ABYSS X ZERO ── 2人のインディー開発者が、3Dメトロイドヴァニアに挑む
「UNSIGHTEDを作った人たちの次作……3D?!」
2024年3月6日、そのツイートを見たとき、思わず二度見した。ブラジルの2人組スタジオ・Studio Pixel Punkが新作「ABYSS X ZERO」を発表。前作は2Dメトロイドヴァニアで、メタクリティック88〜90点を叩き出した実力派。その彼女たちが次はフル3Dのメトロイドヴァニアに挑むという。
ローポリゴンで描かれた巨大ダンジョン。バイクで爆走するボス追跡戦。「コードネームA」と「コードネームZ」という互いに戦う運命を持つ2人の主人公。Mega Man LegendsとゼルダWind Wakerと Shadow of the Colossus を混ぜたような、あの画面をみたとき「あ、これ絶対やばいやつだ」と確信した。
Steamウィッシュリストは発表直後から急増し、現在10万件超。YouTubeトレーラー累計再生数50万回超。2人のインディー開発者が作っているとは思えないスケール感のゲームが、今静かに(でも着実に)開発されている。
この記事では、ABYSS X ZEROの魅力を深掘りしていく。開発スタジオの系譜、2Dから3Dへの挑戦の背景、ゲームプレイの特徴、そして世界中のゲーマーが期待している理由まで。まだウィッシュリスト未登録の人にも、「これは登録しておかないと後悔する」と思ってもらえるくらい丁寧に書きたい。
公式ゲームプレイトレーラー(Future of Play 2024)
このボス戦のスケール感が全てを語っている。2人のチームが作ったとは到底思えない
こんな人に読んでほしい

- UNSIGHTEDが好きだった人 ── 同じスタジオの次作。3Dになってもそのエッセンスは健在
- Mega Man Legends(ロックマンDASH)が好きだった人 ── あの空白を24年間埋めてくれるかもしれない1本
- メトロイドヴァニアジャンルが好きな人 ── 3D進化系の最注目タイトル
- ローポリゴン・PS1美学が好きな人 ── N64/PS1時代のノスタルジーを現代で体験できる
- インディーゲームの熱量が好きな人 ── 2人で作っているという事実が、プレイ体験に深みを加える
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | ABYSS X ZERO |
| ジャンル | 3Dメトロイドヴァニア / アクションアドベンチャー |
| 開発・パブリッシャー | Studio Pixel Punk(ブラジル・2人組インディースタジオ) |
| 対応プラットフォーム | PC(Steam)確定、コンソール版は未発表 |
| 発売日 | 未定(開発中) |
| 価格 | 未発表 |
| 対応言語 | 英語ほか8言語(日本語含む可能性あり) |
| Steamページ | ABYSS X ZERO on Steam |
| 発表日 | 2024年3月6日 |
ABYSS X ZEROとはどんなゲームか
一言で言うなら、「PS1/N64時代の3Dアクションゲームへの深い愛情を、現代のメトロイドヴァニア設計思想で再構築した作品」だ。
ゲームの舞台は広大な3Dの世界。プレイヤーは「コードネームA」と「コードネームZ」という2人の伝説的ヒロインを操作する。2人はそれぞれ独自の戦闘スタイルと探索能力を持ち、最終的には互いに戦う運命を背負っている。
ジャンルとしては「メトロイドヴァニア」に分類されるが、その3D表現は非常に個性的だ。ローポリゴン(低ポリゴン数)で構成されたキャラクターとステージが、N64やPS1時代のゲームを遊んだことがある人なら懐かしさを感じる質感を持っている。しかしそれは単なる懐古趣味ではない。カスタムシェーダーと精密なアニメーションによって、「レトロ美学をまとった現代のゲーム」として仕上げられている。
探索の手触りはゼルダシリーズから、ボス戦のスケール感はShadow of the Colossus から、ビジュアルと世界観はMega Man Legends(ロックマンDASH)から。それら90年代〜2000年代の名作が持つ「あの感触」を全部ひとつの体験として詰め込もうとしているのが、ABYSS X ZEROという作品だ。
開発者のTiani Pixelはこう語っている。
「UNSIGHTEDにはすでにフェイク3D物理システムが組み込まれていた。垂直性とプラットフォーミングが好きだったから。でもずっと2Dの制約を感じていた。3D化することで、前作では実現できなかったゲームプレイのアイデアを全て形にできる」
— Tiani Pixel(Studio Pixel Punk)
UNSIGHTED で培った「狭い制約の中で深みを作る」技術を、今度は3Dという広大なキャンバスで発揮しようとしている。その野心が、10万件超のSteamウィッシュリストという数字に表れている。
Studio Pixel Punk ── 2人のブラジル人開発者が作り上げた系譜

ABYSS X ZEROを語るうえで、開発スタジオ「Studio Pixel Punk」の背景を知っておくことは欠かせない。このスタジオは、ブラジル出身のトランスジェンダー女性2人によって2017年に設立された。
- Tiani Pixel:プログラマー・レベルデザイナー・アーティスト担当
- Fernanda Dias:デザイナー・プログラマー・ライター・作曲家担当
2人がこの規模のゲームを作っているという事実は、何度聞いても驚く。大手スタジオなら数十人から数百人がかかるようなクオリティのゲームを、ほぼ2人で設計・実装・アート・音楽まで手がけている。
前作「UNSIGHTED」── インディー界に衝撃を与えた2021年の怪作
Studio Pixel Punkのデビュー作「UNSIGHTED」(2021年9月30日リリース、Humble Games発売)は、当時のインディーゲーム界に大きな衝撃を与えた。
ゲームの核心にあるのは「時間制限」システム。プレイヤーだけでなくNPC全員にカウントダウンが設定されており、時間切れになると「unsighted(意識を失った)」状態になって消滅してしまう。誰を救い、誰を見捨てるか——そういう重い選択をプレイヤーに突きつけ続ける、独特のナラティブ体験を生み出した。
その結果として叩き出したメタクリティックスコアは、
- Xbox One版:90点
- Nintendo Switch版:88点
- PC版:84点
Kotakuは「2021年最高のメトロイドヴァニア」と評し、Steamでは「圧倒的に好評」を獲得。2018年のブラジル・インディーゲームフェスティバル(BIG Festival)ではノミネートも経験していた。
UNSIGHTEDが証明したのは、「2人の小さなスタジオでも、大手が作る作品と同等かそれ以上の体験を届けられる」という事実だ。この実績があるからこそ、ABYSS X ZEROへの期待値は異常に高い。
「I LOVED unsighted and this is instantly one of my most anticipated games.」(UNSIGHTEDが大好きだったから、これは即座に最も楽しみなゲームのひとつになった)
— あるゲーマーの声(NoisyPixel記事より)
UNSIGHTEDのファンたちがABYSS X ZEROに飛びついたのは、まさにこういう理由だ。「あの2人が作る次作」という信頼が、数字としてウィッシュリスト10万件に結晶している。
2Dから3Dへ ── なぜこの挑戦を選んだのか
インディー開発者にとって、2Dから3Dへの移行は大きなリスクを伴う。開発工数は跳ね上がり、技術的な課題も増える。にもかかわらず、Tiani PixelがABYSS X ZEROを3Dで作ることを選んだ理由は明確だ。
UNSIGHTEDを開発していた段階から、彼女は「2Dの制約」を強く意識していた。前作にも「フェイク3D物理システム」を組み込んでいたほど、垂直方向の動きやプラットフォーミングへの強いこだわりがあった。2Dという枠では表現しきれないゲームプレイのアイデアが、開発中ずっと頭の中に蓄積されていたのだ。
3Dにすることで何が変わるか。ダンジョンが真の立体空間になり、ボスが本当に「巨大」に感じられ、キャラクターの動きが3次元で表現できるようになる。Shadow of the Colossusのような「ボスによじ登って攻撃する」体験も、3Dがなければ成立しない。
Steam コミュニティのあるユーザーは、トレーラーを見た後にこう表現している。
「a natural progression from 2D to 3D」(2Dから3Dへの自然な進化)
— Ruruko(Steam Community、2024年11月)
スピナー、グラップリングフック、前作と共通の効果音を持つロボット敵——UNSIGHTEDを知っているプレイヤーが映像の中に「あ、あれだ」と気づける要素が散りばめられているのも、この進化の連続性を示している。
ゲームプレイの全貌 ── 3つの柱で読み解く
ABYSS X ZEROのゲームプレイは大きく3つの要素で成り立っている。探索・戦闘・ボス戦だ。それぞれが独立した体験ではなく、有機的につながって「メトロイドヴァニア」としての奥行きを作っている。
探索 ── ゼルダ的ダンジョンと広大な3D世界
探索の設計思想は「ゼルダの伝説」シリーズから強く影響を受けている。ただし「ゼルダのコピー」ではない。ゼルダが持つ「精密に設計されたダンジョンの中でパズルとプラットフォーミングを解きながら進む」という体験の芯の部分を、メトロイドヴァニアのマップ構造と組み合わせている。
公開されているトレーラーや開発者の言葉から読み取れる探索要素は以下のとおり:
- 精密に設計された大規模ダンジョン:単なる迷路ではなく、仕掛けと謎解きが組み込まれた構造
- 立体的なプラットフォーミング:3Dならではの高低差・奥行きを活かしたジャンプアクション
- グラップリングフックなどの移動アビリティ:前作UNSIGHTEDの要素を3Dに昇華
- 2キャラクターの能力の使い分け:コードネームAとZの異なる探索アビリティが、同じダンジョンに異なるアプローチをもたらす
GamesRadarの記者が「私の最も期待しているメトロイドヴァニア」と明言しているのも、この探索設計への期待が大きい。3Dゼルダ的なダンジョンをメトロイドヴァニアの文脈で遊ぶ体験は、現時点でほかにない。
戦闘 ── スタイリッシュで精密なアクション
戦闘システムは「攻撃・ブロック・回避・パリー」の4要素を精密なタイミングで組み合わせるスタイル。ソウルライク的な緊張感とスタイリッシュアクション的な爽快感を両立させようとしている。
武器のバリエーションも公開映像から確認できる:
- 銃(遠距離攻撃)
- 剣・カタナ
- 巨大ハンマー
- 両端スキュース(両刃の大鎌のような武器)
敵の種類も多様で、ロボット系・人型・ゾンビ化した敵などが確認されている。戦闘中の動きはアニメ的に誇張されており、Kill la Kill を連想させるという声もある。重たさより疾走感を優先したスタイルのようだ。
また、装備システムには攻撃力・防御・HP・スタミナ・各種耐性などのステータスが紐づいており、RPG的な成長要素もある。さらに開発チームは「ステータスとコスメティックの分離」も検討中とのことで、見た目を犠牲にせずに強くなれる仕組みが実装される可能性がある。
ボス戦 ── Shadow of the Colossi 級のスケール
公開トレーラーで最も話題を集めたのが、ボス戦の規模感だ。
画面いっぱいを埋め尽くす巨体ボス。バイクに乗ったまま都市サイズの機械装置から逃げながら戦うシーン。複数の目を持つ巨大な敵。こうした映像を見て多くの人が「Shadow of the Colossus だ」と感じたのは自然な反応だった。
実際、開発チームもShadow of the Colossusからの影響を認めており、巨大ボスに「直接乗り込んで近接攻撃で倒す」アプローチを採用している。ダンジョン探索でじっくり積み上げた緊張感が、このスケールのボス戦で一気に解放される設計になっているようだ。
RPGFanはこのゲームプレイトレーラーを見てこう書いた:
「ABYSS X ZERO May Scratch That 24-Year Mega Man Legends Itch」(ABYSS X ZEROは、24年間続くロックマンDASHへの渇望を満たしてくれるかもしれない)
— RPGFan(2024年6月)
ロックマンDASH3の開発中止から2024年でちょうど13年(シリーズとしては24年以上)。そのジャンルの空白を埋める存在として、ABYSS X ZEROへの期待を語るメディアは複数ある。
ビジュアルとアートスタイル ── ローポリゴンが生む「あの感触」
ABYSS X ZEROのビジュアルについて語るとき、「ローポリゴン」というキーワードは避けられない。しかしこれは「予算不足でポリゴン数を削った」という話では全くない。意図的・美学的な選択だ。
インスピレーション源として開発者が明言しているのは:
- Mega Man Legends(ロックマンDASH):チャンキーなアートスタイルと大きなアニメ顔、ブロック状のピクセルテクスチャが3Dアクション戦闘と融合したあの質感
- ゼルダの伝説 風のタクト:セルシェーディング的な表現とカートゥーン的な誇張が生む、リアルではないが確かに「生きている」感じ
- Shadow of the Colossus:壮大なスケール感と、広大な風景の中に置かれた小さなキャラクターの対比
これらのビジュアルが持つ共通点は「プレイヤーの想像力を補完させる余白」だ。全てをリアルに描写しないからこそ、プレイヤーが「きっとこんな世界なんだ」と自分なりに補完して没入する。ABYSS X ZEROのローポリ美学は、まさにその「余白」を狙っている。
技術的な側面では、カスタムシェーダーによる独特の発色と、精密にアニメートされたキャラクターの動きが、単なるレトロ回帰ではない現代的な質感を生み出している。Switch版UNSIGHTEDで88点を取ったスタジオが「ちゃんと現代に通用する品質で」作り込んでいることは、過去の実績から信頼できる。
NoisyPixelのコメント欄にいた読者・Nersiusは、このビジュアルについてこう書いている。
「PS1/N64ノスタルジーへの共感。Megaman Legends 3復活への期待と重なる」
— Nersius(NoisyPixel コメント欄)
ローポリ3Dゲームへの渇望は、世界中のゲーマーの中にずっと眠っていた。ABYSS X ZEROはその感触を、2024年の技術で蘇らせようとしている。
2人の主人公 ── コードネームAとコードネームZ

ABYSS X ZEROの物語は、「コードネームA」と「コードネームZ」という2人の伝説的ヒロインを軸に展開する。
2人はどちらも「伝説の英雄」として描かれるが、その戦闘スタイルと探索アプローチは異なる。そして最終的には互いに戦う運命を持っている——この「宿命の対決」という構造が、物語に縦糸として通っている。
公開映像で確認できる両者の印象:
- コードネームA:ボディスーツと先進的な武器の組み合わせ。メカニカルで攻撃的なスタイル
- コードネームZ:セーラー服とカタナ、あるいはビジネス服と刀という組み合わせ。近接戦闘主体の印象
2人を別々にプレイすることで、同じ世界を異なる視点から体験できる設計になっているようだ。各キャラクターのルートをクリアして初めてストーリーの全貌が見えてくる——そういう構造が示唆されている。
Steamコミュニティのあるユーザーはこう書いている。
「The action and the yuri sold me on this game.(アクションと百合要素で即決した)こういうゲームはレア(such games are rare)」
— Ruruko(Steam Community、2024年11月)
2人のヒロインの関係性に注目している層も多く、ストーリー面での期待も高い。UNSIGHTEDが「クィアなハック&スラッシュ」として語られていたことを考えると、ABYSS X ZEROでも多様性への意識が作品に反映される可能性は高い。
深すぎるカスタマイズ ── 衣装もステータスも自分流に
2024年5月に公開された開発映像で、ゲームコミュニティが大いに盛り上がった要素がある。それがキャラクターカスタマイズシステムだ。
単に「衣装を変える」だけではない。装備している服装のパーツごとに色を個別設定できる。ネクタイの色、ジャケットの色、シャツの色——それぞれ別々に調整可能という細かさだ。
公開映像には「メタルアーマー、スクールスカート、スタイリッシュなエドナ・モードボブ」などのコスメティックオプションが映っており、ファッション的な遊び心も十分に感じられる。
さらに開発チームは「ステータスとコスメティックの分離」を検討中と明言している。現状では装備にステータスが紐づいているが、これが実装されれば「見た目は好きなものを着て、強さは別で管理する」ことができるようになる。外見より性能を優先せざるを得ないRPGのジレンマが解消される可能性がある。
GamesRadarはこの映像を受けて:
「My most anticipated Metroidvania gets even cooler with extremely in-depth customization for the killer anime girls exploring 3D Zelda-like dungeons」(私の最も期待しているメトロイドヴァニアが、3Dゼルダ的ダンジョンを探索するかっこいいアニメ少女たちの超詳細なカスタマイズでさらにクールになった)
— GamesRadar(2024年5月)
「already my most anticipated」(すでに最も楽しみ)という言葉が記事タイトルに入るほどの熱量。カスタマイズシステムの公開がさらに期待値を上げた。
開発の現在地 ── 2人で毎日作り続けている
ABYSS X ZEROの発売日は、2026年4月現在もまだ未定だ。「まだ開発の初期段階で、あと数年かかる可能性がある」と開発者自身が述べている。
ただし「開発が止まっている」わけでは全くない。Tiani PixelはSteamのコミュニティに対してこう述べた:
「発表以来、毎日開発を続けている。Steam上では更新が少なかったかもしれないが、YouTube・Bluesky・X・TikTokでは定期的に開発の進捗を共有している」
— Studio Pixel Punk(Steam Community)
2024年7月には、ブラジルのゲームイベント「Festival Jogatório 2024」への出展が決まり、初めてのプレイアブル展示が行われた(SESC会場、入場無料)。初めて実際に触れられる形で公開されたのは、開発が着実に進んでいる証拠だ。
パブリッシャーについては、現時点では自社パブリッシュを検討中。Tiani Pixelはこの判断についても正直に語っている。
「多くのパブリッシャーと話しているが、自社パブリッシュも高く検討している。ただ自社パブリッシュはリスクも大きい。まだ何も確約できない」
— Tiani Pixel(NoisyPixel インタビュー)
コンソール版については「まだ非常に初期段階で、コミュニティのサポートが十分あれば展開したい」というスタンス。PC(Steam)が最初のターゲットだが、Steam Deckの最適化も進めているとのことで、ポータブルでの体験も想定されている。
トレーラーの質についても、開発者は正直だ。あるSteamユーザーから「トレーラーがゲームをうまく売れていない」と指摘された際、Tiani Pixelは率直にこう返した:
「今のトレーラーはほとんどプロトタイプ映像で、1日以内に急いで作ったもの。期待を超えて10万件のウィッシュリストに達したのは予想外だった。パブリッシャーが決まり、カットシーン・ボイス演技・公開できるエリアが増えたら、ちゃんとしたトレーラーを作る。”サプライズ”も取ってある」
— Tiani(開発者、Steam Community、2024年11月)
このオープンな姿勢こそが、コミュニティからの信頼を生んでいる。「開発者が正直に話してくれる」という安心感が、長い待ち時間を支えている。
なぜ今これほど注目されているのか ── 4つの理由

Steam10万件ウィッシュリスト、YouTube50万再生——これだけの数字を、まだリリースもされていない2人チームのゲームが叩き出している。なぜか。理由を整理してみる。
理由1:「3Dメトロイドヴァニア」というジャンルの空白
メトロイドヴァニアというジャンルは2010年代以降に大爆発したが、その多くは2Dだ。Hollow Knight、Ori、Blasphemous、Dead Cells——名作揃いだが全て2Dサイドビュー。3Dのメトロイドヴァニアはメトロイドプライムシリーズ程度しかなく、インディー規模では事実上の空白地帯だった。
ABYSS X ZEROはその空白に正面から飛び込んでいる。「3Dメトロイドヴァニアを作りたいが誰も作っていない」という欲求不満を持つゲーマーが世界中にいて、そこに刺さった。
理由2:ロックマンDASH(Mega Man Legends)の24年間の渇望
ロックマンDASHは1997年にPS1でリリースされ、その独特の世界観と3Dアクションで多くのファンを獲得した。しかし続編「ロックマンDASH3」は2011年に開発中止が発表され、以来そのジャンルを埋める作品は現れていない。
ABYSS X ZEROはビジュアルも雰囲気も、あの「チャンキーなローポリゴン3Dアクション」に最も近い現行タイトルだ。RPGFanが「24年間の渇望を満たしてくれるかもしれない」と書いたのは誇張ではない。
理由3:UNSIGHTEDが証明したスタジオの実力
「2人のインディー」という肩書きは、本来リスク要因になりうる。しかしStudio Pixel Punkには前作の実績がある。メタクリティック90点、Kotaku「2021年最高のメトロイドヴァニア」——これだけの数字を出したスタジオが作る次作なら、という信頼がある。
「UNSIGHTEDが好きだった人が即ウィッシュリストに入れる」構造が成立しているのは、この実績の蓄積があるからだ。
理由4:開発者の透明性とコミュニティへの誠実さ
「Gamescomのトレーラーは約10万ドルかかる。我々には絶対払えない」——Tiani Pixelがそう言いながら、自分で作ったゲームプレイ動画をTwitterに投稿した場面は多くの人に刺さった。
大手パブリッシャーの潤沢なマーケティング予算もなく、2人で毎日作り続けている。その誠実な姿勢が、「このゲームが出たら絶対買う」という熱量に変換されている。Steamウィッシュリスト10万件は、単なる興味関心ではなく「応援の意思表示」でもある。
プレイヤーたちの声
世界中のゲーマーがABYSS X ZEROについてどう語っているか。実際の声を見ていこう。
「Woooah this looks certified sick as hell™️」(これはガチでヤバいくらいカッコいい)
— @DragonSlayer2189(FandomWire記事コメント)
このコメントはABYSS X ZEROのビジュアルへの第一印象を端的に表している。「sick as hell」という表現は英語圏スラングで「ガチでヤバいくらいカッコいい」という最大級の賛辞だ。
「I LOVED unsighted and this is instantly one of my most anticipated games.」(UNSIGHTEDが大好きだったから、これは即座に最も楽しみなゲームのひとつになった)
— ゲームメディアコメント欄より
UNSIGHTEDからの継続ファンがそのままABYSS X ZEROへ流れ込んでいる。前作の実績が次作への橋渡しとして機能している典型的なケースだ。
「a natural progression from 2D to 3D」(2Dから3Dへの自然な進化)。スピナー、グラップリングフック、前作と似た効果音のロボット敵——UNSIGHTEDを知っている人には「あ、あれだ」という瞬間が何度もある
— Ruruko(Steam Community、2024年11月)
前作を遊んでいたファンが、映像の細部に「連続性」を見つけている。スタジオのDNAが確かに引き継がれているという確認作業が、コミュニティ内で自然に行われている。
「Release date?」(発売日いつ?)
— Steam Communityで最も多くのコメント(23件)を集めたスレッド
発売日への渇望が最も多くの反応を集めているのは、裏を返せば「それだけ待ちきれない人が多い」ということだ。良い意味での「早く出してくれ」という声。これもまた期待の形だ。
似たゲームも遊んでみよう
ABYSS X ZEROの発売を待ちながら、メトロイドヴァニアや探索アクションの渇きを満たしてくれる作品をいくつか紹介する。UNSIGHTEDや本作に興味を持った人なら、きっと刺さるはずだ。
まず同じ「長年待望されているメトロイドヴァニア」という文脈で語られる1本。Team Cherryが開発中の続編で、ABYSS X ZEROと並んでジャンルファンが最も待ち望んでいる作品のひとつだ。

アニメ的なビジュアルと高速アクションが好きな人には、こちらも候補に入れてほしい。スタイリッシュなアクションとキャラクター表現がABYSS X ZEROの好みと重なる層に刺さる。

ローポリゴンやレトロ3D美学ではなく、重厚なアクションと探索の組み合わせが好きな人向けに。ABYSS X ZEROの「精密な戦闘とボス戦」部分が刺さった人ならこちらも楽しめるはずだ。

まとめ ── 待つ価値があるゲームがある
ABYSS X ZEROは、まだ発売されていない。発売日もわからない。「あと数年かかるかもしれない」と開発者自身が言っている。
それでも、Steamウィッシュリストには10万件超の登録がある。YouTubeトレーラーは50万回以上再生された。世界中のゲームメディアが「最も期待しているインディーゲーム」として名前を挙げている。
なぜか。答えは単純だ。
「これを作れる人たちが、確かに存在する」という信頼があるから。
UNSIGHTEDで世界に証明したStudio Pixel Punkの2人が、全力で取り組んでいる。ローポリゴンで3Dメトロイドヴァニアを作るという夢を、毎日コードを書いて形にしようとしている。Gamescomのトレーラーが作れなくても、自分たちで動画を作ってコミュニティに届ける。トレーラーへの批判には、正直に「プロトタイプだった」と返す。
ゲームの完成を待つ時間は、そのプロセス自体が体験になっている。Steamのウィッシュリストボタンを押すことは、今やこの2人への「応援の意思表示」だ。
発売されたら、絶対に触れてほしい1本だ。
(情報更新:2026年4月現在。発売日・価格等は公式発表をご確認ください)
ABYSS X ZERO
| 価格 | 基本無料 |
|---|---|
| 開発 | Studio Pixel Punk |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows |
| プレイ形式 | シングル |