「9 Sols」タオパンク世界で戦うパリィ特化2Dソウルライク
パリィを決めた瞬間の快感が、あのゲームと重なった。
隻狼(SEKIRO)のパリィシステムを2Dメトロイドヴァニアに落とし込んだら、どうなるか。その答えが「9 Sols(九日 ナインソール)」だった。2024年5月29日にSteam配信がスタートし、台湾の小規模スタジオRed Candle Gamesが送り出したこの作品は、リリースから数ヶ月でSteamレビュー97%超えという驚異的な評価を叩き出している。
正直、最初は舐めてかかっていた。2Dのインディーゲームでソウルライク?どうせ死にゲー要素を足しただけでしょ、と思っていた。でも実際に触れてみると、これは本物だった。パリィを軸にした戦闘の完成度、道教とサイバーパンクを融合させた「タオパンク」という唯一無二の世界観、そしてプレイヤーの感情を鷲掴みにするストーリー——それらがすべて噛み合って、気づいたら何十時間も費やしていた。
日本では知名度がまだ低い。でも、知る人ぞ知る傑作として、インディーゲームファンの間では強烈な支持を集めている。この記事では、実際にプレイして感じたことを包み隠さず書いていく。
この記事はこんな人に読んでほしい
- 隻狼(SEKIRO)やホロウナイトが好きで、次の作品を探している人
- 2Dメトロイドヴァニアに飢えているアクションゲーマー
- インディーゲームの中から本当に面白いものだけを遊びたい人
- 道教・中国神話ベースの独特な世界観に興味がある人
- 難易度高めのゲームに挑戦したいけど、諦めずにクリアしたい人
9 Sols(九日 ナインソール)とはどんなゲームか

まず基本的なことを押さえておく。9 Solsは台湾のスタジオ「Red Candle Games」が開発した2Dアクションゲームだ。
Red Candle Gamesといえば、ホラーアドベンチャー「Devotion(還願)」の開発元として知られる。あの作品は中国で政治的な問題に巻き込まれて一時配信停止になり、世界的に注目を集めた。そのスタジオが次に送り出したのが、この9 Solsだった。
ジャンルは2Dメトロイドヴァニア×ソウルライク。メトロイドヴァニアとしての広大なマップ探索と、ソウルライク的な高難易度戦闘——特にパリィ(弾き返し)を核にした戦闘システム——が組み合わさっている。
世界観はタオパンク。道教(タオイズム)の哲学とサイバーパンクを掛け合わせた、世界でも類を見ないコンセプトだ。舞台は遠い未来の惑星「新新」。かつて人類が移住したこの星は、今や猫に似た容姿の「ヒト族」が支配している。プレイヤーは人間の主人公「羿(イ)」として、9人の支配者「九日」への復讐を遂げる旅に出る。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| タイトル | 9 Sols(九日 ナインソール) |
| 開発 | Red Candle Games(台湾) |
| 発売日 | 2024年5月29日(Steam)/ 2024年11月26日(コンシューマー版) |
| 対応プラットフォーム | PC(Steam)/ PS4・PS5 / Nintendo Switch |
| ジャンル | 2Dメトロイドヴァニア・ソウルライク |
| 価格 | 2,900円(Steam) |
| 日本語対応 | あり(テキスト・UI) |
| プレイ時間 | メイン20〜30時間、真エンドまで30〜40時間 |
| Steam評価 | 97%絶賛(圧倒的に好評) |
タオパンクという唯一無二の世界観

9 Solsで最初に衝撃を受けたのは、その世界観の独自性だった。
タオパンクという言葉を聞いたことがある人は少ないだろう。これはRed Candle Games自身が名付けたコンセプトで、道教(タオイズム)の哲学・美学とサイバーパンクのビジュアル・設定を融合させたものだ。
舞台となる惑星「新新」は、遥か未来の宇宙空間にある。かつて人類が移住したこの星を、今や「ヒト族」と呼ばれる猫に似た容姿の種族が支配している。彼らは「大典」と呼ばれる道教的な秩序体系のもとで社会を維持し、人間を奴隷的な立場に置いている。
このビジュアルが圧倒的だった。霓虹の光が溢れるサイバーパンク的な都市と、竹林・廟・水墨画的な風景が同居している。道教の陰陽シンボルが各所に散りばめられ、ボス戦では「気」の概念が戦闘システムに組み込まれている。
「世界観が他にない。中国・台湾文化圏のSFをここまで丁寧に作り込んだゲームは初めて見た。ホロウナイトとSEKIROを足して、中国哲学を注入した感じ」
— Steamレビューより
ただ、正直に書いておく。道教や中国の古代神話にある程度の知識がないと、世界設定や思想的な背景が掴みにくい場面がある。「九日」という9人のボスたちは古代中国神話に登場する太陽の使者に由来しているし、主人公の羿(イ)も中国神話の弓の英雄「后羿(こうげい)」をモチーフにしている。日本人がギリシャ神話を知らずにゴッド・オブ・ウォーを遊ぶような感覚に近い。
それでも、雰囲気や演出の力でぐいぐい引き込まれる。知識がなくても楽しめるが、知識があればさらに深く楽しめる——そういう作りになっている。
パリィ特化の戦闘システム——SEKIROを2Dに

9 Solsの核心はここにある。パリィを軸にした戦闘システムだ。
敵の攻撃をちょうどいいタイミングで弾き返す「パリィ」は、SEKIROプレイヤーにはお馴染みの概念だろう。9 Solsはそれを2D平面に持ち込み、さらに「気」システムと組み合わせることで独自の深みを生み出している。
基本的な流れはこうだ。
- 通常攻撃で敵にダメージを与えながら「気」(チャージ)を溜める
- 溜めた気を使って「気功術」(特殊技)を発動する
- 敵の攻撃をパリィで弾き返すと気が溜まりやすくなり、スタン(よろめき)状態を誘発できる
- スタン状態の敵に「処刑」を決めると大ダメージ
この「パリィ→気溜め→処刑」のサイクルを回すのが気持ちいい。パリィを決めた瞬間の音とエフェクト、そして処刑時のカットイン演出——これらが全部嚙み合ったとき、「俺、強い」という謎の高揚感がある。
「弾きが決まったときの爽快感が異常。SEKIROより気持ちいいかもしれない。2Dだから攻撃の軌道が読みやすくて、パリィを練習する楽しさがある」
— Steamレビューより
処刑タリスマンシステム

さらにユニークなのが「タリスマン」システムだ。羿は弓矢を使うことができ、敵に「タリスマン(符)」を貼り付けておける。スタン状態の敵を処刑する際に、複数のタリスマンを同時に起爆させることで爆発的なダメージを叩き出せる。
これが戦術的な深みを生んでいる。何枚タリスマンを貼るか、どのタイミングで起爆させるか——ボスによって最適な戦略が変わり、試行錯誤が楽しい。
ボス戦の設計が光る

9 Solsのボス戦は、死にゲーとしての厳しさと「いつかは倒せる」という希望のバランスが絶妙だった。
ボスたちはみな攻撃パターンが豊富で、最初はボコボコにされる。でも、失敗を重ねるうちに攻撃の予兆が読めるようになり、パリィのタイミングが掴めてくる。そして初めてパリィを連続で決められたとき——その快感は格別だった。
「ボス戦が理不尽に感じない。死ぬたびに『次はもう少しうまくやれる』という感覚があって、気づいたら何十回も挑戦してた。倒したときの達成感がすごい」
— プレイヤーの声(note記事より)
難易度調整オプションも充実している。ストーリーモードでは無敵時間の調整やダメージ倍率の変更が細かくできる。「アクションは苦手だけどストーリーを楽しみたい」というプレイヤーのために、しっかりと間口を広げる設計になっている点は開発チームの誠実さが伝わってくる。
メトロイドヴァニアとしての探索——マップの広さと密度

戦闘だけでなく、探索の面でも9 Solsはしっかりしている。
マップは相互につながった大きな一枚絵で、典型的なメトロイドヴァニアのスタイルだ。最初は進めないエリアも、新しいアビリティを手に入れることで突破できるようになる。二段ジャンプ、壁ジャンプ、滑空——これらを習得するたびに行動範囲が広がり、「さっきのあそこ、今なら行けるんじゃ?」という探索欲が湧いてくる。
エリアのデザインが多様で、竹林の廟からサイバーパンク的な工場地帯、水没した古代遺跡まで、見た目のバリエーションが豊富だった。探索していて飽きない。
「マップの作り込みがえぐい。隠し通路や隠し部屋が随所にあって、全部見つけようとするとかなり時間がかかる。でも見つけたときの報酬感がちゃんとある」
— Steamレビューより
ただ、一つ正直に書いておく。マップの視認性は若干低い。特に複雑に入り組んだエリアでは、現在地と目的地の把握が難しくなることがある。ホロウナイトの「かなり迷う」感覚に近く、これが楽しいという人もいれば、ストレスという人もいると思う。
ストーリーの深さ——復讐と道教的な問いかけ

9 Solsのストーリーは、単純な復讐劇として始まり、やがて深い問いかけへと変わっていく。
主人公の羿は長い眠りから目覚め、かつて裏切られた怒りを胸に九日への復讐を開始する。でも物語が進むにつれ、「復讐とは何か」「命とは何か」「人間とヒト族の違いは何か」という道教的・哲学的な問いが浮かび上がってくる。
倒していくボスたちが、ただの悪役じゃないのがいい。それぞれに信念があり、歴史がある。羿が倒すたびに、「これは本当に正しかったのか」という疑問が積み重なっていく。
「ボスたちが単純な悪者じゃない。倒すたびに胸が痛くなる。特に中盤以降は、誰が正しいのか全然わからなくなってくる」
— note記事のレビューより
アニメーション演出も特筆すべき点だ。手描きのカットシーンが本作のストーリーを語るうえで大きな役割を果たしている。台湾のアニメスタジオと共同制作されたこれらのシーンは、ゲームというよりアニメ映画を見ているような質の高さがある。
真エンドを目指す価値

9 Solsには複数のエンディングがある。通常エンドと、一定の条件を満たした場合のみ見られる「真エンド」だ。
真エンドは、物語の全容を理解したうえで見ると、かなり感情が動く。「道教的な輪廻・解放」というテーマが、ゲームシステムと物語の両面から収束していく感覚があった。伏線の回収も丁寧で、「あの場面はこういう意味だったのか」と気づく瞬間が何度もあった。
「真エンドのラストシーン、涙が止まらなかった。インディーゲームでここまで感情を揺さぶられたのは久しぶり。ホロウナイトのエンドに匹敵するか、それ以上かもしれない」
— プレイヤーの声(はてなブログより)
キャラクターたちの魅力

9 Solsのキャラクターは、少数精鋭ながら印象に強く残る。
主人公の羿は、無口な剣士タイプではなく、自分の感情を持ち、怒り、迷い、傷つく人間として描かれている。この「感情のある主人公」という設定が、ストーリーへの没入感を高めてくれた。
仲間のAI「Shuanshuan(ショアンショアン)」との関係性も良かった。彼女は羿の旅を支えながら、自分自身のアイデンティティについても葛藤している。この二人のやりとりが、ゲームの情緒的な軸になっている。
ボスである「九日」たちも、それぞれ際立った個性を持っている。信仰心の強い者、合理主義者、革命を夢見る者——同じヒト族の中にも多様な価値観があり、単純な善悪の構図に落とし込んでいない点が成熟している。
グラフィックとサウンド——インディーの枠を超えた完成度

9 Solsのビジュアルは、インディーゲームの水準を大きく超えている。
ドット絵と手描きアニメーションを組み合わせたスタイルで、細部まで丁寧に作り込まれている。タオパンクの世界観を体現する背景美術は特に秀逸で、探索中に足を止めて眺めたくなる場面が何度もあった。
サウンドトラックも素晴らしい。中国伝統楽器とシンセサイザーを組み合わせた音楽が、タオパンクの雰囲気を完璧に演出している。特にボス戦の曲は、それぞれのボスのキャラクター性を音楽で表現していて、戦いながら「この曲、いいな」と思う瞬間が何度もあった。
「サウンドトラックが神がかってる。中国の楽器とエレクトロニックの融合が完璧。ゲーム終わった後もBGMをYouTubeで聴き続けてる」
— Steamレビューより
日本でパッとしない理由——知られていないだけの傑作
Steam97%絶賛という評価にもかかわらず、日本における知名度はまだ低い。なぜか。
いくつか要因が考えられる。まず、タオパンクという世界観の馴染みにくさ。道教や中国神話を背景にしているため、欧米のファンタジーや日本のJRPG的な文脈に慣れたプレイヤーには取っつきにくい面がある。
次に、高難易度というハードル。パリィ特化の戦闘は、アクションゲームが得意でないプレイヤーには最初の壁が高く感じられる。難易度調整オプションはあるが、それを知らずに諦めてしまう人も多いかもしれない。
そして、マーケティング規模の問題。Red Candle Gamesは小規模スタジオで、大手パブリッシャーのような宣伝力はない。口コミで広がるタイプの作品だが、そのきっかけになる有名配信者やメディアの取り上げが少なかった。
ただ、コンシューマー版が2024年11月に発売されたことで、状況は変わりつつある。PS4・PS5・Nintendo Switchでもプレイできるようになり、PCゲームに馴染みのないプレイヤーにもリーチが広がった。
「こんなに面白いのになんで周りに知ってる人がいないんだ。皆やれ。絶対後悔しない。SEKIROが好きならなおさら」
— Steamレビューより
気になった点——正直な評価
良いことばかり書いても正直じゃないので、気になった点も書いておく。
世界観の学習コスト
タオパンクの世界観は魅力的だが、その分だけ理解に時間がかかる。道教の概念(気・陰陽・天命など)や中国神話のキャラクターについての予備知識がないと、ストーリーの深い部分が掴みにくい場面がある。ゲーム内にある設定テキストを読み込む必要があり、テキストが得意でないプレイヤーにはしんどいかもしれない。
マップの視認性
複雑に入り組んだエリアでは、マップを見てもどこに何があるのかわかりにくい場面があった。ホロウナイトを遊んだことがある人なら似た感覚を経験したことがあると思う。「迷う楽しさ」と「ストレスな迷子」の境界線上にある感じ。
序盤のとっつきにくさ
最初の数時間は、戦闘システムの理解とマップの把握が同時に求められて、やや重たい印象がある。パリィのタイミングを掴むまでが一番しんどく、ここで諦めてしまう人もいると思う。
「序盤はきつかった。パリィのタイミングが全然掴めなくて3時間で積みかけた。でも最初のボスを倒せた瞬間に全部がわかった気がして、そこからは止まらなかった」
— プレイヤーの声(Steamレビューより)
Red Candle Gamesの作家性——Devotionから9 Solsへ
9 Solsを語るうえで、Red Candle Gamesというスタジオの背景を無視できない。
前作「Devotion(還願)」は2019年にリリースされた台湾ホラーアドベンチャーで、1980年代の台湾の家庭を舞台にした繊細なホラー作品だった。政治的な理由でSteamから削除され(現在はGOGで入手可能)、それが世界的な注目を集めた経緯がある。
そのRed Candle Gamesが、今度はジャンルを大きく変えてアクションゲームに挑戦した。9 Solsには、前作から引き継がれた台湾・中国文化への深い眼差しがある。Devotionでは1980年代台湾の日常と宗教観、9 Solsでは道教哲学とSFを組み合わせた世界観——どちらも、「台湾から見た東洋的な世界」を独自の視点で再解釈している。
このスタジオは、ゲームをエンターテインメントの道具として使いながら、文化・哲学・社会への問いかけを込めることを得意としている。9 Solsがただのアクションゲームに留まらない深みを持っているのは、この作家性があるからだ。
Steam 97%絶賛の理由——何がここまで刺さるのか
Steam97%という数字は、ゲーム業界でもトップクラスの評価だ。なぜここまで高い評価を得ているのか、プレイしてみて自分なりに整理できた気がする。
一つ目は、戦闘の気持ちよさが正直なこと。パリィが決まったときの音、エフェクト、処刑演出——これらが丁寧に作り込まれていて、「うまくなっている実感」がちゃんとある。下手でも楽しく、うまくなればもっと楽しい設計になっている。
二つ目は、世界観とゲームプレイが一体化していること。タオパンクの世界観は飾りではなく、「気」システムや「符(タリスマン)」などのゲームメカニクスに直結している。世界を感じながら戦うことができる。
三つ目は、プレイヤーへのリスペクト。難易度調整の丁寧さ、隠しエリアの報酬感、ストーリーの誠実さ——全体を通じて「プレイヤーに楽しんでもらいたい」という開発チームの姿勢が伝わってくる。
どんな人に向いていて、どんな人には向いていないか
こんな人には強くおすすめ
- SEKIROやホロウナイトが好きで次の作品を探している人
- アクションの練習を重ねてうまくなっていく過程が楽しい人
- 世界観・ストーリーの深さにこだわる人
- 2Dアクションのファン
- 中国・台湾文化に興味がある人
合わない可能性がある人
- アクションゲームが苦手で、難易度調整オプションを使っても戦闘がストレスになる人
- テキストを読むのが苦手で、設定テキストをスキップしがちな人(世界観が掴みにくくなる)
- マップ迷子になるとストレスを感じる人
まとめ——2024年インディー最高峰の一作
9 Sols(九日 ナインソール)は、2024年に出た2Dアクションゲームの中で間違いなくトップクラスの作品だ。
パリィを核にした戦闘の気持ちよさ、タオパンクという唯一無二の世界観、道教的なテーマを丁寧に紡いだストーリー——これらが高水準で一体になっている。SEKIROとホロウナイトの良いところを2Dに凝縮して、そこに台湾のスタジオならではの文化的な深みを加えた作品だと思う。
Steam 97%という評価は伊達じゃない。「また最初からやりたい」と思える作品の数は、年に数本もない。9 Solsはその一本だった。
日本での知名度はまだ低いが、コンシューマー版の発売でこれから広がっていく可能性は十分ある。2Dアクションゲームが好きな人は、ぜひ一度触れてみてほしい作品だ。
「自分が今までプレイしてきた2Dアクションゲームの中で、間違いなく1番楽しかった。ゲームというのはここまで人の感情を揺さぶれるんだと改めて思い知らされた」
— Steamレビューより
パリィを決めた瞬間の快感が、きっとあなたも忘れられなくなる。
