モトクロスの「本物」を求めるなら、このゲームしかない

スロットルを開けた瞬間、リアタイヤが泥を巻き上げて横に流れる。体重移動でフロントを押さえ込みながら、コーナーの轍に沿ってバイクを寝かせていく。ジャンプの踏み切りでハンドルを引き、空中でウィップをかけて着地に備える。MX Bikesは、こうした一連の動作すべてをプレイヤーの手に委ねてくるモトクロスシミュレーターだ。
「バイクゲーム」というジャンルには、爽快にコースを駆け抜けるアーケード寄りのタイトルから、実在のレースを再現するライセンス系まで幅広い選択肢がある。でもMX Bikesが目指しているのは、そのどちらとも違う場所だ。イタリアの開発者PiBoSoが独自に構築した物理エンジンをベースに、二輪車の挙動をとことん突き詰めた「本物志向」のシミュレーター。Steamでの評価は全レビュー約24,000件のうち94%が好評という圧倒的な数字を叩き出している。
この記事では、MX Bikesがどんなゲームなのか、なぜここまで熱狂的に支持されているのか、そして実際にプレイする前に知っておきたいことを徹底的に掘り下げていく。モトクロスが好きな人はもちろん、レースシミュレーションに興味がある人にもぜひ読んでほしい。
「MX Bikes」公式トレーラー
こんな人に読んでほしい
- モトクロスやオフロードバイクが好きで、リアルな操作感を求めている人
- レースシミュレーションの深みにハマりたい人
- Modで自分だけのコースやバイクを楽しみたい人
- VRでバイクに乗っている感覚を体験してみたい人
- 早期アクセスのゲームに手を出すか迷っている人
- MXGPシリーズやTrials Fusionとは違う、硬派なモトクロスゲームを探している人
モトクロスゲームの歴史とMX Bikesの立ち位置

MX Bikesを理解するために、まずモトクロスゲームというジャンルの歴史を簡単に振り返っておきたい。このゲームがなぜ生まれ、なぜ支持されているのかが見えてくるはずだ。
アーケード時代 ― Motocross Madnessの衝撃
PCにおけるモトクロスゲームの黎明期を語るうえで欠かせないのが、1998年にリリースされた「Motocross Madness」だ。Rainbow Studiosが開発したこのタイトルは、オープンワールド的な環境でバイクを走り回らせるという当時としては革新的なゲームプレイを実現し、ラグドール物理や派手なクラッシュ演出で多くのプレイヤーを熱狂させた。2000年には続編の「Motocross Madness 2」もリリースされ、モトクロスゲームというジャンルの可能性を広げた。
ただし、この時代のモトクロスゲームはあくまでアーケード寄りの設計だった。操作はシンプルで、物理演算も簡素化されていて、誰でもすぐに楽しめる反面、リアルなモトクロスの感覚とはかけ離れていた。それはそれで正しいゲームデザインだが、「本物のモトクロスをゲームで体験したい」というニーズには応えられていなかった。
ライセンス系の台頭 ― MXGPとSupercrossシリーズ
2000年代後半から2010年代にかけて、MilestoneのMXGPシリーズやMonster Energy Supercrossシリーズといった公式ライセンス系のタイトルが登場した。実在のライダー、コース、チームが再現され、キャリアモードやAIレーサーも完備。グラフィックも高品質で、モトクロスの世界を幅広く楽しめるゲームとして一定の支持を集めた。
しかし、これらのタイトルもシミュレーションとアーケードの中間を狙った設計で、物理エンジンの深さという点では「リアル」を求めるコア層を満足させるには至らなかった。ライダーの体重移動が省略されていたり、路面の変化が限定的だったりと、モトクロスの本質的な部分が単純化されていたのだ。
シミュレーター革命 ― MX SimulatorからMX Bikesへ
そうした流れの中で、2000年代中盤に登場したMX Simulatorは、モトクロスの物理演算を本格的に追求した最初のタイトルとして注目を集めた。ライダーの体重移動やクラッチワーク、路面の浸食システムなど、それまでのバイクゲームにはなかった要素を取り入れ、シミュレーターとしての地位を確立した。
そして2019年、PiBoSoがリリースしたMX Bikesが、このシミュレーター路線をさらに進化させることになる。自動車業界標準のタイヤモデル、シャーシフレックスシミュレーション、動的地形変形。これらの技術を一から構築した物理エンジンに統合し、「プロのトレーニングツールとしても使える」レベルの二輪シミュレーターを実現した。MX Bikesは、モトクロスゲームの歴史における一つの到達点と言っていい。
PiBoSoが生み出した「スクラッチビルド」の物理エンジン
MX Bikesを語るうえで絶対に外せないのが、PiBoSoが一から構築した独自の物理エンジンだ。Unreal EngineやUnityといった既存のゲームエンジンに乗っかるのではなく、二輪車の挙動を再現するためだけにゼロから設計されている。ここが他のバイクゲームとの最大の違いであり、このゲームのすべての魅力の起点になっている。
PiBoSoはMX Bikesだけでなく、ロードレースシミュレーターのGP Bikesも開発している。二輪車の物理シミュレーションに特化したスタジオであり、その技術的蓄積がMX Bikesにも惜しみなく注がれている。
自動車業界標準のタイヤモデル
MX Bikesのタイヤ挙動は、自動車業界で実際に使われているタイヤモデルをベースにしている。路面との摩擦、グリップの変化、スリップアングルといった要素が物理的に計算され、泥や砂、硬い路面ではタイヤの食いつき方がまったく変わってくる。モトクロスにおいてタイヤは地面との唯一の接点であり、そこの挙動がリアルかどうかで体験の質が根本から変わる。
たとえば、硬く締まった路面ではタイヤのエッジグリップが効きやすく、鋭いコーナリングができる。一方、柔らかい砂地ではタイヤが沈み込み、アクセルワークが荒いとリアが暴れて前に進まない。こうした路面ごとの特性の違いが、セッティングの奥深さにも直結している。
アクセルを開けすぎればリアタイヤが空転して前に進まないし、ブレーキングで荷重がフロントに移ればリアが浮く。フロントブレーキをかけながら急旋回すればフロントが切れ込んでハイサイドを起こすこともある。こうした当たり前の物理現象を、MX Bikesはごまかさずに再現している。
シャーシフレックスシミュレーション
バイクのフレームがしなる挙動まで再現しているのは、このジャンルではかなり珍しい。着地の衝撃でフレームがたわみ、それがサスペンションやハンドリングに影響を与える。コーナリング中にバイクがねじれる感覚が操作に反映されるため、「鉄の塊に乗っている」のではなく「しなやかな機械を操っている」という感覚になる。
実際のモトクロスバイクでも、フレーム剛性はライダーのパフォーマンスに直結する重要な要素だ。硬すぎるフレームは路面からの情報をライダーに伝えすぎて疲労を招き、柔らかすぎるフレームは高速域での安定性を損なう。MX Bikesではこうしたフレーム特性がバイクのセッティングに組み込まれていて、走り方に合わせた調整ができる。
beta20cではシャーシフレックスシミュレーションの修正が行われるなど、開発チームはこの部分を継続的にブラッシュアップしてくれている。
サスペンションの挙動
フロントフォークとリアショックの動きも詳細にシミュレートされている。スプリングレート、圧縮側ダンピング、伸び側ダンピングといったパラメータを個別に調整でき、ライダーの体重やコースの特性に合わせたセッティングが可能だ。
コミュニティでは、サスペンションのSAG(自重での沈み込み量)を30〜33%に設定するのが基本とされている。フロントは25〜30%程度。ここを起点にして、コースの路面状況やジャンプの大きさに合わせて微調整していくのがセッティングの基本的な流れだ。
セッティングを変えると走りのフィーリングが明確に変わるのが、このゲームの面白いところだ。ダンピングを硬くすればジャンプの着地が安定するが、荒れた路面で跳ねやすくなる。柔らかくすればギャップの吸収性は上がるが、高速コーナーでのふらつきが増す。こうしたトレードオフを理解しながらベストなセッティングを探る作業は、実際のレースチームが行っているのとまったく同じプロセスだ。
四輪のレーシングシミュレーターで言えば、Assetto CorsaやiRacingのように車両セッティングの奥深さを楽しめるタイトルと同じ立ち位置にある。

ライダーの体重移動
MX Bikesでは、バイクだけでなくライダーの体重移動も操作する必要がある。コーナーで内側に体を入れればバイクの重心が変わり、ジャンプ中に体を動かせば空中姿勢をコントロールできる。この「バイクとライダーが別々の物理オブジェクト」という設計が、他のバイクゲームにはない操作の深みを生んでいる。
実際のモトクロスでは、ライダーは常にバイクの上でアクティブに体を動かしている。コーナーではバイクを寝かせながら体は起こし、ストレートではバイクの中心に体重を乗せ、ジャンプの踏み切りではフロントを引き上げるために体を後ろに引く。こうしたテクニックのすべてがMX Bikesでは物理的に機能する。
ライダーを右に傾けるとバイクは実際に左に傾く。重心の移動がそのまま挙動に反映される仕組みだから、リアルなモトクロスの体重移動テクニックがそのまま使える
引用元:Steam コミュニティ ディスカッション
カウンターリーン(バイクと逆方向に体を傾ける技術)がゲーム内でもそのまま機能するというのは、シミュレーターとして相当なレベルだ。実際にモトクロスをやっている人が「現実で使っているテクニックがそのまま通用する」と評価しているのは、このゲームの物理エンジンがいかに正確かを物語っている。
座り・立ちのライディングポジション
MX Bikesでは、ライダーが座った状態と立った状態を切り替えることができ、それぞれで挙動が変化する。実際のモトクロスでは、プロライダーの大半の時間は「スタンディング(立ち乗り)」で過ごしている。立った状態のほうがバイクの重心に近い位置に体を置けるため、コントロール性が高まるからだ。
座るのはコーナーの進入から旋回のときだけ。サスペンションに荷重をかけてグリップを確保するために座り、コーナーを抜けたらすぐに立ち上がる。このリズムの切り替えがMX Bikesでも再現されていて、座り/立ちの使い分けがタイムに直結する。
ストレートでは立ち乗りで体の力を抜き、ブレーキングでは膝でバイクを挟んで体を安定させ、コーナー入り口で座って荷重をかけ、旋回後に加速しながら立ち上がる。この一連の流れを自然にできるようになったとき、MX Bikesは「ゲーム」ではなく「体験」になる。
動的に変化する路面 ― 走れば走るほど深くなる轍

モトクロスというスポーツの面白さの一つは、レースが進むにつれて路面コンディションが変化していくことだ。MX Bikesはその要素を「動的地形変形」というシステムで再現している。これは単なるビジュアルエフェクトではなく、実際にバイクの挙動に影響を与える物理的なシステムだ。
リアルタイムで変わるコース
バイクが通過するたびに路面に轍が刻まれていく。何周も走ると、コーナーの進入ラインには深い溝ができ、ジャンプの踏み切り部分は削られて形が変わる。ブレーキングゾーンにはバンプ(凸凹)ができ始め、最初は平坦だったストレートにも波打つようなギャップが生まれる。この変化はリアルタイムで計算されていて、プレイ中に目に見える形でコースが変化していくのを実感できる。
特にオンラインレースでは全プレイヤーの走行がコースに影響を与えるため、レース序盤と終盤ではまったく異なるコンディションでの走行を強いられる。序盤は皆が同じラインを走るため特定の箇所に深い轍ができ、終盤になるとその轍を避けて別のラインを使うライダーが出てくる。同じコースでも周回ごとにライン取りを変える必要が出てくるのは、実際のモトクロスレースそのものだ。
変形の度合いはセッティングで調整できるようになっていて、デフォーメーションマルチプライヤーというパラメータで強弱をコントロールできる。サーバー管理者がレースの長さやスタイルに合わせて調整できるのは、コミュニティ運営の観点から見てもありがたい設計だ。
轍の物理的影響
できた轍はただのビジュアルではなく、実際にバイクのハンドリングに影響を与える。深い轍に入ると、バイクはその溝に沿って自然に誘導される。轍の中ではステアリングが制限される代わりに安定感が増し、轍から外れようとするとハンドルが取られる。実際のモトクロスで「轍を使う」テクニックがそのまま適用できるのだ。
ただし、深すぎる轍が硬い地面のように振る舞ってしまうケースもあり、不自然な挙動が生じることがある。バニラ(デフォルト)のマップではこの問題は目立ちにくいが、一部のModマップでは顕著に感じることがあるかもしれない。開発チームもこの点は認識しており、継続的な改善が行われている。
ウェットコンディション
雨天シミュレーションも搭載されている。路面が濡れるとグリップが大きく変わり、泥がタイヤに絡みつく感覚が操作に反映される。ドライコンディションではエッジグリップが効くコーナーでも、ウェットになるとタイヤが滑り出すまでの閾値がぐっと下がる。
ドライとウェットで完全にセッティングを変える必要があるのも、シミュレーターらしいこだわりだ。サスペンションを柔らかめにしてトラクションを稼いだり、ライディングスタイルをよりスムーズなものに切り替えたりと、実際のモトクロスと同じアプローチが求められる。
四輪レースシミュレーターのDiRT Rallyがラリーの路面変化をリアルに再現しているように、MX Bikesはモトクロスの路面変化を忠実に表現している。レースゲームにおける路面のリアルさに興味がある人なら、DiRT Rallyもチェックしてみてほしい。

操作の奥深さ ― 上達すればするほど楽しくなる
MX Bikesの操作体系は、正直に言ってかなり複雑だ。最初の数時間はまともにコースを走ることすら難しいかもしれない。転倒につぐ転倒で心が折れそうになることもある。でも、だからこそ上達したときの喜びは格別で、Steamレビューでも「時間をかけるほど面白くなる」という声が圧倒的に多い。学習曲線の急さがこのゲーム最大のハードルであると同時に、最大の魅力でもある。
ゲームパッドでの操作
ゲームパッドでプレイする場合、スティックの感度設定が重要になる。MX Bikesは操作設定の項目がかなり細かく、デッドゾーン、リニアリティ、ダイレクトリーンといったパラメータを自分好みに調整できる。設定画面にはインプットビジュアライザーが用意されていて、スティックの入力がリアルタイムで可視化されるため、調整作業が直感的にできるようになっている。
各パラメータの意味を簡単に説明しておこう。デッドゾーンはスティックの中心付近の無反応領域で、スティックの遊びが大きいコントローラーでは少し広めに取るとよい。リニアリティはスティックの入力カーブを調整するもので、高くすると中心付近の入力がマイルドになり、微調整がしやすくなる。ダイレクトリーンはスティックを離したときにバイクが直立に戻る速度をコントロールするパラメータで、25前後から始めるのがコミュニティの定番だ。
コミュニティの定番アドバイスとしては、まずリニアリティを高めに設定すること。これにより低速での微調整がしやすくなり、初心者でもコーナリングの安定感が増す。慣れてきたら徐々に下げていくのが上達への近道だ。すべてのパラメータを一度に変えるのではなく、一つずつ変えて走行フィーリングの変化を確認するのが効率的だ。
ライダーリーンヘルプ
操作補助として「リーンヘルプ」という機能が用意されている。これをオンにしておくと、ライダーの体重移動がある程度自動で行われるため、最初はバイクの基本操作(アクセル、ブレーキ、ステアリング)だけに集中できる。バイクの挙動に慣れること、コースのライン取りを覚えることにまず注力できるのは、学習の段階として理にかなっている。
慣れてきたらリーンヘルプをオフにすることで、最大90度までの体重移動を自分でコントロールする本格的なプレイスタイルに移行できる。この切り替えのタイミングは人それぞれだが、コースを安定して完走できるようになったら挑戦してみるといい。操作の難しさは一気に上がるが、その分バイクとの一体感が劇的に向上する。
最初は何度も転倒して心が折れかけたけど、操作のコツをつかんでからは時間を忘れてプレイしてしまう。上達を実感できるゲームは最高だ
引用元:Steamレビュー
コーナリングテクニック
MX Bikesのコーナリングは、実際のモトクロスのコーナリングテクニックがそのまま適用できる。アプローチでは立ち乗りのままブレーキングして減速し、ターンインのタイミングで座って体重をフロントに乗せる。コーナーのエイペックス(頂点)では内側の足を前に出して(ゲーム内では自動)バランスを取り、加速しながら立ち上がっていく。
ハードパック(硬い路面)のコーナーでは、バイクを寝かせつつ体は外側に残すカウンターリーンが有効だ。一方、サンド(砂地)のコーナーではバイクをあまり寝かせずに、リアタイヤのトラクションを活かしてパワースライドで抜けていく走り方が速い。路面の種類によって走り方を変える必要があるのは、まさにリアルなモトクロスだ。
ジャンプテクニック ― ウィップとスクラブ
モトクロスの醍醐味であるトリックもMX Bikesでは再現されている。ジャンプ中にバイクを横に振る「ウィップ」や、踏み切り時にバイクを寝かせて低い軌道で飛ぶ「スクラブ」は、ライダーの体重移動とスロットル操作の組み合わせで実行する。
ウィップはジャンプの頂点付近でスティックを横に入力し、バイクを横に振ってから着地前に戻す。見た目のカッコよさだけでなく、横風のある状況での姿勢制御にも使えるテクニックだ。スクラブはより高度なテクニックで、踏み切りの直前にバイクを横に寝かせることで、ジャンプの高さを抑えて滞空時間を短縮する。プロのモトクロスレースで広く使われているテクニックで、タイムを削るためには必須のスキルだ。
beta20bではキックスタートシミュレーションやトリックアニメーションが追加され、ライダーの動きの見た目もさらにリアルになった。ライディングスタイルのサポートも導入され、ライダーごとに異なるフォームを設定できるようになっている。
これらのトリックは単なる演出ではなく、実際にタイムに影響する。スクラブを使えばジャンプの滞空時間を短縮してタイムを削れるし、ウィップの着地角度を間違えれば転倒する。この「リスクとリターン」のバランスが、何百時間もプレイし続けるモチベーションになっている。
クラッチワークとスタート
MX Bikesではクラッチの操作も再現されている。スタートダッシュではクラッチを繋ぐタイミングとアクセルの開け方が重要で、ここでミスすると出遅れてしまう。コーナーの立ち上がりでもクラッチを半繋ぎにしてパワーバンドを維持するテクニックが使える。
beta20bで追加されたキックスタートシミュレーションも面白い要素だ。転倒後にバイクを起こして、キックペダルでエンジンを再始動する。この「転倒からの復帰」というプロセスが物理的に再現されているのは、シミュレーターとしてのこだわりを感じる部分だ。
多彩なコースタイプ ― モトクロスだけじゃない

MX Bikesの名前から「モトクロス専用」と思うかもしれないが、実際にはかなり幅広いコースタイプに対応している。公式コースとMod製コースを合わせると、その選択肢は膨大だ。
モトクロス(MX)
屋外の土のコースで行われるオーソドックスなモトクロス。大きなジャンプ、高速コーナー、ウォッシュボード(洗濯板のような凸凹)など、モトクロスらしい要素が詰まったコースが多い。MX Bikesの物理エンジンがもっとも活きるコースタイプであり、動的地形変形の恩恵をもっとも感じられる環境でもある。
スーパークロス(SX)
スタジアム内に作られたテクニカルなコース。リズムセクション(連続ジャンプ)、ウーブス(小さな丘の連続)、180度ターンなどが狭いエリアに詰め込まれていて、テクニカルな操作が求められる。屋外のモトクロスと比べてスピードは落ちるが、一つひとつの操作の精度がタイムに直結するため、上級者がスキルを磨くには最適な環境だ。
VRでスーパークロスのトリプルジャンプを飛ぶと胃がひっくり返るような感覚を味わえるという声もあり、臨場感の面でも特に印象的なコースタイプだ。
エンデューロ・エンデューロクロス
山林や岩場を走るエンデューロコースも用意されている。モトクロスやスーパークロスとはまた違ったテクニックが求められ、低速でのバイクコントロールやヒルクライムが重要になる。Mod製のエンデューロコースには、実在のエンデューロイベントを再現したものもある。
スーパーモト・フリーライド
舗装路とダート路面を組み合わせたスーパーモトコースや、自由に走り回れるフリーライドエリアも存在する。レースだけでなく、自分のペースでバイクの挙動を楽しんだり、トリックの練習をしたりする場としても使える。
モトクロスだけでなくスーパークロスやエンデューロも遊べるのが嬉しい。Modを入れれば実在コースの再現も楽しめるし、飽きることがない
引用元:Steamレビュー
Modコミュニティの厚み ― 12,000以上のカスタムコンテンツ
MX Bikesを語るうえで、Modコミュニティの存在は欠かせない。MXB-Mods.comを中心に、プレイヤーが作成したカスタムコンテンツが12,000件以上公開されている。ゲーム本体にAIやキャリアモードがないぶん、コンテンツの幅広さはModが補っていると言ってもいい。
カスタムトラック
コミュニティが作成したトラックの数は圧倒的だ。実在のモトクロスコースを精密に再現したレプリカトラック、プレイヤーが独自にデザインしたファンタジートラック、スーパークロスのスタジアムコース、エンデューロの山岳コースなど、あらゆるタイプのコースが揃っている。
トラック制作に興味がある人のために、PiBoSoはTrackEdというトラックエディタと、TerrainEdという地形生成ツールを公式に提供している。公式ドキュメントには詳細なトラック制作ガイドが用意されていて、セグメントの作成からテクスチャの設定、コリジョン(衝突判定)の生成まで一通りの手順が解説されている。
コミュニティの有志が作成したResolute MXB Track Builder Helperというツールもあり、トラック制作に必要なテキストファイルの生成を自動化してくれる。3Dモデリングの経験がなくても、こうしたツールを使えばトラック制作の敷居はだいぶ下がる。公式フォーラムにはTFCのレプリカトラック制作チュートリアルシリーズなど、初心者向けの教材も充実している。
完成したトラックは.pkz形式にパッケージングして配布する。インストールはMods/Tracksフォルダにドロップするだけで完了だ。
カスタムバイクとProject OEM
バイク本体のModも充実している。中でも注目すべきはProject OEMという有志プロジェクトだ。実在のバイクメーカーの車両を精密に再現したModパックで、KTM、Husqvarna、Yamaha、Honda、Kawasaki、Triumph、Beta、Fanticなど主要メーカーのモトクロスバイクが収録されている。
Project OEMは定期的にアップデートされていて、最新バージョンではTriumph TF 250-X、Triumph TF 450-RC、Beta 450 RXなどが追加されている。Fantic XXF 250とFantic XXF 450は2025年仕様にアップデートされるなど、現実のバイク市場と足並みを揃えた更新が行われているのが特徴だ。
250ccと450ccの両クラスが収録されているのもポイントで、250ccの軽快な操縦性と450ccのパワフルな加速感の違いを楽しめる。実際のモトクロスでは250ccクラスと450ccクラスは別カテゴリーとして競われていて、MX Bikesでもそのクラス分けを体験できる。
ライダーギアとカスタマイズ
ヘルメット、ブーツ、グローブ、ライディングウェアのグラフィックを自由に変更できるModも豊富だ。好きなチームのレプリカを作って走っているプレイヤーも多く、ペイント(カラーリング)のカスタマイズも自由度が高い。見た目のカスタマイズは挙動に影響しないが、モチベーションの維持という点では意外と大きな要素だ。
ライダーアニメーションのModもあり、デフォルトのアニメーションとは異なるフォームでの走行を楽しめる。beta20bで追加されたライディングスタイルサポートとの組み合わせで、より個性的なライディングが可能になっている。
Modの導入方法
Modのインストールはドラッグ&ドロップで完結する。ダウンロードしたファイルをDocuments/Piboso/MXBikes/Mods/以下の対応フォルダに入れるだけで、ゲーム内に自動的に反映される。特別なMod管理ツールは不要で、初心者でも迷わずに導入できるシンプルな仕組みだ。Steam Workshopには対応していないが、MXB-Mods.comのサイトが事実上のMod配布プラットフォームとして機能していて、カテゴリ別のブラウジングやダウンロードが快適に行える。
バニラの状態だとコースが少なく感じるかもしれないけど、Modを入れた途端に遊びきれないほどのコンテンツが手に入る。Modコミュニティが本当に活発で、これがMX Bikesの最大の強みだと思う
引用元:Steamレビュー
バイクゲームのコンテンツ量という点では、Ride 2が収録バイク数でギネス認定されるほどの豊富さを誇るが、MX Bikesはプレイヤーコミュニティが生み出すModコンテンツで、それに匹敵するかそれ以上のボリュームを実現している。

マルチプレイ ― オンラインレースの熱気

MX Bikesはオンラインマルチプレイに力を入れたタイトルで、レースイベントの主催・参加が可能だ。統合マッチメイキングサーバーが用意されているほか、専用サーバーを立ててプライベートレースを開催することもできる。シングルプレイヤーコンテンツ(AI・キャリアモード)が存在しないぶん、マルチプレイがこのゲームの核となる遊び方だ。
MXB Rankedシステム
コミュニティ主導で運営されているMyMXB.comでは、ランクマッチシステム「MXB Ranked」が導入されている。モトクロス、スーパークロス、エンデューロなど種目別にELOベースのランキングが計算され、自分のスキルレベルを客観的に把握できる。トラック投票、スペシャルイベント、動的サーバー起動といった機能も備わっていて、カジュアルなレースから本格的な競技まで幅広くカバーしている。
MyMXBのサーバーシステムは世界中に展開されていて、どの地域のプレイヤーでも低遅延でレースを楽しめるようになっている。ランクポイントの上下に一喜一憂しながらスキルを磨いていくのは、競技性のあるゲームならではの楽しみだ。
コミュニティ主催のチャンピオンシップ
Discordを中心に、プレイヤー主催のチャンピオンシップが数多く開催されている。MX Bikesの公式Discordサーバーは44,000人以上のメンバーを擁し、開発者自身も参加している。それ以外にも、Madsen’s MX Bikes Championshipのような本格的なリーグ戦や、Backyard MXのようなカジュアルなチャンピオンシップが運営されている。
Backyard MXはスキルレベルに応じた3つのクラス分けがされていて、トップクラスのプレイヤーと初心者が直接対決しなくて済む仕組みになっている。「チャンピオンシップに参加したいけど、上級者にはかなわない」という人でも気軽に参加できるのは嬉しいポイントだ。
Reality Racing MXBのように、順位に応じて賞金が出るトーナメントを開催しているコミュニティもある。ゲームの腕前が実際のリターンに結びつくというのは、プレイヤーの競争心を強く刺激する要素だ。
レース中のデータ収集とテレメトリ
オンラインレースでは走行データが自動的に収集され、ラップタイム、セクタータイム、ライダー間の比較統計が提供される。自分の走りを客観的に分析して改善点を見つけるという、リアルなレース活動と同じプロセスをゲーム内で体験できる。
プラグインインターフェースを通じて、シミュレーション中のバイクからリアルタイムデータを外部プログラムに送信することも可能だ。テレメトリデータを活用した分析は、iRacingのようなハードコアなレーシングシミュレーターでは定番の楽しみ方であり、MX Bikesでも同様のことができるのは嬉しいポイントだ。サスペンションのストローク量やタイヤのスリップ率をリアルタイムで監視しながらセッティングを追い込んでいく作業は、レースエンジニア気分を味わえる。

同時接続数
Steamの同時接続プレイヤー数は、通常時で約1,500〜2,000人前後。ピーク時には5,000人を超えることもあり、2026年1月には5,369人という過去最高を記録している。早期アクセスの二輪シミュレーターというニッチなジャンルを考えれば、十分に健全なプレイヤーベースだ。オンラインレースで対戦相手が見つからないという状況にはなりにくい。
プレイヤー数はアップデートのタイミングで急増する傾向があり、コミュニティの関心が持続していることを示している。早期アクセスのゲームでプレイヤーが離れていくのはよくある話だが、MX Bikesの場合はむしろ徐々に増加しているのが印象的だ。
VR対応 ― バイクに「乗っている」感覚
MX Bikesは、Oculus RiftおよびSteamVR(HTC Vive、Valve Index)にネイティブ対応している。VRでのモトクロス体験は、フラットスクリーンでのプレイとはまったく別次元の没入感を提供する。
VRモトクロスの魅力
VRゴーグルを装着してプレイすると、コーナーの先を自分の首を動かして確認したり、ジャンプの高さを体感的に把握したりできる。フラットスクリーンではカメラアングルという「窓」越しにゲームを見ているが、VRではバイクに「乗っている」感覚になる。
特にスーパークロスのトリプルジャンプは圧巻だ。踏み切りでバイクが浮き上がり、スタジアムの観客席が眼下に広がり、着地に向けてバイクが落下していく。この一連の体験は、文字で説明するよりも実際にVRで体験してほしいとしか言いようがない。
VRでMX Bikesをプレイしたら、これまでで最高のVR体験の一つだった。トリプルジャンプの感覚がすごい
引用元:Vital MX フォーラム
コーナリング中に内側を覗き込んだり、後続のライダーを肩越しに確認したりと、VRならではの自然な視線の使い方がレースの戦略にも影響する。フラットスクリーンでは得られない情報をVRでは直感的に取得できるため、上手く活用すればタイム向上にもつながる。
VRの注意点
ただし、VRモトクロスは激しい動きを伴うため、VR酔いのリスクが高い。普段VRゲームで酔わない人でも、MX Bikesでは気分が悪くなるケースが報告されている。二輪車特有の激しいロール(横方向の傾き)とピッチ(前後方向の傾き)が同時に発生するため、三半規管への負荷が大きいのだ。
開発側もこの点は認識しており、VRタグをSteamストアページから一時的に外すなどの対応を取っている。VR体験としては間違いなく素晴らしいが、万人向けではないという正直な評価だ。VRでプレイする場合は、まずフリーランで数分走ってみて、体の反応を確認してからレースに参加するのをおすすめする。
なお、MX BikesのVRは現時点ではモーションコントローラーに対応しておらず、通常のゲームパッドやキーボードでの操作となる。VRゴーグルを被りながらゲームパッドを握るスタイルになるため、プレイ環境の準備は少し工夫が必要だ。
早期アクセスだからこその進化 ― 開発の現在地

MX Bikesは2019年10月にSteamの早期アクセスとして登場し、それ以降も継続的にアップデートが行われている。開発を手がけるPiBoSoは少人数のインディースタジオで、物理シミュレーションに特化したGP Bikesなども開発している。
最近のアップデート内容
2024年から2025年にかけてのアップデートを振り返ると、着実に進化していることがわかる。
- beta19b(2024年11月):基盤的な改善と安定性の向上
- beta20b(2025年5月):ライダーのリーンアニメーション改善、キックスタートシミュレーション追加、トリックアニメーション追加、ライディングスタイルのサポート、外部視点の距離と高さの設定、バイク追従オプション、ブレーキ音量設定、地形ディテール設定の分離、バイクリセットディレイの導入
- beta20c(2025年10月):シャーシフレックスシミュレーションの修正
beta20bのアップデート内容を見ると、物理エンジンの根幹部分だけでなく、UIやカスタマイズ性の改善にも手が入っていることがわかる。ESCキーのリマップオプションのような細かい改善も含まれていて、プレイヤーからのフィードバックが反映されている印象だ。
大型アップデートの頻度は年に2〜3回程度で、少人数の開発チームということを考えれば妥当なペースだろう。一つひとつのアップデートで物理エンジンの根幹部分が改良されるため、プレイフィールが着実に良くなっていくのを感じられる。AAA級のスタジオが年に1本新作を出すのとは異なるアプローチだが、一つのゲームを長期にわたって磨き上げていくスタイルは、シミュレーターの開発としては理にかなっている。
早期アクセスゆえの課題
一方で、早期アクセスならではの不満点もある。もっとも多く聞かれるのが、AIレーサーとキャリアモードの不在だ。シングルプレイヤーで楽しめるのは基本的にタイムアタックとフリーラン(トレーニングモード)のみで、一人でレースの醍醐味を味わうのは難しい。
対戦相手のAIがいないということは、「今日は一人で気楽に数レースだけ走ろう」という遊び方ができないということだ。必ずオンラインで他のプレイヤーと走るか、一人でタイムアタックをするかの二択になる。これは多くのプレイヤーにとって大きなハードルだろう。
物理エンジンは間違いなく最高峰。でもAIもキャリアモードもない状態で30ドル以上するのは、正直なところ議論の余地がある
引用元:Steamレビュー
価格については、Steamでの定価が34.99ドルで、セールになることがほとんどないという声もある。早期アクセスのゲームとしてはやや強気な価格設定だが、物理エンジンの完成度とModコンテンツの充実度を考えれば、十分に元が取れるという意見も多い。実際、94%という好評率がそれを裏付けている。
技術的な問題として、ゲームクラッシュや読み込み失敗が発生するケースも報告されている。特に初回起動時にトラブルが起きやすいという声があり、初心者が最初の一歩でつまずいてしまうのは残念なポイントだ。コミュニティフォーラムやDiscordにはトラブルシューティングの情報が蓄積されているので、問題が起きたら確認してみるといい。
同じく早期アクセスで人気を集めた物理シミュレーション系のゲームとしてはBeamNG.driveがある。あちらは四輪車両の衝突変形に特化しているが、「物理演算にこだわり抜いたシミュレーター」という点で通じるものがある。少人数チームが一つのゲームを長期にわたって磨き上げていくという開発スタイルも共通している。
他のバイクゲームとの比較 ― MX Bikesの唯一無二の位置
バイクゲームの選択肢は意外と多い。MX Bikesを検討している人のために、代表的なタイトルとの違いを詳しく整理しておきたい。
MXGPシリーズとの違い
MilestoneのMXGPシリーズは、FIM世界モトクロス選手権の公式ライセンスを持つタイトルだ。実在のライダーやコースが収録されていて、キャリアモードやAIレーサーも完備されている。グラフィックも高品質で、「モトクロスの世界を幅広く楽しみたい」ならMXGPシリーズは良い選択肢だ。
ただし、物理エンジンの深さではMX Bikesに軍配が上がる。MXGPシリーズはシミュレーションとアーケードの中間を狙った設計で、誰でも気軽にプレイできる反面、ライダーの体重移動やクラッチワーク、動的地形変形といった要素はMX Bikesほど深く再現されていない。
「ライセンスされた実在の大会をキャリアモードで追体験したい」ならMXGPシリーズ、「物理的にリアルなモトクロスを追求したい」ならMX Bikes。目的によって選び分けるのが賢い。
MX Simulatorとの違い
MX Bikesの最大のライバルとして語られることが多いのがMX Simulatorだ。MX Simulatorも物理演算にこだわったモトクロスシミュレーターで、特にエロード(路面浸食)システムの精度では一日の長がある。MX Bikesの轍システムがバイクの後ろに溝を残す比較的シンプルな方式なのに対し、MX Simulatorはより複雑なアルゴリズムで路面変化を計算している。
操作の難易度はMX Simulatorのほうが高いと言われていて、「習得に何十時間もかかる」という声もある。MX Bikesも十分に難しいが、リーンヘルプのような補助機能があるぶん、入門のハードルは相対的に低い。
ただし、MX Simulatorは見た目や操作インターフェースがやや古く、プレイヤー数も減少傾向にある。MX Bikesのほうがコミュニティの活気があり、Modコンテンツも充実しているため、2026年現在では新規プレイヤーにはMX Bikesのほうが入りやすい環境だ。
アーケード系との違い
Trials Fusionは、物理ベースのバイクアクションゲームだ。障害物だらけのコースをモトクロスバイクで走破する爽快感と、何度も挑戦して完璧なクリアを目指すリプレイ性が魅力。MX Bikesとは目指しているものが根本的に違うので、「リアルさ」よりも「パズル的な達成感」を優先するならTrials Fusionのほうが合うかもしれない。

MX vs ATVシリーズは、バイクだけでなくATVやバギーも選べるマルチビークルのレースゲームだ。カジュアルに楽しめる設計で、フリーライドエリアも広い。こちらも「シミュレーション」というよりは「エンターテインメント」寄りのタイトルだ。
二輪に限らず、四輪のレーシングシミュレーターにも興味があるなら、Project CARS 2もチェックしてみてほしい。こちらはサーキットレースの物理シミュレーションを追求したタイトルで、MX Bikesとはジャンルが違うが「シミュレーターとしての深み」を求めるプレイヤーには響くはずだ。

MX Bikesが向いている人、向いていない人

ここまで読んでもらえればわかる通り、MX Bikesは万人向けのゲームではない。ハマる人はとことんハマるし、合わない人にはとことん合わない。購入を検討している人のために、向き不向きを正直に整理しておこう。
こんな人に向いている
- リアルなモトクロス体験を求めている人:物理エンジンの完成度は二輪ゲームの中でトップクラス。実際にモトクロスをやっている人が「現実のテクニックがそのまま通用する」と評価している。雨の日の練習代わりにMX Bikesをプレイするという声もあるほどだ
- 上達過程を楽しめる人:学習曲線は急だが、操作のコツをつかんだときの達成感は大きい。数百時間遊んでもまだ上達の余地がある奥深さがある。「ゲームの仕組みを理解すればするほど面白くなる」というのは、Steamレビューでもっとも多く見られるコメントだ
- Modいじりが好きな人:12,000以上のカスタムコンテンツが無料で手に入る。自分でコースやバイクを作るクリエイティブな楽しみ方もできる。トラック制作のツールとドキュメントが公式に提供されているのは心強い
- オンラインで競い合いたい人:ランクマッチシステムもあり、世界中のプレイヤーとスキルを比較できる。チャンピオンシップやリーグ戦に参加すれば、競技的なモトクロスの緊張感を味わえる
- VRでの没入感を求めている人:ネイティブVR対応で、バイクに乗っている感覚をリアルに体験できる。VR酔いのリスクはあるが、耐えられる人にとっては最高の体験だ
こんな人には向いていない
- 一人でじっくりキャリアモードを楽しみたい人:AIレーサーもキャリアモードも存在しない。シングルプレイヤーコンテンツは実質的にタイムアタックとフリーランのみ。一人でストーリーを進めながらレースを楽しみたいならMXGPシリーズのほうが向いている
- 気軽にバイクゲームを楽しみたい人:「ちょっとプレイして爽快感を味わう」タイプのゲームではない。最初の数時間はひたすら転倒と格闘することになる。操作のチュートリアルも用意されていないため、手探りで学んでいく必要がある
- 完成されたゲームを求めている人:早期アクセスのため、バグやクラッシュが発生することがある。UIも洗練されているとは言い難い。「お金を払ったのだから完成品を寄こせ」という感覚の人にはストレスが溜まるかもしれない
- グラフィック重視の人:MX Bikesのグラフィックは、物理エンジンの高度さに比べると控えめだ。テクスチャや照明のクオリティはAAA級タイトルには及ばない。見た目よりも挙動を重視するゲームだという点は理解しておく必要がある
これはただのバイクゲームじゃない。操作に慣れるまで何時間もかかるけど、一度コツをつかめば最高のモトクロス体験が待っている。自分の成長が目に見えてわかるから、やめられなくなる
引用元:Steamレビュー
バイクレースゲームの中でも特にリアル寄りのTT Isle of Manと比較すると、MX Bikesはオフロード特化、TT Isle of Manは公道レース特化という違いがある。どちらも「バイクに乗る」ゲームだが、求められるスキルセットはかなり異なるので、自分の好みに合ったほうを選ぶといいだろう。

初心者がMX Bikesを始めるためのアドバイス
最後に、MX Bikesをこれから始める人に向けて、スムーズにスタートを切るためのアドバイスをまとめておきたい。このゲームは最初のハードルが高いぶん、効率的な練習方法を知っているかどうかで上達速度が大きく変わる。
ステップ1:リーンヘルプをオンにして基本を覚える
前述の通り、リーンヘルプをオンにしておくと体重移動がある程度自動化される。まずはこの状態でバイクの基本操作(アクセル、ブレーキ、ステアリング)に慣れることが大切だ。いきなりレースに出るのではなく、フリーランで平坦なコースを周回して、まずは「転ばずに一周する」ことを目標にしよう。
アクセルは急に開けるとリアが暴れるので、じわじわと開けていくのがコツだ。ブレーキも同様で、フロントブレーキをいきなりかけるとフロントが切れ込んで転倒する。「スムーズな操作」が最初に身につけるべきスキルだ。
ステップ2:コントローラーの設定を見直す
デフォルトの操作設定がベストとは限らない。特にデッドゾーンとリニアリティの調整は最初にやっておくべきだ。設定画面のインプットビジュアライザーを使えば、自分の入力がどう反映されているかをリアルタイムで確認できる。
具体的な数値としては、デッドゾーンはスティックの遊びに合わせて最小限に、リニアリティは高め(60〜80%程度)から始めるのがおすすめだ。ダイレクトリーンは25前後。ここから自分のプレイスタイルに合わせて微調整していく。すべてのパラメータを一度に変えず、一つ変えて走って、フィーリングを確認して、また一つ変えるという手順が大切だ。
ステップ3:平坦なコースでコーナリングを練習する
いきなりジャンプだらけのスーパークロスコースに挑戦するのは無謀だ。まずは起伏の少ないフラットなモトクロスコースで基本を身につけよう。コーナリングで「カウンターリーン」の感覚をつかめるようになったら、徐々にテクニカルなコースに挑戦していけばいい。
コーナリングの練習では、まずブレーキングポイントを覚える。次にターンインのタイミング。そしてアクセルを開け始めるポイント。一つのコーナーを何十回も繰り返して体に染み込ませるのが、地味だけど一番効果的な練習方法だ。
ステップ4:リーンヘルプをオフにしてみる
コースを安定して周回できるようになったら、リーンヘルプをオフにする。最初は戸惑うが、数時間もすれば自分で体重移動をコントロールする感覚がつかめてくる。このステップを超えると、MX Bikesの面白さの本質に触れることができる。
ポイントは、スティックの微調整を常に行うこと。ライダーの体重は常に動いていて、ニュートラルポジション(中心)に戻すことも含めて操作の一部だ。コーナーでは進入前から体を内側に動かし始め、旋回中は適切な角度を維持し、立ち上がりで体を中心に戻す。この一連の流れをスムーズにできるようになれば、バイクとの一体感が劇的に変わる。
ステップ5:Modを早めに導入する
バニラ(Mod無し)の状態ではコースの数が限られているため、練習環境が物足りなく感じるかもしれない。MXB-Mods.comから好みのコースをいくつかダウンロードしておくと、モチベーションの維持にもつながる。導入はフォルダにファイルを入れるだけなので、Modに慣れていない人でも心配ない。
最初におすすめなのは、レイアウトがシンプルなモトクロスコースだ。複雑なリズムセクションやテクニカルなジャンプが少ないコースを選べば、基本操作の練習に集中できる。慣れてきたらスーパークロスコースやエンデューロコースにも挑戦してみよう。
Project OEMのバイクパックも導入をおすすめする。実在メーカーの車両が追加されるので、自分が乗ってみたいバイクで練習するモチベーションが生まれる。250ccと450ccで挙動が大きく異なるので、両方試してみて自分に合うクラスを見つけるといい。
ステップ6:コミュニティに参加する
MX Bikesのコミュニティは活発で、Discord(メンバー44,000人以上)、公式フォーラム、Redditなどで情報交換が行われている。操作のコツやセッティングのアドバイスを聞ける環境があるのは心強い。同じスキルレベルのプレイヤーと一緒に練習できれば、上達のスピードも上がる。
MyMXB.comのランクマッチに参加すれば、自分のレベルに合った対戦相手とレースを楽しめる。Backyard MXのようなカジュアルなチャンピオンシップに参加するのも良い入口だ。最初から勝てなくても、レースの雰囲気を味わいながら上達していけるのがコミュニティイベントの良さだ。
まとめ ― 「本物」のモトクロスを求める人のためのゲーム
MX Bikesは、モトクロスバイクの挙動を物理エンジンで徹底的に再現した、唯一無二のシミュレーターだ。自動車業界標準のタイヤモデル、シャーシフレックス、動的地形変形、ライダーの体重移動、サスペンションの詳細なセッティング。これらすべてが組み合わさることで、画面の向こうに「本物のモトクロス」が広がっている。
早期アクセスゆえの未完成さは否めない。AIもキャリアモードもなく、グラフィックも控えめ。価格は34.99ドルで、セールもほとんどない。技術的なトラブルも時折発生する。でも、12,000以上のModコンテンツ、44,000人以上が参加するアクティブなコミュニティ、ELOランクマッチシステム、VR対応、そして何より94%のSteam好評率が、このゲームの価値を証明している。
Motocross Madnessの時代から始まったモトクロスゲームの歴史は、MX Bikesによって一つの到達点を迎えた。アーケードの爽快感を求めるなら別の選択肢がある。公式ライセンスのキャリアモードを楽しみたいならMXGPシリーズがある。でも、モトクロスバイクの挙動を物理的に正確にシミュレートするゲームは、現時点ではMX Bikes以外に見当たらない。
学習曲線の急さは覚悟してほしい。最初の数時間はひたすら転倒との戦いだ。でも、コーナーを思い通りのラインで抜けられるようになった瞬間、ジャンプで完璧なスクラブを決められた瞬間、オンラインレースでライバルと0.1秒差でフィニッシュした瞬間、その達成感はMX Bikesでしか味わえないものだ。
モトクロスの「本物」を求めるなら、MX Bikes以外の選択肢は、今のところ見当たらない。
バイクゲーム全般に興味があるなら、RIDE3もおすすめだ。230種類以上のバイクが収録されていて、ロードレースの世界を幅広く楽しめる。MX Bikesでオフロードを堪能したあとに、舗装路の走りを味わうのもいいだろう。

MX Bikes
| 価格 | ¥3,900 |
|---|---|
| 開発 | PiBoSo |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows |
| プレイ形式 | シングル / マルチ |

