「Vampire: The Masquerade – Bloodlines 2」20年待った吸血鬼RPGの復活と賛否

20年。正確には21年だ。
2004年、Troika Gamesが開発した「Vampire: The Masquerade – Bloodlines」をプレイしたときの衝撃は、今でも鮮明に覚えている。バグだらけで、パフォーマンスはひどくて、Half-Life 2と同じ日に発売されるという最悪のタイミングだった。それでも、あのゲームには他のどのRPGにもない「闇の匂い」があった。ロサンゼルスの裏路地を歩く吸血鬼として、政治と陰謀と血に塗れた夜を過ごす。その体験は唯一無二だった。
だから続編が発表されたとき、世界中のファンが歓喜した。そして7年間の開発地獄を経て、ついに2025年10月21日に発売された「Vampire: The Masquerade – Bloodlines 2」。開発スタジオの交代、ナラティブリードの解雇、何度もの延期。それでもファンは待ち続けた。
結果はどうだったか。Steam評価は「賛否両論」の56%。Metacriticは62点。Paradox Interactiveは3700万ドル(約55億円)の減損処理を発表した。
でも、このゲームには語るべきことがある。良い部分も、残念な部分も。VtMB2のレビューとして、正直に書いていく。
こんな人に読んでほしい

- 前作「Bloodlines」のファンで、続編の出来が気になっている人
- ヴァンパイアもの・ダークファンタジーRPGが好きな人
- The Chinese Roomの過去作(Dear Esther、Everybody’s Gone to the Rapture)が気になる人
- 「Bloodlines 2 評価」で検索してたどり着いた、購入を迷っている人
- 開発地獄を経たゲームの結末が気になるゲーム業界ウォッチャー
ゲーム概要:21年ぶりの続編、しかし中身は「別物」

「Vampire: The Masquerade – Bloodlines 2」(以下VtMB2)は、テーブルトップRPG「Vampire: The Masquerade」の世界観を基にしたアクションRPGだ。プレイヤーは「Phyre(ファイア)」という名の古参ヴァンパイアとなり、長い眠り(トーポル)から目覚めた状態でシアトルの夜の世界に放り出される。
前作がロサンゼルスを舞台にしていたのに対し、今作の舞台は冬のシアトル。雪に覆われた街並みと、ヴァンパイア社会の政治的腐敗が交差する。
7年間の開発地獄を振り返る
このゲームの歴史を語らずにレビューを書くことはできない。VtMB2の開発経緯は、ゲーム業界でも稀に見る波乱万丈なものだった。
2019年3月 – GDCでParadox Interactiveが正式発表。開発はシアトルのHardsuit Labs。前作のライター、Brian Mitsodaがナラティブリードとして登壇し、ファンは熱狂した。発売予定は2020年3月。
2020年前半 – 発売延期。「Q1のローンチウィンドウよりもクオリティを重視する」とのコメント。この時点ではまだ楽観的な空気があった。
2020年8月 – 2021年への再延期が発表。雲行きが怪しくなってくる。
2020年後半 – 衝撃のニュース。ナラティブリードのBrian Mitsodaとクリエイティブディレクターのカアイ・クルーニーがプロジェクトから外される。2ヶ月後にはシニアナラティブデザイナーのCara EllisonもHardsuit Labsを去った。前作の魂とも言えるライターが解雇されたことに、コミュニティは動揺した。
2021年2月 – Paradox InteractiveがHardsuit Labsを開発から完全に外したと発表。「非公開の第三者スタジオ」が引き継ぐとだけ告げられた。事実上の開発リセット。
2023年 – ようやく新開発スタジオが明かされる。「Dear Esther」や「Everybody’s Gone to the Rapture」で知られるThe Chinese Room。ゲームは大幅にオーバーホールされ、新しいストーリー、新しい主人公、新しいゲームシステムで作り直された。
2025年3月 – さらなる延期。当初2024年秋予定だったものが2025年10月に。
2025年10月21日 – ついに発売。PC、PlayStation 5、Xbox Series X|S。発表から6年半。最初の開発開始からは実に7年以上。
この間、開発に関わった人間が何人入れ替わったのか。最終的に世に出たゲームは、2019年に発表されたものとはほぼ別のゲームになっていた。
主人公Phyre(ファイア)とは何者か
前作では、プレイヤーは新しく吸血鬼にされたばかりの「新参者(Fledgling)」だった。何も知らない状態で闇の世界に放り込まれ、手探りで生き延びていく。あの無力感と発見の喜びが前作の大きな魅力だった。
VtMB2では真逆のアプローチを取っている。主人公のPhyreは、バルカン半島かアナトリア地方の出身で、かつてコンスタンティノープルで「抱擁(Embrace)」を受けた伝説的な古参ヴァンパイアだ。何世紀もの眠りから目覚めた彼女(または彼)は、身体に刻まれた謎の紋章によって本来の力を封じられている。
さらにユニークなのが、Phyreの頭の中にもう一人の存在がいること。マルカヴィアン(狂気を宿すヴァンパイア氏族)の探偵ファビアンの意識がPhyreの精神に絡みついている。彼は現代シアトルの案内役であり、捜査のパートナーであり、同時に潜在的なライバルでもある。この二人の関係性は、VtMB2のストーリーの中で最も評価されている要素の一つだ。
氏族(クラン)システム
VtMB2では6つのプレイアブル氏族が用意されている。
Banu Haqim(バヌ・ハキーム) – ステルスと精密さに長ける暗殺者の氏族。透明化に近い能力で潜入プレイに適している。
Brujah(ブルハ) – 前作でもお馴染みの戦闘民族。近接戦闘での暴力と群衆制圧を得意とする。
Tremere(トレメール) – 血の魔術を操る魔術師氏族。遠距離からの計算された攻撃で敵を翻弄する。
Toreador(トレアドール) – 素早く優雅な立ち回りと魅了能力を持つ芸術家の氏族。
Lasombra(ラソンブラ) – 影を操る冷徹な支配者。シリーズ初のプレイアブル登場。
Ventrue(ヴェントルー) – 群衆鎮圧と精神支配で戦場をコントロールする貴族氏族。
ちなみに、発売前にはToreadorとLasombraが有料DLCに封入される予定だったが、ファンの猛反発を受けてParadoxが方針を撤回。全氏族が基本ゲームに含まれることになった。DLC「Shadows & Silk」は当初22ドルで2氏族をロックする予定だったが、批判を受けてストーリーパック(別キャラクターの視点で物語を体験するコンテンツ)に変更された。この対応自体は評価できるが、そもそもRPGの核心であるクラス選択を有料にしようとした判断には疑問が残る。
戦闘システム
前作がダイスロール的な数値計算に基づいていたのに対し、VtMB2の戦闘は完全にアクション寄りになった。一人称視点での近接戦闘が基本で、テレキネシスによるオブジェクト投擲や、各クランの固有能力を織り交ぜて戦う。
敵AIにはブロックとスタンスのシステムが実装されており、ガードを崩すために強攻撃を使う必要がある。また「Blood Resonance(血の共鳴)」というメカニズムによって、感情的に高ぶった人間の血を吸うことで特殊な能力を一時的に強化できる。これは古参ヴァンパイアならではの設定で、世界観との整合性がある。
ただし、この戦闘システムの評価は大きく割れている。後述する賛否両論の核心部分だ。
基本情報

| タイトル | Vampire: The Masquerade – Bloodlines 2 |
|---|---|
| 開発 | The Chinese Room(旧開発:Hardsuit Labs) |
| パブリッシャー | Paradox Interactive |
| 発売日 | 2025年10月21日 |
| 対応プラットフォーム | PC(Steam)/ PlayStation 5 / Xbox Series X|S |
| ジャンル | アクションRPG |
| 価格 | PC版 約8,580円(59.99ドル) |
| 日本語対応 | 日本語字幕対応(DMM GAMESがローカライズ担当) |
| Metacritic | PC版 62 / PS5版 64 |
| Steam評価 | 賛否両論(56%肯定) |
| 同時接続ピーク | 約27,000人(発売日) |
| ストレージ | 30GB |
| ESRB | M(17歳以上) |
PC版 動作環境
| 最低 | 推奨 | |
|---|---|---|
| OS | Windows 10 64bit | Windows 11 |
| CPU | Intel Core i3-8350K / AMD Ryzen 3 3300X | Intel Core i5-12600K / AMD Ryzen 5 5600X |
| メモリ | 8GB | 16GB |
| GPU | GTX 1060 6GB / RX 480 8GB | RTX 3060 Ti / RX 6700 XT |
| 目安 | 1080p / 30fps / Low | 1080p / 60fps / High |
なぜ注目されているのか:前作の伝説と「World of Darkness」の魅力

カルト的名作「Bloodlines」の遺産
2004年の前作「Vampire: The Masquerade – Bloodlines」は、発売時わずか8万本しか売れなかった。Troika Gamesは倒産し、バグまみれの未完成品として市場に出たこのゲームは、商業的には明確な失敗だった。
しかし、その後の20年で状況は完全に逆転する。有志によるパッチ(Unofficial Patch)が何年にもわたって更新され続け、口コミでじわじわと評価が広まり、デジタル配信の普及とともにセカンドライフを迎えた。今ではRPGファンの間で「史上最高のヴァンパイアゲーム」として語り継がれるカルト的名作だ。
前作が愛された理由は明確だ。LA(ロサンゼルス)の夜を自由に歩き回り、どのヴァンパイア氏族に属するかで会話の選択肢からクエストの解法まで変わる。Malkavian(マルカヴィアン)でプレイすれば、狂気に満ちた独自の会話が展開される。Nosferatu(ノスフェラトゥ)でプレイすれば、醜い姿を人間に見られないよう下水道を移動しなければならない。「ヴァンパイアとして生きる」というファンタジーを、ゲームメカニクスとして成立させていた。
だからこそ、続編への期待は天井知らずに膨らんだ。20年分の期待。それは祝福であり、同時に呪いだった。
「World of Darkness」というIP
VtMB2の土台にあるのは「World of Darkness」という90年代から続くテーブルトップRPGの世界観だ。ヴァンパイア、ウェアウルフ、メイジといった超自然的存在が人間社会の裏側で暗躍する世界。その中でも「Vampire: The Masquerade」は最も人気のラインで、ヴァンパイア同士の政治闘争、人間社会への偽装(マスカレード)、血への渇望と道徳的ジレンマを描く。
この世界観はダークで、エッジが効いていて、大人向けのアーバンファンタジーとして根強いファンベースを持っている。安っぽいヤングアダルト小説的なファンタジーとは一線を画す。VtMB2はこの世界観を忠実に再現しており、雰囲気づくりに関しては高い評価を得ている。
The Chinese Roomの物語力
開発を引き継いだThe Chinese Roomは、「Dear Esther」「Everybody’s Gone to the Rapture」「Still Wakes the Deep」といったナラティブ重視のタイトルで知られるスタジオだ。環境ストーリーテリングと雰囲気づくりに定評がある。
そしてVtMB2のストーリーは、多くのレビュアーが口を揃えて評価している部分だ。PC Gamerは「Vampire: The Masqueradeのビデオゲーム化作品の中で最高のストーリー」と評した。Game Rantは「2025年で最も優れた脚本のゲームの一つ」と書いている。
PhyreとFabienの二重人格的な関係、シアトルのヴァンパイア社会を取り巻く陰謀、そして古代から続く謎。The Chinese Roomの強みであるナラティブがVtMB2の最大の武器になっているのは間違いない。
Bloodlines 2のストーリーは本当に良い。Phyreの過去が少しずつ明らかになっていく構成が秀逸で、終盤の展開には素直に引き込まれた。The Chinese Roomの物語づくりの力を感じる。ただ、それだけにゲームプレイとの落差が…
Steam ユーザーレビュー(肯定的評価)より
雰囲気とビジュアルの評価
冬のシアトルという舞台設定は効いている。雪が降り積もる街並み、ネオンに照らされた裏路地、退廃的なヴァンパイアの隠れ家。World of Darknessの空気感を表現するという意味では、ビジュアルチームは確かな仕事をしている。
TheSixthAxisのレビューでは「Back from the Dead(死者の帰還)」というタイトルで、ゲームの雰囲気とストーリーテリングを評価している。プレイ時間が長くなるほど雰囲気に引き込まれていくという声も複数ある。
プレイヤーの声:肯定的な意見

ここからは、実際にプレイした人たちの声を紹介していく。まずは肯定的な意見から。
前作のファンとしてはいろいろ言いたいこともあるけど、VtMBの世界に21年ぶりに戻れたこと自体が嬉しい。ストーリーは予想以上に良かったし、シアトルの夜を歩くのは楽しい。「Bloodlinesの続編」としてではなく、「VtMの新しいゲーム」として遊べば十分楽しめる。
Steam ユーザーレビュー(肯定的評価・プレイ時間38時間)より
クリア後の感想。物語の後半、特に各クランの長老たちとの駆け引きが緊張感あって良かった。Fabienとの関係性も最初はウザかったけど、終盤では切ない感じになる。GameSpotが7/10つけたのは妥当だと思う。
Steam ユーザーレビュー(肯定的評価)より
Bloodlines 2、思ったより楽しんでる。確かにRPG要素は薄いけど、ストーリーとキャラクターの魅力で引っ張る力がある。The Chinese Roomらしい丁寧な雰囲気づくりは健在。前作とは別ゲーとして割り切れば良作
It is a good VtM game, but it is not a Bloodlines game. Paradox could have saved them a ton of outrage by marketing it differently.
Steam ユーザーレビュー(肯定的評価)より ※意訳:良いVtMゲームだが、Bloodlinesのゲームではない。マーケティングを変えていれば怒りは少なかったはず
肯定派に共通するのは、「前作と比べなければ楽しめる」というスタンスだ。ストーリーとキャラクター、World of Darknessの世界観再現に関しては一定の評価を得ている。PC Gamerが78点をつけたのも、この文脈だろう。
賛否両論・課題点:「Bloodlines」の名に値するか
ここからはVtMB2の問題点を正直に書いていく。このゲームの評価が割れている理由は明確で、しかも複数ある。
1. RPG要素の大幅な削減
これが最大の争点だ。前作では、ゲーム開始時にキャラクターを作成し、ステータスを割り振り、氏族を選び、そのすべてがゲームプレイと会話に影響した。Malkavianの狂った会話、Nosferatuの下水道生活、Gangrelの野性的なプレイスタイル。氏族選択がゲーム体験そのものを変えていた。
VtMB2ではキャラクタークリエイトがない。主人公はPhyreという固定キャラクターで、基本ステータスの割り振りもない。氏族選択はあるが、影響するのは主に戦闘スタイルと一部の会話だけ。会話の分岐はあるものの、大きな結果の変化にはほとんどつながらない。
Game Informerは「対話の選択肢は戻ってきたが、意味のある結果をもたらすことはめったになく、メインパスからの有意義な逸脱はほぼない」と指摘している。GamesRadarに至っては1.5/5という厳しい点数をつけ、「RPGを自称するゲームとして驚くほどRPGシステムが不足している」と断じた。
前作を知ってる身としては、選択の重さが全然違う。前作はMalkavianでやるかNosferatuでやるかでゲーム体験がガラッと変わった。今作のクラン選択は、せいぜい戦闘スタイルが変わるくらい。これをBloodlinesの「続編」と呼ぶのは違和感がある。
Steam ユーザーレビュー(否定的評価・プレイ時間25時間)より
2. 戦闘の繰り返し感
アクション寄りになった戦闘は、序盤こそ吸血鬼の超人的なパワーファンタジーとして楽しいが、中盤以降は単調になるという声が多い。敵のバリエーションが少なく、同じような戦闘パターンの繰り返しになりがちだ。
PC Gamerも「雰囲気は抜群に良いが、遊んでいて楽しくない場面がある」と述べている。ストーリーの魅力でプレイを続けられるが、ゲームプレイそのものが引っ張る力は弱い。
3. サイドクエストの質
PC Gamerは別の記事で「サイドクエストはひどいが、全部スキップしても問題ない」と書いている。メインストーリーが高く評価される一方で、サイドコンテンツの作り込みが甘いという指摘は複数のレビューで見られる。オープンワールドを名乗りつつも、探索の動機となるサイドコンテンツが弱いのは致命的だ。
4. 技術的な問題
特にPS5版では、パフォーマンスモードでも頻繁なスタッターやフレーム落ちが報告されている。PC版でもモーションブラーのオフ設定がないなど、基本的なオプション不足を指摘する声がある。マニュアルセーブができないという仕様も、60ドルのフルプライスゲームとしては厳しい判定を受けた。
顔のアニメーションが硬いという批判も多い。The Chinese Roomのこれまでの作品(Dear Estherなど)はキャラクター表現よりも環境表現に強みがあったスタジオだけに、ここは弱点が出た形だ。
5. リニアな構造
前作のBloodlinesは、ハブとなるエリアを自由に行き来し、クエストの解法も複数用意されていた。VtMB2はそれと比べると直線的な構造で、プレイヤーの自由度は限られている。「オープンワールドRPG」と期待して購入した人が、想像以上にリニアな体験に失望するケースが見受けられる。
Bloodlines 2、20時間クリア。ストーリーは確かに良かった。でも前作と比べると自由度がなさすぎる。ヴァンパイアとして「生きてる」感覚が薄い。街を歩いても何もすることがない。前作のLAは生きてたのに
レビュースコアから見るVtMB2の立ち位置
主要メディアのレビュースコアを並べてみると、評価のバラつきが見えてくる。
| メディア | スコア | 一言 |
|---|---|---|
| PC Gamer | 78/100 | VtMゲーム史上最高のストーリー、RPGとしてはやや不満 |
| GameSpot | 7/10 | ナラティブは好き、パワーファンタジーとして楽しい |
| IGN | 7/10 | 複雑な愛憎関係、数字一つで表すのは難しい |
| Game Informer | 7/10 | 残念だが救いはある。後半から物語が開く |
| GamesRadar | 1.5/5 | 夢のヴァンパイアRPGは杭で貫かれた |
| TechRadar | 低評価 | ニンニクを持って離れろ |
| Game Rant | 高評価 | 2025年のベストストーリーの一つ |
| TheSixthAxis | 好意的 | 死者からの帰還 |
Metacritic平均はPC版62点。批評家レビューの内訳は、肯定16%、中立67%、否定16%。中立が圧倒的に多い。つまり「良くも悪くもない」あるいは「良い部分と悪い部分が共存している」と感じたレビュアーが大半ということだ。
ユーザースコアはさらに厳しく4.8/10。ファンの期待値とのギャップが数字に表れている。
売上と商業的結果:3700万ドルの減損
数字の話もしておこう。VtMB2の商業的パフォーマンスは、率直に言って厳しい結果だった。
発売日のSteam同時接続ピークは約27,000人。これ自体はニッチなRPGとしては悪くない数字だが、7年の開発期間と投資額を考えると、Paradoxが期待していた水準には程遠かったようだ。
GameDiscoverCoの推計によれば、Steamでの販売本数は約121,500本、純収益は約400万ドル。フルプライスのAAAタイトルとしてはかなり低い数字だ。
2025年11月、Paradox Interactiveは3700万ドル(約55億円)の減損処理を発表。2025年第4四半期(10-12月)の営業損失は2770万ドルとなった。CEOのFredrik Westerは「責任はThe Chinese Roomではなく、パブリッシャーである我々にある」と明言。このゲームがParadoxのコア領域(グランドストラテジー)の外にあったため、売上の見通しを誤ったと認めた。
なお、The Chinese Roomは2025年末に親会社Sumo Digitalから独立し、再び独立スタジオとして歩み出している。7年間の開発地獄を乗り越え、Paradoxの支援で何とか完成にこぎつけたものの、商業的に報われなかった。ゲーム開発の厳しさを象徴するエピソードだ。
正直、Paradoxの経営判断のミスだと思う。The Chinese Roomに非はない。彼らは与えられた状況で最善を尽くした。問題は、7年かけて違うスタジオが3回も入れ替わったプロジェクトを引き継いで、ファンの20年分の期待に応えろというのが無理ゲーだったということ。
ResetEra フォーラム投稿より
プレイヤーの声:批判的な意見
It’s not a Bloodlines game. It’s a decent action game with a VtM skin. No character creation, no stat allocation, choices don’t matter. If you’re looking for the next Bloodlines, this isn’t it.
Steam ユーザーレビュー(否定的評価)より ※意訳:Bloodlinesのゲームではない。VtMの皮を被ったそこそこのアクションゲーム。キャラクリなし、ステ振りなし、選択が意味をなさない
21年待ってこれか…。Bloodlines 2、クリアしたけどRPGとしてはスカスカ。ストーリーは認めるけど、前作が「ヴァンパイアとして生きる」ゲームだったのに対して、今作は「ヴァンパイアの映画を見る」ゲーム。操作できるだけの映画
PS5版で遊んだけど、パフォーマンスがマジでひどい。スタッター頻発、ロード長い。60ドル払ってこの品質はないわ。あと手動セーブできないの本気で意味がわからない。2025年のゲームでオートセーブオンリーって。
Steam ユーザーレビュー(否定的評価)より
RPGとしての選択の重みがないのが致命的。前作のOcean Houseホテルの恐怖、Malkavianの狂った会話、Nosferatuでの下水道生活。あの創造性がどこにもない。The Chinese Roomは良いストーリーテラーだけど、RPGデザイナーではなかった。
Onyx Path フォーラム(長年のTRPGファンコミュニティ)投稿より
「前作」と「今作」の違いを整理する
ここで、前作と今作の違いを整理しておきたい。ファンの期待と現実のズレを理解するために。
| 項目 | 前作 Bloodlines(2004) | 今作 Bloodlines 2(2025) |
|---|---|---|
| 開発 | Troika Games | The Chinese Room |
| 主人公 | 自作キャラクター(新参ヴァンパイア) | 固定キャラ「Phyre」(古参ヴァンパイア) |
| キャラクリ | あり(外見・能力値) | なし |
| 氏族 | 7種(+隠し2種) | 6種 |
| 舞台 | ロサンゼルス | シアトル |
| 視点 | 一人称/三人称切替 | 一人称固定 |
| 戦闘 | ステータス依存RPG式 | アクション式 |
| 選択の影響 | 大きい(マルチエンディング) | 限定的 |
| 自由度 | 高い(複数解法) | やや直線的 |
| リプレイ性 | 高い | 中程度 |
こうして並べてみると、VtMB2は「Bloodlinesの続編」というよりも「World of Darknessを舞台にした新しいアクションアドベンチャー」に近いことがわかる。これが問題なのか、それとも正しい進化なのかは、プレイヤーの求めるものによって評価が分かれる。
それでもVtMB2を評価したい理由
批判ばかりを並べてきたが、このゲームには確実に光る部分がある。そこも正当に評価しなければフェアじゃない。
ストーリーの質は本物
繰り返しになるが、VtMB2のメインストーリーは出来がいい。PhyreとFabienの関係性、シアトルの各派閥の思惑、古代から続く陰謀。終盤に向けてテンションが上がっていく構成は見事で、PC Gamerが「もう一周やるかもしれない」と書いたのも納得できる。
特にヴァンパイア社会の政治劇が好きな人には刺さる。TRPGのVtMが長年描いてきた「キンドレッド(同族)」同士の権謀術数、Camarilla(カマリラ)とAnarch(アナーキスト)の対立。そういった要素はしっかり描かれている。
雰囲気は最高クラス
冬のシアトルを歩く感覚、ヴァンパイアの集会所の退廃的な美しさ、夜の街に潜む危険の気配。The Chinese Roomが得意とする環境ストーリーテリングの力がここに活きている。World of Darknessのファンなら、この雰囲気だけでも浸る価値がある。
クラン能力の多様性
戦闘の繰り返し感は指摘した通りだが、各クランの能力自体はよく差別化されている。Banu Haqimのステルスプレイ、Tremereの血の魔術、Brujahの圧倒的な近接パワー。2周目に別のクランでプレイする動機は十分にある。クロスクラン能力の解禁システムも、ビルドの幅を広げる要素として機能している。
DLC騒動への対応
氏族のペイウォール問題で炎上した際、Paradoxが比較的迅速に方針を撤回したことは評価できる。ToreadorとLasombraが基本ゲームに含まれることになり、有料DLCはストーリーパック(別キャラ視点のシナリオ)に変更された。ユーザーの声を聞く姿勢は見せた。
プレイヤーの声:SNS・コミュニティから
Bloodlines 2のTremereプレイが予想以上に楽しい。血の魔術で敵を爆発させるのは爽快。ストーリーも中盤以降どんどん面白くなる。これが70点台のゲームかと言われると…うーん、まあ理解はできるけど個人的には80点あげたい
Bloodlines 2に関してはThe Chinese Roomを責められない。3回もスタジオが変わったプロジェクトを拾って、なんとか形にしただけでも立派。問題はParadoxのプロジェクト管理。Hardsuit Labsの時点で見切りをつけるのが遅すぎた
ゲームとして面白いかどうかは置いといて、VtMB2の開発史自体がゲーム業界の教科書に載せるべき事例。AAA開発の難しさ、IPの管理、スタジオ交代のリスク。全部詰まってる。
はてなブログ ゲーム業界分析記事のコメントより
Fabienの声優さんの演技がめっちゃ良い。頭の中で喋り続けるキャラって一歩間違えると鬱陶しいだけだけど、VtMB2のFabienは本当に相棒感がある。皮肉屋だけど根はいいやつ、みたいな。ここだけで遊ぶ価値あるとまでは言わないけど、確実に体験を豊かにしてる。
ゲーム攻略Wikiのユーザー掲示板投稿より
似た体験ができるゲームたち
VtMB2に興味を持った人、あるいはプレイして「もっとこういうのが遊びたい」と思った人に向けて、関連するゲームを紹介しておく。
前作のカルト的な魅力、つまり選択の重みと世界観への没入を求めるなら、このタイトルが最もその系譜に近い。
ダークファンタジーの世界で自分だけのキャラクターを作り、運命を切り開く体験なら、こちらが鉄板だ。
アクション寄りのRPGで、超人的なパワーファンタジーを楽しみたい人にはこのシリーズがおすすめ。
吸血鬼として生き延びるサバイバル体験を求めるなら、オープンワールドで自由度の高いこの作品が合うかもしれない。
近未来のディストピアを舞台に、選択がストーリーに大きく影響するRPGとして、世界観の作り込みに定評がある。
ゴシックホラーの雰囲気とアクションRPGの融合を楽しみたい人には、このタイトルが刺さるはずだ。
The Chinese Roomの前作で、閉鎖空間でのホラー体験とナラティブの力を味わえる。VtMB2の開発チームの強みを理解する助けにもなる。
没入型シム(Immersive Sim)のジャンルで、VtMB前作が持っていた「複数の解法」「プレイスタイルの自由」を追求するなら。
まとめ:呪われた傑作か、期待外れの凡作か
「Vampire: The Masquerade – Bloodlines 2」は、簡単に評価を下せるゲームではない。
ストーリーは確かに良い。World of Darknessの世界観再現は見事だ。PhyreとFabienの関係性は記憶に残る。The Chinese Roomは、3回もスタジオが入れ替わった呪われたプロジェクトを、なんとか一つの作品として完成させた。それは紛れもない功績だ。
しかし、「Bloodlinesの続編」として見たとき、欠けているものが多すぎる。キャラクタークリエイト、ステータス割り振り、選択の重み、クエストの複数解法、リプレイ性。前作が20年かけて築いた名声の源泉であるRPG的深さが、このゲームには薄い。IGNの「複雑な愛憎関係」という表現が、おそらく最も正確にこのゲームの立ち位置を言い当てている。
Paradoxの3700万ドルの減損、Steamでの「賛否両論」評価、Metacritic 62点。数字だけ見れば厳しい結果だ。同時接続ピーク27,000人に対して、数ヶ月後には154人まで減少。プレイヤー定着率の低さも課題を示している。
それでも、このゲームには一定の価値がある。World of Darknessのファンにとって、現代のグラフィックとナラティブ技術でこの世界を体験できること自体が貴重だ。前作への過剰な思い入れを脇に置いて、「VtMの世界を舞台にしたアクションアドベンチャー」として向き合えば、20時間前後の充実した体験が待っている。
ただし、セール待ちという判断も合理的だ。フルプライスで購入してRPGとしての深さを期待するなら、肩すかしを食らう可能性が高い。Steam上でも「Good VtM game, not a Bloodlines game(良いVtMゲーム、だがBloodlinesのゲームではない)」という評価が的を射ている。
21年の歳月は、期待をモンスターに育ててしまった。どんなスタジオが作っても、あの期待を満たすことは不可能だったのかもしれない。VtMB2は、呪われた開発史のなかで生まれた、不完全だけど愛すべき一作だ。少なくとも、この夜の世界に足を踏み入れる価値はある。
ヴァンパイア マスカレードの闇夜は、まだ終わっていない。
