Retro Rewind – Video Store Simulator — 90年代レンタルビデオ店を一から育てる経営シム
VHSテープを手に取って、巻き戻し機に突っ込んで、きれいに整理してから棚に戻す。それだけで、なんだかホッとする。
Retro Rewind – Video Store Simulatorをはじめてプレイしたとき、正直「こんな単純な作業がこんなに気持ちいいのか」と驚いた。お客さんが返却ボックスに投げ込んでいったテープを拾い上げて、レジを打って、遅延料金を請求して——そういう地味な繰り返しが、気づいたら3時間消えていた。
Steamでのレビュー数は数千件を超え、評価は95%以上の「圧倒的に好評」を維持している。日本のゲームメディアでもデンファミニコゲーマー、4gamer、Game*Spark、AUTOMATONなど多数が取り上げ、「非常に好評スタート」「当時そのまんまな世代ぶっ刺さりゲーム」と報じた。それほど多くの人の心を動かした作品だ。
2026年3月17日にSteamでリリースされたこのゲームは、Blood Pact Studiosというたった2人組の開発チームが約15ヶ月かけて作り上げた作品だ。リリースからわずか5日で10万本を突破し、「圧倒的に好評」を獲得。Steamの全体ランキングで一時5位まで駆け上がったのは、けっして偶然じゃない。
日本語対応はまだないけれど、映画ジャンルはアイコンで判別できるし、操作は直感的。90年代のレンタルビデオ店を自分で切り盛りする体験が、これほどゲームとして完成されているとは思わなかった。
ゲームの価格は約2,000〜2,500円(リリース時$19.90)。デモ版も無料で公開されていて、まず試してから購入できるのも親切な設計だ。インディーゲームとしては「丁寧すぎる」と感じるほど完成度が高い。
こんな人に読んでほしい

このゲームが刺さりやすい人をざっくり挙げると、こんな感じだ。
- 昔のレンタルビデオ店に思い入れがある(TSUTAYA、GEO、近所の個人店など)
- ゆっくり店を育てていくシミュレーションが好き
- Gas Station SimulatorやCoffee Shop Simulatorみたいな「お店経営」ジャンルが好き
- プレッシャーが少なくて、自分のペースで遊べるゲームを探している
- 90年代のカルチャー・映画・音楽に興味がある
- 作業の繰り返しに快感を覚えるタイプ(棚整理・仕分け・ルーティンが好き)
- インディーゲームを応援したい、小さなチームの丁寧な作品が好き
逆に、激しい戦略性やリスク管理が好きな人にはやや物足りないかもしれない。このゲームはどちらかというと「のんびり丁寧に過ごす」系のシムだ。ガンガン攻めるタイプの経営ゲームを求めているなら、ちょっと方向性が違う。

Retro Rewind – Video Store Simulatorとはどんなゲームか
一言で言えば、「90年代初頭のレンタルビデオ店を経営するシミュレーター」だ。プレイヤーは小さなビデオショップのオーナーになって、VHSテープの仕入れから接客、店内のインテリア、スタッフ採用まで、すべてを自分でコントロールする。
モデルになっているのは、かつてアメリカ中に存在したBlockbuster Videoや、地域密着型のレンタルビデオ店のような場所だ。日本で言えばTSUTAYAが全盛期だった頃、あるいはGEOが登場する前の個人経営ビデオ屋の空気感に近い。棚に無数のVHSケースが並んで、会員カードを出して、「現在貸し出し中」の貼り紙がある——そういう世界が舞台だ。
ゲームの舞台は90年代初頭。テープの棚、蛍光灯の明かり、ポップコーンマシン、スラッシー(シャーベット飲料)マシン——あのころのビデオショップにあったものが、ちゃんとゲームの中に再現されている。BGMも時代を意識したもので、プレイしているだけで「あの頃」に戻っていくような感覚がある。
ゲーム内の映画タイトルは14,000種類以上がランダム生成される架空の作品だが、それぞれに手描きのカバーアートがあって、実在映画のパロディっぽいものが多い。「Knockout Spaceman」「The Toadstool’s Damnation」「Picnic with my Robot」——タイトルを見るだけで笑える。このユーモアと細部へのこだわりが、ゲーム全体を貫いている。
ゲームの基本的な流れ
毎朝、お店を開ける前にすることがある。まずカレンダーをチェックして、今日の天気と特別なイベントを確認する。雨の日は客足が増えやすい。金曜の夜は特ににぎわう。地元でサイエンス・コンベンションがあれば、SF映画の需要が50%増しになる。こういった情報をもとに、今日の仕入れと棚の準備を整える。
お店を開ければ、客が次々やってくる。棚を眺めて「アクション映画ない?」と聞いてくる人もいれば、自分でお目当ての作品を探して持ってくる人もいる。プレイヤーはカウンターに立って、テープをスキャンして、現金を受け取って、おつりを渡す。
一度に持てるテープは10本まで。返却された作品をひとつひとつ処理していくのに、慣れるまで少し時間がかかる。返却ボックスから拾い上げて、システムに入力して、巻き戻し機にセットして、巻き戻しが終わったら取り出して、棚に戻す。この手作業のループが、独特な「作業ゲー」としての気持ちよさを生んでいる。
延滞されたテープへの対応も重要だ。画面に青い「LATE」表示が出たら、その客に延滞料金を請求できる。破損したテープへの対応も同様。こういうちょっとしたトラブル処理が、単調になりがちな日常に変化をつけてくれる。
仕入れとジャンル管理
売れるためには、客が求めるテープを棚に揃えておく必要がある。テープは注文で仕入れる形式で、アクション、ホラー、コメディ、ファミリー、SF、ロマンスなど、さまざまなジャンルを揃えていく。どのジャンルを何本置くかは自分で決める。
ジャンルごとに棚を整理するのは絶対やっておいたほうがいい。お客さんから「ホラーどこ?」と聞かれたとき、ジャンル整理ができていれば即答できる。逆にごちゃ混ぜのままにしていると、自分でも探しにくくなって効率が落ちる。VHSケースの背面には色付きのバーがプリントされていて、ジャンルを視覚的に判別できる工夫もある。
新作リリースにも注目だ。毎週、実際の80〜90年代映画にインスパイアされた「新作」がゲーム内に登場する。新作テープは通常よりレンタル料が高く設定されるし、お客さんの需要も高い。新作の仕入れを逃さないようにするのが、序盤から中盤にかけての重要な経営判断になる。
特に注目なのが「ホログラフィックテープ」だ。限定版として設定されているこのテープは、ケースに特殊な光沢がある。仕入れ値は高いが、どんなに時間が経ってもレンタル料が8ドルと高額を維持する。長期的な収益を考えると、積極的に揃えておく価値がある。
謎の行商人と「大人向けコーナー」
ゲームには少し風変わりな要素もある。毎週火曜日と木曜日の夜だけ、怪しい行商人が店に現れる。この行商人が扱うのは通常ルートでは仕入れにくいジャンルのテープで、特に「アダルト」ジャンルのものを持ってくる。アダルト系テープはレンタル料が高めに設定されているため、仕入れておくと収益アップにつながる。
90年代のレンタルビデオ店には「大人向けコーナー」が存在したのは事実で、このゲームはそこもちゃんと再現している。子ども向けのファミリー映画コーナーの横に、会員限定の「大人コーナー」があったあの時代を、ゲームはしっかり生き写している。
店舗のカスタマイズと拡張
稼いだお金は、棚の追加、内装の変更、ポスターや小物のデコレーションなどに使える。床材も壁も変えられるし、レトロな映画ポスターを飾ることもできる。「自分だけのビデオ屋」を作っていく楽しさがある。
ゲームはレベルアップ制になっていて、レベルが上がるにつれて新しいジャンルの取り扱いや、設備のアップグレードが解禁されていく。レベル4でスナック棚が解禁されるが、これは序盤から積極的に設置したい。スナック1個あたりの原価は数セントだが、1ドル以上で販売できるため、利益率が極めて高い。
ポップコーンマシンやスラッシーマシンが壊れたら修理も必要。放置しているとフル稼働できなくて収益が落ちる。アーケードマシンも設置できて、こちらはパッシブ収入をゆっくり稼いでくれる。細かい管理が積み重なって、「自分の店」という愛着が生まれる仕組みになっている。
店内の配置は自由度が高く、棚の向きや位置を変えられる。通路を広めに取るか、棚を密集させて在庫量を増やすか——こういったレイアウト最適化が、店舗経営の面白さとして機能している。「自分だけの理想のビデオ店」を設計していく感覚は、ゲームが進むにつれてどんどん深まる。
VHSテープと90年代文化の再現

このゲームがここまで話題になった大きな理由のひとつが、90年代文化の再現度の高さだ。
14,000種類以上の架空VHSテープには、それぞれ独自のタイトルとジャンルと手描きカバーアートがある。ゲーム内の「映画」はプロシージャルに生成されたもので、既存のキーワードとアートアセットを組み合わせることで無数のタイトルが生まれる仕組みだ。「Knockout Spaceman」みたいなタイトルが自動で生まれる。だから毎プレイで新しいタイトルに出会えるし、「これ絶対あの映画のパロディだよな」という発見があって飽きない。
VHSテープそのものの扱い方もゲームの核になっている。返却されたテープは必ず巻き戻す。巻き戻し機に差し込む、完了するまで待つ、取り出す、棚に戻す——この一連の動作が妙にリアルで、昔のビデオ屋でバイトしていた感覚を呼び起こす。実際にバイトしていなくても、「そういうことやってたんだな」という追体験として成立している。
「Be Kind, Rewind(ご利用後は巻き戻しを)」というスローガンは、かつてレンタルビデオ店で合言葉のように使われていた言葉だ。返却時に巻き戻しをしないまま返す客が多くて、店員が困るという問題は実際にあった。だからこそゲーム内でも「巻き戻し作業」が重要なルーティンになっているのは、リアリティへのこだわりだと感じる。Nexus Modsにも「Be Kind. Rewind The Revival」というMODが存在するほど、この文化への愛着はゲームを超えて広がっている。
季節・天気・イベントがゲームを彩る
Retro Rewindでは4つの季節が移り変わり、それぞれの季節に特有の祝日やイベントがある。ハロウィンの時期はホラーテープの需要が増し、クリスマスシーズンはファミリー向けが人気になる。天気もリアルタイムに変化して、雨の日は来客数が増える。
Shacknewsのレビューでは「Stardew Valleyのシーズンカレンダー方式をうまく取り入れている」と評価されていた。地域のサイエンス・コンベンションがあれば、その日だけSF映画の需要が50%増加する。スポーツイベントがあればスポーツ映画が動く。こういったイベント連動の需要変化は、毎日「今日は何が売れるんだろう」という予測を立てながら仕入れを調整する楽しさを生み出している。
カレンダーを見て「明日は雨で金曜日か、じゃあアクションとホラーを多めに補充しておこう」という思考が自然と生まれてくる。特に「雨の金曜日」は来客がMAXになるので、スタッフの配置と在庫確認を万全にしておく必要がある。
また、季節ごとに店内の雰囲気も変わる。窓の外の景色が変化して、秋は紅葉、冬は雪景色が広がる。この演出が「時間の流れ」を体感させてくれて、長期的にお店を育てているという実感につながっている。
SKUコードと映画データベース
少しマニアックな要素として「SKUコード」がある。ゲーム内のすべてのテープにはSKU(在庫管理)コードが割り振られていて、コードを使って目的のテープを直接注文することができる。
コミュニティ主導でSKUコードのデータベースが整備されており、専用のWikiサイトで検索することができる。「あのジャンルの特定のテープが欲しい」というときに活用できる。アダルトジャンルの仕入れを行商人だけに頼らず、コードで直接注文するテクニックも知られている。このあたりの「攻略」が存在すること自体、ゲームの奥深さを示している。
Mod対応の広がり
コミュニティの盛り上がりを示す指標のひとつがMod(非公式改造)の充実度だ。Nexus ModsではRetro Rewind向けのMODがすでに複数公開されている。
特に注目なのが「Real Movies Mod」と「VHS Converter」だ。Real Movies Modは架空の映画タイトルを実際の映画タイトルに置き換えるもので、「あの映画をゲームの中で貸し出せる」という体験を実現している。VHS Converterは自分の動画ファイルをゲーム内のVHSとして読み込める機能で、Kotakuが「Retro Rewindで昔のVHS映画を観る方法」という記事を書くほど話題になった。
こういうコミュニティ主導の拡張が活発に行われているのは、ゲームそのものの品質とポテンシャルへの信頼があるから。リリースから数週間でこれほどのMOD文化が育っているのは、かなり珍しいことだ。

Blood Pact Studios——2人の開発者が作った奇跡のヒット
Retro Rewindを作ったBlood Pact Studiosは、たった2人のインディーデベロッパーチームだ。メンバーのひとりであるSamuel Gauthierは、「子供の頃に地元のビデオ屋に通っていたこと」を原点として語っている。
自分の子どもたちに「昔は映画をお店で借りていたんだよ」と話したとき、子どもたちはまったくイメージできなかった——その経験が、このゲームを作ろうと思ったきっかけのひとつだったという。「ノスタルジアが中心的な要素」と彼らは語っていて、単なるゲームメカニクスではなく、失われた文化を伝えたいという思いがゲームの随所に滲み出ている。
開発期間は約15ヶ月。週60時間以上の作業を続けて完成させた作品だ。インディーゲームの開発者が「週60時間以上」という働き方を続けるのは珍しくないが、それが2人でゲームを完成させるということの過酷さを物語っている。仕事終わりに開発をして、週末もずっと開発して——そういう期間を1年以上続けて生み出したのがRetro Rewindだ。
前作の失敗が生んだ方向転換
Blood Pact Studiosの最初の作品「Bonesaw」は、かなりゴア表現が強いアクションゲームだった。これが思うように売れなかったことで、チームは方向転換を余儀なくされた。
そこで選んだのが、真逆とも言えるコンセプト——暴力ではなく、のんびりした日常と懐かしさ。この決断が功を奏した形だ。ゲームメディア80 Levelのインタビューで、Samuel Gauthierは「他のショップシムゲームにインスパイアされたが、80〜90年代の美学と感覚をもっと強く打ち出したかった」と語っている。単なるシム系ゲームではなく、「あの時代」を丁寧に再現することに全力を注いだ。
リリース後のコメントで、Samuel Gauthierは「プレイヤーの支持が僕たちの夢を現実にしてくれた」と語った。2人で作ったゲームが、Steamの売上トップ5に入るなんて、インディーゲームの世界でもなかなかない話だ。
リリース直後の「圧倒的に好評」達成
Retro Rewindはリリース当日から高評価が集まり始め、翌日には98%という数値でSteamの「非常に好評」ステータスを達成した。これは単純な話ではなくて、発売初日にこれほど高い評価を維持するには、「買ってがっかりした」というレビューがほとんどない状態が必要だ。
事前にデモ版を公開していたことも大きかった。「デモで気に入ったから製品版を買った」というプレイヤーが多く、「思っていたのと違う」という離反が起きにくかった。インディーゲームの販売戦略として、デモの先行公開は非常に効果的だったと言える。
デモ版のレビューも「非常に好評」を獲得していて、461件のレビューのうち95%がポジティブという評価だった。製品版でもその評価は継続どころか上昇し、最終的に「圧倒的に好評」という最高ランクに到達した。インディーゲームがこのステータスを獲得するのは簡単ではない。プレイヤー数が増えるにつれて低評価レビューが混ざってくるのが通常のパターンだが、Retro Rewindはレビュー数が増えても高評価率を維持し続けた。それがゲームの本質的な品質を示している。
無料アップデートの約束
リリース5日後に発表したロードマップで、Blood Pact Studiosは今後の予定を公開した。バックルームストレージ、VHS修理ステーション、コントローラー対応、そしてビデオゲームのレンタルという新機能まで予定されている。
重要なのは、これらすべてが無料提供される点だ。「Retro Rewindは正式リリース版であり、今後のコンテンツに課金する予定はない。すべてのプレイヤーに最高のビデオストア体験を届けることが目標だ」というのが開発チームのスタンスだ。
インディーゲームがヒットした後、DLCや有料コンテンツで収益を積み上げようとするパターンは珍しくない。それをしないという選択は、ファンへのリスペクトを感じさせる。開発チームが迅速に改善に動いてくれているし、ロードマップの内容も具体的で、コミュニティの要望をちゃんと拾い上げている姿勢が伝わってくる。

スタッフ採用と店舗マネジメントの深さ

ゲームが進んでいくと、一人でお店を切り盛りするのが難しくなってくる。そこで出てくるのがスタッフ採用だ。
スタッフにはそれぞれ固有のトレイト(特性)がある。採用前に必ずトレイトを確認することが大切で、特に「Loyal(誠実)」というトレイトは重要だ。このトレイトを持つスタッフは退職率0%で、給与アップを要求してこない。長期的に安定した人材を確保できる。
逆に「Strong Immune System(免疫力強)」のトレイトは、病欠申請がほぼゼロになる特性だ。スタッフが急に休んで店が回らなくなる、という事態を防ぐために重宝する。また、スタッフの「Checkout Speed(レジ処理速度)」も重要で、「安いからいいや」と処理の遅いスタッフを雇うと、ラッシュアワーに客を待たせることになる。最初から速いスタッフを選んでおいた方が長期的にはコスト効率がいい。
スタッフはカウンター担当と返却対応担当の2つのポジションに割り振ることができる。序盤は自分一人でこなすが、レベルが上がるにつれてスタッフを増員できる。最大2人まで雇えるが、2人目はレベルをマックスの20まで上げてから解禁される。どのスタッフにどの仕事を任せるかという経営的な判断が問われてくる。
予約管理と客の好み対応
お客さんのなかには、テープを事前に予約したいという人が出てくる。予約を受け付けておくと、返却されたテープを別途取り置きして対応する必要がある。これを忘れると客の信頼が下がる。チラシ(プロモーショナルフライヤー)を使った宣伝も、客の来店を促す効果がある。
また、映画をお勧めする機能もある。お客さんが迷っているとき、ジャンルに合った作品を紹介することで満足度が上がる。こういう細かい接客要素が重なって、「ただ物を売るゲーム」じゃなくて「お客さんと関係を築くゲーム」という印象になっていく。
電話対応も仕事のひとつだ。在庫確認の電話が来ることがある。「○○ってある?」という問い合わせに答えることで、客の来店につながる。電話を無視するとチャンスを逃すし、顧客満足度にも影響する。実際のビデオ店でよくあった「電話で在庫確認してから来店する」という行動パターンが、ゲームでもしっかり再現されている。
常連客というシステムも重要だ。同じお客さんが繰り返し来店するようになると、その人の好みのジャンルがわかってくる。「いつもホラーを借りる人が来た。ホラーの棚が空になってないか確認しよう」という気遣いができると、常連客の満足度が上がって安定した収益につながる。こういう「顔の見えるお客さん管理」が、ゲームをただの数字管理ではなくコミュニティ経営に変えている。
スナック・飲み物コーナーの重要性
おやつ・飲み物関係も見逃せない収益源だ。スラッシーマシンとポップコーンマシンは、壊れたら自分で修理しないといけない。放置しているとフル稼働できなくて収益が落ちる。地味な管理業務だけど、こういう細かさがシム系ゲームの醍醐味でもある。
スナックの棚を早めに設置することを強くお勧めする。スナック1個あたりの原価は数セントだが、1ドル以上で販売できる。数量さえ確保すれば、テープのレンタルと並ぶ重要な収益柱になる。レベル4で解禁されるので、解禁されたらすぐに設置するのが鉄則だ。
アーケードマシンも設置できる。こちらはパッシブ収入(放置しているだけで少しずつ稼げる)の仕組みで、VHSレンタルの合間に少しずつ収益を積み上げてくれる。レンタルのピーク時間以外の時間帯でも、お客さんが自然と足を止める場所になる。

なぜRetro Rewindはこれほど売れたのか
5日間で10万本、2週間で19万本。数字だけ見ると「すごい」の一言だが、なぜこれほど短期間でこれほど売れたのかは、少し分析する価値がある。
「ノスタルジア」という最強のフック
ゲームの力強さのひとつは、ターゲット層のノスタルジアを直撃したことだ。90年代を経験した世代——特に30代後半から50代——にとって、レンタルビデオ店は「週末の楽しみ」の代名詞だった。
ブロックバスター全盛期、金曜の夜に家族で新作を借りに行く。棚を眺めながらどれにするか迷う。箱を手に取ってあらすじを読む。会員カードをカウンターに出す。「これ全部で3本で○○円になります」——そういう体験が、このゲームによって鮮やかに蘇る。
日本では「TSUTAYA世代」とも言えるかもしれない。GEOや近所の個人経営ビデオ屋を思い出す人にも、Retro Rewindのゲームプレイは刺さる。近所のビデオ屋のおじさんが顔を覚えていてくれて、「新作入ったよ」と教えてくれるような、ローカルなコミュニティの感覚もゲームから伝わってくる。
このゲームは、子どもの頃に通っていたビデオ屋の感覚を完璧に再現している。棚を整理していると、あの頃のことを次々と思い出す。
引用元:Steamレビュー
ビデオ屋に行くことは単なる映画を借りる行為じゃなくて、土曜のルーティンだった。このゲームはその雰囲気をちゃんとわかってくれている。
引用元:Steamレビュー
「お店シム」ジャンルのブームへの乗り方
Retro Rewindがリリースされた2026年初頭、Steamでは「お店系シミュレーター」が一種のブームを迎えていた。Schedule 1(麻薬を売る経営シム)が注目を集め、TCG Card Shop Simulator(カードショップ経営)が話題になった流れのなかで、Retro Rewindは完璧なタイミングで登場した。
The Gamerのライターは「TCG Card Shop Simulatorのあとに最もハマりそうなシムゲーム」と評した。ジャンルへの関心が高まっているタイミングで、独自のコンセプトと完成度で登場した——タイミングと品質の両方が噛み合った結果だ。
2025年〜2026年のSteamのトレンドを振り返ると、「自分でお店を運営する」系のゲームが連続してヒットしている。パン屋、カードショップ、ガソリンスタンド、麻薬の密売店、そしてビデオ店——プレイヤーが「自分の居場所」を築くことへの欲求が、このジャンルを押し上げている。特にRetro Rewindは「現実には存在しない体験」(90年代のビデオ店)を提供することで、他のシム系ゲームとの差別化ができている。
「2人組開発チーム」というストーリー性
「たった2人が15ヶ月かけて作ったゲームが、Steamのランキングトップ5に入った」というストーリーは、それ自体がメディアで拡散されるコンテンツになった。ResetEra、Kotaku、Hollywood Reporter、PC Gamerといった大手メディアが次々と取り上げたことで、ゲームを知らなかった層にもリーチした。
「2人で作ったのにこのクオリティ」という驚きは、口コミとSNSで急速に広がった。Indie Game JoeのXポストでは「2人のインディー開発者が90年代のビデオ屋ゲームを作った。いまSteamの売上5位だ」というシンプルなツイートが拡散された。Steamのリリース当日から「圧倒的に好評」に近いレビュー評価を維持できたのも、プレイヤーの期待を超えた品質があったからだ。
インディーゲームの世界では、少人数チームがヒット作を生み出す事例が増えている。ConcordやGotham Knightsのような大型タイトルが失敗する一方で、2人チームが5日で10万本を売る——ゲーム産業の力学が変わってきていることをRetro Rewindは象徴している。大きな資本がなくても、「正しいコンセプト」と「丁寧な仕上げ」があれば、市場でのブレイクスルーが起きうる。
「Overwhelming Positive」の内訳を読む
Steamレビューで95%という数字は、インディーゲームとしては最高クラスの評価だ。ポジティブなレビューに共通しているのは「ノスタルジア」「癒し」「細部への愛」という言葉だ。
Every part of this store sim feels like it was made by people who cared.(このゲームのすべての部分が、愛情を込めて作られたと感じさせる)
引用元:Kotaku レビュー
Definitely one of the better sim type games.(シム系ゲームのなかでも確実にトップクラス)
引用元:Steamレビュー
一方で批判的な意見もある。「レベル20以降に新しいコンテンツがない」「エンドゲームが薄い」という声が複数見られた。プレイヤーの中には「レベル30〜40まで拡張してほしい」という要望を出している人もいる。
Needs more levels. After level 20 there’s nothing new.(もっとレベルが欲しい。レベル20以降は新鮮みがない)
引用元:Steamレビュー
また、Shacknewsのレビューでは「長期的な進行が厳密に一本道で、自由にビジネスをカスタマイズできる方法があればもっとよかった」という点が指摘された。ゲーム自体の評価は高いが、自由度という観点では改善の余地があると見られている。
ただし、この点はロードマップで補完される予定だ。開発チームはプレイヤーの声をしっかり拾っていて、エンドコンテンツの拡充も視野に入れている。

実際にプレイしてわかった、このゲームの「癒し成分」

Retro Rewindの最大の強みは、「作業の気持ちよさ」と「店舗愛着の深まり」のバランスだと感じる。
返却テープを拾う、スキャンする、巻き戻す、棚に戻す——この繰り返しは、客観的に見ればかなり単純だ。でも実際やってみると、手が動くたびに「あ、またひとつ片付いた」という小さな達成感が積み重なる。いわゆる「作業ゲー」の気持ちよさだ。
Store Simulatorというジャンルは他にも多数あるが、Retro Rewindは特に「環境の作り込み」が優れている。店内に流れるBGM、窓から見える季節の変化、お客さんがテープを手に取ったときのSE——こういう細部が積み重なって、「本当にそこにいる」ような没入感が生まれる。
「癒し系」だけど「ただ眺めるだけ」じゃない
一部のAFKゲーム(放置ゲー)と違って、Retro Rewindはプレイヤーが能動的に関わり続ける設計だ。お客さんは待ってくれる。返却テープも急いで片付けなくていい。でも、何もしなければ店は回らない。
このちょうどいい「能動性」が、ストレスなく続けられる理由だと思う。Gas Station Simulatorは「やることが多くてパニックになる」という声がよく聞かれるが、Retro Rewindはそこまで追い込まれない。自分のペースで動ける。でも、動かないでいると売り上げは落ちる。そのバランスが絶妙だ。
週末の夜、音楽をかけながらのんびりビデオ屋を経営する——そういう「ながらプレイ」にも向いている。集中して戦略を考えたい気分のときも、ぼんやりルーティンをこなしたい気分のときも、どちらにも対応できる懐の広さがある。
初心者が陥りやすいポイント
序盤で多くのプレイヤーが迷うのが、「テープの整理」だ。最初は全部同じ棚に突っ込みたくなるが、ジャンル別に分けないと後々必ず困る。スタートダッシュの段階でジャンル整理の習慣をつけておくことが、長期的な店舗運営の鍵になる。
また、「巻き戻し待ち」の時間をどう使うかも重要だ。巻き戻し機が動いている間、他の返却テープを処理したり、注文画面を開いて仕入れを確認したりと、マルチタスクで動けるようにすると効率が上がる。
一方で「完璧にやろうとしすぎない」こともポイントだ。このゲームはある程度「ゆるさ」を許容している。延滞テープが1本あっても即ゲームオーバーにはならない。棚の整理が完璧でなくても客は来る。「完璧な店」を目指しすぎるとストレスになるので、「楽しく運営する」ことを優先したほうが長く遊べる。
プレイ時間の目安と「やりきり感」
Steam上の平均プレイ時間はだいたい10〜20時間程度で、レベル20に到達するまでの時間感覚だ。それ以降は「自由に店を飾る」「コレクションを集める」「より効率的な経営を追求する」という楽しみ方になる。
一周のプレイ体験としてはかなり充実しているが、「繰り返しプレイ」や「無限にやりこめる要素」を求める人には少し物足りないかもしれない。同じ時間帯に同じ作業をこなす繰り返しなので、コンテンツを一通り体験したら自然に「やりきった感」が出てくるタイプのゲームだ。
ただし、これはゲーム全体が「気楽に楽しめる」設計になっているとも言える。「何百時間もやりこまなくていい」「適度に満足できる」ゲームは、忙しい社会人にとっての強みでもある。10〜20時間でひとつの完結した体験ができるゲームとして見れば、価格とのバランスも十分だ。
さらに、ICARUSのような長期的なサバイバル・探索要素のあるゲームとは方向性が異なる。ICARUSは資源を集め、拠点を構築し、厳しい環境に対応していく緊張感が醍醐味だが、Retro Rewindは真逆——街の中の安全な場所で、じっくり日常を積み重ねる体験だ。両方が持つ「育てる喜び」は共通しているが、そのベクトルがまったく異なる。どちらを選ぶかは、今の自分が「冒険したいか」「落ち着きたいか」による。

日本語対応について
現時点ではゲーム内の言語が日本語対応していない点は正直に書いておく。ただ、実際にプレイしてみると、日本語がなくてもそれほど困らない設計になっている。
映画ジャンルはアイコンで判別できる。お客さんのリクエストも、表示されるアイコンや色で意味がわかる。レジ操作は直感的で、英語が読めなくてもなんとかなる。実際、Steamレビューには「日本語なしでも楽しめた」という声が複数ある。
また、日本のコミュニティではすでに有志による日本語化MODが開発されている。Twitter/Xでは「@dora97_」氏が日本語化パッチを公開していて、ある程度の日本語化が実現されている(ゲームのアップデートのたびに対応が必要になる点には注意が必要だ)。

他のシム系ゲームと比べてどうか
「お店経営シム」というジャンルは近年急増しているが、Retro Rewindはその中でどういう立ち位置にあるのか整理しておこう。
Gas Station Simulatorとの比較
同じ「お店系シム」の代表格として挙げられるのがGas Station Simulatorだ。こちらはガソリンスタンドを経営するゲームで、修理、給油、店内管理など多岐にわたるタスクをこなす。
Gas Station Simulatorは「忙しくなりすぎてパニックになる」という声がよく聞かれる。初期の頃は修理とレジと補充が同時に降りかかって、テンパる場面が多い。Retro Rewindと比べると、タスクの多さと緊急性がかなり高い。どちらがいいかはプレイスタイルによるが、「ゆっくり自分のペースで」という人はRetro Rewindの方が向いているかもしれない。
あるプレイヤーはSteamコミュニティで「Gas Station Simulatorはストレスが積み重なりすぎて途中で辞めたけど、Retro Rewindは拡張と経営のバランスがちょうどよくて続けられた」と語っていた。この感想が、2つのゲームの性格の違いをうまく表している。
Gas Station Simulatorがどんなゲームか気になるなら、以下で詳しく紹介している。

Cookie Clickerとの比較
「クリック」という単純な操作を積み重ねて達成感を得る系のゲームとして、Cookie Clickerとの共通点もある。テープをスキャンして巻き戻す繰り返しは、クリッカー系ゲームの「気持ちいいループ」と近い感覚だ。
ただし、Retro Rewindはより視覚的な没入感と店舗成長のストーリーがある分、より複雑な楽しさがある。「数字が増えていく快感」だけでなく、「自分の店が形になっていく達成感」が同時に得られる。シムゲームとして「空間を育てる」要素がCookie Clickerより強い。純粋なクリッカー系ゲームが好きな人なら、Cookie Clickerとの比較で「こっちの方が世界観が豊か」と感じるはずだ。
The Farmer Was Replacedとの比較
自動化・最適化という観点ではThe Farmer Was Replacedと比較するプレイヤーもいる。ただし方向性はかなり違う。The Farmer Was Replacedはプログラミング的思考が求められる自動化ゲームだが、Retro Rewindは手作業のルーティンを楽しむゲームだ。「効率を上げて最適化したい」タイプにはThe Farmer Was Replacedの方が合うかもしれないし、「手を動かして丁寧にお店を回したい」タイプにはRetro Rewindが向いている。
逆に言えば、The Farmer Was Replacedをクリアしてやりきった人が「次は手作業系のゆったりシムをやってみたい」となったとき、Retro Rewindは絶好の選択肢になる。
Timberbornとの比較
長期的な「街・組織を育てる」という観点では、Timberbornとの比較もできる。Timberbornはビーバーのコロニーを育てる街づくりシムで、資源管理と拡張が長期的に続くコンテンツ量が魅力だ。Retro Rewindは現時点でレベル20でコンテンツが一段落するが、ロードマップでの拡充が予定されている。「長期間どっぷりハマれるシム」を求めるなら、現時点ではTimberbornの方が向いているかもしれない。
ただし、「街を設計する」というマクロな視点より「店の中でひとつひとつ動く」というミクロな体験が好みなら、Retro Rewindの方が圧倒的に合う。どちらが上ではなく、体験の種類が違う。
Super Auto Petsとの比較
少し毛色が違うが、Super Auto Petsとの比較も面白い。Super Auto PetsはPCでも楽しめるカジュアルなオートバトルゲームで、気軽にプレイできる点ではRetro Rewindと共通している。ただし、Super Auto Petsは戦略的な判断が重要で、Retro Rewindの「作業の癒し」とは方向性が異なる。どちらもカジュアルなプレイスタイルだが、「頭を使いたいか、手を動かしたいか」で選べばいい。
また、Golf It!のようにフレンドとワイワイ楽しめるゲームとも方向性が違う。Retro Rewindは基本的に一人で黙々とこなすゲームで、オンラインマルチプレイや協力プレイは現時点では非対応だ。一人の時間をゆっくり楽しむゲームとして位置づけると、Golf It!との使い分けがイメージしやすい。
Retro Rewindが語る「失われた文化」の価値

このゲームは単なる「お店経営ゲーム」じゃない、という側面がある。
Netflixが普及して以降、レンタルビデオ店という文化は急速に消えていった。日本でもTSUTAYAの店舗数は激減し、個人経営のビデオ屋はほぼ絶滅した。アメリカではBlockbusterの最後の1店舗がオレゴン州に残るだけになった(それもいまや観光名所だ)。
「映画を借りに行く」という体験は、現代の子どもたちには想像できないものになりつつある。どこでも、すぐに、何万本もの映画がストリーミングで見られる今、「棚を眺めながら何を借りるか迷う」という行動はほぼ消えた。気に入った映画が見つかったとき、アルバイトのお兄さんに「これ面白いですか?」と聞ける関係性も、もうほとんど存在しない。
Retro Rewindはそういう「消えた体験」をゲームとして保存しようとしている。開発者のSamuel Gauthierが子どもたちに話して伝わらなかった体験を、ゲームで伝えようとしたのは、記録としての意味もある。
「あの頃」を知っている人への共鳴
30代以上のプレイヤーの多くが「あのころの感覚を思い出した」と語る理由がわかる気がする。ビデオ店の棚に並ぶ無数のVHSテープ、会員カード、巻き戻し料金の注意書き、「現在貸し出し中」の貼り紙——ゲームの中にあるすべての要素が、あの時代のリアルな記憶と接続している。
特定の世代の人間が「この感覚はわかる」と感じたとき、ゲームへの共感は単なる「面白い」を超えた何かになる。Retro Rewindはその「何か」を意図的に作り込んでいる。80 Levelのインタビューでは「ゲームのデザインはすべてノスタルジアを中心に据えている」と語られていた。それがゲーム全体の統一感につながっている。
「知らない世代」への橋渡し
一方で、レンタルビデオ店を知らない若い世代にも、このゲームは楽しめる設計になっている。「昔ってこういうお店があったんだ」という新鮮な発見として楽しめるし、ゲームメカニクスとしても普通に面白い。
ノスタルジアに依存するだけでなく、ゲームとして成立している——これがRetro Rewindの強さだと思う。懐かし成分がない人にも「面白い店経営シム」として届くし、懐かし成分がある人には「あの頃」への旅として届く。どちらの入口からでも楽しめるのが、間口の広さにつながっている。
Blockbuster vs. Netflixの文化的変化
ゲームの舞台は90年代初頭だが、この時代はまさにレンタルビデオ産業が最盛期を迎えていた時代だ。アメリカのBlockbusterは1990年代に店舗数が最大9,000店を超え、日本でもレンタルビデオ店が全国に広がっていた。
それが2000年代に入ってDVDとインターネットの普及で急速に衰退し、2010年代にNetflixやAmazon Primeが台頭したことで決定的な終わりを迎えた。Blockbusterは2010年に破産申請し、TSUTAYAの会員数も2004年をピークに右肩下がりを続けた。
Retro Rewindの舞台設定は、ちょうどその「黄金期」の始まりに位置している。ゲームの中でビデオ屋を経営しながら、「この産業がいかに栄えて、いかに消えていったか」を歴史として感じることができる。それはある意味、ゲームの外にある文脈を想像させてくれる作品でもある。
日本でのTSUTAYAの歴史を少し振り返ると、1985年に大阪でレンタルビデオ店としてスタートし、90年代に全国チェーン展開して全盛期には2,000店舗以上を誇った。それが今では書店やカフェ、コワーキングスペースを組み合わせた「ライフスタイル店舗」に業態転換し、純粋なレンタルビデオ店としてのTSUTAYAはほぼ消えている。GEOも同様に、ゲームの買取・販売へとメインビジネスをシフトした。
Retro Rewindはそういった「消えていったもの」への愛情から生まれたゲームだ。だからこそ細部の再現にこだわり、ゲームとしての完成度よりも「体験としての正確さ」を大切にした。その選択が、ノスタルジアを持つプレイヤーの心に深く刺さった。
今後の展開と注目ポイント
Blood Pact Studiosが公開したロードマップには、複数の魅力的なアップデートが並んでいる。
予定されている機能追加
最も注目されているのが「ビデオゲームのレンタル」機能だ。実際の90年代レンタル店ではVHSだけでなく、ファミコンやスーパーファミコン、メガドライブのカセットを貸し出すのが当たり前だった。日本のTSUTAYAやGEOもゲームソフトのレンタルを扱っていた。この機能が実装されれば、ゲーム体験がさらに広がる。
「バックルームストレージ」も追加予定だ。在庫を保管する倉庫スペースが増えることで、より多くのテープを管理できるようになる。現在の店舗スペースでは限界を感じているプレイヤーにとって、待望の機能追加だ。
「VHS修理ステーション」は、破損したテープを修理して再び貸し出せる機能で、コレクション要素が強化される。現状では破損したテープは廃棄するしかないが、修理できるようになれば費用対効果も変わってくる。
コントローラー対応も予定されており、これが実装されればソファに座りながらゆったりプレイするスタイルが可能になる。
コンソール展開はなし——PCに集中するスタンス
Switch、PS5、Xboxへの移植を期待する声はかなり多い。開発チームも公式FAQでこの点に触れているが、「コンソール移植は期待しないでほしい」というスタンスを明確にしている。
これはたった2人のチームが無理な拡大をしないという判断で、むしろ誠実な対応だと受け取れる。PCプレイヤーへのサポートに集中して品質を上げる——その姿勢は開発チームへの信頼感につながる。
エンドゲームコンテンツの拡充
現在最大の課題として挙げられているのが「レベル20以降のコンテンツ不足」だ。プレイヤーから「もっとやれることを増やしてほしい」という声が届いていて、開発チームもこれを認識して対応を進めている。
追加予定のデコレーション要素、音楽、アンロック要素なども発表されていて、長期プレイへのモチベーションを維持する施策が計画されている。レベルシステムの拡張(レベル30〜40への引き上げ)についても議論があるようで、今後のアップデートで対応が期待される。
19万本到達とさらなる成長
リリースから2週間で販売数は190,000本に達したという報告がある。いまやSteamで最も注目されるインディーゲームのひとつとして定着した感がある。Newsletter「Game Discover Co」による分析では、「完璧なテーマがなぜ20万本近い販売に繋がったか」というタイトルで詳細が分析されるほど、業界からも注目されている。
Hollywood Reporterが取り上げたり、Pure Xboxが「Please Don’t Expect Console Ports」という記事を書いたり——ゲームメディア以外の媒体での注目度も高い。この広がり方は、単なるゲームファン以外の層にもリーチしていることを示している。
Steamチャートでのピーク同時接続プレイヤー数は約12,000人。インディーゲームとしては異例の数値だ。Twitchでも配信者が多数取り上げ、「癒し配信枠」として機能している。リリース直後の配信では「懐かしい」「こういうゲームを待ってた」というコメントがチャットを埋め尽くし、視聴者がそのまま購入するというサイクルが生まれた。
Steamコミュニティの活発な議論
Steamコミュニティのディスカッションボードでは、発売直後からプレイヤー同士の活発な意見交換が行われている。「ホログラフィックテープの見分け方」「効率的なジャンル整理の方法」「スタッフ採用のベストプラクティス」といった実用的な情報交換から、「90年代のビデオ屋の思い出」という感情的な書き込みまで、内容は多岐にわたる。
特に「Feedback & Suggestion」スレッドには膨大な要望が集まっていて、開発チームがこれを参考にロードマップを組んでいることが伺える。コミュニティが積極的に開発に関わっているこのスタイルは、インディーゲームが長期間愛される条件のひとつだ。
まとめ——懐かしさと新しさが同居する、稀有な作品
Retro Rewind – Video Store Simulatorを一言で表すなら「失われた文化をゲームで蘇らせた傑作インディー」だと思う。
たった2人で作られたこのゲームが5日で10万本を売り、「圧倒的に好評」を維持している理由は、ゲームの品質とコンセプトの強さだ。90年代レンタルビデオ店という「消えた体験」を、ゲームメカニクスとして丁寧に再現した。ノスタルジアという強い感情に正面から訴えかけながら、同時にゲームとして純粋に楽しい作品になっている。
14,000種類のVHSテープ、4つの季節と天気システム、スタッフ採用と店舗カスタマイズ、怪しい行商人、ホログラフィックテープのコレクション——こういった細部への気遣いが積み重なって、「本物の体験」に近いものができている。
「ゆっくり自分のペースで店を育てたい」「作業の積み重ねで達成感を得たい」「90年代の文化に触れたい」——このどれかひとつでも当てはまるなら、間違いなく楽しめる。日本語対応がない点はハードルになるが、英語が苦手でも十分遊べる設計になっているし、有志の日本語化パッチも存在する。
課題として挙げられるのはレベル20以降のコンテンツ量の少なさだが、開発チームは無料アップデートでの拡充を約束している。ビデオゲームのレンタル機能追加や、バックルームストレージ、VHS修理ステーションなど、具体的な追加要素がロードマップで示されている。今後のアップデートで、エンドゲームの薄さは解消されていくはずだ。
価格面でも手を出しやすい。$19.90(日本円で約2,500〜3,000円前後)というリリース時の価格は、セールなどを利用すればさらに安く入手できる。デモ版も公開されているので、購入前に体験できるのも良心的な設計だ。「気になってるけどどうしようかな」と思っているなら、まずデモを試してみることをお勧めする。デモを遊んで「楽しい」と感じたなら、製品版でもその感覚はしっかり続く。デモでの評価が95%だったのが、製品版では「圧倒的に好評」になっている事実が、品質の信頼性を物語っている。
2026年のインディーゲームシーンの中でも、Retro Rewindは間違いなく記憶に残る一本だ。「あの頃のビデオ屋が懐かしい」という気持ちがあるなら、ぜひ一度プレイしてみてほしい。
それと、テープを返す前には必ず巻き戻しを。これは昔のルールだが、Retro Rewindの世界では今でも健在だ。巻き戻しを忘れてもゲームオーバーにはならないけれど、ちゃんと巻き戻されたテープを棚に戻したとき、妙な達成感がある。それがこのゲームの本質的な良さだと思う。派手なアクションも、壮大なストーリーもない。でも、確かに何かが積み上がっていく感覚がある。
Blood Pact Studiosの2人が15ヶ月間を費やして作ったものは、単なるゲームではなかった。失われた文化への愛情と、それをデジタルの形で残したいという誠実な思いが、Retro Rewind – Video Store Simulatorにはぎゅっと詰まっている。そのことが、プレイしているとじんわり伝わってくる。
90年代のビデオ屋が「あった」ことを知っている人へ。あの頃の空気を、もう一度感じてみてほしい。知らない人へ。「昔ってこんな場所があったんだ」という新鮮さとともに、とても気持ちのいいシムゲームを楽しんでほしい。どちらにとっても、Retro Rewindは間口の広い、あたたかい体験を提供してくれる。
最後にもうひとつ。ゲームをはじめたら、まず店内をくまなく見回してほしい。棚の作りかた、光の当たり方、小物の配置——細部を眺めているだけで、開発チームの「ここまでやるか」という気持ちが伝わってくる。そういうゲームは、ゲームプレイの前からすでに楽しい。
Retro Rewindはまだ発展途上のゲームでもある。ロードマップに並んだ機能が実装されていくにつれ、これからさらに豊かになっていく。今プレイしておくことで、その変化を一緒に見届けられる。そういう意味でも、早めに触れておく価値がある一本だ。
Retro Rewind - Video Store Simulator
| 価格 | ¥2,300 |
|---|---|
| 開発 | Blood Pact Studios |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows |
| プレイ形式 | シングル |

