「Dispatch」元ヒーローが悪役を部下にする逆転スーパーヒーローADV、Steam Award受賞の300万本

目次

ヒーローの「裏方」をやるゲームが、2025年一番の話題作になった

「スーパーヒーローのゲームは飽きた」と思っていた。マントをまとって街を飛び回り、パンチを叩き込んで世界を救う——そういうゲームは何十本も出てきて、ある種のパターンが完成していた。

だから『Dispatch(ディスパッチ)』の第一印象は「また?」だった。スーパーヒーローが出てくるゲームというだけで、少し構えてしまっていた。

それが全部裏切られた。

このゲームで自分がやることは、現場に行って戦うことじゃない。オフィスのデスクに座って、どのヒーローをどの事件に派遣するか決めることだ。電話を受け、マップを眺め、チームメンバーの個性と欠点を把握し、最適な組み合わせを考える。スーパーヒーローの「裏方」をやるゲームだ。

その発想の転換と、それを支えるキャラクターの厚みと、選択が本当に噛み合ってくる後半のドラマが——すべて合わさって、2025年に最も多く語られたゲームのひとつになった。

Steamで97%の好評率(15万件超のレビュー)。販売300万本。プレイヤー数200万人突破。リリースから10日で100万本を売った。

この記事では、Dispatchがどんなゲームなのか、何がそこまで人を引きつけるのかを書いていく。

Dispatchとは何か

Dispatch メカマンのアクションシーン

元スーパーヒーローが「管理職」になる物語

主人公の名前はロバート・ロバートソン三世。かつては「メカマン」として活躍した正真正銘のスーパーヒーローだった。

ところが、宿敵のヴィラン「シュラウド(Shroud)」との戦いでメカスーツを破壊され、父親も殺された。武器を失い、英雄でいられなくなったロバートが行き着いたのが、スーパーヒーロー派遣ネットワーク(SDN)のディスパッチャーという仕事だった。

要は中間管理職だ。

それもかなり特殊な中間管理職で、部下は「フェニックスプログラム」で更生を試みている元スーパーヴィランたち。「Zチーム」と呼ばれる問題だらけの集団を率いながら、街で起きる緊急事態に対応していく。

表向きはそういう仕事をしながら、裏では父の仇であるシュラウドへの復讐の機会をうかがっている——それがDispatchの基本的な構図だ。

「元ヒーローが裏方に回るという視点の転換が天才的。現場で戦うんじゃなくて、誰を誰の事件に送り込むか考えるゲームというのは、スーパーヒーローものとして全く新しいアプローチだと思う」という日本語プレイヤーの声が、このゲームの本質をよく捉えている。

開発元はTelltale出身のAdHoc Studio

Dispatchを作ったAdHoc Studioは、2018年にMichael Choung、Nick Herman、Dennis Lenart、Pierre Shorette——それぞれ元Telltale Gamesのスタッフ——が設立したスタジオだ。

Telltaleといえば、「The Walking Dead」「The Wolf Among Us」「Tales from the Borderlands」といった名作ナラティブゲームを生み出したスタジオで、2018年に突然の閉鎖を迎えた。その後Telltaleは別会社に買収されて復活するが、AdHocの創設者たちはそこで「The Wolf Among Us 2」の制作に一時関わったものの、方向性の違いで離脱することになった。

スタッフ30名の小さなスタジオで、創設者たちが6ヶ月間無給で働きながら資金難を乗り越えた話は、ゲーム業界でも語り草になっている。Dispatchはそんなチームが7年をかけて作り上げた、初の完全自社タイトルだ。

「Telltaleゲームを正しく作るとこうなる」というIGNのレビュータイトルが、このゲームの立ち位置を端的に表している。

2つのゲームプレイが絡み合う構造

Dispatch Zチームのカンファレンスシーン

ディスパッチパート:誰をどこに送るか

ゲームプレイは大きく2つのパートに分かれる。

ひとつ目は「ディスパッチパート」で、ロサンゼルスの街マップ上に発生する緊急事態にZチームのメンバーを派遣する戦略ゲームだ。各ミッションには求められるステータスのしきい値が表示されていて、それをクリアできるかどうかがミッション成否に直結する。

ステータスは5種類。Combat(戦闘)は正面からぶつかる戦闘力、Intellect(知力)は頭を使った状況判断、Charisma(魅力)は交渉や説得の能力、Mobility(機動力)は素早い移動や回避、Vigor(体力)は持久力や耐久力だ。

1回のシフトで同時に複数の事件が発生するため、誰をどこに送るかのやりくりがカギになる。しかもヒーローにはクールダウンがあり、一度派遣したメンバーはしばらく使えない。10人いるZチームのメンバーを最大限に活かすローテーションを考えることが、このパートの醍醐味だ。

キャラクター間の関係性がミッション結果に影響することもある。仲のいい2人を同じ現場に送ると相乗効果が出たり、逆に仲の悪いメンバーを組み合わせると問題が起きたりする。「ヒーロー管理のパートが思いのほか奥深い。何をどの事件に送り込むか真剣に悩んだ」という声が多くのプレイヤーから上がっていた。

戦略ゲームとしての奥行きが気になる人には、こちらも参考になると思う。

あわせて読みたい
「Slay the Spire 2」同接57万人のデッキ構築ローグライク、Co-op対応の続編 7年待った続編は、想像以上だった 「スレスパってなんでこんなに面白いんだろう」と思いながら気づいたら深夜2時になっていた経験、みんな一度はあるんじゃないかと思う...

ストーリーパート:選択でキャラクターとの関係が動く

2つ目は「ストーリーパート」で、高品質なアニメーションの中でリアルタイムに選択肢を選びながら物語を進める。ここがTelltaleの系譜を受け継ぐ、ゲームの核心部分だ。

職場での雑談から、命がかかった現場の判断まで——あらゆる選択がZチームメンバーとの関係値に影響する。誰かの側についた選択は別の誰かとの距離を生む。積み重ねた関係性が、後半の物語の展開を大きく左右する。

ストーリーパートのアニメーションは、開発規模を考えると信じられないほどのクオリティだ。カット割り、カメラアングル、ライティング、細かな表情の動き——すべてが映像作品として成立するレベルで作り込まれている。「超絶気合の入ったアニメ」という感想は誰もが抱くはずで、これだけで十分に元が取れると言うプレイヤーも多い。

ただし途中には短いミニゲームやQTEも挟まる。このパートについては「物語の流れを切っている」という批判もあり、賛否が分かれている。「アニメだけ見せてくれ」という声も少なくない。個人的には、緊張感のある場面でのQTEはゲームとして自分が参加している感覚を強めていると思うが、好みによるところが大きい。

2つのパートが物語として繋がる

Dispatchのゲームプレイでうまくできているのはこのパートが独立していない点で、ディスパッチパートでの判断がストーリーパートに影響し、ストーリーパートでの関係性がディスパッチパートのパフォーマンスに影響する構造になっている。

「戦闘特化のキャラを情に負けて派遣して失敗する体験は痛かった」というプレイヤーの声があったが、それがこのゲームの醍醐味でもある。数字の上では最適な判断をしても、キャラクターへの感情移入が邪魔をする。それが物語としての没入感を作っている。

Zチームのキャラクターたち

Dispatch Zチーム集合写真

問題だらけの10人

Dispatchの最大の魅力は、Zチームのメンバーたちだと断言できる。

10人全員が元ヴィランあるいは問題を抱えたキャラクターで、それぞれに深みのあるバックストーリーがある。ステレオタイプのスーパーヒーローとは程遠い、欠点と葛藤と人間味が同居する人たちだ。

Invisigal(インビジガル)は喘息持ちの元ヴィランで、Zチーム最下位ランクの問題児。元の名前は「インビジビッチ」で、息を止めながら透明化するという少し不便な能力を持つ。ツンデレぶりが愛おしいという声が多く、日本語プレイヤーからも人気が高い。「Invisigalのキャラクターへの愛着が抑えられない。ああいう欠点ある子が一番愛せる」という感想がSteamコミュニティに溢れていた。

Phenomaman(フェノママン)はかつての有名ヒーローで、外宇宙出身のエリート。SDNの公の顔でもある。一見完璧に見えるが、うつ病と戦っているという設定があり、「完璧な人間に見えても内側は違う」という物語の重さを担っている。Blonde Blazerの元彼という複雑な立場も面白い。

Punch Up(パンチアップ)は身長100cmほどのちびっこタンク。体の小ささとは裏腹に最高クラスの体力と戦闘力を誇る。コントラストが生む笑いが多いキャラクターで、「パンチアップのデザインのギャップが最高すぎる」という声をよく見た。

Flambae(フランベ)は短気な炎使い。感情の起伏が激しくトラブルの源になることも多いが、その熱さが物語的なターニングポイントでもある。

Waterboy(ウォーターボーイ)は自信なさげなSDNの清掃員兼メンバー。体から水を生成するという能力を持つが、自己評価がとにかく低い。成長物語としての側面が強く、後半での変化が特に印象的なキャラクターだ。

その他、半コウモリの詐欺師Sonar、泥でできた存在Golem、暗闇を操る傭兵Coupé、光を操るPrism、ダークな過去を持つMalevolaが加わり、10人それぞれが記憶に残るキャラクターになっている。

豪華すぎる声優陣

このゲームのキャラクターたちの魅力をさらに引き上げているのが、声優陣の豪華さだ。

主人公ロバートを演じるのはAaron Paul(アーロン・ポール)。「ブレイキング・バッド」でジェシー・ピンクマンを演じた俳優で、ロバートの複雑な感情——英雄だった頃への執着、父への愛、復讐心、そして管理職という現実——を繊細に表現している。「アーロン・ポールの演技が素晴らしい。このゲームのために声優の仕事を引き受けたのが理解できる」という声が海外レビューに並んでいた。

主な宿敵シュラウドを演じるのはJeffrey Wright(ジェフリー・ライト)。「THE BATMAN」「ゴッサム・ナイツ」でも悪役を演じた実力派で、ゲームでの存在感も圧倒的だ。

InvisigalはLaura Bailey(ローラ・ベイリー)。「The Last of Us Part II」「Marvel’s Spider-Man」などゲーム声優として超一流の実績を持つ。Blonde BlazerはErin Yvette(エリン・イヴェット)で、「Hades II」や「The Wolf Among Us」への出演でも知られる。

さらにYouTuberのjacksepticeye、MoistCr1TiKaL、Joel Haver、Alanah Pearceもゲスト出演していて、jacksepticeyeは「これは今まで自分が演じた中で最大の演技の仕事だった。このゲームは信じられないほど素晴らしい」とコメントしている。

エピソードリリースというスタイル

Dispatch SDNのレコードルーム

全8話、毎週2話配信という構成

Dispatchは一般的なゲームとは違うリリース形式を採用した。全8エピソードを2話ずつ、毎週配信するエピソードリリース方式だ。

リリーススケジュールはこうなっていた:

  • 第1・2話: 2025年10月22日
  • 第3・4話: 2025年10月29日
  • 第5・6話: 2025年11月5日
  • 第7・8話: 2025年11月12日

1エピソードの長さは約1〜1.5時間。全話通しでのプレイ時間は12〜16時間程度になる。

このリリース形式は賛否が分かれるポイントだった。毎週水曜日にエピソードを待つ体験は、まるでドラマシリーズを追いかけるようで、「毎週水曜日にエピソードの配信を待つのがルーティンになっていた。ゲームでこんな体験は初めて」というプレイヤーもいた。同時にコミュニティ内で今週の展開について議論する熱量も生まれた。

一方で「全部出てから一気にやるべきだった。週刊配信の途中から参加するのは蚊帳の外感がある」「1エピソードが短すぎる。1時間で終わるのはさすがに短い」という批判的な声もあった。

現在は全8話が配信済みなので、今から始める人は一気にフルシーズンを体験できる。

現在の価格と注意点

Steam価格は3,400円(USD: $24.99)。定期的にセールで20%オフになる実績もある。

注意点として、日本語対応はテキスト・字幕のみで音声は英語のみとなっている。ただし字幕の翻訳品質は高く、英語が苦手でも十分楽しめると日本語プレイヤーから報告されている。「音声が英語のみ。字幕で読むのに慣れていない人はつらいかも。ただし字幕品質は高い」という声が複数あった。

また、プラットフォームごとの違いとして、Nintendo Switch版(2026年1月29日発売)はコンテンツに検閲が入っている。アダルトなシーンは黒塗り、暴言はピー音処理、ロマンスシーンの吐息音声までカットされており、検閲モードをオフにすることができない。PC版・PS5版にはそのような制限はない。「PC版で最初からやって正解。Switchは規制版確定なのが惜しい」という声が多く、フルの体験を求めるなら間違いなくPC版を選ぶべきだ。

選択の重さと、物語が変わる瞬間

Dispatch 選択の重みを示すゲームプレイシーン

「選択が重要」の意味を考える

Dispatchのキャッチコピーのひとつは「choices matter(選択が重要)」だが、このゲームにおける選択の意味は少し複雑だ。

正直に言うと、物語の大きな方向性が劇的に変わるのは主に終盤だ。中盤までの選択は主にキャラクターとの関係値を動かし、細かなセリフや場面の雰囲気を変える。「選択の影響が小さい。分岐は終盤のみ大きく変わる」という批判は一定数のプレイヤーから出ていて、否定はしにくい。

ただ、その中盤の蓄積が後半に一気に噴き出す体験は、確かにある。「第3話のあのシーンで自分の選択を後悔した。やり直したかった」という感想が複数見られたのは、それだけ選択が感情的に機能していた証拠でもある。

Telltale時代から続く課題である「どの選択をしても結局同じ結末に辿り着く」という問題を完全には解決できていない。でも「途中の体験が違う」という価値を、このゲームはしっかり作り込んでいる。

選択重視のゲームという観点では、こちらの作品も近いものを感じる。

投稿が見つかりません。

8話通しで作られた「完結した物語」の強さ

Dispatchがこれだけ評価された大きな理由のひとつに、8話で完結した物語という点がある。

サービス系のゲームは常に「この先どうなるか」という不安がついてまわるが、Dispatchは最初から8話完結の予定で作られた作品だ。第1話で提示された問いと伏線が、第8話できちんと回収される満足感は、ゲームとしての体験を大きく高めている。

「久しぶりにゲームで泣いた。10年以上ゲームやってて、泣いたのは数えるほどしかない」という声や、「キャラクターへの愛着が半端じゃない。8話全部一気にやった。睡眠を犠牲にした価値があった」という感想が示すように、このゲームはキャラクターへの感情的な投資を本当に大切に扱っている。

書かれた物語の緻密さという点では、こういったナラティブゲームと比較して語られることも多い。

投稿が見つかりません。

評価・受賞・販売実績

Dispatch ロバート・ロバートソン三世のシーン

圧倒的な数字

販売実績を改めておさらいしておく。

リリースから10日で100万本突破。2025年末の時点で300万本以上を販売した。プレイヤー数は200万人を超え、Steamの同時接続ピークは約22万人に達した——2025年にリリースされた全タイトルの中でトップ10に入る数字だ。インディースタジオが作ったナラティブアドベンチャーがここまでの規模に達したのは、前例がほとんどない。

Steamのレビューは15万8,000件超で97%が好評。直近30日でも96%を維持しており、時間が経っても評価が落ちていない。Metacriticは90点(Universal Acclaim)、OpenCriticも90点、IMDbは9.3点という評価だ。

主要メディアのレビューと批評家の言葉

GAMINGbibleは10/10をつけ「私は本当にこれが史上最高のゲームのひとつだと信じている」と書いた。VideoGamerも10/10で「選択駆動のアドベンチャーゲームが刷新された瞬間だ」と評した。

PC Gamerは89点で「インタラクティブTVシリーズとして一番良い。もう全部見た。もっとほしい」とレビュータイトルをつけた。IGNは9/10で「Telltaleゲームの真の精神的後継作」と呼び、Game Informerも9/10で「スーパーヒーロー職場コメディとして書かれた、深みのあるキャラクタードラマ」と評した。

GamesRadar+からは「Critical Roleファン必見——エピソードゲームがこの愛すべきはぐれ者チームによって超人的に救われた」という好意的なレビューが出ていた。

Steam Awards 2025 受賞

Dispatchは2025年の「Steam Awards」でOutstanding Story-Rich Game Award(ストーリー豊かなゲーム部門)を受賞した。ユーザー投票で決まるこの賞を受け取ったことは、商業的な成功と評論的な評価の両方がプレイヤーの支持を伴っている証拠でもある。

また「The Game Awards 2025」ではBest Debut Indie GamePlayers’ Voiceの2部門にノミネートされた。ただしGOTY(ゲーム・オブ・ザ・イヤー)にはノミネートされなかった——これはエピソードリリース形式のため審査期限の問題があったからで、DispatchはThe Game Awards 2026でGOTY候補になる資格がある。ゲームコミュニティでは「2026年のTGAで改めてDispatchがGOTYを取るかもしれない」という期待が続いている。

シーズン2の行方

Dispatch シーズン2に向けたキャラクターシーン

開発中だが確定ではない

シーズン1がこれだけのヒットになったことで、シーズン2への期待は当然大きい。AdHocの共同創設者Pierre ShoretteとNick Hermanは、シーズン2を「真剣に話し合っている」とコメントしており、開発が前向きに検討されていることは確かだ。

ただし現時点では正式に制作が確定したわけではない。AdHoc Studioはクリティカルロール関連の別ゲームプロジェクトも抱えており、それが「シーズン2は現在simmering(保留)状態」という説明につながっている。

参考として、シーズン1の開発には約7年かかっている。同じだけの時間はかけないとAdHocは述べているが、次作もそれなりの時間が必要になることは覚悟しておいた方がいい。

ひとつ楽しみな情報として、シーズン2には「もっとロマンス要素を入れる予定」だとShoretteが語っていた。シーズン1では元々予定していたロマンス要素をかなりカットしたそうで、そこへの反省からの発言だ。

プレイヤーたちはどう反応しているか

「シーズン2を作ってほしいがために、ゲームを友人に勧めることにした。売れれば続編の可能性が上がる」という声がSteamコミュニティに多数あった。これはゲームとしてだけでなく、開発チームへの応援として動いているプレイヤーの存在を示している。

「このスタジオを全力で応援したい。元Telltaleが集まって7年かけて作ったものが300万本売れたというのが、ゲーム業界で最高のニュースだと思う」という言葉は、多くのプレイヤーに共有された感情を代弁していた。

他のゲームと比べて何が違うか

Dispatch ラボシーン

Telltaleとの比較

DispatchはTelltale出身の開発者が作ったこともあり、「Telltale系」として語られることが多い。実際に比較されるのは「The Wolf Among Us」「Tales from the Borderlands」「The Walking Dead Season 1」あたりだ。

共通点は確かにある。選択肢ベースのナラティブ、キャラクター中心の物語、QTE、アニメーション重視のビジュアルスタイル——これらはどれもTelltaleの特徴でもある。

最大の違いは「ゲームとしての深さ」だ。Telltaleのゲームは批判的に言えば「ムービーゲーム」で、ゲームプレイの部分が薄かった。Dispatchにはディスパッチパートという戦略的なゲームプレイがあり、それが物語と有機的に結びついている。「Telltaleゲームを正しく作るとこうなる、というのが本当にわかった」という評価が、この違いをよく表している。

インディーゲームの底力という意味では、これも注目の作品だ。

あわせて読みたい
「REPLACED」8年の開発を経て発売、ピクセルアートサイバーパンクRPG 2021年6月、E3の発表映像が流れた瞬間、世界中のゲーマーが静止した。 ピクセルアートでありながら、どこか映画的な重みを持つ映像。1980年代のネオンが灯る廃墟都市に...

Dispatchならではのもの

管理職としての視点でスーパーヒーロー物語を描くというアイデアは、他のゲームでほとんど前例がない。戦う側ではなく、戦う人を送り出す側の人間としての葛藤と決断——それがDispatchが独自に踏み込んだ領域だ。

主人公のロバートは、かつての英雄としての自分と、今の管理職としての自分の間で揺れている。その二重性が8話を通じて丁寧に描かれていて、単純なスーパーヒーロー物語にはならないテーマの深さを生んでいる。

スーパーヒーロー映画は山ほどある。ゲームも多い。でも「自分が戦えなくなった後、どう生きるか」をこれだけ正面から描いたスーパーヒーロー作品は少ない。そのテーマが多くの人の心に刺さったのだと思う。

おすすめポイントと気をつけるべき点

Dispatch ゲームのおすすめシーン

こんな人に特に刺さる

Dispatchを特に楽しめるのは、こういう人だと感じる。

まず、キャラクターに感情移入して物語を楽しみたい人。10人のZチームメンバーが8話かけて成長したり関係が変化したりするのを見届けることが、このゲームの一番の体験だ。「キャラへの愛着が最大の価値」と断言できる。

次に、Telltale系のナラティブゲームが好きだった人。「The Wolf Among Us」や「Tales from the Borderlands」を楽しんだ人は、かなり高い確率でDispatchも楽しめると思う。あの雰囲気と手触りの発展形がここにある。

スーパーヒーロー物語の新しい切り口を求めている人にも強くすすめたい。マーベルやDCを見慣れた人ほど、このゲームの発想の転換が新鮮に感じられるはずだ。

キャラクター管理と物語の融合という観点では、このジャンルも相性がいい。

投稿が見つかりません。

逆にマッチしない可能性がある人

一方で、すすめにくい人もいる。

「選択がすべての結末を変えてほしい」という期待を持つ人は要注意だ。序盤〜中盤の選択は大きく結末を変えるわけではなく、その点で不満を感じる可能性がある。

アクションやゲームプレイの爽快感を求める人にも向いていない。ディスパッチパートの戦略要素はあるが、操作感の面白さや反射神経が試される要素は少ない。基本的には「物語を体験するゲーム」だ。

また英語音声のみのため、字幕でのプレイに抵抗がある人は少し注意が必要だ。ただし翻訳品質は高いので、字幕に慣れている人には問題ない。

エピソードリリース形式のゲームが気になる人には、こういった作品との違いを考えるのも面白い。

あわせて読みたい
「Witchbrook」魔女として魔法学校に通う、10年待ったコージーゲーム 魔法学校に通う魔女になれるゲームを、ずっと待っていた人がいる。 ホグワーツを舞台にしたゲームはあった。箒で空を飛ぶゲームもあった。でも「自分が魔女として学校に...

まとめ:スーパーヒーローの「もうひとつの物語」

Dispatchは、スーパーヒーローを戦わせるゲームではない。スーパーヒーローを「管理する」ゲームだ。その発想ひとつで、ジャンルのお約束をすべてひっくり返した。

元英雄が中間管理職になることの切なさと可笑しさ。問題だらけの部下たちへの愛着。復讐と責任の間で揺れる選択。それが高品質なアニメーションと豪華な声優陣で描かれて、プレイヤーは「インタラクティブなアニメドラマ」を体験することになる。

Metacritic90点、販売300万本、Steamで97%好評——数字はいくつも並べられるが、本質はもっとシンプルだ。「キャラクターを愛した」「物語が刺さった」「久しぶりにゲームで感情が動いた」という声が世界中で溢れた。それがこのゲームの正体だと思う。

今から始める人は、全8話が揃った状態で一気に体験できる。エピソードを毎週待った人たちの羨ましさと、最初から全部楽しめる自分への安堵が同時にある。それくらい、最後まで一気に見てしまいたくなる物語が待っている。

インディーゲームの底力というテーマでは、こちらも合わせて読んでほしい。

投稿が見つかりません。

Dispatch 基本情報まとめ

項目 内容
タイトル Dispatch(ディスパッチ)
開発元 AdHoc Studio
ジャンル ナラティブアドベンチャー / 職場コメディストラテジー
PC版リリース日 2025年10月22日(全8話完結: 2025年11月12日)
価格(Steam) 3,400円
プレイ時間 12〜16時間(全8エピソード)
日本語対応 テキスト・字幕のみ(音声は英語のみ)
対応プラットフォーム PC(Steam)、PS5、Nintendo Switch、Nintendo Switch 2
Steamレビュー 97%好評(15万8,000件超)
Metacriticスコア 90/100(Universal Acclaim)
販売本数 300万本以上
Switch版注意点 一部コンテンツに検閲あり(解除不可)

あわせて読みたい記事

Dispatchのような作品が好きな人には、ナラティブを重視したゲームや戦略要素のあるインディーゲームもおすすめだ。

投稿が見つかりません。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次