Steam同接194,508人。しかも完全無料。
2025年3月5日、Steamにひとつのゲームが静かに登場した。タイトルは『Bongo Cat』。デスクトップに猫を召喚して、キーボードを叩くたびに猫がタスクバーをバシバシ叩く——ただそれだけのゲームだ。
「え、それだけ?」と思うのは正しい反応だと思う。筆者も最初そう思った。でも、この「それだけ」のゲームがリリースから1ヶ月もしないうちにSteam同接トップ5に食い込み、CS2やPUBGといった長年の覇者たちと並んで同接ランキングに居座り続けた。2025年内に何度も「なんでこのゲームこんなに人いるの?」という話題がネットに流れた。
開発したのはドイツのインディーゲームスタジオ「Irox Games」のMarcel Zurawka氏とJulius Krüger氏の2人組。そして驚くべきことに、この2人はBongo Catが大ヒットしているにもかかわらず、「実はまったく儲かっていない」とインタビューで明かしている。
儲からないのになぜ作るのか。なぜこんなに人が集まるのか。「猫がタスクバーを叩く」だけのゲームに、世界中の人がハマり続けた理由——今回はそこを徹底的に掘り下げていく。
Bongo Catとは何か——デスクトップペットの進化系

まず「Bongo Cat」というキャラクター自体の話をしないといけない。
Bongo Catは2018年5月にTwitterユーザーの@StrayRogue氏が投稿したアニメーションGIFが原点だ。白猫が手をパタパタさせる単純なGIFだったが、それを受けて@DitzyFlama氏がボンゴドラムを追加して音楽に合わせて叩かせるバージョンをリリースした。これが爆発的に広まった。
The Daily DotやPolygonは「2018年最高のミーム」と評し、Viceは「インターネット上で唯一の善いもの」と書いた。白くて丸くて、ただひたすら幸せそうにボンゴを叩き続ける猫。その無邪気さが世界中の人の心に刺さった。
それから7年。このミームがSteamゲームとして復活した。Irox Gamesの2人は「最初はクリッカーゲームの素材を探していたが、メンバーの一人が『石の代わりに猫にしよう』と言い出した」とインタビューで語っている。その瞬間、Bongo Catという形が決まった。
2025年2月に早期デモ版が公開されるや否や、即座に話題になった。そして3月5日の正式リリース後、世界規模のプレス報道が相次いで4月に同接が爆発。ピーク時の194,508人という数字は、誰も予想していなかった数値だった。
7年前にツイッターで見てたBongo Catが突然Steamに出てきて、しかも無料で、猫がキーボード打つたびに台パンしてくれる。これ以上何が必要なんですか?
引用元:Steamレビュー
ゲームとしての仕組み——「ポモドーロ猫」の本質

Bongo Catのゲームプレイを説明するのは非常に簡単だ。インストールすると、デスクトップの画面端(デフォルトはタスクバー付近)に白猫が現れる。あとはいつもどおりにPCを使うだけ。キーボードを叩くと猫がタスクバーをバシバシ叩き、マウスをクリックすると猫がそちらに反応する。ゲームパッドを接続して「Gaming Mode」をONにすれば、コントローラーのボタン入力にも反応してくれる。
操作への反応でカウントが積み上がっていく。1,000カウントごとに宝箱が出現し、中からコスメアイテムがランダムドロップされる。ただし宝箱を開けられるのは30分に1回の制限がある。この「30分に1回」という設計が、実はポモドーロタイマーと同じリズムになっている。
開発者のZurawka氏はインタビューで「宝箱を自動で開ける機能は実装しない。ポモドーロタイマーのようなものとして設計したかった」と明言している。「30分作業して、猫の宝箱を開ける」というルーティンが自然に生まれる設計——これは意図的なものだ。
コスメアイテムとレアリティ
コスメアイテムには5段階のレアリティがある。帽子やアクセサリー、衣装といったカスタマイズアイテムが全部で274種類以上収録されている(2025年内の追加分含む)。
ドロップ確率はかなり極端だ。コモン(92種)が約90%、アンコモン(71種)が約9.5%、レア(54種)が約0.49%、エピック(38種)が約0.01%、そしてレジェンダリー(19種)にいたっては0.0002%(50万回に1回)という天文学的確率。
ただし、救済措置として「交換」システムがある。同じレアリティのアイテムを10個集めると、1つ上のレアリティのアイテム1個に交換できる。また、Steam コミュニティマーケットで他プレイヤーとアイテムを売買することも可能だ。エピックやレジェンダリーはマーケットで取引され、プレイヤー経済が自然に生まれている。
仕事中に猫が台パンしてくれるのが可愛すぎる。30分ごとに宝箱を開けるのが楽しみで、気づいたら残業時間も苦じゃなくなってた。
引用元:Steamレビュー
こういう「ながら使い」のできるゲームは昔からあるが、Bongo Catが成功した理由のひとつはPCとの親和性の高さだ。作業中にタスクバーを叩く猫が常に自分を見守ってくれる——これはゲームというより、デジタルペットに近い体験だ。
Stardew Valleyのような農業ゲームで「のんびり過ごす」感覚が好きな人には刺さるはず。以下は癒し系の作業ゲームとして人気の作品だ。

なぜ無料で儲からないのに作り続けるのか——開発者の本音
Bongo Catをめぐって、海外メディアが一斉に報道した驚きのニュースがある。
Steam同接トップ5の常連ゲームでありながら、実際には開発者が赤字を抱えているという事実だ。PC GamerやGameSpot、Dexertoなどが2025年6月〜7月にかけて一斉に報道した内容によると、月間収益はピーク時の4月でも約4,050ドル(約60万円)、その後は2,800ドルまで落ちている。Steamサーバー費用や開発コストを差し引くと、実質的な赤字だとZurawka氏は語った。
「Before, we knocked on 50 doors; now, they are coming to us(以前は50社にアプローチしていたが、今は向こうから来る)」——これがZurawka氏が語った「真の効果」だ。Bongo Catのヒットにより、Irox Gamesという名前が業界で認知された。パブリッシャーや投資家から声がかかるようになり、次回作「Oku(俳句を詠みながら旅する日本風探索ゲーム)」への注目が一気に高まったという。
Zurawka氏はさらに「このゲームを誰でも無料でアクセスできるものにしたい。課金要素を増やしてお金を稼ぐよりも、みんなのデスクトップにBongo Catがいる状態を作りたかった」と語っている。
この姿勢は潔すぎるほど潔い。大手パブリッシャーなら絶対に許可しないビジネスモデルを、インディーゆえに貫けた。そしてその「貫いた結果」が、逆に業界からの信頼につながった。
赤字なのに続けてるって知って、なんか応援したくなった。課金もしてないのに申し訳ない気持ちになるゲーム、初めてかもしれない。
引用元:Steamコミュニティ
こういう「ゲームを作ること自体に意味がある」という姿勢のインディーゲームは、ほかにもある。たとえば同じく大ヒットしたサバイバルゲームでも、小規模チームならではの価値観が游戯体験に滲み出ていたりする。

Meowtiplayer——最大100人でタスクバーをバシバシ叩く狂気

2025年8月11日、Bongo Catに大型アップデートが来た。
タイトルは「Meowtiplayer」。そう、マルチプレイだ。最大100人のSteamフレンドが同じ画面に集まり、全員の猫が同時にタスクバーを叩くというカオスな体験が実装された。
ロビーを作成または参加すると、他プレイヤーの猫がデスクトップ画面端に集合してくる。全員が一斉にキーボードを叩けば、100匹の猫が100個のタスクバーをバシバシ叩く地獄(?)が展開される。誰かがキーを押すたびに「meow meow」の吹き出しが飛び交い、画面がカオスになる。
アップデートと同時に、マルチプレイ参加者向けのフルーツテーマ限定コスメも実装された。
ただしアップデート直後は技術的な問題も出た。猫が消える、複数モニター設定でウィンドウが誤ったモニターに出る、透過処理のバグ——といった不具合が報告された。開発チームはコミュニティの声を受けて迅速に修正し、バグ補償として「Blood Splatter Skin」を全ユーザーに2日間プレゼントした。このレスポンスの速さはコミュニティに好評で迎えられた。
さらに2025年10月には「Emoji Update」が実施され、100種類の新コスメが追加されたが、こちらは「コスメプールが薄まる」という懸念がコミュニティから200件以上のコメントで寄せられた。開発チームは24時間以内に謝罪と調整を行い、柔軟な対応姿勢を見せた。
友達4人で同じロビーに入って全員でタイピングしたら、猫が4匹バシバシしてて笑った。これ絶対笑う。
引用元:Steamレビュー
「作業のお供」として使い倒す——実際の活用法
Bongo Catが「ゲーム」とは少し違う存在であることは、使い始めてすぐに分かる。
PCを普通に使っているだけで猫がカウントをためてくれる。コーディング中も、文章を書いているときも、動画を編集しているときも——キーボードを叩いていれば猫はひたすらタスクバーを叩き続ける。画面の片隅にいつもいる存在感が、不思議と「作業のリズム」を作ってくれる。
特に多かった日本語ユーザーの声は「30分おきの宝箱が良い休憩のきっかけになる」というものだった。ポモドーロタイマーを自分でセットするのは面倒でも、猫の宝箱が「そろそろ休憩しろ」と教えてくれる感覚で続けられる、というわけだ。
Gaming Modeの使い方
ゲームプレイ中はGaming Modeに切り替えることができる。このモードではコントローラーのボタン入力も検知され、FPSやアクションゲームをプレイ中でも猫がしっかり反応してくれる。ゲーム画面に猫がオーバーレイ表示される形になるので、好みに応じてON/OFFを選べる。
GameGrinのレビューでは「PCを使っている間ずっと隣にいてくれる感覚。パフォーマンスへの影響もほぼゼロなので、常時起動していても邪魔にならない」と評されている。重いゲームを動かしながらでも猫だけはいてくれる——軽量設計は地味に重要なポイントだ。
こんな使い方をしているプレイヤーが多い
- リモートワーク中の常駐アプリとして
- 長時間タイピング作業(ライター・プログラマー)の相棒として
- ゲーム配信のデスクトップ装飾として
- レアリティの高いアイテムを狙うコレクターとして
特に「Steamマーケットでアイテム売買を楽しむ」プレイヤーも一定数いる。レジェンダリーアイテムの50万分の1という確率は絶望的だが、だからこそマーケットでの価値が出る。「猫を育てながら副業」という使い方をしているユーザーも少数ながら存在するようだ。
仕事中に猫を見てるとなんか頑張れる気がしてくる。不思議。ゲームというより、デジタルな精神安定剤。
引用元:Steamレビュー
「ながらで遊べる」「ゆるく楽しむ」というコンセプトは、ほかのカジュアル系タイトルとも共鳴する。たとえば農業と探索を組み合わせたゆるいRPGが好きな人にも合いそうだ。

Steam同接194,508人の内訳——なぜこのゲームはバナナと違うのか

Bongo Catが爆発的に広まった時期、よく比較されたゲームがある。2024年にSteam同接チャートを荒らしたクリッカーゲーム群——特に「Banana」だ。
Steamコミュニティには「is this just another scam game like banana?(これもBananaみたいな詐欺ゲー?)」というタイトルのスレッドが立つほど、最初は懐疑的な目で見られていた。
しかし実際にプレイしてみると、その違いは明確だった。
Bananaはアイテムのマーケット取引を利用した「転売ゲー」的な性質が強く、ゲームとしての体験よりも経済的なインセンティブで人を集めていた。一方のBongo Catはアイテムが全て外見カスタマイズのみで、経済的な利益を目的として設計されていない。そもそも開発者自身が「お金を稼ぐことを目的にしていない」と明言している。
この差がレビュー数に如実に出ている。Bongo Catは2025年内に96,000件超えのレビューで96%好評を維持し続けた。Bananaがあれほど人を集めながら評価が割れたのとは対照的だ。
同接194,508人という数字の大半は、「アクティブにゲームをプレイしている」というより「起動したまま他の作業をしている」ユーザーだ。でもこれは批判ではない。Bongo Catはそういう使い方のために作られたゲームだから。「常駐アプリとして起動している人数」を同接と数えることで、純粋なゲームの同接とは異なる面もあるが、それだけ生活に溶け込んでいるという証拠でもある。
Bananaと違って純粋に可愛いだけ。可愛い以外の理由がない。それが一番強い。
引用元:Steamレビュー
クリッカーゲームやインクリメンタルゲームのジャンルは、こういった「ながら体験」の追求がひとつの進化の方向として確立されつつある。もっとゴリゴリしたインディーRPGが好きな人には、以下のような作品もある。

Bongo Catが火をつけたもの——デスクトップペット復権の流れ
Bongo Catのヒットは、あるノスタルジーを刺激した。
1990年代後半から2000年代前半、「デスクトップペット」というジャンルが一時的に流行した。Windowsのデスクトップ上を歩き回る猫、画面端に住み着くキャラクター——あの頃のPCには「一緒にいる何か」が存在した。その後、PCが仕事ツールとして洗練されるにつれて、デスクトップペットは過去のものになっていった。
Bongo Catのヒットで、ゲームメディアはこぞって「デスクトップペットの時代が戻ってきた」と書いた。Steamトップ20入りというニュースは、Game*Sparkやドコモニュースでも取り上げられ、タスクバーをバシバシ叩く猫の映像が日本のゲームコミュニティにも広まった。
実際、Bongo Catのリリース後、類似コンセプトのデスクトップ常駐ゲームが増えた。「作業中の相棒」というニーズは一定数あったのに、それを真正面から満たすゲームがなかった——Bongo Catはその穴を埋めた。
2025年8月にはGamescomへの出展もあり、Zurawka氏が直接アイデアを持ち込んでいる。次回作「Oku」への注目も高まる中、Irox Gamesというスタジオが業界内で確かな存在感を示していくのは間違いないだろう。
ゆるく遊べる良作が集まるSteamインディーシーンを眺めると、百英雄伝のようなクラシックRPGへの回帰も同じノスタルジーの流れを感じる。

もっと楽しむためのヒント
Bongo Catをより楽しむための実践的なポイントをまとめておく。
カウントを効率よく稼ぐには
カウントはキーボード、マウスクリック、コントローラー入力すべてが有効だ。タイピングが多い仕事をしている人は自然とカウントが溜まりやすい。コーダーやライター、ゲーム配信者はそのままの生活リズムで問題ない。
Gaming Modeを活用すると、普段プレイしているゲームの入力もカウントに入る。アクションゲームや音ゲーをよくプレイする人はGaming Modeの方が効率的だ。
レアアイテムを目指すなら
レジェンダリーアイテムのドロップ確率(0.0002%)を狙うのは現実的ではない。現実的なルートは「交換システム」の活用だ。コモンを10個集めてアンコモンに交換、アンコモンを10個集めてレアに交換——というルートでレアリティを上げていく。
Steamコミュニティマーケットで直接購入するのも一つの手だ。エピックやレジェンダリーは相応の値段がつくが、「どうしても特定のコスメが欲しい」という場合はマーケットを使うのが確実だ。
Meowtiplayer(マルチ)の楽しみ方
SteamフレンドとMeowtiplayer(マルチ)でつながると、相手の猫もデスクトップに出現する。ロビー参加中は互いのキー入力が猫の動きに反映され、「今友達もPC作業してるんだな」というゆるい繋がりを感じられる。リモートワーク中の孤独感を紛らわすのに使っているユーザーも多い。
ポモドーロとして使うコツ
宝箱は30分に1回のペースで開けられる。これを意識して「宝箱を1個開けたら10分休憩」というルーティンを作ると、自然にポモドーロ的な作業ペースができる。猫が休憩のリマインダーになってくれるわけだ。
レジェンダリー出るまで続けようと思ったらいつの間にか1,000時間経ってた。もはや生活の一部。
引用元:Steamレビュー

まとめ——「儲からないゲーム」が教えてくれること
Bongo Catをひと言で表すなら、「作業の相棒として完成されたデスクトップペット」だ。
Steam同接194,508人という数字は、ゲームとして競い合った結果ではなく、何万人もの人が「仕事中に猫がいてほしい」と思った結果だ。開発者は赤字でも続けていて、その理由が「みんなのデスクトップに猫を置きたかった」というシンプルなもの——この潔さが逆に信頼を生んでいる。
ゲームらしい「目標」も「物語」も「難易度」もない。でも、毎日PCを開くたびに猫がいて、バシバシとタスクバーを叩いてくれる。その小さな存在感が、長時間の作業を少しだけ楽しくしてくれる。
無料で試せるのだから、とりあえずインストールしてみるのが一番早い。3分後には猫がデスクトップに居着いて、あなたの作業を見守ってくれているはずだ。
最初は「なんでこんなの人気なんだ?」と思ってたけど、入れた瞬間から可愛すぎて理由が分かった。論理じゃなくて感情で刺さるゲーム。
引用元:Steamレビュー


Bongo Cat
| 価格 | 基本無料 |
|---|---|
| 開発 | Marcel Zurawka, Julius Krüger |
| 販売 | Irox Games |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows / Mac |
| プレイ形式 | シングル / マルチ |

