「Europa Universalis V」11年ぶりの新作、ポップ・貿易を刷新したグランドストラテジー

Europa Universalis V——11年ぶりの新作、ポップ・貿易を刷新したグランドストラテジー

「あー、またフランスに宣戦布告された。勘弁してくれ」

画面の前でそうつぶやきながら、気づいたら3時間が経っていた。深夜2時。明日は仕事があるのに。

これがEuropa Universalis V(EU5)の怖さだ。Paradox Interactiveが2025年に送り出した最新グランドストラテジー。EU4から11年ぶりの新作で、発売前から「EUシリーズ史上最大の変革」と言われていた作品。

プレイしてみて正直に言う。「複雑すぎて最初の1時間は何も分からなかった」。でも、世界史に絡みつくあのシステムの深さを理解し始めると、もう止まれない。

この記事では、EU5が何を変え、何を引き継ぎ、どんな人に刺さるゲームなのかを徹底的に書いていく。EU4経験者も、シリーズ未経験者も、グランドストラテジー興味はあるけど怖くて手が出せない人も、読み終わったら「やってみようか」あるいは「やめておこう」と判断できるはずだ。


目次

こんな人に向いてる / こんな人には向いてない

先に向き不向きをはっきりさせておく。このゲームは万人向けではない。

向いている人

  • EU4・Victoria 3・CK3など過去のParadoxゲームが好き
  • 世界史・地政学が好きで「もし自分が統治者だったら」と考えるのが楽しい
  • ターン制よりも「リアルタイムに流れる時間」の中で判断する感覚が好き
  • 外交・経済・軍事・宗教を絡めた複合的な戦略を組み立てるのが好き
  • 1プレイ100時間かけてでも「完璧な帝国」を作り上げたい
  • MODで自分好みに改造して遊ぶのが当たり前だと思っている
  • 失敗してもやり直して学んでいくプロセスが楽しい

向いていない人

  • チュートリアルをクリアしてすぐゲームに慣れたい(EU5の学習コストはかなり高い)
  • アクション要素や直感的な操作感を求めている
  • 「勝ち負け」がはっきりしたゲームが好き(EU5に明確な「勝利」はない)
  • 1プレイ2〜3時間で終わるコンパクトなゲームを求めている
  • UI/UXがシンプルなゲームしかやらない
  • マルチプレイメインで対戦したい(EU5はシングルプレイが軸)

これを読んで「全部当てはまらないな」と思った人は、EU5との相性がいい可能性が高い。逆に「向いてない」の項目が3つ以上刺さった人は、まずVictoria 3かCrusader Kings 3から入ることをすすめる。


EU5とは何か——グランドストラテジーという「ジャンル」を知らない人のために

「グランドストラテジー」というジャンルを聞いたことがない人のために、まず整理しておく。

グランドストラテジーとは、一言で言えば「国家レベルの経営シミュレーション」だ。RTSのように個々のユニットを操作するのではなく、国家全体の外交・軍事・経済・宗教・文化を同時に管理する。1プレイが数百年スパン。歴史の流れを自分でコントロールする快感がこのジャンルの核心だ。

Paradox Interactiveはこのジャンルの世界的覇者で、Europa Universalis(EU)シリーズはその代表格。EUシリーズは1337年前後から1821年前後(百年戦争期〜ナポレオン後)の「近世ヨーロッパを軸にした世界」を舞台にしている。ハプスブルク家として神聖ローマ帝国を支配してもいい。オスマン帝国として地中海を制してもいい。日本を動かして東アジアを席巻してもいい。果てには架空の歴史「if線」を突き進んで、現実には起きなかった勢力図を作り出してもいい。

EU4は2013年に発売され、2024年まで11年間にわたってDLCが追加され続けた。Steamのレビュー件数は13万件超、好評率は約81%。グランドストラテジーとしては化け物クラスの長寿コンテンツだ。だからこそ「EU5」発表のニュースは、このジャンルのファンにとって一大事だった。

EU4から11年——何が変わったのか

EU5の開発コードネームは「Hegemony(覇権)」。Paradoxが2024年のParadoxconで正式発表したとき、コミュニティの反応は「興奮」と「不安」が入り混じっていた。

EU4は11年かけて積み上げてきた複雑なシステムの塊だ。それを全部リセットして新しくするということは、馴染み深いメカニクスが消えるかもしれない、ということでもある。「EU4の廉価版にならないか」「複雑さを切り捨てたカジュアルゲームになるんじゃないか」という懸念がコミュニティで飛び交っていた。

発売後のコミュニティの声を見ていると、Paradoxが下した決断は「過去との決別」ではなく「過去の教訓を踏まえた再設計」だったと分かる。EU4でプレイヤーが「ここが理不尽だ」「ここが直感的じゃない」と言い続けてきた部分を、11年分のフィードバックをもとにゼロから作り直した、というのがEU5の本質だ。

Paradox Interactiveというスタジオのこと

EU5を作ったParadox Interactiveについても少し触れておきたい。スウェーデン・ストックホルムに本拠を置く中規模ゲームスタジオで、グランドストラテジーというニッチなジャンルを長年牽引してきた会社だ。

Paradoxが凄いのは、「売れないジャンル」と思われていたグランドストラテジーを積み重ねによって大きなコミュニティに育て上げた点だ。EU4は今でも日次アクティブプレイヤーが1万人前後いる。Crusader Kings 3、Victoria 3、Hearts of Iron 4——複数のシリーズが同時に動いており、それぞれに熱狂的なファンベースがある。

ただしParadoxが「DLC商法」で批判される場面も多い。EU4は11年分のDLC総額が3〜4万円に達する。コンプリートしようとすると本体の10倍以上の追加投資が必要になる、という状態がいつの間にか生まれていた。EU5でこの問題をどう扱うかが、コミュニティの注目点になっていた。


EU5の舞台設定と「世界」の規模

まず規模感から。EU5の舞台は引き続き1337年(百年戦争開始期)から1821年(ナポレオン失脚後)前後のリアル世界地図だ。

EU4では世界地図が約5000のプロヴィンス(領土区画)に分かれていたが、EU5ではそれが約8500プロヴィンスに増えた。日本で言えば、EU4では「九州」が1区画だったのが、EU5では「肥前国」「肥後国」「薩摩国」レベルの細かさで分かれているイメージだ。

プレイアブルな国・勢力の数も大幅に増加した。EU4の時点で270以上の国があったが、EU5ではさらに多くの小国・部族・都市国家が独立したエンティティとして存在する。歴史上「地図に名前が載るほどでもなかった」ような小さな政治体も、EU5では意味のある形で描かれている。

ゲームの開始日と時代の多様性

EU5のデフォルト開始日は1337年。百年戦争が始まりバルワ朝フランスとプランタジネット朝イングランドが激突する時代からスタートする。この頃の世界はまだ「大航海時代以前」——ヨーロッパはアジアの豊かさを知らず、アメリカ大陸は「発見」されていない。

複数のシナリオ開始日も用意されており、例えばコンスタンティノープル陥落(1453年)直後の世界、コロンブスの新大陸到達(1492年)後の世界、三十年戦争(1618年)の只中など、歴史上の転換点からプレイを始めることができる。どの時代から始めるかによって、世界の勢力図が全く違うため、「同じ国で複数の開始日を試す」という楽しみ方もある。

「技術格差」の時代的表現

EU5では時代ごとの技術格差が丁寧に描かれている。14世紀ヨーロッパの封建軍と、18世紀の国民軍では戦闘力が桁違いだ。当然だが、プレイヤーは「時代に合わせた軍制改革」を続けないと、先進的な国家に圧倒される。

技術の「革新」はランダム要素も含んでいる。火薬の早期普及、印刷術による識字率上昇、航海技術の発展——これらがいつ・どの国で起きるかは、プレイごとに少し違う。「今回のプレイではフランスが早期に火薬技術を得たためイングランドが苦戦している」という状況が生まれ、毎回同じ展開にならない。

「ポップ」システムの導入——Victoria 3とのハイブリッド

EU5の最大の新要素がこれだ。

EU4では各プロヴィンスは「開発度」という単純な数値で経済的価値が決まっていた。EU5ではその概念を廃止し、代わりに「ポップ(人口)」システムを導入している。これはParadoxのVictoria 3(19世紀近代化ゲーム)で採用されたメカニクスで、EU5版にアレンジされたものだ。

各プロヴィンスには「農民」「商人」「職人」「貴族」「聖職者」といった職業ポップが住んでいる。彼らは税収・生産力・軍事力の源泉であり、同時に国内政治の利害関係者でもある。農民に重税をかければ反乱が起きる。商人が繁栄すれば港湾都市が発展する。貴族の機嫌を損ねれば内戦のリスクが上がる。

EU4の「数字を大きくしていくゲーム」から、EU5の「社会の動態を管理するゲーム」へ——この変化が最も大きな進化点だ。

「最初はポップの意味が全然分からなかったけど、5時間くらいプレイしてから急に『あ、これ社会のシミュレーションだ』と気づいてから一気に面白くなった」(Steam日本語レビュー)

このレビューが象徴しているのは、EU5のゲームデザインの根本的な方向性だ。最初は「意味不明」でも、システムの論理が分かり始めると急加速する。そこまで我慢できるかどうかが、EU5を楽しめるかどうかの分岐点になっている。

貿易システムの大刷新

EU4のトレードルートシステムは「貿易風に乗せて富を吸い上げる」というシンプルな概念だったが、複雑なDLCが積み重なりすぎて分かりにくくなっていた。EU5ではここを根本から作り直している。

EU5の貿易は「商品(コモディティ)ベース」になった。香辛料・絹・毛皮・麦・鉄・染料など、各地域で生産される商品が世界規模で流通する。プレイヤーは貿易路を掌握し、特定の商品の供給量と需要を操作することで利益を得る。贅沢品の価格は需給によって変動する。アジアの香辛料を独占すれば価格が上がり、ヨーロッパの宮廷はその代金を払うために財政難になる——という連鎖が起きる。

この「商品ベース貿易」は、大航海時代という時代背景とぴったりハマっている。なぜポルトガルが喜望峰ルートを開拓したのか、なぜオランダが東インド会社を作ったのか。EU5をプレイしていると、教科書の知識が「ゲームメカニクス」として理解できるようになる。


軍事システム——「スタック」から「部隊設計」へ

EU4の軍事システムは「マンパワーを消費して兵を雇い、スタックに積んで戦争する」という大雑把なものだった。EU5ではここも大きく変わっている。

部隊の種類と時代的進化

EU5の軍隊は歴史に忠実な「軍制改革」の流れを反映している。ゲーム開始時点(14世紀)は封建領主の騎士や民兵が主力。徐々に傭兵・常備軍・訓練された歩兵に移行し、火薬の登場で戦術が変わり、最終的にはナポレオン式の国民軍へと進化していく。

軍制改革のタイミングと方向性は、国家の政体・文化・宗教によって異なる。カトリック王国はプロテスタント王国より改革が遅れる傾向があり、オスマン帝国は独自の軍制ツリーを持ち、日本の戦国大名は鉄砲導入のタイミングが独特だ。

戦場の論理——「司令官」と「士気」の管理

EU5の野戦は司令官の能力値が大きく戦果を左右する。優秀な将軍を育てることが、軍事力の維持において数の上積みと同じくらい重要になった。将軍はロールプレイ的な個性も持っており、「勇猛だが無謀な将軍」「慎重で堅実だが決定打に欠ける将軍」といった特性がゲームの展開に影響する。

士気システムも深化した。EU4では士気は単純な回復数値だったが、EU5では「なぜ兵士が戦うのか」という動機付けが士気に反映される。正義の戦争(防衛戦・宗教戦争)は士気が高い。征服目的の侵略戦争が長引くと士気が下がる。補給が途絶えても士気が下がる。内戦・反乱鎮圧では士気維持が難しい——こうした要素が積み重なることで、「どんな戦争をするか」の選択が軍事的な損得計算に影響するようになった。

包囲戦の深化

EU4で批判が多かった「包囲はサイコロを振るだけ」という問題も改善された。EU5の包囲戦は補給線・包囲陣形・季節・守備側の資源状況が絡む複合システムになっている。冬に包囲を始めると兵士の士気が下がる。補給線を断たれると包囲が維持できない。城壁の整備状況によって陥落までの時間が大きく変わる。

ただし、「複雑すぎて何をすればいいか分からない」という声も多い。EU5の軍事システムは歴史ファンには刺さるが、「とにかく戦争に勝ちたい」プレイヤーにはストレスになる可能性がある。

傭兵団という選択肢

中世から近世にかけての時代を扱うEU5では、傭兵団が重要な軍事力の補完手段になっている。常備軍を維持するコストが高い中小国家にとって、傭兵団は緊急時の戦力として欠かせない。ただし傭兵団は高コストで、長期の戦争で使い続けると財政を圧迫する。

傭兵団は世界を渡り歩く存在として描かれており、有名な傭兵隊長(コンドッティエーレ)を雇用できる場合もある。歴史上実在したジョン・ホークウッドのような傭兵指揮官がゲームに登場するのを見るのは、歴史ファンには小さな喜びだ。

海軍の役割変化

海軍はEU4では「輸送と海戦」の道具だったが、EU5では「交易路支配」と密接に絡むようになった。特定の海峡を制海権で支配することで、そこを通る全ての商品に関税をかけることができる。マラッカ海峡・ホルムズ海峡・ジブラルタル海峡など、歴史上の要衝が「ゲームメカニクスとして意味を持つ」ようになった点が面白い。

このゲームを通じて、改めて「なぜイギリスはジブラルタルを欲しがったのか」「なぜオランダはマラッカに執着したのか」が実感を持って理解できる。

海軍力は艦種によって役割が異なる。大型の戦列艦は海戦向けで建造・維持コストが高い。小型のフリゲート艦は偵察と通商破壊(敵の貿易路を妨害する)に使える。ガレー船は地中海のような内海で圧倒的な機動力を発揮するが、大西洋の荒波では使い物にならない。どんな海軍を整備するかは、国家の地政学的状況と財政力によって変わってくる。


外交システム——「条約」と「影響力」の時代

グランドストラテジーゲームの醍醐味のひとつが外交だ。EU5はここでも大きく進化している。

影響力システム

EU5では「同盟・従属・外交圧力」を「影響力ポイント」という資源で管理する。大国は小国に対して影響力を行使し、内政干渉や有利な条約を押し付けることができる。逆に小国は複数の大国のバランスをとりながら独立を保とうとする。この「影響力をめぐる綱引き」が外交の核心だ。

歴史上のポーランド分割(ロシア・プロイセン・オーストリアが影響力を競い合った結果、ポーランドが地図から消えた)ような展開が、EU5のメカニクスとしてリアルに再現されやすくなっている。

条約の多様化

EU4の外交は「同盟・従属・友好・敵対」という単純な関係性だった。EU5では「通商特権の付与」「軍事通行権の期限付き許可」「特定の港湾施設へのアクセス権」「王家間の婚姻による継承権の設定」など、より細かい条約が結べるようになった。

「全面的な同盟」より「経済面では協力するが軍事的には中立」という複雑な関係が作れるようになり、外交がより現実の国際政治に近い感覚になった。

「EU4では外交が単調だったけど、EU5の条約システムは本当にやることが多い。隣国とどんな関係を結ぶかだけで、1ゲームのプレイスタイルが大きく変わる」(Reddit r/paradoxplazaより)

宗教外交と法王の影響力

EU5では宗教と外交が強く結びついている。カトリック国家同士は宗教的連帯が働き、異教国への戦争では「十字軍カード」が使えることがある。ローマ法王の支持を得れば正当性ボーナスが得られ、破門されれば同盟国から見捨てられるリスクが上がる。

宗教改革(プロテスタント・カルヴァン派の台頭)が起きると、ヨーロッパ内の宗教地図が塗り替わり、外交の構造も一変する。カトリック圏の崩壊、プロテスタント同盟の形成、ユグノー戦争的な内戦——これらが有機的に連鎖する。

同じく宗教的な政治力学はイスラム世界でも機能する。オスマン帝国がカリフ位を主張するか、マムルーク朝の後継者を自任するかで、中東・北アフリカの政治構造が変化する。


経済システム——「お金の稼ぎ方」が全く変わった

EU4の財政管理は「収入と支出のバランスを保って、余剰を蓄積する」という比較的シンプルな構造だった。EU5では経済が格段に複雑になっている。

3つの収入源

EU5の国家収入は大きく3つに分かれる。「直接税(農民・貴族からの徴税)」「交易収入(貿易路からの利益)」「生産収入(工場・工房からの産出)」だ。EU4では「税収」と「貿易」がメインだったが、EU5では生産力の管理が独立したシステムになっている。

国内の工業生産力を高めるには、職人ポップを増やし、工房や製造所を建設し、原料から完成品への加工チェーンを整える必要がある。ただし職人ポップが増えすぎると農民が減り、食料生産が追いつかず人口が下がる——というトレードオフが生まれる。どのポップ構成を目指すかが、国家の長期的な経済方針を決定する。

インフレと通貨管理

EU5ではインフレの概念がより現実に近い形で機能する。金・銀の鉱山を持つ国家は短期的に財政を豊かにできるが、過剰に通貨を鋳造するとインフレが発生し、実質的な税収が下がる。スペインが新大陸から大量の銀を持ち帰った結果、ヨーロッパ全体でインフレが起きた「価格革命」がEU5でも再現される。

スペインを豊かにしているつもりが、貿易相手国のインフレを引き起こし、貿易収支が悪化する——という皮肉な連鎖が起きることもある。こういう「意図しない副作用」が経済シミュレーションとしての奥深さを生んでいる。

債務と破産リスク

戦争が長引いて財政が逼迫すると、プレイヤーは「国債の発行」という選択肢を持つ。短期的には資金調達できるが、利子の支払いが続き、放置すると連鎖的に財政悪化する。最終的に「国家破産」状態になると、プレスティージュが激減し、封建的義務が崩れ、属国が反乱を起こしやすくなる。

「あと少しで戦争に勝てそうなのに、資金が尽きそうだ」という状況で国債を発行するかどうかの判断は、EU5の緊張場面のひとつだ。


政体システム——「どんな国を作るか」の核心

EU5で最も「国によってプレイスタイルが変わる」と感じるのが政体システムだ。

政府形態のツリー

EU5の政府形態は「絶対君主制」「立憲君主制」「商人共和制」「神政国家」「部族制」「帝国制」など多数の形態があり、それぞれ異なるメカニクスで動く。

絶対君主制は意思決定が速い代わりに、貴族や聖職者との軋轢が生まれやすい。商人共和制はヴェネツィアやジェノヴァのような都市国家で機能し、貿易収入が爆発的に伸びる代わりに軍事力の維持が難しい。部族制はモンゴル帝国やアフリカの遊牧民族などに適用され、土地に縛られない機動的な軍事力が強みだ。

プレイヤーは歴史の流れに沿って政体を改革することも、敢えて時代に逆行することもできる。「15世紀のまま絶対君主制を維持したフランス」や「18世紀に共和制に移行したオスマン帝国」といった架空の歴史も作れる。これがEUシリーズの「if歴史」の醍醐味だ。

正統性と王朝ダイナミクス

EU5では「正統性(レジティマシー)」という概念がより中心的な役割を果たす。王権の正当性は単なる数値ではなく、「何によって裏付けられているか」が重要になる。軍事的勝利で支持を得る王、宗教的権威で支持を得る王、経済的繁栄で評価される王——それぞれ正統性の源泉が違い、失い方も違う。

王の死亡と後継者問題も大きな要素だ。EU4でも継承戦争は起きたが、EU5ではCrusader Kings 3のキャラクター要素を部分的に取り込み、統治者個人の能力・性格・人脈が国家政策に影響するようになった。「有能な王が死んで暗愚な後継者になった瞬間に帝国が傾く」というダイナミクスがよりリアルになっている。

他のParadox作品との比較で言えば、CK3が「人物ドラマを楽しむゲーム」だとすると、EU5は「人物ドラマが国家システムに影響するゲーム」だ。個人の感情移入よりも、国家としての命運がメインのドラマになっている。


文化と言語——「同化」か「多様性」かの選択

EU5では征服した領土の「文化」管理がより重要になった。

文化同化のコストとメリット

異文化の地域を征服すると、そのプロヴィンスのポップはしばらく「外来文化圏の不満分子」として行動する。支配文化への同化を進めるには、時間・資金・政治力が必要だ。無理に同化を急ぐと反乱リスクが上がる。放置すると分離主義運動が起きる。

一方で「多文化国家」として複数の文化を共存させる選択もある。オスマン帝国モデルで多民族を包括する帝国を作れるが、異文化管理コストが継続的にかかり続ける。「均質な民族国家」と「多文化帝国」のどちらを目指すかで、プレイスタイルが大きく変わってくる。

言語と行政コスト

EU5では言語的に近い文化圏の征服は行政コストが低く、言語的に遠い地域の支配はコストが高い。ゲルマン語系の国がラテン語系の地域を征服するより、スラブ語系の地域を支配する方がコストが高い——という歴史的なリアリティが反映されている。

この「言語・文化圏」の概念は、プレイヤーが拡張方向を選ぶときの自然な制約として機能する。文化的に近い方向に拡張するのが「効率的」だが、それは往々にして「強国と直接ぶつかる」方向でもある。文化的に遠い辺境地帯を狙う方が摩擦は少ないが、同化コストが重くなる。こういうトレードオフがEU5の拡張プレイを深みのあるものにしている。


日本プレイの魅力——「東の果ての島国」で何をするか

日本人プレイヤーとして気になるのは、当然「日本」でどう遊べるかだ。

戦国大名から天下統一へ

EU5の日本は、ゲーム開始時点(1337年)から戦国時代(16世紀)まで、細川・毛利・島津・上杉・北条・今川・武田など多数の大名が割拠した状態からスタートする。室町幕府が名目上の権威を持ちつつ、実権は各地の戦国大名に分散している。

プレイヤーが「足利幕府」を選べば、形骸化した権威を取り戻す中央集権化プレイができる。「織田信長モデル」で尾張から勢力を拡大することも、「南九州の島津」として九州を統一してから本州に乗り込むこともできる。あるいは「琉球王国」を選んで東アジア貿易の中継者として栄えるのも一つの選択肢だ。

鉄砲伝来と「技術格差」のリアル

EU5では西洋技術の流入が段階的にシミュレーションされる。1543年のポルトガル人来航をきっかけにした鉄砲伝来は、EU5でも重要なイベントとして描かれる。早期に火薬技術を取り入れた大名は軍事的優位を得られるが、それは同時に「西洋勢力との接点を持つこと」を意味し、キリスト教布教と絡んだ複雑な政治問題も生じる。

豊臣秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)に相当する「大陸進出」も可能だ。EU5の朝鮮半島・中国は明王朝の衰退と満洲族の台頭が反映されており、16世紀末から17世紀にかけての東アジア政治の混乱に乗じる形で、日本が大陸に影響力を持つ歴史が作れる。

江戸幕府体制と「鎖国」の選択

徳川家康的なプレイで天下を統一した後、「鎖国政策」を選択するかどうかが日本プレイの大きな分岐点になる。EU5では貿易政策として「開国・半開国・鎖国」的なスペクトルが存在し、鎖国を維持すれば国内の安定と文化的純粋性を保てるが、18世紀以降は技術格差で西洋に追いつかれていく。早めに開国を選べば技術的優位を保てるが、国内の保守勢力との摩擦が生まれる。

「歴史のifを試せる」のがEUシリーズの本質であり、「日本がもっと積極的に海外進出していたら?」という問いに対して、プレイを通じて一つの答えを体験できるのが面白い。


大航海時代——「誰が先に新大陸に着くか」

EUシリーズは大航海時代のゲームだ。EU5でもここは大きな見どころになっている。

探検と植民地化のシステム

EU5の探検システムでは、未知の海域への航海には「探検家」キャラクターが必要になった。優秀な探検家は未知の海域を素早く調査し、危険な海域での生存率も高い。反対に経験の浅い探検家を送り込むと、嵐で沈没したり帰還できなくなるリスクがある。

植民地化も単純な「入植」ではなくなった。先住民族との関係(友好・交易・征服)を選択し、その選択が長期的な植民地統治のコストと収益に影響する。スペイン・ポルトガルモデルの征服的植民地化か、イギリス・フランスモデルの通商重視型植民地か、オランダモデルの商業特権型か——自分のプレイスタイルと国家の文化的背景によって最適解が変わる。

新大陸の先住民勢力

EU5ではアステカ帝国・インカ帝国・マヤ系小国・北米の部族連合など、新大陸の先住民勢力がより充実したコンテンツとして描かれる。アステカでプレイして、スペイン人の来航を防いだり、逆にヨーロッパに反撃するような「歴史改変」も楽しめる。

「コルテスが来なかった世界のアステカ帝国」というifを試したくなった人は、EU5が向いているかもしれない。

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アフリカ・東南アジアの充実

EU4ではしばしば「アフリカと東南アジアはコンテンツが薄い」と批判されてきた。EU5ではこの地域のDLC以前の基本コンテンツが大幅に強化されている。

サハラ交易路を支配するマリ帝国、インド洋交易の要衝を握るスワヒリ都市国家群、東南アジアのマジャパヒト帝国——これらが独自のメカニクスを持つプレイアブル勢力として機能するようになった。「アフリカからスタートして世界貿易を支配する」というルートが、EU4より明確に見えるようになっている。


神聖ローマ帝国——EU5の「難しくて面白い」パズル

EUシリーズを語るうえで避けられないのが神聖ローマ帝国(HRE)の存在だ。EU4でも「HRE改革は最大のパズルのひとつ」と言われてきたが、EU5でもその複雑さと面白さは健在だ。

皇帝と選帝侯の政治学

神聖ローマ帝国は単一の帝国ではなく、数百の小国・都市国家・司教領・帝国騎士領からなる「緩やかな連合体」だ。皇帝は選帝侯と呼ばれる7つの有力諸侯による選挙で選ばれる。ハプスブルク家が長年皇帝位を独占してきたが、ゲームの展開によっては別の国家が皇帝位を奪うことも起きる。

皇帝として帝国を中央集権化する「帝国改革」を進めれば、強大な一枚岩の帝国を作れる可能性がある。しかし改革を進めるには選帝侯の同意が必要で、既得権益を守りたい諸侯の抵抗に遭う。改革が失敗すれば帝国が崩壊し、数十の独立した小国が乱立する「三十年戦争後のドイツ」的な状況が生まれることもある。

帝国内の外交と戦争制限

帝国内では帝国法によって諸侯間の戦争に制限がかかる。皇帝が仲裁に入り、不当な侵略を認定すれば帝国として制裁を加えることができる。逆に皇帝が横暴になれば、諸侯連合が皇帝に反旗を翻す「帝国戦争」が起きる。

外国のプレイヤーが「HRE諸侯を一枚ずつ食べていく」侵略プレイをする場合、帝国全体を相手にすることを覚悟する必要がある。一方でHRE内の宗教対立をうまく煽って「帝国を内側から崩壊させる」外交プレイも可能だ。三十年戦争はそのお手本だ。

プロテスタント諸侯の台頭

宗教改革期(16世紀〜17世紀)になると、HRE内でカトリックとプロテスタントの対立が激化する。皇帝がカトリックを強制しようとすれば、プロテスタント諸侯がシュマルカルデン同盟(あるいはゲームでの対応する勢力)を組んで抵抗する。この宗教政治ドラマはEU5の見どころのひとつだ。

歴史に沿えば最終的に「ウェストファリア条約」的な宗教的妥協に至るが、EU5では歴史と違う展開も十分に起きる。プロテスタントが完全勝利してカトリックを一掃するHREも、カトリック側が反宗教改革を徹底して宗教的統一を維持するHREも作れる。


UIとアクセシビリティ——「難しさ」との向き合い方

EU5はグランドストラテジー史上最も複雑なゲームのひとつだ。これは批判でも褒め言葉でもなく、事実として認識しておく必要がある。

UI設計の改善点

EU4は長年のDLC追加で情報が散逸し、どこに何があるか分からないという問題があった。EU5はゼロベースで再設計したUIを採用している。情報の階層が整理され、「今何が起きているか」を把握しやすくなった。

特に改善されたのはポップアップとツールチップだ。数値が変動したとき「なぜ変動したか」が分かりやすく表示されるようになり、EU4で頻繁に発生した「気づいたら財政が崩壊していた」という謎の状況が減った。

チュートリアルと「学習の壁」

EU5のチュートリアルはEU4より大幅に改善されているが、それでも「グランドストラテジー未経験者が安心してプレイできるレベル」ではない。基本操作は教わるが、「なぜそれをするのか」という背景理解まではカバーしきれていない。

Steam ReviewでよくあるパターンがWiki・YouTubeのガイド動画・Discordコミュニティの三点セットで最初の壁を乗り越えた、という話だ。公式サポートだけで学ぶには限界があり、コミュニティリソースをどれだけ活用できるかが序盤の体験を大きく左右する。

グランドストラテジーが初めてなら、まずシンプルな構造のゲームから入るのが現実的な選択肢だ。

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難易度設定とオプション

EU5には難易度設定があり、AIの積極性・経済成長速度・戦争のペナルティ軽減などを調整できる。「歴史を体験したいだけ」なら難易度を下げてスルーするプレイも成立するが、「国家経営のシミュレーションとして本気で取り組みたい」なら標準〜高難易度の方が満足度が高い。

ただし、「このゲームに正解はない」というのがEUシリーズの基本思想だ。どんなプレイスタイルでも、自分が面白いと思えるやり方が正解になる。


マルチプレイヤーとMODシーン

EU5はシングルプレイが軸だが、マルチプレイ機能も存在する。

マルチプレイの実態

EU5のマルチプレイは「1ゲームを複数人で分担して遊ぶ」形式が主流だ。1人がフランスを、もう1人がイングランドを担当し、外交・戦争を実際の人間同士でやりとりする。AIの代わりに人間が相手になるため、外交の駆け引きが格段に面白くなる。

ただし、EU5の1ゲームは数十時間かかるため、マルチプレイには「定期的に集まって長時間プレイできる仲間」が必要だ。Discord上の「EUマルチプレイコミュニティ」が活発で、見知らぬ人と一緒にゲームを進めるスタイルも普及している。

MODの展望

EU4はMODが極めて豊富だった。「Fantasy Shattered World」「Anbennar(ファンタジー世界設定)」「Historical Immersion Project」など、本体に匹敵するクオリティのMODが数多く存在した。

EU5も発売から半年でMODコミュニティが急速に育ってきており、Steam WorkshopとParadox Modsの両方でコンテンツが増え続けている。特に「EUシリーズ恒例のファンタジー歴史改変MOD」は、EU5向けのものが複数開発中だ。

EU4で最も人気だった全面改造MOD「Anbennar」のEU5版制作チームは早期から活動を開始しており、完成すれば「EU5本体とは別のゲーム体験」が生まれることになる。こういうコミュニティ主導のコンテンツ制作がParadoxゲームの文化的な価値の一部だ。

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DLCモデルとコスト——Paradox商法との付き合い方

Paradoxゲームを語るうえで避けられない話題がDLCだ。

EU4のDLC地獄の教訓

EU4は11年間で発売されたDLCの総額が数万円に及ぶ。コンプリートするにはゲーム本体の何倍もの追加投資が必要になる、というのがEU4時代の「Paradox商法」の問題点として批判されてきた。

EU5ではこの反省を踏まえて、DLCの設計方針が見直されている。発売時点のベースゲームの完成度が高くなり、DLCは「深掘り」のためのオプションという位置づけが明確になった。EU4晩年の「DLCなしだとゲームが成立しない」という状態にならないよう、基本コンテンツを充実させてからDLCを追加するという方針が取られているようだ。

発売時点のコンテンツ量

EU5のベースゲームには、EU4の本体+数本分のDLCに相当するコンテンツが含まれているという評価がコミュニティでは多い。少なくとも購入直後から「メジャーDLCがないと地域が機能しない」という問題は起きにくい設計になっている。

ただし、Paradoxの過去の実績から「いずれDLC追加による追加投資が必要になる」ことは確実視されている。長期でプレイするつもりなら、DLC費用も含めた総コストは覚悟しておく必要がある。

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発売後の評価——コミュニティの声

EU5は発売直後からSteamレビューが積み上がり、発売1週間で1万件を超えた。

高評価の理由

好評派の声を見ていくと、共通しているのは「EU4のイライラポイントが解消された」という点だ。

「EU4を3000時間やってきたが、EU5は別ゲームと言っていいレベルで進化している。最初の20時間は混乱したが、ポップシステムを理解してからは完全にこっちの方が面白い」(Steam好評レビュー)

「貿易システムが完全に別物。香辛料の独占が実際に意味を持つようになって、『なんでポルトガルが頑張って喜望峰を回ったか』がゲームとして体験できる」(Reddit r/eu5より)

歴史的な文脈を「遊びながら理解できる」という点が、EU4からEU5への最大の進化として評価されている。

批判の声

一方、不満点として挙げられるのは大きく3点だ。

まず学習コストの高さ。「EU4よりシステムが多いのに、チュートリアルがその複雑さに追いついていない」という指摘は多い。特にポップシステムと貿易システムの連動を直感的に理解するのが難しいと言われている。

次にパフォーマンスの問題。発売初期には特に後半の時代(1700年以降)でプロヴィンス・ポップの処理が重くなるという報告があった。Paradox開発チームがパッチを継続的に当てていることで改善されてきているが、高スペックのPCでないと快適にプレイしにくい面がある。

3つ目がバランスの偏り。発売直後は特定の国家・プレイスタイルが圧倒的に強く、ゲームバランスが荒削りだという批判があった。EU5の場合、発売後6ヶ月時点ではバランスパッチが複数当てられ、当初ほどの極端さはなくなってきている。

「発売直後に6時間やって挫折した。3ヶ月後にパッチが当たったという話を聞いて再挑戦したら、チュートリアルが改善されていてスッと入れた。焦って買う必要はないゲームだと思う」(Steam日本語レビュー)

この種の意見は、Paradoxゲームではよくある。発売直後に飛びつくより、数ヶ月後のバランス調整を待ってから始めた方が快適な体験になるというのは、EU4時代からのユーザーがよく言うことでもある。

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EU4との比較——「乗り換えるべきか」問題

EU4プレイヤーが最も気にするのは「EU5に移行すべきか」だろう。

EU4はまだ遊べる

結論から言えば、EU4はEU5発売後も引き続き遊ぶ価値があるコンテンツだ。11年分のDLC・MOD・バランス調整が積み重なったEU4は、EU5とは別の完成度に達している。

EU4でしかできない体験もある。EU4向けに作られた数千のMOD、特にAnbennarのような完成度の高い全面改造MODは、EU5に同等のものができるまで何年もかかる。EU4コミュニティも依然として活発で、マルチプレイの相手を探すのにも困らない。

EU5の方が「現代的な遊びやすさ」はある

とはいえ、EU5はEU4の「古さ」から解放されている面もある。UI設計の改善、ポップシステムによる経済の透明性、貿易の直感的な理解しやすさ——これらはEU4より明確に進化している。

「EU4を始めて難しくて挫折した」という経験があるなら、EU5の改善されたUI・ツールチップ・チュートリアルで再挑戦する価値はある。EU4の方が難しいという意見もあれば、EU5の方が複雑という意見もあり、どちらが「入りやすいか」は人によって違う。

両方買うか、どちらかに絞るか

予算と時間に余裕があるなら、EU4とEU5の両方を持っていてもムダにはならない。ゲームとしての方向性が微妙に異なるため、「EU4の感覚で遊びたいとき」と「EU5の新システムを楽しみたいとき」で使い分けられる。

どちらか一方に絞るなら、グランドストラテジー初挑戦なら「EU5のチュートリアルと改善されたUIで入門する」、EU4を長年プレイしてきた上級者なら「EU5の新システムを試しつつEU4に帰ってくる」という使い方が多いようだ。


オスマン帝国プレイ——「東方の大国」の重みを体験する

EU5のプレイ初心者に「どの国から始めるか」と聞かれたら、オスマン帝国は定番の回答のひとつだ。

オスマン帝国の強みと制約

14世紀末〜15世紀初頭は、オスマン帝国が東ヨーロッパ・アナトリアで急速に拡大していた時代だ。EU5の開始時点(1337年)では、オスマン帝国はまだ小さなアナトリアの国家に過ぎないが、拡張ポテンシャルは抜群だ。

強みは強力な常備軍(イェニチェリ)と貿易の要衝支配。コンスタンティノープルを攻略(1453年の史実通り)すれば、ボスポラス海峡の通行料で莫大な収入を得られる。地中海と黒海を結ぶこの要衝を支配することが、ゲームの前半期の大きな目標になりやすい。

制約は広大な版図の管理コストだ。バルカン・アナトリア・中東・エジプトと多文化・多宗教の帝国を維持するには、地方総督の設置・宗教的寛容政策・軍事的脅威の維持という三本立ての統治が必要になる。どこかが崩れると連鎖的に反乱が広がる。

コンスタンティノープル陥落という転換点

EU5でオスマン帝国を操る最大の見どころのひとつが、コンスタンティノープル攻略だ。ビザンツ帝国の首都を落とすのは、単なる領土拡大以上の意味がある。ゲームの象徴的なイベントとして描かれ、外交的影響・宗教的影響・プレスティージュボーナスが複合的に発生する。

歴史通りに1453年頃に攻略できるかどうかは、プレイヤーの戦略次第だ。前倒しで攻略できれば歴史より早くオスマン帝国の最盛期を迎えられる。逆に手こずっていると、他の勢力が先に攻略してしまうことも起きる。

サファヴィー朝・マムルーク朝との三つ巴

オスマン帝国プレイの緊張感を生むのが東方の強敵だ。サファヴィー朝(イラン・イラク)はシーア派イスラム国家で、スンナ派のオスマン帝国とは宗教的に真っ向対立する。史実のチャルディラーンの戦い(1514年)に相当する衝突がゲームでも高確率で起きる。

マムルーク朝(エジプト・シリア)は南からの脅威。香辛料貿易ルートをめぐる争いが、外交・軍事・貿易が複合した複雑なドラマを生む。こうした多方面の圧力を捌きながら帝国を維持・拡大するのが、オスマン帝国プレイの醍醐味だ。

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EU5が変えた「歴史ゲーム」の定義

EU5を数十時間プレイして感じるのは、これが単なる「歴史シミュレーション」ではなく、「歴史を通じて政治・経済・社会の仕組みを体験するゲーム」になってきているということだ。

Civilization Vとの比較

「歴史ゲーム」と言えばCivilizationシリーズを思い浮かべる人も多いだろう。Civilizationは「文明の発展」を単純化・抽象化して楽しむゲームで、カジュアルに遊べる門戸の広さがある。

EU5はそれとは対照的で、「歴史的なリアリティ」を優先している。ゲームの抽象化は最小限で、実際の地政学・経済学・政治学の論理がシステムに反映されている。「なぜあの国はあの時代に没落したか」という問いへの答えが、プレイを通じて体験として理解できる。

「負け筋」の面白さ

EU5では帝国が崩壊する過程も面白い。過拡大で財政が破綻し、反乱が頻発し、属国が次々と離反していく——このプロセスを「どうにか踏みとどまる」か「諦めて再スタートする」かという判断を迫られるのが、EU5ならではの緊張感だ。

勝利条件がない分、「いつ終わりにするか」はプレイヤーが決める。「完璧な帝国を作った」という達成感でセーブデータを閉じる人もいれば、崩壊寸前の状態から立て直すことに燃える人もいる。多様なプレイスタイルが共存できるのがEUシリーズの強みだ。

プレイの「物語」が生まれる構造

EU5でよく聞くのが「プレイレポート」の文化だ。「今回こんなことが起きた」「外交で想定外の展開になった」「歴史通りの結果になった」という体験を語り合う文化がEUコミュニティには根付いている。

これはゲームが「体験を語る価値のある体験」を生み出しているからだ。勝ち負けのない、正解のない、自分だけの歴史が展開される——それがEU5の、そしてグランドストラテジーというジャンルの本質的な価値だと思う。

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PC動作要件とパフォーマンス

EU5はグランドストラテジーにしてはPC要件が高めだ。

推奨スペックの目安

ParadoxがSteamで公開している推奨スペックは、GPU:GTX 1060相当以上、RAM:16GB以上、CPU:Core i5-8世代相当以上というラインだ。ただし、ポップシステムの処理負荷から、後半のゲーム時間帯(1700年以降)ではRAM 32GBの方が快適という報告が多い。

特にマルチプレイで多人数が参加する場合、サーバー側の処理が重くなるため、ホスト側のPCスペックが重要になる。「友達グループのうち一番スペックが高いPCの人がホストをやる」というのが現実的な対応だ。

発売後のパフォーマンス改善

発売初期に問題になっていた重さは、パッチによって段階的に改善されている。Paradoxはパフォーマンス最適化を「継続的に取り組む優先事項」と明言しており、発売6ヶ月時点では発売直後と比べて目に見える改善が実現されているという報告が多い。

ただし「ローエンドPCでも快適に動く」レベルには至っておらず、最低動作環境に近い構成でプレイするなら、解像度や描画品質を落とす工夫が必要になることがある。


辛口まとめ——EU5の「これはちょっと」なところ

ここまでEU5の面白さを書いてきたが、正直に気になる点もまとめておく。

序盤の学習体験が独特すぎる

EU5の序盤20〜30時間は、多くのプレイヤーにとって「何が起きているか分からない時間」になりやすい。UI改善・チュートリアル追加がされていても、ポップ・貿易・政体・宗教・外交が同時進行する世界を理解するには、一定の投資が必要だ。

「このゲームは最初の30時間を我慢すれば化ける」という言い方はよく見るが、裏を返せば「30時間耐えられない人には向いていない」とも言える。ゲームが面白くなるまでに求められる投資量として、30時間は決して短くない。

DLC商法への不信感は払拭されていない

EU5のベースゲームは充実しているとは言え、「Paradoxのゲームは結局DLCが増えていく」という経験を持つプレイヤーの不信感は残っている。今後数年でどんなDLCがどんな価格で登場するかは未知数で、「長期的に付き合うとコストがかかる」という懸念は消えていない。

AIの行動が時々不可解

グランドストラテジー全般の課題だが、EU5でもAIの行動が時々意味不明な動きをすることがある。明らかに不利な戦争を仕掛けてくる、同盟関係が成立しているのに変な宣戦をしてくる、といった挙動が発売後のレビューでも指摘されている。Paradoxもパッチで改善を続けているが、「完全に満足のいくAI」にはまだ至っていない。

歴史知識があった方が圧倒的に楽しめる

EU5は「歴史を知らなくても遊べる」が、「歴史を知っていると格段に面白い」というゲームだ。百年戦争・オスマン帝国の拡大・宗教改革・大航海時代といった時代背景の知識があると、ゲームのイベントと政治的文脈が結びついて没入感が増す。逆に「歴史に興味がない」人には、ただの複雑な数字ゲームに見えてしまう可能性がある。


まとめ——EU5は「誰かに」は確実に刺さる

Europa Universalis Vは、間違いなく2025年のPC戦略ゲームの中で最も野心的な作品だ。

Paradoxが11年分のEU4への反省とフィードバックをもとに作り直したシステムは、グランドストラテジーというジャンルを次のレベルに引き上げている。ポップシステムによる社会の動態、商品ベースの貿易、歴史的文脈に即した軍制改革——どれも「歴史を体験するゲーム」としての完成度を上げるための変革だ。

ただし、このゲームは「全員が最初から楽しめる」ようには設計されていない。最初の壁を越えられるかどうかで、評価が大きく割れる。Steam Reviewでも「圧倒的に好評」と「不評」の両極端が共存している状況だ。

「自分だけの世界史を作りたい」「国家の命運を左右する判断を下したい」「歴史の『if』を試したい」——この3つのうちひとつでも「それだ」と思ったなら、EU5は十分に試す価値がある。最初の30時間を乗り越えた先には、他のゲームでは体験できない「歴史の支配者感」が待っている。

逆に「難しいゲームは苦手」「すぐ飽きる」「1プレイに100時間は無理」という人は、同系統でもっと入りやすいゲームから始めた方が幸せになれる。

EU5を始めるなら——実用的なアドバイス

「やってみよう」と思った人に向けて、実用的な話をして終わりにする。

まず国の選択について。初めてEU5をプレイするなら、いきなりオスマン帝国や日本より「中規模の欧州国家」から始めることをすすめる。イングランド・ポルトガル・スウェーデンなどは、拡張方向・外交相手・経済の目標が比較的分かりやすい。日本や中国は強くて面白いが、周辺の地政学を把握するのに時間がかかる。ポルトガルは大航海時代への誘導が自然な流れで組み込まれており、ゲームの「外側の世界を探索する」という醍醐味を早めに体験できる国として特におすすめだ。

次にゲームスピードについて。EU5はリアルタイムで時間が流れるが、スピードを最低まで落とせばほぼターン制のように操作できる。序盤は最低スピードで操作に慣れ、慣れてきたら少しずつスピードを上げていくのが定石だ。

コミュニティリソースも活用してほしい。EU5 WikiとYouTubeのビギナーガイド動画は、チュートリアルで教えてくれない「なぜそうするのか」を丁寧に解説してくれる。最初の20時間は「動画を見ながら確認する」くらいの姿勢で十分だ。Discordのコミュニティも活発で、「この状況どうすればいい?」という質問に答えてくれる人が世界中にいる。EU5は孤独なゲームのようで、実は世界中のプレイヤーとつながれるコンテンツでもある。

グランドストラテジーというジャンルの門は、決して低くない。でも一度越えると、なかなか帰れなくなる。深夜2時に「あと少しだけ進めよう」とつぶやきながら、自分だけの世界史をひたすら作り続けることになる。

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Europa Universalis V

Paradox Tinto
リリース日 2025年11月4日 新作
サービス中
同時接続 (Steam)
10,217
2026/04/11 アジア圏ゴールデンタイム計測
レビュー
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価格¥7,990
開発Paradox Tinto
販売Paradox Interactive
日本語非対応
対応OSWindows
プレイ形式シングル / マルチ
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