「Sultan’s Game」千夜一夜の宮廷で命をかけるカードRPG

目次

Sultan’s Game — 千夜一夜の宮廷で命をかけるカードRPG

最初の一手を打ったとき、正直「これは自分が選んで遊ぶゲームじゃないな」と思った。

狂気の王に仕えながら、毎週1枚のカードを引かされる。色欲、散財、征服、殺戮。どれが来るかはわからない。7日以内にその命令を達成しなければ死刑。そして自分が抱えているのは、薄情な仲間たちと尽きかけた金貨と、次のカードへの不安だけ。

こんな設定のゲームが2025年3月末にSteamでリリースされた。中国の小さなスタジオDouble Cross Studioが作った『スルタンのゲーム(Sultan’s Game)』だ。発売48時間で10万本を突破、3ヶ月で100万本を達成、現在もSteamで95%以上の好評を集めている。

「そんなに売れてるなら気になって買ってみたけど、最初の何ゲームかは何が起きているか全然わからなかった」という人は実に多い。かくいう自分も最初の3ゲームはほぼ1週間以内に処刑されて終わった。でも4ゲーム目で何かが変わった。突然、全体の構造が見えてきて、次にどこへ行くべきかが「読める」ようになった瞬間があった。

あの感覚をまだ味わえていない人に向けて、このゲームを解説していく。

「Sultan’s Game」公式トレーラー

Sultan’s Gameは何をするゲームなのか

Sultan's Game その他RPG スクリーンショット1

一言で表すなら「千夜一夜物語の世界で、理不尽な王の命令をさばき続けるリソース管理RPG」だ。

正確にはTRPGのデジタル版に最も近い感触を持つゲームで、ゲームマスターの代わりに「スルタンカード」というランダムな命令がプレイヤーに降りかかり、それをどう処理するかを毎週考え続けるゲームだ。運も絡むが、準備と知識と判断力がはるかに大きな要素を占めている。

舞台は古代中東の架空の王国。暴虐なスルタン(王)が邪悪な魔法使いに唆されて、宮廷に仕える者を「ゲーム」に巻き込む。プレイヤーはその宮廷に使える高官のひとりとして選ばれた。拒否権はない。

ゲームの構造はこうだ。毎週(ゲーム内時間)、スルタンカードと呼ばれるカードが1枚引かれる。そのカードには要求が書かれている。7日以内にその要求をクリアしなければ、問答無用で処刑される。

スルタンカードは4種類ある。

  • 色欲(Carnality):情欲に関する行為を求める。宮廷の女性や男性との関係を深めたり、特定のキャラクターを手に入れることが要求される。
  • 散財(Extravagance):一定以上の財を費やすよう求める。金貨を派手に使うか、豪華な宴を催すか、高価な装備を揃えるかが問われる。
  • 征服(Conquest):危険な冒険への参加や、特定の人物・集団の討伐を命じる。リスクの高いミッションに挑む必要がある。
  • 殺戮(Bloodshed):特定の人物を殺すか、命を危険にさらすことを求める。道徳的に最も重い要求だ。

各カードにはランクもある。石(Stone)、青銅(Bronze)、銀(Silver)、金(Gold)の4段階で、ランクが上がるほど要求が厳しくなるが、成功したときのリターンも大きくなる。

7日間の中でプレイヤーが行動できる場所は王国内のさまざまなロケーションだ。宮廷、浴場、市場、酒場、書店、路地裏など。それぞれの場所でイベントが起き、人物と出会い、情報を集め、金を稼ぎ、仲間を増やしていく。

そしてこのゲームの根幹は「カード管理」にある。仲間もリソースも装備も、すべてカードとして手元に並ぶ。各イベントに対してどのカードを割り当てるかが、7日間生き残るための核心だ。

「最初は何が何だかわからなくて3回連続で1週間以内に死んだ。でも攻略記事ひとつ読んで戻ったら、急に全部が見えてきた感じがした。このゲームは理解した瞬間からが本番」

引用元:Steamレビュー

こんな人に刺さるゲームだと思う

Sultan’s Gameは間違いなく人を選ぶゲームだ。万人向けではない。でも刺さる人にはかなり深く刺さる。

ハマりやすいタイプ

  • ボードゲームやTRPGが好きな人(手触りがかなり近い)
  • 「物語を自分で作る感覚」が好きな人
  • リソース管理や最適化を考えるのが楽しい人
  • 周回プレイで少しずつ上達していく過程が好きな人
  • テキスト量が多いゲームに抵抗がない人
  • 道徳的に曖昧な選択肢を楽しめる人

合わないかもしれないタイプ

  • 視覚的な爽快感やアクションを求めている人
  • テキストベースの進行が苦手な人
  • 最初から丁寧なチュートリアルを求めている人
  • 「失敗したら最初からやり直し」が根本的に嫌いな人
  • 日本語訳の不自然さが気になる人(現状、一部翻訳が完全ではない)

特に「ボードゲームっぽい感触のデジタルゲームが好き」という人には、かなり強くおすすめできる。実際、ゲームの設計思想はTRPGのシナリオ進行と非常に似ており、マスターの代わりにゲームがランダムにイベントを投げてきて、プレイヤーがどう対処するかを楽しむ構造になっている。

デッキ構築ローグライクという文脈で言うなら、『Slay the Spire』が戦闘のコンボを楽しむゲームだとすると、Sultan’s Gameは宮廷政治というフィールドでの「情報戦と人脈のコンボ」を楽しむゲームだと思う。

あわせて読みたい
「Sultan’s Game」千夜一夜の宮廷で命をかけるカードRPG
「Slay the Spire」デッキ構築ローグライクの原点にして頂点 Steamのレビューが74,000件を超えて、そのうち97%が好評。これはゲーム史を振り返っても最上位クラスの数字だ。 それが『Slay the Spire(スレイ ザ スパイア)』、通称...

王国のロケーションと7日間の過ごし方

Sultan’s Gameの7日間は、王国内のさまざまなロケーションを巡ることで構成される。どの場所に何日を使うかの計画が、毎週の「作戦会議」になる。

宮廷(The Court / The Grand Game)

スルタンが滞在している間は「グランドゲーム」として機能する宮廷は、王国の政治的中心地だ。宮廷では他の大臣たちと影響力を競い合い、スルタンの覚えをよくするためのやりとりが行われる。

宮廷に顔を出すことで、スルタンからの覚えを維持できる。逆に長期間放置すると、ライバルたちによって悪評が広まり、政治的立場が悪化する。自分の仲間が宮廷にいれば代理出席も可能なので、そのための人脈構築も重要な戦略になる。

宮廷でのやりとりがうまくいった場合には、スルタンの寵愛を受けて「ゴールデンカード(好機カードや仲間カードなど)」を手に入れることもある。リスクを取って積極的に動けるプレイヤーほど、宮廷での恩恵を受けやすい。

書店(The Bookstore)

書店は初心者が最優先で活用すべき場所のひとつだ。

毎日異なるキャラクターが書店を訪れる。十分なステータスを持つキャラクターを連れていってそのチェックをクリアすれば、その貴族の支持を宮廷内で得ることができる。つまり書店は「仲間候補のスカウト場所」でもある。

また、書店で買える本はキャラクターのステータスを直接強化できる。知恵や魅力といった能力値を上げることで、より高難易度のイベントにも対処できるようになる。金銭的な余裕があれば積極的に訪れたい場所だ。

浴場(The Bathhouse)

浴場は情報収集の拠点だ。ここでは「諜報(Intelligence)」と呼ばれる情報カードを集めることができる。諜報カードは後の「儀式」イベントなどで使用でき、成功率を高める重要な消耗品だ。

浴場には入るたびに金貨が必要で、貴族キャラクターしか派遣できないという制限がある。毎ターン必須ではないが、「今週はどんな情報が必要か」を考えながら活用する場所だ。

家(Estate)

家(屋敷)は金貨を稼ぐための拠点だ。配偶者や仲間を屋敷に配置することで毎日少量の収入が入ってくる。最大2人のキャラクターを配置でき、成功数によって得られる金貨が変わる(3回成功で5金貨など)。

安定した収入源として機能するため、信頼できる仲間を屋敷に置き続けることは財政管理の基本だ。ただし、その仲間が他のイベントで必要になることもあるため、誰を固定配置にするかの判断が問われる。

路地裏・市場・酒場

路地裏は裏社会とのコネクションを作る場所だ。浮浪者のリーダーや、犯罪組織に関わるキャラクターたちと接触できる。表の宮廷では得られない「秘密(Secret)カード」を手に入れやすい場所でもある。

市場では商人から情報や物資を買うことができ、特定のキャラクターとの出会いも起きる。酒場は情報を聞き込む場所として機能し、次のスルタンカードへの対処ヒントが得られることもある。

各ロケーションが固有の役割を持っているため、「今週のスルタンカードを解決するには何が必要か」という逆算から「どこに行くべきか」が決まってくる。これがSultan’s Gameの毎週の判断の核心だ。

「最初は書店と宮廷を無視して動き回っていたけど、書店で仲間を集めることの重要性に気づいてからゲームが一気に楽になった。序盤の書店通いを怠らないのが攻略の基本だと思う」

引用元:Steamコミュニティ攻略ガイド

キャラクターの能力値とその意味

Sultan's Game その他RPG スクリーンショット2

Sultan’s Gameのキャラクターはそれぞれ固有の能力値を持っている。この数値がイベントの成否を左右するため、理解しておくことが重要だ。

主な能力値は以下の通りだ。

  • 魅力(Charisma):宮廷や社交場でのやりとりで必要になる値。多くのイベントに関わるため、最も汎用性が高いステータス。装備や本で上げることができる。
  • 戦闘(Combat):征服カードや敵対的なイベントで必要になる。武器系の装備で大きく上昇する。
  • 知恵(Wisdom):情報収集や知識を必要とするイベントで参照される値。書店での活動や、特定の本の入手で向上する。
  • 隠密(Stealth):暗殺や秘密裏の工作を行うイベントで必要になる。殺戮カードの達成に関わることが多い。
  • 社交性(Sociability):他のキャラクターとの関係構築を助ける値。友好的な交渉や、特定の人物との絆を深める場面で機能する。
  • 生存(Survival):危険な状況での生き残りに関わる値。征服系のミッションで重要になることがある。
  • 魔法(Magic):呪術的なイベントや特殊なルートで必要になる値。序盤はほぼ登場しないが、特定のエンディングルートで重要度が増す。
  • 体格(Physique):肉体的なイベントでの判定に関わる値。色欲カードの一部や、体力を要するミッションで参照される。

この能力値は主に装備カード(Equipment)と書籍によって強化できる。特に魅力と戦闘は多くのイベントで参照されるため、この2つを早期に上げておくと対応できる状況が広がる。

仲間キャラクターも各自の能力値を持っていて、「このイベントにはこの仲間の戦闘値が必要」という状況が頻繁に発生する。手持ちの仲間が多様な能力値を持っていれば、どんなイベントにも対応できる。これが仲間の多様性を大切にすべき理由でもある。

諜報カード(Intelligence)の役割

諜報カードは消耗品型のカードで、特定のイベントや「儀式」と呼ばれるチェックにおいて使用できる。使用することで成功率が上がったり、追加の選択肢が解放されたりする。

浴場での活動で主に入手できるほか、特定のイベント報酬としてもらえることがある。「直接の能力値が足りないが、諜報カードで補える」という状況が多々あるため、余裕がある週に積み増ししておくと安心感が生まれる。

スルタンカードの処理が、このゲームの全て

ゲームのメインループを理解するには、「スルタンカードをどう処理するか」を把握することが最優先だ。

毎週引かれるスルタンカードには期限がある。7日以内に要求を満たさなければ処刑。ただし、これがある程度貯まっていても即死ではなく、達成できなかったカードが蓄積されていく仕組みになっている。つまり、複数のカードを同時に抱えながら7日間でまとめてさばく、という状況になることも多い。

ここで鍵になるのが「時間の使い方」だ。

1日は朝から夜まであり、各ロケーションでのアクションには時間を消費する。例えば「宮廷に顔を出す」「書店で情報収集する」「特定のキャラクターに会いに行く」といった行動が1〜2時間程度かかる。7日間、つまり168時間の中でどのアクションに何時間を充てるかを設計するのがこのゲームの戦術的核心だ。

最初にありがちなのは「とにかく色々な場所に行ってしまい、肝心のスルタンカード達成に必要なリソースが足りない」という失敗パターン。あれもこれもと欲張って動き回った結果、気づいたら残り1日で金貨も人脈も消耗していた、というのは誰でも一度は経験する。

逆に理解が深まってくると「このカードを達成するには、あのキャラクターの好感度が必要で、そのためには3日前から書店でXXを入手してYYと接触しておく必要がある」という逆算ができるようになる。この逆算の精度が上がっていくのが、このゲームの上達体験だ。

スルタンカードの達成に必要なリソース

スルタンカードを達成するためには、主に以下のリソースが関わってくる。

  • 金貨(Coin):散財カードの達成や、商人から情報・装備を買うために必要。家事を仲間に任せることで毎日少量が入ってくる。
  • 影響力(Influence):宮廷での政治的立場を示す数値。高いほど宮廷イベントで有利に立てる。
  • 秘密(Secret):他者の弱みや情報。スパイ活動や交渉で利用できる強力なカード。
  • 装備(Equipment):キャラクターのステータスを強化するカード。征服カードなどの達成に影響する。
  • 仲間キャラクター:各イベントに割り当てることができるカード。才能や属性によって活躍できる場面が異なる。

これらのバランスを保ちながら、毎週のスルタンカードに対処し続ける。どのリソースを優先するかは、引いたカードの種類と手持ちの状況によって変わる。定石はあっても、常に同じ戦略が通用するわけではない。

仲間(キャラクター)カードの重要性

このゲームで最も重要なリソースの一つが「仲間キャラクター」だ。

キャラクターはそれぞれ固有の属性を持っている。貴族、平民、商人、護衛、学者、医師など、立場も才能もまったく異なる。特定のイベントには特定のキャラクターが必要で、「このキャラクターがいなければそのクエストは達成できない」という状況が頻繁に発生する。

例えば、色欲カードの達成には特定の人物との関係構築が必要なことがあり、その人物を仲間に引き込んでいなければどうにもならない。征服カードには戦闘系の才能を持つ仲間が必要で、そういった人物を書店やイベントで事前に確保しておくかどうかで、後の選択肢の幅が大きく変わってくる。

仲間を増やすには、各ロケーションでのクエスト達成や関係構築が必要だ。書店はキャラクターへの「手がかり」を得やすい場所で、初心者が積極的に活用すべき拠点として挙げられることが多い。

「仲間カードを集めれば集めるほど選択肢が増えてくる。最初は少ない手駒でやりくりしているのが、周回が進むにつれて「あのキャラもいるし、こっちのルートでも行けるな」ってなってくる。デッキを組んでいる感覚に近い」

引用元:Steamレビュー

スルタンカードを「利用する」発想の転換

Sultan’s Gameをある程度プレイしたプレイヤーが気づく、少し上のレベルの話をする。

スルタンカードは「クリアしなければならない厄介な命令」として捉えがちだ。でも実はその命令は、逆に「自分の目的達成に活用できるツール」でもある。

例えば、征服カードが来たとする。「危険な場所に行く必要があって困る」と思うかもしれない。でも、その場所には実は仲間にしたいキャラクターが潜んでいたり、ほしい装備が手に入るイベントが待っていたりする。スルタンカードを達成しながら、同時に自分の目的も達成する動きができると、7日間の効率が劇的に上がる。

色欲カードも同じだ。特定の人物との関係を深めることが求められる場合、そのキャラクターを仲間に引き込むきっかけとして活用できる。殺戮カードも、邪魔になっていた敵対的なキャラクターを正当な理由で排除する機会として使える。

開発チームは「スルタンカードを積極的に自分の利益のために使う発想を持つと、ゲームが一気に楽しくなる」と攻略コメントで述べている。この転換ができたとき、Sultan’s Gameはただの「命令をこなすゲーム」から「欲望と計略を織り成すゲーム」に変わる。

「スルタンカードを恐れていた時期と、スルタンカードを道具として使うようになった時期で、まったく別のゲームをしている気がする。後者のほうがずっと楽しい」

引用元:Steamレビュー

ローグライクとしての周回設計

Sultan’s Gameは周回プレイを前提に設計されている。

1周目は処刑されて終わることが多い。2周目も同じかもしれない。でもゲームオーバーになっても「ポイント」が貯まっていて、次の周回ではそのポイントを使って初期リソースや能力を強化できる。Slay the Spireに近い「メタ成長」の仕組みだ。

この設計が絶妙なのは、「ゲームオーバーが惜しくない」という感覚を生み出していることだ。死んでもポイントが残る、次の周回で少し強くなれる、同じ状況でも今度は別の選択ができる。結果として「もう1周やるか」という気持ちが自然に生まれてくる。

各周回の長さはプレイスタイルによって変わるが、平均的には数時間程度。短すぎず長すぎず、一晩に1〜2周できるテンポ感が「もう1回」を誘発しやすい設計になっている。

周回で解放されていくもの

周回を重ねると徐々に新しいキャラクター、装備、イベントがアンロックされていく。最初の周回で出会えなかったキャラクターが後の周回で登場したり、新しいクエストラインが開いたりする。

また、50以上の(実際には106種類以上という報告もある)エンディングが存在する。ただの「生き残るか死ぬか」ではなく、「どのように生きたか」「どんな道徳的選択をしてきたか」によって結末が大きく分岐する。

大きな方向性で言えば、こういった結末がある。

  • 忠実な臣下として最後まで仕えて死ぬ
  • スルタンを倒し、権力を握る
  • スルタンの支配の外に逃げ、自由な土地を見つける
  • 神話的な力を呼び込んで王国そのものを破壊する
  • 隠されたルートで辿り着く、予想外の結末

どのルートに進めるかは、プレイ中の選択の積み重ねによって決まる。一つのルートを目指して周回を重ねるプレイヤーもいれば、毎回違うルートを探索するプレイヤーもいる。

「100時間以上かけてエンディングを全制覇した。それでもまだ見ていない選択肢がある気がして、また新しいゲームを始めてしまった。恐ろしいゲームだと思う」

引用元:Steamレビュー

メタ成長と解放要素

Sultan's Game その他RPG スクリーンショット3

Sultan’s Gameはローグライクとしての「メタ成長」を搭載している。これが「失敗しても次が楽しみ」という気持ちを維持させる仕組みだ。

各周回を通じて貯まるポイントは、次の周回開始時に「初期ボーナス」として使える。より多くの初期金貨、強化された初期キャラクター能力値、最初から使えるカードの拡張など、選択肢はさまざまだ。

また、周回を重ねることで「エンサイクロペディア(図鑑)」が埋まっていく。会ったキャラクターの記録、経験したイベントの詳細、アンロックしたエンディングの記録が蓄積される。この図鑑を見ながら「まだ見ていないイベントがあった」「このキャラクターのルートを辿れていない」と気づき、また新しい周回を始める動機になる。

2025年末のアップデートでは「図鑑(Encyclopedia)」機能が大幅に強化され、アンロック済みのコンテンツと未アンロックのコンテンツが視覚的にわかるようになった。コンプリートを目指す人にとって、目標が明確になった形だ。

難易度設定について

Sultan’s Gameには難易度選択がある。初心者には「簡単」モードから始めることが強く推奨されている。「簡単」でもゲームのシステムを理解するまでは十分な難しさがあり、「難しい」モードは経験を積んで全体の仕組みを把握してから挑むのが適切だ。

プライドで難易度を上げる必要はない。まず「ゲームが面白い」と感じるところまで到達することが先決で、難易度は後から調整できる。

逆に言えば、難しいと感じる人は迷わず難易度を下げていい。このゲームの面白さはシステムの把握と選択の積み重ねにあるのであって、高難易度でのクリアにあるわけではないからだ。

このゲームの世界観と物語の重さ

Sultan’s Gameを語る上で欠かせないのが、世界観の濃さだ。

ゲームの土台になっているのは『千夜一夜物語(アラビアンナイト)』の世界観だ。豪奢な宮廷、宦官と妃の権力争い、砂漠を旅する商人と盗賊、呪われた魔法と禁断の秘術。それらが複雑に絡み合った架空の帝国が舞台になっている。

スクリプト量は140万語以上(開発者発表)。日本語に換算すると途方もない量だ。テキスト主体の「デジタルノベル版」が別途販売されているほど、物語の厚みを大切にしている作品だ。

そして、このゲームは道徳的な問いかけを絶えず突きつけてくる。

例えばスルタンの「殺戮カード」を達成するために、無実の一般市民を巻き込む選択をするとする。その選択をしたとき、画面上には何も起きない。ゲームはそれを当然のこととして受け入れる。でも自分の中に引っかかりが残る。次の周回では別の選択をしてみようか、と思う。

あるいは「色欲カード」を達成するために、仲間のキャラクターを犠牲にするような選択を迫られる。そのキャラクターに感情移入していたプレイヤーほど、その選択が重くのしかかる。

開発チームが「人間の欲望を克明に描く」ことを意図して作ったと語っているだけあって、プレイヤーの「どこまでが自分の許容できる悪」を試してくる作品だ。

道徳的なジレンマと選択の連鎖

このゲームが単なるリソース管理に終わらない理由のひとつが「選択の連鎖」にある。

ある週に「血の誓い」を結んだキャラクターが、翌週のイベントで思わぬ形で帰ってくる。数週間前に切り捨てた人物の仲間が、最も大切なときに障害として現れる。今週の金貨を節約した結果、来週の選択肢が一つ減る。

因果関係がじわじわと積み重なっていく。短期的な判断の積み重ねが、長期的な結末を決定していく。このループの体験がSultan’s Gameの最も深い部分で、「どのプレイも同じにならない」理由でもある。

歴史的な国家経営や宮廷政治の駆け引きをテーマにしたゲームが好きな人には、かなり刺さる設計だと思う。

あわせて読みたい
「Sultan’s Game」千夜一夜の宮廷で命をかけるカードRPG
「Civilization V」あと1ターンが止まらない文明育成ストラテジー 「あと1ターンだけ……」と呟いて、気づいたら朝になっていた。 Civilization V(シヴィライゼーション5、略称:Civ5)を遊んだことがある人なら、この感覚を体で知ってい...

千夜一夜物語の世界観を徹底的に作り込む

Sultan’s Gameの世界は、アラビアンナイト(千夜一夜物語)の影響を受けながらも、完全に独自の架空帝国として作られている。

宮廷には様々な派閥が存在する。スルタンの正妻、側室たち、宦官、大臣、軍の将軍、宗教的な聖職者、そして影から宮廷を操る魔法使いや密偵。それぞれが独自の思惑を持ち、互いに牽制し合いながら王の寵愛を争っている。プレイヤーはその渦中に放り込まれる。

架空の中東世界を舞台にしながら、ゲームが扱うテーマは普遍的だ。権力の腐敗、欲望の連鎖、生き延びるための選択、そして人の本性。「同じ条件でも選択によってまったく違う結末になる」という設計が、世界観の重さを際立たせている。

美術面でも独自の美学がある。ゲームのビジュアルは中東の細密画(ミニアチュール)からインスピレーションを受けた装飾的なスタイルで、宮廷の豪奢さと退廃をビジュアルで表現している。プレイ前に数分眺めているだけで世界観に引き込まれるデザインだ。

呪われたゲームの設定

このゲームの根本にあるのは「呪い」だ。邪悪な魔法使い(ジャドゥーガル)に惑わされたスルタンは、呪われたカードのゲームを始める。そのゲームに巻き込まれたプレイヤーキャラクターは、カードを引き続ける以外に選択肢がない。

「なぜこのゲームは終わらないのか」「そもそも何のためのゲームなのか」という疑問が、周回を重ねるうちに少しずつ明らかになっていく。特定のエンディングルートに辿り着いたとき、このゲームの「真相」に触れる瞬間がある。それを自分で発見する体験が、Sultan’s Gameの核心的な楽しみのひとつだ。

具体的な真相はネタバレになるので書かないが、50時間以上プレイしてきたプレイヤーが「なるほど、そういうことだったのか」と腑に落ちる瞬間が用意されている。

キャラクターたちの存在感

Sultan’s Gameには80以上のキャラクターが登場する。それぞれに固有の背景、欲望、秘密がある。

例えば宮廷医師は表向き温和な人物だが、実はある禁断の知識を持っており、特定のルートで深く関わると驚くべき秘密が明らかになる。浮浪者のリーダーであるラードは、最初は単なる裏社会のコネクションとして登場するが、関係を深めていくと別の側面が見えてくる。

こういったキャラクターたちが、単なる「ゲームクリアのための駒」ではなく、固有の物語を持つ存在として描かれている。開発チームは2025年後半のアップデート計画として、宮廷医師やラードなど主要キャラクターの個別ストーリーを大幅に拡張する予定を発表しており、世界観への投資を続けている。

コミュニティ投票で決定した新キャラクターも実装予定で、ゲームを支持したプレイヤーが作品に直接影響を与えられる関係を作っている。この姿勢はスタジオとしての誠実さの表れで、100万本達成後も開発が止まるどころか加速している印象がある。

主要キャラクターの一例

ゲームに登場するキャラクターは大きくカテゴリに分かれている。貴族、平民、護衛、商人、学者、奴隷など、身分によって持てる影響力や活躍できる場所が異なる。

プレイヤーが最初に出会うキャラクターは比較的身近な存在が多い。家を管理してくれる配偶者、近くの路地裏で知り合う情報屋、宮廷での顔見知りの同僚。それが周回を重ねるにつれて、影響力が高まり、アクセスできる人物の層が変わっていく。

「仲間がいれば仲間が増える」という正の連鎖もあり、序盤の選択が後半の人脈の広がりに直結する。誰を最初に仲間にするかで、そのゲームの展開が大きく変わる。

あわせて読みたい
「Sultan’s Game」千夜一夜の宮廷で命をかけるカードRPG
「Divinity: Original Sin 2」自由にキャラをカスタマイズする戦略型アクションRPG!キャラにより物語が... 海外のクラウドファンディングで初日に目標額50万ドルを達成した人気オンラインゲーム!自身が設定したキャラの種族などで物語や、会話、成長などが変化するユニークな...

Sultan’s Gameを進める上で知っておきたいこと

Sultan's Game その他RPG スクリーンショット4

Sultan’s Gameには、知っているかどうかで大きく体験が変わるポイントがいくつかある。チュートリアルでは教えてくれない部分を含めて整理しておく。

「マイアイデア」機能を活用する

画面左下にある「マイアイデア(骸骨アイコン)」は、困った状況を打開するための重要な機能だ。

困っている要素(例えば「配偶者の不満」「罪の証拠」「スルタンの猜疑」など)をマイアイデアに投げ込むと、その状況の解決方法がヒントとして表示される。これを知らないまま進めていると「どうしたらいいかわからない」と詰まる場面が増える。序盤から積極的に使っていい機能だ。

期限ギリギリ戦略の基本

このゲームの攻略で知られている「期限ギリギリ戦略」は、スルタンカードの達成を締め切り直前まで引き延ばし、その間の7日間を最大限に自分のリソース増強に使う方法だ。

初心者は「早く達成してしまおう」と思いがちだが、達成できる準備ができていても、残り時間を他の目的に使い切ってから最終日に達成するほうが効率的だ。ただし、「本当に達成できる状態になっているか」の確認は必須で、準備不足のまま引き延ばすと最終日に慌てることになる。

複数のスルタンカードを同時に抱える状況

ゲームが進むと、複数のスルタンカードを同時に持つ状況が増える。この場合、優先順位をつけることが重要だ。

基本的には「最も達成が難しいカード」を早めに着手し、「達成しやすいカード」は後回しにする。ただし「最も時間がかかるカード」と「最も費用がかかるカード」を同時に処理しようとすると、リソースが分散して両方とも達成できなくなるリスクがある。

どのカードをどの順番で処理するかの判断が、中級以上のプレイヤーが意識するポイントだ。

コインの安定した稼ぎ方

このゲームでは「金欠」に悩むプレイヤーが多い。安定した収入源を確保することが生存の基本だ。

最も安定した収入源は「屋敷に仲間を配置する」ことで得られる毎日の定収入だ。配偶者と信頼できる仲間を屋敷に置くだけで、少量ではあるが確実な金貨が毎日入ってくる。これに加えて、宮廷や市場でのイベント報酬も重要な収入源になる。

散財カードが来たとき初めて「金貨が全然ない」と気づくのでは遅い。常に100枚以上の余裕を持つことを意識するといい。

難しさの正体と、それを乗り越える方法

Sultan’s Gameを最初に触れたときに「難しい」と感じる人は多い。でもその難しさには、いくつか種類がある。

チュートリアルの不足

まず、ゲームのシステム説明が不十分だ。各ロケーションの効果、リソースの種類と使い方、キャラクターの属性の意味、タイムマネジメントの基本。これらを丁寧に教えてくれる場面が少ない。

最初の数周は「何をすべきかわからないまま7日が過ぎる」という体験をする人がほとんどだ。これはゲームの弱点として批判されている点で、開発チームも認識しており改善が進んでいる。

翻訳の品質

2025年4月時点では、日本語翻訳が一部不自然な箇所があった。スクリプト量が140万語という膨大さゆえに、リリース直後はローカライズが追いついていない部分もあった。ただし開発チームが継続的に更新を行っており、現在は改善が進んでいる。

運の要素との向き合い方

スルタンカードはランダムに引かれる。手持ちのリソースや状況が整っていないタイミングで、最も厳しいカードが来ることがある。「運が悪かった」と感じる瞬間はゼロではない。

ただし、この部分についてはある程度の反論がある。「運が悪い状況」でも、十分なリソースと人脈を蓄えていれば大抵のカードに対処できる。逆に言えば「運が悪いと詰む」と感じる状況は、多くの場合「準備不足」が根本にある。このゲームは準備の重要性を痛感させるゲームだ。

攻略の視点を変えると見えてくるもの

Sultan’s Gameの攻略で重要なのは「期限ギリギリまでカードを抱え続ける」戦術だ。スルタンカードを早く達成しても損になることがある。7日間は7日間として使い切り、その全時間を自分のリソース増強と人脈構築に使う。ただし達成自体は確実にできる状態にしておく。

この「ギリギリまで引き延ばす」感覚は最初は気持ち悪く感じるが、慣れると最適化の快感になってくる。時間を最大限に活用して7日間を走り切る、という計画立案の楽しさがゲームの中核にある。

「序盤は訳がわからなかったけど、攻略記事でタイムマネジメントの考え方を覚えたら急に楽しくなった。このゲームは理解するまでの壁が高い分、理解してからが本当に楽しい」

引用元:Steamレビュー

宮廷の内側で起きること — イベントとナラティブの構造

Sultan’s Gameのゲーム進行は、大きく分けて2種類のイベントで構成されている。「固定イベント」と「ランダムイベント」だ。

固定イベントは特定のキャラクターとの関係を深めることで発生するもので、ストーリーラインに直結している。宮廷医師の隠された過去、浮浪者の組織との関係、スルタン自身の秘密など。これらは特定の行動をとることで解放され、エンディングへのルートに関わってくる。

ランダムイベントは毎回異なる内容で、主にロケーションを巡回している中で発生する。「道端で困っている旅人と出会った」「宮廷で噂を耳にした」「夜中に不審な人物に声をかけられた」といった形で、プレイヤーの選択を求めてくる。

これらのランダムイベントの積み重ねが、そのゲームの「物語」を形成する。同じルートを目指していても、ランダムイベントの結果が違えば全体の雰囲気や展開が変わる。「偶然起きた出来事を活かして計画を修正する」という臨機応変さも求められる。

スルタンとの直接対話

時折、スルタンからの直接招集が来ることがある。これは無視すると政治的なペナルティがあるため、基本的には応じたほうがいい。

スルタンとの対話では、プレイヤーが慎重な言葉を選ぶことが求められる。スルタンは気分次第で機嫌が変わり、怒らせれば即座に不利な状況が生まれる。逆に上手く機嫌をとれれば、ボーナスのカードを贈られることもある。

この「いつ機嫌が変わるかわからない暴君に仕える緊張感」がゲーム全体に漂っていて、プレイヤーを常に少し不安な気持ちにさせる。その不安感こそが、Sultan’s Gameが持つ独特の魅力の一部だ。

「秘密(Secret)」カードの使い方

秘密カードは他のキャラクターの弱みや過去の情報を記録したカードで、使い方次第で大きな力になる。

具体的には、ライバルキャラクターへの脅しに使ったり、宮廷での告発に活用したり、特定のキャラクターとの交渉で優位に立つために使ったりできる。「このキャラクターはこういう過去がある」という情報を武器にする政治的な動きが可能になる。

宮廷政治のゲームとしての深みを増しているのが、この秘密カードの存在だ。誰の秘密を持っているか、それをどのタイミングで使うかが、後半のゲームプレイに大きな影響を与える。

中国産インディーゲームとしての立ち位置

Sultan's Game その他RPG スクリーンショット5

Sultan’s GameはSteamにおける「中国インディーゲームの快挙」として語られることも多い。

開発元のDouble Cross Studioは杭州に拠点を置く小さなスタジオだ。中国の独立系クラウドファンディングプラットフォーム「摩點(MoDian)」でのキャンペーンでは、10分で50万元(当時の換算で約1000万円)を超え、24時間で100万元に到達した。それだけ国内外のゲーマーからの期待が集まっていた。

そして海外に出ると、さらに驚くべき反応があった。発売初週で25万本、1ヶ月で60万本を突破。多くのゲームが数万本の販売で「ヒット」と言われる中で、この数字は規格外だ。

注目すべきは、このゲームが中国産タイトルとしては珍しいテーマを扱っている点だ。色欲、権力への欲望、同性愛的な要素を含む人間関係の描写。こういった要素は保守的な中国ゲーム市場では避けられがちだが、Sultan’s Gameは真正面から扱っている。それが世界のプレイヤーに刺さった理由の一つでもある。

「INDIE Live Expo Awards 2025」では年間ゲーム大賞を受賞しており、インディーゲーム界での評価も確かだ。

ゲームの原作小説について

Sultan’s Gameには元になった小説がある。開発に参加したライターが書いた『A Game for the Sultan』という原作ノベルで、Steamでは「デジタルノベル版」としても販売されている。

ゲームのメカニクスの発想の種や、登場人物たちの背景がこの原作に収められている。ゲームをやり込んだプレイヤーが「世界観をもっと深く知りたい」と思ったときの拡張コンテンツとして機能している。

140万語のスクリプトという数字からも伝わる通り、このゲームを作ったチームはまず「物語」がある。そこからゲームシステムを逆算して設計した、という感じがある。

あわせて読みたい
「Sultan’s Game」千夜一夜の宮廷で命をかけるカードRPG
「Dune: Imperium」砂の惑星を舞台にしたデッキ構築ボードゲーム Dune: Imperium — デッキ構築とワーカープレイスメントが融合したデジタルボードゲーム 砂漠の惑星アラキスの支配権をめぐって、ハルコンネン家やアトレイデス家がスパ...

Sultan’s Gameと似たジャンルのゲームとの比較

Sultan’s Gameを理解するために、似た要素を持つゲームと比較してみる。

Slay the Spireとの比較

どちらもローグライクでカードを使い、周回プレイを基本とする。ただしSlay the Spireが戦闘でのカードコンボを楽しむゲームだとすれば、Sultan’s Gameはカードを「人と状況に割り当てる判断」を楽しむゲームだ。直接的な競合というより、「ローグライクカードゲームが好きなら両方楽しめる」という関係性にある。

Divinity Original Sin 2との比較

重厚な世界観とキャラクターの深さ、そして選択の重みという点でDivinity: Original Sin 2と共通する部分がある。ただしDOS2がリアルタイム(戦闘はターン制)のRPGであるのに対し、Sultan’s Gameはより純粋に「資源管理と物語分岐」に特化したゲームだ。どちらも「ゲームが終わった後も世界が頭に残る」タイプの作品だと思う。

Rebel Incとの比較

リソース管理の複雑さという観点でRebel Incと比べるプレイヤーもいる。Rebel Incが地図と感染拡大のシミュレーションを核とするゲームだとすると、Sultan’s Gameは人間関係と時間の管理を核とするゲームだ。「限られたリソースをどこに投じるかを常に判断し続けるゲームが好き」という人には、どちらもおすすめできる。

あわせて読みたい
「Sultan’s Game」千夜一夜の宮廷で命をかけるカードRPG
「Rebel Inc: Escalation」紛争後の地域を安定化させる反乱鎮圧ストラテジー Rebel Inc: Escalation|紛争後の国を立て直す反乱鎮圧ストラテジー 「どうして戦後の復興ってこんなに難しいんだろう」――そう考えたことはないだろうか。ニュースで見...

アップデートの状況と今後

Sultan’s Gameは2025年3月31日のリリース以降、継続的にアップデートが行われている。

2025年4月にはバグ修正が続き、翻訳の改善も進んだ。6月の「神秘の宝物(Mystical Treasures)」アップデートでは新しいコンテンツが追加され、8月の「鏡の訪問者(The Mirror Visitor)」アップデートでさらなる拡張が行われた。

100万本達成を受けて開発チームが発表した今後の計画は以下の通りだ。

  • コミュニティ投票で決定した新キャラクターの実装(複数言語のローカライズ対応済み)
  • 宮廷医師、ラード、フェイトショップの仲間たちの個別ストーリー拡張
  • ギャラリー機能の強化と追加対話の実装
  • 新エンディングの追加
  • Steam Workshopを通じたMODサポート

2026年3月31日の発売1周年には「昇華の戦い(The Battle of Ascension)」と名付けた大型アップデートが予定されている。リリースから1年が経過しても開発が止まるどころか、コンテンツが拡張し続けているという状況は、長期間遊び続ける理由になる。

こういった形でゲームを育て続ける姿勢は、プレイヤーとの信頼関係を作っている。「このスタジオを応援したい」と思わせてくれる動き方だ。

「100万本突破おめでとう。こんなに面白いゲームを作ってくれてありがとう。アップデートを楽しみに待ってます」

引用元:Steamコミュニティ

Sultan’s Gameが提示する問い

このゲームを100時間以上やり込んだプレイヤーたちが口をそろえて言うのは「自分が思っていたよりずっと悪いことができた」という感想だ。

ゲームの中では「人を切り捨てる」「嘘をつく」「無実の人を犠牲にする」という選択が求められる場面がある。多くのゲームではこういった選択は「悪いルート」として明確にマーキングされているが、Sultan’s Gameでは「それも生存戦略の一つ」として淡々と処理される。

ゲームがそれを咎めない。でも自分が咎める。

「どこまでが許容できる悪か」という問いを、楽しいゲームシステムの中に包んで投げかけてくる。これが「人の欲望を克明に描く」と開発チームが語った意味だと思う。

道徳的なジレンマを含む重めのテーマが得意な人、あるいはそういったテーマを通じてゲームを深く楽しみたい人には、Sultan’s Gameは非常に誠実な作品だ。表面上の派手さはないが、プレイヤーに対して真摯に向き合ってくる。

歴史的な政治シミュレーションとしての側面を持つゲームに興味があるなら、こういった作品との比較で楽しむのもいいかもしれない。

あわせて読みたい
「Sultan’s Game」千夜一夜の宮廷で命をかけるカードRPG
「Age of Empires IV」歴史と戦略が交差するRTSの最高傑作 Age of Empires IV: Anniversary Edition — 歴史と戦略が交差するRTSの最高傑作 初めてAoE4のキャンペーンを起動したとき、ゲームが始まる前に本格的なドキュメンタリー...

ここまで読んだ人への正直な一言

Sultan's Game その他RPG スクリーンショット6

Sultan’s Gameは「最初の5時間を乗り越えられるかどうか」で評価がまったく変わるゲームだ。

最初の5時間は正直しんどい。何が何かわからないまま死ぬ。説明が足りない。翻訳が微妙な箇所がある。UIが見づらい部分がある。これは事実だ。

でも、そこを越えた先に待っているものは、最近のインディーゲームの中でも特別な体験だと思う。「このゲームを続けなければよかった」と後悔したプレイヤーのレビューは、今のところ見たことがない。

Steamで20%オフのセールが定期的に行われているので、気になっているなら次のセールを狙うのがコスパ的にはいい。ただ、デモ版も配信されているので、まずそちらで試すのが一番おすすめだ。デモで「なんか雰囲気好きかも」と思ったなら、製品版でその先を体験する価値は確実にある。

農業や建設という穏やかな経営シミュレーションが好きな人にも、対極にある「政治とサバイバルの緊張感」を味わってほしい。Timberbornのようにリソース管理の楽しさを追求しているゲームとは別の方向で、Sultan’s Gameも「何を優先し、何を切り捨てるか」という判断の快感を提供してくれる。

あわせて読みたい
「Sultan’s Game」千夜一夜の宮廷で命をかけるカードRPG
「Timberborn」ビーバーで水を制して街を築く都市建設サバイバル 川の水が引いていく。土が乾いていく。丹精込めて育てた畑が、音もなく枯れていく。そして、画面の中のビーバーたちが次々と倒れ始める。 「また干ばつで全滅した」——Ti...

古代の宮廷で、自分の道徳の境界線をどこに引くか。スルタンのゲームに招待されたなら、まずは一週間だけ生き延びることを目指してほしい。

Sultan’s Gameのコミュニティと世界的な広がり

Sultan’s Gameが100万本を超える販売を達成した背景には、コミュニティの力がある。

発売直後から、プレイヤーたちが攻略情報や感想をSteamコミュニティ、Reddit、X(旧Twitter)、そして日本のnoteやはてなブログで共有し始めた。「このゲームはどう遊べばいいか」という疑問に対して、経験者が丁寧に答える文化が自然に形成された。公式のチュートリアルが不足している分、コミュニティが補っている形だ。

日本語圏でも反応は大きく、Steamの日本語レビューは数百件に及んでいる。4Gamerや電撃オンライン、AUTOMATONといった国内主要ゲームメディアも早期に取り上げており、「2025年の隠れた傑作」として高評価を与えている。

世界的な規模でも、PCGamerが「暗くて魅力的な謎のパズル」と評し、Rock Paper Shotgunが「アイデアに満ちていて活き活きしている」と表現するなど、英語圏のメディアからも高い評価を受けた。中国の小さなスタジオが作ったゲームが、世界の主要メディアに取り上げられる状況は、それだけ作品の質が認められた証拠だ。

プレイヤーが語るこのゲームの一番の魅力

Steamのレビューを見ると、プレイヤーたちが口をそろえる部分がいくつかある。

まず「キャラクターへの感情移入」だ。80以上いるキャラクターのうち、特定の誰かに強く感情移入してしまい、そのキャラクターを守ろうとするプレイが自然に生まれると言う人が多い。「このゲームで一番好きなキャラクターは誰か」という議論がコミュニティで活発に行われており、それだけキャラクターに個性があることの表れだ。

次に「エンディングの多様性と発見の喜び」だ。特定のルートを辿ることで全く予想しなかった結末に辿り着いたとき、その驚きをコミュニティで共有したくなるという。「このエンディング見た人いる?」という書き込みが頻繁に見られ、ネタバレを避けながら体験を語り合う文化ができている。

そして「道徳的な選択の記憶」だ。ゲームが終わった後も、あの場面でああすべきだったか、あのキャラクターを裏切ったのはよかったのか、という思考がしばらく続く。プレイ後にも考えさせるゲームというのは、それだけ物語に引き込まれた証拠だ。

「ゲームが終わってから数日間、あの選択がよかったのかどうかを考え続けていた。これほどプレイ後も頭に残るゲームは久しぶり。」

引用元:Steamレビュー

Sultan’s Gameのよくある質問

Sultan’s Gameは日本語に対応していますか?

対応している。ただしリリース直後は翻訳が不完全な箇所があり、一部が中国語のまま表示されることがあった。現在は継続的な改善が行われており、品質は向上している。完全ではない部分がまだあるとの声もあるが、ゲームを楽しむのに支障があるレベルではない。

1周あたりの所要時間はどれくらいですか?

初プレイの場合は数時間で処刑されることが多いため、実際には「序盤で詰まって終了」という体験を何度かすることになる。ゲームの仕組みを理解してからの1周は、3〜6時間程度が目安とされている。エンディング到達を目指す場合はさらに長くなる。

エンディングは全部で何種類ありますか?

公式の発表では「50以上」となっているが、コミュニティによる調査では106種類以上のエンディングバリエーションが確認されている。細かい選択の違いによって結末のテキストが変化するものを含めると、実質的にはさらに多い。

難易度の高さはどうですか?

システム理解の難しさ(学習コスト)は高め。ゲームプレイそのものの難しさは、理解が深まるにつれて適切なレベルになってくる。「慣れるまでが難しいゲーム」という評価が一般的で、「慣れてからも難しい」という声は少ない。難易度「簡単」で始めると、システムの学習に集中しやすい。

MODは使えますか?

2025年後半から2026年にかけてSteam Workshopを通じたMODサポートが計画されている。現時点では非公式のMODが一部存在するが、公式サポートはまだ進行中の段階だ。

DLCや追加コンテンツはありますか?

原作小説を元にした「デジタルノベル版」が別途販売されている。ゲーム本体とは別に、世界観を文章で深く知りたい人向けのコンテンツだ。ゲーム内コンテンツとしては、アップデートで継続的に無料コンテンツが追加されており、発売から約1年経過した現在も開発は活発に続いている。

Age of Empires IVやCivilizationとの違いも含めて

「歴史シミュレーション」「帝国を作るゲーム」という括りで語られることがあるSultan’s Gameだが、Age of Empires IVやCivilization Vとはかなり異なる体験を提供する。

Age of Empires IVは軍事力と経済力を積み上げて敵国に勝利する文明建設ゲームだ。視点は「指導者として国家を率いる」マクロな視点で、戦場の制圧や都市の建設が主軸になる。一方Sultan’s Gameは「一人の宮廷人として生き延びる」ミクロな視点で、国家よりも個人の生存と選択が全てだ。

Civilization Vが「文明の100年を設計する大局的なゲーム」だとすれば、Sultan’s Gameは「今週の7日間を全力で生き延びる切迫したゲーム」だ。スケールはまったく違うが、どちらも「限られたリソースの中での意思決定」という共通点がある。どちらが好みかは人によるが、「もっと個人レベルの人間ドラマを楽しみたい」という欲求をSultan’s Gameは満たしてくれる。

ターン制の戦略ゲームとして時間管理と資源配分を楽しみたい人には、Dune: Imperiumのようなデッキ構築型ボードゲームとの親和性も高い。「宮廷の駆け引き」という文脈では、Sultan’s Gameは最も物語の密度が高いゲームのひとつだ。

まとめ:生き延びること、そして選ぶこと

Sultan’s Gameは「面白い」と「つらい」が同居するゲームだ。

最初は訳がわからなくてつらい。理解できてくると楽しい。道徳的に重い選択を迫られるのはつらい。でも自分の選択が積み重なって結末が変わっていくのは楽しい。

「楽しい」だけのゲームを求めているなら、向かないかもしれない。でも「楽しい」だけじゃないゲームを求めているなら、これほどの密度で応えてくれるゲームは少ない。

95%の好評、100万本超の販売、年間ゲーム大賞。これだけの評価を集めた理由は、数字を眺めているだけではわからない。実際に宮廷に放り込まれて、最初の7日間を全力で生き延びてみると、少しずつわかってくる。

「知略と運が試される悪魔のゲーム」と電撃オンラインが評した言葉が、このゲームの本質を一番よく表していると思う。悪魔的なゲームループの中で、自分だけの物語を作り出す体験は、他のゲームでは味わえない。

どんなエンディングを目指すかは自分次第。忠実な臣下として生き、それでも処刑される道もある。欲望のままに動いてスルタンを超える道もある。すべてを捨てて自由を掴む道もある。それとも、誰も想像しなかった結末を見つける道もある。

狂王のゲームに、ようこそ。

あわせて読みたい
「Sultan’s Game」千夜一夜の宮廷で命をかけるカードRPG
「Dragon Age: Inquisition」仲間と世界を救うBioWareの大作RPG Dragon Age: Inquisition — 130以上のGOTY受賞を飾った王道オープンワールドRPGの真価 最初にヒンターランズに降り立ったとき、正直に言うと途方に暮れた。広大な丘陵地...

スルタンのゲーム

Double Cross
リリース日 2025年3月30日
サービス中
価格¥2,800
開発Double Cross
販売2P Games
日本語非対応
対応OSWindows / Mac / Linux
プレイ形式シングル
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次