Tabletop Simulator|物理エンジンで再現する無限のボードゲーム空間
「ボードゲーム仲間が遠くに引っ越してしまった」という話を聞いたとき、最初に思い浮かんだのがこのゲームだった。
Tabletop Simulatorは、その名の通り「卓上ゲームシミュレーター」だ。仮想の3Dテーブルの上に、物理演算エンジンで動くコマ、カード、ダイス、ボードが並んでいて、マウスで実際に手に取ったり、裏返したり、シャッフルしたり、思いっきり投げ飛ばすことだってできる。それをオンラインで、最大10人が同じテーブルを囲んで楽しめる。
初めて起動したとき、正直「地味だな」と思った。3D空間に茶色い木製テーブルがあって、その上にチェスの駒が並んでいるだけ。グラフィックが特別きれいなわけでもないし、BGMもほとんどない。
ところが、Steam Workshopを開いた瞬間に世界が変わった。カタン、ドミニオン、ラブレター、パンデミック、デッキ構築系から協力系まで、数万本のボードゲームMODが無料で公開されている。スライ・ザ・スパイアのボードゲーム版まである。遊戯王やMTGのカード環境を再現したものも、日本語のゲームも山ほどある。
「ゲームそのものというより、ボードゲームを遊ぶための空間」という表現が一番しっくりくる。Steamのレビューは4万5000件以上あり、そのうち95%が好評。これだけのゲームが「圧倒的に好評」の評価を維持するのには、理由がある。
2014年のKickstarterで37,403ドルを集め、翌2015年6月5日に正式リリース。開発はたった2人の小さなチームBerserk Gamesが手がけた。それから10年以上、今もアクティブなプレイヤーが毎日数千人規模で集まっている。全時間帯ピークは36,793人を記録しており、Steam上のボードゲーム系タイトルとしては群を抜いた数字だ。
このゲームが何なのか、どんな人に向いているのか、逆に向いていない人はどんな人か、正直に書いていく。
「Tabletop Simulator」公式トレーラー
こんな人に読んでほしい

Tabletop Simulatorが刺さるのは、こういうプレイヤーだ。
- 「ボードゲームは好きだけど、集まる機会がなかなか作れない」という人
- 遠くに住む友達と定期的にゲームをしたい人
- ボードゲームカフェに行く前に「まず試してみたい」ゲームがある人
- 特定のボードゲームをデジタルで遊べるかどうか探している人
- 自分でボードゲームを作ってみたい・テストプレイしてみたい人
- VRゴーグルを持っていて、没入感のある卓上ゲーム体験に興味がある人
- 「ゲームをする」だけじゃなく「ゲームを作る」側も楽しみたい人
逆に、こういう人には合わない可能性がある。AIと対戦したい人、ルールの自動裁定が欲しい人、一人でサクッと遊びたい人。Tabletop Simulatorはあくまで「場」を提供するツールであって、ゲームのルールを自動的に管理してくれるわけではない。ルール違反の手を打っても誰も止めてくれないし、AIが相手をしてくれるわけでもない。
「友達がいないと楽しめないか?」と聞かれると、そうとも言い切れない。ソロでワークショップのゲームを試したり、ゲームを作って公開したり、パブリックルームで見知らぬ人と遊ぶことも一応できる。ただ、このゲームが最も輝くのは間違いなく「気心の知れた仲間と遊ぶとき」だ。
近くに住んでいなくても、毎週末オンラインで集まれる仲間がいるなら、このゲームはかなり長く付き合えるツールになる。
Tabletop Simulatorとは何か:ゲームではなく「空間」
まず根本的な部分を整理したい。Tabletop Simulatorは「ゲーム」ではなく「環境」だ。
ゲームを買ったら遊べる、という普通のゲームとは違う。これはいわば「バーチャルのボードゲームテーブル」であって、テーブルとコンポーネントは用意されているが、「何を遊ぶか」は自分で決める必要がある。
本体には15種類のクラシックゲームが最初から入っている。チェス、チェッカー、ポーカー、麻雀、ドミノ、バックギャモン、ジグソーパズルなどだ。これだけでも友達と楽しめる。ポーカーをしながらボイスチャットで話すだけで十分楽しいという人もいる。
しかし本当のパワーはSteam Workshopにある。コミュニティが制作した膨大なMODが無料で公開されていて、その数は数万に上る。有名なボードゲームのほぼすべてが誰かによってデジタル化されており、登録してダウンロードするだけで遊べる。
加えて、開発元のBerserk GamesがDLCとして公式ゲームを販売している。これは普通のゲームDLCとは少し仕組みが違って、ゲームの開発者・パブリッシャーと提携して制作された高品質なデジタル版だ。ホストが1本購入していれば、同じテーブルの全員がプレイできる。
「ボードゲームを友達の家まで持って行く必要がなくなった。Steamで起動してルームを建てれば、5分後には全員が同じテーブルに座っている。」
引用元:Steamレビュー
このシンプルさが、Tabletop Simulatorがこれだけ長く支持されている最大の理由だと思う。物理的な距離の問題を完全にクリアしてしまう。
物理演算エンジンの話
このゲームの大きな特徴のひとつが、リアルな物理演算だ。カードはちゃんと「カードらしく」振る舞い、ダイスは転がり、コマは倒れる。シャッフルしたカードはバラバラに広がり、裏返せば見えないし、積み上げれば山ができる。
慣れるまで少し戸惑うのがここだ。たとえばカードをデッキから1枚引こうとしてうっかり弾いてしまい、テーブルの端から落ちてしまうことがある。コマを動かそうとしたら別のコマを押して盤面が崩れる、というのもある。
慣れてくるとこれが逆に面白くなる。負けが確定したとき、わざとダイスをすべて吹き飛ばして盤面を台無しにする「テーブルひっくり返し」がプレイヤーの間で定番のリアクションになっていたりする。Fキーを押せばテーブルをリアルにひっくり返すアニメーションが発動する機能がある。バカバカしいようだが、これで場が和むことは確かにある。
物理演算が煩わしいと感じる人向けに、オブジェクトのスナップ機能(決まった位置に吸着させる)やロック機能(動かないように固定する)も用意されている。MODによってはこれらが最初から適切に設定されていて、物理的なミスが起きにくくなっているものも多い。
カメラの自由度と視点
視点操作も独特で、最初は少し戸惑う。マウスホイールで拡大縮小、右クリックドラッグで視点回転、中クリックドラッグで視点移動。PCゲームに慣れていれば自然に操作できるが、アナログゲームしかやったことのない人がいきなり触ると難しく感じるかもしれない。
オーバーヘッドモード(真上から見下ろす2D表示に近い視点)も選べるので、見た目がゲーム的で理解しやすい形にすることもできる。
VRモードについては後ほど詳しく触れるが、対応ヘッドセットがあればVRでも遊べる。HTC ViveやOculus Riftに対応しており、VRプレイヤーとPCプレイヤーが同じルームで混在してプレイすることも可能だ。
基本的なキーボードショートカット
Tabletop Simulatorには操作を助けるショートカットがいくつかある。ゲームを起動して最初にチュートリアルを一通り触ることを強くおすすめするが、よく使うものをいくつか挙げておく。
Rキーはオブジェクトをランダムに回転させる。ダイスを振るときやカードをシャッフルするときに使う。Fキーはテーブルをひっくり返すアニメーションを発動させる名物機能だ。Qキーはズームして手元のカードやコマを拡大表示し、詳細を確認できる。Gキーはグリッドの表示切り替えで、マス目が必要なゲームで便利だ。
Enterキーでテキストチャット、Vキーでボイスチャットが使える。ボイスチャットはプッシュトゥトーク方式なので、Vを押している間だけマイクが拾う設定になっている。ただ実際のところ、日本のコミュニティでは外部のDiscordを使っているグループが多い。ゲーム内チャットより安定していて、プレイ中に別の話もしやすいからだ。
テーブルの全員を着席させる機能(それぞれのプレイヤーに座席カラーを割り当てる)や、カメラプリセット(よく使う視点を保存しておく)も覚えておくと便利だ。複数のゾーンにまたがる大型のボードゲームを遊ぶとき、プリセットで視点を素早く切り替えられると快適さが全然違う。
初めて遊ぶときの流れ

Tabletop Simulatorをどう始めればいいかわからない、という人向けに、初回プレイの流れを簡単に整理しておく。
部屋の立て方と友達の招待
ゲームを起動するとメインメニューが表示される。ここで「CREATE」を選ぶと、シングルプレイヤー、マルチプレイヤー、ホットシート(同じPCで複数人が交代でプレイする形式)の3つが出てくる。友達と遊ぶなら「MULTIPLAYER」を選ぶ。
マルチプレイヤーを選ぶと、サーバー名(部屋の名前)とパスワードを設定する画面になる。フレンドのみに公開する設定にして、パスワードを友達に教えて入室してもらう形が一般的だ。Steamのフレンド招待機能でそのまま招待を送ることもできる。招待されたフレンドは「JOIN」から招待を承認して入室する。
入室するとテーブルが表示される。最初のテーブルには本体付属のゲームが並んでいる。別のゲームを遊ぶ場合は、メニューの「GAMES」からWorkshopのMODか本体付属ゲームを読み込む。
ホストの権限と参加者の設定
ホストにはいくつかの特権がある。テーブルの背景・デザインの変更、ゲームの読み込み、各プレイヤーへの座席カラーの割り当て、ゲームマスター権限の付与、参加者の動作制限(テーブルをひっくり返す行為の禁止、オブジェクトのスケール変更の制限など)だ。
ゲームの途中でセーブもできる。途中まで進んで中断したい場合は、ホストがゲームを保存しておけば、次回また読み込んで続きから再開できる。長いゲームでも複数回に分けて遊べる。
参加者側は、自分の手元(ハンドゾーン)に置いたカードや駒は他のプレイヤーからは見えない設定にすることができる。手札を隠したいポーカーやトランプゲームでは自然に活用できる機能だ。
チュートリアルの存在
メインメニューの電球マークのアイコンをクリックすると、ゲーム内チュートリアルが起動する。基本的な操作方法を一通りカバーしているので、初めて触るなら最初にこれを完了させるのがおすすめだ。
また、ゲーム中にいつでも「?」キーを押すとヘルプが表示される。操作に迷ったときはここを確認するのが早い。英語表示だが、よく使う操作は視覚的にわかりやすく整理されている。
「最初の30分は操作に戸惑って『これ本当に使えるのか?』と思った。でもチュートリアルをひとつやったら感覚がつかめた。コツをつかむと動かしやすい。」
引用元:Steamレビュー
Steam Workshopという宝の山
Tabletop Simulatorを語るとき、Steam Workshopの話を避けては通れない。ここがこのゲームの本体といっても過言ではない。
WorldshopにはTabletop Simulator向けのMODが数万本以上公開されている。数字だけ見ても実感が湧きにくいが、ちょっと具体的に挙げると、
- カタン(開拓者たちのカタン)
- ドミニオン
- パンデミック
- ラブレター
- ハンズロット
- アルナックの失われた遺跡
- マルコポーロの旅路
- Slay the Spire: The Board Game(公式MOD)
- Dune: Imperium
- 麻雀(日本語ルール)
- 将棋
- 人狼
- 遊戯王
- マジック:ザ・ギャザリング(非公式)
このリストは当然ながら全体のほんの一部だ。有名タイトルはほぼ全部ある、と思っていい。
Slay the Spireのボードゲーム版MODは特に面白いケースで、カードゲームのデジタル版がボードゲーム化され、それがさらにTabletop Simulator上でデジタル化されるという二重の変換が起きている。デジタルゲームのSlay the Spireをプレイしたことがある人なら、ボードゲーム版の魅力も気になるはずだ。

Dune: Imperiumもワークショップに存在する。映画Duneの世界を舞台にした重量級のデッキ構築+ワーカープレイスメントゲームで、これをTabletop Simulator上で無料で試せるのは大きい。物理版は1万円以上するゲームだが、まずデジタルで試してから購入を検討するという使い方をしているプレイヤーも多い。

日本語コンテンツの状況
「英語が苦手でも遊べるか」という疑問はよく聞く。
ゲーム本体は2021年1月のアップデートv13.0で日本語に対応した。メニューや操作UIは日本語で使える。ただ、Workshopにあるゲームコンテンツの大半は英語だ。英語のルールを読める必要がある場面は多い。
ただし、「TS日本語ゲーム集」というWorkshopコレクションが存在していて、日本語でプレイできるゲームをまとめてくれているコミュニティがある。将棋、麻雀、人狼など日本発のゲームはほぼ日本語対応している。TRPGのコンテンツも日本語のものが増えてきている。
「英語のゲームでも、ルールを事前に友達と確認してから入れば意外と遊べる。翻訳した説明書を別ウィンドウで開いておく、というのが自分たちのやり方。」
引用元:Steamレビュー
「全員が同じルールを知っている前提でゲームを始める」という、リアルのボードゲームに近い感覚で遊ぶなら英語力はそれほど問題にならない。もともとルールを知っているゲームをオンラインでやるためにTabletop Simulatorを使うという層も多い。
Workshopのカオスな側面
正直に言うと、Workshopにはクオリティのばらつきが大きい。しっかり作られたMODもあれば、画像が粗くてテキストが読めないような作りかけの状態で放置されているものも多い。
評価順やサブスクライバー数でフィルタリングすることで良質なMODを見つけやすくなるが、最初は何が何だかわからなくなることもある。使われているオブジェクトのホスティングURLが切れていて、ゲームを読み込もうとしたら黒い箱だらけになった、という話も珍しくない。
こういうトラブルはある程度覚悟しておいた方がいい。Tabletop Simulatorはトラブルシューティング込みで楽しめる人向けのゲームだ、という側面がある。
Workshopで良いMODを見つけるコツは、まずサブスクライバー数(登録者数)が多く、最終更新が最近のものを優先することだ。長期間更新されていないMODはアセットが壊れているリスクが高い。コメント欄で「動く?」という質問に対して最近返信がついているかどうかも確認材料になる。
また、Steamコミュニティのプレイ済みゲームリストのようなキュレーションコレクションを参考にするのも有効だ。日本語対応のゲームを集めたコレクション、クオリティの高いMODをまとめたコレクションなど、コミュニティメンバーが作ったリストが公開されている。ゼロから探すより、こうしたコレクションを入り口にした方が良質なMODに早くたどり着ける。
スクリプトとカスタマイズの深み

Tabletop SimulatorはLuaスクリプトをサポートしている。これが上級ユーザーにとっての大きな武器になる。
Luaはプログラミング言語のひとつで、これを使うとゲームの自動化ができる。カードを自動でシャッフルして配る、スコアを自動計算する、特定の条件が満たされたらメッセージを表示する、といったことが可能になる。
たとえばドミニオンのようなデッキ構築ゲームを再現する場合、カードを手動でシャッフルしたり配ったりするのは手間がかかる。スクリプトで「ゲーム開始時に全員に初期カードを配布する」「ターン終了時に手札を捨て札に戻してドロー」といった処理を自動化すれば、プレイ中の手間が大幅に減る。
ただし、スクリプティングはある程度のプログラミング知識が必要だ。Lua自体は比較的シンプルな言語だが、「変数って何?」という段階の人がいきなり使いこなすのは難しい。Tabletop Simulator専用の関数群(オブジェクトを動かしたり、プレイヤー情報を取得したりするAPI)を覚える必要もある。
Visual Studio CodeやAtomなど外部エディタ向けのプラグインも公開されているため、本格的に開発したい人にとっての環境は整っている。GitHubでサンプルコードを探せばいくらでも出てくるので、コードを読みながら覚えていくという進め方も現実的だ。
カスタムオブジェクトの作成
スクリプト以外にも、カスタムオブジェクトの作成機能がある。3Dモデル(OBJ形式)を読み込んでゲーム内に配置できる。既製品の駒やボードを使うだけでなく、オリジナルのコンポーネントを作れる。
画像もURLで読み込む形式なので、自分でデザインしたカードのイラストをホスティングして読み込む、という使い方も可能だ。ゲームデザイナーがプロトタイプのテストプレイツールとして使っているケースも実際にある。
「自分で作ったカードゲームのプロトタイプを友達にテストしてもらうのに使っています。物理で作るより圧倒的に修正が楽。カードのテキストを変えたいときはPNG更新してURLをコピーするだけ。」
引用元:Steamレビュー
インディーボードゲームの開発者がTabletop Simulator上でベータテスト版を公開し、フィードバックを集めながらゲームを仕上げていく、というワークフローは海外のボードゲームコミュニティでは珍しくない。日本でも同様の使い方をしているサークルが増えてきている。
Tabletop Simulator自体でゲームを作れる、というのはある意味でゲーム制作ツールとしての側面もある。UnityやRPGツクールとは違う形だが、「ゲームを形にして人に遊んでもらう」という体験はできる。
VRモードで変わる体験
Tabletop SimulatorはHTC ViveとOculus Rift(Quest含む)に対応したVRモードを持っている。VRゴーグルを持っている人なら試してみてほしい。全然違う体験になる。
通常のPCモードでは「マウスでオブジェクトをクリックして動かす」のに対し、VRモードでは「手を伸ばしてコマをつかむ」感覚に変わる。テーブルの向こう側に仮想の対戦相手のアバターが座っていて、それぞれが物理的に手を動かしながらゲームをしている。
VRと通常PCはクロスプラットフォーム対応しているので、VRゴーグルを持っていない友達とも同じルームで一緒に遊べる。4人で遊んでいる中でVRが1人、PCが3人というミックスも問題ない。VRプレイヤーだけ視点が3D空間になるが、テーブル上のゲームの進行は共有される。
「VRモードでカタンをやったとき、本当に向かいに友達が座っている感覚があって驚いた。PCモードと比べると没入感が全然違う。ただ、長時間だと疲れるのでVRは休日の特別プレイって感じで使っている。」
引用元:Steamレビュー
VRモードの注意点として、すべてのMODがVRで快適に動くわけではない。VR向けに作られていないMODはオブジェクトのスケールが合っていなかったり、操作性が悪かったりすることもある。VRで遊ぶことを前提としているなら、事前にVR対応を確認してから遊ぶのが無難だ。
コロナ禍で変わった使われ方

2020年のコロナ禍は、Tabletop Simulatorの使われ方を大きく変えた。
それまでは「遠くに住む友達と遊ぶためのツール」という位置づけが多かったが、外出自粛が続く中で「近くに住んでいても集まれない友達と遊ぶためのツール」としての需要が急増した。ゲームカフェが閉まっていた期間、毎週オンラインで集まってTabletop Simulatorでボードゲームをやり続けたというグループの話は、コミュニティの中でもよく聞いた。
日本のボードゲームコミュニティでも変化があった。2020年、ゲームマーケット春のイベントがコロナの影響で中止になったとき、代わりにTabletop SimulatorやUdonariumといったツールを使ったオンライン展示・試遊が行われた。物理のイベントが開催できない中でも、ゲームを発表したり試したりする場としてデジタルツールが機能した。
あの時期を経て、ボードゲームコミュニティにおける「オンラインで遊ぶ」ことへの心理的ハードルは明らかに下がったと思う。「集まれないなら仕方ない」という妥協策だったものが、「物理とは違う良さがあるオプション」として定着しつつある。
田舎に住んでいてボードゲーム仲間がいない人にとっても、Tabletop Simulatorは選択肢を広げるツールになっている。近くにボードゲームカフェがなくても、オンラインで世界中のプレイヤーとつながれる。コミュニティの中では「田舎住みのボドゲーマーの救世主」という言葉で紹介されることもある。
実際、Steamのレビューには「地方に住んでいて近くにボドゲ仲間がいないが、このゲームのおかげで東京にいる友達と毎週遊べるようになった」という声が複数ある。物理的な距離の問題を技術で解消する、というのはTabletop Simulatorが最初から持っていたコンセプトだが、コロナ禍でそれが多くの人に刺さった。
「外出できない期間、毎週日曜に友達と集まってボードゲームをするのが自分にとっての支えだった。リアルのテーブルには戻れなかったけど、Tabletop Simulatorがあったからこそ続けられた。」
引用元:Steamレビュー
DLCプログラムの仕組み
Tabletop SimulatorのDLCは、普通のゲームDLCとは性質が違う。
通常のゲームDLCは「そのゲームの追加コンテンツ」だが、こちらは「Tabletop Simulatorで遊べるボードゲームの公式デジタル版」だ。そのゲームのパブリッシャーやデザイナーと直接提携して作られる。
DLCの特徴として重要なのが「ホストが所有していれば参加者全員が無料でプレイできる」という点だ。グループに1人が購入すれば、残りのメンバーはDLCを購入せずに遊べる。これはボードゲームが本来「1セット買えば複数人で遊べる」というアナログの性質を踏まえた設計になっている。
DLCのラインナップはSuperfight、Catan(カタン)、Pandemic(パンデミック)、Ticket to Ride(チケットトゥライド)、Betrayal at House on the Hillなどがある。物理版のボードゲームと比べると価格は安く、複数人で遊ぶコスパは非常に高い。
ただし、公式DLCとWorkshopのコミュニティMODのクオリティの差は実際にある。DLCはルールの自動化や高品質なアセットが揃っているのに対し、無料のWorkshopMODはその点でバラつきがある。「本格的に楽しみたいゲームはDLCで購入する」「初めて試すゲームはまずWorkshopのMODで確認する」というのが多くのプレイヤーの使い分けになっている。
「パンデミックのDLCはルールが全部自動化されていてすごく快適に遊べた。Workshopの非公式版も悪くないけど、コンポーネントの動きとか手間が全然違う。DLCはその価値がある。」
引用元:Steamレビュー
できないこと:正直なデメリット

Tabletop Simulatorの良い面ばかり書いても意味がないので、できないことと欠点も正直に書く。
AIと一人で遊ぶことはできない
最初に挙げたこれが最大の制限だ。Tabletop SimulatorにはAI対戦機能が一切ない。チェスのCOMと対戦したい、ポーカーのAI相手に練習したいというニーズには完全に応えられない。
「一人で遊びたい」という場合、オフラインでボードゲームを並べてルールを確認する、みたいな使い方は一応できる。ソロプレイ対応のボードゲームMODも存在する。ただし「誰かと対戦したい」の「誰か」が人間でないといけない。
AIと遊びたいなら、個別のデジタルボードゲームタイトルを買う方がいい。デジタル版のAgriculaやDominion(ドミニオン)など、単体でAI対戦ができるタイトルも多い。用途に応じて使い分けるのが正解だ。
ルールの自動裁定はほとんどない
Tabletop Simulatorはあくまで「物理的なコンポーネントのシミュレーター」であって、ゲームのルールを知っているわけではない。「この手はルール違反」という指摘も来ないし、「次にやるべきことはこれ」というガイダンスもない。
プレイヤー全員がゲームのルールを事前に覚えておく必要がある。初めてやるゲームを全員が一緒に覚えながら遊ぼうとすると、かなり時間がかかる。「ルールブックを別で開きながら確認しながら遊ぶ」が基本スタイルになる。
これをストレスと感じるか、アナログゲームらしくていいと感じるかは人によって違う。リアルのボードゲームを卓を囲んで遊ぶときも、全員がルールを覚えてから始めるか、一人が教えながら進めるのが普通なので、その感覚を受け入れられる人には問題ない。
物理演算のミスとトラブル
物理演算がリアルという話を前に書いたが、これが時として不便になる場面もある。誤操作でコマが吹き飛ぶ、カードが積み上がって見えにくくなる、といったことは慣れるまで頻繁に起きる。
MODによっては最初からスナップとロックが適切に設定されていて快適に遊べるものも多いが、整備されていないMODはこういったストレスが多い。快適な環境を作るためにホスト側がある程度の設定をする必要がある場面もある。
Workshopコンテンツの不安定さ
前にも触れたが、Workshopコンテンツの品質は不安定だ。制作者がホスティングしているアセット(画像・3Dモデル)のURLが切れていると、ゲームを読み込んだときにオブジェクトが黒い箱や空白になる。
これはTabletop Simulator側でどうにかできる問題ではなく、MOD作成者の管理の問題なので、対処が難しい。人気で最近更新されているMODを選ぶことがリスクを減らす最善策だ。
2022年のチャット騒動
2022年1月、Tabletop Simulatorのグローバルチャット機能で一つの事件が起きた。LGBTQに関連する発言がモデレーターによって制限されていたことが発覚し、コミュニティで炎上した。Berserk Gamesは謝罪声明を出し、グローバルチャット機能を一時停止した。
この件でSteamのレビューに否定的な投稿が増えたり、コミュニティの信頼が一時的に損なわれたりという影響があった。開発チームが誠実に対応した姿勢は示されたが、「小さなチームが運営しているプラットフォームのモデレーション体制には限界がある」という印象を持ったプレイヤーも多かった。
その後、チャット周りの改修が行われ、現在は状況が改善されている。ただ、こういった過去があったことは知っておく価値があると思う。
なぜ10年以上愛され続けているのか
2015年リリースから2025年の今まで、Tabletop Simulatorが愛され続けている理由を考えてみると、いくつかの要因が見えてくる。
「場」の希少性
オンラインでボードゲームを遊ぶための「汎用プラットフォーム」という存在が極めて希少だ。特定のゲームのデジタル版はたくさんあるが、「どんなゲームでも遊べるテーブル」を提供するプラットフォームは多くない。
BGA(Board Game Arena)というブラウザベースの競合サービスもあるが、あちらはルールを自動化したデジタルボードゲームという性質が強く、物理的なコンポーネントの操作感はTabletop Simulatorとは全然違う。用途が被っているようで、実はターゲットが微妙に違う。BGAは「ルールを覚えていなくてもすぐ遊べる快適さ」が強みで、Tabletop Simulatorは「ルールを知っている前提での自由な環境」が強みだ。どちらが優れているというわけではなく、使い方次第だ。
「カスタムコンテンツを自由に読み込んで、物理的な操作感で、VRでも遊べる」という組み合わせは今でも唯一無二に近い。これを完全に代替できるサービスが今後登場するかもしれないが、今のところTabletop Simulatorの立ち位置を脅かすものは見当たらない。
コミュニティが資産になっている
Workshopに蓄積された数万本のMODは、Tabletop Simulator固有の資産だ。他のプラットフォームに乗り換えようにも、あのコンテンツの量は簡単には再現できない。
コミュニティが勝手に価値を高め続けてくれるプラットフォームとしての仕組みが、長く生存できている理由のひとつだと思う。新作ボードゲームが発売されるたびに、誰かがWorkshopにMODを公開する。そのMODを試すために新しいプレイヤーが流入する、というサイクルが維持されている。
ボードゲーム文化との相性
ボードゲームは「人と一緒に遊ぶもの」という性質上、プレイヤーが固定した仲間グループを持っていることが多い。この「いつも一緒に遊ぶグループ」の中で誰か一人がTabletop Simulatorを知れば、グループ全員に広まるという伝播の仕方をする。
Steam上での評価も口コミも、こういった「仲間グループの中での伝播」が積み重なって形成されているのだと思う。「友達に紹介された」という動機でこのゲームを知った人の割合はかなり高いんじゃないかと推測している。
「6年前に友達に教えてもらってから、毎週日曜に必ず使ってる。起動するたびに違うゲームを遊んでいるのに、いつも同じテーブルに集まっている感覚がある。」
引用元:Steamレビュー
この「いつも同じテーブル」という感覚は、リアルのボードゲームに近いものだ。プラットフォームとしての信頼感が積み重なると、なかなか他には移りにくくなる。
Tabletop Simulatorと相性のいいゲーム

Tabletop Simulatorを使ってどんなゲームを遊ぶかという話を、もう少し具体的にしてみたい。
デッキ構築系ゲームとの相性
カードを使ったゲームはTabletop Simulatorと相性がいい。デッキシャッフル、手札管理、捨て札の管理が物理的な操作でできる。オートメーションMODが整ったデッキ構築ゲームなら、かなり快適にプレイできる。
デジタルのカードゲームとは違う魅力がある。シャドウバースのようなデジタルカードゲームは完全自動化された快適なプレイ体験を提供してくれるが、そこに「人間的なやり取り」の要素は薄い。Tabletop Simulatorでのカードゲームは、「今これ手で持ってるから一瞬待って」みたいな、リアルに近いテンポがある。

ワーカープレイスメント・重量級ゲーム
カタンやパンデミックのような「盤上の駒を動かして戦略を競う」系のゲームも、Tabletop Simulatorでの再現性が高い。特にボードとコマが多いゲームは、物理的に準備する手間が省けるメリットが大きい。
重量級と呼ばれる複雑なルールのゲームをTabletop Simulator上でテストプレイしてから、気に入ったら物理版を買う、という使い方をしているボードゲームマニアも多い。数千円から数万円する物理版を買う前のお試し環境として優秀だ。
文明ゲームが好きな人は、Workshopに多数あるシヴィライゼーション系のMODも確認してみてほしい。Civilization Vのファンなら特に興味深いものが見つかるはずだ。

TRPGとの活用
TRPGのプレイ環境としても使われている。ダンジョンマップを置いて、フィギュアとして駒を配置し、ダイスを振る。物理的なゲームマスタースクリーンの代わりに、ゲームマスターが視点制限機能を使ってプレイヤーに見せる情報をコントロールすることもできる。
専用のTRPG支援ツール(Roll20など)と比べると自由度が高い反面、自分で環境を整備する手間がかかる。「器用な人が準備する前提で、仲間内でTRPGをやりたい」グループには向いている。
WorkshopにはD&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)向けのダンジョンタイルや駒コレクション、クトゥルフ神話TRPGのマップセットなど、TRPG支援素材のコレクションも公開されている。ゲームそのものではなく「素材集」としてのMODも多く、これらを組み合わせてセッション環境を構築している人もいる。
ボードゲームを「試す」ための使い方
あまり語られないが、Tabletop Simulatorは「ボードゲームの購入前確認ツール」としての使い方もかなり有効だ。
物理のボードゲームは価格帯が幅広く、3,000〜5,000円の軽量ゲームから、15,000〜30,000円を超える重量級ゲームまである。「買ってみたら思ったより面白くなかった」「ルールが複雑すぎてグループに合わなかった」という失敗は経験がある人も多いはずだ。
WorkshopでそのゲームのMODを試してみてから購入を判断する、という使い方をすることで、高額な買い物の失敗が防げる。コンポーネントの見やすさ、ゲームの流れ、自分たちのグループに合う感覚かどうか、仮想環境でかなりの部分が確認できる。
日本のボードゲームコミュニティの一部では「TTSで試して、気に入ったら物理版を買う」という購入前試遊のフローが定着しており、インディーボードゲームの販売促進の場としてもTabletop Simulatorを活用するサークルが増えている。
「気になったゲームはまずTTSのWorkshopで探して、グループでワンプレイしてから物理版を買うかどうか決めるようにしている。もう3年くらいそのやり方で失敗がない。」
引用元:Steamレビュー
これは特に新作ボードゲームのバッカー(Kickstarter支援者)にとっても有用な使い方だ。製品が届くまでの間、Tabletop Simulator上でプロトタイプMODが公開されていることがある。実際にモノが届く前から仮想環境でゲームを体験できるという、数年前には考えられなかった体験が生まれている。
価格と購入について
Tabletop Simulatorの本体価格は1,980円(2025年時点)で、Steamのセール時にはさらに安くなる。
この価格で数万本のコミュニティコンテンツが遊べる、という考え方もできるし、「本体だけ買ってもどのゲームを遊ぶかは自分で決める必要がある」という前提を理解してから買う必要がある。
4人グループで遊ぶ場合、全員が購入する必要がある(4本で7,920円)。これを「1セットあれば4人で遊べるボードゲームより割高」と見るか「Workshopのゲームが無制限に遊べることを考えると安い」と見るかは判断が分かれる。
DLCについては、遊びたいゲームが明確に決まっているなら購入する価値はある。ホストが1本購入すれば全員が遊べるので、グループで費用を分担するのも選択肢のひとつだ。DLC単体の価格は500〜1,500円程度のものが多い。
まず本体を買って、Workshopの無料MODで遊んでみてから、気に入ったゲームのDLCを購入するというステップが無難だ。いきなりDLCをまとめ買いするよりも、自分の使い方に合ったゲームを確認してから選ぶ方がいい。
グループの予算感や遊ぶ頻度によって、どこまで課金するかは変わってくる。週に何時間もプレイするグループなら、お気に入りのゲームのDLCに数百〜千円出すのは合理的な判断だ。月に数回程度のカジュアルなプレイなら、無料Workshopのコンテンツだけで十分という場合も多い。
Tabletop Simulator自体のセールと合わせて、DLCバンドル(複数DLCをまとめて割引価格で購入するセット)も定期的に登場する。プレイ予定のゲームが複数あるならバンドルを狙う方がお得だ。Steamのウィッシュリストに追加しておけばセール時に通知が来る。
似たゲームとの比較

Tabletop Simulatorは「ボードゲームを遊ぶためのプラットフォーム」という立ち位置だが、似た性質を持つゲームや同じようなプレイヤー層に刺さるゲームも紹介しておく。
Golf It!はTabletop Simulatorとは全く別のジャンルだが、「友達と集まって遊ぶ」という使い方が近い。気軽にパーティとして楽しめるオンラインゲームを探しているなら、Golf It!もリストに入れておく価値がある。

Super Auto Petsも同様に、友人グループで気楽に楽しめる雰囲気がある。ストラテジー要素とパーティゲーム的な楽しみ方が共存しているタイトルだ。

Climber Animals Togetherは協力プレイの楽しさを気軽に体験できるゲームで、「友達と一緒にワイワイ遊ぶ」という目的が一致している。

Across the Obeliskはデッキ構築×Co-opを深化させたデジタルタイトルで、Tabletop Simulatorで遊ぶボードゲームとは別の方向性だが、「友達と一緒にカードを使って戦略を組む」という楽しみ方は通じるものがある。ボードゲームからデジタルゲームに興味が移ったときの次の候補として覚えておくといい。

Berserk Gamesという開発チームについて
Tabletop Simulatorを語るとき、作った人たちのことも少し触れておきたい。
Berserk Gamesは2014年1月に設立されたインディースタジオで、創業メンバーはジェイソン・ヘンリーとキミコという2人だ。ジェイソンはエンジニアリング系の大学を出たあと、ゲームMOD制作を趣味として続けていた。人気PC剣戟アクション「Chivalry: Medieval Warfare」のMOD「Mana Warfare」は特に評価が高く、これがゲーム制作への足がかりになった。
キミコはChivalryのコミュニティモデレーターを経て開発スタジオ「Torn Banner Studios」に関わった後、ジェイソンと一緒にBerserk Gamesを立ち上げた。
たった2人で作ったKickstarterキャンペーンは2014年2月に始まり、1,822人のバッカーから37,403ドルを集めた。大手スタジオの予算規模からすると小さな金額だが、この資金でゲームを完成させ、翌年Steamにリリースした。
その後10年以上が経ち、小さかったチームは少しずつ規模を広げながら、継続的なアップデートを届けてきた。2021年1月のv13.0で日本語を含む多言語対応が実現し、VR機能のアップデート、Workshopの改善など、長期的なサポートが続いている。
「2人でKickstarterを始めて、こんなに大きいコミュニティができるとは当時思っていなかった。でも使ってくれているプレイヤーがいる限り、開発を続けていく。」
引用元:Berserk Games公式ブログ
2022年のチャット騒動の際、開発チームは謝罪して迅速に対応した。完璧な対応だったとは言えないかもしれないが、向き合う姿勢を見せた点は誠実だったと思う。小さなインディーチームが長く生き残っているということは、それだけプレイヤーから必要とされているということだ。
よくある疑問に答える

Tabletop Simulatorについて初めて調べると、いくつか同じような疑問が出てくる。ここでまとめて答えておく。
全員が購入しないといけない?
本体は全員が購入する必要がある。1,980円(セール時はさらに安い)。これはMicrosoftのゲームを1つ全員で遊ぶのと同じで、プラットフォームの利用料と考えれば納得できる価格だ。
DLCについてはホストが1本持っていれば全員が遊べる。4人グループで毎週遊ぶなら、DLCを何本か持っているメンバーが順番にホストを担当する形でコストを分散できる。
スペックはどれくらい必要?
グラフィックが特別重いゲームではないので、それほど高スペックは要らない。推奨スペックはCore i5相当のCPUと4GBのRAM、GeForce GTX 970相当のGPUだ。少し前の中古ゲーミングPCでも十分動く。
ただし、大規模なMODや3Dモデルを多用したものを読み込む場合は、RAMの消費が増えることがある。8GBあれば快適に動くことが多い。
英語が苦手でも楽しめる?
ゲーム本体のUIは日本語対応している。遊ぶゲームが日本語対応のMODや将棋・麻雀など日本語が前提のゲームなら問題ない。
英語のMODでも、全員がルールを知っているゲームなら遊べる。問題になるのは「カードのテキストを読む必要があるゲーム」で、文字情報が重要なカードゲーム系は英語力が必要になる場面がある。
対処法としては、日本語翻訳のパッチMODが存在するゲームを優先的に探す、事前にルール動画を見てカードの効果を覚えてから遊ぶ、グループに英語ができる人が一人いて通訳役になるという方法がある。完全に英語力不要で全てのゲームを遊ぶのは難しいが、工夫次第でかなり楽しめる。
著作権は大丈夫?
WorkshopのMODの著作権問題は、グレーゾーンの話題だ。公式に許諾を得ているMODもあるが、そうでないものも多い。ボードゲームのパブリッシャーが黙認しているケースもあれば、DMCA申請で削除されるケースもある。
Berserk Games自身は「ゲームコンポーネントのデジタル複製は著作権に関わる可能性があるため、自分で所有している物理ゲームの個人利用に限定してほしい」というスタンスを示している。ただ実際には非常に多くのMODが公開されており、その全てを取り締まるのは現実的ではない状況が続いている。
公式DLCやゲームの公式Workshopページとして認定されているコンテンツは問題ない。グレーゾーンが気になる人は公式ルートのコンテンツだけを使うという選択もある。
セールはいつ頃?
SteamのサマーセールやウィンターセールでTabletop Simulatorも定期的にセールになる。本体が50〜75%オフになることもある。DLCも同時にセールになることが多い。買いたいと思ったら価格履歴をチェックしてからにするのも悪くない選択だ。
長く使うためのコツ
Tabletop Simulatorを長く楽しむためのいくつかの視点を書いておく。
遊ぶゲームを決めてから始める
「今日何遊ぶ?」をTabletop Simulatorを起動してから決めようとすると迷子になる。事前に「今日はカタンをやろう」「先週話してたパンデミックを試そう」と決めておいて、そのMODやDLCを準備してから集まる、という進め方が向いている。
ホストが事前にゲームをセットアップしておいて、参加者は入室するだけ、という形にするとスムーズだ。ホストを毎回固定するか持ち回りにするかはグループによる。
ルールは全員が事前確認
前述の通り、Tabletop Simulatorはルールの自動裁定をしてくれない。「やりながら覚える」スタイルにするなら、全員が「やりながらでもいい」と合意していることが前提だ。一人だけが知らない状態でゲームを始めると、その人が置いていかれたり、他のプレイヤーがルール説明に追われたりして、なかなか本番が始まらないことがある。
新しいゲームをやるときは、全員でルール動画を一緒に見てから始める、というのが自分たちのグループで定着したやり方だ。YouTubeでボードゲームのルール解説動画は大量にある。
Workshopのお気に入りを作る
遊んで良かったMODはワークショップのお気に入りに登録しておく。一度遊んで忘れてしまって「あのゲームなんだったっけ」となるのを防げる。定期的に更新されているMODとそうでないものをある程度把握しておくと、更新が止まったMODからスムーズに代替を探せる。
自分たちのゲームリストを作る
「このグループで遊んだゲーム一覧」「次に試したいゲームリスト」を簡単にメモしておくと、「今日何しよう問題」が起きにくくなる。Discordのテキストチャンネルに書いておくだけでも効果がある。
ゲームのセットアップを事前に済ませておく
大人数での遊びで一番時間がかかるのは「ゲームをセットアップする時間」だ。Tabletop Simulatorでも同じで、MODを読み込んで、コンポーネントを配置して、各プレイヤーに座席を割り当てて、という準備に時間がかかるゲームがある。
ホスト担当が事前にゲームをセットアップした状態でセーブしておけば、集まったときにすぐそのセーブデータを読み込んで遊び始められる。特に初めて遊ぶゲームの場合、セットアップに詰まることも多いので、ホストが一人で予行練習しておく、というのもひとつの手だ。
最初から完璧を目指さない
Tabletop Simulatorは、正直「慣れ」が必要なツールだ。最初のうちはオブジェクトを吹き飛ばしたり、意図しない場所にカードが飛んでいったり、ということは頻繁に起きる。そのたびにゲームが崩れるような体験をしていると、嫌になってしまう人もいる。
最初の1〜2回は「操作を覚える期間」だと思って、完全にゲームとして楽しもうとせずに済むものを選ぶのが良い。チェスやポーカーのような本体付属のシンプルなゲームから始めるのが無難だ。操作に慣れてきたら、Workshopの複雑なゲームに挑戦する流れが自然だ。
まとめ:「空間」として長く付き合えるツール
Tabletop Simulatorは、一言で言えば「オンラインのボードゲームテーブル」だ。ゲームとしての楽しさを提供するというより、ゲームを遊ぶための空間と道具を提供するプラットフォームだ。
これが合うかどうかは、かなりはっきりしていると思う。一緒に遊べる仲間がいて、ボードゲームへの興味があって、ある程度のPCゲームの操作に慣れている人にはおすすめできる。そういう条件がそろっていれば、1,980円で何年も使えるツールになる。
逆に、一人でサクッと遊びたい、AIと対戦したい、ゲームのルールを全部教えてほしいというニーズには応えられない。その場合は個別のデジタルボードゲームを買った方が良い。
コロナ禍を経て、オンラインでボードゲームを楽しむ文化は確実に根付いた。Tabletop Simulatorはその文化の中心にある定番ツールとして、これからも使われ続けるだろう。リリースから10年以上、Steam評価95%「圧倒的に好評」という数字がそれを示している。
「久しぶりに友達みんなで何か遊びたい」と思ったとき、Tabletop Simulatorは選択肢として間違いなく上位に来る。
遠くに引っ越してしまったあの友達とも、毎週末同じテーブルを囲める。それだけでも、このゲームを持っている価値は十分にある。
ボードゲームを好きな人間ほど「物理の方が好き」という気持ちはわかる。コンポーネントを手に取るあの感触、同じテーブルに実際に集まる空気感、それはデジタルでは完全には再現できない。でも「今すぐ集まれない」という現実の壁を越えるために、Tabletop Simulatorは確実に機能してくれる。
リアルのテーブルとデジタルのテーブル、両方を使い分けられる時代になった。Tabletop Simulatorはその「デジタル側のテーブル」として、ここ10年間居続けている定番だ。それはこれからも変わりそうにない。
Steamのレビューを読んでいると、「6年前から使い続けている」「最初に買ったSteamゲームがこれだった」という声が目立つ。長年使い続けるプレイヤーが多いというのは、このゲームが単なるブームで終わらずに生活のリズムに組み込まれている証拠だと思う。
試してみたいボードゲームがあるなら、まずWorkshopで探してみてほしい。探してみると十中八九そのゲームのMODが見つかるはずだ。それが、このゲームを買う一番の理由になるかもしれない。
Tabletop Simulator
| 価格 | ¥2,300 |
|---|---|
| 開発 | Berserk Games |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows / Mac / Linux |
| プレイ形式 | シングル / マルチ |

