのように鈍くはなく、集団で取り囲んで攻撃するため、序盤の戦闘はかなりプレッシャーがかかる。最初の村への侵攻シーンで大群のライカンに追われる場面は、バイオ4のガナードを彷彿とさせるアクションシーンとして序盤最大のハイライトだ。
弾薬の管理もゲームプレイの重要な要素だ。特にノーマル難易度以上では、無計画に撃ち続けると中盤以降で弾切れになりやすい。「倒すべき敵と倒さなくていい敵の見極め」「ナイフで節約できるシーンの把握」——こういった判断がゲームの難易度を左右する。弾薬をケチりすぎてボス戦で手詰まりになるのも、使いすぎて探索中に無防備になるのも、どちらもよくあるパターンだ。1周目では手探りで弾薬管理を覚え、2周目でより効率的なプレイができるようになる——という成長曲線が、このゲームのリプレイ性の一端を担っている。
クラフト(アイテム合成)システムも見逃せない。探索中に集めた素材を組み合わせて弾薬、手榴弾、救急スプレーなどを作ることができる。どの素材でどのアイテムを作るかというレシピはデュークから購入でき、プレイスタイルによって優先度が変わる。近接戦を多用するなら爆発物を多めに作る、弾薬節約型でプレイするなら回復アイテムに素材を回す——こういった選択の積み重ねが、自分だけのプレイ体験を作り出す。

RE ENGINEが作った村の風景——見るだけで価値があるビジュアル
バイオヴィレッジはカプコンが開発した「RE ENGINE」を使用している。バイオ7で初めて採用されたこのエンジンは、バイオRE:2、RE:3、デビルメイクライ5と重ねるごとに熟成され、バイオヴィレッジでは次世代機(PS5、Xbox Series X/S)とPCでレイトレーシングにも対応している。
村のロケーションが美しい。東欧の農村という設定を、朝霧の中に浮かぶ木造の家々、雪に埋もれた礼拝堂、湖面に映る城の影——RE ENGINEのフォトリアルな表現力が「行ったことはないのにどこか懐かしい」という感覚を作り出している。ホラーゲームの舞台として「怖い」だけではなく「美しい」という感想が出てくるのは、このビジュアルの質があってこそだ。
城の内部もそうだ。ドミトレスク城の礼拝堂には、本当のゴシック様式の建物を参考にしたとわかる精密さがある。窓から差し込む光の表現、石壁のテクスチャ、埃が舞う空気感——プレイ中に「スクリーンショットを撮りたい」と思う場面が何度もあった。実際、PC版では多くのプレイヤーがゲーム内のフォトモードを使ったスクリーンショットをSNSに投稿している。
PC版ではさらに、Ray Tracing(レイトレーシング)をオンにすることでゲームの光と影の表現がワンランク上がる。ろうそくの光が石壁に反射する様子、水面の映り込み——ハイスペックなPCを持っているなら、ぜひ最高設定で見てほしいビジュアルだ。推奨スペックはCPUがIntel Core i7-8700またはAMD Ryzen 5 3600、メモリ16GB、GPUがGeForce RTX 2070またはRadeon RX 5700XT程度。レイトレーシングありで4K/60fpsを狙うにはRTX 3070以上が必要になる。
音響面も丁寧に作られている。城の中で足音が反響する感覚、ベネヴィエント邸の静寂の中で聞こえる微かな物音、工場の機械が唸る重低音——ヘッドホンで遊ぶと環境音の作り込みが一段と引き立つ。怖いシーンが怖く感じるのは、半分以上は音のせいだと思う。ヘッドホン使用を強くおすすめしたい理由がここにある。スピーカーで遊ぶのと、密閉型ヘッドホンで遊ぶのでは、ベネヴィエント邸の体験の怖さが文字通り別物になる。ゲームをより深く楽しみたいなら、ヘッドホン着用は必須だ。
なぜここまで売れたのか——ホラーとアクションの「入口」として
バイオヴィレッジが1,000万本を超えた理由は、「ホラーが得意でなくても遊べる難易度設定」と「話題性の高いキャラクター(ドミトレスク夫人)」と「バイオ7からの続投した主人公への感情移入」が三つ重なったことが大きい。
難易度面では、最も簡単な「アシスト」モードを選ぶと被ダメージが大幅に減少し、アイテムも自動補充されるため、ホラー初心者でもストーリーを追いかけることができる。逆に「ヴィレッジオブシャドウ」という最高難易度ではワンミス即死に近い状況になる。同じゲームで遊び方の幅が広い設計が、多様なプレイヤー層に刺さった。
ドミトレスク夫人のビジュアルインパクトは、ゲームのマーケティングという意味で一つの出来事だった。発売前のトレーラーで彼女が登場した直後から、Twitterのトレンドに「ドミトレスク」「Lady D」が並び始め、ゲームに興味のない層にまで名前が届いた。「バイオを一度も遊んだことないけど、ドミトレスク夫人を見たかったから買った」というプレイヤーが実際に一定数存在する。一人のキャラクターがゲームの広告塔になった珍しい事例だ。
Steam Awards 2021の「ゲームオブザイヤー」部門では、Valheim、New World、Cyberpunk 2077、Forza Horizon 5を抑えてバイオヴィレッジが選ばれた。これはプレイヤーの投票による賞であり、批評家の評価だけでなく「遊んだプレイヤーが推したい」という感情的な支持の強さを示している。
バイオRE:2と比較すると、バイオRE:2は96%好評という数字がある。純粋な品質の高さという意味ではバイオRE:2の評価が突出しているが、バイオヴィレッジの「幅広いプレイヤーへの訴求力」はバイオRE:2とは別の強みを持っている。ホラーが好きではなかった人がバイオヴィレッジ経由でバイオRE:2に手を伸ばすというルートが生まれているのも、シリーズにとってプラスの現象だ。
バイオシリーズ初プレイだったけど、ドミトレスク夫人のビジュアルに釣られて買ったら最後までやめられなかった。気づいたら2周目に入ってた。
引用元:Steamレビュー

正直な評価——気になる点も書いておく
94%好評という数字は素直にすごいが、全員が絶賛しているわけではない。批判的な声も一定数あり、それを知っておく方が買う前の判断材料になる。
まず「ボリュームが短い」という指摘がある。ストーリーを追うだけなら8〜10時間程度、探索を丁寧にやっても15時間前後でエンディングを迎える。前作バイオ7が大体似た時間感覚だったこともあり、「フルプライスにしては短い」という感想は発売当初から繰り返し出ていた。今は定価から75%オフのセール価格で入手できることも多いため、この点は以前ほど問題ではなくなっているが、購入を検討する際には念頭に置いた方がいい。
次に「ホラーとアクションの中途半端さ」だ。前作バイオ7は農家という閉鎖空間で逃げ場がなく、狭い視野の中でひたすら怖かった。バイオヴィレッジはそれと比べてアクション寄りで、ホラーとして怖いかというと前作の方が恐怖密度は高い。ベネヴィエント邸を除けば「ビビる場面はあるが、怖くて進めない」ということは少ない。「怖すぎるゲームが遊びたい」と思うなら別タイトルも参考にしてほしい。
エリアごとの完成度のばらつきも気になった。ドミトレスク城とベネヴィエント邸の作り込みに比べると、モロー地区と後半の工場はやや駆け足に感じる。四つのエリアを均等に丁寧に作るよりも「前半二つで印象的なエリアを作って、後半は物語のスピードを上げる」という選択をした結果だと思うが、それぞれに深く入り込みたいプレイヤーにとっては物足りなさが残る。
「敵の種類が少ない」という声もある。ライカン、スカルヘッド、各エリアのクリーチャー——中盤以降は似たような敵の繰り返しになる場面が増える。バイオ7の「ベイカー家のメンバーがそれぞれ違う恐怖を作り出していた」構造と比べると、雑魚敵のバリエーションは確かに少ない。
「デュークの存在感が過多」という指摘もある。武器商人として随所に登場するデュークは愛嬌のあるキャラクターで、プレイヤーにも人気が高い。しかし「恐怖の場所にビジネスマンがいることで緊張感が緩む」という声がある。バイオ4のマーチャント(武器商人)も同様の指摘があったが、バイオヴィレッジのデュークはより物語に絡んでくる描写が多く、「謎めいたキャラクターとして面白い」という肯定的な見方と「ホラー体験の邪魔」という否定的な見方が分かれる。
それでも、「バイオ7より好き」という声と「バイオ7の方が好き」という声が半々くらい存在する中で、どちらも1,000万本を超えるセールスを記録しているのは、バイオシリーズとして新しい方向性を打ち出すことに成功した証拠だとも言える。自分がどちらのタイプかを把握した上でプレイすれば、期待との乖離は少ない。
バイオ7の方が怖かったけど、ヴィレッジはキャラクターとロケーションが魅力的で「また行きたい場所」がある。怖さじゃない部分でリプレイしたくなるゲームだった。
引用元:ゲームウィズ レビューコメント
ゴールドエディションとDLC——本編の後の話
2022年10月28日、本編に三つの追加コンテンツをまとめた「バイオハザード ヴィレッジ ゴールドエディション」が発売された。追加コンテンツは「ウィンターズ エクスパンション」という一つのパッケージにまとまっており、以下の三本立てだ。
一つ目は「シャドウズ オブ ローズ」。本編の16年後を舞台に、成長したローズマリー・ウィンターズが主人公の新シナリオだ。本編が一人称視点なのに対し、ローズ編は三人称視点(TPS)で進む。ローズが持つ特殊な能力を使って進んでいく構造で、クリア時間は2〜3時間。本編の結末を知ったプレイヤーが「その後の物語」を見られるという意味で、本編を遊んだ人なら間違いなく気になるコンテンツだ。
二つ目は「ザ・マーセナリーズ アディショナル オーダーズ」。本編クリア後に遊べるスコアアタックモード「マーセナリーズ」に、クリス・レッドフィールド、カール・ハイゼンベルク、ドミトレスク夫人の三名がプレイアブルキャラクターとして追加される。特にドミトレスク夫人を操作できるという点が、「追われる側から追う側に」という体験として話題になった。ドミトレスク夫人でプレイすると彼女の巨大さと攻撃力がそのまま使えるため、本編での「追われる」体験との対比がちょうど面白い逆転になっている。
三つ目は「サードパーソン(三人称視点)モード」。本編をTPS視点でプレイできるようになる。FPS視点が苦手なプレイヤーや「イーサンの姿を見ながらプレイしたい」という需要に応えたモードで、ゲームプレイが全体的に変わる体験を生む。本編クリア済みのプレイヤーが「もう一度別の視点で遊んでみたい」というリプレイとしても機能している。
本編を購入した後からでも「ウィンターズ エクスパンション」を追加購入する選択肢があり、ゴールドエディションであれば最初からすべて含まれている。セール時にゴールドエディションを選ぶと、本編だけでなくすべてのコンテンツが手に入るため、はじめて購入するならゴールドエディションを選ぶ方がコスパはいい。
村という「ハブ」——行き来を重ねる探索の面白さ
バイオヴィレッジの「村」は、単なる移動のための通路ではなく、ゲーム全体を通じて何度も戻ってくる生きたロケーションだ。四貴族のエリアをそれぞれクリアするたびに、村の新しい場所が開通し、以前は入れなかった建物や路地が解放される。この「村が少しずつ開いていく」感覚が、ゲームに縦の厚みを与えている。
序盤の村は燃え上がり、ライカンに囲まれた混乱の場だった。ドミトレスク城から戻ってくると、同じ村の空気が少し違って見える。死んだライカンの残骸、倒れた木の柵、廃屋の中に残された食材——こういった細かい変化に気づくことが、このゲームの探索の楽しさの一部だ。「前回来たときはここに入れなかった」という記憶と、「今なら何か見つかるかもしれない」という期待が重なって、村を歩くだけで発見がある。
村の探索で特に面白いのが「宝箱パズル」だ。特定の形の錠前がついた宝箱は、対応する鍵や道具を手に入れないと開けられない。その鍵を手に入れるためには別のエリアをクリアする必要がある——という構造になっているため、「あの宝箱、ついに開けられる」という瞬間が何度も訪れる。強制的に全部回らせる設計ではなく、気づいた人が寄り道として楽しめる作りになっている。
釣りもサブコンテンツの一つだ。特定の場所で釣り竿を使って魚を釣ることができ、釣った魚はデュークに食材として渡せる。戦闘と探索の合間に静かに釣りをする体験は、このゲームの暗さと怖さのトーンから少しだけ外れた「息抜き」として機能している。ゲーム全体の緊張感を緩めすぎずに、でも完全な緊張の連続にならない——このバランス調整がバイオヴィレッジの居心地の良さを作っている。
村の中に隠されている宝石も収集要素の一つだ。特定の像や彫刻を調べると宝石が現れ、それをデュークに売ることでムーラが入る。隠し場所を知らないプレイヤーは1周目では見逃しがちで、「2周目で全部拾いたい」というモチベーションにもなる。「同じ村を2回遊ばせる」リプレイ設計として機能している。
村を歩いていると細かいインタラクションも多い。壁に掲げられた絵画を調べると文字が読める、樽を壊すとアイテムが出てくる、小屋の鍵がかかったドアを後から開けると隠し部屋があった——こういった発見の積み重ねが探索を楽しいものにする。全部のアイテムを集めようとすると1周のプレイ時間が15〜20時間になるプレイヤーもいる。「攻略情報なしで全部自力で見つけた」という体験はゲームが持つ最大の価値の一つで、1周目こそアイテム集めを楽しんでほしい。
マーセナリーズ——クリア後のやりこみ要素
本編クリア後に解放される「ザ・マーセナリーズ」は、シリーズ恒例のスコアアタックモードだ。制限時間内にできるだけ多くの敵を倒し、コンボを繋ぎ続けてスコアを稼ぐ。本編とは全く違うゲームのように感じるほど、スピーディーなアクションが展開される。
ステージは村、城、工場など本編のロケーションを使い、プレイアブルキャラクターはイーサンとクリスの二人(ゴールドエディションではさらに追加)。SSランクを目指すには敵の出現パターンを把握し、コンボを絶対に切らないルートを組み立てる必要がある。繰り返しプレイする中で少しずつランクが上がっていく達成感は、本編のホラー体験とは全く違うゲームのやりこみだ。
プラチナトロフィー(Steam実績コンプリート)を目指す場合、マーセナリーズの全8ステージでSランクが必須になる。「ダントツで大変なのがマーセナリーズ」という声もあり、全実績コンプには50〜60時間以上かかることが多い。本編クリアだけなら10時間前後で達成できるゲームだが、コンプリートを目指すとその数倍のやりこみが待っている。
周回プレイの動機としては、本編クリアで手に入る「インフィニット武器」の存在もある。特定の条件をクリアすることで無限弾の特殊武器が解放され、それを使った2周目プレイでは1周目とは全く違うパワーファンタジーが楽しめる。最高難易度「ヴィレッジオブシャドウ」でのクリアを目指す上級者も多く、ゲームの長寿命化に貢献している。
Steam版には「New Game+(引き継ぎ周回)」的な要素もある。2周目は1周目のクリアデータを引き継いだ状態で始められるため、武器強化の成果を持ったまま再挑戦できる。「1周目では怖くて慎重にしか動けなかった場所を、2周目は武器フル強化で爽快に突破できた」という体験は、バイオシリーズが長く遊ばれる理由の一つでもある。ゲームクリアが「終わり」ではなく「別の遊び方への入口」になっているのだ。
バイオヴィレッジとアトモスフィアホラー——怖さの「種類」について
ホラーゲームの「怖さ」には、大きく分けていくつかの種類がある。バイオヴィレッジがどの種類の怖さを持つゲームかを理解しておくと、期待値の調整がしやすい。
「ジャンプスケア」は突然の音や映像で驚かせる手法で、ホラーゲームで最もわかりやすく怖さを演出できるが、慣れるとそれほど怖くない。バイオヴィレッジにもジャンプスケアはあるが、それが主な怖さの要素ではない。狭い廊下での遭遇や、開けた扉の先に待っていた敵といった場面がジャンプスケアとして機能するが、全体のトーンとしては「積み重ねる緊張感」の方が強い。ジャンプスケアの多さでホラーを評価するタイプのプレイヤーには、バイオヴィレッジは「怖くない」と感じる可能性がある。逆に「ジャンプスケアは苦手だが、雰囲気のあるホラーは好き」というタイプには刺さりやすいゲームだ。
「追跡ホラー」は後ろから追われ続ける緊張感を使う手法で、バイオRE:2のMr.Xや、バイオ7のジャック・ベイカーがこれに相当する。逃げ場がなく、常に「いつ来るか」という不安が続く。バイオヴィレッジではドミトレスク夫人の娘たちやドミトレスク夫人本人が部分的にこれを担うが、全編を通した追跡ホラーの濃度は前作ほど高くない。
「アトモスフィアホラー」は雰囲気そのものを怖さの源にする手法だ。場所に足を踏み入れるだけで不安になる、何も起きていないのに怖い——そういう体験を作る。バイオヴィレッジで最もこれに近いのがベネヴィエント邸であり、独特の精神的恐怖がある。
「グロテスクホラー」は見た目や描写の気持ち悪さを使う手法で、バイオシリーズ全体を通して存在するが、バイオヴィレッジではモローのビジュアルや後半のクリーチャーにこれが強い。
バイオヴィレッジの怖さは「アクションの合間に挟まれる恐怖」という性質が強い。ずっと怖い状態が続くわけではなく、銃を撃って倒す爽快感→恐怖シーン→また銃を撃つ、というリズムで進む。このリズムが「ホラーが苦手な人でも遊べる」理由の一つだが、同時に「ずっと怖い体験をしたい」プレイヤーには物足りない理由でもある。
それに対してSons Of The Forestのような「自然の中でサバイバルしながら恐怖に対処する」ゲームは、怖さのアプローチが異なる。バイオヴィレッジのような「明確な敵と戦う」構造ではなく、「何がいるかわからない」という不確実性が恐怖を生む。ホラーの方向性の違いを知っておくと、次に遊ぶ作品を選ぶときの参考になる。
BioShockシリーズも「ハイクオリティなビジュアルと独特の世界観でホラーとアクションを融合させた」という意味でバイオヴィレッジと並べて語られることが多い作品だ。海底都市ラプチャーという閉鎖空間で、哲学的な背景を持つ敵たちと戦う体験は、「場所に物語がある」という点でバイオヴィレッジのドミトレスク城と共鳴するものがある。どちらも「このロケーションが好きだから何度でも行きたい」と思わせるゲームだ。

イーサン・ウィンターズという主人公——バイオシリーズが描いた「普通の人間」
バイオシリーズには多くの魅力的な主人公がいる。レオン・S・ケネディ、クリス・レッドフィールド、ジル・バレンタイン——彼らはいずれも戦闘のプロフェッショナルであり、ゲームの中でも「強い存在」として描かれている。
イーサン・ウィンターズはそうじゃない。元々は普通のエンジニアで、戦闘の専門家でも、バイオハザード研究者でもない。バイオ7では消息不明の妻を探して危険な農家に飛び込み、バイオヴィレッジでは娘を奪われて雪山の村に一人で立ち向かう。「家族のために戦う普通の人間」という設定が、このキャラクターを他の主人公とは違う場所に置いている。
ゲームの終盤で明らかになるイーサンの正体と、その結末は——ネタバレになるため詳しくは書かないが——「普通の人間として描かれてきた理由」が最後に明かされる構造になっている。このストーリーの組み立て方は、シリーズの中でも特に評価が高い。バイオ7の出来事からすでに「普通の人間じゃないかもしれない」という伏線が引かれており、バイオヴィレッジでそれが回収される。クリアした直後に「泣いた」という感想が多いのは、感情的な着地点が「家族の物語」として一貫していたからだと思う。
シャドウズ オブ ローズで描かれる16年後のローズの物語は、バイオ7から続いてきたイーサンの物語の「続き」だ。ウィンターズ家の物語が一本のラインとして閉じていく感覚は、複数タイトルをまたいだキャラクター描写として、バイオシリーズの中でも特別な位置にある。「バイオ7とバイオヴィレッジを二部作として遊ぶ」ことで、イーサンという人物の物語が完結する。バイオ7のエンディングを知ってからバイオヴィレッジに入ると、冒頭数分から「この人物の物語はここで終わりを迎えるのかもしれない」という予感が生まれる。その予感を抱えながら過ごす長い旅の全体が、このゲームの本質だ。
クリアして後にずっとイーサンのことが頭から離れなかった。ゲームで久しぶりに本当に泣いた気がする。
引用元:さうりんの日記帳 ブログレビュー

バイオヴィレッジとバイオRE:2の比較——どちらを先に遊ぶべきか
バイオハザードシリーズに今から入る人が最初に悩むのは「どの作品から始めるか」という問題だ。バイオヴィレッジ、バイオRE:2、バイオ7——よく勧められるのはこの三作だが、それぞれ体験の方向性が全く違う。
バイオRE:2は2019年発売のリメイク作品で、第三者視点(TPS)のサバイバルホラーだ。Steamレビューは52,000件超で96%好評という、バイオヴィレッジを上回る評価を持っている。警察署という一つの建物を丸ごと探索する構造で、タイラント(Mr.X)という追跡者に常に追われながらパズルを解いていく。怖さの密度という意味では、バイオRE:2の方がバイオヴィレッジより高い。一人称視点が苦手でTPSの方が遊びやすい人、ゾンビホラーの原点に近い体験がしたい人にはバイオRE:2が向いている。
バイオ7は2017年発売で、シリーズとして初めて一人称視点(FPS)を採用した。閉鎖的な農家という舞台で、脱出経路が極めて限られた中をベイカー家の「家族」に追い回される。ホラーとしての純度が高く、バイオシリーズの中で最も「逃げ場がない怖さ」を体験できる。バイオヴィレッジの直接の前作でありイーサン・ウィンターズの物語の第一章にあたるため、バイオヴィレッジを最大限楽しみたいなら先に遊ぶべき作品だ。
バイオヴィレッジはこの二作と比べると「ホラー+アクション+探索」がほどよくバランスされており、怖さに特化した体験をしたい場合は上の二作が適している。逆に「キャラクターの魅力」「ロケーションの多様性」「ストーリーの完成度」を重視するならバイオヴィレッジが最も高い水準にある。
三作を全部遊ぶなら「バイオ7→バイオヴィレッジ→バイオRE:2」という順番は一つの選択肢だ。バイオ7でイーサンの物語を始め、バイオヴィレッジで完結させ、その後でシリーズの別の魅力を持つバイオRE:2に進む。セール時に三作まとめて買っておくのが最もコスパが良い。
バイオRE:2から入ってその怖さにハマって、バイオ7とヴィレッジも全部遊んだ。シリーズの方向性がそれぞれ違って全部面白い。入口はどこからでもいい。
引用元:Steamレビュー
バイオ7を遊んでいないプレイヤーへ——バイオヴィレッジから入るのはアリか
「バイオヴィレッジから入っても楽しめるか?」という質問に対する答えは「楽しめるが、バイオ7から入る方がいい」だ。
バイオヴィレッジは単体でもストーリーの大筋は理解できる設計になっている。イーサンが娘を探す、四貴族を倒す、マザー・ミランダと対決する——この流れは前作を知らなくても追える。登場人物の紹介も、バイオ7未プレイ者を想定した説明が入っている。
ただ、イーサン・ウィンターズというキャラクターへの感情移入の深さが全然違う。バイオ7でルイジアナの農家を生き延びた経験のある人は、イーサンが雪山の村に一人で立つシーンで「またこいつは……」という共感と哀れみが混ざった感情が生まれる。バイオ7でイーサンがどれほど理不尽な目に遭いながら生き延びてきたかを知っているからこそ、バイオヴィレッジの結末で「もう勘弁してやってくれ」という気持ちになる。
バイオ7はバイオヴィレッジより怖く、閉鎖的で、農家という逃げ場のない環境での体験が続く。ホラーゲームが苦手な人にとっては「怖くて進めない」場面も多い。それでも、バイオヴィレッジの感動を最大化させるためには、バイオ7を先に遊ぶ価値が十分にある。セールで両方まとめて買っておいて、バイオ7→バイオヴィレッジの順番で遊んでほしい。
ちなみに、バイオ7とバイオヴィレッジを遊んだ後でバイオRE:2に進むプレイヤーも多い。イーサンの物語が完結した後、バイオシリーズのルーツに近い体験として、レオンとクレアのラクーンシティを遊ぶのは自然な流れだ。バイオシリーズは各作品が独立したストーリーを持つため、どの順番で遊んでも楽しめるが、一人称視点(FPS)→三人称視点(TPS)という順番に慣れるのも一つのやり方だ。
こんな人に勧めたい——バイオヴィレッジの適正
バイオヴィレッジをどんな人に勧めるか、正直に整理しておく。
強くおすすめしたい人:バイオ7を遊んで「イーサンの物語の続きが見たい」と思っている人には迷わず勧められる。ストーリーとしての完成度は高く、「ウィンターズ家の物語」として二部作の結末が見られる。ホラーゲームを本格的に遊んだことはないが「ゲームの映像美やキャラクターを楽しみたい」という人にも、アシストモードがあるため入門に向いている。バイオ4が好きな人にも——ドミトレスク城の探索感と武器商人とアタッシュケース、後半のアクション寄りの展開——刺さる要素がある。
合わないかもしれない人:「ホラーゲームとしての極限の怖さ」を求めるなら、このゲームより前作バイオ7、あるいはバイオRE:2の方が怖さの密度は高い。純粋な恐怖体験を求めるなら、Outlastシリーズのような無防備で逃げるしかないゲームの方が向いている。「長いゲームを遊びたい」という場合も、10〜15時間というボリュームは他のオープンワールドやRPGと比べると短く感じることがある。
ホラー初心者にとっての入門点:バイオシリーズの歴史ある作品を全部遊んでから入門するのは大変だが、バイオヴィレッジはアシストモードとわかりやすいストーリー構造で「初めてのバイオ」としてもハードルが低い。ドミトレスク夫人やハイゼンベルクといった魅力的なキャラクターがビジュアル面でも訴求力があるため、「このキャラクターが見たかった」という動機から入るのも全然ありだ。
それでも、発売から3年で1,000万本を超えた事実は「このゲームが多くのプレイヤーにとって良い体験だった」という一つの答えだ。ゴールドエディションをセールで買えば本編、シャドウズ オブ ローズ、マーセナリーズ追加コンテンツが全部入ってくる。ホラーが苦手な人もアシストモードがあるので、試しに買ってみる価値は十分にある。
まとめ——「ホラーとアクションの融合」という実験の結果
バイオハザード ヴィレッジは、一人称視点のサバイバルホラーにアクションゲームの爽快感を大胆に混ぜ込んだ実験的な一作だ。その結果、「バイオ7より怖くない」という声と「バイオシリーズで一番好き」という声が同じくらい存在するゲームになった。どちらの感想も、的外れではない。
怖さを求めるならバイオ7、爽快なアクションを求めるならバイオ4、どちらでもない「中間の体験」を求めるならバイオヴィレッジ——そういう位置づけだと思う。ドミトレスク城の探索は「美しい場所を怖い場所として歩く」体験、ベネヴィエント邸は「武器がない状態で精神的な恐怖に向き合う」体験、終盤のアクション展開は「積み上げてきた武器と知識で戦う達成感」——この三つが一本のゲームに詰まっているという点だけでも、遊ぶ価値はある。
そしてイーサン・ウィンターズの物語の結末を、まだ知らない人には——ぜひ自分でたどり着いてほしい。バイオシリーズが普通の人間の家族の話でここまで感情的な着地を見せたのは、これが最初で最後かもしれない。バイオ7を先に遊んでから、続けてバイオヴィレッジに入ると、この二部作の完成度がより鮮明にわかる。
バイオヴィレッジがなぜここまで評価されているかを一言でまとめるなら「幅広いプレイヤーに刺さる間口の広さ」と「ウィンターズ家という家族の物語としての完成度」この二点だと思う。ホラーゲームのコアプレイヤーから、ドミトレスク夫人に釣られて入ってきたカジュアルプレイヤーまで、それぞれが自分なりの楽しみ方を見つけられるゲームは多くない。同じゲームで「一番怖かった場所はベネヴィエント邸だった」という人と「ドミトレスク城の雰囲気が好きで何度もリプレイした」という人が共存できるのは、設計の幅広さのおかげだ。
2024年時点でのSteam価格は定期的なセールで70〜75%オフになることが多い。本編単体でも、ゴールドエディションでも、どちらのタイミングで買っても損はない内容だ。ホラーが苦手な人もアシストモードがあるので、ドミトレスク夫人の話題に乗り遅れた人も今からでも十分楽しめる。ウィンターズ家の物語を知らないままゲームプレイヤーとして年を重ねていくのは、もったいない。
BIOHAZARD VILLAGE
| 価格 | ¥3,990-75% ¥997 |
|---|---|
| 開発 | CAPCOM Co., Ltd. |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows |
| プレイ形式 | シングル |
