「Middle-earth: Shadow of War」指輪物語の世界で、自分だけのオーク軍団を作る復讐劇

最初にオークの将軍に殺されたとき、正直「ああ、やり直しか」と思った。ところがそいつは次に会ったとき、名前を覚えていた。「また会ったな、人間め。お前に殺されかけた傷が疼くぞ」——そう言って笑いながら突っ込んでくる。こちらの手が少し震えた。恐怖ではなく、興奮で。

Middle-earth: Shadow of War は、トールキンの指輪物語世界を舞台にした、アクションRPGだ。2017年にWB Gamesからリリースされ、Steamでは現在も好評を維持している。前作「Shadow of Mordor」で好評を博した「ネメシスシステム」をさらに進化させ、単純な「倒して進む」ゲームではなく、「倒したオークを仲間にして、オーク同士の政治と裏切りを楽しむ」という独自の体験を作り上げた。

ゲームの主人公はレンジャーのタリオン。彼は指輪の幽鬼ケレブリンボールの霊魂と融合した存在として、サウロンの軍勢に立ち向かう。「力の指輪」を自ら鍛造し、モルドールの要塞を一つずつ攻略していく物語だ。しかし最大の醍醐味は物語の先にある——自分だけのオーク軍団を育て、改造し、裏切られ、また鍛え直す、その繰り返しの中毒性にある。

Steam での総プレイ時間を見ると、100時間・200時間・500時間と積み上げているプレイヤーが大勢いる。「ストーリーが終わっても遊び続けている」というゲームの筆頭格だ。その理由は後述するが、一言で言えば「飽きない仕組みが根本設計に組み込まれている」からだ。普通のゲームは「終わったら終わり」だが、Shadow of War は「終わってからが本番」という構造を持っている。

この記事では、Shadow of War のすべての面白さを余すところなく書いていく。「指輪物語は知らないけど気になっている」という人も、「前作をやったけど今作はどうだろう」という人も、読み終わるころには起動ボタンを押したくなるはずだ。

目次

こんな人に読んでほしい

Middle-earth™: Shadow of War™ その他RPG スクリーンショット1

Shadow of War は独特な魅力を持つゲームだが、刺さる人と刺さらない人がかなりはっきり分かれる。まずは「自分向けかどうか」を確認してほしい。

こんな人にぴったりはまる:

  • バットマン アーカムシリーズのような「爽快なステルス+格闘コンボ」が好きな人
  • 指輪物語・ホビットの世界観が好きな人(原作知識は不要)
  • 敵キャラクターに名前・個性・因縁を作りたい人
  • 「仲間を育てて軍団を強化する」ストラテジー要素が好きな人
  • オープンワールドをステルスで縦横無尽に駆け回りたい人
  • 「倒したのに負けた相手がパワーアップして復讐に来る」ような熱い展開が好きな人
  • 一周では終わらない、周回・強化要素が豊富なゲームを探している人
  • 「失敗が物語になる」設計のゲームが好きな人
  • ゲームを通じて「語れる体験」を積みたい人

向いていないかもしれない人:

  • 正統な指輪物語のストーリーを期待している人(原作とは大きく異なる設定がある)
  • ゆったりとした探索・会話主体のRPGが好きな人
  • 難易度が固定されていないと落ち着かない人(ネメシスシステムで敵の強さが動的に変わる)
  • リリース当初の課金要素が今も気になっている人(後述するが現在は実質解消済み)
  • 明確な「クリア」ゴールを設定したいプレイヤー(エンドコンテンツが長い)

一言で言うなら「オーク軍団を作って育てて、サウロンの要塞を力攻めで落とすゲーム」だ。ただしその過程で必ず「手痛い裏切り」「予想外の因縁」「忘れられないオークとの物語」が生まれる。それがこのゲームの本当の面白さだ。

指輪物語の知識は必須ではない。「モルドールという暗い世界に、指輪の霊魂と合体したレンジャーが殴り込む話」という程度の理解で十分楽しめる。むしろこのゲームをきっかけに原作小説や映画に興味を持つ人も多い。

「PCゲームに初めて挑戦する人」にはどうかと言えば、戦闘の操作は覚えやすい部類に入るため、ゲーム自体への慣れがあれば問題ない。コントローラーにも対応しており、キーボード・マウスが苦手な人でも問題なく遊べる。ただしゲーム全体の難易度が低いわけではないため、アクションゲームの経験がまったくない場合は、難易度設定を下げて始めることを勧める。

ゲーム概要・特徴

Monolith Productions と Shadow of Mordor シリーズの歴史

Shadow of War を開発した Monolith Productions は、1994年創業のアメリカのゲームスタジオだ。かつては「Blood」「No One Lives Forever」などで知られていたが、2004年にWB Games(Warner Bros. Interactive Entertainment)傘下に入り、2014年にリリースした「Middle-earth: Shadow of Mordor」で大きく注目を集めた。

Shadow of Mordor は「ネメシスシステム」という新概念を引っ提げてリリースされ、The Game Awards 2014で「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。敵オークに名前と個性が生成され、プレイヤーとの因縁によって成長・変化するというこのシステムは「ゲームデザインの革命」と呼ばれた。Monolith はこのシステムで特許も取得している。

その続編として2017年にリリースされたのが Shadow of War だ。前作のネメシスシステムをさらに拡張し、「要塞防衛・攻略」という新たな要素を加えた。マップも大幅に拡大し、前作では1つだった地域が複数の独立した要塞地帯に分かれた。ゲームのスケール感は前作の比ではなく、攻城戦の迫力は当時のアクションゲームの中でもトップクラスだった。

リリース直後は課金要素(有料の宝箱・マーシーオークの販売)に対して強い批判が集まり、Metacritic スコアも当初の期待値より低めになった。しかし2018年7月にリリース後アップデートで有料マーケットプレイスを完全撤廃。現在はゲーム内ゴールドのみで全てのコンテンツにアクセスできる状態になっている。現在のSteamレビューは「おおむね好評」を維持しており、課金問題が解決した後は再評価が進んでいる。

2023年にはMonolith Productionsが新作「Wonder Woman」を発表。そこでもネメシスシステムの採用が示唆されており、このシステムが同スタジオのアイデンティティとして継承されていることがわかる。「ネメシスシステムを作ったスタジオの次作」という期待感もあり、Shadow of War は「ネメシスシステムとはどういうものか」を知るための最良のタイトルとして今でも注目されている。

舞台:指輪物語の世界「中つ国」

Shadow of War の舞台は、J.R.R.トールキンが創造した世界「中つ国(Middle-earth)」だ。主にサウロンが支配する暗黒の地「モルドール」とその周辺が舞台になる。

モルドールという場所は、指輪物語において「絶対的な悪の根城」として描かれている。黒山羊の険しい山々、岩と溶岩の荒れた大地、常に火山の煙が立ち込める空——生物が本来住めないはずの場所に、サウロンが支配するオークの軍勢が溢れている。Shadow of War はその場所の中を実際に走り回れるゲームとして、指輪物語ファンにとっての「夢の体験」を提供している。

主な舞台となるエリアは複数に分かれている。

  • ミナス・イシル(Minas Ithil):かつて人間の砦だった場所。序盤の舞台で、サウロンに攻め落とされる様子が描かれる。後に「ミナス・モルグル(死者の都)」と呼ばれる廃墟へと変貌する
  • ゴルゴロス(Gorgoroth):モルドールの溶岩地帯。サウロンの要塞が点在する。荒廃した大地と噴煙が視覚的な重圧を与える
  • ナーン(Nurn):モルドール内部の農業地帯。奴隷たちが住む異様に緑が多い地域。他のエリアとの景色の落差が印象的
  • セレゴスト(Seregost):DLCエリア。氷と雪に覆われた北方の砦。冬景色がモルドールとは対照的な雰囲気を生む
  • ドムカラズ(Gorgoroth 深部):最終盤の戦いが繰り広げられる地域

また、ゲームには指輪物語の有名キャラクターが多数登場する。シェロブ(巨大蜘蛛)が謎めいた女性の姿で現れる設定や、ガラドリエルへの言及など、原作ファンにはニヤリとさせられる描写が随所にある。一方、原作と大きく異なる設定・展開も多く、そこを気にする熱心なトールキンファンもいる。「ゲームオリジナルの解釈」として楽しめるかどうかが一つの分岐点だ。

世界観のビジュアルは暗く荒涼としている。荒廃した砦、噴煙を上げる火山、残酷な奴隷制度——明るいファンタジーではない。それでもその中に「小さな希望」と「人間の意志」が描かれており、ストーリーは意外と感情を動かしてくる。モルドールというゲームの舞台が「絶望的な場所」であることが、そこで奮い立つ主人公の存在感を際立たせている。

主人公タリオンとケレブリンボール

主人公タリオン(Talion)はゴンドールのレンジャー(斥候)だ。妻と息子を殺され、自身も殺害されたが、黒の手(ブラック・ハンド)という儀式の際にエルフの指輪職人ケレブリンボール(Celebrimbor)の霊魂と融合することで死から蘇った。

タリオンは「生きているが死んでもいない」という奇妙な存在として、モルドールを駆け回る。ケレブリンボールは力の指輪の創造者であり、その霊魂との融合がタリオンに超常的な力を与えている。壁を駆け上る機動力、敵の心を読む透視能力、オークを支配する指輪の力——これらはすべてケレブリンボールの霊魂から来ている。

この二人の関係がストーリーの軸になる。互いの目的は完全には一致しておらず、その齟齬と信頼がゲームを通じて描かれていく。「復讐を果たしたいタリオン」と「サウロンへの対抗手段として指輪の力を利用したいケレブリンボール」——二人の葛藤がラストに向けて収束していく展開は、単純なヒーローアクションにない深みを生んでいる。

プレイヤーはタリオンを操作しながら、ケレブリンボールの霊魂として飛び回ることもできる。ステルス中のファントム移動、敵の心を読む力、指輪による支配——これらすべてがケレブリンボールの霊魂との融合から来ている。

タリオンというキャラクターは、前作 Shadow of Mordor から引き続き登場する主人公だ。前作をプレイしていると「タリオンとケレブリンボールがなぜ融合しているのか」という背景が最初からわかるため、物語への感情移入がより深くなる。ただし、今作から始めても問題なく楽しめるよう物語は設計されており、必ずしも前作のプレイが必要なわけではない。

ゲームシステム詳細

Middle-earth™: Shadow of War™ その他RPG スクリーンショット2

ネメシスシステム:記憶するオークたち

Shadow of War 最大の特徴がこのネメシスシステム(Nemesis System)だ。一言で説明するなら「敵オークが記憶を持ち、プレイヤーとの因縁によって成長・変化する」という仕組みだ。

モルドールのオークにはそれぞれランダムで生成された「名前」「性格」「弱点」「得意技」が設定されている。例えば「スラグボル・クソ野郎(Shagbûl the Filth)」というオークが居たとして、彼は「炎が苦手」「毒耐性が高い」「格闘戦が得意」「臆病な性格」というデータを持っている。これは毎回ゲームを起動するたびにランダムに生成される。

このオークと戦って倒すと、次回以降そのオークは死亡して消える。ただし完全には倒せずに逃げた場合、そのオークは「傷を負った経験」を記憶して戻ってくる。「またお前か!前回は頭をぶたれた傷がまだ痛むぞ」などと言って現れる。そして彼のランクと強さが上がっていることが多い。

さらに重要なのが「タリオンが死亡した場合」の挙動だ。タリオンがオークに倒されると、そのオークは「タリオンを倒した」という実績を持ち、ランクが上がって「タリオン殺し(Bright Lord’s Bane)」などの称号を得る。次に会うときは「前回お前を殺したのは俺だ」と語りかけてくる。これが「ネメシス(宿命の敵)」の由来だ。

この仕組みが生む体験は、ゲームデザインとして非常に巧みだ。普通のゲームなら「ゲームオーバー」で終わる失敗が、Shadow of War では「因縁の始まり」になる。負けることが罰ではなく、物語の種になる。

ネメシスシステムの面白いところは「オーク同士にも関係性がある」点だ。あるオークが別のオークを倒せば昇格し、逆に誰かに倒されれば死亡する。タリオンが介入しなくても、オーク社会の中で勢力図が常に変化している。プレイヤーが見ていない間にも「世界が動いている」という感覚は、ゲームへの没入感を大きく高める。

プレイヤーはネメシスシステムを通じて、自分だけの「忘れられないオーク」を作り出す。ある人は「何度も死んだせいで10人の宿命の敵ができた」と笑い、またある人は「特定のオークが強すぎて因縁が深すぎて逆に部下にしたくなった」と語る。こうした体験は他のどのゲームでも得られない、Shadow of War だけの財産だ。

オークの支配と軍団構築

Shadow of War がシャドウ・オブ・モルドール(前作)から大きく進化させたのが「オーク軍団の構築」だ。タリオンとケレブリンボールは、特定の技術を使ってオークの心を支配できる。倒したオーク、または捕まえたオークを「仲間にする」ことが可能だ。

仲間にしたオークは「軍団(Warband)」に加えることができる。軍団は最終的に要塞攻略の中核戦力になる。強いオークを揃えた軍団ほど攻略が有利になるため、「どのオークを育てるか」という戦略的な選択が生まれる。

オークの役職はいくつかに分類される。

  • 将軍(Captain):個別に行動するオーク幹部。ネメシスシステムで最も絡みが深い相手
  • 護衛(Bodyguard):他の将軍や族長を守るオーク。先に護衛を倒さないと主への直接攻撃が難しい
  • 族長(Warchief):各要塞の上位指揮官。倒すと要塞の防衛力が下がる
  • 要塞主(Overlord):要塞の最高司令官。要塞攻略の最終目標

支配したオークは成長させることができる。ミッションをこなさせたり、格闘技会に参加させたり、「裏切り者の暗殺」に送り込んだりすることで経験値を積み、ランクが上がる。一方、自分の部下同士が対立することもあり、放置するとどちらかが消えることもある。

また、オークには「忠誠心」の概念がある。条件が合うと裏切りが発生する。「お前に軽蔑されたから離反する」「敵がもっといい報酬を提示したから乗り換えた」「俺の出世を邪魔したから恨んでいる」——人間的すぎる理由で裏切られることがあり、それがまた悔しくて面白い。

裏切ったオークを倒して再度支配することもできる。「裏切り者め、それでも俺の部下だ」と指輪の力で支配し直すのも一つの戦略だ。ただしその後も信用できないオークを重要ポジションに置くかどうかは、プレイヤーの判断に委ねられる。なお「一度裏切ったオークを再支配しても、また裏切る」というケースもある。それを知りながら使い続けるかどうか——そういう判断がゲーム内で生まれることが、このシステムの奥深さだ。

支配できるオークには「格付け(Tier)」があり、強いオークほど支配が難しい。高Tierのオークを仲間にするには、特定のスキルを解放したり、弱点を突いた上で戦闘を有利に進めたりする必要がある。「あの強いオークを仲間にしたい」という目標を立てると、そこへ向けた準備と戦略が楽しくなる。

要塞攻略システム:攻めと守りの戦略

Shadow of War のメインコンテンツの一つが「要塞攻略」だ。各地域に存在する要塞を攻略することで、そのエリアの支配権を得られる。攻略方法は大きく2段階に分かれる。

第一段階:準備フェーズ

要塞を攻略する前に、防衛力を削る準備が必要だ。

  • 族長を倒す(要塞の防衛隊長を排除)
  • 族長の護衛を排除する
  • 防衛拠点のカタパルトを破壊する
  • 防衛側のオークを自軍に寝返らせる(攻略中に内通させる)

こうした準備を丁寧にしておくほど、攻略が楽になる。逆に準備なしで突入すると数に圧倒されて死ぬ。準備をどれだけやるかは自由なので「縛りプレイ」として準備なしで突入する人もいる。

第二段階:攻城戦フェーズ

実際の攻略は「攻城戦」として始まる。自軍のオーク部隊と共に要塞門に突入し、防衛ラインを突破しながら要塞主を倒す。

この攻城戦はスケールが大きく、画面が乱戦状態になる。タリオン自身も高い戦闘能力を持っているため、敵を薙ぎ倒しながら前線を押し上げる爽快感がある。一方で要塞主は非常に強く、準備が不十分だと押し返されて失敗することもある。

攻城戦が始まると、要塞の各エリアで激しい戦闘が続く。タリオンは最前線に立って敵オークを蹴散らしながら、同時に自軍の将軍たちが各地で敵の防衛ラインと戦っている。「ここが抜かれそうだ」と感じたら駆け付けて支援する——この判断が要求されるため、攻城戦は単純なボタン連打では済まない。

逆に、自分の要塞が攻められることもある

攻略した要塞は自分のものになるが、今度はサウロン軍が奪還しに来る。自軍のオーク部隊で防衛ラインを敷き、内部にトラップを設置し、強い将軍を防衛責任者に配置する——要塞を「守る側」のプレイが必要になる。

攻略と防衛の繰り返しが、要塞ゲームとしての緊張感を生む。特にゲーム後半の「シャドウウォーズ」フェーズでは、強力なサウロン軍が波状攻撃を仕掛けてくる。この段階では要塞の構成・部隊の編成・防衛戦術が試される。

要塞の防衛には「要塞の強化」も必要だ。城壁を補強したり、トラップを増設したり、防衛担当のオーク将軍を厳選して配置することで防衛力が上がる。攻略するだけでなく「守り続ける」ことへの試行錯誤が、Shadow of War の後半を充実させている。

戦闘システム:コンボとフリーフロー

Shadow of War の戦闘は、バットマン アーカムシリーズと同じ「フリーフロー・コンボシステム」をベースにしている。Monolith は Arkham シリーズを多いにリスペクトしており、そのDNAが随所に感じられる。

基本的な戦闘の流れ

  • 通常攻撃:連続で当てるとコンボゲージが増加。高いコンボ数ほど強力な必殺技が使える
  • カウンター:敵の攻撃直前にカウンターボタンを入力するとアクションが発生。成功するとコンボが継続
  • エクゼキューション:コンボゲージ最大時に発動できる高威力フィニッシュ技。演出が格好よく、見ていて気持ちいい
  • 回避・ドッジ:敵の間隔をかいくぐる動き。大型敵や槍持ち相手には必須
  • グラウンドノック:敵を地面に叩きつけて一時的に行動不能にする技

タリオンは近接格闘以外にも弓矢、爆発物、スピリット技(ケレブリンボールの霊魂を使った攻撃)を持っており、状況に応じた使い分けが重要だ。弓矢は遠距離の敵を静かに処理するのに使え、スピリット技は広範囲の敵を巻き込む爆発的な攻撃だ。

ステルスの重要性

Shadow of War では正面からの突入だけでなく、ステルスも非常に重要だ。草むらや建物の陰に隠れ、敵一人ずつを静かに排除する「ステルスキル」は非常に爽快感がある。また、敵将軍を支配するためにも「誰にも気づかれずに接近する」ことが必要なケースが多い。

高所からの奇襲、壁面を駆け上がって移動、地下通路を使った回り込み——タリオンは非常に機動力が高く、戦場を三次元的に動き回れる。この機動性とステルスを組み合わせたプレイが、Shadow of War の最大の爽快感だ。

ステルス中は「透視能力(ケレブリンボールの視点)」を使って壁越しに敵の配置を確認できる。どこに何人の敵が居て、誰が将軍クラスか——これを事前に把握した上で動けるため、ステルスプレイは計画性を持って楽しめる。

スキルツリーと強化

タリオンは経験値を積むことでスキルポイントを得て、各種能力を強化できる。スキルツリーは複数の系統に分かれており、「ステルス重視」「正面突破重視」「オーク支配重視」など、プレイスタイルに合わせた育成が可能だ。

また装備品(指輪、剣、鎧、弓など)を収集・強化することで、基礎ステータスも向上する。後半になるほど敵が強くなるため、装備の更新は欠かせない。装備品にはレアリティがあり、高レアリティの装備は特殊な効果(「ステルスキル後にスタミナ回復」など)を持つ。装備の組み合わせでプレイスタイルをさらに尖らせることができる。

オークのキャラクター生成とランダム性

ネメシスシステムの裏側には、オークのプロシージャル生成がある。各オークには以下の要素がランダムで組み合わされる。

外見

  • 体型(小柄・普通・大柄・巨体)
  • 肌の色と傷の有無
  • 鎧や武器の種類
  • 仮面・兜の有無
  • タトゥーや紋章の有無

性格・特性

  • 戦闘スタイル(格闘派・弓矢派・毒使い・爆発物好き・騎乗戦闘など)
  • 弱点(炎・毒・ステルス・矢・恐慌 など)
  • 耐性(特定の攻撃が効きにくい)
  • 恐怖の対象(虫・野生動物・炎 など)を恐れる設定
  • 性格(臆病・傲慢・陽気・残忍・知略派 など)
  • 特殊能力(霊魂無効・自己回復・部下召喚 など)

セリフと語り口

  • 戦闘中の特定の台詞パターン(傷の経験・タリオンへの因縁)
  • 勝利時・敗走時の反応
  • 部下への命令口調
  • 自慢話の内容(「俺は橋で100人倒した」「俺は前の戦争を生き延びた唯一の奴だ」など)

これらの組み合わせで生成されるオークの数は事実上無限に近い。そのため、「全く同じオーク」に出会うことはほぼない。自分だけのオーク軍団は、文字通り世界に一つだけの存在だ。

特に高レアリティの「英雄オーク(Legendary Orc)」と呼ばれる個体は独自の紋章・称号・特殊能力を持ち、見た目にも豪華だ。こうしたオークを仲間にしたときの達成感は格別で、プレイヤー同士でも「俺のレジェンダリーオーク」自慢が盛んに行われている。

さらに、オークが「部族(Tribe)」に所属しているという要素もある。部族ごとに固有の見た目と戦闘スタイルの傾向があり、例えば「マシン族(Machine Tribe)」のオークは機械的な装備と爆発物を好む傾向があり、「恐怖族(Terror Tribe)」は心理的な戦術を使ってくる。同じ役職でも部族が違えばまったく異なる体験になる。

ストーリーと章構成

Shadow of War はメインストーリーが存在し、一本の筋が通っている。大まかな構成は以下の通りだ。

序章:指輪の鍛造と喪失
タリオンとケレブリンボールが新たな「力の指輪」を鍛造するところから始まる。しかしその指輪は直後にシェロブに奪われる。シェロブから指輪を取り戻すため、タリオンはモルドールへの本格的な進攻を開始する。シェロブは巨大な蜘蛛という原作の姿だけでなく、人型の謎めいた女性としても現れる。彼女の動機と思惑がゲーム全体を通じた謎の一つになる。

第1〜3幕:要塞攻略の旅
複数の地域の要塞を順番に攻略しながら、サウロンの支配を崩していく。各地域には固有のオーク将軍・族長・キャラクターが存在し、それぞれの物語が展開する。ゴラム(指輪物語の有名キャラクター)や複数の指輪の幽鬼(ナズグール)との対決もある。各地域のボスキャラクターはいずれも印象的なビジュアルと固有の物語を持っており、単なる「次の目標」ではなくドラマの登場人物として機能している。

第4幕:シャドウウォーズ
メインストーリークリア後のコンテンツ。サウロンの強力な軍勢が要塞を奪還しに波状攻撃を仕掛けてくる。これをすべて撃退することで「真のエンディング」が解放される。ここが最もやり込み要素の強いフェーズだ。

真エンディング
すべてのシャドウウォーズを乗り越えたとき、タリオンとケレブリンボールの物語が決着する。このエンディングはゲームプレイの長さと苦労に見合った重みがあり、指輪物語世界への橋渡しにもなっている。ネタバレになるため内容は書かないが、「やってよかった」と思わせる着地点だ。そしてそのエンディングは、「なぜ指輪物語の時代にこういう出来事が起きたのか」というトールキンの世界観に対する一つの答えとして機能している。

DLCと追加コンテンツ

Shadow of War にはいくつかのDLCが存在する。

  • Blade of Galadriel(ガラドリエルの刃):ガラドリエルの配下エルフ「エイレン」を主人公にした新シナリオ。タリオンとは異なる戦闘スタイルで遊べる。エルフの機動力と特殊技が新鮮な体験を提供する
  • Desolation of Mordor(モルドールの荒廃):傭兵バラニアを主人公にした別エピソード。新エリア「ゴルゴロス東部」が舞台。バラニアは人間の傭兵でありながら巧みな策略を使う個性的なキャラクターだ
  • The Bright Lord(明の王):ケレブリンボール自身を主人公にした先史時代のエピソード。サウロンとの対決を描く。本編とは全く異なる時代設定であり、指輪物語の歴史的背景が好きな人には特に面白い
  • The Ring of Power(力の指輪):ゲームの世界観を深める追加要素

これらのDLCは全てのコンテンツを含む「Gold Edition」または「Definitive Edition」にまとめてある。現在は Definitive Edition を購入するのが最もコスパが良い。セール時には数百円まで値下がりすることもある。特に Blade of Galadriel と Desolation of Mordor はそれぞれ独立したゲームとして10〜15時間楽しめる内容があり、本編に満足した人には自然に手が伸びるはずだ。

Shadow of War が人気である理由

ネメシスシステムという「感情的な体験」

Shadow of War が長く語り継がれる最大の理由は、ネメシスシステムが生み出す「感情を揺さぶる体験」だ。

ほとんどのゲームは「予定された物語」を読む体験だ。開発者が用意したイベント・セリフ・展開を順番に消化していく。それも面白いが、Shadow of War はそれとは別の何かを提供する。「自分だけのドラマ」が偶然に発生する体験だ。

例えばこんな話がある。あるプレイヤーが長い時間をかけて育てたオーク将軍の「ゴルバグ・鉄拳」が居た。何度も一緒に戦い、数十のミッションをこなし、要塞攻略の先鋒を任せてきた相棒だ。ところがある時、別の将軍に嫉妬したゴルバグが突然反乱を起こした。本当に裏切ったのだ。そのプレイヤーは「ゴルバグを倒したくなかった」と語った。

これはゲームが「計算」して作り出したドラマではない。プレイヤーの行動とランダム要素と時間の積み重ねが生んだ「偶然の物語」だ。こうした体験は、他のどんなゲームでも簡単には得られない。

「倒すのが惜しいくらい好きになったオークを、自分で倒さなければならない」——この感覚を味わったプレイヤーは何百万人にも上る。その体験こそが Shadow of War の核心だ。

また、ネメシスシステムは「うまくいったときの快感」も極めて高い。事前に弱点を調べ、護衛を全員排除し、恐怖の対象を使ってオークを混乱させ、隙をついて支配する——計画通りに進んだときの「完璧にやった」という達成感は、このゲームならではだ。オークを仲間にする行為が「戦略的なパズル」として機能しており、試行錯誤と実行のサイクルが気持ちいい。

指輪物語世界の再現度と没入感

Shadow of War は映画「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビット」のビジュアルを踏まえたデザインを採用している。モルドールの荒涼とした風景、オークたちの醜悪でユーモラスな見た目、廃墟となった要塞の重厚感——これらすべてが、「トールキンの世界にいる」という没入感を高めている。

特にモルドールの空気感の再現は秀逸だ。常に暗い空、遠くで噴煙を上げる火山、廃墟と化した建造物——「ここは普通じゃない場所だ」という雰囲気が絶え間なく伝わってくる。それでもタリオンが縦横無尽に動き回れる設計になっているため、プレイヤーはこの世界に「いる」という感覚を常に持てる。

音楽も世界観に完全にマッチしており、戦闘中の重厚なオーケストラから、静かな探索シーンの荒涼とした旋律まで、雰囲気を壊さない。声優陣の演技も高水準で、オークたちの個性あるセリフは何百種類と録音されている。タリオン役の声優は前作から継続しており、キャラクターへの連続性が感じられる。

指輪物語を知らなくても楽しめるが、知っていると「ゴラムがなぜああいう行動をするのか」「ナズグールの名前がなぜそれなのか」といった背景が腑に落ちる。世界観の深さが、長期間遊べる理由の一つになっている。

爽快なアクションとステルスの組み合わせ

Shadow of War の戦闘は非常に爽快だ。コンボが繋がるたびにタリオンが滑らかにアクションを繋ぎ、大勢の敵をなぎ倒していく動きは見ていて気持ちいい。アーカムシリーズ好きなら確実に馴染める操作感だ。

同時に、ステルス要素もよく作られている。草むらに潜んで敵一人ずつ消していく緊張感、発見されそうな瞬間に壁の上へ跳び移る咄嗟の判断——正面突破とステルスを場面によって切り替える楽しさがある。

特に「要塞主暗殺」のような高難度のミッションでは、ステルスで内部に潜入し、護衛を一人ずつ消し、最後に要塞主と一対一で対峙するという流れが非常にカタルシスを生む。「完璧に計画を実行できた」という満足感は格別だ。

アクションとステルスの切り替えがスムーズに行えるのも評価が高い理由だ。「ステルスで進んでいたが発見された、即座に格闘戦へ切り替える」という流れが非常に自然で、プレイヤーが「どちらで遊ぶか」を意識しなくても状況に応じて動ける。この自然な切り替えはゲームの完成度の高さを示している。

やり込みと周回の深さ

Shadow of War は一周クリアで終わらないゲームだ。シャドウウォーズフェーズまで含めると、一通りのコンテンツを楽しむのに50〜80時間かかる。DLCも含めると100時間以上プレイしているプレイヤーは珍しくない。

また、ネメシスシステムの特性上、同じゲームを二周しても全く違う体験になる。前回とは違うオークたちが現れ、違う因縁が生まれ、違う裏切りが起きる。「もう一度やりたい」という動機が自然に生まれる設計だ。

難易度設定も複数あり、慣れてきたら「ナイトメアモード」や各種縛りを設定して挑戦する上級プレイヤーも多い。Steam のアチーブメントも豊富で、全解除を目指すとかなりの時間が必要になる。また「縛りプレイ」のバリエーションも多く、例えば「死亡したらオークが永続的に強化される仕様のまま、一切の支配をせずにプレイする」といった自己設定の縛りを楽しむプレイヤーもいる。

コミュニティもまだ活発で、「俺のオーク軍団の写真」「こんな因縁が生まれた」という話題が今でもSteamのコミュニティハブやSNSで共有されている。ゲームを遊んでいる人同士で「語り合える体験」が生まれるゲームは長続きする。

プレイ前に知っておきたい注意点

Middle-earth™: Shadow of War™ その他RPG スクリーンショット3

課金要素の過去と現在

Shadow of War は2017年のリリース当初、ゲーム内マーケットプレイスで「強力なオーク」や「装備品の入ったランダム宝箱」を現実のお金で購入できる課金要素を実装していた。これは「ゲームプレイを進めれば無料で入手できるものを、お金を出して時短する」という仕組みで、当時のゲーム業界で問題視されていたガチャ系課金モデルだった。

この課金設計はプレイヤーから強い批判を受け、Metacriticのユーザースコアも低くなる原因となった。ゲーム本体の評価は高いのに、このビジネスモデルへの反発がスコアを引き下げた。批判の要点は「シャドウウォーズフェーズを快適に進めるためには課金が事実上必要になる設計になっている」という点だった。つまり真エンディングを見るためのコンテンツに課金圧力が設計されていたのだ。

ただし——現在は状況が全く異なる。2018年7月のアップデートで、Monolith と WB Games はゲーム内の有料マーケットプレイスを完全に撤廃した。オーク・宝箱・装備品などのアイテムはすべて通常のゲームプレイで入手可能になっており、現実のお金で有利になる要素はない。現在購入するなら課金問題は気にしなくていい。

当時のレビューを見る際には、「2018年以前のレビューは課金批判込みの評価」だということを念頭に置いて欲しい。2018年以降のレビューを参考にすると、より実態に近い評価が分かる。現在のゲーム内容は、課金問題が完全に解消されたクリーンな状態だ。

原作との違い

Shadow of War は「Middle-earth(中つ国)」というライセンスを使用しているが、内容は原作小説・映画とは異なる部分が多い。

最も大きな違いは「ケレブリンボールとタリオンが力の指輪を独自に鍛造する」という設定だ。原作ではケレブリンボールはサウロンと共謀して指輪を作ったとされており、この解釈に違和感を覚えるトールキンファンもいる。また、指輪の幽鬼(ナズグール)の描写や、シェロブが人型の女性に変身するという設定も、原作には存在しない独自の設定だ。

これらを「ゲームオリジナルの世界線」として受け入れられるかどうかが一つのポイントだ。原作愛が強い人ほど引っかかる部分があるかもしれないが、多くのプレイヤーは「ゲームとして別物」として楽しんでいる。

ゲームの映像・音楽・世界観のビジュアルは映画の影響を強く受けており、映画を観た人には視覚的に馴染みやすい。映画を観ていない人でも問題なく楽しめるが、「指輪物語の世界感とはこういうものか」という理解が深まるという意味では、映画の視聴が多少プラスになる。

なお、指輪物語の世界観に対して「これは正しいのか間違いなのか」を常に気にしながら遊ぶより、「ゲームとしてのトールキン世界の解釈」として楽しむ姿勢の方が、このゲームを満喫できる。映画シリーズが原作から脚色している部分が多かったように、このゲームも「ゲームメディアとしての解釈」という視点で楽しめると充実度が高まる。

PC スペックとパフォーマンス

Shadow of War は2017年のゲームだが、モルドールの広大な世界と多数のオークが同時に存在する攻城戦はそれなりのPCスペックを要求する。

公式最低スペック

  • OS:Windows 7 / 8.1 / 10 64bit
  • CPU:Intel Core i5-2300 / AMD FX-6350
  • メモリ:6GB RAM
  • GPU:NVIDIA GeForce GTX 660 / AMD Radeon HD 7870
  • ストレージ:100GB の空き容量

公式推奨スペック

  • OS:Windows 10 64bit
  • CPU:Intel Core i7-3770 / AMD Ryzen 5 1600
  • メモリ:12GB RAM
  • GPU:NVIDIA GeForce GTX 1070 / AMD RX 480
  • ストレージ:100GB の空き容量

実際の動作感

推奨スペックを満たしていれば1080pで安定して60fps前後を維持できる。攻城戦のような乱戦シーンでは負荷が高くなるため、グラフィック設定の調整が必要になることもある。GTX 1060クラスでも設定を落とせば快適にプレイ可能だ。2025年現在の中古PCや入門クラスのゲーミングPCでも十分動く水準だ。

ストレージの100GBは比較的大きいが、DLC込みの数字だ。ゲーム本体だけなら70GB程度に収まる。SSDへのインストールを推奨する。HDDでもプレイ可能だが、エリア移動時のロード時間がSSDと比べてかなり長くなる。

シャドウウォーズフェーズの繰り返し感

Shadow of War に対してよく挙げられる批評の一つが「シャドウウォーズフェーズのグラインド感」だ。真エンディングを解放するためには、複数回の防衛戦に勝利する必要がある。この繰り返し部分を「単調に感じる」と評するレビューは多い。

実際、メインストーリー自体は20〜30時間程度でクリアできるが、真エンディングを見るにはさらに20〜30時間以上の追加プレイが必要になる。この追加部分の密度をどう感じるかは人によって違う。「繰り返しが苦痛」と感じる人もいれば「軍団の成長を楽しみながら遊べる」と感じる人もいる。

シャドウウォーズフェーズを楽に進めるためのコツは「防衛担当オークのレベルを上げておくこと」だ。強い部下に要塞を守らせ、自分は別の準備に時間を使う——このサイクルを早めに確立できると、後半の繰り返し感が緩和される。

もし真エンディングにこだわらないなら、メインストーリーだけでも十分な満足感を得られる。「真エンディングは目指すかどうか個人の自由」というくらいの気持ちで始めると、プレッシャーなく楽しめる。

オーク支配・会話シーンの繰り返し

ネメシスシステムの特性上、オークとの因縁が重なるほど同じパターンの会話が繰り返されるケースが出てくる。「また会ったな!」という定型パターンのセリフバリエーションは多いが、数十時間プレイすると「このパターンは見たことある」と感じる瞬間がある。

これは生成システムの限界でもあり、ランダム性があるからこそ生まれる課題だ。完全に新鮮なセリフを期待し続けるのは難しいが、逆に「このオークの言いそうなセリフだ」という愛着感を生む側面もある。

50時間・100時間と積み上げているプレイヤーも「会話パターンは慣れてくる」と認めながらも「それ以上の楽しさがある」と語っている。セリフの繰り返しは許容できる範囲として受け入れつつ、軍団の成長と要塞の攻防という「大きな枠組みの楽しさ」に集中するのが長く遊ぶコツだ。

初心者向けアドバイス:最初の5時間で差がつく

序盤はネメシスシステムを恐れずに死ぬ

Shadow of War を始めて最初に覚えておきたいのは「死ぬことを恐れるな」ということだ。前述の通り、タリオンが死ぬと倒したオークがパワーアップして戻ってくる。これをネガティブに捉えると序盤がつまらなくなる。

逆転の発想で考えてほしい。死ねば死ぬほど、因縁のあるオークが増える。そのオークを後から倒した時の達成感が大きくなる。序盤はわざと無謀な突入を繰り返して「宿命の敵候補」を育てるプレイヤーもいるくらいだ。

ネメシスシステムは「失敗がコンテンツになる」という設計だ。このゲームにおける死は、ゲームオーバーではなく「物語の続き」だと理解すると、プレイが一気に楽しくなる。

「また死んだ、このオークのせいだ」という感情を持てるようになったとき、このゲームを本当に楽しめている証拠だ。怒りや悔しさを「ゲームが上手く使っている」という意識を持つと、ネガティブな感情も楽しみの一部に変わる。

最初に覚えるべき操作:カウンターを習得する

Shadow of War の戦闘で最初に習得すべき技術は「カウンター」だ。敵の頭上に赤いマークが出たらカウンターボタンを押す。これだけで戦闘がかなり安定する。

最初はタイミングが掴みにくいかもしれないが、慣れると「カウンター→コンボ継続→カウンター」のリズムが自然に体に入ってくる。このリズムを覚えた段階で、ゲームが一気に楽しくなる。

カウンターが安定してきたら次は「回避」のタイミングを練習する。特に大型敵や槍を持つオークはカウンターが効かず、回避が必要になる。この2つの回避技術を身につければ、序盤の戦闘で死ぬことはほぼなくなる。

また、コンボゲージを上げてからの「エクゼキューション(処刑技)」を積極的に使うことも重要だ。これは単純に高ダメージなだけでなく、大型の敵にも有効で、ボス級のオークを倒す際の核心的な技になる。序盤からエクゼキューションを意識して使うと、中盤以降の難敵戦が楽になる。

ステルスキルを積極的に使う

Shadow of War では正面からの格闘戦だけでなく、ステルスキルも積極的に活用してほしい。草むらや建物の陰に隠れて敵に近づき、後ろから一撃でキルするステルスアクションは非常に気持ちいい。

特に将軍クラスのオークに支配を試みる場合、ステルスアプローチが有効だ。正面から戦うと護衛が群がってきて大変だが、一人でいる瞬間を狙ってステルスで接近すると、護衛を排除してから支配を仕掛けられる。

高所から飛び降りてのステルスキルも覚えておくと便利だ。建物や崖の上から真下の敵をキルできる「エアーキル」はアニメーションも格好よく、これだけで序盤の満足感がぐっと上がる。

ステルス時に使えるケレブリンボールの透視機能を必ず活用してほしい。壁越しに敵の配置が見え、将軍の位置や護衛の動きが事前に把握できる。この情報なしにステルス進行するのはかなりリスクが高い。透視→配置確認→接近ルート選択→ステルスキルという手順を習慣化することで、ステルスの成功率が格段に上がる。

「弱点」を把握してから将軍を倒しに行く

各オーク将軍には「弱点」が設定されている。炎が弱点のオークに火矢を使うと大ダメージ、毒に耐性がないオークに毒ナイフを使うと効率よく消耗させられる。逆に無効化の属性で攻撃しても全く効かない。

将軍を倒しに行く前に、必ず「諜報活動(Intelligence)」を実施してほしい。諜報活動とは、そのオークの部下を捕まえて尋問したり、特定の場所を偵察することで、将軍の弱点・耐性・恐怖の対象などの情報を事前に入手する行動だ。

弱点がわからないまま突入すると「なぜかダメージが入らない」という状況になりやすい。事前情報を集めてから戦うのと、無知のまま突入するのでは難易度が大きく変わる。これを知っているだけで序盤の詰まりが激減する。

特に「霊魂無効」の特性を持つオークは、ケレブリンボールのスピリット攻撃が一切効かない。これを知らずに挑むと、スピリット技を多用するプレイスタイルの人は全く機能しなくなる。こうした「特定のプレイスタイルを完全に封じてくる」オークが存在することがネメシスシステムの面白いところで、そのたびに戦術の引き出しを増やす必要がある。

序盤に解放すべきスキル

タリオンのスキルツリーは最初から全部解放されているわけではなく、プレイを進めながら強化していく。序盤に優先したいスキルをいくつか挙げる。

  • シャドウストライク強化:遠距離から一瞬でオークに近づいてキルまたは支配を仕掛けられる技の強化。移動にも使えて非常に便利。これを解放するだけで移動とステルスの効率が大幅に上がる
  • カウンター系スキル:カウンターの範囲が広がったり、カウンター後に追撃できたりする強化。戦闘安定化の基本
  • 支配系スキル:低レベルオーク以外にも支配できるようになる強化。軍団構築に必須。これがないと強いオークを仲間にできない
  • 処刑(エクゼキューション)強化:コンボ時の必殺技が強くなる。ボス戦での効率が上がる
  • 恐怖利用系スキル:オークの恐怖の対象を利用して恐慌状態にする技術の強化。これが使えると弱点攻略の選択肢が増える

最初から全てのスキルを取ろうとするのではなく、「今のプレイスタイルに合うもの」を優先的に取る意識が重要だ。ステルスが好きなら「シャドウ系」、正面突破が好きなら「戦士系」を中心に育てるといい。スキルの振り直しは後からでもある程度できるため、最初から完璧な構成を目指す必要はない。

要塞攻略前の準備を怠らない

要塞攻略は Shadow of War のメインイベントだが、準備なしで突入すると本当に苦しい。特に序盤・中盤の要塞は、先に族長を排除し、護衛を消し、防衛拠点を破壊してから攻略すると格段に楽になる。

また、自軍のオーク将軍の強さも重要だ。要塞攻略には軍団のオークたちを一緒に連れて行く。強いオークが多いほど前線を押し上げやすく、自分への敵の集中を分散できる。事前に軍団を整えておくことが攻略成功率を大きく左右する。

初めての要塞攻略は失敗しても構わない。失敗しても経験として何が足りなかったかが見えてくる。失敗→準備→再挑戦のサイクルこそが Shadow of War の本質的な楽しみ方だ。

また「内通者」を事前に仕込むと攻城戦が楽になる。要塞の中にいる将軍を事前に支配しておき、攻城戦が始まったときに内側から動いてもらう。突入直後に要塞の内側から裏切ったオークが戦い始めると、防衛側の陣形が崩れて一気に侵攻しやすくなる。この「内通作戦」は上手くいったときの爽快感が格別で、ぜひ一度試してほしい。

諜報活動で事前情報を集める習慣をつける

弱点の把握に続いて、「諜報活動」を習慣化することを強く勧める。諜報活動では以下の情報が手に入る。

  • 将軍の弱点と耐性
  • 将軍の恐怖の対象(特定の動物・虫・炎など、これを使うと恐慌状態にできる)
  • 将軍がどの族長の護衛をしているか
  • 将軍がどこに出現するか(パトロールルート)
  • 将軍の部下の数と種類
  • 将軍が持っている特殊能力の詳細

これらを知った上で戦うのと、知らずに戦うのでは体験が全く異なる。特に「恐怖の対象」を使った戦術は面白い。「虫が怖いオーク」にウンバル(スパイダー召喚)を使うと、オークが恐慌状態で逃げ回る。そこに攻撃を加えると大ダメージ、あるいはそのまま支配を仕掛けやすくなる。

諜報活動は手間に感じるかもしれないが、慣れると自然に「将軍を見つける→まず情報を集める→弱点を突いて倒す」という流れが身につく。このリズムが身についたとき、Shadow of War は本当に楽しくなる。

諜報活動を行うには「部下を捕まえて尋問する」という手順が基本だ。将軍の部下の一般兵を倒さずに捕まえ、「情報を吐け」と尋問するだけでいい。慣れれば1〜2分でできる作業だ。これを将軍との戦いの前に1回やるだけで、難易度が大きく変わる。

オーク軍団に愛着を持って育てる

Shadow of War を楽しむ最後のコツは、「部下のオークに愛着を持つ」ことだ。これは攻略的なアドバイスではなく、ゲームの楽しみ方の問題だ。

部下オークに個性的な名前をつけて(正確には彼らが生まれ持った名前を覚えて)、「こいつは前回の要塞攻略で活躍したやつだ」「このオークは弓が得意だから後衛に置こう」と意識しながら育てると、Shadow of War の面白さが倍増する。

どうせそのうち裏切られる。どうせそのうち強敵に倒されて消える。それがわかっていても愛着を持って育て、それでも裏切られたときに「このオークめ、絶対に倒す」という感情が生まれる——それこそがこのゲームが目指している体験だ。

プレイヤー同士でも「俺のオーク軍団自慢」「最悪の裏切り体験」を語り合う文化がある。そういう「語れる体験」を持てるゲームは少ない。Shadow of War はそれができる数少ないゲームの一つだ。

また、軍団の編成にこだわることも楽しみの一つだ。「全員を騎乗戦闘が得意なオークで揃える」「毒使いだけの軍団を作る」「特定の部族だけで統一する」という縛りや方向性を自分で決めると、さらに長く楽しめる。このゲームは「自分なりのやり方」を試す余地が非常に広い。

まとめ:記憶に残るオークとの因縁を作りに行こう

Middle-earth: Shadow of War は一言で説明しにくいゲームだ。アクションゲームでもあり、RPGでもあり、ストラテジーでもあり、そしてなにより「偶然の物語が生まれるシミュレーター」でもある。

ネメシスシステムが生み出す体験は、他のどのゲームでも得られない。100時間プレイした人が「あのオークは忘れられない」と語り、50時間プレイした人が「また裏切られた、でも悔しいから続けてしまう」と笑う。そういう感情の起伏を生み出せるゲームは、ゲーム史の中でもほとんどない。

指輪物語の世界観も、知っていれば深く楽しめる。でも知らなくてもモルドールの荒涼とした風景とオークたちの騒々しい個性が、十分に世界に引き込んでくれる。

課金問題は2018年に解決済みだ。現在は非常にクリーンな状態でプレイできる。定価でも手頃だが、Steamセール時には大幅値下げになることが多いため、そのタイミングを狙うのもいい。Definitive Edition ならすべてのDLCが含まれており、一番おすすめだ。

真エンディングを見るには時間がかかる。シャドウウォーズフェーズが長いのは事実だ。それでも、その過程で生まれる軍団との歴史・裏切り・復讐・勝利の積み重ねが、最終的なエンディングに重みを与える。「時間をかけた分だけ、エンディングが刺さる」という設計は、ゲームとして正直だ。

このゲームを遊んだ人が口をそろえて言うことがある。「最初のうちはオークを覚えていなかった。でもある時から名前を覚えるようになった。そしてそのオークに裏切られたとき、本当に怒った」——それがこのゲームの本当のはじまりだ。

最初の5時間は死にまくるかもしれない。操作に慣れていなくて、因縁のオークに何度も殺されるかもしれない。でもそのたびに彼らは成長し、あなたとの因縁を深めていく。その繰り返しの先に、きっと忘れられないオークが一人生まれる。

そのオークの名前を覚えておいてほしい。そして最後に倒したとき——あるいは最後まで仲間にしたとき——その体験を誰かに話したくなるはずだ。それが Shadow of War というゲームの正体だ。

指輪物語の世界で、自分だけの軍団と物語を作りに行こう。

Middle-earth™: Shadow of War™

Monolith Productions
リリース日 2017年10月9日
サービス中
同時接続 (Steam)
1,357
2026/04/17 アジア圏ゴールデンタイム計測
レビュー
114,350 人気
88.9%
全世界
非常に好評
114,350件のレビュー
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65%
賛否両論
246件のレビュー
👍 160 👎 86
価格¥5,950
開発Monolith Productions
販売WB Games
日本語非対応
対応OSWindows
プレイ形式シングル
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