初めてAutomobilista 2を起動した日のことを、正直に書く。「ブラジルのゲーム会社が作ったレースシム」という先入観があったこともあって、どこか「マイナーなやつ」という目で見ていた。ところがMissanとインテルラゴスのコンテンツを確認した瞬間、その認識が崩れ始めた。そして実際にFormula 3のコックピットに乗り込んで走った瞬間、完全に認識が覆った。
ステアリングが路面の凹凸を拾う感覚、タイヤが暖まっていくにつれてコーナリングの限界が少しずつ上がっていく感覚、雨の匂いがしそうなほどリアルに降り注ぐスプリンクルの中でウェットタイヤに交換するタイミングを判断する感覚——これが「マイナーなゲーム」の体験ではなかった。
Automobilista 2(以下AMS2)は、ブラジルのゲームスタジオReiza Studiosが開発した本格レーシングシミュレーターだ。SteamのAppID 1066890として登録されており、2020年3月にEarly Accessが開始、同年6月に正式リリースV1.0となった。2026年4月現在、Steamでの総レビュー13,000件超のうち91%が肯定的という「非常に好評」の評価を維持し、v1.6系の大型アップデートで更なる進化を遂げている。
この記事では、AMS2がどんなゲームで、何が特別で、どう始めるべきかを、できる限り詳しく書いていく。
こんな人にオススメ

AMS2は明確にターゲットのある作品だ。以下に当てはまる人は、まず間違いなく楽しめる。
- ブラジルのモータースポーツ文化に触れたことがある、あるいは興味がある人——Stock Car Brazilやポルトガル語圏のサーキットが好きな人には特刺さる唯一無二のコンテンツがある
- F1やGT3だけでなく、歴史的なレースカーやマイナー車種も走らせたい人——1960〜70年代のフォーミュラカーから現代のハイパーカーまで、259台を超える圧倒的な車種数が揃っている
- 動的な天候・路面変化でタイヤ戦略を楽しみたい人——LiveTrack 3.0が生み出す「雨が降ったあと路面がどう変わるか」の体験は他のシムで味わいにくい
- ステアリングコントローラー(ハンコン)を持っている、または購入を検討している人——MADNESSエンジンのFFBはハンコンと組み合わせたときに本領を発揮する
- VRで走りたい人——AMS2はVR対応が充実しており、60以上のサーキットを完全没入で体験できる
- ACCや他のシムをすでに触ったことがあり、新しいシムを探している人——他のシムとは異なる「ブラジルらしさ」と「車種の多様性」が新鮮に映る
- カスタムチャンピオンシップを細かく設定して一人用を楽しみたい人——AIの強さからシーズン構成まで自由度が高く、一人でも深く遊べる
- 歴史的なモータースポーツ、特にGroup Cや1970年代のF1などに興味がある人——実際に当時を走った車種が丁寧に作り込まれており、歴史探訪の楽しみがある
逆に、こういう人には最初は少し合わないかもしれない。レーシングシム自体が初めてで難易度ゼロから始めたい人、GT3だけに特化した環境(ACCのような)を求めている人、ゲームパッドでカジュアルに楽しみたい人——そういった層には最初の敷居が高く感じることがある。ただし、AMS2にはアシスト機能が豊富に用意されているので、「シミュレーター入門」として選ぶ人もいる。
Automobilista 2 とはどんなゲームか

Reiza Studios とブラジルのモータースポーツへの愛
AMS2を語るには、まず開発元Reiza Studiosの話をしなければならない。
Reiza Studiosはブラジルのゲームスタジオで、代表Renato Simioni氏を中心とした小規模なチームだ。もともとはrFactorのモッディングチームとして活動を始め、その後「Game Stock Car」「Formula Truck 2013」「Stock Car Extreme」「初代Automobilista」といった作品を次々とリリースしてきた。いずれもブラジルのレーシングシーンを題材にした作品で、大手パブリッシャーにはない「マニア向けの丁寧な作り」が評価されてきた。
AMS2の前作にあたる初代「Automobilista」は、ブラジルのモータースポーツを深く愛する人々の間で絶大な評価を受けたシムだ。Stock Car Brazil(ブラジル版ストックカー)やFormula 3 Brasil、Copa Truck(トラックレース)など、国際的にはほとんど注目されないブラジル独自のシリーズを、丁寧にゲーム化した。
AMS2ではその姿勢を継承しながら、コンテンツを大幅に拡張してより国際的な舞台へ踏み出した。ブラジルのコンテンツは変わらず核として維持しつつ、欧州のGT3やル・マン系のLMPカー、IMSAシリーズ、さらには往年のF1マシンまで取り込んだ「大きなテント」になっている。
正式リリースは2020年6月30日。その後もアップデートが継続しており、2024〜2025年にかけてのv1.6シリーズでは物理エンジン、タイヤモデル、天候システム、AI挙動に至るまで大規模な改善が行われた。2025年には「ほぼ毎月新コンテンツを追加する」とReizaが宣言しており、現在進行形で成長中のタイトルだ。
MADNESSエンジンとpMotorの融合
AMS2のゲームエンジンは「MADNESSエンジン」——元々Slightly Mad Studiosが「Project CARS」シリーズのために開発したエンジンだ。Reizaはこのエンジンのライセンスを取得した上で、コードへのフルアクセス権を持ち、独自に改造・拡張している。
なぜこのエンジンを選んだのか。Project CARS 2を開発したSlightly Mad Studiosが持っていた、特に天候システム(LiveTrack 3.0)と物理シミュレーションの基盤が、Reizaのビジョンに合致したからだ。
さらにReizaは、前作Automobilistsで使用していた「pMotor」エンジン(rFactorベースの物理システム)の知見を組み合わせた。MADNESSの視覚・天候表現とpMotorの物理精度を融合させる試みがAMS2の物理システムの核心にある。
タイヤモデルは「SETA(Simulated Elasto-Tire Architecture)」と呼ばれるシステムを採用。タイヤのカーカス(骨格)、トレッド(接地面)、熱伝達のそれぞれを独立してシミュレートする三層構造になっている。コールドタイヤの滑りやすさ、ウォームアップ後の急激なグリップ増加、オーバーヒート時のグリップ喪失——これらが物理的に計算されて結果として出てくる。
v1.6アップデート(2024年)ではこのタイヤモデルがさらに磨かれ、「ステアリングからのフィードバックが劇的に自然になった」「フロントタイヤとのつながりが明確に感じられるようになった」という評価がシムレーシングコミュニティに広まった。「v1.6は変革的アップデート」という表現まで出るほど、仕上がりの差が大きかった。
Steamでの評価と現在の状況
2026年4月時点でのSteam評価は「非常に好評」——13,000件超のレビューのうち91%が肯定的だ。直近30日間も同様の評価を維持しており、プレイヤー数は直近30日で約29%増と右肩上がりの傾向を見せている。
同じシムレーシングジャンルの人気作「Assetto Corsa Competizione(ACC)」と比較されることが多いが、両者は「特化型」vs「多様性型」という対極の方向性を持っている。ACCがGT3レースに特化した完成度を追求するのに対し、AMS2は車種の幅広さとブラジル独自コンテンツを強みにする。「どちらが上か」ではなく「目的に応じて使い分ける」という位置づけが正確だ。
価格は通常版3,300円前後(2026年4月時点)。DLCを全て揃えると相応の追加投資が必要になるが、後述するように基本セットだけでも驚くほどのボリュームがある。

収録車種——259台・104クラスの圧倒的な多様性
ブラジル独自シリーズ——AMS2にしかない体験
AMS2の最大の個性は、他のどのシムにもない「ブラジルのモータースポーツ」を体験できることだ。
Stock Car Brasil(ストックカー・ブラジル)は、南米最高峰のツーリングカーレースシリーズだ。ベースはシボレーのホモロゲーションモデルで、NASCAR的なスタイルの激しい接触戦が繰り広げられるシリーズ——だが単純なオーバルレースではなく、インテルラゴスのような伝統的ロードコースも使う独自の文化を持つ。このシリーズをゲームで完全再現しているのはAMS2だけだ。
Copa Truck(コパ・トラック)は、文字通りレーシングトラック(大型トラック)が高速でサーキットを走るシリーズだ。重量級の車体が繰り広げる迫力のバトルは、他の車種クラスとは全く異なる独特の体験を提供する。トラックがコーナーでぎりぎりのバランスを保ちながら走る光景は、初めて見ると思わず笑ってしまうほどの爽快感がある。
Copa Uno / Copa Petrobras de Marcas——フィアット・ウノをベースにした超低コストのワンメイクシリーズも収録されている。馬力は控えめだが、その分ドライバーの腕がより直接的に結果に反映されるピュアなレース体験が味わえる。こういった「実際にブラジルで行われているマイナーシリーズ」を丁寧にゲーム化しているのがReizaらしさだ。
フォーミュラカー——歴史を縦断するラインナップ
AMS2のフォーミュラカーラインナップは、歴史的な深みが際立っている。
Formula Classic(フォーミュラ・クラシック)では、1960〜70年代のF1マシンを走らせることができる。ダウンフォースが少なく、足回りが今より原始的な時代のフォーミュラカーは、現代の車では体験できない「生のグリップで走る感覚」がある。ウイング調整が限られ、路面の細かな変化が直接ハンドルに返ってくる——これが「走ること自体の楽しさ」を教えてくれる。
Formula V12(フォーミュラ・V12)——1990年代初頭のF1を彷彿とさせる自然吸気V12エンジン搭載のマシン。この時代のF1は現在と異なり、エンジンの咆哮が最大の聴覚的快楽だった。AMS2でその音を再現しているサウンドは、プレイヤーを一瞬で1990年代のグランプリへ連れていく。
Formula Interは初代Formula 1(2020年代初頭のシングルシーターF1相当)のジェネリック版として設計されており、ハイブリッドシステムを持たない純粋なシングルシーターの走りを体験できる。
Formula 3 BrasilはReizaのお家芸とも言えるカテゴリー。ブラジルのF3シリーズを完全再現しており、若手ドライバーが腕を磨くリアルな環境が再現されている。
さらにF-USA(インディカー系)では1990年代のアメリカンオープンホイールが走り、ターボエンジンの荒々しいパワーデリバリーが楽しめる。
GT系——GT3からGTEまで
GT系の車種も当然充実している。
GT3クラスにはBMW M4 GT3、Mercedes-AMG GT3、Audi R8 LMS EVO、Lamborghini Huracan GT3など主要メーカーが揃っており、v1.6アップデート以降はLamborghiniやAlpineが追加されてさらに充実した。タイヤモデルの精度向上により、ACCと比較されるレベルの乗り心地が実現されている。
GTEクラス(GTE/GT2)では、ル・マンやIMSAで走るような高性能プロ仕様のGTカーが走れる。GT3より出力が高く、より過激なダウンフォースと速度域が体験できる。
Group Cクラスは1980〜90年代のル・マン最速時代のスポーツカー。ポルシェ 962Cを彷彿とさせる超高速のプロトタイプカーは、当時の最高峰を現代に甦らせる。マシンの挙動は「怪獣を御する」ような緊張感があり、コーナーごとに全神経を集中させる没入感がある。
LMP(ル・マン・プロトタイプ)系
LMP1・LMP2クラスのプロトタイプカーもAMS2に収録されている。IMSAとの連携によりデイトナやセブリングといった伝統的な耐久レース会場でのプロトタイプ体験が充実してきており、DLCで追加される内容も含めるとル・マン的な耐久レースのシミュレーションが現実のものとなる。
ヒストリックカー——走る博物館
AMS2のヒストリック系コンテンツは特筆に値する。
1960〜70年代のスポーツカー、ブラジルで実際に使用された歴史的なレーシングカー、往年のツーリングカー——これらが現代のシミュレーション技術で動く。単純に「古い車を走らせる」だけでなく、当時のタイヤ技術・エアロダイナミクスの制約がゲーム内の物理に反映されており、「なぜ当時のレーサーが命がけだったか」が走ることで体感できる。
その他の車種——幅広さの証明
さらに多彩な車種がラインナップされている:
- Kart(カート)——400kg以下の軽量ボディでサーキットを走るカートは、AMS2の物理エンジンが最もピュアに体験できるカテゴリーの一つ。高速カートはGT3より精密なコーナリングが求められ、「基礎固め」に最適
- Super Trophy Trucks(スーパートロフィートラック)——高床式の4WDトラックで未舗装路を爆走する、AMS2の中でも特に異色なカテゴリー。「これが同じゲームのコンテンツか」と驚くほど異なる体験
- Rallycross(ラリークロス)——未舗装セクションを含むコースを走るラリークロス。タイヤグリップの変化が極端で、反射神経と適応力が試される
- Hypercar(ハイパーカー)——現代最高峰のル・マン・ハイパーカー規定に基づく最速の市販ベース車。GT3とは桁違いの速度域と空力性能が体験できる
2026年時点で259台・104クラスというのは、シムレーシングジャンルの中でも屈指の車種数だ。「飽きる前に次のカテゴリーを試せる」という意味で、長期間にわたって楽しみ続けられる基盤になっている。
収録サーキット——62コース・210レイアウト

ブラジルのサーキット——ここでしか走れない場所
AMS2のサーキットリストで最も注目すべきは、やはりブラジルのコースだ。
Autódromo José Carlos Pace(インテルラゴス)はF1ブラジルGPの会場として有名なサーキット。起伏のある独特のレイアウトと、気象変化の激しいサンパウロ特有の天候がゲームでも再現されており、実際のF1ドライバーが「世界で最も好きなサーキットの一つ」と挙げることが多い。
Autódromo Internacional de Goiânia(ゴイアニア)はブラジルの内陸都市ゴイアニアにある歴史あるサーキット。高速コーナーが連続する独特のレイアウトで、Stock Car Brazilの主要会場の一つだ。ここを走れるゲームはAMS2以外にほぼ存在しない。
Autódromo Internacional de Curitiba(クリチバ)も同様に、南ブラジルの都市クリチバのサーキット。複雑なセクターとテクニカルなコーナーが組み合わさったコースで、ブラジル独自のモータースポーツ文化を感じさせる。
Autódromo Ayrton Senna(ホルトランジア)——ブラジルが生んだF1チャンピオン、アイルトン・セナの名を冠したサーキット。セナの命日に所縁のある会場として、ブラジルのファンにとって特別な意味を持つ。
他にもポルトガル語圏のサーキット、南米特有のレイアウトを持つコースが多数収録されており、「他のシムでは走れない場所で走る」という体験がAMS2にしかない最大の価値の一つになっている。
欧州の名門サーキット
ブラジル以外の欧州サーキットも充実している。
Circuit de Spa-Francorchamps(スパ・フランコルシャン)——GTレースの聖地。AMS2でもGT3やGTEで走れる。Eau Rougeの上り坂フルスロットルコーナーの緊張感は、どのシムで走っても変わらない。
Autodromo Nazionale Monza(モンツァ)——世界最高速のサーキット。オーバルに近いシンプルなレイアウトだが、GT車で220km/h超のスリップストリームバトルを楽しめる。
Nürburgring Nordschleife(ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ)——「グリーンヘル(緑の地獄)」と呼ばれる全長約21km・170以上のコーナーを持つ伝説のコース。AMS2では通常のGPサーキットに加え、ノルドシュライフェも走れる。歴史的なレーシングカーでノルドシュライフェを走る体験は、他のどのゲーム体験とも異質だ。
Brands Hatch、Silverstone、Hockenheimring、Imola——英国・ドイツ・イタリアの伝統的サーキットも収録されており、欧州のモータースポーツファンには馴染みのある舞台で走ることができる。
北米のサーキット
IMSAとの連携が深まったことで、北米コンテンツも充実している。
Daytona International Speedway(デイトナ)——ロードコースとハイバンクオーバルの組み合わせで行われるデイトナ24時間の舞台。GT3やLMPで夜通し走る体験はAMS2の最大の見どころの一つだ。
Sebring International Raceway(セブリング)——路面が荒れていることで有名な伝統の耐久コース。その荒れ具合がLiveTrack 3.0で忠実に再現されており、「なぜあんなに荒れているのか」を走ることで理解できる。
Laguna Seca(ラグナ・セカ)——「コークスクリュー(Corkscrew)」と呼ばれる急激な下り坂の盲目コーナーが有名なアメリカンサーキット。初めてコークスクリューを降りる瞬間のスリルは格別だ。
Road America(ロードアメリカ)、WeatherTech Raceway(Mid-Ohio)なども収録されており、IMSA系の耐久レース体験がゲームで体験できる。
歴史的なコース構成の充実
AMS2では62コース・210レイアウトという数字の中に「ヒストリックレイアウト」が多数含まれている。現在は使われていない旧ピットストレート、廃止された区間を含むかつての構成——これらがHistoric系コンテンツと組み合わさることで、「あの時代のあのレース」を走る体験が可能になっている。
例えば、当時のF1マシンを当時の旧スパレイアウトで走らせるというシチュエーションは、歴史的なモータースポーツへのリスペクトと技術の両方がないと実現できない体験だ。
LiveTrack 3.0 ——生きた路面を走る
ラバーインとトラックエボリューション
AMS2の「LiveTrack 3.0」は、路面状態を動的にシミュレートするシステムだ。Project CARS 2で初めて実装されたこのシステムをReizaが引き継ぎ、さらに改良を加えている。
レースが始まったばかりの「グリーン」な路面は、ゴムが乗っていないためグリップが低い。周回を重ねるにつれ、タイヤから落ちたゴムが路面に積み重なって(これを「ラバーイン」という)、ラインの上のグリップが向上していく。走り続けることで路面自体が変化していく——この「生きた路面」の感覚がAMS2の大きな強みだ。
逆に、雨が降るとそのラバーが洗い流され、路面の状態がリセットされる。ドライ時に「ラインの上がグリップが高い」という常識が、ウェット時は「ラインの上は滑りやすい」に逆転する——これはAMS2ならではの体験だ。v1.5アップデートで正式実装されたこの「レインライン」の逆転現象は、実際のモータースポーツでも起きることで、「なぜプロドライバーが雨の日にわざと外側を走るのか」という疑問への答えがゲームを通じて体感できる。
動的な気象変化とタイヤ戦略
天候は動的に変化する。晴れから曇りへ、曇りから雨へ——そしてスポット的にコースの一部だけが濡れる「局所的な雨」も再現されている。
「コース前半は乾いているが、最終コーナーだけ少し濡れている」というシチュエーションで、ドライタイヤのままいつまで走り続けるか——このタイヤ戦略の判断がレースの勝敗を分ける瞬間になる。雨雲の動きを「予測」しながらピット戦略を組み立てる体験は、耐久レース的な思考を刺激する。
路面の温度管理も重要だ。高温の昼間と冷えた夜間では、同じタイヤでも最適な空気圧が変わる。24時間レース的な長距離イベントでは、気温の変化に合わせてセットアップを調整する戦略が必要になってくる。
チームシミュレーション的な発想で「次のピットでどのタイヤを選ぶか」「給油量をどう設定するか」を考えながら走るのは、ACCや他のシムとはまた違う楽しみ方だ。
昼夜変化と24時間レースのリアリティ
日没から夜間走行、そして夜明けまでの変化もAMS2は丁寧に再現している。ゲーム内時間スケールを短縮して「24時間レースを2〜3時間で体験する」という設定も可能で、本格的な耐久レースの雰囲気をリアルな時間投資なしに楽しめる。
夜のモンツァをGT3で走るとき、ヘッドライトが照らすシケインのアプローチ、暗闇の中で光る対向車のテールランプ——これだけで独立したゲーム体験として完結するほどの没入感がある。
AIシステム——「本当に速い相手」と走れる

カスタマイズ可能なAIの詳細設定
AMS2のAI(コンピュータードライバー)は、カスタマイズの自由度が高いことで知られている。
AI難易度は細かくスケール設定でき、強さ80以上に設定するとAIが各コースに合わせた最適なセットアップを自動選択する。これだけで「AIが本気で速く走ろうとしている」感が大きく変わる。
さらに個別のAIドライバーに対して、以下の項目を個別に設定できる:
- 予選ペースとレースペース——予選は速いが決勝で崩れやすいAI、逆に予選は遅いが決勝で安定して走るAIなど、リアルなキャラクター付けが可能
- アグレッション——接触を厭わず積極的に仕掛けてくるか、クリーンレースを優先するかを設定
- ウェットペース——雨天時の速さを個別に設定することで、「雨が得意なドライバー」というキャラクターが作れる
- ミス傾向——完璧なロボットにするか、人間らしくたまにミスをするキャラクターにするか
- タイヤ・燃料マネジメント——長距離レースでどれだけタイヤを労わりながら走るか
マルチクラスレースも最大10クラスまで設定でき、LMP1とGT3が混走するル・マン的なシチュエーションを1人でも作れる。こうした細かい設定ができるため、「仮想のチャンピオンシップ」を自分で構築して長期間遊ぶプレイスタイルが確立されている。
v1.6以降のAI改善
v1.6アップデートではAIの挙動も大幅に改善された。特に「レインライン(雨天時に外側を走る判断)」をAIが正確に行えるようになったことで、悪天候でのAIとの戦いが「本当に天候に対応した走り方をする相手」と戦っている感覚に変わった。
以前のAMS2では「AIがドライラインを走り続けて雨でもグリップが下がらない」という問題が指摘されていたが、v1.6以降ではAIも雨天時に適切なレインラインを選択するようになっている。これにより「雨だとAIに勝てない」から「雨の戦略でAIと読み合いができる」という体験に変わった。
カスタムチャンピオンシップ——一人でも深く遊べる
自由度の高いシーズン構築
AMS2の一人用コンテンツの核心は「カスタムチャンピオンシップ」機能だ。
シリーズを自分で作れる。車種クラス(GT3、Stock Car Brazil、Formula Classic、何でもいい)を選択し、走りたいサーキットを好きな順番に並べ、各戦の天候・時間帯・練習走行・予選・決勝の構成を個別に設定できる。スコアリングシステムもF1方式からGT方式まで複数から選択可能だ。
例えば「1960〜70年代のフォーミュラカーで、歴史的なサーキット構成を使って10戦のチャンピオンシップを走る」という体験を、完全に自分でデザインできる。このカスタマイズ性が、「AMS2を200時間遊んでいる」というプレイヤーを生む源泉になっている。
シングルレースとクイックレース
チャンピオンシップ以外にも、単発のレースウィークエンドとして走ることができる。
フリープラクティス→予選→決勝というリアルなレースウィークエンドの流れをそのまま体験できる。「今日は1時間だけ走りたい」という場合はクイックレース形式を選び、お気に入りの車とコースで即座にレース開始することも可能だ。
オフラインでの遊び方が充実しているのはAMS2の大きな長所で、「オンラインに参加する余裕はないが、本格的なシミュレーションを楽しみたい」というプレイヤーに非常に向いている。
マルチプレイとオンライン環境

オンラインの現状
AMS2のオンラインマルチプレイは、近年大幅に改善が進んでいる。v1.6.5アップデートではSteamブラウザプロトコルを使ったロビーへの直接アクセスが実装され、リーグホストや第三者プラットフォームとの連携が容易になった。
LFM(Low Fuel Motorsport)との連携がベータ版として実装されており、ACCで広く知られるこのマッチメイキングプラットフォームがAMS2でも使えるようになりつつある。LFMはドライバーレーティングに基づいたマッチメイキングで、「同じレベルの相手と走る」環境を提供する。
ただし、AMS2のオンラインプレイヤー数はACCと比較すると少なく、ピーク時でも数千人規模だ。ACCのような「常に同じレベルの相手がすぐ見つかる」状況には至っていないが、リーグレースや定期開催のオンラインイベントには常に参加者がいる。
リーグとコミュニティ
AMS2のコミュニティは規模こそ大きくないが、熱狂的なファンが多い。Reizaフォーラムは開発者が積極的に書き込み、バグ報告や改善要望に対して直接回答するスタイルを維持している。「開発者との距離が近い」という感覚は、大型タイトルには難しい小規模スタジオならではの強みだ。
Stock Car Brazil専門のオンラインリーグ、歴史的なフォーミュラカー専門のリーグ、耐久レース特化のリーグなど、テーマ別のコミュニティが形成されており、特定の興味を持つプレイヤー同士が深く繋がれる環境がある。
DLC——何から買えばいいか
DLC構成の概要
AMS2のDLCは2025年8月に大規模な再編が行われ、それ以前の11パックが整理・統合されて現在は15のDLCと3つのバンドルが提供されている(2026年4月時点)。
DLCの方向性は大きく「車種追加」「サーキット追加」「車種+サーキットのセット」の3種類に分けられる。
主要なDLCの内容
IMSAトラックパック——デイトナ、セブリング、Watkins Glen(ワトキンズ・グレン)を含むIMSAシリーズゆかりのコース群。IMSAのリアルなGT体験を求めるなら最優先候補のDLC。デイトナでのGT3レースは別格の体験だ。
Circuit de la Sarthe(サルト・サーキット)——ル・マン24時間レースの舞台。このコースだけで独立したDLCとして販売されており、AMS2でル・マン的な耐久レースを走りたいなら必須。長い直線とヘアピンのコントラストが独特の体験を生む。
Endurance Pack Part 3(エンデュランスパックPart 3)——耐久レース向けコンテンツの最新拡張。新たなサーキットとハイパーカー系のコンテンツが含まれる。
Nürburgring 2025——2025年仕様に更新されたニュルブルクリンクのコンテンツ。最新のピット施設や安全設備が反映されたコースを走れる。
Racin’ USA Expansion——アメリカのモータースポーツに特化した大型パック。アメリカンオープンホイールやNASCAR的なストックカーなどが含まれる。
DLCの優先順位
まず基本ゲームだけで十分に遊べる。259台・62コース・210レイアウトという量は、DLCなしでも「数十時間は余裕で楽しめる」レベルだ。
DLCの優先度は興味の方向性による:
- ル・マン・耐久レースが好き→ Circuit de la Sarthe + Endurance Pack
- IMSAやアメリカのモータースポーツが好き→ IMSAトラックパック + Racin’ USA
- ノルドシュライフェを走りたい→ ニュルブルクリンク系DLC
- とにかく車種を増やしたい→ 各シーズンパック
全てのDLCを一気に買うより、まず基本ゲームで走り込んで「何が足りないか」を確認してから追加購入するのが賢明だ。All-Inclusive Bundle(全コンテンツ一括)は15%割引が適用されるので、全部揃えるつもりなら最初からバンドルを選ぶのも悪くない。

AMS2が世界で愛される理由

理由1:ブラジルのモータースポーツを唯一体験できるゲーム
最大の理由を一言で言えば「代替品がない」ことだ。
インテルラゴスでStock Car Brazilの車に乗って走れるゲームは、AMS2以外に存在しない。コパ・トラックのレーシングトラックをゴイアニアで走らせるゲームは、AMS2だけだ。Formula 3 Brasilの若手ドライバーが腕を磨く現場を追体験できるのも、AMS2だけだ。
ブラジルはモータースポーツ大国だ。アイルトン・セナ、ネルソン・ピケ、エマーソン・フィッティパルディ、ルーベンス・バリチェロ——世界レベルのF1チャンピオンを何人も輩出してきた。にもかかわらず、そのブラジルのローカルレースシーンを題材にしたゲームはほぼ存在しなかった。AMS2がその空白を埋めた。
これは「マニア向けのニッチなコンテンツ」ではなく、「世界のどこにもなかったコンテンツ」だ。Reiza Studiosがなければ、これらのシリーズが丁寧にゲーム化される機会はなかっただろう。
理由2:車種の多様性がもたらす「飽きない設計」
259台・104クラスという数字は、単なるスペック上のアピールではない。カテゴリーが多様であることで「今日は気分が違うから別の車で走ろう」という選択が常に存在する。
ACCのGT3特化の完成度は素晴らしいが、「GT3以外を走りたい」という欲求が生まれたとき行き先がない。AMS2では同じソフトの中に、ヴィンテージのF1マシンも、現代のハイパーカーも、コパ・トラックのトラックも全部ある。一つのゲームの中で「今日は1970年代のF1気分」「今週末は24時間耐久レース」「気分転換にカート」という切り替えができる。
長く遊ぶゲームというのは、「今これに飽きたら次のこれ」という逃げ場がある構造のほうが続きやすい。AMS2の多様性はその逃げ場を無数に用意している。
理由3:LiveTrack 3.0が生み出す路面の「生きている感覚」
レースは路面状態との戦いだ——という感覚をゲームで体験できるのはAMS2の強みの一つだ。
ラップを重ねるごとに路面のグリップが変わる体験、雨が降った後のラインの逆転、スポットで降る雨への対応——こういった「路面という変数との格闘」が、ドライビングをより奥深いものにしている。
単純にコーナーを速く回ることだけでなく、「今この路面でどう走るのが最善か」を考えながら走ることで、レーシングの「知的側面」が刺激される。これが長時間遊んでいても飽きない理由の一つになっている。
理由4:開発者との距離の近さ
Reiza Studiosはフォーラムへの書き込みが活発で、開発者が自らプレイヤーの質問に答える姿勢を維持している。バグ報告への反応が速く、改善要望が実際にアップデートに反映されるケースも多い。
「このゲームは作り続けられている」という実感をプレイヤーが持てることは、コミュニティの熱量を維持する上で非常に重要だ。2025年の「ほぼ毎月新コンテンツを追加する」という宣言も、その姿勢の表れだ。
大手パブリッシャーのゲームではなかなか実現しないこの「開発者とコミュニティの共同制作感」が、AMS2プレイヤーの愛着を生んでいる。
理由5:v1.6以降の物理エンジンの完成度
AMS2は発売初期には「物理が若干おもちゃっぽい」「タイヤフィールが軽すぎる」という批判もあった。しかしv1.6以降のタイヤモデル改善により、この評価は大きく変わった。
「v1.6アップデート後のAMS2はほとんど別のゲームだ」という声がシムレーシングコミュニティに広まった。フロントタイヤからのフィードバックが劇的に自然になり、限界付近での挙動の予測性が上がった。「ステアリングが路面に繋がっている感覚」——これがv1.6で初めて実現されたとする評価は多い。
2025年もtire physicsの継続的な改良が宣言されており、「成長中のシム」として今後のアップデートに期待が持てる。
AMS2を始める前に知っておきたいこと
難易度について——敷居は高いが段階がある
AMS2は本格的なシミュレーターなので、「ゲームパッドで気軽に楽しむ」という用途には少し合わない部分がある。特に上位クラスの車種(GT3、LMP、フォーミュラカー)は、アシスト機能なしで走ると最初は大抵スピン連発になる。
ただし、AMS2にはアシスト機能が豊富に用意されている:
- TC(トラクションコントロール)——アクセルを踏みすぎてスピンしそうになると自動で抑制。初心者に最も助けになるアシスト
- ABS(アンチロック・ブレーキ)——ブレーキをロックさせないシステム。ブレーキポイントがまだわからない段階で安心感を与える
- スタビリティコントロール——車が滑り始めたとき自動で修正
- ピットアシスト——ピットレーンの速度制限を自動で守ってくれる
- オートシフト——マニュアルシフト操作が難しい場合の補助
最初はこれらをある程度オンにして走り始め、慣れてきたら少しずつオフにしていく——というアプローチが最も合理的だ。「AMS2はシムレーサー上級者しか楽しめない」というわけではなく、アシストを活用すれば初心者でも走れる設計になっている。
コントローラーとハンコン——どちらでも走れるが
AMS2はゲームパッド(PS4/Xbox系コントローラー)での操作に対応している。コントローラー設定のカスタマイズ性も高く、「ゲームパッドでも設定次第でそこそこ走れる」という評価はある。
ただしやはり、本来の面白さを引き出すにはステアリングコントローラー(ハンコン)が圧倒的に有利だ。MADNESSエンジンのFFB(フォースフィードバック)は、ハンコンを通じて手のひらに伝わることで初めてその情報量の豊かさが実感できる。
AMS2は比較的廉価なエントリーモデルのハンコン(LogitechのG29/G923、ThrustmasterのT300RSなど)でも十分に楽しめるFFB設定が用意されており、「ハンコン入門」のゲームとしての適性も高い。
推奨PCスペック
AMS2の公式推奨スペックは以下の通りだ:
- 最低動作環境——CPU: Intel Core i5 3.5GHz以上またはAMD FX-8350、RAM: 8GB、GPU: GeForce GTX680/Radeon RX480以上
- 推奨動作環境——CPU: Intel Core i7 8700KまたはAMD Ryzen 7 2700X、RAM: 16GB、GPU: GeForce GTX1080/Radeon RX5700以上
- ストレージ——最低50GB(全DLC含む場合は相応の追加容量)
2026年現在の実際のプレイヤー体験から言うと、1080p・60fps程度なら最低環境でも動作するが、VRや高解像度・高フレームレートを目指す場合はGTX1080以上が現実的なラインになっている。特に動的天候・多台数レースの組み合わせはGPU負荷が高く、RTX3070クラス以上があると快適だ。
ACCやiRacingとどう違うのか
シムレーシングを調べていると必ず比較される他のタイトルとの違いを簡単にまとめておく。
Assetto Corsa Competizione(ACC)との比較でいうと、ACCはGT3カーによるGT World Challengeに特化した「深さ」が強みで、AMS2は車種・コースの「広さ」と「ブラジル独自コンテンツ」が強みだ。物理の方向性も異なり、ACCはより「GT3のリアルを追求」する一方、AMS2は「多様な車種それぞれのリアルを追求」する姿勢がある。並行してプレイしているプレイヤーも多い。
iRacingとの比較では、iRacingはサブスクリプション制のオンライン競技に特化しており、マッチメイキングやレーティングシステムの完成度が世界最高水準だ。一方AMS2は買い切りで、オフライン遊びやカスタムコンテンツの自由度が高い。競技的なオンライン環境を最優先するならiRacing、幅広い車種と独自コンテンツをオフラインでも楽しみたいならAMS2、という使い分けが多い。
rFactor 2との比較では、どちらも物理精度が高い評価を受けるシムだが、AMS2の方が視覚的な完成度とコンテンツの統一感が高い。rFactor 2は長年にわたるコミュニティMODの蓄積があるが、公式開発の勢いという意味ではAMS2が上回っている状況だ。
AMS2をより楽しむための初心者アドバイス

まず「どの車・どのシリーズが好きか」から始める
AMS2の最大の魅力は多様性だが、これが初心者にとっては逆に「何から始めればいいかわからない」という迷子状態を生むことがある。
答えは単純で、「自分が好きなカテゴリーから始める」ことだ。
- 現代のGTレースが好き→ GT3クラスでSpa、Monzaあたりから走ってみる
- F1の雰囲気が好き→ Formula Classic(1970年代F1系)かFormula Interから始める
- ブラジルのレースに興味がある→ Stock Car Brazilでインテルラゴスを走ってみる
- まずは簡単な車で基礎を作りたい→ KartかGT4クラスから始める
- 歴史的な体験をしたい→ Formula Classicで旧レイアウトのサーキットを走る
「全部試してから決める」より「まず一つのクラスで走れるようになる」方が、ゲームへの理解と愛着が深まりやすい。
最初はセットアップをデフォルトのままにする
AMS2のカーセットアップはかなり詳細な設定が可能だが、最初は完全に無視していい。
デフォルトのセットアップでも十分に走れるし、最初の段階で「セットアップの違い」より「走り方の違い」から学ぶほうがはるかに効率的だ。「なんかコーナーでアンダーが出る」「立ち上がりでリアが滑る」という感覚が具体的になってきたとき初めて、セットアップの調整が意味を持ち始める。
セットアップに手を出すなら、まず「ブレーキバイアス(前後ブレーキ配分)」の調整だけ試してみると分かりやすい。フロント寄りにするとブレーキングが強くなるがオーバーステアが出やすくなり、リア寄りにすると安定するが制動力が落ちる——この変化が直感的に体感できる。
FFBの設定——まず数値を下げるところから
ハンコンユーザーへのアドバイスとして、AMS2のFFB設定はデフォルトだと強すぎることがある。特にエントリーモデルのハンコンでは、FFBゲイン(全体的な強度)を50〜60%程度に下げるところから始めることを推薦する。
強すぎるFFBは腕が疲れるだけでなく、微細な路面情報が「大きな力」に埋もれてしまう問題がある。適切な強度では「タイヤが何をしているか」「グリップ限界がどこにあるか」がより繊細に伝わってくる。
各ハンコンに合わせた推奨FFB設定は、Steamコミュニティガイドやシムレーシング系のWebサイトに豊富な情報がある。「自分のハンコン名 + AMS2 + FFB settings」で検索すると、実践的な設定例が見つかるはずだ。
雨の走り方——最初は無理に走らなくていい
AMS2の雨天レースは非常にリアルで、「通常のラインがスリップしやすい」という直感に反する挙動を理解してから走る必要がある。
最初は雨の設定をオフにして晴れのコンディションで基礎を固め、ある程度走れるようになってから「Damp(わずかに濡れた状態)」→「Wet(本格的な雨)」という順番で雨天走行を練習するのが無難だ。
雨天走行の核心は「ラインを外す勇気」だ。乾いた路面でグリップが高かったラインが、雨ではゴムが積もって逆にスリッピーになる。外側の「きれいな路面」の方がグリップが高いという逆転を体で理解できたとき、雨のレースが突然楽しくなる。
おすすめの最初の走り方
「何から始めればいいかわからない」という人のための最初のルートを提案する。
- Stock Car Brazilでインテルラゴスを1〜2周走ってみる——「これがブラジルのレースか」という第一印象を掴むため。派手な車体と豪快なコーナリングが最初の感動を作りやすい
- GT3クラスでMonzaを5〜10周練習する——比較的シンプルなコースで「GT3の速さと重さ」に慣れる。Monzaはコース覚えが楽で、速度感への慣れに最適
- Formula Classicで旧スパかバランシャンを走ってみる——ダウンフォースが少ない1970年代のF1マシンの「シンプルな速さ」は、現代の車とは全く違う体験を提供する
- Copa Truckで一度走ってみる——「これもあるのか」という驚きを体験するために。AMS2の多様性を体感できる
この4ステップを試すだけで「AMS2が自分に合うゲームかどうか」の判断材料が揃う。気に入った車種やカテゴリーが見つかったら、そこを軸に深く掘り下げていくのが長く楽しむコツだ。
AMS2の技術的な深みを知る——セットアップとドライビング理論
カーセットアップの基礎
AMS2のセットアップ調整は本格的で、実際のモータースポーツエンジニアリングに近い内容だ。ある程度走れるようになったら、セットアップの理解がタイムとレース内容を大きく変える。
エアロダイナミクス(ダウンフォース設定)は最も分かりやすい調整項目だ。ダウンフォースを増やすとコーナリングスピードが上がるが、ドラッグ(空気抵抗)が増してストレートが遅くなる。モンツァのような高速・低ダウンフォースコース vs スパのような高低差・高ダウンフォースコースでは全く異なる設定が求められる。
サスペンション設定はスプリングレート、減衰力(バンプ・リバウンド)、アンチロールバー、車高の調整だ。路面の荒れたコースでは柔らかめのセットが接地感を向上させ、スムーズなコースでは硬めでロールを抑えてコーナリング精度を上げる。
タイヤ空気圧はLiveTrack 3.0と組み合わさることで特に重要になる。走行中に路面温度が上がるとタイヤ温度も上がり、空気圧が変化する。スタート時の圧力設定が走行全体を通じた最適グリップに直結する。
ブレーキバイアス——前後ブレーキ配分——は走行中にも調整できる項目で、コーナーの特性に応じてその都度微調整するのが本格的なドライビングだ。「この高速コーナーではフロントを少し緩める」という判断ができるようになると、ドライビングの繊細さが一段上がる。
タイヤウォームアップの技術
AMS2はタイヤの熱管理が重要なゲームだ。コールドタイヤでコースインした最初の1〜2ラップは意図的にグリップが低く、「タイヤを暖める」作業が必要になる。
効率的なウォームアップは、軽いブレーキングとステアリング操作を繰り返してタイヤに熱を入れること。強くかけすぎるとオーバーヒートになり逆効果なので、「丁寧に、でも積極的に」というバランスが求められる。
このタイヤウォームアップの質が予選タイムに直結する。同じドライバー・同じセットアップでも、ウォームアップラップの質次第でタイム差が0.3〜0.5秒変わることがある。これが「AMS2は走り込むほど深い」と感じさせる要素の一つだ。
ブレーキング技術——「遅く入って速く出る」の本質
レーシングドライビングの根本原則「遅く入って速く出る(Slow in, Fast out)」がAMS2の物理では正確に機能する。
コーナーに速く入りすぎると、脱出時に内側のラインが取れなくなり、加速のタイミングが遅れる。逆に少し余裕を持って入ると、脱出時にアクセルを踏み始めるタイミングが早くなり、結果としてストレートの速度が上がる。
この原則はAMS2の全ての車種・全てのコーナーに適用できる普遍的な法則だ。「なんか曲がれない」「コーナー後が遅い」という場合、まず進入速度を見直すことで大半は解決する。
AMS2の見どころをもう少し深掘りする

歴史的なフォーミュラカーの体験
AMS2で最も「他のゲームにはない体験」を提供するカテゴリーの一つが、歴史的なフォーミュラカーだ。
1960〜70年代のF1マシンには現代のダウンフォースデバイスがほとんどない。グリップの大半を生み出すのはタイヤだけで、速く走るには「タイヤのグリップ限界を正確に感じながら走る」技術が必要だ。現代の高ダウンフォースマシンとは根本的に異なる「走ることの本質」に触れる体験がある。
AMS2のFormula Classic(フォーミュラ・クラシック)シリーズでこれらのマシンを走らせると、「なぜあの時代のレーサーが英雄扱いされるのか」が少しだけわかる気がする。グリップが少ない中でコーナーをまとめるには、繊細なステアリング操作と絶妙なアクセルコントロールが必要で、それが決まったときの達成感は特別だ。
Copa Truck——異色の楽しさ
Copa Truckの面白さを一言で言うと「レーシングトラックが本気で走る異常な光景」だ。
トラックは一般的な乗用車の5〜6倍の重量があり、コーナーへのアプローチでは慣性の大きさが体感できる。それでも速度域は「トラックとは思えないほど速く」、レース中はトラック同士がドア・ツー・ドアのバトルを繰り広げる。
最初は「ジョークみたいなカテゴリー」と思うかもしれないが、走り込むと「重量級の車体をどうコントロールするか」という独自の技術体系があることがわかる。このカテゴリーが現実のブラジルで人気リーグとして成立しているという事実が、AMS2の「ブラジルのモータースポーツのリアル」を象徴している。
Group Cカーのスリル
1980〜90年代のGroup Cカー(ポルシェ962、ジャガーXJR-9などを彷彿とさせる車種)は、AMS2の中で「最も怖い車種」として知られている。
超大型のターボエンジンが生む爆発的なパワー、フラットボトム規制以前の極端なグラウンドエフェクトエアロ——速度が乗ると文字通り「地面に張り付く」ほどのダウンフォースが生まれる一方、速度が落ちるとエアロが機能しなくなり急激にグリップが失われる。
「速度を落とすほど危険になる」という現代の車にはない特性が、Group Cカーをドライブする特別な緊張感を生む。スパやモンツァでGroup Cを走らせる体験は、現代のGT3とは全く別次元の怖さと面白さがある。
24時間レースシミュレーション
AMS2はゲーム内時間スケールを設定することで、「実時間2〜3時間で24時間レースを体験する」ことができる。
スケールを10倍に設定すると、ゲーム内時間では24時間が進む間に実時間では2.4時間が経過する計算になる。この設定でデイトナ国際スピードウェイやサルト・サーキット(ル・マン)で24時間レースを設定すると、昼から走り始め、夕暮れを経て夜間走行、そして夜明けを迎えるという体験が約2時間半で楽しめる。
夜のサルト・サーキットをLMPカーで走るとき、Hunaudieres直線でヘッドライトが照らす先の暗闇——プロレーサーが語る「夜のル・マンは別世界」という感覚が、少しだけ理解できる瞬間がある。
AMS2の将来性——2025〜2026年の展望
「ほぼ毎月コンテンツ追加」の宣言
Reiza Studiosは2025年に「ほぼ毎月新しいコンテンツを追加する」と宣言した。これは過去のリリースペースを超えるものとして受け止められており、コミュニティの期待値が高まっている。
実際、2025年前半にかけて新車種・新サーキット・物理改善が定期的にリリースされており、宣言通りの開発ペースが維持されている。LFMとの連携強化、マルチプレイ環境の改善、さらなるタイヤモデルの精緻化——いずれも「今後に期待できる」要素だ。
タイヤ物理の継続的改善
v1.6以降も、Reizaはタイヤ物理の改善を継続的に行っている。各タイヤの摩擦係数、弾性、熱力学パラメーターが定期的に更新されており、現実の車両データとの乖離を少しずつ縮めていく作業が続いている。
「AMS2は3年前のゲームとは違う」という表現が正確なほど、アップデートによる変化が大きいゲームだ。購入後も定期的に別のゲームのように改善されていくという期待ができるのは、長期的な投資として見ても良い要素だ。
マルチプレイとLFM連携の強化
AMS2の弱点の一つだったオンラインマルチプレイ環境の改善が、v1.6.5以降で具体的に進んでいる。LFMのベータ版連携により、ACCで実績のあるレーティングベースのマッチメイキングがAMS2でも実現されつつある。
これが本格稼働すれば、「AMS2の車種の多様性でオンライン競技もできる」という環境が整い、現在のプレイヤー増加傾向がさらに加速する可能性がある。
AMS2の「弱点」も正直に書く

オンライン人口の少なさ
正直に言うと、AMS2のオンラインマルチプレイのアクティブ人口は多くない。ピーク時の同時接続数が数千人規模というのは、iRacingやACCと比較すると少ない。
これは「マッチングに時間がかかる」「参加者が少ないレースに入ることがある」という実際の問題に繋がる。競技的なオンライン環境を最優先にする場合、AMS2より人口の多いACCやiRacingを選ぶ方が実用的だ。
ただし、指定の時間帯やリーグレースに参加することで、「少ないが熱狂的なプレイヤーたちとのレース」という形で楽しむことはできる。コミュニティの密度が高いため、常連になると「顔見知り」のような関係が生まれやすい。
DLCの多さとコスト
AMS2本体のコストは抑えめだが、全DLCを揃えようとすると相応の出費になる。2025年にDLC構成が再編されて整理されたが、それでも「全部揃えるといくらかかるか」を最初に見ると少し驚く金額になる。
「基本ゲームで十分遊べる」のは事実なので、焦らず少しずつ追加していくアプローチが現実的だ。また、定期的にSteamセールで割引が行われるので、気になるDLCはセール時に狙うのが定番の買い方だ。
グラフィックの方向性
MADNESSエンジンのビジュアルはフォトリアルなレベルに達しているが、ACCのUnreal Engine 4ほどの「映画的な映像美」という印象は薄い。雨天時の水表現や夕暮れのライティングなどは美しいが、全体的な雰囲気としては「高品質だが地味」という評価が正確だ。
「見た目の美しさ」を最重視するならACCが上回る場面があるが、「走る体験としての没入感」という意味ではAMS2も引けを取らない。視覚的な派手さよりも「走りの真実」を優先する人には、AMS2のグラフィックで十分だ。
Steamレビューと実際の評判
Steamレビューに見えるプレイヤーの本音
AMS2のSteamレビュー(13,000件超・91%肯定)を読むと、繰り返し登場するキーワードがある。
「ブラジルのコンテンツがたまらない」「Stock Car Brazilを走れるのはここだけ」——ブラジル系コンテンツへの特別な愛着を語るレビューが多数ある。日本のゲームファンが「GT500を日本のサーキットで走らせたい」と思うように、ブラジルのレーシングファンにとってAMS2は「唯一の居場所」だ。
「v1.6以降でほぼ別ゲームになった」——物理改善の影響を語るレビューも目立つ。「2年前は薦めなかったが、今は薦める」という評価の変化が正直に書かれているものもある。
「車種の多さで飽きない」——259台というラインナップが長期プレイを支えているという評価も多い。「100時間以上プレイしてまだ試していない車がある」というのは、コンテンツ量の充実を実感させる声だ。
「オンライン人口が少ない」——弱点についても正直なレビューがある。「マルチプレイをメインにしたいならACCかiRacingの方がいい」という意見は、AMS2のファンからも率直に書かれている。
シムレーシングコミュニティでの評価
シムレーシング専門メディアや海外コミュニティでの評価を見ると、AMS2はv1.6以降で評価が大きく上がっている。
Simracing.GPのv1.6レビューでは「変革的なアップデート(Transformative Update)」という表現が使われ、「タイヤ物理が劇的に改善され、ステアリングフィードバックが自然になった」と評価されている。Traxionの記事では「v1.6はAMS2にとってのステップチェンジ(段階的な変化ではなく質的な跳躍)」と表現されている。
複数のシムを使い分ける「マルチシム」プレイヤーのコミュニティでは、「GT3ならACC、幅広い車種ならAMS2、競技オンラインならiRacing」という三分割的な位置づけが定着してきている。AMS2がその一角に入ったこと自体が、v1.6以降の評価向上を示している。
まとめ——Automobilista 2が「今遊ぶべきシム」である理由
Automobilista 2は、最初に見た印象より確実に深いゲームだ。「ブラジルのゲーム会社が作ったシム」という第一印象は、走り始めるとすぐに「ブラジルのレースを一番リアルに体験できるシム」に変わる。そしてGT3からGroup C、フォーミュラクラシックからコパ・トラックまで走り続けると、「これだけ多様な体験を一つのゲームで提供できるシムは他にない」という評価になる。
v1.6以降の物理エンジン改善により、かつての「惜しいシム」というポジションから「今最も成長しているシム」へと変貌した。2025〜2026年の継続的なコンテンツ追加が続く中で、プレイヤー数は増加傾向を見せている。「今始めるにはいいタイミング」という状況だ。
ブラジルのレーシングカルチャーへの愛情から生まれ、小さなスタジオが10年近くかけて磨き上げてきたこのゲームには、大手パブリッシャーのタイトルにはない「作り手の情熱」が宿っている。それがAMS2を「数字以上のもの」として感じさせる理由だと思う。
「まず走ってみる」ことが一番の答えだ。インテルラゴスでStock Car Brazilの車に乗り込み、2コーナーへのブレーキングでリアが少し流れる感覚を体験した瞬間——そこからAMS2との付き合いが始まる。

Automobilista 2
| 価格 | ¥4,100 |
|---|---|
| 開発 | Reiza Studios |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows / Linux |
| プレイ形式 | シングル / マルチ |

