SCP: Secret Laboratory — 財団施設から脱出するか制圧するか、無料で遊べる非対称マルチホラー
友達から「これ無料でできるから入れてみて」と言われてSteamでインストールしたのが、筆者がSCP: Secret Laboratoryと出会ったきっかけだった。
ファイルサイズは数百MB。起動したらビビるほど本格的なロビー画面が出てきて、マッチングしたらいきなり薄暗い施設の中に放り込まれた。何をすればいいかわからなくて走り回っているうちに、暗闇の向こうから「SCP-173」が近づいてきた——目を離した瞬間に動く、あの首折り人形が。
その後どうなったかは言わなくていいと思う。
でもそこから気づいたら3時間経っていた。無料ゲームに。
SCP: Secret Laboratory(通称SCP:SL)は、Northwood Studiosが開発・運営する基本無料のマルチプレイヤーFPS/ホラーゲームだ。Steamで配信されており、2024年時点でSteamレビューは11万件以上、そのうち約89%が好評という「非常に好評」ステータスを獲得している。無料でこのクオリティ、というのが多くのプレイヤーが最初に感じることだ。
このゲームの軸は、「SCP財団」という実在のウィキ発祥のクリエイティブ共有世界を舞台にした、非対称マルチプレイだ。財団の職員・科学者・警備員・SCPたち・脱走を試みる収容違反者(Dクラス)などが同じマップに放り込まれ、それぞれの目的に向かって動く。
誰が味方で誰が敵か、最初はわかりにくい。でもそのカオスこそがこのゲームの面白さだ。
今回は、SCP:SLがなぜここまでプレイヤーを引き付けるのか、ゲームシステムの詳細、コミュニティの文化、そして正直なところの欠点まで——全部まとめて書いていく。
SCP: Secret Laboratoryって何?——「SCPとは」から知らない人向けの説明

ゲームの前に、「SCP財団」を知らない人向けに軽く説明する。
SCP財団(SCP Foundation)とは、英語圏で2008年ごろに始まったウィキサイト発祥のクリエイティブ共有コンテンツだ。「超常的・異常的な存在(SCP)を収容・研究・保護する秘密組織」というフィクションの設定で、世界中のユーザーが「SCP記録文書」を書き投稿している。
SCP財団の特徴は、公式の著者がいないところだ。誰でも書いて投稿できる——クリエイティブコモンズライセンスの下で公開されているため、ゲーム・小説・動画・漫画など二次創作が世界中で生まれている。SCP:SLもその派生作品の一つで、財団の公式ライセンスを受けた作品ではなく、コミュニティが認めるファン制作ゲームとして発展してきた。
有名なSCPをいくつか挙げると——
- SCP-173:コンクリート製の彫刻。観測されている間は動かないが、目を離した瞬間に超高速で移動して首を折る
- SCP-049:ペスト医師の格好をした存在。触れた人間を「治療」という名目で殺し、ゾンビに変える
- SCP-096:細長い人型のSCP。普段は無力だが、顔を見た者を全力で追いかけ、何があっても止まらない
- SCP-106:老人の見た目をした存在。あらゆる物体を腐食させ、壁を素通りできる
- SCP-079:古いコンピュータに宿った人工知能。施設のシステムをハックして他のSCPを支援する
- SCP-939:犬型の怪物。透明ではないが「声をコピーして人間を引き寄せる」能力を持つ
日本でもSCPは動画文化やニコニコ百科、はてなブログなどでかなり浸透していて、「SCP-173の怖さを夜中に読んでトイレに行けなくなった」という体験をしている人は少なくないはずだ。SCP:SLは、そのSCP財団の世界観を舞台にしたゲームだ。収容違反が起きた施設の中で、さまざまな役職のプレイヤーたちが混乱の中でそれぞれの目標を達成しようとする。
SCP:SLの誕生——学生が作った非公式プロジェクトが世界的タイトルへ
SCP: Secret Laboratoryの原点は、「SCP – Containment Breach」という2012年にリリースされた無料のシングルプレイヤーホラーゲームだ。Undertow Gamesが開発し、SCP-173が暗闇の施設を徘徊するあのゲームは、SCPゲームのパイオニア的存在として今でも語り継がれている。
SCP:SLはそのマルチプレイヤー版として開発が始まり、2017年にSteamでアーリーアクセス配信を開始した。開発したのはNorthwood Studiosというチームで、当初は少人数のプロジェクトだった。Northwoodは東ヨーロッパを中心にメンバーが集まった開発チームで、SCP財団コミュニティ発祥の背景を持つ。
そこから6年以上かけて大型アップデートを重ね、2023年にメジャーアップデート「Parabellum」でゲームプレイが大幅に刷新。2024年現在も継続的にアップデートが続いており、コミュニティサーバーを中心に活発なプレイヤーベースを維持している。
アーリーアクセス時代から現在までの成長は、インディーゲームの歴史の中でも珍しいケースだ。「無料で公開したら予想外に大ヒットして、気づいたら本格的な開発チームになっていた」という流れは、SCP:SLが持つコミュニティドリブンな性質を象徴している。
ゲームの基本ルール——収容違反の施設で何が起きるのか

SCP:SLは1ラウンドあたり10〜15分程度のマルチプレイヤーゲームだ。15人前後のプレイヤーが1つのサーバーに集まり、それぞれ異なる役職にランダムで割り振られる。
役職は大きく3陣営に分かれている。
3陣営の目標と役割
財団(MTF・科学者)
財団側のプレイヤーは「モバイル・タスクフォース(MTF)」と「科学者」に分かれる。MTFは武装した戦闘員で、Dクラスの収容と、SCPの再収容または排除が目標だ。科学者は非武装だが、施設のシステムにアクセスする知識を持ち、高レベルのキーカードを持った状態でスタートする。
財団側の勝利条件は「全SCPを排除する」か「全Dクラスと収容違反者を排除する」こと。MTFはラウンド中盤にヘリコプターで降下してくるため、序盤は科学者が単独で対処しなければならない場面もある。科学者は武器こそ持たないが、高レベルのキーカードで施設内の制限区画を通過できる強みがある。
カオス・インサージェンシー(CI)
財団に対立する組織のエージェントたち。ラウンド開始後しばらくすると外部から侵入してくる。DクラスをヘリコプターかSCP-079を通じて脱出させることが目標で、財団と真っ向から戦う。MTFと違って装備のバリエーションが独特で、個性的な武器を持つ。Dクラスが逃げ回っている状況でCIが外から侵入してくると、財団は前後から挟まれる形になり、一気に戦況が変わる。
SCPたち
SCP-173、SCP-049、SCP-096、SCP-106、SCP-079、SCP-939など複数のSCPがプレイアブルキャラクターとして存在する。それぞれ独自の能力と操作感を持ち、人間キャラとはまったく異なるプレイフィールが楽しめる。SCPの勝利条件は「財団のMTFを全員排除する」こと。SCPは死んでも再スポーンすることはなく、全員排除されると財団の勝利になる。
Dクラス(被収容者)
財団が実験に使う人間。ラウンド開始時に施設最下層の「Dクラス収容区画」に配置され、武器もなく逃げるしかない状態でスタートする。脱出ゲートを開いて外に出るか、カオス・インサージェンシーに合流するのが目標だ。DクラスはCIに合流すると「CIの一員」として扱われ、財団と戦う側に回る。
収容違反の施設——マップの構造
ゲームの舞台は地下に広がる巨大な収容施設だ。マップは3つのゾーンで構成されており、各ゾーンをエレベーターや連絡通路で行き来する設計になっている。
軽収容ゾーン(Light Containment Zone / LCZ)が最下層で、Dクラスのスタート地点だ。SCP-173やSCP-914(変換装置)などが配置されている。SCP-914は持っているアイテムをさまざまな形に変換するユニークな機械で、弾丸をアップグレードしたりランダムなアイテムを生成したりできる。変換モードは「Rough(粗雑)」「Coarse(粗い)」「1:1(現状維持)」「Fine(精細)」「Very Fine(超精細)」の5段階があり、使い方によって強力な武器やキーカードを入手できる可能性がある。
重収容ゾーン(Heavy Containment Zone / HCZ)が中間層。SCP-049、SCP-096、SCP-106などがここにいる。強力なSCPとの接触リスクが高く、MTFとDクラスが鉢合わせしやすい激戦区でもある。HCZには「微粒子スクラバー」と呼ばれる施設全体の電力システムも存在し、これを操作することでアルファ収容警告(施設全体に影響する非常事態)を起動できる。
入口ゾーン(Entrance Zone / EZ)が上層。施設の出入口に近く、MTFがヘリコプターで降下してくるポイントでもある。終盤の戦闘が集中しやすいエリアで、脱出ゲートA・BへのルートがEZに存在する。どちらのゲートを使うかで、合流できる陣営が変わってくる。
施設内には各所に設置されたロッカーに武器や医療アイテム・キーカードが入っており、素手でスタートしたDクラスが施設内を漁りながら武装していく過程もゲームの面白さの一部だ。
各SCPのプレイフィール——これが一番楽しいところ
SCP:SLの最大の魅力の一つが、SCPとして人間を追いかける体験だ。それぞれのSCPは操作感がまったく異なり、どのSCPが当たるかによってラウンドの体験が全然変わってくる。
SCP-173——目を離すな、の緊張感を操る側に
SCP-173はSCP:SLの象徴的な存在で、「コンクリート製の人型彫刻」だ。プレイヤーに見られている間は一切動けないが、誰も見ていない瞬間に超高速で移動し、接触した相手の首を折って即死させる。
プレイヤーとして操作する場合、「どこから誰に見られているか」を常に意識しながら立ち回る必要がある。全員が別方向を向いているスキに一気に距離を詰め、「瞬き」のモーションと合わせた絶妙なタイミングで攻撃する。SCP-173には「Tantrum(タントラム)」という特殊能力もあり、発動すると短時間視界に入っている全員の動きを止めることができる。これを使って一気に位置を変えるプレイが熟練者の定番テクニックだ。
人間側のプレイヤーが「絶対に目を離すな!」とパニックになっているのを感じながら、じわじわ追い詰めるあの快感は、他のゲームでは体験できない。SCP-173を引いたとき、3人が同時に自分を監視している状況からどうやって動くか考えるパズル要素が実はかなり奥深い。
SCP-173引いたのに全員こっちを見てて1ミリも動けなかった。でもそのうち1人がトイレ行ってて画面から離れたのか、突然視線が切れて接触できた。あの瞬間の快感がやばい。
引用元:Steamレビュー
SCP-049——感染を広げるペスト医師
SCP-049は「ペスト医師」の外見を持つSCPだ。直接触れた人間を「治療」という名目で殺し、しばらく待つと「SCP-049-2」(ゾンビ)として蘇らせることができる。このゾンビも一応プレイヤーに操作してもらう形になる(死んだプレイヤーが引き継ぐ)。
SCP-049の面白さは「感染の連鎖」だ。1人を捕まえてゾンビにし、そのゾンビがさらに別の人間を感染させる。うまくやるとラウンド中盤で施設内がゾンビだらけになり、MTFが大混乱する。
SCP-049自身は「Doctor’s Call」という能力で、一定範囲内の人間を強制的に引き寄せることができる。逃げている人間に追いつけない状況でも、この能力を使えばワンチャンつくることができる。ゾンビ軍団を率いる「ボス」として立ち回るプレイフィールが独特で、SCP-049を引いたラウンドは毎回違う展開になる。
SCP-096——顔を見たら全力で追いかける
SCP-096は普段は無力で、壁際で座り込んでいる。だが誰かに顔を見られた瞬間、突然覚醒して猛スピードで追いかけ始める。壁も扉も関係なく突き進み、対象を追い詰めて殺すまで止まらない。
プレイヤーとして操作するとき、「顔を見られる」というトリガーが外部依存なのが独特だ。誰かが偶然カメラ越しに顔を見るかもしれないし、遠くから望遠鏡で見られることもある。覚醒したら「あとは突き進むだけ」というシンプルさが気持ちいい。
覚醒中のSCP-096は、ターゲットを殺すまで止まらない——これはSCP-096の原典設定をほぼ忠実に再現している。扉が閉まっていても壁があっても突き抜けてくるので、「逃げても無駄」というプレッシャーは人間側にとって相当なストレスになる。
人間側からすると、暗い廊下の奥で座り込んでいる細長いシルエットを発見したとき——「あ、096だ、絶対に見ちゃダメだ」とわかっていても、パニックになって振り向いてしまう瞬間がある。これがホラーゲームとしての完成度を上げている。
SCP-106——壁抜けと腐食フィールドの恐怖
SCP-106は「老人」の外見を持つ、最も特殊な能力を持つSCPだ。あらゆる固体を透過して移動でき、触れた床や壁を腐食させて「ポケット次元」というトラップゾーンに引き込むことができる。
プレイヤーが意識外からすり抜けてくる恐怖は、施設内の「安全な場所」という概念を根本から崩す。廊下の角の壁から突然現れるSCP-106と遭遇したとき、「どこにいても安全じゃない」という感覚が一気に広がる。
ポケット次元に引き込まれたプレイヤーは、特定の脱出条件をクリアしないと戻れない。見た目は真っ暗な空間で、時間内に出口を見つけないと死亡する。この「別次元に引き込まれる体験」は、他のSCPにはない恐怖感を演出している。
SCP-079——ハッカーとしての支援役
SCP-079は移動能力を持たない代わりに、施設中のカメラ・ドア・テスラゲート(電撃装置)を遠隔操作できる知性体だ。画面はまるでセキュリティルームの監視モニターのようで、施設全体を俯瞰しながら他のSCPを支援する役割を担う。
「今SCP-173がDクラスを追いかけているが、前の廊下のドアを開けたら逃げられてしまう——閉めておこう」とか「MTFがここから侵入してきた、テスラゲートを起動して止めよう」といった判断を下す。SCP-079には「APC(補助電力コンピュータ)」という能力もあり、施設のメインブレーカーを操作することで大規模な停電を引き起こせる。真っ暗な施設でSCP-173が暴れ回る——SCP-079が引き起こすシナジーの最終形だ。
個人的にはSCP-079は上級者向けの楽しさだと思っていて、施設マップを頭に入れていないと能力を活かしきれない。でも慣れてくると「黒幕として全部見える」快感がたまらない。
SCP-079引いたとき最初は「動けないし何もできなくて地味じゃん」と思ってたけど、施設全体を支配する感覚がわかってから全然違う楽しさに気づいた。テスラゲートで人間を一掃したときの爽快感は本物。
引用元:Steamレビュー
SCP-939——声を盗む犬型の怪物
Parabellumで追加されたSCP-939は、「犬型の怪物」で「他のプレイヤーの声を録音・再生できる」という独自能力を持つ。
録音した人間の声を再生することで、「仲間の声だと思って近づいてきた人間を騙す」ことができる。「助けて!ここにいる!」という声を録音して流すと、仲間が心配して近づいてくるかもしれない——そこで待ち伏せできる。
このSCPはインポスターゲーム的な駆け引きを生み出すため、SCP-939が出るラウンドはボイスチャット文化がより複雑になる。「あの声は本物か、939が録音した偽物か」という疑心暗鬼が施設全体に広がるのだ。
人間側のプレイフィール——武器・ツール・役割分担

SCPだけでなく、人間側のプレイも奥深い。Dクラスと財団/CIでは立場がまったく異なる。
Dクラス——丸腰から始まる脱出劇
ラウンド開始直後、Dクラスは施設の最下層に手ぶらで配置される。まわりには同じDクラスのプレイヤーたちがいるが、協力するか争うかはプレイヤー次第だ。
施設内のロッカーを開けながらキーカード(セキュリティレベル別のIDカード)や武器を集め、上層を目指して逃げる。途中でSCP-173が突然出てきたり、MTFが待ち構えていたりするので、脱出は一筋縄では行かない。
キーカードにはレベルがあり、セキュリティレベルが高い扉はより上位のカードが必要だ。SCP-914で手持ちのキーカードをアップグレードする、MTFや科学者を倒してカードを奪う、などの方法でランクアップさせていく。
Dクラスで脱出した場合、ゲートAまたはゲートBから外に出ることになる。ゲートから出た先でCIと合流できればDクラスとして生き残りつつCI陣営として継続参加できる。逆にMTFに捕まると連行されてしまう。
「素手でスタートして脱出ゲートまで辿り着いたとき」の達成感は他にない。特に施設内でMTFやSCPを何度もかいくぐって、最終的にゲートを抜けたときの「やった!生き残った!」という感覚は、このゲームでしか味わえない。
財団MTF——武装チームとしての制圧作戦
MTFはラウンド中盤以降、ヘリコプターで施設外に降下する形で登場する。最初から武器を持ち、財団の装備(防弾チョッキ、ラジオ、各種銃器)を活用して施設を制圧していく。
チームで動くことが前提の設計になっており、複数のMTFが連携してSCPに対処したり、逃げ回るDクラスを追い詰めたりする。ただし施設の構造が複雑なので、単独で奥に進みすぎるとSCPに囲まれて詰む場合もある。
使用できる武器は拳銃から始まり、SMG、ショットガン、スナイパーライフルなど種類豊富だ。財団施設内には弾薬が点在しており、戦闘長期化にも対応できる。MTFには「エプシロン-11(Nu-7)」「アルファ-1(Red Right Hand)」など複数のユニットが存在し、各ユニットで装備や見た目が若干異なる。
MTFとして最も緊張する瞬間は、「SCP-096がどこにいるかわからない状態でHCZを捜索するとき」だ。096の顔を見た瞬間にターゲットになる——このプレッシャーは経験しないと伝わりにくい。
MTFで施設捜索してたら突然096の顔が視界に入ってゲームが終わった。まじでトラウマになりそうな体験だった。
引用元:Steamレビュー
カオス・インサージェンシー——外からの侵入者
CIはMTFよりもやや遅れてラウンドに参加する。基本的な戦闘能力はMTFと同等だが、独自の装備と少し異なる立ち位置が面白い。DクラスをCIに「スカウト」する要素があり、うまく連携できたときのラウンドの爆発力がある。
CIにはスナイパーライフル「LOGICER」という独自武器があり、長距離戦闘では他陣営を圧倒できる。ただしCIは施設内に入り込むため、SCPとの接触リスクも財団と同様に高い。「SCPを味方にはできないが、SCPが財団を倒してくれれば結果的に有利になる」という間接的な協力関係も発生する。

Ready or Notのような戦術的なチームプレイが好きな人なら、MTFやCIの動きは特に楽しめるはずだ。どちらも連携と情報共有が勝率を大きく左右するゲームで、ボイスチャットを使いながらチームで動く体験は共通している。
なぜSCP:SLが面白いのか——「カオスから生まれる物語」
SCP:SLの最大の魅力を一言で言うなら、「毎回違う物語が生まれる」ことだ。
ランダムな役職割り当て、ランダムに変化する施設内のアイテム配置、プレイヤーの判断次第でどうにでも転がるゲーム展開——これらが組み合わさって、同じラウンドは二度と起きない。
同じゲームを2時間やってるのに毎回まったく違う体験してる。Dクラスで奇跡の脱出を決めたり、SCP-096として施設を蹂躙したり、MTFとして96の顔を見てしまったり。
引用元:Steamレビュー
特に面白いのが「ボイスチャット文化」だ。このゲームには近接ボイスチャット機能があり、同じ陣営の敵には聞こえないが、近くにいる全プレイヤーの声が聞こえる。これを活用した交渉、騙し合い、同盟と裏切りが常に起きている。
Dクラスがキーカードを持っているMTFに「助けてください、情報と引き換えにカードをください」と交渉する。MTFが「わかった、でも脱出したらCIには合流するな」と条件を出す。Dクラスは約束を守るふりをして脱出後にCIに合流する——みたいな展開が、普通に起きる。
これはゲームのシステムが用意した演出ではなく、プレイヤー同士のリアルタイムのやりとりから自然に生まれている。「ゲームが自分たちだけのドラマを作ってくれる」感覚は、他のFPSにはなかなかない。
「SCPと人間が交渉する」という展開も珍しくない。Dクラスが「SCP-049さん、私を仲間にしてください。ゾンビにしてくれれば内側から財団を倒す手伝いをします」みたいな申し出をすることがある。SCP-049がそれを受け入れるかどうかはプレイヤー次第——でもこういう交渉が発生するのは、このゲームの設計が「自由な立ち回り」を許容しているからだ。

Cry of Fearのような一人称ホラーを楽しんでいる人に、ぜひマルチプレイヤーホラーの体験として試してほしいのがSCP:SLだ。ホラー要素の質はまったく違うが、「暗い施設の中で何かに追われる恐怖」という感情は本物だし、Cry of Fearとはまた別の方向性でプレイヤーを追い詰めてくる。
コミュニティサーバーの文化——公式サーバーより面白いかもしれない

SCP:SLには公式サーバーとコミュニティサーバーの2種類がある。
初心者は公式サーバーから入ることが多いが、長期プレイヤーの多くはコミュニティサーバーに移行する傾向がある。コミュニティサーバーには独自のルール、カスタムゲームモード、日本語話者が集まるサーバーなどが存在し、公式サーバーとはまた違う体験ができる。
有名なゲームモードとして「D-BOY vs SCP」(全員がDクラスかSCPになり、MTFなしのシンプルな鬼ごっこ)や「SCP vs MTF」(Dクラスをなくして純粋な戦闘に絞ったモード)などがある。他にも「ラウンドロビン(ランダムで1試合に1人ずつSCPになるトーナメント方式)」「クリスマスモード(コスメティックが季節対応になる)」など、コミュニティの創意工夫でさまざまなモードが生まれている。
コミュニティサーバーにはDiscordサーバーと連携しているところも多く、常連プレイヤーが集まるコミュニティが形成されている。知り合いと一緒にプレイするのが一番楽しいゲームではあるが、コミュニティサーバーで常連になることで擬似的な「仲間」ができやすい構造になっている。
日本語対応のコミュニティサーバーは検索すれば見つかるし、日本人プレイヤーも一定数いる。初めてプレイする場合でも「日本語サーバー」という検索フィルタを使えば日本語勢が集まるサーバーを見つけやすい。日本コミュニティはこじんまりしているが、そのぶん顔なじみができやすい。
毎日同じサーバーに入ってるうちに顔なじみができてきて、気づいたらDiscordに招待されてた。ゲームというよりコミュニティに入った感じ。
引用元:Steamレビュー
Modサポートとカスタマイズ
SCP:SLはNorthwood公式のプラグインAPIを通じてサーバー側でのModが可能だ。これにより、コミュニティサーバーはさまざまなカスタムコンテンツを追加できる。新しいゲームモード、独自のSCP、カスタムアイテム——プラグインの種類は増え続けており、公式のコンテンツ以上の拡張がコミュニティによって行われている。
「バニラ(標準)のSCP:SLに飽きてきたら、カスタムプラグイン入りのサーバーに行くと別ゲームになる」とプレイヤーの間でよく言われている。プラグインで「SCP-3199(ニワトリのようなSCP)」「SCP-008(ゾンビウイルス)」「SCP-012(楽曲の草稿)」など、公式には実装されていないSCPが追加されているサーバーも存在する。

Doki Doki Literature Clubのような「メタな仕掛け」が好きな人には、SCP:SLのプラグインサーバーが合うかもしれない。見た目は同じゲームなのに、入るサーバーによってまったく別のゲームになっている。SCP財団の概念設定には、公式設定の外を想像させる「間テクスト性」のようなものがあって、それをゲームとして体験できる面白さがある。
SCP:SLの大型アップデート「Parabellum」——何が変わったのか
2023年にリリースされた大型アップデート「Parabellum」は、SCP:SLの歴史において最大の転換点となった。
主な変更点を挙げると——
SCPのゲームプレイ刷新:各SCPの能力と操作感が大幅に見直された。特にSCP-049、SCP-096、SCP-106の挙動が根本から変更され、よりプレイアブルで独自性のある操作体験に改良された。SCP-173には新しい特殊能力「Tantrum」が追加され、SCP-939の声録音システムも強化されている。
マップの大規模改修:3つのゾーンの構造が変更され、動線や施設の雰囲気が大きく変わった。エレベーターシステムの改善や、各ゾーン間の移動のしやすさが向上した。特にEZの構造が変わり、終盤の脱出・制圧戦の流れがよりわかりやすくなった。
新コンテンツの追加:新しいSCPとして「SCP-939」が強化され、声コピー能力が実装された。また新しい武器、装備品、アイテムが追加され、Dクラス・MTF・CI全陣営の選択肢が広がった。
武器システムの刷新:人間側の武器のバランスが全面的に見直され、新しい武器と装備が追加された。従来は一部の武器が圧倒的に強かったバランスが改善され、状況に応じた武器選択がより重要になった。
UIとシステムの改善:ラウンド終了後の結果画面、プレイヤーリスト、役職情報の表示など、UI全般が改善された。新規プレイヤーが現在の状況を把握しやすくなった点は、長年の課題への一定の答えとなっている。
このアップデート以降、新規プレイヤーの流入が再び増加し、Steamの同時接続数が上昇したと報告されている。プレイヤーの間では「Parabellum以降が本当の完成版」という評価が多い。
Parabellum前のSCP:SLとは別ゲーム。昔からのプレイヤーは驚くかもしれないけど、新しいシステムは明らかに洗練されてる。
引用元:Steamレビュー

SPLITGATEのようにマルチプレイヤーのゲームプレイを根本から刷新して再評価されるケースは珍しいが、SCP:SLはまさにそのパターンをたどったタイトルだ。一度離れたプレイヤーがParabellum後に戻ってきて「こんなに変わったのか」と驚くケースが多く、アップデート後に評価が上昇しているのも納得できる。
正直なところの欠点——これは知っておいてほしい

ここまで良い点を書いてきたが、SCP:SLには正直なところ「困った部分」もある。
新規プレイヤーへの説明不足
最初に起動したとき、ゲーム内チュートリアルがほぼ存在しない。「とりあえずサーバーに入って、わからなければ死んで覚えろ」スタイルだ。Dクラスとして何もわからないまま放り込まれ、最初の数ラウンドは混乱したまま終わることが多い。
SCPごとの特性、キーカードのレベル、SCP-914の使い方、各エレベーターの場所、ゲートAとゲートBの違い——これらはほとんどWikiかYouTubeで調べないと理解できない。インゲームのヘルプ表示は最低限で、どのSCPがどんな能力を持つかもゲーム内で教えてくれない。
初見で何もわからなくて困ってたら、ベテランプレイヤーが親切に教えてくれた。あの体験があったから続けられた気がする。チュートリアルは正直もう少し丁寧にしてほしい。
引用元:Steamレビュー
ただしこれは裏を返せば「経験者から直接教えてもらう体験」が生まれやすいということでもある。コミュニティの親切さとセットで見ると、一概に悪い点とも言えない。「わからないまま死ぬ体験」がこのゲームの入り口として機能している側面もある。
マッチングバランスの問題
ランダムな役職割り当てなので、同じラウンドに新規プレイヤーが複数のSCPを引いてしまうと一方的な展開になることがある。熟練のSCP-096が暴れ回るラウンドと、操作に慣れていないSCP-096がいるラウンドでは、人間側のプレイ体験がまったく違う。
公式サーバーでは特にこの問題が顕著で、「SCP枠が不慣れなプレイヤーばかりで人間が圧勝した」というラウンドも珍しくない。逆に「達人SCPが揃っていて人間側が何もできなかった」というケースも起きる。
スキルマッチングの仕組みがないため、プレイ時間が大きく違うプレイヤーが同じラウンドに入ることが普通に起きる。これは無料ゲームの構造上ある程度仕方ない面もあるが、初心者にとってはツラいことがある。
グリーフィング(意図的な妨害行為)
Dクラス同士は同じ陣営だが、お互いを攻撃できる仕様になっている。施設内でのフレンドリーファイアを悪用したグリーフィングがコミュニティサーバーでは問題になることがある。
信頼できる管理者がいるコミュニティサーバーならある程度対策されているが、管理の甘いサーバーでは体験が悪化することがある。特に公式サーバーは管理者がいないため、グリーフィングに対処できない場合がある。
「開幕Dクラス殺し」と呼ばれる、ラウンド開始直後に同じDクラスを全員殺そうとするプレイヤーが一定数いる。これに対する対策としてコミュニティサーバーでは「フレンドリーファイア無効」プラグインが使われることが多い。
最適化の課題
ゲームのビジュアルはそこまで高品質ではないにもかかわらず、処理が重くなるタイミングがある。特に接続プレイヤー数が多いサーバーで人が集まるエリアではフレームレートが落ちることがある。ミドルスペックのPCでも快適に動く場面がほとんどだが、施設全体が激戦になったときに影響が出ることがある。
推奨スペックが明確に提示されていない時期が長く続いたことで、「低スペックでもある程度動くが、快適かどうかは環境依存」という評価が定着している。
SCP:SLが無料である理由と収益モデル
SCP:SLは基本プレイ無料だが、ゲーム自体をプレイするのにお金はかからない。では収益はどこから来ているのかというと、主に「Parabellum Pass」(コスメティックDLC)やコミュニティサーバーの有料プラン提供などだ。
ゲームプレイに影響するコンテンツは課金要素ではなく、課金対象はスキンやコスメティックアイテムのみ。いわゆる「ペイ・トゥ・ウィン」の要素は存在しない。
Parabellum Passでは、各役職・各SCPの見た目を変えるスキンが入手できる。例えばDクラスのスーツが特別なデザインになったり、MTFの防具が異なるカラーリングになったりする。ゲームの有利不利には一切影響しないコスメティックのみなので、無課金でも課金ユーザーと対等に戦える。
この健全な収益モデルは、Steamレビューでも評価されている点のひとつだ。
無料なのにゲームプレイに影響する課金要素がない。コスメだけなのにここまで面白いゲームが作れるのは純粋にすごい。
引用元:Steamレビュー

Counter-Strike 1.6のように「長年無料(またはほぼ無料)で遊べるのに質が高い」ゲームが持つ独特の魅力がSCP:SLにもある。古くから愛されるゲームが無料または低価格で提供されることで、プレイヤーコミュニティが長く続く——このサイクルがSCP:SLでも起きている。
SCP:SLと他のマルチホラーゲームとの比較

SCP:SLと比較されることが多いゲームをいくつか取り上げる。
Dead by Daylight(DBD)との違い
「非対称マルチホラー」といえばDead by Daylightが有名で、SCP:SLと並べて語られることも多い。ただし構造はかなり違う。
DBDは「1人のキラーvs4人のサバイバー」という固定の非対称構造で、役割が明確に分かれている。一方SCP:SLは「財団/CI/SCP/Dクラスという複数の陣営が入り乱れるバトルロイヤル的な構造」だ。
DBDはより洗練されたゲームバランスと演出を持つが、SCP:SLはランダム性と自由度が高く「毎回違うドラマが生まれる」要素が強い。DBDには定義されたルールと明確な勝利条件の中で戦う面白さがあるが、SCP:SLはそのルールの外側でドラマが生まれる面白さがある。どちらが好みかはプレイスタイルによる。
DBDが「洗練されたホラー体験」なら、SCP:SLは「ドタバタするカオスホラー体験」と表現すると伝わりやすいかもしれない。
Among UsやPropnight的な「騙し合い」要素
SCP:SLには公式のインポスターシステムはないが、ボイスチャットを使った騙し合いが自然発生する。Dクラスが「科学者のふりをする」、MTFが「Dクラスを信用させて近づいてから捕縛する」といった行動は、プレイヤーの創意工夫から生まれる。
特にSCP-939の声コピー能力は、Among Us的な「インポスター性」を持つ。「聞こえた声が仲間のものか939のものかわからない」という疑心暗鬼は、ゲームシステムが意図的に生み出している緊張感だ。
Lethal Companyとの比較
友達と一緒にやるCo-opホラー体験という軸では共通点があるが、方向性は異なる。Lethal Companyが「全員で協力して生き延びる」なら、SCP:SLは「陣営ごとの目標に向かって競い合う」形式だ。
どちらも「友達と声を上げながらプレイするゲーム」として最適だが、SCP:SLの方が対立関係を楽しめるプレイヤー向けと言えるかもしれない。逆に「みんなで一緒に助け合いたい」という人にはLethal Companyの方が合いやすい。
Lethal Companyからこっちに来たけど、根本的に違うゲームだった。どっちが良いとかじゃなくて、友達と「どっちやる?」と選べる2択として持っておくのが正解な気がする。
引用元:Steamレビュー

BioShockのような「施設や組織の秘密を探る」テーマが好きな人には、SCP財団の世界観そのものがツボにはまることが多い。BioShockのラプチャーが「崩壊した理想郷」なら、SCP財団は「超常的存在を収容する秘密組織」——どちらも「閉鎖空間の中に秘められた真実」を探るゲームとして共鳴する部分がある。
SCP:SLの同時接続数と現在の状況
SCP:SLのSteamの同時接続数は、Parabellum以降に回復傾向を見せており、2024年時点でピーク時に1万人を超えるラウンドが日常的に観測されている。無料ゲームということもあり、インストール数は公式には公表されていないが、Steamレビュー数や同接数から推測すると数百万人規模のプレイヤーがいると考えられる。
日本時間の夜21時〜24時ごろが最もプレイヤーが集まる時間帯で、公式サーバーでも比較的すぐにマッチングできる。日本語サーバーは英語圏のサーバーより接続人数が少ない場合があるが、絶対的に過疎というわけではなく、探せばラウンドに入れる状態だ。
継続的なアップデートへの期待
Northwood Studiosは2024年も継続的にパッチを当て続けており、バグ修正から新コンテンツの追加まで開発が活発な状態を維持している。コミュニティとの対話もDiscord上で行われており、プレイヤーのフィードバックが開発に反映されることが多い。
Northwoodは定期的に「開発者日記」形式のアップデート情報を公開しており、次のバージョンで何が変わるかをコミュニティに対して事前に共有している。この透明性の高い開発スタイルが、長期プレイヤーの信頼を維持している。
「サービス終了の気配がない」という安心感が、長期プレイヤーをつなぎとめている要因のひとつだ。
もう4年くらいやってるけど、まだ新しい発見がある。開発チームが地道にアップデートしてくれているおかげで、飽きてもしばらくしたら戻ってこれる。
引用元:Steamレビュー

Outlastのような「施設からの脱出ホラー」体験が好きな人なら、SCP:SLのDクラスとしての脱出劇は特に刺さるはずだ。Outlastが暗い施設の中を武器なしで逃げ回るゲームなら、SCP:SLのDクラスもまさにその体験に近い——ただしDクラスはラウンドが進めば武装でき、場合によっては反撃もできる点が違う。
SCP:SLは「どんな人」に向いているのか

ここまで読んでくれた人の中で、「自分に向いているかどうか」が気になっている人に向けて、率直に書く。
こんな人にはめちゃくちゃ合う
- 友達と一緒にボイスチャットでワイワイできる環境がある
- ホラー要素があってもOK、むしろ好き
- 役割やゲームの目的を自分で考えるのが好き
- 「毎回違う展開」を楽しめる
- SCP財団の世界観をもともと知っている、または興味がある
- 無料ゲームでも本格的な体験を求めている
- 騙し合いや交渉が絡む複雑な人間関係が面白い
逆にこんな人には少し厳しいかもしれない
- 一人でプレイすることが多く、ソロプレイを想定している(SCP:SLはマルチプレイ専用)
- チュートリアルが整備されていないと辛い
- 「明確に何をすればいいか」が最初からわからないと楽しめない
- グリーフィングや理不尽な展開に強いストレスを感じる
- ゲームプレイより世界観・ストーリーを重視する
一言でまとめると、「友達と一緒に混沌を楽しむ無料ホラー」だ。ソロで黙々と遊ぶゲームではなく、誰かと一緒に「何これ最高!」と声を出しながらプレイするタイプのゲームだ。
最初の壁は「わからなさ」だ。でもそれを乗り越える方法は「とりあえず数ラウンドやってみること」だし、日本語のWikiやYouTube動画で予習してから入るのもいい。事前知識がゼロでも楽しめるが、基本ルールを頭に入れておくと最初のラウンドからぐっと楽しくなる。

Sons of the Forestも「友達と一緒に恐怖を共有する」体験が核にあるゲームだが、SCP:SLとは対照的に「協力」が中心だ。「みんなで協力する方が好きか、それとも陣営に分かれて争う方が好きか」によって、どちらを選ぶかが変わってくる。
SCP財団という世界観の深さ——ゲームから原典への道
SCP:SLをプレイしていると、SCP財団の原典世界観への興味が湧いてくる人も多い。SCP財団のウィキには現在6,000以上のSCP項目が投稿されており、有名どころ以外にも個性的で独自の世界観を持つSCPが無数に存在する。
日本語版SCP財団ウィキも充実しており、翻訳されたSCPだけでなく日本人執筆者によるオリジナルSCPも数多く公開されている。SCP-2000(人類を再起動するシステム)、SCP-1425(悪意ある書物)、SCP-3008(無限の家具店)——どれもゲームには登場しないが、読み物として非常に完成度が高い。
SCP:SLのゲームプレイを体験した後に原典を読むと「こういう設定が背景にあったのか」という発見があって、ゲームへの理解がさらに深まる。SCP財団という「デジタル民俗学」のような世界観は、ゲームをプレイするだけでなく読み物としても長く楽しめる。
ゲームから入ってSCP財団沼にはまるのも珍しくない体験で、「SCP:SLきっかけでSCP-682(不死身のトカゲ)の記事を読み始めたら深夜3時になってた」という体験談をよく見かける。
SCPゲームの歴史とSCP:SLの位置づけ
SCP財団をテーマにしたゲームはSCP:SL以外にも複数存在する。
「SCP – Containment Breach」(2012年)はSCPゲームの先駆けで、個人開発の無料ホラーゲームとして今も根強いファンがいる。SCP-173の恐怖を初めてゲームで体験した人はこのゲームという場合が多い。
「SCP: Unity」は3Dリメイク版として開発が進められたが、開発が一時停止した経緯があり、後継プロジェクトが複数生まれた。
「SCP: Pandemic」はFPS形式のSCPゲームで、よりアクション寄りのゲームプレイを提供しようとしたが、完成度に課題が残った。
SCP:SLはその中でもっとも長期間・最大規模で運営が続いているSCPゲームだ。Steamの同時接続数やレビュー数という観点では、SCPゲームの中でダントツの存在感を持つ。
SCP:SLのやり込み要素——長く遊ぶためのモチベーション

SCP:SLには明確なランクシステムやレベルアップ機能はないが、「長く続けたくなる要素」はさまざまな形で存在している。
まず役職の熟練度という要素がある。同じSCPを何ラウンドも使い込むことで、「この状況ではこの能力を使う」「このルートを通れば有利になる」という判断が自然と身についていく。ランクバッジや数値で示されるわけではないが、プレイヤー自身の体感として「上手くなっている」のがわかる。
コミュニティサーバーによっては独自のポイントシステムやランキングを導入しているところがある。ラウンドでの貢献度に応じてポイントが加算され、特定のポイントを貯めることでコスメや役職解放などの報酬が得られるシステムだ。こういったサーバー固有の「育成要素」が、特定のサーバーへの帰属意識を高めている。
コスメティック収集もやり込み要素の一つだ。Parabellum Passを購入することで各役職のスキンが解放され、自分だけの見た目でゲームに参加できる。見た目がプレイに影響しないため、スキンは純粋な自己表現の手段として機能している。
また、SCP:SLはSpeedrunning(スピードランニング)コミュニティも存在する。DクラスとしてどれだけはやくゲートAまで到達できるか、あるいはSCPとしてラウンド開始から何秒でMTFを全員排除できるか——といったチャレンジを楽しむプレイヤーたちだ。こういった「縛りプレイ」的な遊び方が自然発生しているのも、ゲームのシステムが自由度を許容しているからだ。
初めてプレイするときのアドバイス——最初の数ラウンドを乗り越えるために
SCP:SLに初めて触れる人に向けて、最初の壁を乗り越えるための具体的なアドバイスを書いておく。
Dクラスとしてスタートするときのポイント
Dクラスでスタートしたら、まずロッカーを全部開けることから始めよう。施設内の至る所にロッカーが設置されていて、キーカードや武器が入っていることがある。ロッカーを開けるのにコストはかからないので、通り道にあるものは片っ端から開けるのが正解だ。
次に重要なのはSCP-914の場所を覚えること。LCZ内にある変換装置で、キーカードをアップグレードしたり武器を強化したりできる。「Fine」か「Very Fine」設定でキーカードを変換すると上位カードになることが多く、上のゾーンへの移動が楽になる。
SCP-173と遭遇したときのルールは最初に知っておくべきだ。「絶対に目を離さない」こと、これだけ守れれば即死はしない。複数人で行動していて1人が目を離した瞬間に動いてくるので、仲間がいるときは「全員で173を見続ける」チームプレイが必要になる。
SCPを引いたときの心構え
初めてSCPを引いたときは操作感に戸惑うはずだ。SCP-173なら「誰かに見られている間は動けない」というシンプルなルールだが、実際に操作してみると「誰がどの方向から見ているか」を把握することの難しさに気づく。
最初のラウンドは勝ちにこだわらず、各SCPの動き方・能力を体験することを優先するのがいい。「この能力はこういう状況で使うのか」という学びが積み重なっていくことで、3〜5ラウンド後には自然と立ち回れるようになる。
コミュニケーションを使うこと
SCP:SLはボイスチャット必須とは言わないが、ボイスチャットを使うと体験の質が格段に上がる。特に「見知らぬプレイヤーとのボイスチャット」を敬遠してしまう人は多いが、このゲームではその「声のやりとり」こそが面白さの核にある。
テキストチャットも使えるが、リアルタイムで状況が変わる中でテキストを打ち込む時間的余裕はほとんどない。最初は短いフレーズ(「助けて」「一緒に逃げよう」「173いた」など)だけでもボイスチャットで発言してみることを勧める。それだけで、まわりのプレイヤーとの関係が動き始める。
まとめ——無料でこれだけ遊べるなら、やらない理由がない
SCP: Secret Laboratoryは、2017年のアーリーアクセスから現在まで7年以上継続して運営されているゲームだ。その間に何度も「終わった」「過疎った」と言われながら、アップデートのたびにプレイヤーが戻ってきた。2023年のParabellumはその象徴的な復活劇で、「もう終わったゲーム」というイメージを完全に払拭した。
このゲームが7年続いた理由は、システムの完成度だけではない。SCP財団という世界観の深さ、コミュニティサーバーの多様性、開発チームがコミュニティと向き合い続けてきた姿勢——これらが重なって、プレイヤーを繋ぎとめてきた。
SCP: Secret Laboratoryを一言で表すなら、「無料で始められる、毎回違う物語が生まれるマルチプレイヤーホラーカオス体験」だ。
財団の施設で収容違反が起きた混乱の中、Dクラスとして脱出を目指し、SCPとして人間を追い詰め、MTFとして施設を制圧する——その体験はシステムが自動生成するのではなく、プレイヤーたちが毎回作り上げるドラマだ。
Parabellum以降で大幅に完成度が上がり、Northwood Studiosの継続的なアップデートで今もゲームとして成長し続けている。Steamレビュー11万件以上・約89%好評という数字は、この手のゲームとしては高い評価だ。
確かにチュートリアルは不親切だし、最初は何が何だかわからない。でもそれを乗り越えた先に見える「SCP:SLの本当の面白さ」は、一度体験したら忘れられないものになる可能性が高い。
無料なので、とりあえずインストールして1ラウンドだけ入ってみることをすすめる。「なんで深夜3時になってるんだ」という状況になったら、それはこのゲームに引き込まれた証拠だ。
SCP財団の世界観に初めて触れる人も、ゲームとしての完成度を求める人も——一度プレイする価値は間違いなくある。SCP-173と初めて対峙したときの「絶対に目を離しちゃいけない」という緊張感は、他のゲームでは感じられない体験だ。
SCP: Secret Laboratoryは、Steamで基本プレイ無料で配信中です。
SCP: Secret Laboratory
| 価格 | 基本無料 |
|---|---|
| 開発 | Northwood Studios |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows |
| プレイ形式 | マルチ |

