「あと1ターンだけ」と思って気づいたら夜明けを迎えていた。そういう体験をしたくて、ずっとHeroesシリーズの復活を待ち続けていた。
デモ版を起動したのは夜の10時だった。探索フェーズで資源を集め、城を少しずつ育て、初めての大型戦闘を終えたときには外が明るくなっていた。「あ、これだ」と思った。あの独特の時間泥棒感。あのHeroesのリズムが、ちゃんと戻ってきていた。
2026年4月30日、『Heroes of Might and Magic: Olden Era』がSteam早期アクセスを開始する。開発はウクライナのUnfrozen Studio、発売はHooded Horse(Ubisoftと共同)。シリーズ25年の歴史の中で「最高傑作」と呼ばれ続けるHeroesIIIの精神的な前日譚として設計されたこの作品は、早期アクセス開始前からSteamウィッシュリスト約200万件を集め、デモ版だけで同時接続2万4000人超、SteamDB史上最高クラスのデモパフォーマンスを記録している。
HoMM(Heroes of Might and Magic)というシリーズは、1995年の誕生から2006年のHeroesVあたりまで絶大な人気を誇っていたが、その後Ubisoftによるナンバリング作品の迷走が続いた。「HeroesVIは別ゲー」「HeroesVIIは未完成」と言われながら、本来のファン層は離れ、シリーズは事実上の長期休眠状態に入っていた。そこに現れたのが、シリーズのファンとして育ったUnfrozenのメンバーたちだ。
「こんな人に読んでほしい」という前置きはあえて書かない。HeroesIIIを夜通しプレイしたことがある人、ターン制ストラテジーで「思い通りに軍を動かす快感」を知っている人、あるいはこれからその感覚を初めて体験したい人、全員に届けたい記事だ。
早期アクセス公開日トレーラー
2026年4月30日の早期アクセス開始を告知する公式トレーラー(Unfrozen、2026年4月1日公開)
HeroesIIIの魂を宿した「オールドスクール×モダン」設計

Olden Eraの最大の特徴は「HeroesIIIへのオマージュ」を明言しながら、単なるリメイクではなく新たなシステムを丁寧に積み重ねている点だ。六角グリッドの戦闘フィールド、探索フェーズと戦闘フェーズの二層構造、城の建設と資源管理——この骨格はHeroesIIIの信者が見れば「そうそう、これがHeroesだ」と膝を打つはずだ。
舞台はシリーズの惑星エンロス(Enroth)の大陸ジャデーム(Jadame)。HeroesI(1995年)が始まるよりさらに数百年前の太古の時代が描かれる。シリーズ公式のプリクエルとして、「あの世界の起源」を描く物語構成だ。脅威となるのは悪魔王「ドラゴンフライ・キング」に堕落した昆虫の群体「ハイブ(The Hive)」——各勢力が脆い同盟を結びながらこの共通の敵に立ち向かうというナラティブは、過去のHeroesファンにとって馴染み深いトーンで作られている。
さらに2026年、シリーズの生みの親であるジョン・ヴァン・カネガム(Jon Van Caneghem)氏がクリエイティブアドバイザーとして参加することが発表された。Might and Magic、そしてHeroesシリーズの「父」が20年以上ぶりにこの世界に戻ってきた。この一事だけで「本物だ」という信頼感が高まる。
「10年待った続編がついに来る感覚。デモをやって確信した。あのHeroesのリズムが完全に戻ってきてる」
出典:Steam Community(Heroes of Might and Magic: Olden Era フォーラム)
ターン制ストラテジーというジャンル全体への期待感が高まる中、デッキ構築ローグライクで同様の「やめられない」中毒性を持つこちらも注目だ。

6勢力126種ユニット——圧倒的なビルドの自由度

早期アクセス開始時点で6勢力が揃っている。各勢力の個性をざっくり整理するとこうなる。
| 勢力名 | テーマ | 主な特徴 |
|---|---|---|
| Temple(テンプル) | 人間・騎士団 | バランス型。建設速度を上げるFaction Lawが強力 |
| Grove(グローヴ) | 自然・精霊 | ユニット能力のFocusコスト軽減が得意 |
| Dungeon(ダンジョン) | ダークエルフ・ドラゴン | アシェンドラゴン・ブラックドラゴンが最高峰の破壊力 |
| Necropolis(ネクロポリス) | アンデッド・ヴァンパイア | 死体活用と高耐久ユニット。HeroesIII直系の人気勢力 |
| Hive(ハイブ) | 悪魔的昆虫群体 | 今作の主要敵対勢力。群体戦術で展開 |
| Schism(スキズム) | カルト・異形存在 | エルドリッチ系の独特なユニット群 |
各勢力は7種類の基本ユニットを持ち、それぞれが2択のアップグレードパスを分岐する。6勢力×7種×3(基本+アップグレード2種)で計126種類のユニットタイプが存在する計算になる。さらに中立ユニットも加わり、同じ勢力を使ってもプレイスタイルがまったく変わるリプレイ性を生み出している。
特に注目したのがDungeonだ。序盤は弱い印象があるが、ブラックドラゴンにアップグレードするルートを辿り始めると、「資源を投資してドラゴンを育てる」というターン制ストラテジーの醍醐味を正面から体験できる。デモで10時間以上プレイしたGamesRadarのライターも「Dungeonの信者になってしまった。ストラテジーの古典が生まれつつあるのを目撃している気がする」と書いていた。
「Necropolisでプレイしてたけど、Dungeonに変えてからゲームの深さが全然違う。アップグレードの分岐で毎回違う軍構成になるのが楽しい」
出典:Steam Community(Heroes of Might and Magic: Olden Era ゲームプレイ討論)
ターン制RPGで「キャラ育成の分岐と選択の楽しさ」という観点では、2025年のTGA9冠タイトルも同じ喜びを持っている。

Faction Lawsシステムが生む「王国育成」の深み

Olden Eraで新たに追加されたFaction Lawsは、ゲームの骨格を変えうる重要な仕組みだ。簡単に言うと「自分の王国をどう強化するか」を選択するパーク研究ツリーだ。
仕組みをかみ砕くとこうなる。城の主要建造物から毎日「法ポイント(Law Points)」が貯まり、英雄がレベルアップするたびに追加で獲得できる。ポイントが一定量に達すると「法の印(Law Seal)」に変換され、これを消費してFaction Lawsを発動する。Lawsは段階的に解禁されるティア制で、強力な効果ほど先行投資が必要になる。
具体例として、Templeなら「1日に城の建造物を2回建設できる」というLaw、Groveなら「ユニット能力の発動に必要なFocusチャージを減らす」というLawが選択肢に並ぶ。同じ勢力を使っても、選択するLawsの組み合わせによってプレイスタイルが変わる。「高速展開して早期にマップを制圧するテンプル」にも「ゆっくり軍を育てながら強力なアンデッドで制圧するネクロポリス」にもなれる。
注意点として、Faction Lawsは最初に選んだ勢力のものだけが使える。他の勢力の城を占領してもLaw Pointsは得られるが、発動できるLawsは自勢力のものに限定される。この制約が「どの勢力で始めるか」の選択をより重要なものにしている。
Focusシステムと二段階の戦闘体験

戦闘フェーズで特に印象に残ったのが新規追加の「Focusシステム」だ。自軍のユニットが攻撃するか、敵の攻撃を受けるたびにFocusポイントが1つ貯まり、6ポイント貯まると「Focusチャージ」1個が得られる。このチャージを消費して、ユニットや英雄の特殊能力を発動できる。
このシステムの面白さは「被ダメージもリソースになる」という設計にある。攻め続ければ攻撃でFocusを稼げるし、敵の大軍に囲まれて一方的に殴られても、その分だけ特殊能力を発動できる充電が溜まっていく。「劣勢でも逆転の目が残る」設計は、HeroesIIIの「数で負けていても英雄のスペルで逆転」という体験を現代的にアップデートしたものだと感じた。
六角グリッドへの回帰もファンにとって大きなポイントだ。HeroesIVとVは矩形グリッドを採用して「なんか違う」という感覚を生んでいたが、IIIで慣れ親しんだ六角形に戻ることで移動と包囲の計算がより直感的になっている。
英雄の成長は「Might型(戦闘特化)」と「Magic型(魔法特化)」の二クラスに大別される。MightヒーローはレベルアップでAttack/Defenceが上がりやすく、Magicヒーローは魔力(Spellpower)と知識(Knowledge)が上がりやすい設計だ。スキルはBasic→Advanced→Expertの三段階で成長し、各勢力固有のFaction Skillも組み合わさって、100人以上存在するユニークな英雄をどう育てるかが長期的な楽しみになる。
「デモで5回キャンペーンに失敗してたけど、アリーナモードで戦闘の仕組みをちゃんと理解したら急に勝てるようになった。アリーナって練習モードじゃなくて、このゲームの戦闘の奥深さを体感するためのモードだと気づいた」
出典:GamesRadar(Heroes of Might and Magic: Olden Era アリーナモード記事)
「英雄と仲間が成長し、強大な敵に立ち向かう」というファンタジーRPGの文法を共有するゲームとして、こちらも並べて紹介したい。
デモが証明したコミュニティとの対話姿勢

Olden Eraのデモ版は単なるプロモーションツールではなかった。Steam Next Fest 2025年10月に公開されたデモはSteamDB史上最高クラスの成績を収め、同時接続ピーク2万4000人、2000件以上のレビューで77%ポジティブという数字を叩き出した。Steam全体で「デモ歴代16位の同時接続者数」という記録は、30年前のシリーズがいかに根強いファン層を保持していたかを示している。
さらに印象的だったのがUnfrozenの対応速度だ。デモ公開後、プレイヤーから「マップ移動がマウスカーソルを端に置いても動かない」「城壁建設のUIが使いづらい」という具体的な意見が出ると、開発チームがデモのアップデートを繰り返し配信してフィードバックを反映し続けた。GamesRadarが取材で聞いたCEOの言葉が印象的だ——「私たちの哲学はトランスペアレンシー(透明性)だ。プレイヤーが何を求めているかを理解してから製品を出す」。
デモで200時間以上プレイしたプレイヤーが出るほど、ランダムマップ生成による「無限のリプレイ性」も評価が高かった。キャンペーン、スタンドアロンシナリオ、フリープレイのランダムマップの3モードが早期アクセス初日から遊べる設計は、「コンテンツが薄い早期アクセス」の批判を事前に潰しにいく姿勢だと感じた。
正直に書く——気になる点と早期アクセスの課題

ポジティブな面ばかりではなく、懸念点も正直に書いておく。
まずアートスタイルへの賛否がある。Steamコミュニティでは「カラフルすぎる、iPadゲームみたい」「ユニットのデザインが子供向けに見える」という声が一定数ある。HeroesIIIの重厚な雰囲気が好きだったプレイヤーには、現代的に明るくなったアートが馴染まない可能性はある。ただ、ゲームプレイの深さに慣れてくると気にならなくなる人が多いのも事実で、アートへの否定的な声は少数派に留まっている。
「最初はビジュアルが受け付けなかったけど、実際にプレイしたら全部忘れた。戦闘に入ると画面の情報量が多すぎてアートなんて気にしてる余裕がない」
出典:Steam Community(Heroes of Might and Magic: Olden Era Gameplay Discussions)
次に難易度バランスの調整中という課題だ。特に高難易度設定では「125%難易度でNecropolisを使ってもAIが2倍の軍勢を持っている」というバランス崩壊の報告がある。早期アクセスの範囲内での調整を約束しているが、現時点では高難易度プレイには試行錯誤が必要だ。
また、Ubisoftとの協力関係については一部プレイヤーが懸念を示している。過去のシリーズ迷走がUbisoftの関与時代と重なるためだ。ただし、Unfrozenは「開発の創造的決定権はこちらにある。Ubisoftはプロジェクトを把握しているが、介入はほとんどない」と明言しており、実質的な開発主体はUnfrozen+Hooded Horseという体制だ。Hooded Horseはここ数年で『Manor Lords』『Terra Nil』など質の高いストラテジーゲームのパブリッシャーとして実績を積んでおり、そのブランド価値が「信頼できる仕上がりになる」という期待を支えている。
早期アクセス期間は約1年の予定。開発チームは「プレイヤーのフィードバック次第で変動する」とも言っており、コミュニティと共に作り上げていく姿勢を続けていく方針だ。
マルチプレイとアリーナモード——一人でも、友人とも

ソロだけでなくマルチプレイも初日から対応している点は重要だ。最大8人プレイに対応し、マッチメイキング・ランク戦・リーダーボードの3種のマルチ機能が用意されている。HeroesIIIのマルチプレイが「夜を徹して友人と戦う」体験として語り継がれているように、Olden Eraも「友人と対戦する長時間コンテンツ」として機能することを意識した設計だ。
特にアリーナモードは単なるマルチプレイ用練習場以上の意味を持つ。自軍を編成して戦闘に挑む独立したゲームモードとして機能し、キャンペーンとはまた異なる「純粋な戦術の研磨」ができる。前述のGamesRadarのライターも「アリーナモードで5回失敗したキャンペーンをクリアするためのコツを習得した」と書いており、各モードが有機的に繋がっている。
また、マップエディターも早期アクセス初日から開放されている。コミュニティ製のシナリオが蓄積されていけば、Steam Workshopを通じた長期的なコンテンツ供給が期待できる。HeroesIIIが2025年の現在もSteamで5万円超のコレクターズエディションが売れ続けている事実が示す通り、このシリーズのコミュニティは粘り強い。
「友人と8人で遊んだ。全員でネクロポリスを選んでアンデッドの大軍で戦争するというコントみたいなことをした。それが最高に楽しかった」
出典:Steam Community(Heroes of Might and Magic: Olden Era ゲームプレイ討論)
「複数プレイヤーで戦略を競う」という体験の文脈では、同じく早期アクセスから成長してきた生存競争型サバイバルも根強い人気を持っている。

基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | Heroes of Might and Magic: Olden Era |
| 開発 | Unfrozen Studio |
| 発売・共同パブリッシャー | Hooded Horse / Ubisoft |
| ジャンル | ターン制ストラテジー |
| 早期アクセス開始 | 2026年4月30日 |
| 対応プラットフォーム | PC(Steam)/ Microsoft Store / Xbox Game Pass(PC) |
| プレイ人数 | ソロ~最大8人マルチプレイ |
| 勢力数 | 6勢力(Temple / Grove / Dungeon / Necropolis / Hive / Schism) |
| ユニット数 | 基本42種+アップグレード含む126種類(+中立ユニット) |
| 対応言語(ゲーム内) | 英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ロシア語等(日本語未確認) |
| Steamウィッシュリスト | 約200万件(2026年4月時点) |
まとめ——30年越しの答えがここにある

HeroesIIIが1999年にリリースされてから27年。シリーズは迷走し、ファンは長い間「あの感覚」を取り戻せずにいた。その答えとして、Unfrozenがシリーズへの深いリスペクトを持ちながら作り上げたOlden Eraは、今のところ「正しい方向に進んでいる」と感じさせてくれている。
デモだけで200万ウィッシュリスト、SteamDB歴代最高クラスのデモパフォーマンス、そしてジョン・ヴァン・カネガムの復帰——数字と名前だけ並べても、この作品への期待の大きさは伝わってくるはずだ。
アートスタイルへの賛否、高難易度バランスの調整中、早期アクセスゆえのコンテンツの不完全さ——そういった課題が残っていることも正直に書いた。それでも、Unfrozenがデモの段階からコミュニティの声に真剣に向き合い、素早く改善を続けてきた姿勢は本物だと思っている。早期アクセス期間1年をかけて磨かれた先に、どんな完成形が待っているか——あのHeroesIIIのような「夜を無駄にする名作」になる可能性を、今のOlden Eraは十分に秘めている。
4月30日、「あと1ターンだけ」の戦争が始まる。


