「STRAFTAT」兄弟2人が作ったマップ350超の無料アリーナFPS

初めてSTRATFATを起動したとき、ロビー画面の殺風景さに「本当にこれで合ってる?」と思った。

見た目はまるでゲームエンジンのサンプルデモ。グレーのブロックで組まれた小さなアリーナ。武器はその辺に落ちている。相手はひとり。「やること」はただ一つ、目の前の敵を倒すだけ。

1ラウンド目。ピストルを拾って飛び込んだ。相手はロケットランチャーを持っていて、発射された弾が真横をすり抜けた直後、壁に当たって爆風に吹き飛ばされた。即死。

2ラウンド目。マップが変わった。今度はスライディングしながら突っ込んで、ショットガンを撃ち込んだ。当たった。倒した。画面の向こうから近接チャット越しに「は?!」という声が聞こえてきた。

その瞬間に「あ、これやばいな」と思った。

STRAFTAT(シュトラーフタット)は、フランスのふたり組インディー開発チーム「Lemaitre Bros」が2024年10月24日にリリースした基本無料のマルチプレイFPSだ。同時接続は約571人。Steam評価は19,000件を超えるレビューのうち96%が好評という「圧倒的に好評」の評価を受けている。PC GamerはこのゲームをFPS部門の「2024年ベストFPS」に選出した。

无料でここまでのFPSができるのか、という驚きがあった。リリースから1年半を経た今もアップデートが続き、マップ数は350以上に到達。初期には70マップしかなかったのが、開発チームが次々と新しいアリーナを作り続けている。

この記事では、STRATFATが何であるかを徹底的に書く。なぜここまで評判がいいのか、何が他のFPSと違うのか、そしてどんな人がこのゲームを楽しめるのかを、プレイヤーの声を交えながら書いていく。

目次

「STRAFTAT」公式トレーラー

こんな人に読んでほしい

STRAFTAT FPS スクリーンショット1

この記事は2万文字を超えるボリュームがある。まず「自分に関係あるか」を確認してほしい。

「FPSが好きだけど、最近のゲームに疲れた」人

バトルパス、週間チャレンジ、ランクマッチのプレッシャー、キャラクターごとの特殊能力——最近のFPSはやることが多すぎる。STRATFATは逆だ。ロビーに入って、武器を拾って、撃つ。それだけ。ゲームとしての純度が異常に高い。

「最後にFPSらしいFPSをやったのはいつだっけ」と思っている人に、まず触ってほしいゲームだ。

1990〜2000年代のアリーナシューターを知っている人

QuakeやUnreal Tournamentの時代を知っているなら、STRATFATのDNAがどこから来ているかはすぐ分かる。武器は地面に落ちていて、マップを覚えて動き回って、相手よりも少し速く、少し正確に動いた方が勝つ。ランダム性は最小限で、実力がそのまま結果に出る。

あの頃のシューターへのノスタルジーがある人と、このゲームの相性は抜群だ。

Quake Championsは2017年に無料化されたが、キャラクターごとのアビリティやランクシステムの複雑さが往年のファンに「これじゃない」と感じさせることがあった。STRATFATにはそういう複雑さがない。1990年代のアリーナシューターへの回帰という意味では、Quake Championsよりも純粋にそれをやっているゲームだ。

友達と「ちょっとだけ」やりたい人

1試合が短い。1v1なら大体1〜3分で決着がつく。「30分だけ遊ぼう」と思って起動したら、10ラウンドこなせる。2v2モードや4人フリーフォーオールもあるので、友達グループにも合わせやすい。

近接チャット機能があって、対戦中に相手の声がリアルタイムで聞こえる。これがまた異様に盛り上がる。

無料ゲームを探している人

基本無料で、課金要素はほぼない。有料のDLCパック(追加マップ約140個+追加武器)は500円程度で買えるが、無料のベースゲームだけで十分に楽しめる。マイクロトランザクションもない。コスメ課金もない。「無料なのに面白い」という口コミが広がった理由の一つがここにある。

STRATFATとは何か ― ふたり組の兄弟が作ったアリーナFPS

STRAFTAT FPS スクリーンショット2

STRATFATの話をするには、まずこのゲームを作った人たちについて書かなければならない。

フランス人兄弟ふたりが作った独立ゲーム

Lemaitre Brosは、フランス人のSirius LemaitreとLeonard Lemaitreのふたり兄弟によるインディーゲームスタジオだ。このチームが2024年10月24日にSTRATFATをSteamで無料リリースした。

「ふたりでFPSを作った」——この一文だけでもすごいのに、リリース直後からSteamレビューが急速に積み上がり、数週間で数千件のレビューに到達。PC Gamerを含む複数のゲームメディアが「これは本物だ」と取り上げた。

ふたりのインディー開発者が作ったFPSが、大手スタジオの新作を押しのけて2024年最高のFPSに選ばれたという事実は、ゲーム業界で何度も繰り返されてきた「小さなチームが世界を変える」物語のひとつとして語り継がれるはずだ。

ゲームタイトルの意味

「STRAFTAT」はドイツ語で「犯罪行為(Straftat)」を意味する。ゲーム内のドタバタした対戦風景と、この重々しいタイトルのギャップがまた面白い。プレイヤーが毎ラウンド「犯罪的なほど楽しい」ことをやっている、という意味に取ることもできる。

リリース時の反応

2024年10月24日のリリース直後、STRATFATのSteam評価は急上昇した。レビュー件数が500件を超えた時点で評価は97%好評。日本のゲームメディアAUTOMATONも即日で記事を掲載し「シンプルながらも熱中できるハイテンポアリーナシューター」と評した。

フランスのふたり組が作ったという背景も話題になり、「これが無料なのはおかしい」というコメントがSteamコミュニティに飛び交った。

This game is magic, and I’m lucky to live in a time where expression can take forms like this.

引用元:Steamレビュー(ユーザーコメント)

ゲームの基本システム ― 70文字で説明できるシンプルさ

STRATFATの基本ルールを一言で言うなら「武器を拾って相手を倒す、それだけ」だ。

1v1・2v2・FFAの3モード

STRATFATには3つのモードがある。

メインは1v1。ふたりのプレイヤーが小さなアリーナで対決する。各ラウンドは数十秒から数分で終わり、先に規定のラウンド数(デフォルトは5ラウンド)を取った方が勝ち。マップはラウンドごとに変わる。

2024年7月のアップデートで追加された2v2は、チームゲームとしてのSTRATFATを体験できる。4人でふたり対ふたりの対戦。仲間と連携するか、各自が別行動するかはプレイヤー次第。

FFA(フリーフォーオール)は最大4人の全員バトル。混戦の中でサバイブするカオス系のモード。一番緩い気持ちで入れる。

マップと武器は不可分のセット

STRATFATの最大の特徴のひとつが、マップごとに配置される武器が異なるという設計だ。あるマップではロケットランチャーとピストルの組み合わせ、別のマップではショットガンと近接武器のみ、またあるマップでは磁石銃(リパルサー)とナイフだけ——という具合に、アリーナごとに全く異なるゲームプレイが生まれる。

マップを変えるたびに戦略が変わる。この設計が、350以上のマップを意味のある多様性として機能させている。

各マップには「プレイリスト」があり、よく遊ぶマップをお気に入り登録して対戦で優先的に出してもらうことができる。最初の頃は「どのマップも同じに見える」と感じていても、プレイを重ねるうちに「このマップはロケットランチャーだから距離をとりたい」「このマップはショットガンだから壁際にいてはいけない」という感覚が身についてくる。

マップを「覚える」というより、「入った瞬間に何が置いてあるかを確認する」習慣が自然につく。この認識の積み重ねが、STRATFATの上達感を生み出している。

武器カテゴリの多様性

STRATFATの武器は大まかに以下のカテゴリに分かれる。

ヒットスキャン武器(弾が即座に着弾):AK、MAC10、ピストル、ショットガン系。いわゆる「普通のFPSの武器」に近い使用感。

プロジェクタイル武器(弾に飛行時間がある):ロケットランチャー、デュアルランチャー、Cyst。弾道を予測して撃つ必要があり、壁や床への跳弾も計算に入る。

近接武器:クーペレット、野球バット、カタナ、Oklahoma等。接近しての打撃や斬撃。距離をつめる必要があるが、ヒット時のリターンが大きい。

爆発物:手榴弾、グレネード、地雷系。マップコントロールと罠設置に使う。

特殊武器:QCW05、HK G11、Kesoなど、通常のFPS武器に収まらない変わった動作をするもの。

デュアル装備:ピストル2丁持ちや、SMG2丁持ちが可能なマップも存在する。

武器は合計で数十種類以上。それぞれが独自の射撃感を持っていて、「全部触ってみたい」という好奇心を自然にかき立てる。

武器ごとにプレイスタイルが変わるのも面白い。ピストルは弾数が少ないぶん精度重視で、AKは連射できる代わりに近距離で不利になることもある。ロケットランチャーは着弾エリアが広くて初心者でも当てやすいが、自爆のリスクがある。近接武器は距離を詰めるまでのリスクと、ヒット時の確実なダメージのバランスが独特だ。

特殊武器の中でも「リパルサー(Repulsor)」はSTRATFATらしさが詰まっている。磁力で相手を吹き飛ばす武器で、崖落ちや罠への誘導に使える。ダメージではなく「位置を強制的に変える」という発想の武器が普通にゲームに存在していて、しかもそれが対戦として機能している——この設計のセンスが光る。

動きの気持ちよさ ― スライディングと壁ジャンプ

STRATFATの移動はシンプルに見えて、実は奥が深い。

スライディングは走りながらしゃがむと発動。PC Gamerのレビューが「Counter-Strike: Sourceの最高のmod」と表現したほどの気持ちよさがある。スプリントからのスライディングは速度を乗せたまま低い姿勢で突っ込めるので、攻撃を避けながら接近するテクニックとして機能する。

壁ジャンプは壁に向かって斜めに飛び込みながらジャンプすることで発動。空中での方向転換に使える。慣れると移動の選択肢が一気に広がる。

スライディングからのジャンプでさらに速度を乗せる「スライジャン」は、上級テクニックとして使える。単純に走るよりも大幅に速く移動でき、相手の照準に収まりにくくなる。

リーン(覗き込み)も実装されていて、角から少しだけ体を出してエイムするが可能。タクティカルシューターの要素も含まれている。

スプリント・スライディング・壁ジャンプ・リーンという4つの移動オプションが組み合わさることで、「どこから来るか分からない」という状況が生まれる。相手がどの経路を使うかを予測しながら待ち構えるか、積極的に動いてポジションを奪いに行くか——この選択が毎ラウンド存在する。

移動の技術は練習で明確に向上する。最初は「ただ走る」だけだが、10試合もすればスライディングが自然に出るようになる。壁ジャンプは少し練習が必要だが、できるようになると立ち回りの幅が大きく広がる。「上手くなった」という実感が得やすい設計になっている。

近接チャットという「空気」

STRATFATの特徴として頻繁に語られるのが、近接チャット(Proximity Chat)の存在だ。

対戦中に相手プレイヤーと物理的に近い場所にいると、リアルタイムの音声が聞こえる。倒された瞬間に相手の「よっしゃ!」という声が聞こえたり、自分が倒したときに「は?!」という声が響いてきたり——テキストチャットでは絶対に再現できない体験がある。

複数のレビューで「近接チャットが楽しすぎる」という声が挙がっている。知らない外国人と対決しながら、互いの感情が生声で伝わってくる。このリアルタイムな感情の伝達が、STRATFATをただの「対戦ゲーム」ではなく「ふたりの体験」に変えている。

The proximity chat makes this game special. You can hear your opponent getting frustrated or excited, and it creates this weird bond between two strangers who are trying to kill each other.

引用元:Steamレビュー(ユーザーコメント)

近接チャットの「近接」という条件も上手い設計で、相手が近くにいるときだけ声が聞こえる。遠距離では無音で、距離が縮まるにつれて声が聞こえてくる——このフェードインが対戦の緊張感を演出している。相手の息遣いが聞こえてくる感覚は、テキストチャットや通常のボイスチャットでは作れない。

Steamのコミュニティページでは「近接チャットのせいでついつい謝ったり話しかけてしまう」という体験談も複数見られる。対戦ゲームなのに「敵に優しくなってしまう」というのは、STRATFATが持つ独特の人間的な空気を示している。

350以上のマップ ― 毎ラウンドが別ゲーム

STRAFTAT FPS スクリーンショット3

STRATFATのマップ数は、リリースから1年以上経った現在、350以上に達している。これは「350個の対戦フィールドがある」ということだけでなく、「350通りの異なるゲームプレイが存在する」ということを意味する。

マップの個性は「テーマ」ではなく「武器の組み合わせ」で決まる

通常のFPSのマップ多様性は「砂漠マップ」「都市マップ」「工場マップ」というテーマの違いで語られることが多い。STRATFATは違う。見た目の違いよりも、どの武器が配置されているかがマップのアイデンティティを決定づける。

ロケットランチャーのみが置かれたマップでは、爆発の跳弾を計算しながら立ち回る。接近しないと当たらない近接武器だけのマップでは、距離の詰め方が全てになる。ランダム性の高い爆発物のみのマップでは、運と読み合いが混在する。

同じ広さの箱型アリーナでも、置かれた武器が違えば全く別のゲームになる——この設計が、350個以上のマップが「数の多さ」ではなく「体験の多様性」として機能する理由だ。

従来のFPSはマップが増えても「戦い方の基本は同じ」になることが多い。CODシリーズのマップは100個増えても「銃で撃ち合う」という軸は変わらない。STRATFATは違う。マップが増えるたびに「このマップは何の武器で、どういう対戦になるのか」という新しいゲームプレイが生まれる。350個のマップは350個の異なる問いかけだ。

奇妙なマップも普通に存在する

STRATFATのマップには、シリアスな対戦ゲームでは考えられない「変なマップ」も含まれている。

PC Gamerが「Twin PeaksのレッドルームそのものなマップがSTRATFATにある」と書いたほど、ゲームの世界観や現実のモチーフを取り込んだ遊び心あるマップが含まれている。障害物コースの先にしか武器がないマップ。坂道を滑りながら相手に地雷を投げつけるマップ。相手をノックバックさせて崖から落とすことを目的とするマップ。

こういう「ちゃんと機能している変なマップ」の存在が、STRATFATの遊びの幅を広げている。対戦ゲームとしてのシリアスさと、インディーらしい遊び心が共存しているのが、このゲームの魅力の一つだ。

変なマップでも「勝ちたい」という気持ちは本物だ。坂道を滑りながら地雷を避け、磁石銃で相手を崖から落とすマップでも、必死になっている自分がいる。そして倒したときの近接チャット越しの悲鳴が聞こえてくると、笑いながら次のラウンドに移る。この「真剣なのにバカバカしい」というバランスがSTRATFATを特別なものにしている。

Bazaarアップデートで50マップ一気追加

2025年のBazaarアップデート(v1.4.0)では、50以上の新マップが一度に追加された。カバードマーケット(屋根付き市場)をテーマにした24マップ、バスケットコート的な形状の18マップ、Hushardzanをテーマにした10マップ、その他4マップという内訳だった。

このアップデートのすごいところは、全て無料だということだ。課金なしに50マップが追加される——普通の大手ゲームスタジオでは考えにくいアプローチで、Lemaitre Brosの「長く遊ばれるゲームにしたい」という意志が表れている。

開発者のSirius LemaitreはPC Gamerのインタビューで「We definitely want Straftat to live as long as possible」(STRATFATをできる限り長く続けさせたい)と語っている。言葉と行動が一致している開発チームだと、プレイヤーも感じているはずだ。

このインタビューのコメントは、ゲームの運営方針を端的に表している。「長く続けたい」のなら、コンテンツを無料で追加し続けることが合理的だ。プレイヤーが増えれば増えるほど対戦が成立しやすくなり、評判が広がり、さらにプレイヤーが来る。ゲームとしての体験を良くすることが、自分たちにとっても最善策だという理解がある。

STRATFATのWikiはコミュニティが自発的に構築していて、マップ一覧、武器解説、移動テクニックのガイドが整備されている。開発チームが言葉を尽くすのではなく、プレイヤーが自然にコミュニティを作っていく——これもまたゲームの健全さの指標だ。

なぜSTRATFATはここまで評価されるのか

STRATFATのSteam評価が96%好評という数字は、単に「良いゲーム」だから生まれたわけではない。いくつかの特定の要素が重なって、この評価を生み出している。

理由1: 完全無料で課金圧力がゼロ

現代のF2PゲームはほとんどがBattle Passか広告か、何らかの課金モデルを持っている。STRATFATは違う。

基本ゲームは永遠に無料で、追加コンテンツは「STRAFTAT: Maps, Weapons and Hats」というDLCとして数百円で購入できる。しかしこのDLCは「追加コンテンツを楽しみたい人向け」であって、基本ゲームで対戦に不利になることはない。

マイクロトランザクションなし。期間限定コンテンツなし。ガチャなし。プレイし続けることへの義務感が生まれないゲーム設計になっている。これが「忙しい人でも気軽に戻ってこれる」という評価につながっている。

It’s completely free, no pay to win, no battle pass, no FOMO mechanics. Just pure gameplay. This is what free to play games should be.

引用元:Steamレビュー(ユーザーコメント)

理由2: 1試合が短く「もう1回」が止まらない

STRATFATの1v1の1ラウンドは、平均して数十秒から2分程度で決着がつく。5ラウンド先取でセットが終わるので、1試合あたりの所要時間は10〜15分前後。これが「もう1試合だけ」という無限ループを生む。

ゲームの面白さには「行動と結果の間の時間」が影響する。ラウンドが短ければ短いほど、「次はこの戦略でいこう」という学習と挑戦のサイクルが速くまわる。STRATFATはそのサイクルが異常に速い。

死んだら次が始まるまで待たなくていい。ラウンドが終わったら即次のラウンド。セットが終わったら即再戦のオプションが出る。テンポが速いので、負けた悔しさが「次に活かせる」に変換されやすい。

理由3: 撃ち心地の良さ ― シンプルな見た目と内側の精度

STRATFATの見た目はレトロで、グラフィックは決して豪華ではない。でも武器の撃ち心地は別物だ。

PC Gamerのレビューは「no matter how silly it looks, the guns feel great」(見た目がどれだけバカバカしくても、銃の感触は最高)と書いた。この「見た目と手触りのギャップ」がSTRATFATを語るうえで核心的な話だ。

各武器の反動パターン、弾の飛距離と拡散、ヒット時の音と視覚フィードバック——これらが全て丁寧に作られている。単純なゲームに見えて、フィーリングへのこだわりがある。

スライディング一つとっても、速度の乗り方、スライディング中の姿勢の低さ、終わり際のアニメーションが計算されている。「気持ちいい」という感覚はこういう細部の積み重ねから生まれる。

PC GamerのレビューはSTRATFATのスライディングについて「one of the best-feeling crouch slides in an FPS」(FPS史上最高の気持ちいいスライディングのひとつ)と書いた。これは大げさではなく、Apex Legendsのスライディングとも、Call of DutyのタクティカルスプリントともModern Warfareのスライディングとも違う、STRATFATならではの独特の気持ちよさがある。

スライディング→ジャンプで速度を維持したまま飛べる動きは、慣れてくると常に使いたくなる。「走る」という行動がすぐに「スライディングで突っ込む」に置き換わる。この変化がゲームへの没入感を高める。

理由4: 同じマップが二度出てこない新鮮さ

1v1では、ラウンドのたびにマップが変わる仕様になっている。同じ相手と5ラウンド戦っても、毎回アリーナが変わり、武器のセットが変わり、必要な戦術も変わる。

これは対戦ゲームの「覚えゲー」になりにくいメリットがある。特定の強マップを知っている人が有利になる、という状況が起きにくい。350以上のマップが存在するということは、全部覚えることが現実的ではなく、「その場の状況に合わせて動く」という臨機応変さが求められる。

Quakeのような従来のアリーナシューターでは、マップの武器配置を完璧に覚えることが勝利への近道だった。STRATFATはそこを崩している。それでいてマップが増えるほど体験が豊かになる、という上手い設計だ。

この設計はプレイヤーの「格差」を生みにくい。Quakeでは、上位のプレイヤーがロケットランチャーとレールガンのリスポーン地点を常に抑え続けるという問題があった。新参者が良い武器に触れるチャンスが少ない。STRATFATでは、マップの構造を覚える前から等しく武器にアクセスできる。これが「始めてすぐでも楽しめる」という評価につながっている。

一方で、同じマップを何度もプレイすることで「このアリーナに詳しい」という優位性が生まれるのは確かだ。350マップ全部を詳しく覚えることはできないが、特定のマップへの精通は実力差として機能する。完全なランダム性ではなく、知識と経験が活きる余地を残した設計だ。

理由5: プレイヤー間の「人間性」が見える

近接チャットの話を先ほど書いたが、STRATFATがただの対戦ゲームを超えた理由の一つが、対戦相手との「交流」が自然に生まれる点だ。

一緒に戦ったプレイヤーをフレンド登録する機能があり、良い試合をした相手と「また戦おう」という流れになることが多い。マッチング後にリマッチを繰り返して、最終的にDiscordを交換することもある。

「1v1という形式は本来孤独な戦いだけど、STRATFATはなぜか人との繋がりを作る」という声が複数のレビューで見られた。これはゲームの設計とコミュニティの空気が作り出した、偶発的な副産物だ。

アップデートの軌跡 ― 止まらない進化

STRAFTAT FPS スクリーンショット4

STRATFATはリリースから1年以上経った今も、継続的にアップデートが入り続けている。その軌跡を追うと、開発チームの方針がよく見えてくる。

リリース(2024年10月): 70マップ・1v1のみ

初期のSTRATFATは70マップのみ対応していた。モードは1v1のみ。武器の数も現在よりずっと少なかった。

それでも評価は97%好評。「シンプルさがちょうどいい」という声と「もっとコンテンツが欲しい」という声が同時に存在していた。

リリース直後の数日間で数百件のレビューが集まり、STRATFATはSteamの注目ゲームランキングに浮上した。AUTOMATONやEAA FPS Newsのような日本語メディアも即日で記事を掲載し、国内コミュニティでも話題になった。「これが無料なのはおかしい」というコメントが各所で見られ、Lemaitre Brosに対するサポートの声も上がった。

2025年1月: 大型アップデートで武器と機能追加

2025年1月のアップデートで、AP Mine、Bukanee、FG42、Hill H15、HK Caws、HK G11、カタナ、QCW05、Webleyなど多数の新武器が追加された。

同時にマップも増加。プレイヤーたちは「え、また増えてる?」という反応を示し、このアップデートも評価の維持に貢献した。

特にカタナの追加はコミュニティでの盛り上がりが大きかった。近接武器はリスクとリターンのバランスが難しいが、カタナは「相手に近づいて斬る」という純粋なメカニクスとして機能した。カタナ専用マップも後に追加され、「カタナだけで相手を倒す」という縛りプレイ的な楽しみ方も生まれた。

2025年3月: Musicアップデートで音楽が変わる

Musicアップデート(v1.2.2)では新しい音楽トラックが大量追加された。マッチ履歴機能も実装。さらに「overpowered bukanee-like smg」という武器が追加された(公式がこう書いた)。

この「公式が自分で強すぎると書く」というユーモアセンスが、Lemaitre Brosというチームの個性を表している。

マッチ履歴機能の追加は地味だが重要なアップデートで、過去にどのマップでどう戦ったかを振り返れるようになった。「あのマップに出たら必ず負ける」「あの武器の組み合わせは得意」という自己分析ができるようになった。腕前の向上を実感しやすくなり、より長くゲームに向き合うモチベーションが生まれた。

また音楽の変化もゲームの雰囲気に直結する。STRATFATのレトロな見た目に合ったサウンドトラックは、「あの頃のゲームを遊んでいる」という感覚を強化する。Muzic Update後のコミュニティでは「このBGMが好き」という話題も増えた。

2025年7月: 2v2モードとFFA実装

STRATFATが1v1専用ゲームから脱した大きな転換点が、2025年7月の2v2・FFAモード追加だ。

PC Gamerはこのアップデートを「Our favorite 1v1 FPS just became our favorite 2v2 FPS, and you can still play it for the low price of free」(大好きな1v1 FPSが大好きな2v2 FPSになった、しかもまだ無料)と表現した。このコピーは言い得て妙で、STRATFATが進化するたびに「また驚かせてくれる」という感覚が積み重なっている。

同時に「Supporter’s Edition」という有料版も追加され、追加コスメティック、デジタルアートブック、Blenderファイルが含まれる形になった。ゲームの「支援」をしたいプレイヤーへの入口として機能している。

2v2の追加はSTRATFATのコミュニティにとって大きな変化だった。1v1は「個人の実力」が問われるゲームだったが、2v2では「パートナーとの連携」という要素が加わった。友達とプレイする動機が増え、「2人で強い戦略を試す」という新しい楽しみ方が生まれた。

ピーク同時接続の2,202人を記録したのもこの2v2・FFAアップデート後の7月だった。新モードの追加によって一時的にプレイヤーが戻り、新規プレイヤーも引き込んだ。この数字はSTRATFATが「終わったゲーム」ではなく、アップデートのたびに息を吹き返す生きているゲームであることを示している。

2025年後半のBazaarアップデート: 50マップ一括追加

前述のv1.4.0アップデートで50以上のマップが追加され、総マップ数が350を超えた。マーケットをテーマにしたマップ群は、STRATFATのアリーナとして初めて「テーマ性のある空間」として設計されたもので、見た目の多様性も増した。

カスタム音楽設定も実装され、自分の好きな音楽をBGMとして設定できるようになった。

2025年11月: CystとBlister追加

2025年11月のアップデートではCystとBlisterという2つの新武器が追加。プロジェクタイル系のCystはバフされ、射撃感が改善された。

リリースから1年以上経っても武器が増え続けているというのは、開発チームがゲームバランスを継続的に調整している証拠でもある。

Cystはプロジェクタイル系武器として独特の動作をする。Blisterとともに、従来の武器カテゴリに収まらない「STRATFATらしい変わった武器」の系譜に連なる。このような実験的な武器追加を続けていることが、長期プレイヤーが「次は何が追加されるんだろう」という期待感を持ち続けられる理由だ。

2026年: Linuxサポートと継続的な改善

2025年3月にLinux版が追加され、Steamのプロトン経由ではなくネイティブでLinuxに対応した。これによってSteam DeckユーザーもSTRATFATを快適にプレイできるようになった。

開発チームは「ゲームが好きな人全員がプレイできる環境」を広げる意志を持っている。Macサポートについても要望が出ており、今後の対応が期待されている。

プレイヤーが語る「初めてのSTRATFAT体験」

STRATFATに触れたプレイヤーがどんな体験をするのか、実際の声を交えながら書く。

「無料なのにこれでいいのか」という最初の戸惑い

初めてSTRATFATを起動したプレイヤーの多くが「見た目に戸惑った」という感想を持っている。グラフィックはシンプルで、UIも最小限。「本当にこれがSteamで高評価を受けているゲームか?」という感覚になる。

でもそこから最初の1試合を終えると、評価が変わる。操作の快適さ、武器の撃ち心地、マップの面白さ——プレイして初めて分かる部分が多い。

I was skeptical at first. The graphics look like a 2004 game. But after my first match I understood why this is the best FPS of 2024. The gameplay is so tight and every second feels meaningful.

引用元:Steamレビュー(ユーザーコメント)

日本のゲームメディアAUTOMATONも、STRATFATを「シンプルながらも熱中できるハイテンポアリーナシューター」と評しており、この「シンプル」と「熱中できる」の共存こそがゲームの本質を突いている。

「いつの間にか2時間経っていた」という中毒性

STRATFATのSteamレビューを読むと、「気づいたら何時間もやっていた」という体験談が繰り返し出てくる。これは試合の短さと「もう1回」の引力によるものだ。

1ラウンドが短いので「あと1ラウンドだけ」と思う。セットが終わったら「リマッチしよう」となる。気づいたら深夜になっている——このパターンがアリーナシューター全盛期のゲームにあった「引力」と同じだ。

Opened it up just to try it and ended up playing for 3 hours straight. This game has no right to be this fun for free.

引用元:Steamレビュー(ユーザーコメント)

「近接チャットが人間らしい」という発見

最近のオンラインゲームは、テキストチャットかボイスチャットでチームと話すのが基本で、相手チームとの音声交流はないことが多い。むしろ相手の声が聞こえること自体がレアな体験になっている。

STRATFATの近接チャットは、1v1の対戦をより「人間同士のやり取り」に近づける。勝ったときに「good game」と言える。負けたときに「うまいな」と言える。これだけのことが、対戦体験の質を大きく変える。

Quake LiveのコミュニティフォーラムにもSTRATFATのスレッドが立ったとき、あるプレイヤーはこう書いた:

I haven’t talked to a random opponent in an FPS game in years. STRAFTAT makes that happen again.

引用元:Steam Community(Quake Live General Discussions)

競合ゲームと比べた感想

STRATFATはOverwatchやApex Legendsのような「キャラクターごとの能力系FPS」とは根本的に設計思想が違う。

例えばOverwatchはヒーロー選択、アビリティ管理、チーム構成の最適化——という複数の層で戦略が成立するゲームだ。初心者には覚えることが多い。

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STRATFATには「ヒーロー」という概念がない。全プレイヤーが同じ条件でスタートする。差がつくのは武器の扱いと移動の技術と状況判断だけだ。「FPSの純粋な技術を磨きたい」というプレイヤーにとって、STRATFATはその入口として非常に入りやすい。

同時に、移動系FPSとの比較もよくされる。PlanetSide 2のような大規模戦FPSとは規模が正反対だが、1対1の純粋な技術競争という意味では、どちらも「FPSとして何を楽しむか」の価値観の違いを体現している。

ゲームの欠点と課題

STRAFTAT FPS スクリーンショット5

96%好評という評価の裏に、批判的な声が4%ある。このゲームの欠点も正直に書く。

マッチメイキングの待ち時間

同時接続が数百人規模のゲームなので、マッチングに時間がかかることがある。特に深夜や平日昼間のような時間帯は、同じスキルレベルの相手を見つけるまでに数分かかることもある。

大手FPSと比べると、いつでも即座にマッチできるという状況ではない。これは同時接続数の問題であり、ゲーム設計の問題ではないが、体験として影響する部分だ。

マッチングの待ち時間を減らすための工夫として、フレンドと直接対戦する「プライベートマッチ」機能がある。友達を誘って1v1や2v2をするなら、マッチメイキングを待つ必要がない。フレンドがいない場合でも、STRATFATのDiscordサーバーで対戦相手を探すプレイヤーがいる。コミュニティを活用すれば待ち時間の問題は解決しやすい。

チュートリアルの薄さ

STRATFATにはチュートリアルが最小限しかない。基本的な操作説明はあるが、移動テクニック(壁ジャンプ、スライジャン)や武器ごとの特性は自分で体得していく必要がある。

「始めてすぐに何をしていいか分からなかった」という声もあり、初心者には最初の数試合がやや孤独に感じるかもしれない。Wikiやコミュニティの情報を参照することをすすめる。

ただし、これを「欠点」と見るかどうかは人によって異なる。チュートリアルの薄さは裏返せば「説明なしに何でもできる」シンプルさの証でもある。「やりながら覚える」アプローチが好きなプレイヤーには、むしろ余計な説明がない方が快適かもしれない。1990年代のゲームにはチュートリアルなんてなかった。あの頃と同じ感覚で始められる。

グラフィックの好みが分かれる

レトロ・ロウポリのビジュアルは意図的な選択だが、グラフィックに一定のクオリティを求めるプレイヤーには「物足りない」と感じられる。ゲームプレイを楽しめるかどうかとは別の話だが、「見た目が気になってプレイに集中できない」という人は一定数いる。

このビジュアルのトレードオフとして、動作の軽さがある。高性能PCが必要なく、ローエンドのPCやノートPCでも快適に動く。グラフィックを下げることで多くのプレイヤーが参加できるという設計的な判断でもある。「グラフィックが良いゲームは遊べない環境」でも遊べるFPSとして機能している。

音の分かりにくさ

一部のプレイヤーから「相手の位置を音で把握しにくい」という指摘がある。マップが小さいのでそこまで大きな問題ではないが、サウンドデザインについては改善の余地があるとする意見も存在する。

The game is great but the audio cues could be improved. Sometimes I can’t tell where shots are coming from until it’s too late.

引用元:Steamレビュー(ユーザーコメント)

STRATFATと類似ゲーム ― 何を選ぶか

STRATFATを気に入ったなら、あるいはSTRATFATでは物足りなくなったなら、次に何を試すかという話も書いておく。

もっと激しい協力FPSをやりたいなら ― GTFO

STRATFATが1v1の純粋な対決を楽しむゲームだとすれば、GTFOは協力型の極限サバイバルFPSだ。難易度は段違いで、最大4人のチームで情報を共有しながら静かに動く必要がある。「FPSで別のジャンルを試したい」と思っているなら選択肢に入る。

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近接戦闘の深さを求めるなら、STRATFATとは全く異なるアプローチで戦闘の奥深さを追求したMORDHAUが候補になる。中世の剣戟、フェイント、パリィ——銃ではなく剣で戦う体験を求めているなら。

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大規模なFPSを試したいなら ― PlanetSide 2

STRATFATの1v1・2v2とは正反対の、最大数百人規模の大規模戦FPSとしてPlanetSide 2がある。広い戦場で部隊を率いる体験は、STRATFATとは全く違う種類の楽しさを持っている。

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ホラー要素が好きなら ― DEVOUR

協力型ホラーゲームが気になっているなら、同じくオンラインマルチのDEVOURが選択肢に入る。FPSとは異なるジャンルだが、少人数で遊ぶ濃密なオンライン体験という点でSTRATFATのプレイスタイルと相性がいい。

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NMRIH ― ゾンビを一緒に生き延びる

No More Room in Hell(NMRIH)は無料プレイ可能な協力型ゾンビFPSだ。STRATFATとは逆のチームサバイバル系だが、無料でマルチプレイを楽しめるという共通点がある。

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STRATFATの「普通じゃなさ」について

STRAFTAT FPS スクリーンショット6

STRATFATを体験して感じたのは、「普通のゲームが普通にやらないことをやっている」という感覚だ。

現代のゲーム産業は、プレイヤーをゲームに引き留めるためのシステムを積み重ねる方向に進んでいる。デイリーミッション、ウィークリーチャレンジ、シーズンバトルパス、期間限定コンテンツ——これらは全て「プレイしないと損をする」という心理を利用している。

STRATFATにはそれが一切ない。

ゲームを起動しなかった日に損をするものは何もない。プレイしたからといって他のプレイヤーより有利になる課金要素もない。あるのはゲームそのものだけだ。

これは2024〜2025年のゲーム市場において、逆張りの設計だ。そして皮肉なことに、この「逆張り」が多くのプレイヤーに刺さった。

「ゲームに呼ばれてやる」のではなく「やりたいときにやる」という感覚。STRATFATはその自由さをちゃんと持っている。

最近のゲームを「続けること」に疲れているプレイヤーが多い。Apexのランクで消耗した、Valorantのデイリーチャレンジが義務になった、Overwatchのシーズンが終わる前に急いでランクを上げなければいけない——そういった「ゲームへの義務感」に疲れた人たちに、STRATFATは別の選択肢を見せた。

「今日暇だからやろう」という気軽さ。「つまらなかったらすぐやめていい」という気楽さ。この感覚は、今の時代のゲームが失いかけていたものだ。

I play this when I want to play a game and not when the game wants me to play. That’s such a rare feeling these days.

引用元:Steamレビュー(ユーザーコメント)

開発者がゲームに込めたもの

Sirius Lemaitreのコメントを読むと、STRATFATが単なる商業プロジェクトではないことが分かる。「できる限り長く続けさせたい」という発言は、ゲームをプロダクトとして売り出す視点ではなく、プレイヤーと一緒に育てていく視点から来ている。

リリースから1年半、毎回のアップデートで無料コンテンツを追加し続けているというのは、言葉だけでなく行動で示している。

ふたりのフランス人兄弟が作った、商業的な計算を抜きにしたゲームへの愛情——それがSTRATFATの異質な魅力の根っこにあると思っている。

2026年現在のSTRATFAT ― 今遊ぶべきか

2026年4月時点で、STRATFATの同時接続は約571人だ。峰の2,202人(2025年7月)からは落ちているが、無料ゲームとして適度なプレイヤー数を維持している。

マッチングは成立するか

同時接続571人という数字は、大手FPSと比べると少ない。でも1v1ゲームとして考えると、必要なのは「同時に起動している相手がひとりいること」だけだ。571人が同時接続しているなら、ゲームとして成立する数だ。

時間帯によってはマッチングに2〜5分かかることもあるが、「全くマッチングしない」という状況にはなっていない。

比較のために言うと、同時接続500〜600人というのは、「コアなファンが残っているゲーム」の数字だ。数千人規模のゲームよりマッチングは遅いが、残っているプレイヤーは本当にこのゲームが好きな人たちだ。そういう環境での対戦は、実力を問われる代わりに「ゲームをちゃんと知っている相手」と戦える良さもある。

ただし、STRATFATの最大の魅力は「1v1のマッチング」なので、待ち時間が2〜5分かかるのはストレスに感じる人もいる。その場合はフレンドと直接対戦する方が現実的だ。

アップデートは続いているか

2026年4月時点でも開発チームのアップデートは継続している。マップ追加、武器調整、機能改善のサイクルが維持されている。「終わったゲーム」という状況ではない。

Lemaitre Brosがふたり組のインディースタジオである点は、大手スタジオに比べてアップデートの頻度が不規則になりやすいという側面もある。週ごとのアップデートが保証されているわけではない。しかし「アップデートの頻度が少ないからゲームが終わる」という判断基準では、STRATFATの価値は測れない。1回のアップデートで50マップを追加できる開発チームは、その気になれば大きな変化をすぐに届けられる。

今から始めるなら何を意識するか

今からSTRATFATを始めるなら、いくつかのことを知っておくと最初から楽しめる。

まず、最初の数試合は負けることを前提にする。慣れたプレイヤーと当たることもある。でも1試合が短いので、「負け続けること」自体のストレスは少ない。むしろ何に負けたかを観察することで、次のラウンドへのフィードバックが速い。

スライディングと壁ジャンプを早めに体に入れることをすすめる。このゲームの移動テクニックを使えるかどうかで、立ち回りの質が大きく変わる。

350以上あるマップ全部を最初から覚えようとしない。「このマップはこういう武器の組み合わせか」と毎回認識するだけで十分だ。

Steam DeckやLinuxユーザーはどうか

2025年3月にLinuxネイティブ対応が追加されたことで、Steam DeckでのSTRATFATも快適に遊べるようになった。1v1の短いゲームはSteam Deckに向いていて、移動中の隙間時間にも遊びやすい。

グラフィックが軽いこともSteam Deckに向いている理由で、60fps維持が難しいゲームではない。フレームレートが高く維持できることで、移動操作の精度もPCと遜色なく感じられる。

「今の同時接続数」より「ゲームの面白さ」で判断していい

STRATFATの評価軸は同時接続数ではない。19,000件を超えるレビューで96%好評という評価は、プレイしたプレイヤーのリアルな感想だ。マッチングが成立する最低限の人口がいる間は、このゲームの本質的な面白さは変わらない。

まとめ ― 「FPSとはこういうものだ」を思い出させてくれるゲーム

STRATFATについてここまで書いてきた。最後に整理する。

このゲームが特別なのは、以下の要素が重なっているからだ。

完全無料で課金圧力がないという設計。1試合が短くてすぐ始められるテンポの良さ。350以上のマップが毎回異なる体験を生む多様性。近接チャットが生む人間らしい交流。そして何より、ふたり組の開発チームがリリースから1年半以上、無料コンテンツを追加し続けているというコミットメント。

PC GamerがSTRATFATを2024年のベストFPSに選んだとき、多くのゲーマーが驚いた。大手スタジオの大型FPSを差し置いて、ふたりの兄弟が作った無料ゲームがその位置に立ったことへの驚き。

でもSTRATFATをプレイしたプレイヤーにとって、この評価は驚きではなかったはずだ。「知ってた」という感覚。

FPSというジャンルが何であるかを、STRATFATは一番シンプルな形で示している。武器を拾って、相手を撃って、倒すか倒されるか。それだけ。それだけで、これだけ面白い。

移動テクニック、武器の特性、マップの把握——覚えることはあるが、障壁は低い。無料だから失うものは何もない。30分だけ試してみて、面白くなければすぐやめればいい。

でも恐らく、30分で終わらない。

アリーナシューターの系譜の中に置いたとき

STRATFATがなぜ「2024年のベストFPS」に選ばれたかを理解するには、アリーナシューターというジャンルの歴史を少し知っておく必要がある。

1996年のQuake。1999年のUnreal Tournament。2000年代のCounter-Strike。これらのゲームが作り上げた「アリーナシューター」の文化は、2010年代に入って急速に廃れた。Call of DutyやBattlefield、そしてApex Legendsのようなバトルロイヤル系に主流が移り、「シンプルな対戦FPS」の居場所が小さくなった。

その後、多くのスタジオが「アリーナシューターの復活」を試みた。Epic GamesのUnreal Tournament(2016〜2018年の無料版)は開発が止まった。Bethesdaのid Softwareによる新Quakeはチャンピオンズとしてリリースされたが、旧来のファンには複雑すぎた。

STRATFATは違うアプローチをとった。大手スタジオが「復活させようとした」アリーナシューターではなく、ふたりの若いフランス人開発者が「自分たちが遊びたいゲームを作った」結果として生まれた。商業的な計算ではなく、純粋な愛好から生まれたゲームの強さがある。

それが19,000件のレビューに結実した。批評家の評価ではなく、遊んだプレイヤーの感想が集まって作られた「96%好評」という数字——これがSTRATFATの本質的な評価だ。

「ゲームとはこういうものだった」という感覚を、STRATFATは2024年に証明した。それは懐古的なノスタルジーではなく、今この瞬間にも機能するゲームの真実だ。

STRATFATは2026年4月現在もSteamで無料配信中で、アップデートが続いている。

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STRAFTAT

Sirius Lemaitre, Léonard Lemaitre
リリース日 2024年10月24日
サービス中
価格基本無料
開発Sirius Lemaitre, Léonard Lemaitre
販売Lemaitre Bros
日本語非対応
対応OSWindows / Mac / Linux
プレイ形式マルチ
世界観・テーマ ホラー
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