Spaceflight Simulator|スマホ発の本格ロケット打ち上げシムがPCで進化した
最初にロケットが宇宙空間に到達した瞬間、思わずガッツポーズした。
1段目のブースターを切り離して、2段目エンジンを点火して、大気圏を突き抜けて、マップ画面に弧を描く軌道が表示された瞬間――自分で設計した機体が宇宙に届いたというその事実が、なんともいえない充実感をくれた。
Spaceflight Simulatorは、もともとスマートフォン向けに誕生した2Dロケット打ち上げシミュレーターだ。「スマホゲーム」と聞くと軽く見てしまうかもしれないが、このゲームはそういうものじゃない。本物の軌道力学、本物の燃料消費計算、本物のロケット設計論理が詰め込まれている。そして2022年にSteamでPC版が正式リリースされてからは、モバイル版では実現できなかった規模と自由度を手に入れた。
KSP(Kerbal Space Program)のような3Dゲームと比べると「シンプルすぎる」と感じる人もいるかもしれない。でも2Dという制約の中で本物の物理エンジンを走らせているこのゲームの面白さは、プレイしてみるまで絶対にわからない。月に着陸して、火星に向かって、自分だけのロケットで太陽系を旅する――それが、このゲームにはできる。
こんな人におすすめ

- ロケットや宇宙開発に興味がある人
- シンプルな操作感で本格的な宇宙シムを楽しみたい人
- KSPは難しすぎると感じた人や、入門として試してみたい人
- 自分でロケットをゼロから設計して打ち上げる体験をしたい人
- 試行錯誤しながらゲームを攻略するのが好きな人
- スマホゲーム版で遊んでいてPC版も気になっている人
- 1,000円台のコスパ重視でやり込みゲームを探している人
Spaceflight Simulatorとはどんなゲームか

Spaceflight Simulatorは、スウェーデンのインディー開発者Stefo(本名:Stefan Tomander)が個人で開発した2Dロケット打ち上げシミュレーターだ。2018年にAndroid・iOS向けのモバイルアプリとしてリリースされ、世界中で数千万ダウンロードを記録した後、2022年9月にSteamでPC版の早期アクセスを開始した。
ゲームのコンセプトはシンプルにして深い:「ロケットを自分で設計して、本物の物理法則に従って打ち上げる」。画面は2Dの横スクロール型だが、軌道力学の計算は本格的で、慣性・重力・推力・大気抵抗がすべてリアルに作用する。エンジンの推力が足りなければロケットは上がらないし、デルタV(速度変化量)が不足すれば軌道に乗れない。燃料の残量を計算し、ステージングを正しく設計しないと宇宙には届かない。
SteamのレビューはPC版リリース当初から「好評」を維持しており、「モバイルゲームをなめてた。ちゃんとした宇宙シムだった」「軌道力学がリアル。月着陸に成功したとき感動した」といったコメントが多い。価格は2,050円前後(税込)と、同ジャンルのゲームと比べてもかなり手頃な設定だ。
開発者のStefoは現在もアップデートを続けており、PC版では特にグラフィックの強化と新惑星の追加が継続的に行われている。一人の開発者がここまでのゲームを作り続けているという事実自体が、このゲームへの熱量を物語っている。
スマホ版とPC版の違い
Spaceflight Simulatorはもともとスマホアプリだったがゆえに、PC版との違いを気にする人も多い。結論から言うと、PC版は全くの別ゲームと言っていいくらい拡張されている。
スマホ版では惑星の数が限られており、ロケットに搭載できるパーツの種類も制限されていた。一方PC版は惑星・衛星が大幅に増え、太陽系全体を旅できる規模になっている。パーツも増え、より複雑なロケット設計が可能だ。グラフィックも大幅に強化されており、惑星の表面描写や宇宙空間の星空の美しさは、スマホ版とは比べ物にならない。
スマホ版を遊んでいてPC版に興味を持った人は、「自分が知っているSFSが何倍にも膨らんだもの」として期待していい。スマホ版を知らない人は、最初からPC版として遊べば問題ない。基本的な操作感やゲームの哲学は変わらないので、スマホ版の知識があれば移行はスムーズだ。
ロケット設計システムの基礎
パーツベースの設計
Spaceflight Simulatorのロケット設計は、用意されたパーツを組み合わせて機体を組み上げるシステムだ。縦方向に積み上げるシンプルな2D設計画面ながら、パーツの選択と配置が打ち上げの成否を直接左右する。
主なパーツのカテゴリは以下の通りだ。
エンジン:ロケットの心臓部。推力・燃費(比推力=Isp)・サイズが異なる複数の種類がある。大気圏内と真空では最適なエンジンが異なるため、ミッションに合わせた選択が重要だ。
燃料タンク:液体燃料タンクと固体燃料ブースター(SRB)がある。液体タンクはエンジンと組み合わせて自由なステージングが可能で、SRBは切り離せないが推力が高い。
コマンドポッド / 探査機コア:機体のコントロールを担う最重要パーツ。有人ミッションには宇宙飛行士を乗せるポッド、無人ミッションには探査機コアを使う。
フェアリング:積み荷や上段を覆う整流カバー。大気圏内の空気抵抗を減らし、繊細なパーツを大気熱から守る役割を持つ。
着陸脚・パラシュート:天体への軟着陸や地球帰還に必要なパーツ。月のような大気がない天体ではパラシュートは効かないため、逆噴射エンジンとの組み合わせが必要になる。
分離器・デカップラー:ステージングに使う切り離しパーツ。空になった燃料タンクやブースターをここで切り離して機体を軽くする。
太陽電池・バッテリー:電力系統のパーツ。長距離ミッションでは電力の確保が重要になる。
ステージング設計の重要性
Spaceflight Simulatorで最初につまずくポイントのひとつが「ステージング」だ。現実のロケットと同様、使い終わったエンジンや空になったタンクを途中で切り離すことで、機体が軽くなって残りの燃料でより遠くまで行けるようになる。
ステージングを設定する際は、最初に点火するエンジン・分離するタイミング・次に点火するエンジンという順序を正確に組む必要がある。設計画面でステージの順序が確認できるが、ここを間違えると「打ち上げ直後にポッドだけ飛んでいく」「メインエンジンを先に切り離してしまう」という笑えない失敗が起きる。
最初はシンプルな2段式ロケット(地上打ち上げ用の1段目+宇宙で使う2段目)から始めると理解しやすい。1段目でKarman Line(高度100km)を突破して切り離し、2段目で軌道速度まで加速する――この基本構成を理解できれば、あとは自分で応用できるようになる。
推力と重量のバランス
ロケットが地面を離れるためには、エンジンの推力が機体の重量を上回る必要がある。この比率を「推力重量比(TWR)」と呼び、TWRが1.0を超えないとロケットは浮き上がれない。
実際には大気圏内で安定して上昇するにはTWR 1.3〜2.0程度が適切で、高すぎると燃料を無駄に消費し、低すぎると推力が足りなくて低空でもたついてしまう。パーツを追加するたびに重量と推力のバランスが変わるため、「少し燃料タンクを追加したら重くなって飛べなくなった」という状況は初心者が必ず経験する。
Spaceflight SimulatorはKSPほど複雑な計算ツールをゲーム内に持っていないが、設計画面で機体の重量・推力の概算が確認できる。感覚をつかむまでは何度も試して壊してを繰り返すのが最速の学習法だ。
宇宙飛行の物理学を体で覚える

軌道の基礎:なぜロケットは宇宙にいられるのか
Spaceflight Simulatorをプレイするうえで最も重要な概念が「軌道」だ。宇宙に到達しただけでは宇宙に留まれない。重力がある限り、速度が足りなければ地球(ゲームではEarth相当の惑星)に向かって落ちてくる。
「軌道に乗る」とはどういうことか。それは「落ちるスピードと、惑星の表面が丸くなって逃げていくスピードがちょうど釣り合っている状態」だ。横方向に十分速く飛べば、落ちながらも惑星の曲率に沿って永遠に飛び続けられる。地球低軌道ではこれが秒速約7.8km(時速約2万8000km)だ。
この感覚をゲームで実際に体験すると、物理の教科書で読むより100倍リアルに理解できる。「速度が上がると軌道が高くなる」「逆噴射すると軌道が下がる」――宇宙の直感に反する法則を、自分の手を動かしながら学べるのがこのゲームの価値だ。
デルタV(ΔV)の概念
宇宙旅行を語るとき、距離よりも重要な概念がデルタV(ΔV)だ。「ロケットがどれだけ速度を変えられるか」を示す値で、燃料の残量を速度に換算したものだと思えばいい。
月に行くには、軌道に乗るΔVに加えて月へ向かう加速と月軌道投入、着陸・帰還のΔVが必要だ。このトータルのΔVが機体の設計で賄えるかどうかが、ミッション成否の鍵になる。
SFSではKSPのように詳細なΔV計算ツールがゲーム内にあるわけではないが、コミュニティが作成したΔVマップが公開されており、各天体への到達に必要なΔVの目安が確認できる。このマップを手元に置いておくと設計が格段にやりやすくなる。
「このロケットでは火星まで届かない」「もう少し燃料タンクを増やせば到達できる」という感覚を繰り返すうちに、自然とデルタVへの直感が育っていく。
ホーマン遷移軌道
宇宙空間で目的地に向かう際、最も燃料効率の良い移動方法が「ホーマン遷移軌道」だ。現実の宇宙機でも使われる技術で、2回のエンジン噴射で出発軌道から目標軌道へ移動する。
SFSのフライトでは、マップ画面で軌道の形状をリアルタイムで確認できる。エンジンを噴射するたびに軌道が変わる様子が視覚的に表示されるため、「今ここで加速したらどうなるか」を手を動かしながら理解できる。
最初はマップを見ながらの直感的な操作でいい。プレイを重ねるうちに「なぜここで噴射すると効率がいいのか」が自然とわかるようになる。それがわかった瞬間、宇宙の見え方が変わる。
大気圏再突入の難しさ
宇宙から帰ってくるときにも大きな壁がある。大気圏再突入だ。軌道速度(秒速7〜8km)で大気圏に突入すると、空気抵抗で機体が燃え上がる。突入角度が急すぎると燃え尽き、浅すぎると大気圏をスキップして宇宙空間に弾き返される。
SFSではヒートシールドパーツを機体の底部に付けることで再突入時の熱から保護できる。パラシュートを正しいタイミングで展開して減速する必要もある。「宇宙に行くこと」と同じくらい「安全に帰ってくること」が難しいという現実を、ゲームを通じて体感できる。
ゲームの目標と探索要素
自由な目標設定
Spaceflight Simulatorには、KSPのような「キャリアモード」や「サイエンスモード」といった明確なゲームモードの分類はなく、基本的にはサンドボックス形式だ。プレイヤーが自分で目標を設定して、それを達成するためのロケットを設計して打ち上げる、というサイクルを自分のペースで楽しむゲームになっている。
ゲームを始めたばかりの人が目指すべき自然な流れは以下のようなものだ。
最初の目標:Karman Lineの突破――高度100kmを超えて「宇宙に到達した」と認定される瞬間。これが第一歩だ。
次の目標:軌道投入――ただ高くまで飛ぶのではなく、横方向の速度を十分につけて軌道に乗る。ここが最初の大きなハードルで、多くの人がここで一度詰まる。
月への挑戦――軌道に乗れたら、今度は月(Moonまたはゲーム内の衛星)を目指す。月軌道への遷移、月軌道への投入、着陸という3段階のミッションになる。
月からの帰還――着陸だけでなく、地球に安全に帰還するまでが「完全なミッション」だ。帰還のためのΔVも含めた設計が必要になる。
他の惑星・衛星への探査――火星相当の惑星、木星相当のガス惑星とその衛星など、太陽系全体が探索の舞台になる。
ゲーム内の天体
PC版SFSは太陽系全体をモデルにした惑星系が舞台だ。現実の太陽系と完全に一致するわけではないが、地球・月・火星・木星系に相当する天体が存在し、それぞれ個性的な環境を持つ。
Earth(地球相当):スタート地点。厚い大気があり、打ち上げには大きな推力が必要。大気圏突入時の熱も強い。
Moon(月相当):最初のターゲット。大気がないため着陸にはエンジン逆噴射が必須。表面はクレーターだらけで、低重力のため着陸は比較的容易。
Mars(火星相当):赤い砂漠の惑星。薄い大気があるためパラシュートが使えるが、それだけでは着陸速度が速すぎる。地球よりも重力が弱いため、帰還ロケットは地球ほど大型にしなくていい。
Venus(金星相当):分厚い大気と高い重力を持つ「地獄の惑星」。着陸は比較的簡単だが、そこから離陸して帰還するのが非常に難しい。多くのプレイヤーが「片道切符」になってしまうことで有名な難関天体だ。
Jupiter system(木星系相当):巨大なガス惑星とその衛星群。ガス惑星への軌道投入には大量のΔVが必要で、衛星の一つひとつが異なる環境を持つ。
Mercury(水星相当):太陽に最も近い岩石惑星。太陽の強い重力の影響で到達するのに膨大なΔVが必要な超難関天体だ。
外惑星(土星・天王星・海王星相当):PC版では外惑星系も追加されており、探索の舞台はさらに広がっている。遠距離ゆえにフライトには長い時間と多くの燃料が必要になる。
成果システムとチャレンジ
SFSには「実績(アチーブメント)」システムがあり、「初めて軌道に乗った」「月に着陸した」「火星に到達した」といった節目でアンロックされる。これが自然なマイルストーンになっており、「次は何を目指せばいいか」の道しるべになる。
また、ゲーム内には「チャレンジ」モードも用意されており、特定のミッション条件をクリアするシナリオ形式のコンテンツも楽しめる。有名な歴史的宇宙ミッションをモチーフにしたものや、厳しい制約の中でのロケット設計を求めるものなど、多様なチャレンジが用意されている。
ロケット設計の応用と発展

再使用型ロケットの設計
現実の宇宙開発でSpaceXが実証した「ロケットの第1段を垂直着陸させて再使用する」技術は、SFSでも実現できる。グリッドフィン(方向制御翼)と着陸脚を追加して、逆噴射しながらゆっくり降下するロケットを設計するのは高度なチャレンジだが、成功したときの映像美は格別だ。
SpaceXのFalcon 9やStarshipをモチーフにした再使用ロケットを設計・打ち上げ・着陸させることを目標にするプレイヤーも多く、YouTubeやRedditには成功例の動画が多数投稿されている。現実のロケット開発への理解を深めながらゲームを楽しめる、SFSならではの遊び方だ。
宇宙ステーションの建設
軌道上に複数の打ち上げを行い、宇宙ステーションを段階的に組み上げることもできる。コアモジュールを打ち上げて、次の打ち上げでドッキングポートを持つ別のモジュールを接合して、どんどん拡張していく。
ドッキングはSFSの技術的な難関のひとつで、2機の宇宙船を宇宙空間で接近させてドッキングポートを合わせる操作が必要だ。軌道力学の特性上、単純に「近くに飛んでいく」だけでは合わせられないため、相対速度の調整と慎重な接近が求められる。初めて成功したときの達成感は、ゲーム内でも最高レベルだ。
惑星間航行の計画
火星や木星系などの遠い天体を目指す場合、「惑星間遷移窓」の概念が重要になる。惑星は常に太陽の周りを公転しているため、最も効率的に移動できるタイミングが存在する。このウィンドウを逃すと大量の燃料を余分に使うか、長い時間待つことになる。
SFSにはマップ画面でリアルタイムに軌道変化を確認しながらフライトプランを立てる機能がある。目的地に向けた噴射の角度とタイミングを調整しながら「正しい軌道に乗った」と確認できたときの安心感は、長い打ち上げシーケンスの緊張と相まって忘れられない体験になる。
有人 vs. 無人ミッション
SFSではクルーを乗せた有人ミッションと、探査機(プローブ)のみの無人ミッションの両方が可能だ。有人ミッションでは宇宙飛行士を安全に帰還させるという制約が生まれ、設計がより複雑になる。生命維持のためのカプセルが必要で、帰還のためのΔVも確保しなければならない。
一方の無人ミッションは帰還を考えなくていいため、より遠くの天体を小型・軽量の探査機で狙える。火星の砂漠や木星の衛星に探査機を送り込む「片道ミッション」は、それはそれで独特の目標達成感がある。プレイスタイルに合わせて使い分けよう。
SFSのビジュアルとサウンド
シンプルながら美しいビジュアル
SFSは2Dゲームだが、その見た目は決して安っぽくない。PC版では惑星の表面テクスチャが高解像度になり、大気の散乱表現(夕焼けや地平線のグラデーション)が追加されている。宇宙空間の星空も細かく作り込まれており、遠くに見える惑星が美しい。
打ち上げ時の炎と煙のエフェクト、エンジン噴射時の光、大気圏突入時の高温プラズマ発光――どれも「ゲームらしい誇張」ではなく、リアルな宇宙開発の映像を参考にした表現になっている。実際の打ち上げ映像と並べて見ると、その再現度の高さが実感できる。
月の表面から地球を眺める視点や、木星の巨大な姿を眼下に見下ろす衛星軌道からの眺めは、何度見ても飽きない。2Dという形式上、視点は固定されているが、それゆえに「宇宙の中の小さな機体」というスケール感が際立って伝わる。
音響設計の工夫
宇宙は音がない(真空なので)が、SFSではゲームとして楽しめる音響設計になっている。大気圏内では轟音のエンジン音と風切り音がある。宇宙空間に出ると静寂になり、エンジン音は抑えられた遠い音になる。この切り替えが「大気圏を突破した」という感覚を演出していて巧みだ。
また、機体がステージ分離するときの「バン」という音、着陸脚が展開するときの「カチッ」という音など、各アクションの効果音が丁寧に設計されている。地味なように見えて、こういった細かい音響がゲームへの没入感を支えている。
SFSコミュニティとカスタムパーツ

活発なオンラインコミュニティ
SFSにはSteamコミュニティ、Reddit(r/SpaceflightSimulator)、Discord、YouTubeにまたがる活発なコミュニティが存在する。「月着陸に初めて成功した」「このロケットのどこが悪いか教えてほしい」「再使用ロケットの動画を撮ったので見てほしい」といった投稿が毎日行われている。
特にRedditのコミュニティは数十万人規模で、毎日多数の投稿がある。英語が中心だが、画像や動画を見るだけで参考になる情報は多い。「初めて月に着陸した!」という投稿には必ず温かいコメントが集まり、コミュニティ全体として初心者を歓迎する雰囲気がある。
日本語コミュニティはまだKSPほど大きくないが、YouTube上では日本語プレイ動画が増えてきており、攻略情報も充実してきている。「SFS 攻略」「スペースフライトシミュレーター 月」などで検索すれば日本語の動画や解説が見つかる。
カスタムパーツ(MOD)
PC版SFSはカスタムパーツ(MOD的なもの)に対応しており、コミュニティが作成した追加パーツをゲームに導入できる。現実のロケットを忠実に再現したパーツセット(NASAのSLSや、SpaceXのStarship、ロシアのソユーズなど)が多数公開されており、リアルな宇宙機を設計したい人には大変ありがたい。
導入の方法はKSPのMODより比較的シンプルで、パーツファイルを指定フォルダに入れるだけのものが多い。ただし公式サポートではないため、ゲームのアップデートで動かなくなることもある。その点は割り引いて使うといい。
SteamのWorkshopや公式Discordサーバー内のチャンネルで多くのカスタムパーツが配布されているので、気に入ったものを探してみよう。
プレイヤーが作った機体の共有
SFSでは自分で設計したロケットのデータ(.jsonまたは.txt形式)を書き出して共有できる。Redditや専用のフォーラムサイトでは、有名なロケット(サターンV、ファルコン9、スペースシャトル)を忠実に再現した機体データが公開されていて、ダウンロードして自分のゲームで使えるものも多い。
最初はうまく設計できなくても、公開されている機体を参考にして「なぜこのパーツをここに配置しているのか」を解析することが、設計の上達への近道になる。
PC版の現在地とアップデート状況
早期アクセス中のゲームとして
PC版のSpaceflight SimulatorはSteamでの正式な「Early Access(早期アクセス)」タイトルとして販売されている。つまり、まだ開発途中のゲームだ。この点は購入前に理解しておきたい。
ただし「Early Accessだから未完成で遊べない」ということはなく、現時点でもかなりの完成度のゲームとして楽しめる。太陽系全体の探索、本格的な物理エンジン、豊富なパーツという骨格はすでにしっかり出来上がっている。開発者のStefoは継続的にアップデートを配信しており、グラフィックの改善、新惑星の追加、バグ修正などが定期的に行われている。
「今後どんな機能が追加されるか」については開発者のロードマップや公式Discordで情報が発信されているので、関心がある人はチェックするといい。
開発者の継続的なコミットメント
SFSの魅力的な点のひとつが、開発者Stefoの熱量だ。一人の開発者(ワンマン開発)として年々クオリティを高め続けており、モバイル版からPC版への拡大、グラフィックの大幅改善、惑星数の増加など、着実に進化してきた。
Discordサーバーでは開発者本人がコミュニティと直接やり取りしており、バグ報告や要望への反応が速い。「開発者と距離が近い」という感覚は、大手スタジオのゲームにはないインディーゲームならではの良さだ。
もちろん一人開発ゆえのペースの遅さや、実装できる機能の限界も存在する。KSPのような複数の大型DLCや何千ものMODを期待するのは現実的でないが、それを踏まえても十分に楽しめるコンテンツ量は保証されている。
正直なデメリットと注意点

ゲームモードの自由度の裏返し
SFSは基本的にサンドボックス形式で、ゲームが「次のミッションはこれをやれ」と明確に指示してくることはあまりない。自分で目標を設定してそこに向かっていくスタイルのため、「何をすればいいかわからない」という状態になりやすい。
KSPのキャリアモードのように資金・評判・サイエンスポイントを管理しながら段階的に開発を進める戦略的な面白さは、SFSにはほとんどない。「とにかく好きなようにロケットを飛ばしたい」という人には最高だが、「達成すべき目標や制約が欲しい」という人には物足りなく感じることもある。
この点はアップデートで改善されてきている部分でもあるが、現時点では「KSPに比べると目標設定が自由すぎる」という点は正直に書いておく。
チュートリアルの不足
SFSのチュートリアルは、軌道力学の知識がある程度ある人には問題ないが、完全な初心者には少し不親切な設計だ。「なぜ軌道に乗るには横方向に速くならなければいけないのか」という概念の説明が薄く、最初に詰まったとき外部の情報(YouTubeや攻略サイト)に頼る必要が出てくることが多い。
ただし「外部情報が豊富に存在する」という点では問題はない。YouTubeで「Spaceflight Simulator tutorial」と検索すれば英語の丁寧な解説動画が大量に見つかる。日本語動画も増えてきており、「初心者向け」「月着陸方法」などのキーワードで探せばヒットする。
KSPとの比較:深さと学習曲線
同ジャンルの「KSP(Kerbal Space Program)」と比べた場合、SFSはよりシンプルでとっつきやすい反面、深みでは劣る部分がある。KSPは3Dで複雑な軌道力学を徹底的に再現し、MOD文化も発展した13年以上の歴史を持つ。一方SFSは2Dでよりシンプルなゲームプレイを提供しており、価格も安い。
どちらが「良い」という話ではなく、用途と好みの問題だ。「宇宙シムに初めて触れる」「スマホ版を遊んでいた」「軽く遊びたい」ならSFS、「徹底的に深いシムで何千時間でも遊びたい」「3Dが好き」「MODで無限に拡張したい」ならKSPが合っている。両方プレイするという選択肢もある。
動作環境の要求
PC版SFSは軽量なゲームで、推奨スペックは低い部類に入る。大型ロケット(パーツ数が非常に多いもの)や宇宙ステーションの建造を行うとやや重くなることがあるが、一般的なゲーミングPCはもちろん、ゲーム向けではない中程度のノートPCでも快適に動作することが多い。
- OS:Windows 7以降(64bit推奨)
- CPU:Core i5 / Ryzen 5 相当以上
- RAM:4GB以上(8GB推奨)
- GPU:DirectX 11対応、1GB VRAM以上
- ストレージ:約500MB〜1GB程度
ストレージ容量もかなり少なく、インターネット回線が細い環境でもダウンロードが苦にならない。「動作スペックが心配で買えない」という人は、PC版をためらう必要はほぼないと思っていい。
初心者が最初の1週間でやるべきこと
Step 1:まず最初のロケットを作って爆発させる
ゲームを起動したら、最初にやることは「ロケットを作って打ち上げてみる」だ。ガイド通りでなくていい。まず適当にパーツを組み合わせて打ち上げてみよう。たぶん爆発するか、まっすぐ飛ばないか、すぐ燃料切れになるかのどれかだ。
それでいい。最初から完璧なロケットは誰も作れない。爆発の理由を考える――エンジンが弱すぎたのか、パーツのバランスが悪かったのか、ステージングの順序が逆だったのか――この「なぜ失敗したか」を考えることがSFS上達の第一歩だ。
Step 2:YouTubeで「SFS 初心者 軌道」を検索する
最初の壁は「軌道投入」だ。「高度100kmに到達した」と「軌道に乗った」は全く別のことで、多くの初心者がここで詰まる。
YouTubeで「Spaceflight Simulator 軌道 初心者」もしくは「SFS orbit tutorial」と検索すると、軌道投入の方法を丁寧に解説した動画が見つかる。特に「軌道速度に達するには横方向に速くなければいけない」「プログレードバーン(進行方向への噴射)で軌道を上げられる」といった基本概念を動画で視覚的に理解するのが最速だ。
Step 3:2段式ロケットの設計を覚える
最初のロケット設計は、シンプルな2段式から始めよう。
1段目は大型エンジン+大きめの燃料タンクで、大気圏を突破して軌道速度の手前まで加速する役割。2段目は中型エンジン+小さめの燃料タンクで、宇宙空間で軌道投入の最終加速と、目的地への遷移に使う。最上部にコマンドポッドを乗せて完成だ。
この基本構成を一度マスターすると、「月に行くには2段目の燃料タンクをもっと大きくしよう」「帰還のために3段目も必要だ」というように、自然と発展していく。
Step 4:月を目指す
軌道に乗れたら、次の目標は月(Moon)への到達だ。軌道から月へ向かうためには「Trans Lunar Injection(月遷移噴射)」が必要で、地球軌道から離れて月に向かう楕円軌道を描く噴射を行う。
月の軌道に入ったら「Lunar Orbit Insertion(月軌道投入噴射)」を行い、最終的に着陸降下エンジンで軟着陸する。この一連の手順は、1969年のアポロ11号がやったこととまったく同じ原理だ。ゲームを通じてアポロ計画の宇宙飛行士たちがやったことを追体験できる。
Step 5:失敗を記録する習慣をつける
SFSは「失敗から学ぶゲーム」だ。うまくいかなかったミッションを記録して(メモでも写真でもいい)、「何が原因だったか」を考える習慣を作ると、驚くほど早く上達する。
特に「このロケットはΔVが足りなかった」「着陸速度が速すぎた」「再突入角度が浅すぎた」という具体的な原因を特定できるようになると、次の設計が確実に改善される。この繰り返しがSFSの醍醐味だ。
Step 6:コミュニティで答えを見つける
詰まったときはSteamコミュニティかRedditの r/SpaceflightSimulator が頼りになる。「月に着陸できない」「軌道投入がうまくいかない」といった質問を英語で投稿すれば、親切な回答が返ってくることが多い。
読み専でも十分で、過去の投稿を検索すれば同じ疑問への答えが既にあることが多い。「SFS moon landing tutorial」などのキーワードで検索してみよう。
SFSが面白い理由:本物の宇宙開発との連鎖

現実の宇宙開発ニュースが楽しくなる
SFSをプレイすると、現実の宇宙開発ニュースの見え方が変わる。SpaceXがFalcon 9の1段目を着陸させる映像を見て「あのエンジン逆噴射の制御は相当難しい」とわかるようになる。NASAの火星探査機の軌道投入の成功に、「あのΔVを確保するのにどれだけ燃料が必要だったか」と想像できるようになる。
2026年4月に成功したNASAのアルテミス2ミッション(人類初の月周回有人飛行)のニュースも、SFSやKSPを遊んでいれば「どんな軌道を描いたか」「月遷移噴射のタイミングはどうだったか」という視点で楽しめる。宇宙ニュースが「他人事のニュース」から「自分が追体験したことのある世界の話」に変わる。
物理への興味が自然に育つ
SFSをプレイしていると、学校で習う物理の概念が実感を伴って理解できるようになる。慣性の法則、重力、運動量保存、エネルギー効率――これらがゲームの中でリアルに作用していることを、手を動かしながら学べる。
「物理の勉強が苦手だったけど、SFSをやってから授業がわかるようになった」という声は世界中のSFSプレイヤーから寄せられている。もちろんSFSを「教育ツール」として使う必要はないが、遊んでいるうちに自然と物理の直感が育っていくというのは、このゲームならではの副産物だ。
一人開発者の夢が世界に届いた話
SFSを語るとき、開発者のStefoの話を避けて通れない。スウェーデンの一人の開発者が、「本物の宇宙の物理をゲームで体験できるようにしたい」という思いで作り始めたアプリが、世界で数千万ダウンロードされ、PC版まで拡大した。
これはゲーム業界でも稀な成功だ。大手スタジオが何百人もかけて作るAAAタイトルでなく、一人の人間の情熱と技術がここまで届くという事実は、ゲームというメディアの可能性を感じさせる。SFSというゲーム自体への愛着も、この背景を知るとひとしおだ。
SFSかKSPか:どちらを選ぶべきか
同じロケット打ち上げシムジャンルの2大作として、「SFSとKSPのどちらを選ぶか」という疑問を持つ人は多い。明確な答えを提示しておきたい。
SFS(Spaceflight Simulator)を選ぶべき人
- ロケットシムに初めて触れる・入門として試したい人
- スマホ版SFSを遊んでいてPC版に移行したい人
- 2,000円程度の手頃な価格で宇宙シムを体験したい人
- シンプルな操作感でサクッと遊びたい人
- PCスペックに自信がなくて軽量なゲームを探している人
- モバイルゲームも含めたマルチプラットフォームで遊びたい人
KSP(Kerbal Space Program)を選ぶべき人
- 3Dの本格的な宇宙シムで何百時間も遊び倒したい人
- 複雑なゲームシステムと戦略性を求める人
- MODで無限に拡張して遊びたい人
- SFSを遊んでさらに深い体験を求めるようになった人
- 難しいゲームほど燃えるという人
どちらか一方しか選べないというルールはないので、SFSで宇宙の基礎を楽しんでから、KSPの深みに進むというルートもある。価格を合わせても5,000円前後で、二つの宇宙シム体験が得られるのはかなりコスパがいい。
まとめ
Spaceflight Simulatorは「スマホゲーム」という出自を超えた、本物の宇宙シミュレーターだ。
2Dというシンプルな形式の中に、本物の軌道力学、本物の燃料計算、本物のロケット設計論理が詰め込まれている。KSPほど複雑ではないが、宇宙を飛ぶという体験の本質はしっかり伝わる。初めてロケットが軌道に乗った瞬間、初めて月に着陸した瞬間、初めて火星に到達した瞬間――それぞれに確かな達成感がある。
しかも価格は2,000円ちょっとで、スペックが高くなくても動く。Early Access中ながら今でも十分楽しめる完成度があり、開発者が継続的にアップデートを続けている。コスパという観点では、かなり優秀な選択肢だ。
もし宇宙開発のニュースを見て「自分でもロケットを飛ばしてみたい」と思ったことが一度でもあるなら、SFSは絶好の入り口になる。最初の数回は爆発するし、軌道に乗るまでに何度もやり直すことになる。でもそれが楽しい。ロケットが爆発するたびに「なぜ失敗したか」がわかる。そのわかり方が積み重なって、ある日突然すべてが繋がる瞬間がくる。
そのとき、宇宙の見え方が少し変わっている。
SpaceXの打ち上げ映像を見て「あの着陸の制御は凄い」と感じるようになっていたり、アルテミスのニュースを聞いて「月遷移噴射のΔVはどれくらいだったんだろう」と考えるようになっていたりする。ゲームを通じて宇宙と繋がれる体験――それがSpaceflight Simulatorの本当の価値だ。
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Spaceflight Simulator
| 価格 | ¥1,700 |
|---|---|
| 開発 | Team Curiosity ✦ |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows / Mac |
| プレイ形式 | シングル |

