「Mafia: The Old Country」1900年代シチリアで描くマフィア誕生の物語
硫黄鉱山の暗闇から始まる物語だった。
5歳で父親に売られ、シチリアの地獄のような硫黄鉱山で働かされた少年エンツォ・ファヴァーラ。手元に残されたのは木彫りの馬のおもちゃだけ。そんな彼が17歳になったとき、裏社会の犯罪組織トッリージ・ファミリーに拾われ、「名誉ある男」への道を歩き始める。2025年8月8日、Hangar 13が送り出した「Mafia: The Old Country」は、マフィアシリーズの新章にして、シリーズの原点を描く作品だ。
正直に言おう。このゲームをプレイしている間、何度もコントローラーを置いて画面を眺めていた。Unreal Engine 5で再現された1900年代初頭のシチリアの風景があまりに美しくて、ゲームを進めるのがもったいないと感じる瞬間があった。日差しに照らされたブドウ畑、砂埃が舞う田舎道、薄暗い硫黄鉱山。どのシーンを切り取っても絵画のようだった。
だけど同時に、「もうちょっと自由に動かせてくれよ」とも思った。それがこのゲームの本質であり、最大の議論ポイントでもある。Mafia 4とも呼ばれるこの新作は、賛否が分かれる一本だ。でもだからこそ、語りがいがある。
公式トレーラー
こんな人に読んでほしい

- マフィアシリーズのファンで、Hangar 13新作の評価が気になる人
- 「ゴッドファーザー」や「シチリアーノ」のような重厚なマフィア物語が好きな人
- オープンワールドに疲れて、一本道でもいいから濃密なストーリーを体験したい人
- Mafia Old Country 評価やレビューを購入前にチェックしたい人
- PC版の動作環境やパフォーマンスが気になる人
- 前作Mafia IIIからの変化が知りたいシリーズ経験者
ゲーム概要 ── 1900年代シチリア、マフィア誕生の地へ

「Mafia: The Old Country」は、シリーズで初めてアメリカを離れ、マフィアの故郷であるイタリア・シチリア島を舞台にした三人称視点のアクションアドベンチャーだ。時代設定は1900年代初頭。架空の街サン・チェレステとその周辺の「ヴァッレ・ドラータ(黄金の谷)」を舞台に、裏社会に足を踏み入れた青年エンツォの物語が展開される。
開発はシリーズおなじみのHangar 13。ただし今回は、シチリアの文化や歴史を正確に再現するためにイタリアのStormind Gamesとの共同開発体制をとった。この判断が大きかった。建物の装飾、衣装のディテール、時代考証に基づいた武器や乗り物、すべてが「本物」の説得力を持っている。
エンツォ・ファヴァーラという主人公
主人公のエンツォは、ゲーム開始時17歳。父親に鉱山へ売られた過去を持つ少年が、トッリージ・ファミリーのアンダーボスであるルカ・トラパーニの下で働き始める。ドン・ベルナルド・トッリージが率いる組織の中で、エンツォは着実に信頼を積み上げ、やがてカポレジメ(幹部)にまで上り詰める。
しかし、物語を動かすのはマフィアの権力争いだけじゃない。ドンの娘イザベラとの禁じられた恋愛が、エンツォの運命を大きく揺さぶる。組織内の血の掟、家族への忠誠、そして個人の愛情。この三つの間で引き裂かれるエンツォの姿は、シリーズ随一の「息苦しさ」を生み出している。
ゲームプレイの特徴
前作Mafia IIIがオープンワールド路線に振り切ったのに対し、本作は初代Mafia、Mafia IIの路線に回帰した。リニア(一本道)で、ストーリー主導のミッション構成。マップ自体はそれなりに広いが、自由に探索できる要素は限られている。
戦闘システムには新たにナイフ戦闘が追加された。3種類のナイフがあり、それぞれ特性が異なる。
- スカンナトゥーリ・ナイフ ── 耐久度は低いが投擲可能。ステルスキルに最適
- ラソル・ナイフ ── 戦闘中のワンヒットキルが可能。攻撃特化型
- スティレット・ナイフ ── 最高の耐久度で長期戦向き
銃器も時代に合わせたリボルバーやショットガンが登場し、カバーシステムを使った銃撃戦もしっかり用意されている。ステルスか正面突破か、プレイヤーの選択に委ねられる場面が多い(ただし、ストーリー上ステルスが強制される場面もある)。
移動手段も1900年代らしく、馬や初期の自動車が登場。石畳の街を馬で駆け抜けたり、未舗装の田舎道を旧式自動車で走ったりする体験は、他のゲームでは味わえない独特の没入感がある。
「従来のシリーズでも随一の息苦しい空気感をこれでもかと感じられるが、それを話の面白さに落とし込める優れたバランス感覚は今作にもしっかり継承されている」
出典:noteユーザーレビュー
基本情報

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | Mafia: The Old Country |
| 開発 | Hangar 13 / Stormind Games |
| パブリッシャー | 2K Games |
| エンジン | Unreal Engine 5(Nanite、Lumen、MetaHuman対応) |
| 発売日 | 2025年8月8日 |
| 対応プラットフォーム | PC(Steam)/ PS5 / Xbox Series X|S |
| ジャンル | アクションアドベンチャー(三人称視点・リニア) |
| 価格 | 49.99ドル(通常版) |
| クリア時間 | 約12〜15時間 |
| Metacritic | 75〜76(メディア)/ 7.7(ユーザー) |
| Steam評価 | やや好評(70%が好評) |
| 初週売上 | 約80万本(全プラットフォーム・4日間) |
| Steam最大同接 | 約27,585人 |
推奨スペック(PC版)
| 項目 | 最低(1080p/中設定) | 推奨(1440p/高設定) |
|---|---|---|
| CPU | Ryzen 7 2700X / i7-9700K | Ryzen 7 5800X / i7-12700K |
| メモリ | 16GB | 32GB |
| GPU | RX 5700 XT / RTX 2070 | RX 6950 XT / RTX 3080 Ti |
なぜ評価されているのか

1. Unreal Engine 5で描かれる「時代の空気」
このゲームの最大の武器は、間違いなくビジュアルだ。Naniteによる超精細なジオメトリ、Lumenによるリアルタイムグローバルイルミネーション。大事なのは「それが体験としてどう効いているか」だ。
答えはシンプルで、「1900年代のシチリアにタイムスリップした感覚」を味わえる。朝靄に包まれたオリーブ畑、夕暮れ時の石造りの街並み、暗く湿った鉱山の奥。光の表現が特に秀逸で、シチリアの強い日差しが建物に落とす影のコントラストは、プレイするたびにスクリーンショットを撮りたくなる。
「Unreal Engine 5を使ったHangar 13の1900年代シチリアは芸術作品と呼べるレベル」
出典:Entertainment Geeklyレビュー
2. リニアだからこそ実現した「濃密なストーリーテリング」
クリアまで約12〜15時間。前作Mafia IIIの40時間と比べると大幅に短い。だがその分、一つ一つのミッションにかける演出の密度が桁違いだ。ダレるサブクエストも、水増しの収集要素もない。すべてがエンツォの物語を前に進めるために機能している。
IGNのレビュアーが8/10のスコアをつけたのも、この語り口の力に惚れたからだろう。脚本の質、声優の演技、そしてディテールへのこだわりが「時代を体験する」没入感を生み出している。
3. 初代Mafia、Mafia IIへの敬意ある回帰
Mafia IIIはオープンワールド化や時代設定の変更で賛否が分かれたが、The Old Countryはシリーズの原点に立ち返った。一本道のミッション、映画のような演出、キャラクターの関係性を軸にしたドラマ。シリーズファンにとってたまらない要素だ。
Mafia: The Old Country has gone gold. We can’t wait to welcome you into our Family on August 8, 2025!
4. 価格設定の良心
フルプライス70ドルが当たり前の2025年のゲーム業界で、49.99ドルという価格で発売。さらに2025年11月に無料大型アップデート「Free Ride」が配信され、フリーライドモード、フォトモード、一人称視点ドライビング、クラシック難易度、新装備が追加された。
5. ナイフ戦闘という新機軸
銃器が希少だった1900年代初頭という時代設定を活かし、ナイフ戦闘が大きなウェイトを占める。回避とパリィを組み合わせた格闘システムで、ステルスプレイとの相性も良い。
「ナイフの存在がアクションに革新をもたらした。ドッジとパリィのある近接戦闘は緊張感がある」
出典:ファミ通 開発者インタビュー
賛否両論・課題点

Metacritic 75〜76、Steam評価70%という数字は、「良作だが傑作には届かなかった」ことを物語っている。
1. ナイフ戦闘の「単調さ」
ゲーム後半に向かうにつれて同じパターンの繰り返しになる。回避→パリィ→攻撃のループが見えてしまうと、緊張感が薄れる。PC Gamerは45/100という厳しいスコアをつけたが、その大きな理由がこの戦闘の反復性だった。
2. 「自由に遊べない」ストレス
マップは広いのに、ミッション以外でやれることがほとんどない。GameSpotは6/10のスコアで「見る分には美しいが、触れさせてくれない」と評した。
「マフィアシリーズ史上、最もスローで退屈だった。チュートリアルかと思ったらゲームが終わった」
出典:Steamユーザーレビュー(否定的)
3. ストーリーの「予測可能性」
脚本の質は高いが、物語の展開はマフィアものの定番を忠実になぞっている。裏社会への参入、信頼の獲得、禁じられた恋、裏切り、悲劇的な結末。驚きが少ない。
4. ステルスの「古さ」
ゲームプレイの大きな柱として導入されているにもかかわらず、2025年の基準では洗練されているとは言いがたい。敵の視野や行動パターンが機械的だ。
プレイヤーとメディアの声

メディアの評価
| メディア | スコア | コメント |
|---|---|---|
| IGN | 8/10 | 時代を体験するタイムマシン |
| DualShockers | 85/100 | シリーズファンには堪らない原点回帰 |
| GameSpot | 6/10 | 美しいが古い設計 |
| PC Gamer | 45/100 | 退屈なゲームプレイ |
ポジティブな声
「これぞ待っていたMafiaだ。Mafia IIIで失われたものがすべて戻ってきた。ストーリーの密度、キャラクターの深み、シチリアの空気感。12時間があっという間だった」
出典:Steamユーザーレビュー(好評)
「短いプレイ時間をネガティブに捉える人が多いけど、個人的にはこれが良い。ダレない、無駄がない。映画を観たような満足感がある」
出典:Steamユーザーレビュー(好評)
ネガティブな声
「ゲームというよりプレイする映画。自由度がなく、盛り上がりに欠ける」
出典:日本語ユーザーレビュー
「サイドクエストなし、自由探索なし、装備ショップは終盤にならないと開かない。50ドルでこれは厳しい」
出典:Steamユーザーレビュー(否定的)
SNSの反応
Turns out all the Mafia The Old Country swimming controversy was for nothing because the devs did think of it and have a swimming animation that takes you back to shore.
「泳げない論争」はTwitterで2000万再生を超えるバズを生んだ。リニアゲームに泳ぐ機能は必要か、というゲームデザインの本質的な議論に発展した。
売上とプレイヤー数
発売4日間で全プラットフォーム合計約80万本。Steam版は36時間で約18.6万本。Steam同時接続ピークは約27,585人。一本道・12時間・マルチなしというゲームの性質を考えれば、同接数だけで成功・失敗を判断するのは早計だ。
Free Rideアップデート

2025年11月20日に配信された無料アップデート。
- フリーライドモード ── 新チャレンジとレース追加
- フォトモード ── ファン要望の高かった写真撮影機能
- 一人称視点ドライビング ── シリーズ初の公式対応
- シネマ・シチリアーノ ── 白黒映画風ビジュアルモード
- クラシック難易度 ── 体力と弾薬がシビアな上級者向け
- 新装備 ── 衣装16種、ナイフ4本、銃3丁、車2台
すべて無料で本編でも使用可能。シネマ・シチリアーノモードは往年のイタリアン・ネオレアリズモ映画のような雰囲気を楽しめる。
似た体験ができる作品

重厚なマフィアドラマやリニアなストーリーテリングに惹かれた人に、併せて遊んでほしい作品を紹介する。
シリーズの原点をリマスターで体験。リニアなストーリーテリングの手本。
同じく犯罪組織の世界を描くロックスターの名作。オープンワールドとの融合は比較対象として興味深い。
1890年代アメリカ西部。馬での移動、時代考証へのこだわり、一人の男の転落を描く物語構造に共通点がある。
ステルスアクションの最高峰。The Old Countryのステルスが物足りなかった人はこちらで本格体験を。
重厚な犯罪ドラマをインタラクティブに体験。ストーリー重視のゲームが好きなら外せない。
UE5の美しいビジュアルで描かれるアクションRPG。最新エンジンのグラフィック表現に惹かれた人に。
家族と裏社会の掟の間で引き裂かれるドラマが好きなら。日本のヤクザを描くシリーズはThe Old Countryのテーマとも通じる。
同じUE5で描かれるオープンワールドアクション。「紅の砂漠」は別の文化圏で同じ技術的な美しさを体験できる。
まとめ

「Mafia: The Old Country」は、完璧なゲームではない。ゲームプレイは古く、自由度は低く、ストーリーの展開も予測可能だ。
だけど、IGNが8点をつけた理由も同じくらい理解できる。
このゲームの価値は、「体験」にある。1900年代シチリアの空気を吸い込み、裏社会の掟に縛られ、禁じられた恋に心を痛め、そして最後に訪れる悲劇を受け止める。その12〜15時間の旅は、映画を観たような濃密な余韻を残す。Hangar 13とStormind Gamesが注ぎ込んだ時代考証と文化的リアリティは、シリーズの中でも群を抜いている。
万人向けではない。オープンワールドで自由に暴れたい人、ゲームプレイの革新性を求める人には物足りないだろう。でも「良質な物語を、美しい世界で、適正な時間で体験したい」という人には、間違いなく響く一本だ。
49.99ドル(セール時はさらに安い)なら十分に価値がある。Free Rideアップデートも含めれば、コストパフォーマンスは悪くない。マフィアシリーズのファンなら、迷わず買っていい。この作品でしか味わえないシチリアの物語が、そこにある。
