「Lobotomy Corporation」知ることで施設を支配する極悪難度の怪物管理シム

Lobotomy Corporation | Monster Management Simulation|知ることで施設を支配する極悪難度の怪物管理シム

「管理」というゲームジャンルは、普通は街や国や会社を育てるものだ。でも、このゲームが管理する対象は「怪物」だった。

Lobotomy Corporationに初めて触れたとき、まず「何これ」と声が出た。画面の中では謎の生物が密閉された部屋に閉じ込められていて、白衣の職員が淡々と作業をこなしている。BGMはどこか不穏で、施設全体に漂う「何かが起きそう」という空気感がある。アブノーマリティと呼ばれる存在が何をするのかわからないまま、取り急ぎ職員に「愛着作業」を命じた。しばらくして職員が発狂し、施設内を走り回り始めた。

「どうすれば良かったの?」と思って調べると、そのアブノーマリティは「ポジティブな感情が多すぎると怒る」という存在だった。愛着作業ではなく、洞察作業を選ぶべきだったのだ。知らなければ絶対にわからない。でも、知った瞬間に「なるほど」と腑に落ちる。この「わかった瞬間の快感」が、Lobotomy Corporationというゲームの本質だ。

このゲームはずっとそういう体験の連続だ。「知ること」が攻略の核心で、知れば知るほど施設が安定していく。逆に知らなければ、どんなに丁寧に操作しても職員が死んでいく。正しい知識さえあれば、どんなに恐ろしいアブノーマリティも扱えるようになる。この「知識が力になる」設計がゲームの根底に流れていて、他のシミュレーションゲームとは全く異なるプレイ体験を生み出している。

韓国のインディーゲームスタジオProject Moonが2018年4月に正式リリースしたこの作品は、Steamで「圧倒的に好評」を獲得している(2025年時点で直近レビューの95%以上が好評)。同時に「難しすぎる」「理不尽すぎる」という声も根強い。両方の評価が正しい、という稀有なゲームだ。

開発当初はKickstarterでのクラウドファンディングが目標額の10分の1にも届かずに失敗。しかし韓国のクラウドファンディングサービス「Tumblbug」では目標額の754%にあたる1,500万ウォン超を集め、開発を継続した。小さなインディースタジオが世界規模で評価されるまでの道のりも、このゲームの物語の一部だ。

この記事では、なぜこのゲームがここまで強烈な体験を生み出すのか、どんな人に向いていてどんな人には向かないのか、ゲームの各システムの詳細、そしてプレイヤーたちのリアルな声を正直に書いていく。

目次

こんな人に読んでほしい

Lobotomy Corporationが刺さるのは、こういうプレイヤーだ。

  • SCP財団のような「謎の存在を封じ込める組織」というコンセプトにピンと来た人
  • 「Cabin in the Woods」や「コントロール」のような、奇妙な組織と怪異が同居する世界観が好きな人
  • 高難度ゲームで何度も失敗しながら学んでいく体験が好きな人
  • 管理シミュレーション × ホラー体験という組み合わせに興味がある人
  • 重厚なストーリーと世界観を持つゲームをクリアしたとき、強い余韻を感じたい人
  • Project MoonのLibrary of RuinaやLimbus Companyのファンで、世界観の原点を知りたい人
  • プレイ時間100時間以上かかってもいい、腰を据えたゲーム体験を求めている人
  • 「知識が強さになる」タイプのゲームに魅力を感じる人

逆に、こういう人には向かないかもしれない。サクッと短時間で達成感を得たい人、理不尽な死にゲーが苦手な人、チュートリアルが丁寧じゃないと困る人。このゲームは情報収集と観察を自分で積み重ねる体験型のゲームで、「ゲームが親切に教えてくれる」設計ではない。むしろ「教えてくれないから怖い」というデザインだ。

プレイ時間の目安として、初クリアまでに100時間以上かかるプレイヤーが珍しくない。それだけの時間を費やしても後悔しないと思える人に、このゲームは向いている。逆に「ゲームに100時間は多すぎる」と感じる人には、正直に向かないと伝えておく。

ゲームの基本構造:謎の組織の管理人になる

まず基本的な話から整理する。Lobotomy Corporationは2018年にProject Moonが開発・発売したPC向けシミュレーションゲームだ。プレイヤーは巨大エネルギー企業「ロボトミーコーポレーション」の施設管理人「X」として、アブノーマリティと呼ばれる謎の存在たちを管理し、施設のエネルギー生産を行う。

ゲームは基本的に1日ごとに区切られていて、毎日決まった量のエネルギー(PE-BOX)を生産することがノルマになっている。エネルギーを十分に集めれば翌日に進み、施設が拡張され、新しいアブノーマリティが追加されていく。この繰り返しで施設を徐々に拡大しながら、ストーリーを進めていく構造だ。

エネルギーを産み出すのがアブノーマリティたちだ。彼らに職員を送り込んで「作業」をさせると、エネルギーが発生する。ただ、それぞれのアブノーマリティは固有の好みや性質を持っていて、間違った作業をすると機嫌が悪くなり、施設に害をもたらす。最悪の場合は脱走して職員を殺し始める。

プレイヤーがやることは、このサイクルを管理し続けること。どの職員をどのアブノーマリティに送るか、どの作業をさせるか、脱走した場合どう鎮圧するか。シンプルに聞こえるが、実際はこの判断の連続が非常に複雑で、ゲームを理解するにつれてその奥深さが増していく。

1日の流れはこうだ。朝、施設に出勤して職員の状態を確認する。各部門にアブノーマリティが収容されていて、それぞれに職員を割り当てて作業指示を出す。作業中に何か問題が起きたら対処し、エネルギーを十分に集めたら1日終了。その後ストーリーパートが挿入されて、翌日へと進む。このルーティンの中に、ゲームのあらゆる要素が詰まっている。

作業の種類と意味

職員がアブノーマリティに対して行える作業は4種類ある。「本能」「洞察」「愛着」「抑圧」だ。それぞれ職員の異なる能力値を使い、アブノーマリティごとに好きな作業・嫌いな作業が違う。

本能作業は職員の「勇気」能力値を使い、アブノーマリティとの物理的な作業を行う。洞察作業は「慎重さ」を使い、アブノーマリティを観察・研究する。愛着作業は「節制」を使い、アブノーマリティとのコミュニケーションを取る。抑圧作業は「正義」を使い、アブノーマリティをコントロールする。

問題は、最初は各アブノーマリティが何を好むのかわからないことだ。何度も作業を繰り返して観察し、エントリー(観察記録)を集めることで、少しずつアブノーマリティの性質が明らかになっていく。この「観察を通じて知っていく」プロセス自体がゲームプレイの核になっている。

エネルギーの産出量は作業の成否や職員の能力値によって変動する。うまく管理すれば効率よくエネルギーを生産できるが、失敗すれば何も得られないどころか職員がダメージを受けて最悪死ぬ。各アブノーマリティが好む作業タイプを把握し、能力値が合う職員を適切に配置することが、効率的な施設管理の基本だ。

クリフォトという概念

各アブノーマリティにはクリフォト汚染度というゲージがあり、作業を繰り返すにつれて上昇していく。このゲージが満タンになると「クリフォト汚染」というイベントが発生し、アブノーマリティが凶暴化したり、施設に悪影響が及ぶ。

クリフォトはユダヤ神秘主義カバラの概念で、生命の木(セフィロト)の邪悪な対概念にあたる。ゲームはこういった宗教・哲学的な概念を世界観の基盤として積極的に取り入れており、設定の重厚さに貢献している。

どのくらいの作業回数でクリフォト汚染が起きるかはアブノーマリティによって異なる。少ない作業でも安定して管理できる存在もあれば、少し作業しただけですぐ汚染が起きる危険な存在もある。これもまた観察を通じて把握していく情報で、知らないと不意打ちを食らう。

また、一定の作業回数を行うと「試練」と呼ばれるボスイベントが発生することもある。この試練を乗り越えないと前に進めないが、突然現れるため準備が整っていないと詰む。試練の発生タイミングを管理することも、上手いプレイヤーと初心者の差になる部分だ。

アブノーマリティ:このゲームの主役たち

このゲームの最大の魅力は、アブノーマリティの多様性と独自性にある。100体以上のアブノーマリティが存在し、それぞれに異なる見た目、行動パターン、管理の難しさ、そして背景となる「物語」がある。これら一体一体が生き生きとした存在感を持っており、管理していくうちに愛着が湧いてくる存在もいれば、全力で関わりたくないと思わせる存在もいる。

アブノーマリティは危険度によって5段階に分類されている。安全なZAYINから始まり、TETH、HE、WAW、そして最も危険なALEPHまで。これらはカバラ(ユダヤ神秘主義)のヘブライ文字から名付けられていて、世界観の宗教的・神秘的な側面を強調している。

ZAYIN:最初の試練

ZAYINは最も安全とされる危険度で、ゲーム序盤に多く登場する。とはいえ「安全」なだけで、管理を誤れば被害が出ることに変わりはない。

例えばZAYINに分類される存在の中には「特定の条件を満たすと職員に害を与えない」タイプのものがいる。逆に「特定の行動を取ったときだけ危険」という存在もいて、慣れないうちはそれがわからないので怖い。ZAYINとはいえ、初見では適切な管理法を知らずに被害を出すことは普通にある。

ZAYINのアブノーマリティを安定して管理できるようになってきたとき、プレイヤーはゲームの基本的な仕組みを理解し始めている。この段階ではまだ「面白さの片鱗を感じ始めた」くらいの感覚で、本当の面白さはまだ先にある。

TETH・HEの中間域

TETHとHEはゲームの中盤に多く登場する危険度だ。ZAYINより明確に危険で、管理を誤ると施設に大きな被害が出るが、適切な知識があれば安定して扱える存在も多い。

この危険度帯のアブノーマリティにはバリエーションが豊富で、中には特定の条件を満たすと強力な恩恵をもたらしてくれる存在もいる。管理が難しい分、うまく扱えたときの報酬が大きい。「怖いアブノーマリティだけど、こいつを使いこなせれば強い」という状況が生まれるのが、このゲームの面白い部分だ。

WAWとALEPH:施設の存亡を左右する存在

WAW以上になると、一体が脱走しただけで施設全体が崩壊しかねない。職員を瞬殺できる能力を持つものや、広範囲に影響を与えるものが揃っていて、管理には高度な知識と準備が必要になる。

ALEPHは最高危険度で、このクラスの存在が脱走した場合は施設全体が危機に陥る。ゲーム内では「施設内で確認された最も危険なアブノーマリティ」と説明される。ALEPHを安定して管理できるようになったとき、プレイヤーは「自分はこのゲームを理解し始めた」と感じるはずだ。その段階で初めて、序盤の自分がいかに何もわかっていなかったかを実感できる。

ALEPHのアブノーマリティからは莫大なエネルギーが得られる。しかしその分リスクも高く、管理に失敗したときの被害は計り知れない。「リスクとリターンのトレードオフ」を最も極端な形で体現しているのが、ALEPHというカテゴリだ。

エントリーと観察:知る喜び

各アブノーマリティにはエントリーと呼ばれる観察記録が蓄積されていき、管理情報やバックストーリーが解放されていく。管理情報は直接的なプレイに役立つ実用的な情報で、バックストーリーはアブノーマリティの背景となる物語だ。

バックストーリーを読んでいくと、単なる「危険な怪物」に見えていた存在が、それぞれの経緯を持った「存在」として立体的に見えてくる。中には読んでいて切なくなるものもあり、SCP財団のような「謎の存在についての読み物」としての楽しさがある。

これが「単なる怪物管理ゲーム」ではなく「キャラクターに感情移入するゲーム」になる仕掛けだ。名前もない謎の存在たちが、プレイヤーにとって徐々に個性ある存在になっていく。

SCP財団との関係性

開発のProject Moonはゲームのインスピレーションとして、SCP財団のほかに映画「キャビン(The Cabin in the Woods)」とドラマ「Warehouse 13」を挙げている。「被害者の視点から描かれるホラーゲームはたくさんある。でも施設を管理する側の視点から描かれるゲームがなかった」という発想がこのゲームの出発点だ。

SCP財団を知っていると、アブノーマリティの設定をより深く楽しめる。SCP財団の特定の作品を連想させる存在、財団の組織構造に似た施設設計、「収容手順」に相当する管理方法など、SCP財団の雰囲気を知っているとニヤリとできる要素が随所にある。ただ、SCP財団を知らなくても楽しめる。知っていると「お、これはあれを意識したのかな」という発見が増える、という感じだ。

同じくSCP財団インスパイアのゲームを楽しんでいる人なら、Hero Siegeのようなサバイバル系とは全く異なる方向性であることを最初に把握しておくといい。Lobotomy Corporationはアクションではなく、「知識と情報に基づく管理判断」が主なゲームプレイだ。

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職員システム:彼らの命はあなたの責任

施設を動かすのは職員たちだ。職員はゲーム開始時に少数いて、日が経つにつれて採用できる人数が増えていく。彼らを各部門に配置し、アブノーマリティへの作業指示を出すことが管理人の仕事になる。

職員にはレベルがあり、作業を繰り返すことで経験値が溜まって成長する。能力値は「勇気」「慎重さ」「節制」「正義」の4種類で、それぞれが作業タイプと対応している。適切な能力値が高い職員を適切な作業に送ることで、成功率が上がりエネルギー産出量も増える。職員の育成は長期的な投資で、使い込んだ職員ほど頼りになる存在になっていく。

職員は死ぬ。これが本当に精神的にきつい部分で、せっかく育てた職員がアブノーマリティの暴走で一瞬で死んでしまうことがある。特に高レベルまで育てた愛着のある職員が突然倒れると、かなりダメージを受ける。「あいつが死んだ」という感覚は、管理シミュレーションゲームの中でもかなり強烈な体験だ。

各職員には名前とビジュアルがある。ランダムに生成されるため、プレイヤーによって思い出の職員が全員異なる。「自分のプレイでしか生まれなかった職員」への愛着が、このゲームのパーソナルな側面を作り出している。

精神力という重要パラメータ

職員には体力のほかに精神力というパラメータがある。アブノーマリティの作業中に精神的なダメージを受けると精神力が下がり、一定以下になると「パニック状態」になる。パニック状態の職員は制御不能になり、施設内を暴れ回ったり、他の職員を攻撃したり、最悪の場合は自らの命を絶ってしまう。

精神力の管理は体力管理と同じくらい重要で、精神的に強い職員を危険なアブノーマリティに送ることが基本だ。ただし精神的に強い職員が十分に育っていない序盤は、誰を送っても精神力が削られる危険性があり、マネジメントの難しさを実感させられる。

精神力を回復させる方法もあるが、その手段も限られている。精神力の管理を怠ると、施設の「二次災害」が起きやすくなる。アブノーマリティが脱走して職員が精神的にダメージを受け、パニックになった職員がさらに被害を広げる、という連鎖だ。

E.G.O装備:アブノーマリティから生まれる力

このゲームのユニークな要素として、アブノーマリティを観察・管理することで「E.G.O」と呼ばれる装備品が生成できる。E.G.O武器、E.G.Oスーツ、E.G.Oギフトの3種類があり、これらを職員に装備させることで戦闘能力が向上する。

E.G.Oという名称は「Extermination of Geometrical Organ」の略で、アブノーマリティの本質を抽出したアイテムという設定だ。E.G.O装備はアブノーマリティの特性を反映したユニークな外見と能力を持っている。例えば特定のアブノーマリティから生成されたE.G.O武器は、そのアブノーマリティに関連した特殊な攻撃ができる。装備品を見るだけで「あ、これはあのアブノーマリティ由来だ」とわかる仕組みになっていて、世界観との一体感が高い。

良いE.G.O装備を集めるためには、対応するアブノーマリティを安定して管理し続ける必要がある。管理が上手くなれば良い装備が手に入り、良い装備があれば脱走時の鎮圧が楽になる。このサイクルが「うまくなれば報われる」という満足感を生み出している。

E.G.Oギフトという特殊な要素

E.G.Oギフトは特に変わった装備で、頭・目・耳・口・首・胴体・右腕・左腕・右手・左手・右足・左足・足首など、体の各部位に装備できるアイテムだ。職員の見た目が文字通り変化していく。巨大な一つ目が頭につく、謎の触手が生える、そういった「異形化」が起きる。

見た目の変化が能力と直結しているため、熟練プレイヤーの施設では職員たちが恐ろしい姿になっていることが多い。それでも元の名前で呼ばれ続けるので、プレイしているうちに愛着がわいてくる。「この見た目怖いけど、こいつは一番信頼できる職員なんだよな」という感覚だ。初期ビジュアルの白衣の普通の人間が、徐々に人外の姿になっていく過程は、このゲームの不思議な魅力の一つになっている。

装備の組み合わせによる戦略性も高く、どのE.G.O武器とスーツを組み合わせるか、ギフトをどこに装備するかは施設の防衛能力に直結する。プレイヤーごとに「自分の施設の戦力構成」が異なり、それがLobotomy Corporationのプレイ体験を個人的なものにする要因の一つだ。

施設構造とセフィラ:AIたちとの会話

施設は複数の部門に分かれており、ゲームが進むにつれて新しい部門が解放されていく。各部門にはセフィラと呼ばれるAIが配置されていて、管理人の補佐をしている。全体を統括するのがアンジェラと呼ばれる高性能AIだ。

セフィラたちはユダヤ神秘主義「カバラ」の生命の木(セフィロト)から名付けられている。マルクート、イェソード、ホド、ネツァク、ティフェレット、ゲブラー、チェセド、ホクマー、ビナー、そしてケテル。全部で10体のセフィラが存在し、それぞれが固有の性格と外見を持ち、日々の管理の中で管理人Xと会話を重ねていく。

セフィラたちは最初、管理人に対してやや事務的な態度を取る存在として描かれている。しかしゲームを進めるにつれて、それぞれのセフィラが抱える過去、感情、そして施設の真実との関わりが明らかになっていく。10体それぞれに固有のストーリーがあり、全員の物語を知るころには強い感情移入が生まれている。

アンジェラという存在

このゲームで最も印象的なキャラクターの一人がアンジェラだ。長い水色の髪を持つAIで、ゲーム開始直後から管理人Xをサポートする。彼女の言葉は表面上は丁寧だが、どこか謎めいていて、何かを隠しているように感じさせる雰囲気がある。

最初は「優秀な秘書AI」に見えるアンジェラが、ゲームを進めるにつれてその真の姿が明らかになっていく。このゲームのストーリーの核心にアンジェラは深く関わっていて、「管理シミュレーション」と思っていたゲームが実は壮大な物語を内包していたことに気づく瞬間が、プレイヤーにとっての大きな転換点になる。

アンジェラとの会話は毎日あるが、最初のうちはその会話の意味がよくわからない。謎めいた言い回しや、意味深な沈黙。でもゲームを進めて物語の全容が見えてきたとき、序盤の何気ないアンジェラの言葉が全く別の意味を持って聞こえてくる。これがLobotomy Corporationのストーリーの魅力の核心だ。

ミッションとセフィラの成長

各セフィラには専用ミッションがあり、達成することでセフィラのストーリーが進行し、施設のアップグレードが可能になる。ミッションの内容は「特定のアブノーマリティを安定管理する」「特定の状況をクリアする」「職員の能力を一定まで育てる」といったもので、その部門の管理スキルを磨くことが求められる。

セフィラたちにもそれぞれ深い背景があり、会話を重ねることでその過去が見えてくる。管理シミュレーションとしてのゲームプレイと、キャラクターストーリーとしての展開が並行して進む設計になっている。「ゲームプレイが物語と統合されている」という点で、珍しい構成を持つゲームだ。

ミッションをこなしながらセフィラのストーリーを見ていくと、「なぜこの施設が存在するのか」「管理人Xとは何者なのか」という問いへの答えが、ゆっくりと積み上がっていく。毎日の管理作業が、単なる繰り返し作業ではなく物語の一部になっている感覚は独特だ。

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ストーリー:なぜ「管理シミュレーション」に物語が必要なのか

Lobotomy Corporationのストーリーについて、このゲームを知らない人に説明するのは難しい。管理シミュレーションゲームなのに、なぜこんなに濃いストーリーがあるのか、最初は意味がわからないかもしれない。

ゲームは1日の終わりにストーリーパートが挿入される形式をとっている。管理の作業が終わると、アンジェラやセフィラたちとの会話シーンが入り、施設の謎や管理人Xの正体に関わる情報が少しずつ明かされていく。

序盤はほとんど意味がわからない。謎めいた会話、意味深な言葉、断片的な情報。「このゲームはストーリーが面白いらしいけど、何が言いたいのかよくわからない」という状態でしばらく続く。でも後半になって、積み重なった断片が突然つながった瞬間に、全てが別の意味を持って見えてくる。

このゲームのストーリー設計は「後から全てに意味があったとわかる」構造になっている。序盤の何気ない会話、アブノーマリティたちのバックストーリー、施設のレイアウト、果てはゲームシステム自体にもストーリー的な意味が埋め込まれている。クリアした後に序盤を振り返ると、全く違って見える。そういう作りだ。

世界観の深み:ディストピアの中の施設

ゲームの舞台は巨大都市「ザ・シティ」で、謎の支配者層が統治するディストピア的な社会設定になっている。ロボトミーコーポレーションはその社会でエネルギーを供給する巨大企業だが、表の姿の裏に何かが隠されている。

この世界は一見するとSF的なディストピアだが、ゲームを進めるにつれてその「世界の仕組み」がより深く見えてくる。「なぜアブノーマリティが存在するのか」「なぜこの施設が必要なのか」「管理人Xは誰なのか」。これらの問いが、ゲームプレイと並行して解き明かされていく。

この世界観はProject Moonの後続作品であるLibrary of RuinaやLimbus Companyにも引き継がれており、Lobotomy Corporationはその世界観の出発点にあたる。後続作品をプレイした後でこのゲームを振り返ると、また新たな発見がある。あるいは、このゲームから始めてLibrary of Ruinaへと進むと、物語の続きを追う体験ができる。

SCP財団的な「謎の存在を封じ込める組織」という設定が、このゲームではより個人的なレベルのドラマと結びついている。管理人Xとアンジェラ、そしてセフィラたちの関係性が、世界の謎と直結していく。その解明が、長時間のプレイを続けさせるモチベーションになっている。

「知ること」がテーマの一貫性

ゲームプレイのテーマ(アブノーマリティを観察して知る)と、ストーリーのテーマ(施設の真実を知っていく)が完全に一致していることに、プレイが進んでから気づく。

プレイヤーはゲームを通じて「管理人X」として、施設の全てを「知っていく」立場に置かれている。アブノーマリティの性質を知り、職員の特性を知り、セフィラたちの過去を知り、施設の真実を知っていく。その全てが「知ること」という一点で繋がっている。

これがLobotomy Corporationというゲームを、単なる「難しい管理シミュレーション」以上の体験にしている部分だ。ゲームプレイと物語が有機的に統合されていて、どちらが欠けても成立しない。

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開発の歴史:韓国のインディースタジオが生み出した傑作

Project Moonの開発史は、このゲームをより深く理解する上で興味深い背景を持っている。開発は2015年1月から始まり、CEOのキム・ジフンを中心に、大学のサークル活動で集まったメンバーたちが立ち上げたスタジオだ。大きな資本も業界経験も持たない小さなチームが、3年かけてこのゲームを作り上げた。

Kickstarterでのクラウドファンディングは目標額の10分の1にも達せず失敗に終わった。目標は40,000ドルだったが、キャンペーンはキャンセルされた。しかし韓国のクラウドファンディングサービス「Tumblbug」では目標額の754%にあたる1,500万ウォン超を集めることに成功し、407人の支援者が平均3万7,000ウォンほどを支援した。国際的な知名度よりも韓国国内でのコアファンに支えられた形だ。

最初はKickstarterでの挫折を経験した小さな韓国インディースタジオが、独自の世界観とゲームデザインを武器にSteamで世界的な評価を得た。その後にLibrary of Ruina(2021年)、Limbus Company(2023年)とシリーズを展開し、現在も新作開発を続けている。インディーゲームのサクセスストーリーとして、Project Moonの歩みは語り継がれている。

Lobotomy Corporationのゲームデザインは、「被害者側からではなく、管理者側から怪物を描く」という明確なコンセプトから生まれた。ホラーゲームは数多くあるが、怪物を管理する施設の運営者という立場でプレイするゲームは当時ほとんどなかった。この独自のポジションが、他のゲームとの差別化になっている。

Kickstarterからの学び

Kickstarterで失敗した後もProject Moonは開発を続けた。その判断が正しかったことは、Steam正式版リリース後の圧倒的好評という結果が示している。クラウドファンディングの成否がゲームの価値と必ずしも一致しないことを、このゲームの歴史は証明している。

インディーゲームとして低予算で作られているため、UIや演出面では大手タイトルと比べると粗さを感じる部分もある。特にゲームの最初期は操作感に独特の癖があり、慣れるまで時間がかかる。でもゲームデザインのコアと世界観の密度は、予算の制約を感じさせない。「お金をかければ面白いゲームが作れる」わけではないという、インディーゲームの良い例でもある。

現在のProject Moonは韓国を代表するインディースタジオの一つとして知られており、特にLibrary of RuinaとLimbus Companyのリリース後に国際的な認知度が大きく上がった。最初の一歩となったLobotomy Corporationは、その出発点として今も重要な位置を占めている。

難易度について:理不尽か、公平か

このゲームの難易度について、正直に書く。これはかなり難しいゲームだ。ただし、「理不尽な難しさ」と「適切な難しさ」が混在していると感じる。そのどちらが多いかは、プレイヤーによって評価が分かれる。

序盤は比較的穏やかで、アブノーマリティも少なくZAYIN中心。少しずつシステムを覚えながら進める。でも中盤以降、特に施設が拡張されてアブノーマリティの数が増えてくると、管理の複雑さが急激に増す。複数のアブノーマリティを同時に管理しながら、複数の職員の状態を把握し、複数の問題に対処する。この情報量の多さが、多くのプレイヤーにとって最初の壁になる。

学習コストの高さ

このゲームの最大のハードルは「知識量が攻略の全てを左右する」点にある。アブノーマリティの正しい管理法を知らなければ、どんなに反射神経が良くても、どんなに操作が上手でも、施設は崩壊する。そして知識は自分で観察して積み上げるか、攻略情報を外から取り込むかのどちらかだ。

最初は全てが未知で、何が正しい行動なのかわからない状態でゲームが進む。「これをやって大丈夫なのか?」と常に不安を感じながら操作する感覚は、独特の緊張感を生み出している。ただし、それが楽しいかどうかは人によってかなり分かれる。「知らない恐怖を楽しめるか」「知らなくて死んでも探索の一環として受け入れられるか」が、このゲームとの相性を決める。

チュートリアルは存在するが、ゲームシステムの全体像を把握するには不十分だ。最初の数プレイは「よくわからないまま崩壊した」という体験になりやすい。これを「新鮮な恐怖体験」と楽しめるか、「説明不足で不親切」と感じるかで、このゲームへの評価が大きく変わる。

最初の3時間は何をやっていいかさっぱりわからなくて、職員が死ぬたびに「なんで!?」ってなってた。でも10時間くらいプレイしたあたりから、急に「わかってきた」感覚があって、そこからが本当に面白かった。

引用元:Steamレビュー

このコメントが示すように、Lobotomy Corporationは「最初の壁」が高い。10時間プレイして「わかってきた」という感覚に達するまでに離脱するプレイヤーも多い。でも壁を越えた先の体験が待っていることは、多くのプレイヤーが証言している。

強くてニューゲームとリセットの問題

このゲームには「強くてニューゲーム」的なシステムが存在する。現時点の装備やアブノーマリティの管理情報を引き継いで1日目からやり直すことができる仕組みだ。ゲームが詰まったり、理想の状態からかけ離れてしまったりしたときに使える。

ただし、育てた職員は引き継げない。装備は持ち越せるが、職員は初期からのやり直しになる。これが「育成の意味がない」という批判につながっている。愛着を持って育てた職員がやり直しで消える、あるいは積み上げた状態を捨ててリセットするしかない状況に追い込まれる、というのは精神的にきつい。

終盤になってようやくわかったんだけど、このゲームは「失敗を受け入れてリセットする覚悟」がないと前に進めない設計になってる。最初にそれを知っていれば、職員への過度な感情移入を避けられたかもしれない。でも感情移入してしまうのがこのゲームの魔力でもある。

引用元:Steamレビュー

後半の難易度上昇について

多くのレビューで指摘されているのが、後半の難易度の急変だ。序盤・中盤は「管理シミュレーション」として機能していたゲームが、後半になると「リアルタイムストラテジー(RTS)としての反応速度と操作精度」を要求してくる場面が増える。

施設全体で同時に問題が発生したとき、どの順番でどう対処するかを素早く判断しながら操作する必要が出てくる。「管理」から「鎮圧」へのシフトを求められる感覚で、これが「ジャンルが変わった」という批判につながっている。「管理シミュレーションをやりたかったのに、いつの間にかRTSになっていた」という感覚は、確かに存在する。

ただ、この設計にも意図がある。ゲームのストーリーが終盤に向かうにつれて、施設の混乱が極まっていく。その「混乱の中で必死に対処する」という体験が、物語の緊張感と呼応している。難しくなることにストーリー的な理由があると理解できれば、受け入れやすくなる。ゲームデザインとストーリーが統合されている部分の一つだ。

クリアまでのプレイ時間については、初クリアで100時間以上かかるプレイヤーが多く、エンディング全回収には更に時間が必要になる。あるプレイヤーは「終盤の10%の要素を攻略するために全体の半分以上の時間を費やした」と述べている。長い道のりを覚悟した上で挑むゲームだ。

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ユーザーの声:プレイヤーたちの体験

Steamのレビューを見ると、このゲームへの評価の振れ幅がよくわかる。同じゲームに対して「人生最高のゲーム体験」という声と「二度と起動したくない」という声が並んでいる。これだけ両極端な評価が共存するゲームは珍しい。

このゲームは「知ること」がそのまま強さになるゲームだと思う。知らないで突っ込むと必ず死ぬけど、ちゃんと理解して向き合えば、どんな怖い存在でも扱えるようになる。そのプロセスが気持ちいい。

引用元:Steamレビュー

こういった「知識習得の喜び」を体験として楽しめるかどうかが、このゲームの評価を分ける最大のポイントだと思う。知識がゲームプレイに直結するデザインが、達成感を生み出す一方で、知らないと理不尽に感じさせる。

クリアまで120時間くらいかかった。終盤の10%の部分を攻略するのに60時間費やした気がする。でも、クリアした後の「やりきった」感は他のゲームでは味わえないレベルだった。RPGで言えば「魔王を倒した」どころじゃない達成感がある。

引用元:Steamレビュー

プレイ時間の長さに関しては、覚悟が必要だ。初クリアまでに100時間以上かかるプレイヤーが多く、エンディングを全回収するには更に時間が必要になる。これを「ゲームとして豊か」と捉えるか「長すぎる」と感じるかも、評価が分かれるポイントだ。

ロボトミーコーポレーションの何が面白いかって言われると、毎プレイで全員の体験が違うところだと思う。出てくるアブノーマリティが違うから、プレイヤーそれぞれの「あのとき死にかけた話」が全部違う。それを語り合うのも楽しい。

引用元:Steamレビュー

プレイヤー同士の体験共有という点でも、このゲームには面白い側面がある。ランダム要素があるため、同じゲームをプレイしていても体験が異なる。「自分のプレイでしか起きなかったこと」が生まれやすい設計になっている。

ポジティブな声の共通点

好意的なレビューに共通するのは「乗り越えた先の達成感」と「世界観・ストーリーへの評価」だ。難しさを理不尽と感じながらも、その先にある体験に価値を見出したプレイヤーが圧倒的多数を占めている。

「1年間脳を焼き続けた」「寿命を担保にされた」「地獄の神ゲー」といった表現がレビューに並ぶのは、このゲームが与える体験の強度を示している。負の表現で褒めているのが、このゲームらしい評価の仕方だ。苦しかったけど、それが全部含めて「体験」だったという感覚が伝わってくる。

世界観とストーリーへの評価は特に高く、「管理シミュレーションゲームだと思って始めたら、気づいたら物語の虜になっていた」という声が多い。ゲームプレイを通じてストーリーを体験するという設計が機能している証拠だ。

ネガティブな声の共通点

一方、否定的なレビューに共通するのは「説明不足」「後半の理不尽さ」「職員を育て直す徒労感」だ。これらは確かに存在する問題で、否定できない。

特にクリア条件の設計について批判がある。エンディングに到達するためには、アブノーマリティの図鑑を一定数解禁し、ミッションを達成する必要がある。これが「無理矢理プレイ時間を伸ばしている」と感じるプレイヤーもいる。楽しいからやっているのか、条件を満たすためにやっているのかが途中でわからなくなる、という感覚だ。

後半になって突然「鎮圧ゲー」になるの本当に苦手だった。序盤・中盤の「管理の妙を楽しむ」感覚が好きだったのに、後半は反射神経とパターン暗記が求められる別のゲームになった感じ。

引用元:Steamレビュー

この批判は理解できる。でも同時に、後半の「混乱した施設を必死に維持しようとする感覚」が、物語の緊張感と完全に一致しているという見方もある。設計意図があるとわかれば、受け入れやすくなるかもしれない。

MODについて:コミュニティの貢献

Lobotomy CorporationはMODに対応しており、コミュニティがさまざまなMODを作成・公開している。中でも注目を集めているのが、難易度や理不尽さを調整するためのMODだ。

ゲームの後半で強制リセットが起きるような局面を回避する手段として、MODを活用するプレイヤーも多い。「バニラのままクリアするのが理想だが、どうしても詰まったらMODの力を借りる」という使い方が、このゲームのコミュニティでは一般的に認められている雰囲気がある。

難易度調整以外にも、新しいアブノーマリティを追加するMODや、UIを改善するMODなど、様々なコミュニティ制作コンテンツが存在する。特にUIの改善系MODは、情報量の多いゲームを見やすくしてくれるため、特に初心者に恩恵が大きい。オリジナルの体験を大切にしたいプレイヤーはバニラを推奨するが、難しすぎてゲームを楽しめないと感じたらMODという選択肢があることは知っておいていい。

攻略情報との付き合い方

このゲームをどこまで自力でプレイするか、攻略情報にどこから頼るか、というバランスは人によって意見が分かれる。

完全に自力で情報収集しながらプレイすると、最初の数日は本当に何もわからない暗中模索の状態になる。それを「探索の楽しさ」と感じられるなら最高の体験になる。でも、最初から攻略情報を参照しながらプレイする方が純粋に「ゲームプレイとしての楽しさ」を得やすい、という意見もある。

個人的には、最初の2〜3日は何も調べずにプレイして、ゲームの雰囲気と基本的な恐怖感を体験してから、詰まったら情報を参照するやり方をすすめたい。全ての情報を最初から知っていると、このゲームの「知らない恐怖」が失われてしまう。それはもったいない。「どこから攻略を見ていいか」については、Wikiや攻略サイトよりも先に「最初の数日だけ自力でプレイする」という体験を大切にしてほしい。

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Library of RuinaとLimbus Companyへ:世界観の広がり

Lobotomy Corporationの後継作品として、Project Moonは2021年にLibrary of Ruina、2023年にLimbus Companyをリリースしている。これらはLobotomy Corporationと同じ世界観を共有しており、物語がつながっている。

Library of Ruinaは図書館という舞台で、来訪者との戦闘をカードゲームで表現したタイトルだ。Lobotomy Corporationのキャラクターたちが重要な役割を担い、前作の謎の続きが明かされていく。Lobotomy CorporationをクリアしてLibrary of Ruinaに進むと、「あの設定がここに繋がっていたのか」という発見が連続する。

Library of Ruinaはゲームシステムが全く異なる(リアルタイム管理からカードバトルへ)ため、Lobotomy Corporationが好きでも好みが分かれることはある。でも世界観と物語を楽しみたいなら、続編へ進む価値は十分にある。特に「Lobotomy Corporationのキャラクターたちのその後が見たい」と思ったなら、Library of Ruinaは必見だ。

Limbus CompanyはスマートフォンでもプレイできるダンジョンRPGで、さらに未来の同じ世界が舞台だ。3作が同じ世界線で描かれており、Lobotomy Corporationから始まる物語の大きな流れがある。ガチャゲーム的な要素を持つため、好みが分かれるが、Project Moonのキャラクター造形と世界観の深みはここでも健在だ。

この「世界観の蓄積」という点で、Lobotomy Corporationは単体のゲームとして評価するだけでなく、Project Moonという創作宇宙への入口としての側面を持っている。長いシリーズへの入門として捉えるなら、Lobotomy Corporationのプレイ時間の長さも「この世界観を深く知るための投資」として意味が変わってくる。

Lobotomy CorporationをクリアしてLibrary of Ruinaに進むという流れは、Project Moonコミュニティでは「マスト」として推奨されることが多い。2作セットで体験することで、Lobotomy Corporationのストーリーの本当の完結が見えてくる、という評価もある。

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このゲームの本質:「知ること」を楽しむゲーム体験

Lobotomy Corporationを長くプレイして気づくのは、このゲームが「知識を蓄積する喜び」を中心に設計されているという点だ。アブノーマリティを何度も観察して、その性質を少しずつ理解していく。最初は怖くて近づきたくなかった存在が、管理法を知った瞬間に「扱える」と感じられるようになる。そのギャップが達成感を生む。

セフィラたちのストーリーを通じて、施設の謎が少しずつ明らかになる。「なぜここにいるのか」「何のための施設なのか」という問いへの答えが、ゲームを進めるにつれて見えてくる。E.G.O装備の由来を知り、職員それぞれの特性を把握し、どのアブノーマリティをどの部門に配置するかを最適化する。全てが「知識」によって支えられている。

これは「反射神経や操作技術が主な能力値になるゲーム」とは根本的に異なる体験だ。知識と観察力と戦略的判断がゲームプレイの中心にある。SCP財団的なフレームワークが、ゲームデザインの核心と見事に一致している。「わかった瞬間の快感」が何度も繰り返されることが、このゲームを長時間プレイさせ続ける原動力になっている。

Bloons TD 6のようなタワーディフェンスゲームが「最適な配置を考える楽しさ」を提供するように、Lobotomy Corporationも「最適な管理方法を見つける楽しさ」を提供している。ただしBloons TD 6が比較的わかりやすいフィードバックループを持つのに対し、Lobotomy Corporationのフィードバックはより複雑で、時に残酷だ。

クリア後の余韻

このゲームのクリア後の余韻は、他のゲームとは質が違う。「終わった」という解放感より先に「全てに意味があったんだ」という気づきが来る。

序盤にわからなかったことが全部説明される。意味不明だった会話が整合性を持って再解釈できる。ゲームシステム自体にも物語的な意味があったとわかる。この「全ての情報が再配置される」体験は、このゲームを通じてしか得られない。

だからこそ、クリアした後に誰かに「やってみて」と言いたくなるゲームでもある。このゲームの体験を共有したい、でも最初から全部を教えると勿体ない、という葛藤が生まれる。それだけの密度を持っている。「ゲームをクリアして誰かに語りたくなった」という体験は、プレイヤーにとって特別な意味を持つことが多い。

クリア後も余韻が続く。施設の各アブノーマリティを改めて思い返したり、セフィラたちのセリフを振り返ったり、Library of Ruinaへと続く世界観を追いかけたり。一つのゲームが終わっても、その体験は長く続く。それがLobotomy Corporationというゲームの、おそらく最大の魅力だ。

向き不向きの整理:買う前に確認してほしいこと

ここまで読んでくれた人のために、率直に「向き不向き」をまとめる。

このゲームが向いている人は、高難度ゲームで失敗を繰り返しながら学んでいく過程を楽しめる人だ。最初は何もわからなくて当然、という態度でゲームに向き合える人。チュートリアルが不完全でも、自分で探索して把握していく作業を苦に感じない人。プレイ時間100時間以上かけても後悔しない覚悟がある人。

SCP財団やホラー施設もののフィクションが好きな人には特に刺さる。「謎の存在を研究・管理する組織」というフレームワークに魅力を感じるかどうかが、ゲームへの没入度を左右する。キャラクターとの感情的な繋がりを求めている人にも向いている。セフィラたちのストーリーは、管理シミュレーションゲームとは思えないほど心に刺さる内容だ。

向いていない人は、短時間で達成感を得たい人、理不尽な死を繰り返すゲームが苦痛な人、ゲームが親切に全てを教えてくれないと楽しめない人だ。このゲームは「知らないと死ぬ」設計で、その「知らない恐怖」が魅力だが、人によっては単なるストレス源にしかならない。

価格面については、Steamで定期的にセールが行われており、66〜70%オフになることもある。もし興味があるなら、セールのタイミングを待って試してみるのも一つの選択肢だ。定価でも惜しくないゲームだが、プレイ時間を考えればセール価格は確実にコスパが高い。

日本語対応については、テキストが全て日本語化されており、言語面での障壁はない。ゲームの情報量が多いので、母国語でプレイできる環境が整っているのはありがたい。ただし翻訳の一部に独特のニュアンスがある場合もあり、コミュニティの攻略情報と照らし合わせながらプレイするのがすすめだ。

Slay the SpireやDoki Doki Literature Clubとの比較

同じく「見た目と異なる体験を持つ」ゲームとして比較されることがあるのが、Doki Doki Literature Clubだ。表面上は可愛いビジュアルノベルに見えて、実は全く異なる体験を提供するゲーム。この「見た目を裏切る」という意味での類似性がある。

Lobotomy Corporationも表面上は「モンスター管理シミュレーション」という説明だが、実際には重厚なストーリーと独自の世界観が大半を占める体験になっている。管理シミュレーションというジャンル表記が正確でないわけではないが、それだけでは全体像を伝えきれない。「ジャンル説明と実際の体験が乖離しているゲーム」という意味で、Doki Doki Literature Clubとの比較は興味深い。

Slay the Spireと比較する場合、Lobotomy Corporationとは根本的にジャンルが異なる。Slay the Spireがデッキ構築ローグライクという一点に特化した洗練されたゲームであるのに対し、Lobotomy Corporationはシミュレーション、ホラー、ストーリーが混在した複雑な体験を提供する。「どちらが面白い」という話ではなく、目指している体験が違う。

ローグライク要素を持つという点では共通しているが、Lobotomy Corporationの場合はランダム性よりも「知識の蓄積」がゲームの主軸になっている。ランダム要素はあるが、それより「知っているか知らないか」の方がはるかに重要だ。Slay the Spireが毎プレイでの「その場の最善手を見つける」パズル的な楽しさを提供するのに対し、Lobotomy Corporationは「知識を積み上げてシステムを支配する」楽しさを提供する。

まとめ:このゲームが向いている人へ

Lobotomy Corporationは確かに難しいゲームだ。理不尽と感じる場面もある。チュートリアルは不十分で、最初は何をすればいいかわからない。育てた職員がリセットで消える。後半のRTS的な操作要求は管理シミュレーションとして疑問の余地がある。

それでも、このゲームをクリアした人の多くが「人生最高クラスのゲーム体験だった」と言う。そのギャップの理由は、「知ること」を通じた成長と達成感、重厚な世界観とストーリーの密度、そして「自分だけの施設体験」が生み出す個人性にある。

100時間以上かけて施設と向き合い、アブノーマリティたちと向き合い、アンジェラとセフィラたちの物語と向き合う。その先に見えるエンディングは、それだけの時間を費やした価値があるものだ。「地獄の神ゲー」という言葉がこれほど正確な評価になるゲームも珍しい。

「管理シミュレーション」という外側を持ちながら、その中に「知識と恐怖と物語の融合体験」を詰め込んだゲーム。これを楽しめる人にとっては、間違いなく記憶に残る体験になる。

ただし、無理に「楽しまなければならない」と思わないでほしい。最初の数時間で「このゲームの感触は自分に合わない」と思ったなら、素直にやめていい。ゲームとの相性はある。でも「難しいから楽しめない」のではなく「自分のゲームスタイルと違う」という理由でないなら、もう少し続けてみてほしい。最初の壁を越えた先にあるものが、このゲームの本当の姿だから。

Project Moonという小さな韓国インディースタジオが、Kickstarterで失敗した後に諦めずに作り上げたこのゲームは、今も「圧倒的に好評」の評価を維持しながら新しいプレイヤーに発見され続けている。それ自体が、このゲームの価値を物語っている。

Timerbornのような、独自のコンセプトで従来のジャンルに新しい扉を開くインディーゲームの中でも、Lobotomy Corporationが達成した「管理シミュレーション×ホラー×重厚ストーリー」の融合は特別な位置を占めている。「管理人X」として施設に足を踏み入れる日が来たなら、覚悟を持って扉を開いてほしい。

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Lobotomy Corporation | Monster Management Simulation

ProjectMoon
リリース日 2018年4月9日
サービス中
価格¥2,570
開発ProjectMoon
日本語非対応
対応OSWindows
プレイ形式シングル
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