・Anno 117 が気になっているけど買うか迷っている人
・Anno シリーズを初めてプレイしようと思っている人
・Anno 1800 との違いが知りたい人
・Steam の賛否両論の理由が知りたい人
「気づいたら午前2時だった」——そんな体験、Anno シリーズをやったことがある人なら一度は覚えがあるんじゃないだろうか。
2025年11月13日、Ubisoft Mainz が満を持してリリースした「Anno 117: Pax Romana」。舞台は産業革命でも近未来でもなく、今度は古代ローマ帝国の黄金期「パックス・ロマーナ」。プレイヤーはローマ総督として、帝国の辺境の地を開拓し、道路を引き、農場を作り、市民が笑顔で暮らせる都市を作り上げていく。
発売直後にシリーズ25年の歴史で最速売上記録を達成し、Metacriticでは84点(シリーズ史上最高評価)。一方でSteamの評価は「賛否両論」——このギャップ、実はかなり面白い背景があって、単純に「良いゲーム」「悪いゲーム」では語れない部分がある。
この記事では、Anno 117 の魅力と賛否両論の理由を、実際のプレイヤーの声も交えながら掘り下げていく。「Annoシリーズ初めて」という人にも、「Anno 1800 をがっつり遊んだ」というベテランにも、それぞれ違った楽しみ方と注意点があるゲームだ。
Anno 117: Pax Romana とは
Anno 117 は、Ubisoft Mainz が開発する都市建設シミュレーション「Anno シリーズ」の第8作目。シリーズの代表作である Anno 1800(2019年)から6年ぶりの新作で、設定が産業革命時代から古代ローマ帝国に大幅に変わっている。
タイトルの「117」はローマ皇帝ハドリアヌスが即位した西暦117年を指し、「パックス・ロマーナ(ローマの平和)」と呼ばれる帝国最盛期が舞台。プレイヤーはローマ総督として帝国の新しい州を開拓し、皇帝への忠誠を示しながら都市を発展させていく。
対応プラットフォームは PC(Steam / Ubisoft Connect / Epic Games Store)、PlayStation 5、Xbox Series X|S。価格は通常版が¥8,360。
公式トレーラー
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式タイトル | Anno 117: Pax Romana |
| ジャンル | 都市建設シミュレーション / リアルタイムストラテジー |
| 開発・パブリッシャー | Ubisoft Mainz / Ubisoft |
| 発売日 | 2025年11月13日 |
| 価格 | 通常版 ¥8,360 / ゴールドエディション(Year 1 Pass付)¥12,540 |
| プラットフォーム | PC(Steam / Ubisoft Connect / Epic)、PS5、Xbox Series X|S |
| Metacritic | 84点(シリーズ史上最高評価) |
| Steam評価 | 概ね好評(全体70%前後) |
| シリーズ通算 | 第8作目(Anno 1800の後継) |
| 日本語対応 | あり(UI・字幕) |
Annoシリーズとは——25年の歴史と「117」の立ち位置

Anno シリーズは1998年に「Anno 1602」としてスタートした、ドイツ・Ubisoft Mainz が手がける都市建設ストラテジーゲームの老舗シリーズ。「島に都市を建設し、住民の需要を満たしながら貿易・外交・軍事で帝国を広げる」という基本フォーマットは25年以上変わっていない。
シリーズの中でも特に評価が高かったのが、2019年リリースの Anno 1800。産業革命時代を舞台に、複雑な生産チェーンと2大陸をまたいだ経営が「史上最高のAnno」と称された。それから6年、2025年にリリースされた Anno 117 は「史上最も古い時代」へと遡る。
Anno 117 の特筆すべき点は、Metacritic 84点という評価。これは Anno 1800 の82点を超え、シリーズ史上最高評価となっている。同時にシリーズ最速の売上も達成し、発売週のSteamチャートでは Call of Duty: Black Ops 7(1日後発売)を上回り2位を獲得した。
ドイツ連邦政府からの開発助成金も話題になった。総額約569万ユーロ(約9億円)という、ドイツのゲーム開発助成としては過去最大の金額だったこともあり、本作にかけた力の入れ具合が伝わってくる。
Anno 117 のゲームシステム——何が新しくて、何が変わっていないのか
Anno シリーズをやったことがない人に向けて、まず基本的な流れを説明しておく。Anno は「島に都市を作るゲーム」だ。最初は何もない荒れ地から始まり、木材を切り出し、農場を作り、家を建てる。住民が増え、彼らの要求(食べ物・衣服・娯楽など)を満たすと人口が増え、より高度な層の市民が生まれ、新しい建物や生産施設が解放される。この「ニーズを満たす→人口増加→新要素解放」のサイクルが Anno の基本的な楽しさだ。
Anno 117 はその基本フォーマットを維持しつつ、いくつかの重要な変更点を加えている。
ニーズシステムの刷新:「全部揃えなくていい」という柔軟性
Anno 1800 では、住民を次の階級に昇格させるには「指定された需要品をすべて満たす」必要があった。つまり、パンも肉もビールも全部用意しなければならない。
Anno 117 では、これがカテゴリ制に変わった。「食事」「ファッション」「家財」「公共サービス」などのカテゴリごとに、そのカテゴリ内の選択肢から1種類を満たせば OK になった。食事カテゴリならパンでも魚でも穀物でも、どれか一つあれば次の階層へ進める。
これは一見小さな変更だが、プレイスタイルへの影響は大きい。「農業に特化した田舎っぽい都市を作りたい」「交易で稼ぐ都市にしたい」など、プレイヤーの好みや島の地形に合わせた特化型の都市設計が可能になった。Anno 1800 で「全部揃えるのがしんどい」と感じていた人には朗報だ。
ケルト文化 vs ローマ化:Anno 史上最もユニークな選択肢
Anno 117 の最大の目玉システムがこれだ。プレイヤーは帝国の2つの主要な地域——イタリア半島のラティウムと、ブリテン島のアルビオン——を開拓していくが、アルビオンでは重大な選択を迫られる。
「住民をローマ化するか、それともケルト文化を維持させるか」
この選択は単なるフレーバーではなく、ゲームプレイそのものを変える。
ケルト系住民を選んだ場合:チーズ、ビール、飲み角(ドリンキングホーン)などを要求し、沼地や自然と共存するような有機的な村落が形成される。アーキテクチャも木造・土壁系のケルト建築になり、自然の地形を活かした独特の景観が生まれる。
ローマ化した住民を選んだ場合:ソーセージ、パン、アンフォラ(壺)などを要求し、水道橋や石畳の道路が整備された規律正しいローマの都市に変貌する。沼地も排水して整地してしまう——ローマ式だ。
生産チェーンが根本から違うため、同じマップでも2周目は全く異なる都市が生まれる。「ケルトの時はこの島に農場を作ったが、ローマ化したら工房が必要になった」というような発見が随所に出てくる。リプレイ価値が高い仕組みだ。
斜め建設:25年間待ち続けた変更点
Anno ファンが長年要望し続けた「斜め建設」がついに実装された。これまでの Anno は道路も建物も縦横グリッド固定だったが、Anno 117 では45度の斜め配置が可能になっている。
特に川沿いや丘陵地帯での都市設計が格段に自由になった。「昔の Anno は全部四角い街しかできなかった」という不満を持っていた人にとっては、これだけでも購入理由になりうる変更点だ。ファミ通の体験版レビューでも「デザインの自由度が上がっている」として特筆されていた。
地上戦の復活:外交と軍事の選択肢が広がった
Anno 1800 では戦闘は海戦のみだったが、Anno 117 では本格的な地上軍が復活した。歩兵・騎兵・砲兵(投石機など)のロック・ペーパー・シザース型の相性システムで、戦略的な部隊編成が求められる。
ただし、Anno の戦闘は「メイン料理ではなくサイドディッシュ」というのが正直なところ。Total War シリーズのような戦術的な醍醐味はなく、基本は「外交か商業か軍事か、どれで隣国を制するか」という選択肢の一つとして機能している。GamesRadar は「外交でも戦争でも楽しめる設計になっている」と評価しており、戦闘が苦手なプレイヤーでも外交ルートで十分プレイできる。
研究ツリーと神々の信仰
Civilization シリーズを連想させる研究ツリーが追加された。建物のアップグレード、軍事技術の強化、新施設の解放などを研究を通じて進めていく。「資源を集めながらツリーを伸ばす」という進行が Anno の都市建設リズムとうまく噛み合っている。
さらに各地域の神々(ローマの神々、ケルトの神々)を信仰することで異なるボーナスを得られる。ケルト宗教なら地元の資源産出量が上がり、ローマの神々はインフラや軍事力を強化する。ケルト/ローマの文化選択とも連動しており、プレイスタイルの個性を出しやすい仕組みになっている。
Anno 117 の魅力——なぜシリーズ最速で売れたのか

発売から数週間でシリーズ最速売上を達成し、Steam同時接続ピーク5万人超(Anno 1800の約2倍)を記録した Anno 117。その人気の理由を掘り下げてみる。
圧倒的なビジュアル——「生きている古代ローマ」
Anno 117 のビジュアルは、発売前から注目を集めていた要素のひとつだ。高い視点から見下ろすと、石畳の道を市民が歩き、港には船が停泊し、水道橋から水が流れ込み、神殿の周りには祭りの人々が集まっている。
あるレビュアーはこう書いている——「港から船団が出港し、屋根瓦の上に祭りの花火が打ち上がる瞬間を眺めて、『そうだ、こういう体験のためにこのゲームをやってるんだ』と思った」。静止画では伝わりにくいが、細部のアニメーションや環境音(船の漕ぎ手の掛け声、市場のざわめき)が積み重なって、画面の中に「本当に人が生活している古代ローマ」を感じさせてくれる。
GAMES.CH はスコア92点で「シリーズ史上最も美しく深い作品」、TechRadar も「史上最も美しいストラテジーゲームの一つ」と絶賛している。
「気づいたら朝になっている」中毒性
Anno のコア体験——生産チェーンが噛み合い始めた瞬間の気持ちよさ——は Anno 117 でも健在だ。
「最初は一晩だけのつもりが気づいたら午前2時で、倉庫をあともう一個だけ……という状態になっていた。生産チェーンが噛み合い始めた瞬間の気持ちよさは相変わらず最高だ」
— FinalBoss.io レビュアー(出典:FinalBoss.io)
「倉庫が足りない」「この島では小麦が作れないから貿易ルートを引かないと」「あ、市民がビールを求めている、醸造所をもう1棟」——こういう連鎖的な問題解決がどこまでも続いていく。ポーズ機能があるので、焦らず計画を立てながら進められるのも嬉しいポイントだ(ファミ通の体験版レビューでも「ポーズ画面でも操作可能で、焦らずじっくり計画できる」と高評価だった)。
新規プレイヤーへの間口の広さ
Anno 1800 が「複雑すぎて最初は何をすればいいかわからない」という評価を受けることがあったのに対し、Anno 117 は開発初期から「アクセシビリティの改善」を重点目標に掲げていた。段階的なチュートリアル、シンプルになったニーズシステム、視覚的にわかりやすいUI設計——これらがシリーズ初プレイヤーの取り込みに貢献している。
Steam のポジティブレビューには「Anno を初めてプレイしたがチュートリアルがわかりやすかった」という声が複数見られ、新規ユーザーからの評価が高い。シリーズ最速売上の背景には、既存ファンだけでなく新規ユーザーの獲得もあったと思われる。
古代ローマという舞台の新鮮さ
Anno シリーズのファンには「産業革命(Anno 1800)」「大航海時代(Anno 1404)」というお馴染みの時代設定があるが、古代ローマは完全に新しい領域だ。水道橋、コロッセウム、神殿、ローマ街道——これらをゼロから自分の手で作り上げていく体験は、歴史好きのプレイヤーには特に刺さる。
また「ケルト vs ローマ」という対立軸は、実際の歴史的文脈(ローマ帝国によるブリタニア征服)をゲームシステムに落とし込んだもので、歴史的な重みもある。「ゲームで歴史を体験する」楽しさがある。
賛否両論の理由——Steam が「混合」になった3つの原因
Metacritic 84点、OpenCritic 91%推薦——批評家からは高評価なのに、Steam では長らく「賛否両論(Mixed)」が続いた。この乖離には明確な理由がある。
理由1:AIイラスト問題——「よりによって Anno で」
発売直後、ゲーム内のローディング画面や背景イラストにAI生成画像が混入していることがプレイヤーに発覚した。当該画像には頭部が欠けた人物や手の歪んだ人物など、生成AIに典型的なアーティファクトが確認された。
Ubisoft は「プレースホルダー素材が意図せずリリースに混入した」と説明し、1.3パッチでの修正を発表。しかし、同時に「Anno 117 のために歴代最大規模のアーティストチームを結成した。彼らはAIツールを反復・プロトタイプ・探索のために活用している」とも述べており、この矛盾した発言がさらに反発を招いた。
「Anno 1800 の手描きアートは本当に美しくて、あのアートワークの質がAnnoの魅力の一つだった。よりによってAnnoでAIを使うなんて(Of all the video games, not Anno)……」
— PC Gamer 記事より引用されたファンの声(出典:PC Gamer)
Anno 1800 が「手描きイラストの美しさ」でも称賛されていたシリーズだけに、このショックはひときわ大きかった。「ゲーム内容ではなく、Ubisoft への抗議としてネガティブレビューを投票した」というプレイヤーも少なくなかったと見られる。
理由2:Ubisoft Connect の常時オンライン問題
Anno 117 はシングルプレイヤーモードでも、起動時に Ubisoft Connect への接続が必須となっている。
これ自体は Ubisoft タイトルではよくある仕様なのだが、問題は Ubisoft Connect の不安定さだ。発売後しばらくの間、「起動するまでに5分以上かかる」「”This product cannot be activated right now”エラーが頻発する」「マルチプレイ中に頻繁に切断される」といった報告がSteamフォーラムに溢れた。
「ゲーム自体は悪くない。ただUbisoftのAlways Online要件とUbisoft Connectの不安定さには本当に怒りを感じる。シングルプレイでもオンライン必須なのはひどい設計だ」
— Steam ネガティブレビュー(プレイ時間45.9時間)
「45時間以上プレイしてネガティブレビュー」というのも、このゲームの複雑な評価を象徴している。ゲーム自体は楽しんでいるが、ビジネス的な判断(常時オンライン、AI素材)への抗議としてネガティブを入れているプレイヤーが一定数いる。
理由3:キャンペーンの未完成感
ゲーム内容そのものへの批判としては、キャンペーンモードへの不満が目立つ。複数のレビュアーが「ストーリーの後半3分の1がカットされたように突然終わる」「最終章のナレーションが非常に唐突」という問題を指摘している。
「キャンペーンの最後の3分の1がカットされていることが確認されている。ストーリーが突然終わって、そのままサンドボックスモードに移行するだけ。未完成品を定価で売るのは詐欺に近い」
— Steam ネガティブレビュー、プレイ時間20.5時間
ただし、Anno の本懐はサンドボックスモードにあるという意見も多く、「キャンペーンはチュートリアル代わりに使い、あとはサンドボックスで好き放題やる」というプレイスタイルが主流という見方もある。
プレイヤーの声——賞賛と不満のリアル
「倉庫が足りなくなって増設しようとしたら、今度は労働力が足りなくなって……と5時間で2回『詰んだ』と思った。でもなぜかやめられない。Anno ってそういうゲームだよな、と再確認した」
— FinalBoss.io レビュー(出典:FinalBoss.io)
109時間プレイしてネガティブレビューを書いたプレイヤーがいる一方、8時間でも「チュートリアルが素晴らしい、グラフィックが美しい」と絶賛するプレイヤーもいる。Anno 117 への評価が割れる理由は、プレイヤーが何を求めているかによって大きく変わるからだ。
「Anno 1800 のような深い複雑さを期待していた」ベテランには物足りなさを感じる場面がある一方、「初めてのAnnoで入り口として」使うには非常によくできている。批評家たちが口を揃えて褒めるのは、まさにその「アクセシビリティと深さのバランス」だ。
「Anno 117: Pax Romana may not quite be fit for a triumph, but is certainly worthy of a standing ovation.(完璧な凱旋とは言えないかもしれないが、スタンディングオベーションには確実に値する)」
— IGN スコア9/10(出典:IGN)
Anno 117 の序盤の進め方——初めてのプレイヤーへ
「都市建設ゲームって何から始めればいいかわからない」という人に向けて、Anno 117 の序盤の流れを簡単に説明しておく。
ステップ1:木材生産から始める
ゲーム開始時は海岸の交易所(港)からスタートする。最初にやることは木材生産の確立だ。森の近くに木こり小屋2棟+製材所2棟を建て、交易所に道路でつなぐ。これが Anno 117 のすべての基礎になる。
次に住居を建てて人口を増やす。住民が暮らすには「食料」「公共サービス」「ファッション」などのカテゴリ別ニーズを最低1つずつ満たす必要がある(カテゴリ内はどれか1種類でOK)。
ステップ2:食料生産チェーンを作る
初期に最もシンプルな食料はパンだ。生産チェーンは「小麦農場→穀物製粉所→パン屋」の3段階。最適な配置比率は「小麦農場2:製粉所1:パン屋2」——各施設の生産サイクルタイムが違うため、このバランスが崩れると在庫が詰まったり枯渇したりする。
Anno の楽しさは「この比率が崩れたらどこがボトルネックか?」を見つけて改善していくところにある。最初はうまくいかなくて当然だ。Anno 1800 よりもUIが改善されているので、どの建物が稼働不足か視覚的にわかりやすくなっている。
ステップ3:資金管理と維持費の意識
Anno 117 では全ての建物に維持費(金貨/分)がかかる。調子に乗って建物を増やしすぎると、あっという間に赤字に転落する。これが Anno の最大の罠のひとつだ。
黒字を保つ方法は主に3つ:住民の税収(人口が増えるほど増える)、余剰生産物の交易船への販売、貿易ルートの整備。序盤は「住民を増やして税収を上げる」ことに集中するのが鉄則だ。
ステップ4:アルビオン(ブリテン島)へ
ラティウム(ローマ本国)で第3階層の住民「エクエス(騎士階級)」を解放すると、アルビオン(ブリテン島)へのアクセスが開く。ここで前述の「ケルト vs ローマ化」の選択が始まる。アルビオンはラティウムにない資源を持つため、両地域を行き来する貿易ルートが帝国発展の鍵になっていく。
生産チェーンの深みと楽しさ

Anno の醍醐味は生産チェーンの複雑さにある。初期のパン生産(3段階)から始まり、人口が増えるにつれてより高度な品物が要求されるようになる。例えばローマ系の上位住民が求める「ガルム(古代ローマの魚醤)」は、「塩田→サバの小屋→ガルム工房」という3段階のチェーンを要する。
ケルト系住民を選んだ場合は「大麦農場→麦芽工房→醸造所」でビールを作り、「牧草地→酪農場」でチーズを作る。同じ「食料カテゴリを満たす」という目的でも、ローマ化ルートとケルトルートでは全く異なる生産ラインが必要になる。
さらに上位階層では「ワイン(ブドウ農園→ワイン醸造所)」「陶器(粘土採掘→陶器工房)」「装飾品」なども必要になってくる。都市が大きくなるにつれて、貿易ルートを通じて「この島で作ったものをあの島へ」「あの島の資源をこちらに」という物流管理も重要になっていく。
「一つ問題を解決したら次の問題が出てくる」——この連鎖が止まらないから Anno はやめられない。FinalBoss.io のレビュアーが「最初は一晩だけのつもりが午前2時になっていた」と書いた理由が、実際に遊ぶとよくわかる。
マルチプレイヤーについて
Anno 117 にはマルチプレイヤーモードが搭載されており、協力プレイ(Co-op)と対戦(PvP)の両方に対応している。友人と一緒に同じ世界で都市を建設したり、競争したりできる。
ただし、現時点ではマッチメイキング機能がない——フレンドとしかプレイできない仕様になっている。野良で見知らぬ人と遊ぶことは現状できない。また、Ubisoft Connect の接続問題がマルチプレイに影響することもあり、「フレンドと遊ぼうとしたら頻繁に切断する」という報告も発売直後には見られた。
Anno は基本的に「1人でじっくり遊ぶゲーム」という評判が強く、マルチはボーナス的な要素と捉えておくのが現実的だ。
Anno 1800 との比較——どちらを選ぶべき?
Anno シリーズのファンが最も気にするのが「Anno 1800 との比較」だ。Steam フォーラムでも「1800 の方が良かった?」「117 と 1800 どっちを買えばいい?」というスレッドが立ち上がり続けている。
現時点での結論として言えるのは、「どちらが優れているか」より「どちらが今の自分に合っているか」で選ぶべき、ということだ。
| 観点 | Anno 1800 | Anno 117 |
|---|---|---|
| 複雑さ・深さ | 高い(DLC込みで膨大なコンテンツ量) | 中程度(より整理されたシステム) |
| アクセシビリティ | やや高め(学習コストが高い) | 高い(新規プレイヤー向け設計) |
| ビジュアル | 美しい(手描きアートが特に高評価) | 非常に美しい(シリーズ最高) |
| 地上戦闘 | なし(海戦のみ) | あり(地上軍+海戦) |
| 文化システム | なし | あり(ケルト vs ローマ化) |
| コンテンツ量 | DLC多数で膨大 | 基本ゲーム+Year 1 Pass進行中 |
| 価格 | 本体+DLC全部で1万円超も | 通常版¥8,360〜 |
「Anno 初心者でまず試してみたい」なら Anno 117 から入るのがおすすめ。「Anno 1800 を遊い尽くして次が欲しい」ならまだ Anno 1800 の DLC を楽しむ選択肢もある。ただ Anno 117 はこれからDLC展開も続くため、「今買って DLC が出るたびに楽しむ」という形でも十分に価値がある。
DLC展開——「Prophecies of Ash」が2026年4月23日リリース
Anno 117 は Year 1 Pass(3本のDLC)が予定されており、現在進行形でコンテンツが追加されている。
第1弾「Prophecies of Ash(灰の予言)」は2026年4月23日リリース。新しい火山島「Cinis(シネリス)」が舞台で、Anno シリーズ史上最大の島と銘打たれている。いつ噴火するかわからない火山というリスクと戦いながら都市を発展させるという、緊張感のある新要素が追加される。新素材「オブシディアン(黒曜石)」、新商人キャラ「セアキリア」、新しい神も登場する。
その後も「The Hippodrome」(2026年8月予定)、「Dawn of the Delta」(2026年11月予定)と続く。Anno 1800 が6年以上にわたってDLCを出し続けたように、Anno 117 も長期的なサポートが見込まれる。
グラフィック・音楽・世界観——「古代ローマに来た」という感覚

Anno 117 のビジュアルについては、批評家も一般プレイヤーも口を揃えて「シリーズ史上最高」と評価している。TechRadar は「史上最も美しいストラテジーゲームの一つ」、GAMES.CH は92点で「パックス・ロマーナの完璧な再現」と絶賛した。
具体的に何が美しいかというと、まずスケール感だ。高い視点から街を見下ろすと、石畳の広場に市民が集まり、神殿の柱廊が夕陽に映え、港では船乗りたちが荷物を積み下ろしている——その全てが同時進行で動いている。単なる建築物の配置ではなく、「生きている都市」を眺めている感覚だ。
細部へのこだわりも際立っている。水道橋の水が実際に流れている描写、農場での作物の生育アニメーション、宗教的な祭りが行われているときの市民の動き。発売前からプレイヤーが注目していた「船の漕ぎ手が声を合わせて漕ぐサウンド」は、実際に遊んで確認した人たちが「細部のこだわりを感じる」と口々に語っていた。
サウンドデザインも高水準だ。ローマらしい弦楽器と管楽器を使ったサウンドトラックが都市建設の没入感を高め、環境音(市場のざわめき、波の音、農作業の音)が「古代地中海の空気」を演出している。ヘッドフォンで遊ぶとより没入できる。
ただし、ここに一点の影がある——AIイラスト問題で炎上した背景アートと、手描きで定評のあった Anno 1800 との比較だ。ゲーム内の3Dグラフィック自体は文句なしに美しいが、「2Dアートワーク・ローディング画面のクオリティ」については Anno 1800 の方が高いという意見も根強い。Ubisoft はパッチで修正対応を進めているが、「Anno 1800 があれほど手描きにこだわっていたのに」という失望の声は残っている。
システム要件と動作環境
Anno 117 は見た目が美しい分、それなりのスペックを要求する。以下が公式推奨スペックの目安だ。
| 項目 | 最低スペック | 推奨スペック |
|---|---|---|
| OS | Windows 10 64bit | Windows 11 64bit |
| CPU | Intel Core i5-8600K / AMD Ryzen 5 3600X | Intel Core i7-8700K / AMD Ryzen 7 3700X |
| RAM | 8GB | 16GB |
| GPU | NVIDIA GTX 1070 / AMD RX 5700 | NVIDIA RTX 2080 / AMD RX 6800 |
| ストレージ | 約60GB | 約60GB(SSD推奨) |
Steam Deck での動作報告もあるが、Steam Deck HQ のレビューによると「遊べるが最適とは言えない」という評価。小さい画面でのUIの読みにくさと、長いローディング時間が問題として挙げられている。PC でのプレイが基本となる。
購入ガイド——どのエディションを選ぶか
Anno 117 には複数のエディションがある。どれを買えばいいか簡単にまとめておく。
通常版(¥8,360):基本ゲームのみ。まず Anno 117 を試してみたい人はこれで十分。DLC は後から個別購入も可能。
ゴールドエディション(¥12,540):通常版 + Year 1 Pass(3本のDLC)のセット。2026年に予定されている「Prophecies of Ash」「The Hippodrome」「Dawn of the Delta」の3本が含まれる。DLC3本を個別に買うより割安になる計算だ。Anno 117 を長く遊ぶつもりがある人にはこちらがお得。
個人的なおすすめは「まず通常版を買って、気に入ったらYear 1 Passを追加購入」というパターン。Anno はジャンルの性質上、100時間以上遊ぶプレイヤーも多いので、長期的にはゴールドエディションの方がコストパフォーマンスが高くなる可能性が高い。
こんな人に向いている・向いていない
購入を迷っている人向けに、正直にまとめておく。
向いている人:
- 都市建設シミュレーションが好きな人
- 古代ローマ・歴史ゲームが好きな人
- Anno シリーズ初挑戦の人(間口が広い)
- 「じっくり計画を立てて実行する」ゲームが好きな人
- 美しいビジュアルのゲームを求めている人
- 「ケルト vs ローマ」という文化対立に興味がある人
向いていない人:
- Anno 1800 と同等以上の複雑さを期待している人
- 常時オンラインが許容できない人(Ubisoft Connect 必須)
- 強いストーリー体験を求めている人(キャンペーンは評価低め)
- アクション・ペース重視のゲームが好きな人
- Ubisoft の AI 素材使用に不満がある人(修正パッチは適用済み)
まとめ——「史上最高のAnno」か「未完成品」か、答えはプレイヤー次第
Anno 117: Pax Romana を一言で表すなら「史上最も美しく、最も間口が広い Anno」だ。古代ローマという新鮮な舞台、斜め建設・ケルト/ローマ文化選択・研究ツリーなどの新システム、そして圧倒的なビジュアル——批評家たちが Metacritic 84点という高評価を付けた理由は十分に伝わってくる。
一方で、Ubisoft Connect の常時オンライン要件、キャンペーンの未完成感、AIイラスト問題——これらは「ゲームの出来」とは別の次元で、一部のプレイヤーが購入を後悔したり、抗議としてネガティブレビューを入れたりする理由になった。Steam の賛否両論は「ゲームが面白くない」ではなく「Ubisoft の方針への不満」が大きく反映されている。
109時間遊んでもなお「推薦しない」と書いたプレイヤーがいる一方、「港から船が出発する瞬間を眺めて、このゲームをやってよかったと思った」と書いたプレイヤーもいる。どちらも嘘ではない。Anno 117 はそういうゲームだ。
Anno シリーズが初めてなら、今が入るには最高のタイミングかもしれない。
都市建設ではなく、戦場で帝国を広げたい——そんな人には Warhammer 40,000: Space Marine 2 がおすすめ。舞台は遠未来だが、「圧倒的な物量の敵から秩序を守る」という感覚はAnnoと不思議なほど通じるものがある:
