
最初の10分間、帆が全然動かなかった。風向きを見てロープを引いて、ガイドラインの長さを調整して……それでも船は微動だにしない。チュートリアルは最低限のことしか教えてくれない。マニュアルを読み直し、もう一度試みる。そしてある瞬間、帆がはらんで船体が水を切り始めたとき——なんとも言えない達成感があった。
Following Seas(フォロウィング・シーズ)は、帆船時代を舞台にした一人称視点の航海シミュレーションだ。風の物理シミュレーション、バラスト管理、六分儀と羅針盤を使ったアナログ航法……現代の便利なゲームが省略してきた「帆船を動かす手順」を、ほぼ丸ごと実装している。
開発しているのはWhipstaff Games——実態はほぼ一人のデベロッパーと、視力の弱いダックスフントという、とてもインディーらしいチームだ。2024年10月にデモが公開され、2025年11月21日にSteamでEarly Accessが始まった。レビュー件数はまだ少ないものの、現時点で「好評(81%)」、直近30日に絞ると「非常に好評(93%)」を記録している。
「バグだらけで荒削りだけど、帆船を本当に動かしている感覚は他のゲームにない」——そう語るプレイヤーが少なくない理由が、実際に遊ぶと体感できる。
公式トレーラー
・帆船時代の航海に憧れがある人
・シミュレーター系の「習得する楽しさ」が好きな人
・Sailwindやポートロイヤル系が好きで、次の一本を探している人
・インディーの荒削りなEAタイトルをじっくり育てるのが好きな人
・交易・釣り・探索を自分のペースで楽しみたい人
Following Seasとはどんなゲームか
舞台は「大帝国が崩壊した後の世界」——という設定のファンタジー海洋世界だが、ゲームプレイはリアル寄りの帆船シムに徹している。プレイヤーは船の船長として、島々の間を行き来しながら交易・漁業・探索を繰り返す。
ゲームの基本サイクルはシンプルだ。港で荷物を積む→目的地まで航海する→売る→次の島へ。だが「航海する」の部分が、このゲームの全てと言っていい。風向きを読み、帆の角度を合わせ、嵐が来たら回避するか乗り越えるかを判断し、目的地の位置をアナログ道具で割り出す——この一連の作業に、想像以上の時間を費やすことになる。
Early Accessの現時点では7種類の船を購入または建造できる。小さな一本マスト船から複数の帆を持つ大型船まで幅があり、大きいほど積載量は増えるが、操船の難易度も上がる。ゲームはオートセーブ対応で、ファストトラベルなど利便機能も含まれている。「本格シムだけど遊びやすさも意識している」というバランス感覚は、デモ段階からの開発方針として一貫している。
これは完全シミュレーターではなく「sim-lite」——帆船の醍醐味を感じながら、あまり難しすぎない設計を目指している。
出典:Steam Following Seas ストアページ(Whipstaff Games)
帆の物理シミュレーション——ロープを引いて風を捕まえる

Following Seasのコアにあるのは、風力の物理シミュレーションだ。帆は風に対して自動では最適な向きに動かない。プレイヤー自身がロープとラインを調整し、帆の位置と長さを決める必要がある。
仕組みはこうだ。帆の中心は風の力に従って動こうとするが、固定されたロープによって角度が制限される。そのロープの「たわみ」の余裕がどれだけあるかによって、帆が風を捕まえる角度が変わる。最適なトリムを見つけると船が加速し、外すと失速する——この「手応え」が気持ちいい。
一方で、そこに辿り着くまでの学習コストは高い。ゲームが提供するチュートリアルは最低限で、「ロープを引く」という操作を覚えたあとの応用は自分で試行錯誤するしかない。
最初は帆の動かし方が全然わからなくて30分近くフラフラしてた。でも理解できた瞬間、急に視界が開けた感じがした。
出典:Steam Following Seas コミュニティディスカッション「So first impressions from the demo」
この体験は、帆船シムの名作として知られるSailwindに近いが、Following Seasのほうがロープ操作のレイヤーが一段階深い。Sailwindは「帆を最適角に回す」感覚だったのに対し、Following Seasは「帆を構成するロープそのものを制御する」感覚に近い。
同じ「帆船の手触り」を追求したゲームとして、Sailwindも良い比較対象になる。
バラスト管理と浸水——船を沈めないための戦い
帆の扱いだけでなく、船体の「安定性管理」もゲームの重要な要素だ。Following Seasではバラスト(重り)を積み下ろしすることで船の重心を調整できる。積み荷の偏りや、嵐で甲板に乗り上げた波水が船内を流れる「フリーサーフェス効果」によって、船はじわじわと傾いていく。
嵐の中での航行は特に緊張する。波が横から打ちつけ、甲板に水が上がり、船が横に傾く。傾いた状態で次の波が来ると、さらに傾きが増す。この連鎖が続くと転覆する——というリアルな挙動が再現されている。
浸水処理も実装されており、甲板のハッチを閉める(バテン・ザ・ハッチ)ことで浸水を遅らせることができる。嵐の前に積み荷を固定し、バラストを調整し、帆を下げて嵐をやり過ごす——この一連の「嵐対処ルーティン」が身についてくると、船乗りになった気分が増す。
嵐の中でハッチを閉めに走り回ってたら波に吹っ飛ばされて船室に入れなくなった。こういうパニックになる瞬間が好き。
出典:Steam Following Seas コミュニティディスカッション「Some feedback after playing the demo」
ただし現状のEAでは、物理的な挙動に起因するバグも報告されている。「船が水面を突き抜けてそのまま沈む」「波のせいで意図しない力がかかり、停泊中に勝手に動き出す」といった問題は開発チームも把握しており、継続的に修正を進めている段階だ。
アナログ航法——羅針盤と六分儀で位置を割り出す

Following Seasのもう一つの特徴が、アナログ航法だ。GPS的なミニマップで現在位置が常に表示されるわけではなく、プレイヤーは羅針盤・クロノメーター・六分儀(クアドラント)を組み合わせて自分の位置を推算する。
さらにEAの現状でも「鉛筆とルーラー、コンパスを使って地図に書き込む」航法が実装されており、数値入力ではなく「実際に地図に書く」ような操作感が目指されている。現代の多くのゲームが「マーカーをクリック」で済ませている部分を、わざわざ手作業に戻しているのがFollowing Seasの立場だ。
これをメリットと感じるか、煩雑と感じるかはプレイヤーによって分かれる。Sailwindでは「大体の方角で目視航行」だったのに対し、Following Seasはより精密な位置把握が必要——とコミュニティで頻繁に比較されている。
星を見て位置を推測する航法が実装されてると知って購入した。地図に書き込む操作感が、実際に船乗りになった気分を出してくれる。
出典:Steam Following Seas ストアページ ユーザーレビュー
一方でこのアナログ性が、現状の問題点とも重なっている。「チュートリアルが薄いため、航法ツールの使い方がわからない」という声が複数上がっており、ゲーム内でのガイダンス不足は開発チームへのフィードバックでも上位に挙がっている。
交易と漁業——長い航海に意味を与えるゲームループ
帆船をただ操作するだけでなく、「なぜ航海するのか」という目的を与えるのが交易と漁業のゲームループだ。港ごとに需要と供給があり、安い港で仕入れて高い港で売る差益が利益になる。利益で船を強化し、より遠くへ、より大きな荷を運べるようになる——この循環がFollowing Seasの縦軸だ。
漁業もゲームの重要な収入源として機能している。魚を釣るシステムはDREDGEほど凝ったミニゲームではなく、漁網を仕掛けて引き上げる形だが、ただの金稼ぎ手段に留まらず、「目的地への航路上でついでに漁をする」という寄り道の楽しさがある。
DREDGEのような「釣りが主役のゲーム」とは方向性が違うが、長距離航海の単調さを和らげるアクセントとして機能している。

交易ルートが確立されてくると、「どの港で何を積んで、どの順番で回ると効率がいいか」を考えるルート最適化の楽しさが生まれる。嵐の回避や風向きの変化によって予定が崩れ、臨機応変に対応する場面も多い。1回の航海が「出発前の計画通り」に終わることはほぼなく、そのアドリブ感が体験を毎回異なるものにしている。
船の種類と入手——7種の歴史的帆船

EAの現時点では7種類の船が実装されている。15〜18世紀の実在した帆船から着想を得たデザインで、ゲームプレイ的にも外観的にも差別化されている。
入手方法は「購入」と「建造」の2パターン。港で資金を払って既製品を買う方法と、材料を集めて自分で建造する方法がある。建造ルートは時間がかかるが、よりカスタマイズ性が高いとされている(EAでの実装は進行中)。
操船の感覚は船ごとに大きく変わる。小さい船は小回りが利き、嵐でも比較的安定しやすいが積載量が少ない。大型船は交易効率が上がるが、港の出入りや狭い水路での操船が難しくなる。
一番小さい船から始めて、ようやく2隻目を買えた。船が変わるたびに操船感覚が全然違って、また習得し直す感じが面白い。
出典:Steam Following Seas コミュニティディスカッション「Lets see what happens.」
計画されているフルバージョンでは、さらに多くの船種と変種が追加される予定だ。また「クルー管理」の実装も予定されており、一人での操船から複数クルーとのチームプレイへの拡張が視野に入っている。
EAとしての現状——「荒削りだが本物の手触り」
Following SeasのEA評価は、そのポテンシャルとバグの現実が同居した状態だ。「非常に好評」という評価は、このゲームが目指しているものを理解した上で評価しているプレイヤーが多いことを示している。
ポジティブな声としては、
これは今まで遊んだ中で最もリアルなソロセーリングシムだ。一人の開発者が作っているとは思えない完成度。ゆっくりした速度、本物の風、全部手動……完璧。
出典:Steam Following Seas ユーザーレビュー(コミュニティ集計)
という声がある一方、技術的な問題も正直に報告されている。
4〜5時間プレイし続けるとフレームが落ちてスタッターが酷くなる。最適化はまだ途中だと思う。
出典:Steam Following Seas コミュニティディスカッション
船が水面を突き抜けて沈むことがある。あとプレイヤーキャラが段差に引っかかりすぎる。揺れる甲板で扉に入れないことが多い。
出典:Steam Following Seas コミュニティディスカッション「Completely unplayable mess」
「完全に遊べない」とまで評するユーザーも一部いる。ただしその多くは環境依存の問題(特定のGPUやドライバとの相性)や、EAの初期段階では避けられないバランス未調整によるものが大きい。開発チームはDiscordとメールでフィードバックを積極的に受け付けており、ユーザーの報告を取り込んで修正を重ねている姿勢は評価されている。
「sim-lite」という方向性——本格シムと遊びやすさの間

Following Seasが面白いのは、「本格帆船シム」を標榜しながら、徹底的なリアリズムには踏み込まない「sim-lite」を自称している点だ。
ファストトラベルは実装されている。疲労度システムはない。夜間に無限に活動できる。嵐の前に「警告」を示すUIが用意されている——これらは徹底したリアリズム志向のシムなら削除される要素だ。
しかしFollowing Seasはそれらをあえて残すことで、「帆の物理シムや航法の手応えは本物、でも普通のゲームとして遊べる」という立ち位置を作っている。
Sailwindと比較されることが多く、Steamコミュニティでは両作を巡る議論が盛んだ。Sailwindは「サバイバル要素があり、食料や水の管理も必要」という方向性に対し、Following Seasは「帆と交易に集中できる、サバイバルは要らない人向け」という住み分けになりつつある。
Sailwindとの一番の違いは「暴力・戦闘ができること」だと思う。カノンが実装予定で、Sailwindに物足りなかった層を取り込もうとしているのが伝わる。
出典:Steam Sailwindコミュニティ「Comparisons to Following Seas?」
現時点では戦闘は未実装だが、島での狩猟に使う銃器は実装されており、将来的な艦砲射撃の伏線になっている。「交易だけじゃなく戦闘もやりたい」という層にとっては期待のポイントだ。
ビジュアルと世界観——「荒廃した帝国」の残骸を巡る

ゲームの舞台設定は「大帝国が崩壊した後の世界」だ。プレイヤーが航行する海域には、かつての帝国の遺跡が各地に残っており、それが世界観の背骨をなしている。純粋な歴史シムではなく、ファンタジーの味付けがあることで、ゲームとしての自由度と雰囲気のバランスを取っている。
ビジュアル面では、Steamコミュニティの評価が一致して高い。海面のライティング、波の動き、船体の細部モデリング——特に船の造形はリアル系の作りで、「一人の開発者が作ったとは思えない」という声が多い。
グラフィックは本当に綺麗。船のディテールが異常に細かくて、デッキを歩き回るだけで楽しい。
出典:Steam Following Seas ユーザーレビュー(コミュニティ集計)
ただし現状のEAでは、フレームレートの不安定さが「せっかくのビジュアルが台無しになる」という批判とセットになっている。美しいビジュアルの基盤はあるが、最適化が追いついていない段階——というのが正直なところだ。
RPGcodexのフォーラムでは「buggy but pretty(バグだらけだが綺麗)」という一言評が話題になった。一見批判のように見えるが、ビジュアルの完成度と開発の現状を的確に捉えた表現として、コミュニティ内で定着している。
今後の開発ロードマップ
Whipstaff Gamesが公表しているフルバージョンへの追加要素は以下の通りだ。
- 船種の大幅拡充(追加船・派生バリアント)
- 島と寄港地の数を増やす(探索ポイントの追加)
- クルー管理システムの実装
- 限定的な戦闘(艦砲射撃)の実装
- より深い船体管理(修理・改造システム)
- 航法システムのさらなる拡充
EAとしての開発期間は未定だが、開発チームは「コミュニティのフィードバックを取り込みながら段階的にリリースする」方針を明言している。DiscordとSteamフォーラムでのやりとりは活発で、バグ報告への反応速度は速い方だという評価がある。
開発者は機能を追加したり変更するときにコミュニティに関与してくれる。Discord経由でフィードバックを送ると実際に反映されることがある。
出典:Steam Following Seas ユーザーレビュー(コミュニティ集計)
ソロ開発という性質上、更新速度は大手スタジオと比べると遅い。「このゲームが完成形になるのを待つ」というスタンスより、「開発過程に参加する気持ちで遊ぶ」ほうが楽しめると思う。
Sailwindとの比較——どちらを買うべきか

帆船シム界隈でFollowing Seasと最も頻繁に比較されるのが、同じくソロ開発のSailwindだ。どちらも「一人称視点の帆船シム」という珍しいジャンルを担っているが、方向性は異なる。
Sailwindは開発歴が長く、安定性や完成度では上だ。サバイバル要素があり、食料・水・疲労の管理が必要で、暴力・戦闘は一切ない。「穏やかな帆船生活を送りたい」ならSailwindのほうが今すぐ遊べる状態にある。
一方でFollowing Seasは、帆の物理シミュレーションのレイヤーが深く、アナログ航法や船体管理の手応えが違う。戦闘が実装される予定で、サバイバル要素は薄い。「帆船の操船技術を磨く体験をしたい」「将来的に戦闘も楽しみたい」という層にはFollowing Seasが合う。
どちらか一方というより、両方が存在することでジャンル全体が豊かになっている印象だ。Sailwindが好きだったプレイヤーがFollowing Seasのデモを試す流れはすでに起きており、「全然違うが面白い」という声が多い。
まとめ——「本物の帆船感」を体験したいなら試す価値がある
Following Seasは2026年4月現在、まだEA序盤の荒削りなゲームだ。バグはあるし、チュートリアルは薄い。フレームレートが不安定な環境もある。「完成したゲームを遊びたい」なら、今は時期が早い。
それでも、帆船を動かす基本的な手触り——ロープを引いて帆が風を捕まえる瞬間、嵐の中でバランスを保ちながら港を目指す緊張感、羅針盤を見ながら現在地を推算する作業——これらは既に機能している。そして「帆船シムが好きな人向け」というニッチなジャンルに、ここまで本気で向き合っているソロデベロッパーは稀少だ。
Steamではデモが無料で公開されている(テキスト表記のみ、リンクなし)。まずデモを試して、「帆の動かし方を30分かけて習得する過程が楽しい」と感じるかどうか——そこが判断基準になると思う。
帆船ロマンに目のないプレイヤーなら、開発途中の今から参加するのも悪くない選択だ。
Following Seas
| 価格 | ¥1,700 |
|---|---|
| 開発 | Whipstaff Games |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows |
