Noita|すべてのピクセルが物理演算される、狂気のローグライト魔法アクション
「また自爆した」と苦笑いしながら、すぐにリトライボタンを押してしまう。Noitaというゲームは、そういうゲームだ。
炎を放つ魔法を壁に向かって撃ったら、引火した炎が自分の足元まで広がって死亡。強力な爆発呪文を敵に叩き込もうとしたら、ダメージが自分に跳ね返ってきて即死。水で満たされた洞窟を泳いでいたら、上から溶岩が流れ込んできて瞬殺。毎回なにかしら予想外の死に方をするのに、次のプレイでどうすれば生き延びられるかが少しずつ見えてくる。その感覚がたまらなくて、気づいたら何十時間も経っている。
このゲームの最大の売りは「すべてのピクセルが物理演算される」という一点に尽きる。その言葉の意味を理解すれば理解するほど、このゲームが狂っているとわかる。火は燃え広がり、水は流れ、油は燃え、酸は素材を溶かし、毒ガスは充満する。それらすべてがリアルタイムで計算されていて、プレイヤーの行動が環境に影響を与え続ける。魔法を撃つとは、物理現象を引き起こすことだ。
2020年に正式リリースされたNoitaは、フィンランドのNolla Gamesが開発した一人プレイのローグライトアクションゲームだ。Steamのレビューは執筆時点で8万件以上が「圧倒的に好評」を維持している。インディーゲームとしては驚異的な評価であり、その人気がダテではないことはプレイすればすぐにわかる。
ただ、正直に言っておく。このゲームは理不尽なほど難しいし、最初はルールを理解するだけで何時間も必要だ。最初の10回くらいは序盤で死ぬのが当たり前で、「なんで死んだかもわからない」という経験を繰り返すことになる。でも、その壁の向こう側には、他のゲームでは絶対に味わえない体験がある。この記事では、Noitaの何がそれほど面白いのか、どこで引っかかりやすいのか、どうすれば楽しめるようになるかを、できるだけ正直に書いていく。
こんな人に読んでほしい

Noitaはすべての人に向いているゲームではない。向いている人にはとことん刺さるが、向いていない人には苦痛にしかならない可能性がある。自分がどちらか確認してほしい。
こんな人には強くおすすめする
まず、ローグライトゲームが好きで「もっと自由度の高い魔法システムが欲しい」と感じている人には、Noitaはほぼ間違いなく刺さる。Enter the GungeonやHades、Dead Cellsなどのローグライトをプレイしたことがある人なら、Noitaのゲームループは馴染みやすい。ただし、それらより圧倒的に複雑で深い。
物理演算やシミュレーションが好きで、「環境を使った戦い方をしたい」という人にも強くおすすめできる。Noitaの物理演算は単なるグラフィック演出ではなく、ゲームプレイそのものに直結している。水で炎を消す、爆発で壁を壊して迂回路を作る、敵が放った毒液をリダイレクトして別の敵に当てる、そういった環境を使った戦術を考えるのが好きな人には天国のようなゲームだ。
「何百時間でも遊べるゲームが欲しい」という人にも向いている。Noitaはプロシージャル生成によって毎回違うマップが生成される上に、ワンド(杖)とスペル(呪文)の組み合わせは事実上無限に近い。さらに、表面上のクリアを達成した後に見えてくる隠しコンテンツや謎の量が異常で、コアプレイヤーのコミュニティでは発売から数年経った今もなお新しい発見が報告され続けている。
また、「自分で発見する楽しさ」を重視する人にも特別な体験を提供するゲームだ。Noitaはチュートリアルがほとんどなく、多くのシステムをプレイヤー自身が試行錯誤で発見していく。ゲームの仕組みを自分で解き明かしていくプロセスそのものが楽しいという人にとって、Noitaは稀有なゲームになるだろう。
こんな人には正直きつい
死亡=最初からやり直しという仕様に強いストレスを感じる人には、このゲームはかなり厳しい。Noitaはパーマデスが基本で、死んだらすべての進捗がリセットされる。序盤だけが比較的安全で、中盤以降は一瞬の判断ミスで即死が当たり前になる。「頑張って進めたのにまたやり直し」という経験をゲームの醍醐味として受け入れられない場合は、向いていない。
カジュアルに短時間だけ楽しみたい人も少し難しい。最初の数十時間はゲームの基本システムを理解するだけで手一杯で、「気軽に30分プレイして終わり」というテンポとは合わない。特に最初のうちはwikiやコミュニティで情報を収集する時間も必要になる。
日本語サポートについても正直に言うと、インターフェースと一部テキストは日本語化されているが、攻略情報の多くは英語のwikiやコミュニティに集中している。英語での情報収集が難しいと感じる場合は、情報が得にくい場面が出てくる可能性がある。
ゲーム概要
NoitaはフィンランドのNolla Gamesが開発した一人用ローグライトアクションゲームだ。2019年9月に早期アクセスを開始し、2020年10月15日に正式リリースされた。Steamでの販売価格は2,050円(執筆時点)。AppIDは881100だ。
「Noita」というタイトルはフィンランド語で「魔女」または「シャーマン」を意味する。フィンランドの神話や民間伝承にはルーン魔術師や自然と対話する呪術師の概念があり、ゲームのテーマとも深く結びついている。
ゲームの舞台は深い地下に広がる迷宮だ。プレイヤーは名もなき魔法使いとして、地下世界の最深部を目指して潜っていく。ストーリーはほとんど語られず、主人公の目的も最初はほぼ説明されない。謎めいた神話的な雰囲気の中で、プレイヤーは少しずつ世界の真相を発見していく。
ゲームの進行は縦方向のスクロールが基本だ。最上層の鉱山から始まり、炭坑、凍てついた洞窟、ヒイシ族の基地、地下ジャングル、古代の神殿、研究所と、8つの主要バイオームを下へ下へと掘り進んでいく。各バイオームの間には「聖なる山」と呼ばれる安全地帯があり、ここで新しい魔法を購入したり、ワンドを改造したり、特殊能力を獲得したりできる。
ゲームの基本ループはシンプルだ。探索してアイテムを集め、敵を倒してゴールドを稼ぎ、聖なる山で装備を強化し、次のバイオームへ進む。しかし、その中に詰め込まれたシステムの複雑さと物理演算の自由度が、このゲームを他のローグライトとは全く異なる体験にしている。
開発元のNolla Gamesは3人のフィンランド人ゲーム開発者によって設立された小さなスタジオだ。メンバーのうちPetri Purhoは「Crayon Physics Deluxe」の開発者として知られており、物理演算への強いこだわりがNoitaのコアコンセプトに直結している。もう一人のAllu Paistiainen(Ahnfelt)はOuluの大学でコンピューターサイエンスを学んだプログラマーで、Noitaの物理演算エンジンを独自に構築した。開発エンジンはUnityでもUnreal Engineでもなく、完全に自社開発のものだ。
ゲームの受賞歴も注目に値する。2019年のインディーゲームフェスティバルでは技術部門のファイナリストに選出され、2020年のゲーム開発者チョイスアワードでも技術部門にノミネートされた。「すべてのピクセルが物理演算される」というコンセプトは、技術的な観点からも業界で高く評価されている。
主な特徴をまとめるとこうなる。
- ピクセルベースの物理演算(火、水、油、酸、毒など全素材がリアルタイムでシミュレート)
- プロシージャル生成ワールド(毎回異なるマップ)
- カスタマイズ可能なワンドとスペルの組み合わせシステム
- パーマデスのローグライト構造
- 8つの主要バイオームと多数の隠しエリア
- 複数のエンディングと膨大な隠しコンテンツ
- 1プレイヤー専用(マルチプレイなし)
ゲームシステムの詳細

Noitaのゲームシステムは複数の要素が絡み合う複雑な構造を持っている。その中でも特に重要なのが、物理演算システム、ワンドとスペルのカスタマイズ、パークシステム、そしてバイオームの構造だ。それぞれを順番に掘り下げていく。
物理演算システム:すべてのピクセルが生きている
Noitaの物理演算は「Falling Sand」という古典的なゲームジャンルを現代的に進化させたものだ。画面上のすべての素材、土、石、水、溶岩、油、砂、粉塵、ガス、そして炎まで、ひとつひとつがリアルタイムでシミュレーションされている。このシステムがゲームプレイに与える影響は計り知れない。
たとえば火を使った魔法を撃つ場合を考えてほしい。普通のゲームなら「火の魔法を撃つ→敵が燃える→ダメージ」という単純な流れだ。Noitaでは違う。炎は周囲の燃えやすい素材に延焼する。壁の木材は燃え、床の草は燃え広がり、近くの草から滲み出た水分は蒸発してスチームになる。燃えた素材は炭化し、炭は別の反応を起こすことがある。しかも、その炎はプレイヤー自身にも延焼する。
液体の挙動も本物の物理法則に近い形でシミュレートされる。水は低い場所に流れ込み、油は水の上に浮かぶ。溶岩は重く、下に沈み込みながら周囲を燃やす。複数の液体が混ざると化学反応が起きることもある。水と油が同じ場所にあると分離するが、そこに炎が触れると一気に燃え上がる。
この物理演算は戦術的な可能性を無限に広げると同時に、プレイヤーに予期しない危険をもたらす。よくある死亡パターンをいくつか挙げると理解しやすい。
地下の鉱山エリアで大きな爆発魔法を使ったら、天井の岩が崩落してきて圧死した。水が溜まっている場所で電気魔法を使ったら、導電性の水を通じて自分にもダメージが来た。油の池の近くで戦っていたら、火を使う敵が油に引火させて一瞬で炎に包まれた。上のほうにある溶岩プールの底を爆発で吹き飛ばしたら、大量の溶岩が滝のように降ってきた。これらはすべて物理演算の結果であり、ゲーム側が意図的に仕掛けたトラップではない。プレイヤー自身の行動が引き起こした結果だ。
素材にはそれぞれ固有の物理特性がある。主要な危険物質をいくつか挙げると、溶岩(Lava)は接触するだけで大ダメージを与え、飲み込むと「内部炎症」状態になってどんな手段でも消火できない。毒液(Toxic Sludge)は放射能汚染物質で、浸漬すると継続ダメージを受ける。酸(Acid)は周囲の素材を溶かし、プレイヤーの体も溶かす。これらの液体が複合的に存在するシチュエーションは珍しくなく、地形をよく観察しながら進むことが求められる。
ワンドとスペルのシステム:魔法を設計する
Noitaの最大の特徴のひとつがワンド(杖)とスペル(呪文)の組み合わせシステムだ。このシステムの深さが、ゲームに無限のリプレイ性をもたらしている。
プレイヤーは最大4本のワンドを同時に持つことができる。各ワンドにはスペルスロットがあり、そこにスペルを差し込んで魔法を組み立てる。スペルは探索中に拾ったり、聖なる山のショップで購入したりして入手する。
ワンドには複数のパラメータがある。中でも重要なのが「シャッフル」の有無だ。シャッフルがオンのワンドは、発射するたびにスペルの順番がランダムに入れ替わる。シャッフルがオフのワンドは、左から右へ順番にスペルを発動する。複雑なコンボを作るためにはシャッフルオフのワンドが基本的に好まれる。
他の重要なパラメータには「スペル/キャスト」(一度に何個のスペルを発動するか)、「キャスト遅延」(連続発射の間隔)、「チャージタイム」(スペルデッキが空になってから再充填するまでの時間)、「マナ最大値」と「マナ充填速度」、そして「スペルスロット数」がある。これらの数値がワンドの性能を定義する。
スペルにも種類がある。基本的な「射出スペル」(火の玉を飛ばす、氷を放つなど)に加えて、「モディファイアスペル」と呼ばれる修飾魔法が存在する。これはその後に来るスペルの挙動を変化させるもので、たとえば「ホーミング」というモディファイアを射出スペルの前に置くと、その弾丸が自動追尾するようになる。「爆発」モディファイアを加えると着弾時に爆発が発生する。複数のモディファイアを重ねることで、単体のスペルでは不可能な複雑な効果を生み出せる。
さらに「マルチキャスト」スペルというカテゴリがある。これは複数のスペルを同時発動させる特殊なスペルで、うまく組み込むとワンド1発で複数の魔法を同時に放つことが可能になる。上級者のワンド構成にはほぼ必ずマルチキャストが含まれており、このシステムを使いこなせるかどうかでゲームの難易度が大きく変わってくる。
ワンドの改造はゲームの核心的な楽しみのひとつだ。新しいスペルを拾うたびに「これをどのワンドに組み込むか」「既存のコンボと組み合わせると何が起きるか」という思考が走る。理想のワンド構成を作り上げたときの達成感は、他のゲームではなかなか味わえない種類のものだ。
重要な制限として、ワンドの改造ができるのは「聖なる山」の中だけだ。通常の探索中はワンドにスペルを出し入れすることができない。聖なる山の天井が崩壊すると、その山でのワンド改造ができなくなる点にも注意が必要だ。
パークシステム:キャラクターの強化
パークはキャラクターに恒久的な特殊能力を付与するシステムだ。各聖なる山には祭壇があり、そこで3種類のパークから1つを選択できる。選ばなかった残りの2つは消える。気に入ったパークがなければゴールドを消費してリロールすることもできる(初回200ゴールド、以降倍増)。
パークの種類は非常に多彩で、大きく分けると防御系、攻撃強化系、移動系、特殊効果系に分類できる。
防御系では「火炎免疫」「電気免疫」「近接攻撃免疫」などの属性耐性パークが安定性を大きく向上させる。特に火炎免疫は自分の魔法による自爆を大幅に減らしてくれるため、多くのプレイヤーが優先的に取得する。
攻撃強化系では「弾の複製」(射出したスペルが複製される)、「ホーミング」(すべての弾が自動追尾する)などがある。これらはワンド構成との相性次第で爆発的に強くなる。
特殊なパークとして「テレポーティティス」がある。これはランダムなタイミングでプレイヤーが瞬間移動するという効果で、一見デメリットに見えるが、うまく使えばボスの攻撃を回避し続けることができる。こういった「デメリットとも取れる能力をどう活かすか」という発想がNoitaのパークシステムの醍醐味でもある。
パークの中には複数回取得できるものもある。たとえば「Permanent Shield(永続シールド)」は取得するたびにシールドの層が増える。「Lukki Mutation(蜘蛛変異)」は追加の脚が生えてきて、取得するたびに脚の数が増えていく。こういったビジュアルの変化もNoitaらしい面白さだ。
バイオームとワールド構造
Noitaのワールドは縦に深く伸びた構造をしている。プレイヤーは上から下へと掘り進んでいく形で探索を進める。
メインパスには8つのバイオームがある。最初のMinor Mines(小鉱山)から始まり、Mines(鉱山)、Coal Pits(炭坑)、Snowy Depths(雪深き奥地)、Hiisi Base(ヒイシ族の基地)、Underground Jungle(地下ジャングル)、The Vault(金庫)、Temple of the Art(芸術の神殿)と続き、最深部のThe Laboratory(研究所)でゲームのクライマックスを迎える。
各バイオームには固有の敵、素材、危険物が存在する。鉱山では石と土と水が主な素材で、ゴブリン系の敵が出現する。炭坑では木炭と火薬が多く、引火に気をつける必要がある。雪深き奥地では氷の床が滑りやすく、凍結効果を持つ敵が多い。ヒイシ族の基地は武装した人型の敵が多く、銃を持つ敵も登場する。地下ジャングルは有機的な地形と毒を使う生物が特徴だ。
バイオームには「バイオームモディファイア」という追加要素が付くことがある。プロシージャル生成によってランダムに付与されるもので、たとえば「弾丸減速」(すべての射出物の速度が落ちる)や「洪水」(エリアが徐々に液体で満たされる)などが付くと、同じバイオームでも全く違う戦略を強いられる。
メインパスの脇には多数の分岐エリアが存在する。砂漠、湖、雪原、森などの「表面エリア」もあり、地下世界の外を探索することもできる。これらのサイドエリアには強力なアイテムや謎の施設が隠されていることが多い。
各バイオームを繋ぐ「聖なる山」は、ゲームの重要な安全地帯だ。ここでは敵が出現せず、ショップでワンドやスペルを購入でき、パークを選択できる。また、ここに来るたびにプレイヤーのHPが最大まで回復する。聖なる山は探索の疲れを癒す場所であり、次のバイオームに向けて装備を整える場所でもある。
敵の種類と派閥システム
Noitaには多様な敵が登場する。コウモリ、スライム、蜘蛛、トカゲ、ゴブリンといった基本的な生物から、銃で武装したヒイシ族、電撃を放つロボット、魔法を操るシャーマンまで、バイオームごとに異なる脅威が存在する。
特筆すべきは「派閥システム」だ。ゲーム内の敵は複数の派閥に分かれており、異なる派閥の敵は互いに敵対する。つまり、意図的に異なる派閥の敵を同じ場所に誘い込めば、敵同士が戦い始める。プレイヤーはその混乱に乗じて安全に進めるか、弱った残党を片付けるだけで済む。この派閥システムを活用した戦術はNoitaの上級テクニックのひとつだ。
ロボット系の敵は「爆発、電気、集中マナ以外のほとんどのダメージタイプに耐性がある」という特殊な仕様を持ち、通常の攻撃では倒しにくい。こういった敵固有の弱点を把握することも、深部への攻略には欠かせない知識となる。
真の知識のオーブとエンディング
ゲームには「真の知識のオーブ(Orbs of True Knowledge)」というコレクタブルアイテムが存在する。これらはゲーム世界各地の特定の場所に隠されており、拾うと新しい魔法と知識の断片が得られる。
メインワールドには11個のオーブが存在し、それぞれ異なる場所に隠されている。ピラミッドの頂上、砂の洞窟の底など、通常の攻略ルートを外れた場所にあるものが多い。オーブを初めて拾うと固有の魔法が解放され、2個目以降は最大HPが25増加する。
ゲームの目標は最深部の研究所でSampo(サンポ)という機械仕掛けの神器を手に入れることだ。サンポを取るとそれまで眠っていた最終ボス「Kolmisilmä(コルミシルマ)」が目覚め、戦闘が始まる。コルミシルマはフィンランド語で「三つ目」を意味し、蜘蛛のような大型の生物として描かれている。
このボスの強さはプレイヤーが集めたオーブの数に応じて変化する。オーブをひとつも持っていなければ比較的倒しやすいが、11個すべてを持っていると体力が131,481にまで膨れ上がり、攻撃パターンも大幅に増加する。力を蓄えて挑むほど難しくなるという逆説的な設計が面白い。
エンディングはオーブの数によって分岐する。オーブなしで倒せば通常エンディング、5個以上でニューゲームプラスへ移行、11個すべてを集めた上で特定の条件を満たすと「真のエンディング」が解放される。さらに平行世界まで探索して36個のオーブを集めると特別なエンディングが待っている。
ニューゲームプラスとループ構造
Noitaには死によるリセットとは別に、ゲームをクリアした後にニューゲームプラスへ移行する仕組みがある。サンポを入手した後、最後のポータルに進む代わりに特定の祭壇にサンポを置くと、次のループが始まる。
ニューゲームプラスでは敵の体力と攻撃力が増加し、マップの一部が変化する。プレイヤーが得ているワンドやスペルは引き継がれるため、前ループで育てた装備力をフル活用して挑む形になる。理論上28回のループが可能で、最高難度のループでは最終ボスが驚異的なHPを持つ。この際限なき難易度のエスカレーションが、トッププレイヤーたちの長期的な目標になっている。
Noitaが人気な理由
Noitaが発売から数年経っても根強い人気を維持している理由は、いくつかの特別な要素が組み合わさっているからだと思う。
「予測不能」が面白さの本質
Noitaの死因の多くは「こんなことが起きるとは思わなかった」という驚きを伴う。それはゲームが理不尽なのではなく、物理演算とプレイヤーの行動が組み合わさって本当に想定外の結果を生むからだ。爆発が連鎖する、液体が流れ込む、炎が予期しない方向に広がる。この「物理世界の驚き」は他のゲームでは体験できない種類のものだ。
プレイヤーがその物理演算を理解し、逆用できるようになってくると、今度は「こんなことができるとは思わなかった」という驚きに変わる。敵の放った炎を誘導して別の敵に当てる、液体の流れを利用して遠くの敵を流す、爆発の反動を利用して高くジャンプする。可能性の発見が報酬になるゲームだ。
ワンド構築の深さが生む達成感
ワンドとスペルの組み合わせの自由度は、理論上ほぼ無限に近い。初心者のうちは「とりあえず強そうなスペルを詰め込む」という戦略になりがちだが、経験を積むにつれて「このモディファイアとこのスペルを組み合わせると、こんな効果が出る」という知識が蓄積されていく。
理想のワンド構成を作り上げてボスに挑み、圧倒的な強さで蹂躙できたときの快感は格別だ。「自分でデザインした魔法で戦う」という感覚はこのゲームにしかない。Steamのレビューでよく見られる「気づいたら100時間以上プレイしていた」というコメントは、このワンド構築の沼にはまった人たちのものだ。
底が見えない探索の深さ
表面上のゲームクリアは、Noitaの全容のほんの入り口に過ぎない。メインパスの攻略だけで数十時間はかかるが、その後に見えてくる隠しコンテンツの量は驚異的だ。平行世界へのアクセス方法、複数のシークレットエリア、隠しボス、特殊なエンディング条件、意味深な絵文字や碑文が示す謎の儀式など、発売から数年が経った今もコミュニティでは新しい発見の報告が続いている。
Noitaの謎を解き明かすことに特化したプレイヤーたちは「Noita-dear」と呼ばれ、世界中のプレイヤーが協力してゲームの秘密を掘り起こしてきた。これほど長期間にわたってコミュニティが謎解きを楽しんでいるゲームは珍しい。
毎回違う体験
プロシージャル生成によって毎回異なるマップが生成されるため、何度プレイしても同じ体験にならない。バイオームの形状、スペルの出現場所、ショップのラインナップ、バイオームモディファイアの有無、これらすべてがランダムに変化する。同じルートで毎回クリアするという戦略が成立しないため、どんな状況でも対応できる柔軟な思考力が常に求められる。
技術的な独自性
すべてのピクセルが物理演算されるという技術的なコンセプトは、それ自体が大きな魅力だ。水を注ぐと地形に溜まる、油に火をつけると激しく燃え上がる、爆発で壁が崩れる、これらの挙動がグラフィックエフェクトではなく本当の物理シミュレーションの結果だということが、ゲームに独特のリアリティを与えている。
また、完全自社開発のエンジンで動いているため、他のゲームエンジンでは実現が難しいこの大規模なピクセル物理演算が可能になっている。技術的な観点からゲームを評価する人にとっても、Noitaは特別な位置を占めるゲームだ。
プレイ前に知っておくべき注意点

Noitaを始めるにあたって、事前に知っておくべきことがいくつかある。これらを把握した上でプレイ開始すれば、不必要な挫折を避けられるはずだ。
最初の数十時間は「死んで覚える」ゲーム
Noitaにはまともなチュートリアルがない。操作の基本こそ説明されるが、物理演算の挙動、ワンドシステムの詳細、危険な素材の性質、バイオームごとの敵の特徴、こういった情報はプレイヤーが自力で発見するしかない。最初のうちは理由もわからず死ぬことを繰り返すことになる。
重要なのは「なぜ死んだかを観察する」ことだ。自分の魔法が自分に当たって死んだのか、液体に触れて死んだのか、敵の攻撃を受けて死んだのか、毎回の死因を意識することでゲームの理解が深まっていく。ゲームに「なぜ死んだか」を表示するシステムはないため、自分で考えながらプレイすることが大切だ。
自爆に注意
Noitaプレイヤーの死因ランキングを作れば、間違いなく上位に入るのが「自分の魔法による自爆」だ。特に爆発系の魔法を使うとき、壁や床に近い距離で撃つと爆発のダメージが自分に返ってくる。炎系の魔法も周囲に引火するため、狭い洞窟の中で使うと自分が燃える羽目になる。
スペルには「跳ね返り(Bouncing)」のモディファイアが付いていることがあり、これを理解せずに使うと自分に跳ね返ってくる。また、強力なスペルほど「ダメージが自分にも適用される」仕様のものがあるため、強いスペルを見つけたからといって無条件に使えばいいわけではない。
序盤は遠距離から安全な角度で撃つことを意識するだけで、生存率がかなり上がる。
情報収集はwikiを活用して
ゲーム内での情報開示が少ないため、wikiを活用することを強く推奨する。noita.wiki.gg(英語)には素材の性質、スペルの効果、パークの詳細、バイオームの構造など、ゲームの重要な情報が網羅されている。すべてを丸暗記する必要はないが、困ったときに参照できる知識の場所を把握しておくと心強い。
日本語の攻略情報も存在するが、英語版に比べると情報量は少ない。ゲームの深い部分を攻略したい場合は英語の情報源も視野に入れておくといい。
液体の挙動には常に注意
物理演算ゲームならではの注意点として、液体の挙動は常に把握しておく必要がある。特に上方向への注意が重要で、床を爆発で吹き飛ばすと下の層まで落ちてしまうし、天井を破壊すると上の層の液体が流れ込んでくる。
水はほぼ無害だが、電気魔法を使う場合は水場での戦闘を避けないと感電する。油は火気厳禁だ。溶岩は何があっても触れてはいけない。毒液もできる限り避ける。こういった基本的なルールを体に叩き込んでおくだけで序盤の生存率が大きく変わる。
聖なる山を大切に
聖なる山は安全地帯であり、ワンドを改造できる唯一の場所だ。ここで爆発魔法などを不用意に使って天井を壊すと、その山でのワンド改造が不可能になる。さらに聖なる山を壊すと次のバイオームに向かう際にパーク選択もできなくなる。聖なる山の中では素材が飛び散るような魔法の使用を控えることを覚えておいてほしい。
また、聖なる山のショップで購入できるワンドやスペルは貴重だ。ゴールドには限りがあるため、本当に必要なものを見極めて購入することが大切になる。特にスペルスロット数が多く、シャッフルなしで、キャスト遅延が短いワンドは優先的に押さえておく価値がある。
ゲームの「謎」はネタバレに注意
Noitaには数多くの隠しコンテンツと謎が存在し、それらを自力で発見する楽しさがゲームの大きな魅力のひとつだ。攻略情報を調べる際は、必要な情報だけを調べて残りは自力で発見するようにすると、ゲームの楽しみが大幅に増す。特に特殊なエンディングへの条件や隠しボスの存在などは、できれば自力で発見してほしい。
初心者へのアドバイス
Noitaを始めたばかりの人が最初に感じるのは、おそらく「何が起きているかわからない」という混乱だろう。ここでは、最初の壁を乗り越えるために役立つアドバイスをまとめた。すべてを一度に覚えようとしなくていい。まずは試してみて、少しずつ理解を深めていけばいい。
最初はとにかく慎重に動く
Noitaは突っ込んでいくゲームではなく、慎重に状況を見極めながら進むゲームだ。特に序盤は体力が少なく、ちょっとしたミスで死んでしまう。敵に気づかれる前に先手を取る、液体が溜まっている場所を避ける、爆発物の近くで戦わない、これだけでも序盤の生存率がかなり上がる。
焦って前に進もうとするより、現在のバイオームを丁寧に探索してアイテムを集めるほうが、長期的には攻略が早くなる。金があれば強いスペルやワンドが手に入るし、強いスペルがあれば次のバイオームを安全に進める。
序盤に狙うべきこと
鉱山の最初のバイオームを進む段階で意識しておきたいことがある。まず、聖なる山に到着する前に十分な量のゴールドを集めておくことだ。ショップで売っているワンドやスペルを1〜2個購入できる余裕があると、次のバイオームへの備えが大きく変わる。
パーク選択の際、序盤は防御的なパークを優先するのが安定への近道だ。「火炎免疫(Fire Immunity)」は自分の炎魔法による自爆を防ぎ、「電気免疫(Electricity Immunity)」は水場での感電を防ぐ。これらはあれば安心感が大きく変わるパークだ。
ワンドを改造する際は、まずシャッフルのオン・オフを確認する習慣をつけよう。シャッフルなしのワンドは予測可能な動作をするため、スペルの組み合わせを設計しやすい。初心者のうちはシャッフルなしのワンドを優先して使うと扱いやすい。
地形を活用することを意識する
Noitaでは地形を積極的に活用することが大切だ。穴を掘って敵から逃げる、高台から一方的に攻撃する、水のある場所で火を使う敵をおびき寄せる、こういった発想は他のゲームでは思いつきにくいが、Noitaでは基本的な戦術のひとつだ。
爆発系のスペルを持っていたら、壁を破壊して迂回路を作ることもできる。強い敵がいる場所を避けて別ルートで進むという選択肢は常にある。正面から戦うだけがNoitaではない。
ポーション(フラスコ)の使い方を覚える
ゲーム内にはさまざまな素材が入ったフラスコ(瓶)が落ちている。内容物によって用途は異なるが、覚えておきたいのは水の入ったフラスコの扱い方だ。自分が燃えているときに水のフラスコを使うと消火できる。また、毒状態を解除するためにも水が役立つことがある。
フラスコの内容物は拾う前に確認する習慣をつけよう。有害な液体が入っているフラスコを誤って使うと自滅する場合がある。フラスコにカーソルを合わせると内容物の名前が表示されるため、水、血液、毒液の区別は事前に確認できる。
死因から学ぶ習慣をつける
Noitaで成長するための最も大切なことのひとつは「なぜ死んだかを考える」ことだ。死亡後に表示されるデスサマリーには、最後に受けたダメージの種類が表示される。「fire」なら炎によるダメージ、「projectile」なら弾丸によるダメージ、「explosion」なら爆発によるダメージだ。
この情報を元に「次はどう対処できたか」を考えることで、同じミスを繰り返す回数が減っていく。死は終わりではなく、ゲームへの理解を深めるための情報だと捉えよう。この考え方ができるようになると、Noitaの難しさがゲームの醍醐味として感じられるようになる。
コミュニティを活用する
Noitaのコミュニティは活発で、初心者向けのガイドも豊富だ。SteamのNoitaコミュニティハブやNoita subredditでは、プレイヤーたちが自分のワンド構成を共有したり、謎について議論したり、初心者の質問に答えたりしている。詰まったときや、もっと深く知りたいときはコミュニティを覗いてみることをおすすめする。
ただし、隠しコンテンツや謎についてはネタバレに注意する必要がある。知りたい情報だけを絞って調べるようにすると、自力での発見の楽しみを残しながら攻略の助けを得られる。
楽しみ方は人それぞれでいい
Noitaはとにかく深いゲームで、すべてを攻略しようとすると気が遠くなる。でも、すべてを知らなくても楽しめる。物理演算で遊ぶだけでも面白いし、強いワンドを作って無双するだけでも面白いし、謎の解明に挑戦するのも面白い。自分の楽しみ方を見つけることが一番大切だ。
最初は「なにもわからない」という混乱の時間が続くかもしれない。でもその混乱の向こう側に、他のゲームでは絶対に味わえない体験が待っている。その体験にたどり着くまでの過程を、できれば楽しんでほしいと思う。
まとめ
Noitaは「すべてのピクセルが物理演算される」というたったひとつのコンセプトを徹底的に追求した、狂気的なほどに深いローグライトゲームだ。
このゲームを一言で表すなら「自分の行動が世界に影響し、世界の反応が自分に返ってくるゲーム」だと思う。火は燃え広がり、水は流れ、爆発は地形を変える。魔法を撃つとは、物理現象を起こすことだ。その結果は常に予測通りではなく、それが死因にもなれば突破口にもなる。
ワンドとスペルの組み合わせシステムは、理論上無限に近い構成を可能にする。初めは「とりあえず強そうなもの」を詰め込むだけだが、経験を積むにつれて「このスペルとこのモディファイアを組み合わせたら」という発想が生まれる。理想のワンドを作り上げてボスを蹂躙したとき、その魔法は自分でデザインしたものだという実感がある。それがこのゲームの核心的な楽しさだ。
難しいゲームであることは間違いない。序盤の理解が追いつかない段階では、理由もわからず死ぬ経験が続く。しかし、死から学んで少しずつ生存時間が延びていく過程に確かな成長感があり、その成長感がプレイヤーを引き留め続ける。Steamのレビューで何百時間のプレイ時間を持つプレイヤーが「まだまだ終わらない」と書いているのは、誇張でも比喩でもない。
さらにゲームの表面を超えた先には、コミュニティ全体で取り組んでも解明しきれないほどの謎と隠しコンテンツがある。メインのクリアがゴールではなく、クリアは別の旅の始まりに過ぎない。そういうゲームだ。
向いている人には、間違いなく人生の中で特別な体験になるゲームだと思う。2,050円という価格で、何百時間もの遊びと数えきれない驚きが手に入る。迷っているなら、試してみる価値は十分にある。
ただ最初の死亡は覚悟してほしい。おそらく自分の魔法で自爆する。それがNoitaへの洗礼だ。
Noita
| 価格 | ¥2,050 |
|---|---|
| 開発 | Nolla Games |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows |
| プレイ形式 | シングル |

