ULTRAKILL|血を浴びて回復する最速殺戮FPS、その狂った快感
最初の5分で理解した。このゲームは「上手くなれ」じゃなくて「もっとやれ」と言ってくる。
リボルバーを撃ってコインを投げて、弾が跳ね返って敵の頭を撃ち抜く。その間に敵の血しぶきを浴びて体力が回復する。ショットガンで撃った弾を自分でパリィして爆発させる。ロケットに乗って空中を滑空する。気づいたら10秒間で6体倒していて、スタイルメーターには「ULTRAKILL」と表示されている。
これは2020年からアーリーアクセスを続けているインディーFPSだ。開発はフィンランドの一人の人間、Arsi「Hakita」Patala。パブリッシャーはNew Blood Interactive。レビュー件数は20万件を超えて、97%が好評という評価がついている。
アーリーアクセスで5年以上。それでも評価は落ちない。というか2026年2月に8層目のアップデート「FRAUD」が来たとき、同時接続プレイヤー数が71,785人を記録してピークを更新した。終わりが見えてきたタイミングで一番盛り上がっている、という稀有なゲームだ。
「血は燃料。地獄は満員。人類は絶滅。」
このキャッチコピーで何かがビビッときた人は、読み続けてほしい。
YouTubeでの評判・動画コメント
ULTRAKILLの動画コメント欄は独特の文化圏になっている。プレイ動画を見た人たちが「これは法規制されるべきだ」「脳に直接ドーパミンを注入している」と書き込むのが定番になっているほどで、ゲームプレイの映像そのものが視聴者にある種の快感を与えてしまうらしい。
実際、Steamのレビューにも同じ現象が起きている。日本語のレビューには「法規制されていないのが不思議です。絶対画面からエンドルフィンだかアドレナリンだかが出てる」という声がある。別のレビュアーは「気づけばコインを投げて銃を撃つことしか考えていませんでした。現実でも物が飛んで来たら殴って返すようになってしまいました」と書いている。
笑えるけど笑えない。というのも、これを書いている人間も似たような状態になるから。コインをリボルバーで撃って跳弾させるというテクニックを覚えたとき、歩きながら「あの角度で撃てばいけた」みたいなことを考えていた。
コメントで繰り返し出てくるのが「Quake meets Devil May Cry」という表現だ。英語圏でも日本語圏でも、このゲームを一言で説明しようとするとこの2タイトルが出てくる。Quakeの速度感、Devil May Cryのスタイルシステム。でも実際に遊ぶと、その2つの足し算より多くのものがある。
動画で見てから自分でプレイして気づく。映像でカッコいいと思ったコンボが、操作できるようになったときに10倍気持ちいい。「見るゲーム」としても「やるゲーム」としても機能している、という評価が多いのはそのためだと思う。
こんな人に読んでほしい

ULTRAKILLが刺さりそうな人を具体的に挙げてみる。
90年代のFPSが好きで、Quakeや初代Doomをリアルタイムかそれ以降で遊んだことがある人。あの速度感が今のゲームに足りないと感じている人には、これは答えのひとつになる。「最近のFPSは遅い」「カバーに隠れてばかりのゲームに飽きた」という気持ちがあるなら、まず動画を15秒見てほしい。
Devil May Cryシリーズのコンボシステムが好きな人。「スタイリッシュに戦うこと」に喜びを感じる人。特にDMC4やDMC5で「もっと派手にやりたかった」と思った記憶がある人。あのスタイルスコアの感覚をFPSに移植したらどうなるか、ULTRAKILLはその実験の結果だ。
DOOM Eternal(2020年)を遊んで、もっとスピードを上げてくれと思った人。あれは良いゲームだったけど、ULTRAKILLはさらに一段上のギアが入っている感覚がある。DOOM Eternalの「敵を倒さないと弾薬が枯渇する」という緊張感を気に入っていたなら、ULTRAKILLの「敵に近づかないと体力が回復しない」という緊張感は同じ系統の快感を持っている。
ゲームの仕組みを深く理解して、理論値に近づいていく過程が好きな人。ULTRAKILLの戦闘は物理エンジンとゲームメカニクスの組み合わせが豊かで、「こんな動きができたのか」という発見が何十時間も続く。「このゲームを完全に理解した」と言えるプレイヤーがほぼいない、というのが現状だ。
スコアアタックやタイムアタックに燃えるタイプの人。Steamのリーダーボードにはサイバーグラインドのハイスコアが掲載されており、世界上位との差を縮めていく過程がある。シングルプレイヤーのゲームだが、スコアという形で他のプレイヤーとつながれる。
キーボード&マウスでのプレイが基本的に推奨される。このゲームの素早い視点移動と精密な照準は、マウスの強みが活きる。ただしコントローラー対応もしており、実際にコントローラーでP-ランクを達成しているプレイヤーもいる。デバイスより操作への慣れの問題なので、持っている環境で始めて問題はない。
逆に向いていないのは、ストーリーをゆっくり楽しみたい人。ゲームプレイの難易度に関係なくシナリオを追いたい人。本作のストーリーは濃密だけど、語り方がかなり間接的で、テキスト量も多くはない。世界観はターミナルに置かれたテキストやボスの台詞から読み取るものが多く、積極的に拾いに行かないと見過ごす。
英語が全く読めなくて、それが参入障壁になる人。一応コミュニティ製の日本語化MODがあるが、UIやセリフのニュアンスは原語で遊んだほうが伝わる部分がある。ゲームプレイ自体は言語関係なく遊べるけれど。ガブリエルのセリフや神曲ベースの固有名詞は、英語のまま受け取るほうが体験として完結している気がする。
グラフィックのリアリティを重視する人にも向かない。ULTRAKILLはローポリゴンの意図的にレトロなビジュアルで作られている。90年代のFPSへのオマージュとして機能しているが、最新グラフィックスを期待すると外れる。ただし、そのスタイリッシュなビジュアルは動いているときに独特の美しさを持っていて、「動くゲームは綺麗に見える」という原則を体現している。

ULTRAKILL ゲーム概要
ULTRAKILLは、フィンランド人開発者Arsi「Hakita」Patalaがほぼ一人で作り上げたファーストパーソンシューターだ。2018年2月から開発が始まり、2019年8月にitch.ioで初期デモが公開された。その後New Blood Interactiveにパブリッシングが決まり、2020年9月3日にSteamアーリーアクセス版がリリースされた。
New Blood Interactiveというパブリッシャーは、DUSK(2018年)やIron Lung(2022年)などのインディーゲームを手掛けており、ジャンルに対する理解が深い会社だ。ULTRAKILLは彼らのカタログの中でも特に評価が高い作品になっている。
Hakitaの年齢はゲームの開発開始時点で20代前半だったとされる。フィンランドという北欧の開発環境で、英語圏のゲームにインスパイアされた作品を作り上げ、英語圏のプレイヤーに最も評価された。このゲームのジャンル的なルーツであるQuake(1996年)やDOOM(1993年)は彼が生まれる前か生まれた頃の作品で、それらへのリスペクトが「オールドスクールFPS」のコンセプトに繋がっている。
ゲームの世界観は近未来のディストピアだ。人類はすでに絶滅している。機械たちだけが残った地球で、血液を燃料として動く機械V1が起動する。地上に血はない。血を求めて、V1は地獄へ降りていく。
「MANKIND IS DEAD. BLOOD IS FUEL. HELL IS FULL.(人類は死んだ。血は燃料。地獄は満員だ)」
このゲームの全てはこの3行に詰まっている。シンプルで力強いコンセプトで、ゲームメカニクスと世界観設定が完全に一致している。V1が血を浴びて体力を回復するのは、それが彼の燃料だからだ。ゲームプレイのルールとストーリーの設定が同じものを指している。
V1について少し詳しく説明しておく。青い装甲を持つ人型機械で、長い頭部はカメラに似た外観をしている。背中からは8本の黄色く光る翼のような突起が出ていて、これが視覚的なアイコンにもなっている。V1は最初のプロトタイプ戦闘機として開発されたが、最終戦争が終結したあと量産されず放棄された。
その後継機がV2だ。V2はV1とほぼ同じ構造を持つ兄弟機で、プレイヤーが地獄を降りていく途中で2度戦うことになる。同じ設計から生まれた機械同士の戦闘という構図で、「V2はプレイヤーキャラクターの鏡」と感じるプレイヤーが多い。V1の青に対してV2は赤い配色を持ち、同じ武器を同じ戦術で使ってくる。
V1もV2も言葉を発しない。語るのはガブリエルのような天使や、ターミナルに残されたテキストだ。ゲームの世界観は「語られるのではなく読み取るもの」として設計されており、積極的に探索することで深みが増す。地獄の各ステージに置かれたターミナルには、機械の記録や地獄の住人に関する情報が蓄積されていて、通常のプレイでは見逃しやすい設定の断片がある。
ダンテの神曲をベースにした地獄の構造
ゲームの舞台は、ダンテ・アリギエーリの「神曲 地獄篇」に基づいた地獄だ。全9層が存在し、それぞれが罪の種類によって名付けられている。
序章(Prelude)から始まり、第1層のリンボ(罪のない者たちが漂う場所)、第2層の色欲(Lust)、第3層の暴食(Gluttony)と続く。Act IIに入ると第4層の強欲(Greed)、第5層の憤怒(Wrath)、第6層の異端(Heresy)。Act IIIは第7層の暴力(Violence)と、2026年2月に実装された第8層の詐欺(Fraud)。残るは第9層の裏切り(Treachery)のみで、これがゲームの完全版リリースに当たる。
各層はそれぞれのテーマに沿った視覚的デザインを持っている。色欲の層は工業的な摩天楼と橋、地下鉄で構成されている。暴食の層は過剰な欲望の象徴として、肉体から内臓を抽出されたものたちが積み重なるグロテスクな空間になっている。2026年に実装された詐欺の層は「鏡と歪んだ空間」が特徴で、トリックアートのような非ユークリッド幾何学的なマップ構成になっている。
ステージ名もダンテ由来の文学的なものが多い。「Infinite Hyperdeath」「Aesthetics of Hate」「In the Flesh」といったタイトルが並んでいて、ゲームとしての演出と文学的なテーマ性が同時に感じられる。
地獄の各層はビジュアルだけでなく敵の種類も変わる。序盤のリンボ層には「Filth」と呼ばれる単純な近接敵から始まり、「Schism」という空中に漂う分裂する敵、「Strayed」という武装した人型敵などが登場する。色欲の層に入ると「Soldier」という片腕を大型砲に換装した機械敵が出てきて、難易度が上がる。
各層に固有のゲームプレイ要素がある。暴食の層では胃酸のようなフィールドに足を取られる場面があり、異端の層では地形の構造が変わる。詐欺の層(FRAUD)では空間そのものが歪んでいて、鏡を通り抜けることで部屋の配置が変わったり、同じ通路が違う場所に繋がっていたりする。
こうした設計の一貫性は、ダンテの神曲を下地にしているからこそ成立している。各層の「罪」というテーマがビジュアル、敵の種類、ゲームプレイ要素に繋がっていて、世界観とゲームデザインが別物にならない。ゲームとしての密度と文学的な背景が同時に機能している例として、ULTRAKILLはかなり稀なケースだと思う。
スタイルシステムとランク評価
各ステージにはクリアランクが設定されている。ランクはD(Destructive)から始まり、C(Cataclysmic)、B(Brutal)、A(Anarchic)、S(Stylish)と上がっていき、最高ランクはS以上の「P(Perfect)」だ。
P-ランクを取得するには、タイム・キル数・スタイルの3要素で全てSランクを獲得し、かつチェックポイントの再読み込みなしにクリアする必要がある。簡単に言えば「速く、全員倒して、派手に、一発で」だ。
スタイルメーターはリアルタイムで変動する。同じ武器を使い続けると「鮮度」が下がってポイントが減少する。同じ攻撃を繰り返しているとゲームから「お前の戦い方は飽き飽きした」と言われているようなものだ。空中でのアクションはスコアが最大3倍になるため、自然と地面に留まらない戦い方を学んでいく。
ランク表示はDのとき「DISMAL」から始まり、「DEAD」「DESTRUCTIVE」と続き、最高評価は「ULTRAKILL」だ。自分のプレイスタイルがゲームにリアルタイムで評価されている感覚は、他のFPSにはなかなかない。
このランクシステムがゲームのリプレイ性を生んでいる。最初は「クリアできた」で満足する。次に「Sランクを取れた」になる。その後「P-ランクを取りたい」になり、最終的に「全ステージP-ランク」を目指す状態になる。目標の階段が自動的に設定されていくので、「何をすればいいかわからない」という状態になりにくい。
スタイルメーターのゲージは視覚的なフィードバックとしても機能している。画面の右側にリアルタイムで表示されるランクの文字は大きく、色鮮やかで、上昇するとエフェクトがかかる。「今自分がカッコよく戦っているかどうか」が視覚的に分かる設計で、これがプレイヤーに「もっと派手に戦おう」という動機を与え続ける。

血を浴びて回復する:ULTRAKILLの核心メカニクス

このゲームで最もシンプルかつ重要なルールを一行で言うと「敵の血を浴びると体力が回復する」だ。
回復の方法はこれしかない。回復アイテムはステージにいくつか置いてあるが、基本的な回復手段は敵に近づいて血を浴びることだ。遠くから安全に攻撃していると、どんどん体力が減っていく。このルールがゲーム全体のデザインを決定している。
怖いから敵から距離を取る、ではなく、体力が減っているから敵に近づかなければならない。これが逆説的なプレッシャーを生む。通常のFPSで「安全策」とされる行動が、このゲームでは「死への近道」になっている。
敵を倒したときに出る血のパーティクルは、プレイヤーキャラクターがいる方向に引き寄せられる性質がある。だから敵の近くで戦えば自然と血を浴びられるが、遠距離から狙撃していると血が届かない。ゲームの物理的な仕組みまで「近くにいろ」というメッセージを出している。
この設計がもたらす体験は独特だ。他のFPSでは「安全に立ち回る」が正解だが、ULTRAKILLでは「突っ込む」が正解になる。最初は恐る恐る近づいていた敵の群れに、慣れてくると無意識に飛び込んでいくようになる。この「プレイスタイルの転換」が上達の過程で起きる面白い体験で、気づいたら自分が別の戦い方をしている。
体力の最大値は100で、敵の血を浴びることで100を超えて最大200まで上昇する。いわゆるオーバーヒールだ。これも「積極的に敵に近づいてたくさん血を浴びるほど有利になる」という設計の一部で、守りに入ることへのペナルティがゲームシステムに組み込まれている。
「ハードコアなゲームに見えて、実は初心者への助けが多い」という側面もある。HARMLESSモードとアシスト機能を使えば、高速移動に追いつけない段階でもゲームを体験できる。難易度を下げることへの恥はなく、「まずゲームの感触を掴んでから難易度を上げる」という進み方が自然にできる設計だ。
移動システム:空中に居続けることが正解
V1の移動は通常のFPSより桁違いに多い選択肢がある。基本のダッシュに加えて、スライディング、スライディング中のジャンプ、壁蹴り、空中ダッシュ、ロケットライディング(ロケットの上に乗って移動する)などが揃っている。
スライドジャンプという基本テクニックを覚えると、地面を踏まずに高速移動し続けられるようになる。スライディング直後にジャンプすると通常より速くなり、そこからダッシュを組み合わせると空中を縦横無尽に移動できる。これをやっているとスタミナの消費が少なく、かつ空中でのスコアボーナスも得られる。
地面にいることが不利で、空中にいることが有利。これがULTRAKILLの移動設計の本質だ。ゲームが「空中にいろ」と言ってくる。最初は意図的に跳び続けているが、慣れてくると無意識に滞空し続けるようになる。
ロケットライディングは、発射したロケットに乗って高速移動する技術だ。ロケットランチャーで撃ったロケットの上に飛び乗ることで、通常の移動を超えたスピードと高度を得られる。これを使ったプレイは視覚的にも派手で、スタイルスコアへの貢献も大きい。
壁蹴りは壁に触れた瞬間にジャンプすることで水平方向に勢いをつけられる動作で、連続して行うことで壁の間を反復横跳びしながら上昇できる。ステージのデザインにはこの動きを前提とした壁の配置がある場所もある。
「地面にいる時間を極力減らす」という移動原則を理解すると、ULTRAKILLのステージが違って見えてくる。縦に広い空間が多く、天井付近に秘密のルートがあったり、空中からのほうが攻撃しやすい敵の配置があったりする。地面は経由点であって、拠点ではない。
上達のプロセスとして、多くのプレイヤーが「移動の習得」が最初の壁だと言う。銃の使い方より先に、ちゃんと動けるかどうかがゲームの体験を決める。最初の数時間で「どうやって動けばいいかわからない」と感じたとしても、それは正常な過程だ。
武器システム:3バリアント×複数カテゴリ
武器は大きく分けてリボルバー、ショットガン、ネイルガン、レールキャノン、ロケットランチャーのカテゴリがある。各武器には3つのバリアント(青・緑・赤)が存在し、青が基本形、緑と赤はスタイルポイントを消費して購入できるアップグレード版だ。
バリアントの傾向として、青は安定した性能、緑は瞬発火力に特化、赤は複数の敵に対して広く効く設計になっていることが多い。これらを状況に応じて使い分けることが求められる。
リボルバー(Revolver)は最初から持っている基本武器だ。チャージショットで強力な一撃が打てる青バリアント(Piercer)、コインを投げて跳弾させる緑バリアント(Marksman)、壁や床に跳弾させる赤バリアント(Sharpshooter)がある。
このうちMarksman(コイン跳弾)がULTRAKILLの象徴的なテクニックだ。コインを空中に投げてリボルバーで撃つと、弾がコインに当たって反射し、敵の弱点(頭)に自動で向かっていく。複数のコインを同時に投げて一発の弾で複数回跳弾させれば、一撃で複数の敵にヘッドショットが入る。この動きが決まったときの快感は異常で、Steamのレビューで「夢の中でもリコショットとパリィの音が聞こえる」という声が出るのも理解できる。
ショットガン(Shotgun)は青バリアント(Core Eject)が特徴的で、発射後に残るコアを拳で弾くとグレネードとして機能する。これ自体がパリィの練習になっているし、自分が撃った弾を自分でパリィするという操作設計がある種の「ゲームとの対話」のように感じられる。
ネイルガン(Nailgun)は釘を射出する武器で、赤バリアントが「電動ノコギリを射出する」という設計になっている。この武器のアルトファイアで磁石のような仕組みが働き、釘が敵を追いかけたり、特定の仕掛けに絡んだりと、他の武器にない役割を持つ。
レールキャノン(Railcannon)は一発撃つと長いリロード時間が必要な狙撃武器だ。壁を貫通する弾道と、複数の敵を串刺しにできるという特性がある。緑バリアントは撃った後の反動でダッシュブーストがかかる、という移動テクニックとしても使える。
近接武器とパリィ
V1は近接武器として「Feedbacker」と「Knuckleblaster」と「Whiplash」を持つことができる。このうち基本装備のFeedbackerは、着弾直前のタイミングでパンチを繰り出すことで「パリィ」が可能だ。
パリィが成立すると、敵の攻撃を無効化して逆に体力を回復できる。ショットガンの弾をパリィすると爆発が起きて敵にダメージが入る。一部のボスの攻撃もパリィ可能で、成功すれば状況が一気に有利になる。
Knuckleblasterは強力な爆発パンチを打てる近接武器で、こちらはパリィができない代わりに近距離の敵に大ダメージを与えられる。Whiplashはフックショットのような武器で、遠くの敵を引き寄せたり、自分が敵に向かって引き寄せられたりする。
近接武器は「銃しか使わないFPS」というゲームの印象を覆す要素だ。ここにFPSというジャンルの文法を超えた「キャラクターアクション」の血が流れている。
武器の切り替えがスタイルスコアに影響するため、「一番強い武器だけ使い続ける」という戦法が機能しない設計になっている。同じ武器を連続して使うと「鮮度」が落ちてスコアへの貢献が減少し、別の武器に切り替えることで鮮度が戻る。これがプレイヤーに「手元にある全ての武器を使う」という行動を自然に促す。
「すべての武器がどこかで役に立つ」という設計は、武器の多様性を意味のあるものにしている。特定のステージや特定の敵に対して「この武器が特に効く」というケースがあり、プレイヤーが自分で発見していく楽しさがある。攻略情報を調べることで効率を上げられるが、自分で発見した答えのほうが喜びが大きい。
武器は全部同時に持っているわけではなく、ゲームを進める中でアンロックしていく。最初はリボルバーだけで始まり、ショットガン、ネイルガン、レールキャノン、ロケットランチャーと増えていく。武器が増えるたびにゲームの深みが増し、「こんな組み合わせがあったのか」という発見が続く。

ボス戦という頂点体験:ガブリエルという存在
ULTRAKILLのボス戦は全体的に質が高いが、中でも繰り返し語られるのがガブリエル(Gabriel)だ。
ガブリエルは「地獄の裁判官」という肩書を持つ上位の天使で、銀と金の鎧を纏い、翼と光輪を光構築物で形成している。ゲームの序盤から登場して、最初の遭遇ではV1を圧倒して去っていく。この演出がプレイヤーに「いつか倒す」という強い動機を与える。
ガブリエルとの2度目の戦い(6-2: Aesthetics of Hate)は、多くのプレイヤーが「このゲームで一番楽しかった戦闘」として挙げる場面だ。攻撃パターンが複雑で、パリィのタイミングを学ぶことが必要で、同時に彼自身のセリフや動作に「意志を持った存在」としての厚みがある。
ガブリエルの声優はGianni Matragrano(ジャンニ・マトラグラーノ)で、彼のパフォーマンスはコミュニティで高く評価されている。「Gabriel, you have fallen」というセリフや、2戦目で激怒した状態になったときの台詞は、ゲームのハイライトとして動画でも繰り返し取り上げられている。
ボスを倒すたびにゲームの深部に進んでいくという構造は、ダンテが地獄の層を降りていく「神曲」のメタファーでもある。V1は血を求めてどんどん深みにはまっていき、その先に何があるかは完全版リリースで明らかになる。
ガブリエルは「神の審判者」として地獄に派遣されている存在だ。V1が地獄に降りてきたことを「機械が生と死の秩序を壊している」として断罪しようとする。この設定が単純な「倒すべき敵」以上の複雑さをガブリエルに与えている。
2戦目でガブリエルが激怒したとき(「Apostate of Hate」という称号に変わる)のビジュアル変化が印象的だ。白い装甲が赤く変色し、動きが速くなり、攻撃パターンが増える。このフェーズ移行の演出はゲーム内で最も語られる瞬間のひとつで、「ここが本番だ」という感覚を強烈に与える。
Gianni Matragranoの声優としての仕事は、インディーゲームの文脈では特筆に値する。彼の演じるガブリエルは単なるボス戦の前口上を超えて、「相手のことを理解しているからこそ怒っている」という感情の重さがある。V1は喋らないが、ガブリエルとの掛け合いがあたかも会話のように感じられる演出になっている。
ガブリエル以外にも、序盤のボスであるキング・ミノス(King Minos)とその本体Minos Primeも印象的だ。キング・ミノスは神曲の地獄篇で「魂を各層に割り当てる審判者」として登場する存在で、ULTRAKILLでもその権威が設定に組み込まれている。彼の行動と台詞が地獄の秩序を示唆しており、プレイヤーに「自分がどこに来てしまったのか」を感じさせる。
サウンドトラックという武器

ULTRAKILLのサウンドトラックは、ゲームを語る上で外せない要素だ。
音楽のほとんどをHakita自身が作曲している。アーティスト名義は「Heaven Pierce Her」で、BandcampとSpotifyで公開されている。Act Iのサウンドトラック「Infinite Hyperdeath」はLPとCDでも発売されており、物理メディアを出せるほど評価を得ている。
音楽スタイルはメタルやロックにブレイクビートを組み合わせたもので、随所に「Amen Break」(広く使われているドラムサンプル)が使われている。ゲームのパワフルな戦闘に完全にマッチしていて、音楽が始まった瞬間に体が動く感覚がある。
Hakitaが音楽設計で意識していたのがSilent Hillサウンドトラックだという。あのゲームの音楽は暗いアンビエントノイズが主体だが、ゲーム体験の文脈に置かれることでファンに深く刻まれた。ULTRAKILLでも「音楽単独では難解かもしれないジャンル」をゲームプレイの熱狂と組み合わせることで、プレイヤーがその音楽を好きになるように設計している。
一部の楽曲はステージ途中で展開が変化する。戦闘の激しさに応じて音楽が変わるアダプティブな実装で、自分のプレイスタイルが音楽の展開を決めているような感覚がある。
サウンドトラックの中でも特に話題になるのがPrime Sanctumの楽曲だ。P-ランクを全ステージで達成した後に入れる隠しステージ用の曲は、通常のBGMとは別の緊張感と高揚感を持っていて、「ここに来るに値するだけの力がある者への演出」として機能している。
Hakitaが「Heaven Pierce Her」名義で公開しているBandcamp上の音楽は、ULTRAKILLと無関係な楽曲も含めて実験的な電子音楽が多い。ULTRAKILLをきっかけにHakitaの音楽を掘り始めるプレイヤーが一定数おり、ゲームが音楽への入口になっている。これはHakitaが意図していた「ゲームを通じて普段聴かないジャンルに触れてもらう」という設計が機能している証拠だ。
パリィ成功時のSE、コインが跳ね返る音、敵の血が当たる音など、効果音の設計も優秀だ。特にパリィの「タン」という音は中毒性があって、Steamのレビューで「夢の中でもパリィの音が聞こえる」と書かれるのはある意味正確な描写だ。音響フィードバックの質がゲームプレイの気持ちよさに直結している。

Cyber Grind:終わらない戦場
メインキャンペーン以外のコンテンツとして「The Cyber Grind」がある。これはDevil May Cryシリーズの「Bloody Palace」に相当するエンドレスモードだ。
16×16グリッドのアリーナが虚空に浮かんでいて、ウェーブごとに敵が出現する。全ての敵を倒せば次のウェーブに進み、倒されるまで続く。スコアはウェーブ数で決まり、Steamのリーダーボードで他のプレイヤーと競える。
Cyber Grindは世界観的にも設定されている。機械たちが端末に接続して仮想空間での戦闘をシミュレートする、というゲーム内ゲームとして機能している。純粋なスコアアタックとして、またキャンペーン攻略の練習場として使われることが多い。
コミュニティが独自のアリーナパターンを作れるツールも公式提供されている。「cyber.pitr.dev」というサイトでコミュニティ製パターンを入手・共有できる仕組みで、開発チームの一員であるpitrが管理している。公式Creditsにパターン作成者の名前を載せるという形でコミュニティへの貢献が公式に認められている。
Cyber Grindのリーダーボードは難易度ごとに分かれている。HARMLESSからVIOLENTまでの各難易度で別々にスコアが記録されるため、どの難易度でも「世界ランキングに参加できる」という体験がある。VIOLENTの上位プレイヤーのウェーブ数は信じられないほど高く、「このゲームにはまだこんな先がある」ということを目に見える形で示してくれる。
Cyber Grindの良い点は「詰まってもいつでも再挑戦できる」という手軽さだ。キャンペーンでは「このステージをクリアしなければ次に進めない」というプレッシャーがあるが、Cyber Grindは純粋に「今の自分の実力で何ウェーブ行けるか」のテストだ。記録更新の喜びと、失敗しても次がすぐある設計が、長時間のプレイを支えている。

難易度設計:Harmlessから先にあるもの

難易度は4段階ある。HARMLESS(ノーマルより易しい)、LENIENT(通常)、STANDARD(難しい)、VIOLENT(最難関)だ。さらに各難易度に補助機能のアシストモードが用意されており、無限スタミナやオートエイムも設定できる。
この設計は「誰でも入れる入口」と「極めた者だけが行けるところ」を同時に持っているということだ。HARMLESSで遊べば初めてのFPSでも進めるし、VIOLENTにP-ランクを追い求めれば何百時間かけても飽きない。
実際のプレイヤーの体験として、最初はHARMLESSやLENIENTで始めて、クリアした後にランクを上げていくという流れが多い。「クリアするゲーム」から「極めるゲーム」への転換点が自然にある。
P-ランクを全ステージで達成することはゲームの最難関チャレンジのひとつで、コミュニティの動画では「全ステージP-ランク」の達成報告が定期的に話題になる。特定のステージのP-ランクは「このゲームで一番難しいこと」として語られるものもある。
難易度の話を先輩プレイヤーに聞くと「始めてすぐは死にまくる。でも死ぬたびに何かが分かる」という言葉が出てくる。理不尽に難しいのではなく、学習に対してきちんと応えてくれる設計だということだ。
「死んだ理由が毎回分かる」という点も重要だ。ULTRAKILLで死ぬとき、ほとんどの場合は「何かに当たった」ではなく「近寄れなかった」「パリィを失敗した」「血を浴びるタイミングを外した」という、自分の行動に原因がある。理不尽な死が少ないため、反省が行動の改善に直結する。
P-ランクという目標が「次の高み」として機能している。普通のクリアをした後、「同じステージをP-ランクで」という課題があると、そのステージを新鮮な目で見直すことになる。P-ランクを意識したとき初めて気づく敵の配置や、有効な戦略がある。「一つのステージを何度も遊ぶ理由」が自然に生まれる設計だ。
Prime Sanctumという特別なコンテンツも存在する。Act I(序章からGluttonyまで)の全ステージでP-ランクを取ると、隠しステージ「P-1: Soul Survivor」が解放される。ここでのボス戦は通常のキャンペーンを超えた難易度で設計されており、コミュニティでは「このゲームで一番難しい体験のひとつ」として語られる。Act IIの全P-ランクで解放される「P-2: Wait of the World」はさらに難しく、これをクリアできたプレイヤーはゲームの熟練者だと言える。
なぜULTRAKILLは5年経っても評価が落ちないのか
アーリーアクセスのゲームが5年以上にわたって97%の好評を維持する、というのは普通ではない。その理由を考えてみる。
コアメカニクスの圧倒的な完成度
ULTRAKILLの戦闘システムは「血を浴びて回復する」という一点に全てが繋がっている。移動が高速なのは敵に接近するため。武器が多彩なのは「鮮度」を保って血を浴び続けるため。パリィが存在するのは近接距離でも戦えるようにするため。全てが一つの原理から来ている。
他のシューターでよく見られる「この機能いらなかったな」という蛇足がない。コンパクトで密度が高い。Hakitaが一人で長い時間をかけて設計したからこそ、余計なものが入らなかったのかもしれない。
アップデートのたびに「完成度が上がる」という稀な特性
多くのアーリーアクセスゲームは「未完成なものが増えていく」という問題を抱える。ULTRAKILLは違う。各レイヤーのアップデートで既存コンテンツのブラッシュアップも行われるため、古いステージが古く感じない。
2025年2月には「ULTRA_REVAMP」という大規模な改修アップデートがあり、ビジュアルと技術的な側面の刷新が行われた。既存コンテンツへの手入れを怠らないという姿勢が、長期間の好評維持につながっている。
Hakitaという開発者への信頼
コミュニティのHakitaへの信頼は高い。Steamのフォーラムやコメントで開発者が積極的に発言し、プレイヤーの声に応えてきた歴史がある。「このゲームは完成まで作り続けてもらえる」という確信を多くのプレイヤーが持っている。
6年近いアーリーアクセス期間は長い。でも「完成しないかもしれない」という不安は少ない。第9層の「Treachery」を実装すれば完全版になる、という道筋が見えているし、2026年2月の時点でそのひとつ前まで来ている。
「上手くなれば面白くなる」という報酬設計
多くのゲームは時間が経つと飽きてくる。ULTRAKILLは上達すればするほど面白くなる設計になっている。最初に「ただ生き残る」だったゲームが、慣れてくると「スタイリッシュに戦う」になり、さらに進むと「P-ランクを取る」になる。目標が自動的にアップグレードされていく。
Steamのレビューで「300時間遊んでもまだ伸びしろがある」という声が複数ある。これは設計として正しい。プレイヤーの上限にゲームが追いついていない、というのがULTRAKILLの状態だ。
また、「上達が目に見える」という点も重要だ。コインをリボルバーで撃って跳弾させるテクニックは、最初は成功率が低い。しかし繰り返すうちに成功率が上がり、最終的には無意識で成功するようになる。この「身体で覚える」感覚がゲームに独特の達成感を与えている。スポーツや楽器の練習に近い体験がある。

2026年現在のULTRAKILL:完成に向けた最終段階

2026年2月25日にLayer 8: FRAUDが実装された。詐欺(Fraud)をテーマにした第8層で、鏡と歪んだ空間を使った非ユークリッド的なマップ設計が特徴だ。トリックアートのような視覚的仕掛けが随所にある。
このアップデートと同時にピーク同時接続数71,785人を記録した。アーリーアクセス開始から約6年が経っての新記録更新だ。Steam Storeで10〜20%の好評を維持するゲームが多い中で、このタイミングでの数字は異常値と言っていい。
FRAUD層の開発には2年かかったという。その理由のひとつが「ポータルを絡めた敵AIの再設計が必要だった」こと。鏡や歪んだ空間という視覚的コンセプトをゲームプレイに落とし込むために、かなり深いところから作り直すことになった。
残るは第9層の「Treachery(裏切り)」のみ。神曲の地獄篇で最も深い場所、ルシファーが封じられた氷の湖がある層だ。ULTRAKILLがどうその場所を解釈するか、完全版リリースで明らかになる。
現在の価格はSteamで約2,600円(定価)。アーリーアクセスで「価格は完成に近づくにつれ上がる予定」と明記されている。完全版リリースでどうなるかは不明だが、今の段階で遊ぶ理由は十分にある。
セール時には30%オフになることがあり、その際の価格は1,800円台になる。コンテンツ量を考えるとこの価格帯はかなりお得で、200時間遊んだとしても1時間あたり10円以下になる計算だ。インディーゲームの価格対効果として上位に入るレベルだと思う。
2026年2月のFRAUD層アップデートと同時に30%セールが実施されたという情報があり、新コンテンツ実装のタイミングでセールが行われるパターンがある。Steam上でウィッシュリストに登録しておけば、セール時に通知が来る。
このゲームが英語でしかリリースされないのは人類の損失です。hakita、newblood、正式リリースの際にはぜひ言語設定を前向きに検討してください。
引用元:Steam ユーザーレビュー(日本語)
この声はコミュニティでよく引用される。実際、公式日本語対応がないにもかかわらず、日本語レビューが多数あって全体の好評率を下げていない。それどころか、英語が読めなくてもプレイしたいというプレイヤーが日本語化MODを作り、ガイドを整備し、コミュニティが自発的にアクセシビリティを高めている。
Steamのレビューに「遊ぶ麻薬」という表現を使ったレビュアーは別のレビューでも同じ表現を使っておらず、このゲームだけに使っていた。それだけこのゲームの中毒性が突出していることを意味している。
遊ぶ麻薬。このゲームに会えて良かったです。
引用元:Steam ユーザーレビュー(日本語)
ULTRAKILLのコミュニティ:作るゲーマーたち
ULTRAKILLのコミュニティは規模の割に密度が高い。Steamのフォーラム、Reddit、Discordと活動場所は分散しているが、共通しているのは「上手くなろうとしているプレイヤー同士」という空気だ。
Nexus ModsとThunderstoreにはゲームプレイを拡張するModが多数公開されている。難易度カスタマイズのMod、ビジュアル変更のMod、コミュニティが制作した追加ステージなど、公式コンテンツの枠を超えた遊びが続いている。Hakitaがモッディングに理解を示していることも、コミュニティがModに力を入れている理由のひとつだ。
日本語化MODも複数存在する。「ULTRAKULL」というMODが代表的で、日本語化の内容はUI、アイテム説明、ターミナルのテキストなどをカバーしている。完璧ではなく文字化けが起きるケースもあるが、「英語が苦手だけど遊びたい」というプレイヤーのニーズに応えている。こうした非公式サポートが日本人プレイヤーの参入を助けている面がある。
ファンアートの文化も活発だ。V1、V2、ガブリエルを中心にDeviantArtやTwitter(X)で多数の二次創作が公開されている。特にガブリエルは「人気キャラクター」として確立されており、ゲームをプレイしたことがない人でもガブリエルのファンアートを見たことがある、という状況になっている。
スピードランコミュニティも存在する。speedrun.comにはULTRAKILLの走りが複数カテゴリで登録されており、Any%やAll Layers、Category Extensionsなどが充実している。ゲームの移動システムの豊かさがスピードランとの相性の良さに直結しており、「ゲームを制限なく速く遊んだらどこまで行けるか」の探求が続いている。
他のゲームと比べたとき

ULTRAKILLとよく比較されるのはDOOM Eternal(2020年)だ。同じく「攻撃的に動くことが回復につながる」という設計で、共通のDNAがある。DOOM Eternalはグローリーキルで体力を、チェーンソーで弾薬を、フレームスローで防具を補充する仕組みで、プレイヤーを前に出させる。価格帯はDOOM Eternalのほうが高く、制作規模も全く違うが、「インディーゲームがAAAゲームと同じ土俵で語られる」という事実がULTRAKILLの質を示している。
違いはスピードと自由度だ。DOOM Eternalのアリーナはかなり構造化されており、「この武器でこの敵」という推奨される戦い方がある。ULTRAKILLはその縛りが少なく、武器とテクニックを組み合わせる自由度が高い。「正解」より「自分のやり方」が通りやすい設計だ。

ハーフライフのような古典FPSとの比較では、ULTRAKILLは明らかに「操作難度が高い」ゲームだ。古典FPSは当時のコントロールの限界の中で設計されているが、ULTRAKILLはPC向けFPSの操作体系を前提として「ここまでやれる」という技術の頂点を目指している。
アリーナ系FPSとしてSPLITGATEと比べると、方向性が異なる。SPLITGATEはポータルを使った空間操作で多人数対戦に新しい次元を加えたゲームで、ULTRAKILLはシングルプレイヤーのスキルゲームとして作られている。共通するのは「従来のFPSの動きの制約を外す」という思想だ。
Counter-Strike 1.6のような精密射撃と戦術的判断を重視するゲームとは、求めているものが根本的に違う。CS1.6はシビアなリアリティの中での緊張感を楽しむゲームで、ULTRAKILLは物理とメカニクスを使い倒す快感を楽しむゲームだ。両方好きなプレイヤーも多いが、根底にある楽しさの種類が違う。
BioShockシリーズと比べると、世界観の深さという点では共通するところがある。BioShockは海底都市ラプチャーの背景を音声テープやロゲの山で積み上げてきた。ULTRAKILLはターミナルのテキストとボスの台詞で世界の文脈を積み上げている。ゲームプレイの方向性は全く違うが、「探索することで世界が深くなる」という設計の哲学は近い。
Slay the Spireのようなデッキ構築ゲームとは全く異なるジャンルだが、「スキルのレイヤーが深い」という点で共通している。どちらも「表面的に理解するゲーム」と「深く理解するゲーム」で体験が別物になる設計だ。ジャンルは違うが、「上達に応じて開けていく扉がある」という構造は同じだ。
正直なところ:難点も書く
97%好評のゲームだが、向いていない人には向いていない。その点を正直に書く。
英語のみという点は実際に障壁になる。ゲームプレイには関係ないが、ストーリーテリングやUIの理解度に影響する。非公式の日本語化MODが存在するが、完全ではなく、文字化けが起きることもある。「日本語対応が充実してから遊ぶ」という選択も間違いではない。
難易度の山が序盤にある。最初の数時間は死にまくって当然で、それを乗り越えられるかどうかがプレイヤーを選ぶ。「最初から快適に遊べるゲーム」ではない。HARMLESSモードとアシスト機能で緩和されているが、それでも操作に慣れるまでは本来の面白さが出てこない。
アーリーアクセスという状態は5年以上続いている。コンテンツとして不足しているわけではなく、むしろボリュームは十分にあるが、「正式版」ではないことの心理的な引っかかりを感じる人はいる。第9層が実装されれば正式版になるという見通しはあるが、具体的な日程は公表されていない。
また、2026年2月実装のFRAUD層は「これまでより難しい」という声が多く、高難易度に慣れたプレイヤーでも苦戦するという報告がある。非ユークリッド的な環境はゲームプレイだけでなく空間把握の面でも新しい挑戦だ。
現状、ゲームに公式Achievementが少ない点は気になる。一部のアーリーアクセスゲームでよく見られる「とりあえずAchievementをたくさん入れておく」という設計ではなく、実際の実績は完成版で整備される可能性があるが、ゲームの達成感をSteamの実績で見たいというプレイヤーには物足りない部分がある。
ゲームのシステム要件は比較的低い。ULTRAKILLはローポリゴンのレトロビジュアルで作られているため、高性能なPCが必須ではない。Steam上の推奨スペックはNVIDIA GTX 1060相当のGPUとi5-4590以上のCPUで、2015年以降のPCであれば多くの場合問題なく動作する。グラフィックスに全力投資するのではなく、ゲームプレイの滑らかさに全力投資している設計がここにも表れている。

まとめ:ULTRAKILLは何者か
「Quake meets Devil May Cry」という説明は正確だが、それだけではない。
ULTRAKILLは、ゲームメカニクスと世界観設定が完全に一致しているゲームだ。血を浴びて回復するという仕組みは、V1という機械の設定から来ている。プレイヤーが「なぜこうなっているか」を考えると、世界の設定に辿り着く。
一人の開発者が6年以上かけて作り続けているということは、それ自体がある種の証明だ。97%という評価はプレイヤーがつけたものだが、それを維持しながら更新を続けるというのは、作り続けることへの答えだと思う。
ゲームを遊んだあとにふと思うことがある。Hakitaが2018年に一人でこれを作り始めたとき、こんなことになるとは思っていなかっただろう。20万件超のレビュー、71,000人超のピーク同時接続、物理盤として売れるサウンドトラック——これらは全て、「自分が遊びたいゲームを作った」という行動から始まっている。フィンランドの一人の開発者が地獄を丸ごと作り上げた、という事実はゲームの内容と同じくらい驚異的だ。
ULTRAKILLは好みが分かれるゲームだ。向いていない人には全く刺さらないし、それは正直な評価だ。でも刺さった人には、他のゲームで同じ体験ができないという意味で、唯一無二の作品になる。「血は燃料」というコンセプトが腹落ちする人間には、このゲームしかない。地獄を舞台にした最速の殺戮機械として、まだ誰も行ったことがない場所へ行く体験が待っている。
「遊ぶ麻薬」「法規制されるべき」「脳内アドレナリン」——こういう言葉を使ってしまうゲームが5年に一本あるかどうかだ。ULTRAKILLはその一本だと思う。
大事なことを一つ言っておく。このゲームは誰にでも勧めるゲームではない。最初の数時間で死にまくって「難しすぎる」と感じる可能性は普通にある。HARMLESSモードがあるとはいえ、FPSとして求められる操作量は多い。それを乗り越えられるかどうかは人による。
でも、乗り越えた先の体験は他で得られない種類のものだ。コインが空中で弾を受けて敵の頭に向かっていく瞬間。パリィが決まってガブリエルの攻撃が爆発に変わる瞬間。スタイルメーターが「ULTRAKILL」になって音楽が盛り上がる瞬間。これらは他のゲームでは体験できない固有の快感だ。
第9層「Treachery」の実装と正式版リリースがいつになるかは分からない。でも今の段階でも、何十時間もかけて上手くなれる密度が十分にある。完成を待たずに、今遊ぶ価値があるゲームだ。Steamのストアに「価格は完成に近づくにつれ上がる」と書いてある以上、今の価格で遊ぶのが最もコスパが良いタイミングという見方もできる。
超ハイスピードで超バイオレンスな3Dロックマン、あるいは、銃がメインのデビルメイクライです。
引用元:Steam ユーザーレビュー(日本語)
この説明が一番わかりやすい。銃と拳と血で戦う、最速の殺戮機械の話だ。
最後にもう一つだけ。ULTRAKILLのSteamページには「Early Access Game(アーリーアクセスゲーム)」と書いてある。でもその下に書いてある言葉が本質をついている。「このゲームは今でも十分にプレイアブルな状態です。早期アクセス版を購入することで、製品版より安い価格でプレイでき、開発を支援できます」——この一文を読んで「今すぐやってみるか」と思った人は、もう答えが出ている。
ULTRAKILL
| 価格 | ¥2,800 |
|---|---|
| 開発 | Arsi "Hakita" Patala |
| 販売 | New Blood Interactive |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows |
| プレイ形式 | シングル |

