Melvor Idle|RuneScapeをひとりで再現した放置RPGの深すぎる沼
最初にMelvor Idleを起動したとき、正直「これだけ?」と思った。画面には採掘や釣りのボタンがズラっと並んでいて、クリックすると棒グラフがじわじわ伸びていく。BGMもない。派手なエフェクトもない。ただ、数字が増えていく。
でも、そこから気づいたら4時間経っていた。
木を切っていたら木炭が作れることに気づいて、木炭から鍛冶が開放されて、鍛冶で作った剣を装備したら次のモンスターエリアに挑戦できるようになって……。スキルとスキルが複雑に絡み合っていて、ひとつのことをやっていると別のことが解放されていく。この「発見の連鎖」が、単純な見た目の裏に隠れた本当の姿だった。
Melvor IdleはRuneScapeというMMORPGに青春を捧げた一人の開発者が、「大人になってもあの感覚を取り戻したい」という思いで作った放置系RPGだ。Steamのレビューは1万4000件を超え、94%が好評という圧倒的な支持を得ている。しかもそれを最初はひとりで作り上げたというから驚く。
この記事では、なぜこのゲームがここまで多くのプレイヤーを夢中にさせるのか、その仕組みと魅力をできるだけ丁寧に伝えていきたい。
こんな人に読んでほしい

読んでほしい人の話をする前に、少しだけ「放置ゲームへの不満」の話をしておきたい。
放置ゲームに一度ハマったことがある人ならわかると思うが、大半の放置ゲームはある時点で急速に面白くなくなる。序盤は新鮮で、新しい要素が次々と出てきて楽しいのに、中盤以降は「ただ大きな数字を待っているだけ」という状態になる。プレイヤーが判断することがなくなって、ゲームはただのバックグラウンドタスクになっていく。
Melvor Idleはその問題を根本から解決しようとしていて、序盤から終盤まで常に「次に何をすべきか」という判断がある。そのおかげで中盤以降も飽きにくい。
- 放置ゲームに飽き飽きしていて、もう少し戦略的な深さが欲しい人
- RuneScapeが好きだった、あるいは名前だけ知っている人
- スキルをコンプリートする達成感を味わいたい人
- スマホとPCを行き来しながらゲームをしたい人
- 課金圧力のないゲームを探している人
- RPGのキャラ育成が好きだけど忙しくてまとまった時間が取れない人
- コレクション要素と効率化が好きな人
逆に、爽快なアクションや映像美を求めている人には向かない。Melvor Idleは数字と効率の世界だ。でもそれが好きな人には、他のゲームでは得られない中毒性がある。

Melvor Idleとはどんなゲームか
Melvor Idleは一言で言うと「RuneScapeのスキルシステムを放置ゲームとして再設計したもの」だ。RuneScapeというのはもともとブラウザで動くMMORPGで、木を切ったり魚を釣ったり鉱石を掘ったりといったスキルを延々と上げていくゲームデザインで有名だった。2001年のサービス開始から世界中で数億人がプレイしてきた、老舗の大型MMOだ。
Melvor Idleはそのスキルを上げる部分だけを抜き出して、リアルタイムに放置で進行するゲームとして作り直している。MMO特有の他プレイヤーとの交流やリアルタイムな操作が必要な戦闘は省かれていて、その代わりに「自分のペースでじっくりキャラを育てる」という体験に特化している。
基本的な操作はシンプルで、何かアクションを選んで「開始」を押すだけ。あとはキャラクターが自動で動き続ける。採掘なら鉱石をどんどん採掘し続けるし、戦闘なら自動でモンスターを倒し続ける。プレイヤーはその間、別のことをしていてもいい。
ただし、何をするかの選択と、装備や食料のセッティングは自分でやる必要がある。どのスキルをどの順番で上げていくか、どのモンスターと戦うか、どんな装備を作るか——そこに戦略と工夫が生まれる。
スキルの種類と数
ベースゲームの時点で非戦闘スキルが16種類、戦闘スキルが8種類、合計24種類のスキルが存在する。主なものを挙げると、非戦闘系には木こり(Woodcutting)、採掘(Mining)、釣り(Fishing)、料理(Cooking)、鍛冶(Smithing)、錬金術(Herblore)、農業(Farming)、魔法陣(Runecrafting)、盗み(Thieving)、フレッチング(弓矢作成)、クラフティング、召喚(Summoning)などがある。
戦闘系には攻撃(Attack)、強さ(Strength)、防御(Defence)、体力(Hitpoints)、スレイヤー(Slayer)、魔法(Magic)、弓術(Ranged)、祈り(Prayer)がある。
どのスキルも個別に経験値を積んでレベルを上げていく。最大レベルはベースゲームで99。拡張パックを入れるとさらに120まで伸びる。全スキルをLv99にするのが多くのプレイヤーにとってひとつの大きな目標になるが、それだけで軽く300〜400時間は必要になる。
熟練度(Mastery)システム
Melvor Idleが普通の放置ゲームと違う点のひとつが、スキル経験値に加えて「熟練度(Mastery)」という別の成長軸があることだ。
各スキルの中には複数のアイテムや行動が存在する。例えば採掘なら銅鉱石、鉄鉱石、石炭、金鉱石……と種類がたくさんある。それぞれに個別の熟練度があって、特定の鉱石を採り続けると、その鉱石専用のMasteryが上がっていく。Masteryが一定レベルに達すると、経験値ボーナスが乗ったりドロップ率が上がったりする。
つまり「スキルのレベル」と「そのスキル内の個々の行動レベル」という二重構造になっていて、どちらも上げることでどんどん効率が良くなっていく。この仕組みが「もう少しやれば次のボーナスが来る」という絶妙な引力を生み出している。
さらに各スキルには「Mastery Pool」という概念もある。スキル内の個々のMasteryを上げることでプールにポイントが溜まり、プールが一定の割合に達すると全体的なボーナスが解放されていく。個々のMasteryとプール全体のMasteryという、二段階の達成感が連続してやってくるため、どこかひとつのスキルを集中してやっていると次々と「ちょっとした達成」が来る。これが放置ゲームにしては珍しい長期的な引力の源になっている。
放置ゲームを20本くらいやってきたけど、Masteryの仕組みはマジで神。同じ行動してるのに少しずつ変化があるから飽きない
引用元:Steamレビュー
スキル間の連携が生む無限ループ
Melvor Idleの最大の特徴は、すべてのスキルが互いに影響しあっていることだ。
例えば、鍛冶(Smithing)で鉄の剣を作るには採掘(Mining)で鉄鉱石と石炭が必要で、その石炭を効率よく採るには木こり(Woodcutting)で作った木炭との比較が必要になる。また、戦闘で消費する食料は料理(Cooking)スキルで作るし、その食材は釣り(Fishing)や農業(Farming)で得る。祈りスキル(Prayer)を上げると骨が必要で、骨はモンスターを倒すと手に入る。
どこか1つのスキルだけを突き詰めていると、別のスキルがボトルネックになってくる。「次に何をすべきか」を常に考えながら進んでいくのが、Melvor Idleの面白さのコアにある。
具体的に序盤の流れを追ってみる。最初に木を切る。木から火を焚いて料理ができるようになる。料理で食料を作ると戦闘で長く戦えるようになる。戦闘で得た骨で祈りを上げると戦闘が有利になる。戦闘で強い敵を倒せるようになると、良い素材が手に入る。良い素材で鍛冶をすると良い装備が作れる。良い装備でさらに強いエリアへ……という具合に、ひとつの行動の先に必ず次の行動がある。
こういったゲームデザインは、アイドル系のゲームの中では珍しい部類に入る。大半の放置ゲームは「数字を積み上げて大きくするだけ」という構造が多いが、Melvor Idleはそこにリソース管理と依存関係のパズル的な面白さを持ち込んでいる。

一人の開発者が作ったという事実

Melvor Idleはオーストラリア・パース在住のBrendan Malcolm(ネット上ではMalcs、MrFruxとも呼ばれる)が個人で開発を始めたゲームだ。彼がRuneScapeを始めたのは子どもの頃で、大人になった今も「あの世界に帰りたい」という気持ちが続いていた。
ただ、フルタイムの仕事をしながらMMORPGを遊ぶのは難しい。まとまった時間がとれない社会人になって、RuneScapeを昔のようには遊べなくなった。そこで彼が考えたのが「RuneScapeのスキルシステムを、置いておけるゲームで再現できないか」というアイデアだった。
2018年に開発を開始し、仕事から帰った後の夜の時間を使って一人でコツコツと作り続けた。9〜10時間の仕事を終えた後に帰宅して、成功の保証が何もない状態でゲームを作り続けるのは相当なプレッシャーだっただろう。それでも続けられたのはコミュニティの反応があったからだという。初期のブラウザ版から少しずつプレイヤーが増えて、フィードバックが届くようになった。そのやり取りが開発の原動力になっていたと、後にインタビューで語っている。
2020年にGames by Malcsというスタジオを正式に立ち上げ、Steamでのアーリーアクセスを開始すると、App Store、Google Playを合わせて60万ダウンロードを超えるヒット作になった。そして2021年10月、RuneScapeを作ったJagexがパブリッシャーとして手を挙げる。
RuneScapeの会社Jagexとのパートナーシップ
Jagexの社内でMelvor Idleが話題になったのは2020年初頭のことだ。社内の誰かがプレイし始めて、「放置系だから仕事中でも遊べる」という理由でじわじわ社内に広がったという。
2021年10月21日にJagexは正式にMelvor Idleのパブリッシャーになることを発表した。JagexはMelvor Idleのマーケティング、ローカライゼーション、テクニカルサポート、QAを担当し、BrendanはクリエイティブコントロールとMelvor Idleの「買い切り課金なし」というゲームモデルを維持することができた。JagexはBrendanのビジョンを変えることを望まず、あくまでバックアップという立場をとってくれた。
これがRuneScapeファンにとって大きな意味を持った。「RuneScapeの魂を受け継いだゲームが、RuneScapeの開発元に認められた」という構図は、コミュニティの信頼感を一気に高めた。なりきりでも便乗でもなく、本家から「これは本物だ」と太鼓判を押されたような感覚だ。
RuneScapeで育った世代として、JagexがMelvorをバックアップしてくれるって聞いた時は感動した。方向性がズレなくてよかった
引用元:Steamレビュー
2021年11月18日に正式版がリリースされ、Melvor Idleは一個人の夜の趣味から、世界中で遊ばれる作品へと成長した。インディーゲームの成功例として語られることも多いが、個人的にはそれ以上に「大人になってもゲームへの情熱を持ち続けた人が、同じように情熱を持つプレイヤーに見つけてもらった話」として好きだ。

戦闘システムの深さ
Melvor Idleはスキルゲームであると同時に、しっかりとした戦闘ゲームでもある。100種類以上のモンスターがいて、それぞれに弱点や特殊な攻撃がある。戦闘も自動で進むが、装備の選択と戦略の組み立ては完全に自分の仕事だ。
3種類の戦闘スタイル
近接、遠距離、魔法の3つの戦闘スタイルがあり、それぞれ対応する装備とスキルが存在する。モンスターごとに弱点があるため、ただ強い装備を着ていればいいわけではない。魔法に強いモンスターには近接で挑むべきだし、近接が強い相手には遠距離や魔法が有効になる。
近接戦闘は攻撃・強さ・防御の3スキルを均等に上げていくのが基本で、攻撃スタイルによって経験値の割り振りが変わる。「Accurate」スタイルは命中率を上げながら攻撃経験値を得て、「Aggressive」スタイルはダメージを上げながら強さ経験値を得る。どのスタイルで戦うかで育つスキルが違うため、目標に合わせた選択が必要だ。
遠距離(Ranged)は弓や矢を消費する点が特徴で、矢の補充コストを考えると経済効率の計算が必要になる。魔法(Magic)も魔法陣(Rune)を消費するため、同様にコスト管理が求められる。どの戦闘スタイルも「強さ」と「コスト」のバランスを取りながら使う必要があって、そこに判断の余地が生まれている。
祈りスキルとの組み合わせ
戦闘中に「祈り(Prayer)」を有効にすると、攻撃力アップや防御力アップなどのバフが得られる。ただし祈りにはポイントが必要で、そのポイントはモンスターから手に入る骨や様々なアイテムを使って補充する。戦闘を続けるほど骨が手に入るが、高レベルの祈りは消費量が多いため、長時間の放置戦闘では補充アイテムの備蓄が重要になる。
このポイント管理という要素が、「ただ放置するだけ」ではない戦闘の深みを生んでいる。
スレイヤーシステム
RuneScapeにも存在する「スレイヤー」という仕組みがMelvor Idleにもある。スレイヤーコインを使って特定のタイプのモンスターを倒すミッションを受注する形で、通常エリアでは手に入らないレアアイテムがスレイヤーエリアで入手できる。
スレイヤースキルを上げることで、より強力なスレイヤーモンスターへの挑戦権が解放されていく。戦闘スキルと連動しているため、どちらか一方だけを集中して上げるよりも、バランスよく強化していった方が攻略が楽になる場面が多い。スレイヤーエリア専用の装備を作るためにはスレイヤーコインが大量に必要なので、スレイヤーを意識して戦闘を続けることが中盤以降の重要な課題になってくる。
ダンジョン攻略の緊張感
ベースゲームには8つのダンジョンがある。ダンジョン戦闘は特殊なルールがあり、途中でHPが0になると失敗になってしまう。自動回復や食料を消費しながら最後のボスまで突破しなければならない。
それまでの放置戦闘とは違い、ダンジョンに挑む前には入念な準備が必要だ。装備を揃えて、食料を十分に用意して、どの祈りを使うか計画する。失敗するとリソースが無駄になるため、「まだ早いか」「もう少し上げてから行こう」という判断が求められる。この緊張感が放置ゲームらしくない独特の体験を生んでいる。
ダンジョン攻略に成功すると独自の報酬が手に入る。例えばゲーム序盤の難関ダンジョン「Bandit Base」を突破するとFiremaking(火起こし)系の強力なアイテムが、「Miolite Caves」では特殊な素材が手に入る。ダンジョンボスはそれぞれ専用の行動パターンを持っていて、初挑戦で「こんな攻撃パターンがあったのか」と気づかされることも多い。
ダンジョン挑戦前の準備が本当に楽しい。食料の種類と量をどうするか、装備は最適か。失敗して「あと少しだった」ってなった時に何が足りなかったか考えるのがたまらない
引用元:Steamレビュー

召喚とシナジーシステム

Melvor Idleのスキルの中でも特に独創的なのが召喚(Summoning)だ。モンスターから得た素材でタブレット(石板)を作り、それを装備することで使い魔の効果を得られる。
使い魔は単体でも様々なボーナスを持っているが、Melvor Idleの面白い点は「2種類を同時に装備するとシナジー効果が発動する」ことだ。例えばある組み合わせでは食料の消費量が大幅に下がったり、経験値の獲得速度が上がったりする。組み合わせによって効果が大きく変わるため、「今やっているスキルに合わせて最適な組み合わせはどれか」を考えることが召喚スキルの楽しさになっている。
シナジーの組み合わせはベースゲームだけでも膨大で、「どの組み合わせが今の自分に最適か」を考えていくだけでかなりの時間が溶ける。コレクション要素と最適化要素が合体したような仕組みで、こういったシステムが好きな人にはたまらない要素だ。
召喚スキル自体を上げるのも一苦労で、タブレット作成に必要な素材がそれぞれ別のスキルと関連している。召喚を上げようとすると自然と他のスキルも上がっていく、この連動設計が見事だと感じる。ただし召喚の素材を集めるには戦闘で特定のモンスターを倒す必要があるため、戦闘スキルが一定以上ないと召喚を進められないという制約もある。
召喚が中盤以降の攻略を変える
ゲーム序盤は召喚スキルをあまり意識しなくても進められる。しかし中盤以降、高レベルのダンジョンに挑むようになってくると、召喚シナジーで食料消費を抑えることが攻略の鍵になってくる場面が出てくる。「あのダンジョンが突破できないのは召喚が足りないからかもしれない」という気づきが来た時に、初めて召喚スキルを本気で上げ始めるプレイヤーも多い。
召喚を本格的に攻略し始めると、タブレット用の素材を集めるための戦闘効率を上げたくなり、そのために別の装備が必要になり、その装備を作るために鍛冶スキルが……という連鎖が始まる。この「あるスキルを上げたいのに別のスキルを上げるところから始まる」という逆算設計が、Melvor Idleのプレイ時間が伸びる最大の理由のひとつだと思う。

なぜここまで人気なのか
Melvor Idleが他の放置ゲームとは別格として評価される理由を、できるだけ具体的に掘り下げてみる。
課金圧力が完全にゼロ
Melvor Idleは買い切り形式で、ゲーム内課金が一切ない。広告も出ない。ガチャもない。追加コンテンツは有料DLCとして出ているが、それを買わなくてもベースゲームで数百時間遊べる。
スマホのアプリゲームや基本無料のPCゲームに慣れていると、「放置してたら課金要素が来るはず」という警戒感が自然と出てくる。でもMelvor Idleにはそれがまったくない。放置しても何かを催促されることはなく、ただひたすら数字が積み上がっていく。この「純粋さ」がプレイヤーの信頼を勝ち取っている理由のひとつだ。
開発者のBrendanは最初からこの方針を崩さなかった。Jagexとのパートナーシップを結ぶ際も、課金モデルを変えないことを条件に交渉したという。ゲームの収益モデルとして課金なしを貫くのは開発者にとって大きなリスクだが、それがプレイヤーからの絶大な支持につながっている。
マルチプラットフォームのクロスセーブ
Steam版を買うと、同じアカウントでiOS版やAndroid版にもアクセスできる。クラウドセーブに対応していて、PC、スマホ、タブレットどこでも同じ続きから遊べる。
放置ゲームはスマホとの相性が特によく、「PCで長時間放置して結果を確認するのはスマホで」という使い方ができる。通勤中にスマホで少し操作して、家に帰ったらPCで大量のドロップを確認する、という生活スタイルにハマる。「ゲームに縛られず、生活の隙間に合わせてゲームが待っていてくれる」という感覚が、忙しいプレイヤーに特に支持されている。
クラウドセーブのおかげでスマホとPCの往復がシームレス。PC版で2500時間遊んで、それとは別にスマホでも遊んでる。総プレイ時間が怖くて数えられない
引用元:Steamレビュー
コンプリート欲を刺激する設計
全スキルをLv99にする、全モンスターを倒す、全アイテムを集める、全Masteryを最大にする——Melvor Idleにはコンプリート要素がたくさんある。そのすべてを達成した「完全クリア」状態まで達するには、数百時間では足りない。一部のプレイヤーは1000時間、2000時間を超えてもまだやり込んでいる。
これは批判的な文脈で語られることもあるが、コンプリートを求めるプレイヤーにとっては「終わらないゲーム」こそが理想の形だ。ゴールが遠すぎるのではなく、常に次の目標が見えている状態が続く設計になっている。今取り組んでいるスキルが上がれば次のアイテムが解放されて、そのアイテムが揃えば次のダンジョンに挑戦できる。この「達成→次の目標」のサイクルが途切れない。
プレイ中に「調べたくなる」コミュニティの存在
Melvor Idleには充実したWikiがあり、攻略情報が詳細にまとめられている。日本語の攻略記事も複数あって、「なんでこのスキルが上がらないんだろう」「このシナジー組み合わせ最強らしいけど本当?」という疑問をすぐに解決できる。
Wikiを調べているうちに新しい効率化の方法を見つけて、またゲームに戻っていく。このゲームとWikiの往復が習慣化して、いつのまにかMelvor Idleのことを毎日考えるようになる。そういうプレイヤーが多い。ゲームの内容だけでなく、「コミュニティと一緒に攻略していく体験」もMelvor Idleの魅力のひとつだ。
日本語ローカライズの質
Jagexとのパートナーシップ後、日本語ローカライズが行われた。スキル名やアイテム名が日本語で表示されるようになり、日本のプレイヤーにとって読み進めやすい環境になっている。一部の用語は英語のままのこともあり、完璧な翻訳とまでは言えないが、基本的なゲームプレイを理解する上では十分な品質になっている。
公式Wikiは英語ベースだが、ブラウザの自動翻訳でほぼ問題なく読めるという意見も多い。日本語の攻略サイトやブログも充実してきていて、日本語プレイヤーとしての環境は年々良くなっている。

弱点も正直に書く

Melvor Idleはすべての人に勧められるゲームではない。向いていない部分も正直に書いておく。
序盤のとっつきにくさ
最初に画面を開くと、スキルの一覧が並んでいて「何からすればいいか」が直感的にわかりにくい。チュートリアルはあるが、全体像を把握するまでには少し時間がかかる。
「金庫(Bank)」の容量制限についても最初は説明が薄く、気づいたらアイテムがあふれて困った、というプレイヤーの声がある。序盤に「Bank Upgradeを先に買っておけばよかった」と後悔する人も少なくない。序盤の金策として採掘や盗みが効率的なのだが、そういった情報もゲーム内では積極的に教えてくれない。ある程度は自分で試行錯誤するか、Wikiを参照する必要がある。
また、戦闘スキルが細分化されているが、どのスタイルで戦えばいいかが最初は分かりにくい。命中率の表示が実際の確率と少し乖離して見える点も、初心者が混乱しやすいポイントとして挙げられている。
見た目の地味さ
グラフィックは非常にシンプルで、ゲーム画面のほとんどはボタンとテキストと数字で構成されている。アクションゲームのような動きはなく、キャラクターが画面を動き回ることもない。
スキルごとにアイコンはあるが、戦闘でモンスターのアニメーションがあるわけでもなく、ダンジョンを探索する画面があるわけでもない。すべてがテキストと数字と棒グラフで表現されている。「ゲームっぽさ」を視覚的な刺激で感じたい人には物足りない。Melvor Idleの面白さは画面の外、つまり頭の中で計算や計画をしているときに来る。その感覚が楽しめない人には向いていない。
進行が遅くなる時期がある
序盤は次々と新しいことが解放されて進行が早いが、中盤にさしかかると「同じ素材をひたすら集め続ける時間」が長くなる。高レベルの装備を作るためのレアドロップ待ち、スキルを上げるための単純作業の繰り返し——こういった「作業感」は避けられない。
放置ゲームの性質上、その間ゲームを放置しておけばいいのだが、「なかなか進まない」という感覚はゲーム中盤以降に一定周期でやってくる。そこで離脱するプレイヤーも一部いる。ただし、その時期を乗り越えると次の達成感が大きいので、腰を据えてやれる人には問題にならない部分だ。
終わりのないゲームの沼
Melvor Idleには実質的な「クリア」がない。目標を自分で設定しないと、いつまでもやり続けることになる。「今日は1時間だけ」と思って始めても、Masteryがあと少しで上がりそうだったり、新しいシナジー効果に気づいたりして気づいたら深夜になっていることがある。
これを楽しめる人にとっては最高の特徴だが、自分でプレイ時間をコントロールしたい人には注意が必要だ。
このゲーム「今日はここまで」って決めてプレイするの本当に難しい。ログアウトしようとするたびに「あ、これだけやってから」ってなる。自制心がある人向け
引用元:Steamレビュー
拡張パックで広がる世界
Melvor Idleはベースゲームだけでも十分なボリュームがあるが、現在までに3つの拡張パック(DLC)がリリースされている。ベースゲームをある程度やり込んだプレイヤーが次のステージに進める構成になっている。
Throne of the Herald(第1弾)
2022年11月にリリースされた最初の拡張パック。最大の変更点は全スキルのレベル上限が99から120に引き上げられたことで、「全スキル99を達成した後、まだ先がある」という状況が作られた。7つの新ダンジョン、55種類以上の新モンスター、500種類以上の新アイテムが追加され、コンテンツ量がベースゲームの倍近くに膨らんだ。
非戦闘スキルにもLv100からLv120の新コンテンツが用意され、ベースゲームをすべて終えたプレイヤーが次に向かう場所として定番になっている。召喚スキルにも8種類の新しい使い魔が追加され、新しいシナジー組み合わせが100以上増えた。「ベースゲームの終わりが見えてきたな」と感じたタイミングで導入するのがちょうどいい。
Atlas of Discovery(第2弾)
第2弾では、まったく新しい2つのスキル「Cartography(地図作成)」と「Archaeology(考古学)」が追加された。探索・発掘という行動を通じて地図を作り、古代遺物を掘り起こすという体験は、既存のスキルとはまったく違うフレーバーを持っている。
さらに「Barrier(バリア)」という新しい戦闘メカニクスが導入され、敵のバリアを崩してから本体にダメージを与えるという新要素が加わった。「Ancient Relics」というゲームモードも追加され、ランダム要素のあるプレイスタイルが楽しめるようになった。このゲームモードはキャラクターの成長が部分的にランダムになるため、同じゲームでも毎回違う攻略が求められる。コンプリートを目指すプレイヤーよりも、「また一から始めてみたい」というプレイヤーに向いている追加要素だ。
Into the Abyss(第3弾)
2024年6月にリリースされた最新の拡張。「深淵(Abyss)」という新次元が舞台で、ゲームバランスが大きく変わる「Abyssal Realm」が登場する。この世界では通常の装備が通用せず、アビッサルダメージに対応した専用の装備とスキルが必要になる。ベースゲームとは完全に別の世界として設計されていて、「これはほぼ別ゲーだ」という感想を持つプレイヤーも多い。
新しいスキルとして戦闘スキル「Corruption」と非戦闘スキル「Harvesting」が追加された。また、全スキルに「スキルツリー」という仕組みが導入され、スキルポイントを割り振ってパッシブボーナスを解放していく新しい成長要素が生まれた。このスキルツリーはベースゲームのスキルにも適用されるため、DLCを入れることで序盤からの感触が少し変わる。
このDLC以降、ゲームの奥行きはさらに深くなっていて、「ベースゲームはチュートリアルだった」と言うプレイヤーも出てきている。

RuneScapeとの比較で見えてくるもの

Melvor IdleはRuneScapeのインスパイア作品として語られることが多いが、両者は全然別のゲームだ。むしろ「RuneScapeのあの感覚を、今の生活スタイルに合わせて遊び直したもの」という表現の方が正確だと思う。
RuneScapeは本格的なMMORPGで、他プレイヤーとの交流、クエスト、ストーリー、大規模なPvPコンテンツなどが揃っている。世界観も深く、長年かけて積み上げられたコンテンツの量は圧倒的だ。しかし同時に、本格的に遊ぶには相当な時間の確保が必要で、社会人になってから続けるのが難しくなるゲームでもある。
Melvor Idleはその「時間制約」という問題を解決しようとして生まれた。スキルシステムという核の部分だけを取り出して、放置形式に仕上げることで「忙しい大人でもRuneScapeのあのスキルを上げる喜びを味わえる」ゲームになった。
RuneScapeに思い入れがあった人は特に刺さる部分が多い。採掘、釣り、鍛冶という行動の名前から、アイテムの種類、スキルの構成まで、随所にRuneScapeへのリスペクトが感じられる。採掘中に出てくる鉱石の種類や段階的な素材の関係性など、RuneScapeプレイヤーには「あ、あれと同じだ」という瞬間が何度もやってくる。
ただしストーリーや他プレイヤーとの交流は存在しないため、そういった要素を求める人はRuneScape本体に挑む方がいいかもしれない。Melvor Idleは「ひとりでじっくりスキルを育てる体験」に特化した作品だ。
RuneScapeをやってた頃の感覚が戻ってきた。あの時みたいに「あと少しでレベル上がる」ってひたすらやり続けて、気づいたら夜明けになってた
引用元:Steamレビュー

プレイを始める前に知っておくと得なこと
Melvor Idleは「知らずに始めて迷う」よりも「少し予備知識を持って始める」方が序盤の体験が大幅に良くなる。実際に遊んできたプレイヤーたちのアドバイスをまとめておく。
序盤でやっておくべきこと
まず「Bank(金庫)のアップグレードを早めに買う」という点を覚えておきたい。ゲームが進むとアイテムの種類が急激に増えるため、Bankの容量が足りなくなる。序盤のうちにコインを稼いでBankをアップグレードしておくと、後の管理が格段に楽になる。
序盤の稼ぎとして効率的なのが盗み(Thieving)スキルだ。初期から利用できるスキルで、Thievingを上げながらコインを稼げるため、Bank用の資金集めに使いやすい。採掘でも序盤のコインは稼げるが、時間効率ではThievingに軍配が上がることが多い。
もうひとつ重要なのが「食料の備蓄を切らさないこと」。戦闘に挑む際に食料がないと、HP回復ができずに倒されやすくなる。料理スキルを早めに上げて、戦闘用の食料を定期的に補充する習慣をつけると戦闘がスムーズになる。
攻略の方針を立てる
Melvor Idleには決まった進行ルートがない。「何から始めてもいい」ではあるが、ある程度の方針があると迷わない。多くの攻略記事が推奨する流れとして、「木こり→火起こし→料理と釣り→採掘と鍛冶→戦闘」という順番でスキルを育てていくと、相互に必要な素材を確保しながら進められて、詰まりにくい。
戦闘スキルは早めに始めた方がいい。戦闘でしか得られない素材や経験値があるため、非戦闘スキルだけを上げ続けていると後で戦闘スキルが相対的に低くなって苦労する。「非戦闘スキルを育てながら、並行して戦闘もこなす」という意識を持つと攻略が安定する。
ゲームモードの選択
Melvor Idleにはいくつかのゲームモードがある。通常モードは死亡してもペナルティがない最も遊びやすいモード。「Hardcore」モードは1回死亡するとゲームオーバーという緊張感のあるモードで、自信のある人向けだ。「Adventure」モードはリソースの得られ方が変わる別の体験ができる。初めて遊ぶなら間違いなく通常モードを選ぶのが正解だ。
また、前述した「Ancient Relics」モードはAtlas of DiscoveryのDLCが必要になる。このモードはキャラクターのスキルツリーがランダムに提供されるロゲライク風の構成になっていて、コンプリートを目指すよりも「毎回違うゲームを楽しみたい」という方向のプレイスタイルに合っている。DLCを持っているなら試してみる価値はある。
Melvor Idle 2の発表と今後

2025年4月には続編となる「Melvor Idle 2」が正式に発表された。前作のファンにとっては大きなニュースで、ボリュームと快適性がさらにアップした新作として開発が進んでいる。
前作はひとりの開発者が夜中に作り続けた作品だったが、Melvor Idle 2はチームとしての開発体制が整った状態で作られている。前作で積み上げた「何が面白かったのか」というフィードバックをもとに設計されており、放置RPGというジャンルとしてさらに洗練された体験が期待できる。
気になるのは「ベースゲームの良さが失われていないか」という点だ。チームが大きくなり、商業規模が上がると、インディーゲームとしての「ひとりの熱量が伝わってくる感じ」が薄れてしまうことがある。その心配を感じるプレイヤーも一定数いるが、BrendanがクリエイティブコントロールをJagex相手にも守り続けてきた経緯を見ると、続編でも同じ姿勢は変わらないだろうという期待がある。
前作をやり込んできたプレイヤーにとっては、続編の発表はまさに「おかわり」の知らせだ。2がリリースされる前に前作を一通りやっておく、という意味でも今がMelvor Idleを始めるいいタイミングかもしれない。
こういった「続編が楽しみなゲームの前作をやっておく」という感覚はインディーゲームならではの楽しみ方だ。
スキルを上げ続ける快感はどこから来るのか
Melvor Idleをしばらく遊んでいると、自分がなぜこんなに続けているのかが不思議になってくることがある。目に見えてスペクタクルなものがあるわけでもないし、ストーリーが展開するわけでもない。なのになぜ止められないのか。
心理的な仕組みで言うと、Melvor Idleはいくつかの「達成感の波」を絶妙なタイミングで重ねてくるゲームだ。スキルレベルが上がる、MasteryPoolのボーナスが発動する、新しいアイテムがドロップする、ダンジョンを突破する——これらがバラバラなタイミングで来るため、どこかしらで常に「小さな達成」が起きている状態になる。
ひとつのスキルに集中していても、その合間に戦闘スキルのドロップで新しいアイテムが来たり、放置していた農業で育てた植物が収穫できたりと、画面から離れている間にも何かが起きている。ゲームから離れているときでも「今頃あの鉱石がたまっているはず」「あの食料のMasteryが上がっているかも」という思考が頭に浮かぶ。これは心理的に「ゲームをずっとプレイしている状態」に近い。
さらにMelvor Idleは「数字が大きくなる」だけでなく「解放される」という体験を繰り返し提供する。Lv5になるとこの行動が解放される、Lv30になるとこのアイテムが作れるようになる、Lv75まで上がれば次のエリアに行ける——このような段階的な解放が、常に前進している感覚を維持させる。終わりが見えないのに前進しているように感じるという不思議な体験が、プレイ時間を伸ばす仕組みだ。
効率厨とゆるプレイヤーどちらも楽しめる
Melvor Idleはプレイスタイルの自由度が高い。徹底的に効率を追求するプレイヤーにも、のんびり自分のペースで進めるプレイヤーにも対応できる設計になっている。
効率を追求するなら、どのスキルをどの順番で上げれば最も経験値効率がいいか、どのシナジー組み合わせが今の自分に最適か、どのモンスターを倒せば必要な素材が最速で揃うか、という計算を延々と続けることができる。Wikiには詳細なデータが揃っているため、計算の材料には困らない。
逆に効率を気にせず、「今日は釣りがしたい気分」「採掘スキルをひたすら上げたい」という気分でプレイしても特に問題ない。多少遠回りになっても、最終的にはどのスキルも上げられる。コンプリートまでの時間が長くなるだけで、楽しさは変わらない。
「効率を追えば追うほど面白くなるけど、追わなくても楽しい」というバランスは、インディーゲームとしては非常に高い水準の設計だと思う。
コミュニティとMODの存在
Melvor Idleにはアクティブなコミュニティがあって、Steam掲示板やRedditでプレイヤー同士の情報共有が活発に行われている。「このスキルの上げ方を効率化したMODを作った」「このシナジー組み合わせを発見した」という情報がどんどん出てくる。
Steam版ではMODも利用できる。「Melvor Idleがあまりにも長すぎたのでModで壊したら逆に面白くなった」という体験をブログに書いているプレイヤーもいて、ベースゲームをやり込んだ後の遊び方として確立されている。MODで経験値倍率を上げたり、新しいコンテンツを追加したりと、コミュニティが作る楽しみ方も豊富にある。
ゲーム本体の完成度の高さに加えて、コミュニティが活発であることがMelvor Idleの息の長さを支えているひとつの理由だ。
こんなゲームと比べてよく語られる

Melvor Idleは放置ゲームというカテゴリの中でよく比較対象に挙げられるゲームがいくつかある。同ジャンルの別の体験を知ることで、Melvor Idleの特徴がより見えやすくなる。
Cookie ClickerやRevolution Idle系との違い
Cookie ClickerやRevolution Idleのような「数字をひたすら増やしていく」系のインクリメンタルゲームとは、方向性が少し違う。Cookie Clickerは「とにかく大きな数字を目指す」という爽快感が中心で、プレイヤーが求めるのは「prestige(リセットして最初からもっと速く)」という反復の気持ちよさだ。
Melvor Idleはそれよりも「RPGのキャラ育成」に近い。スキルを上げることに意味があって、上げた結果として次の行動が解放されて、その先にダンジョン攻略や強力な装備の作成がある。ただ数字が増えるだけでなく、「何かが達成された」という感覚が積み重なっていく。Cookie Clickerが「スピード感と爽快感の放置ゲーム」なら、Melvor Idleは「RPGとして楽しむ放置ゲーム」という違いがある。
デッキ構築系やアクションRPGとの比較
Slay the SpireのようなデッキビルドRPGやHero Siegeのようなアクション要素の強いゲームとは根本的に異なる。Melvor Idleは自分が直接操作して戦うゲームではないため、反射神経や素早い判断力は求められない。戦術の深さは「どんな装備で挑むか」という事前準備の段階にあって、戦闘中の判断は基本的に不要だ。
アクションゲームに疲れたとき、または疲れていて指を動かしたくないときにMelvor Idleを開く、という使い方をしているプレイヤーが実際に多い。「今日は指を動かしたくないけどゲームはしたい」という気持ちに応えてくれるゲームだ。
農場・経営系ゲームとの近さ
The Farmer Was Replacedのような農業・自動化系ゲームとも雰囲気が重なる部分がある。「繰り返す作業を自動化して効率を最大化する」という楽しさが共通していて、どちらも「今の設定が最適かどうか」を考え続けることが遊び方の核になっている。
ただしThe Farmer Was Replacedはプログラミング要素があってアクティブな操作が伴うのに対して、Melvor Idleはよりパッシブな設計だ。「考えて設定して放置して確認する」というサイクルが中心で、プレイヤーが頭を使うタイミングが異なる。
長く遊ぶためのコツと心構え
Melvor Idleは長期間遊ぶゲームだからこそ、最初の向き合い方が大事になる。「今日中にクリアしよう」という気持ちで始めると確実に失敗する。数百時間かけてじっくり育てていくゲームとして最初から割り切ると、ストレスなく遊べる。
目標を細かく設定する
「全スキル99」という最終目標だけを見ていると、あまりにも遠すぎて進んでいる実感が薄くなる。「今週は木こりスキルを70まで上げる」「今月中に最初のダンジョンを突破する」といった短期目標を自分で設定することで、達成感のサイクルを短くできる。
ゲーム内には何も明示されていないが、自分でメモを取りながら「次は何を目指すか」を書き留めておくと、セッションを再開するときに迷わない。放置ゲームはログインするたびに「次に何をすればいいか」を思い出すコストが高いが、メモがあればすぐに続きから始められる。
ゆっくり発見を楽しむ
Melvor Idleは「全部知ってから始める」よりも「遊びながら発見していく」方が楽しいゲームだ。序盤はWikiを見ずに、まず自分でどのスキルを上げるか決めて遊んでみるといい。「あ、このアイテムってあのスキルで作れるのか」という気づきの積み重ねが、攻略の喜びにつながる。
行き詰まったらWikiを見ればいい。でも最初から答えを全部調べてしまうと、発見の喜びが減ってしまう。Melvor Idleの設計は、ある程度「自分で試行錯誤する余地」を想定して作られている。
放置する時間の使い方
Melvor Idleは放置中にどれだけ効率よく稼げるかも戦略の一部だ。就寝前に次のアクションをセットして、朝起きたら大量のアイテムが溜まっている——という使い方が基本になる。放置中に何が起きているかを理解した上で行動を選ぶと、効率が大きく変わる。
例えば戦闘を放置する場合、食料が切れると戦闘が止まるため、食料の量と消費速度を計算して必要な分を事前に料理しておく必要がある。非戦闘スキルを放置する場合はBankのスペースを気にする必要があって、スペースが足りなくなると行動が止まる。こういった管理要素も含めて「放置の準備をする」のがMelvor Idleの遊び方だ。
Melvor Idleのまとめ
Melvor Idleを一言で表現するなら「放置ゲームという器に、本格RPGの魂を詰め込んだ作品」だ。
外から見るとシンプルで地味なゲームに映る。でも実際に触れてみると、スキルとスキルが絡み合い、熟練度と経験値の二重構造が機能し、召喚のシナジーが戦略の幅を広げていく。その複雑さが決して難解ではなく、自然な流れで発見できる形になっているのが、このゲームの設計の巧みさだと思う。
1万4000件以上のSteamレビューで94%が好評という数字は、決してバズで達成できる数字ではない。長期間にわたってプレイし続けたプレイヤーが積み上げてきた評価だ。しかも、最初はひとりのRuneScapeファンが夜中に作り始めたゲームが、RuneScapeの開発元Jagexにパブリッシャーとして認められ、世界中のプレイヤーに届いたという背景がある。
RuneScapeに思い入れがある人は特に刺さると思う。でもRuneScapeを知らなくてもまったく問題ない。放置ゲームを探していて、「もう少し深みが欲しい」「本格的なRPGっぽい要素が欲しい」と思っているなら、Melvor Idleは間違いなくその答えになれる作品だ。
開発者のBrendan Malcolm(Malcs)が「コミュニティのフィードバックが続ける力になった」と語っていたのが印象的だった。仕事帰りに夜中まで開発を続けて、プレイヤーの反応がエネルギーになって、ついにはRuneScapeの会社に認められた。そういう物語ごと含めて好きなゲームだ。続編のMelvor Idle 2も楽しみにしながら、しばらくはベースゲームのやり込みを続けていくつもりだ。
ゲームの総合評価
Melvor Idleを各方面から評価するならこんな感じになる。
放置の快適さについては文句なしだ。スマホとPCのクロスセーブは完成度が高く、どこにいてもシームレスに続きから遊べる。非課金・広告なしという潔さも評価が高い。これは本当に放置ゲームとして理想的な環境で、「いつでもどこでも、財布を開かずに遊べる」という条件をしっかり満たしている。
コンテンツ量については、ベースゲームだけでも300〜400時間は軽く遊べるボリュームがある。DLCを3つ全部入れると、1000時間でも終わらない。「元を取れるか」という観点でいえば、1本のゲームとして考えるとコスパは異常に高い。スマホ向けのゲームアプリと比べると、月額課金もガチャも存在しないという事実がいかに稀少かがよくわかる。
システムの深さについては、放置ゲームというジャンルの中では間違いなくトップクラスだ。スキルの相互依存、熟練度の二重構造、召喚シナジーの組み合わせ——これだけの要素が一つにまとまっているゲームはそうそうない。また、開発が続いているという事実も重要だ。ベースゲームのリリースから数年経った今も、アップデートやDLCが続いていて、コミュニティも活発に動いている。
一方で、とっつきやすさという点では平均的な放置ゲームよりも入りにくい。序盤の説明不足や、全体像が掴みにくいUIは、初めてのプレイヤーが戸惑いやすい部分だ。ただしこれも「慣れたら気にならない」レベルで、ゲームの根本的な欠点とは言い難い。Wikiと攻略記事が充実しているため、詰まったらすぐに調べられる環境が整っている。
こんな人には特に強くすすめたい
最後に、「こういう状況なら絶対に合う」というパターンを具体的に挙げておく。
仕事や育児で忙しくてまとまったゲーム時間が取れないけれど、RPGのキャラ育成の感覚は忘れたくないという人には強く勧めたい。通勤の10分、昼休みの5分、就寝前の設定だけ——それだけの時間でも確実に前進できるゲームデザインになっている。
コレクション癖のある人にも向いている。全スキル99の達成、全アイテムのコンプリート、全モンスターの討伐記録——達成すべき項目が明確に見えていて、ひとつひとつを埋めていく作業が楽しめる人はずっと遊べる。
そして「課金したくないけどしっかり遊べるゲームが欲しい」という人。課金なし、広告なし、ガチャなし。一度買えばすべてが開放される。こういうゲームが今どれだけ貴重か、基本無料ゲームを渡り歩いてきた人ほどよくわかるはずだ。セール時にはかなり安くなることもあるので、ウィッシュリストに入れておいて割引を待つのもいい方法だ。
最後にもうひとつ。Melvor Idleはゲームを「消費する」よりも、ゲームと「一緒に時間を過ごす」という感覚に近い。数百時間かけてキャラクターを育てていく過程で、自分の生活リズムにゲームが溶け込んでいく。通勤の電車でスマホを開いて、寝る前に次の計画を立てて、朝起きたら夜のうちに溜まった収穫を確認する。そんな日常の一部になったとき、このゲームは本当の意味で面白くなる。
2000時間以上やってるけど、まだやることがある。こんなゲーム他にない。Malcsに感謝しかない
引用元:Steamレビュー
ゲームの完成度、開発者の姿勢、コミュニティの熱量——どれを取っても、Melvor Idleはインディーゲームの中でも特別な作品だと思う。「放置ゲームにしては深すぎる」という感想がたくさん見られるが、それこそがこのゲームの本質だ。深すぎるくらいが、ちょうどいい。
もし「最初の1時間、試しにやってみよう」という気持ちで始めるなら、その覚悟はちょっと甘いかもしれない。気がつけば3時間経って「もう少しだけ」という状態になるのが、Melvor Idleという沼の正体だ。それでもいいという人にとっては、これ以上の放置ゲームはなかなか見つからないと思う。試す価値は間違いなくある。
始める前に一言だけ忠告しておくと、Melvor Idleは明確な終わりを求めるゲームではない。どこまでやれば「完了」なのかは、自分で決めるしかない。「全スキル99で満足した」という人もいれば、「全MasteryをMAXにするまでやめない」という人もいる。どちらも正解だ。自分のゴールを自分で決めながら遊んでいける人に、このゲームは最高に合う。
Melvor Idle
| 価格 | ¥1,200 |
|---|---|
| 開発 | Games by Malcs |
| 販売 | Jagex Ltd |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows / Mac / Linux |
| プレイ形式 | シングル |

