「Kunitsu-Gami」昼の村づくりと夜の守りを繰り返す和風戦略ACT

このゲームをはじめて起動したとき、最初の数秒でわかった。これは、どこにも似ていないゲームだ。
穢れに染まった山。石畳の村。巫女・ヨシロが舞い、祓いの儀式を行う。昼間は村の封印を解き、倒れた村人たちを起こして守備の配置を組む。夜が来ると、その配置を信じながら自分の刀を振るって前線で戦う。朝が来るたびに一歩ずつ山を登り、穢れを祓っていく——この「昼夜サイクル」の繰り返しが、なんとも言えない中毒性を生んでいた。
Kunitsu-Gami: Path of the Goddessは2024年7月19日にカプコンがリリースした和風戦略アクションゲームだ。REエンジンを使った映像美、日本神話・神楽をモチーフにした独特の世界観、そしてタワーディフェンスとアクションを融合させたゲームプレイ。Steamレビューは1,700件超えで92%が好評という数字が出ているが、その数字以上に「刺さる人には強烈に刺さる」作品だと感じた。
この記事では、実際にプレイして体験した「このゲームの本質的な面白さ」と「気になった点」を正直に書いていく。和風ファンタジーが好きな人、タワーディフェンスとアクションの両方が好きな人にとっては、間違いなく気になる一本のはずだ。
こんな人に読んでほしい
- 和風・神話・神楽の世界観に惹かれるゲームプレイヤー
- タワーディフェンス系ゲームが好きだが、アクション要素も楽しみたい人
- 「昼は準備、夜は戦闘」というルーティンの緊張感が好きな人
- カプコンのREエンジンによる美麗グラフィックを楽しみたい人
- 日本語フルボイスで没入感の高い和ゲーを探している人
- やや難しめの戦略ゲームで歯ごたえを求めている人
Kunitsu-Gamiとはどんなゲームか
Kunitsu-Gami: Path of the Goddessは、カプコンが2024年7月19日にPC(Steam/Xbox)およびPlayStation向けにリリースしたシングルプレイヤー専用の和風戦略アクションゲームだ。ゲーム内では「神楽アクションストラテジー」という独自ジャンル名を掲げており、その名の通り日本の神楽や神道の世界観を骨格にしたゲームデザインになっている。
舞台は穢れ(けがれ)に覆われた霊山。プレイヤーはソロと呼ばれる剣士を操作し、巫女のヨシロを護衛しながら山の頂上を目指す。山には複数の村が点在しており、それぞれの村が穢れの影響で機能を失っている。プレイヤーは昼の間に封印を解いて村人を蘇らせ、戦士・木こり・巫女など様々な役割で配置し、夜の波状攻撃に備える。この「昼の準備→夜の防衛→翌朝の進軍」というサイクルが、Kunitsu-Gamiのゲームプレイの核心だ。
タワーディフェンスの「配置と戦略」と、アクションゲームの「手を動かして戦う快感」が同時に存在している。このふたつが互いを補完し合う設計が、プレイ中ずっと感じていた独特の緊張感と達成感の源になっていた。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | Kunitsu-Gami: Path of the Goddess(祇:神の道) |
| 発売日 | 2024年7月19日 |
| 開発・発売 | カプコン(CAPCOM) |
| 対応プラットフォーム | PC(Steam / Xbox)、PS4、PS5、Xbox Series X|S |
| ゲームエンジン | REエンジン |
| ジャンル | 神楽アクションストラテジー(タワーディフェンス×アクション) |
| プレイ人数 | 1人(シングルプレイ専用) |
| 言語 | 日本語フルボイス対応 |
| Steamレビュー | 1,700件超え・92%好評(2024年実績) |
| 価格 | 4,990円(Steam定価) |
昼と夜で顔が変わるゲームプレイ設計

Kunitsu-Gamiのゲームプレイを語るうえで欠かせないのが「昼夜サイクル」だ。このシステムが本当によく練られていて、プレイ中はずっと「昼は戦略家、夜は剣士」という二つの顔で遊んでいる感覚があった。
昼のフェーズでは、ソロが剣で穢れた封印を斬り、村の各地に固まっている村人たちを解放していく。解放した村人には「役割」を割り当てられる。近接戦闘を担う「戦士」、バリケードを設置する「木こり」、回復を担う「巫女補佐」、遠距離攻撃の「弓使い」など、複数の種類がある。この配置を考える時間が、いわばタワーディフェンスの「塔を置く」フェーズだ。
だが単に配置するだけでは終わらない。ヨシロが通るルートを確保し、夜の敵の侵入経路を予測し、バリケードで導線を絞り、攻撃役を集中配置する——という複合的な思考が要求される。最初のうちは「なんとなく配置」でも進めるが、後半のステージでは敵の種類と攻撃パターンを読んだ配置が求められてくる。
「昼の配置をミスると夜が地獄になる。でも逆に言えば、配置が決まった瞬間の充実感がたまらない」
Steamレビューより
夜のフェーズでは、「穢れ」と呼ばれる化け物の集団がヨシロめがけて押し寄せてくる。プレイヤーは村人たちの配置を信じつつ、自分自身も剣を振るって前線で戦う。このアクション部分は見た目以上に爽快感があり、剣での斬撃・回避・スローモーション演出が組み合わさった戦闘は「カプコンらしいアクション品質」を感じさせた。
タワーディフェンスゲームの典型的な弱点として「自分が何もできなくてただ見てるだけ」という状況がある。Kunitsu-Gamiはそこにアクション要素を組み込むことで、プレイヤーが常に「何かできること」を持ちながら緊張感を保てる設計になっている。これが「タワーディフェンスが苦手な人でも楽しめる」という評価につながっているのだと思う。
神楽・神道・和の美学が作り出す世界観

Kunitsu-Gamiをプレイして最初に驚いたのが、世界観の密度だった。和風ゲームは数あれど、ここまで「神楽」という文化にフォーカスした作品はほぼ見たことがない。
神楽とは日本の伝統芸能であり、神道の儀式として神に捧げる舞のことだ。Kunitsu-Gamiではこの神楽がゲームプレイの中心に据えられており、巫女ヨシロが舞うことで封印を祓い、穢れを浄化していく。彼女の動作や衣装、ステージのデザインが一貫して「神事の空気感」を纏っており、ただの戦闘ゲームとは違う雰囲気が全編を通して漂っている。
敵である「穢れ」の造形も独特だ。人体が変形したような異形の姿や、民俗学的なモチーフを感じさせるデザインが多く、西洋モンスターとは異なる「日本の怪異」としての質感がある。実際にプレイしながら「これは妖怪ではなく穢れなんだ」という設定の一貫性を感じた。
「グラフィックと音楽の完成度が高すぎる。カプコンがREエンジンでここまで和の世界観を作れるとは思っていなかった」
Steamレビューより
REエンジン特有のリアルタイムレンダリングによる映像美も、この世界観を支える大きな柱だ。松明の炎、霧に包まれた山道、夜空に浮かぶ満月——こうしたビジュアル要素が、ゲームプレイ中の「守らなければ」という緊迫感と見事に連動していた。日本語フルボイスという仕様も、この世界への没入感をさらに高めてくれる。
村人の役割システムとリソース管理の深さ

タワーディフェンスとしての奥行きは、村人の「役割割り当て」システムに詰まっている。各ステージで解放できる村人の数は限られており、限られたリソースをどう振り分けるかが攻略の肝になる。
基本的な役割は以下のようなものだ。
- 戦士(Warrior):近接戦闘担当。敵を足止めして前線を維持する。
- 木こり(Lumberjack):バリケードを設置。敵の進路を絞り込む要役。
- 巫女補佐(Shrine Maiden):ヨシロのHPを回復する。後衛支援の核。
- 弓使い(Archer):遠距離攻撃。空中の敵への対応に欠かせない。
- 笛吹き(Flute Player):範囲バフを付与する支援役。
これだけ見ると「典型的なタワーディフェンスのユニット」に見えるが、Kunitsu-Gamiが巧みなのは「村人の物語と役割が連動している」点だ。各村人にはちょっとした背景が設定されており、彼らを助けて役割を与えることが単なるゲーム的な作業ではなく「村を復興している」という感覚につながる。
「村人を配置して夜を乗り切るたびに、自分が作り上げた布陣だという愛着が生まれる。失敗すると悔しいのも、その愛着のせいだと思う」
Steamレビューより
ステージが進むと、村人の役割をアップグレードするための「奉納ポイント」も集めていく必要が出てくる。このリソース管理の層が加わることで、単純な「配置ゲー」を超えた戦略的判断の積み重ねが生まれていた。昼のフェーズで何を優先するか——アップグレードか人数増か防衛強化か——この選択に正解がなく、自分なりの戦略を試行錯誤できるのが楽しい。
ソロ(主人公)のアクション部分の手触り

タワーディフェンス部分の戦略だけでなく、ソロが直接戦うアクション部分のクオリティも触れておきたい。正直なところ、プレイ前は「タワーディフェンスのオマケ要素」だと思っていたが、実際に夜の戦闘に入ると印象が変わった。
ソロの基本的な戦闘は剣による斬撃・コンボ・回避が中心だ。カプコンらしいアクション設計というべきか、入力レスポンスが良く、敵の攻撃モーションを読んでの回避がきちんと気持ちよく決まる。特に「時機を合わせた攻撃でのスローモーション演出」は爽快感が高く、戦略部分の地味さとは対照的な派手さがあった。
ボス戦も各ステージに用意されており、こちらはアクションゲーム寄りの体験になっている。配置戦略が通用しない一対一の真剣勝負で、タワーディフェンスとは別の種類の緊張感がある。アクションゲームとして見ると「頑張ってる」レベルだが、この緩急のつけ方が全体のテンポを崩さないためにうまく機能していた。
「アクション部分はそこまで複雑ではないけど、戦略が噛み合ったときに自分で動いて仕留める快感は独自のものがある」
Steamレビューより
ステージ構成とゲームの進め方
Kunitsu-Gamiのステージ構成は、山を登っていくという一本道の大きな流れに沿っている。各ステージは独立した村を舞台にしており、「村の封印を解いて全員を守り切る→ヨシロが先へ進む」という単位で区切られている。
ステージクリアの条件は「夜の間、ヨシロが穢れの門に到達するまで生き延びること」だ。ヨシロはゆっくりと前進し、封印の門に近づいて儀式を完了させる。この間、穢れが四方から押し寄せてくる。HPがゼロになったら失敗で、昼からやり直しになる。
一度クリアしたステージに戻ることも可能で、素材集めやサブ目標の達成のために周回するデザインになっている。ただ周回要素はあくまで任意なので、メインストーリーだけを追うプレイスタイルでも十分に楽しめる。クリアまでのプレイ時間は人によって異なるが、おおよそ15〜25時間ほどという声が多かった。
難易度と学習曲線——「難しい」という声に向き合う

Kunitsu-Gamiについて正直に書くべき点のひとつが「難易度」だ。序盤は親切なチュートリアルで丁寧に導いてくれるが、中盤以降から「こっちの村人配置では防ぎきれない」という状況が明確に出てくる。
「中盤から急に難しくなって詰まった。タワーディフェンスの経験がないと配置の理屈がわかりにくい場面がある」
Steamレビューより
この「難しさ」はシステムを把握することで大きく変わる。どの役割がどの敵に有効か、バリケードをどこに置けば進路を絞れるか——そういった知識が積み重なると、見るからに無理そうな状況でも解決策が見えてくる。タワーディフェンスの経験がある人なら「気持ちよく難しい」と感じると思うが、初めての人には「理不尽に感じる瞬間」もあるかもしれない。
難易度設定は複数用意されており、アクション部分の難しさとストラテジー部分の難しさを別々に調整できる。これは「アクションは苦手だが戦略は楽しみたい」「反対にアクションはやり込みたい」という異なるプレイヤーに対応するためだろう。実際にプレイしながら「アクション難度を下げてストラテジーに集中するのもひとつの楽しみ方だ」と感じた。
リプレイ性とゲームの寿命
Kunitsu-Gamiはメインストーリーを一通りクリアした後も、いくつかのリプレイ要素が残されている。
まず、各ステージには「初回クリア以外の追加目標」が設定されており、特定の条件でクリアすることで素材や称号が得られる。戦士の数を絞ってクリア、被弾ゼロで完了など、プレイスタイルを縛ることで難易度を自分で上げて楽しめる設計だ。
また、ゲーム後半で解放されるコンテンツや村人のアップグレードツリーを完全に埋めることを目指すやり込みもある。すべてのコンテンツを達成しようとすると30時間を超えるプレイになるという声もあった。
「クリアしたあとも追加目標があるのでやり込み甲斐がある。ただ、ストーリー自体はサクッと終わるので、もっと続きが見たかったという気持ちもある」
Steamレビューより
欠点として語られることが多いのが「ステージ間の多様性」だ。昼夜サイクルという基本構造が全ステージで変わらないため、後半になると「また同じことをやっている」という感覚が出てくる人もいる。これはゲームの設計上の一貫性でもあるが、新鮮さを求めるプレイヤーには「単調に感じる」と映ることもある正直なところだ。
音楽・サウンドが世界観を完成させる
Kunitsu-Gamiの没入感を語るうえで、音楽とサウンドの完成度は外せない。神楽の笛や太鼓を基調にしたBGMは、昼と夜で明確にトーンが変わる。昼は穏やかな和楽器の音色が流れ、夜は緊迫した打楽器中心のサウンドに切り替わる。この音楽の変化がゲームプレイの緊張感を煽る役割を果たしており、単なる「背景音楽」を超えた機能を持っている。
日本語フルボイスの品質も高く、ヨシロや村人たちのセリフがきちんと感情を伝えてくれる。特に村人を救出した際の一言が毎回違う内容になっており、「この人はこういう人なんだ」という個性を感じさせてくれた。ボイスとテキストの両方で届けられるストーリーは短いながらも密度があり、神楽の儀式という設定の中で自然に語られていた。
「夜になったときのBGMの転換が本当に上手い。自然に気持ちが切り替わって、守らなければという気持ちになる」
Steamレビューより
Kunitsu-Gamiが刺さる人、合わない人
ここまで書いてきた内容を踏まえ、率直に言う。Kunitsu-Gamiは「好きな人には刺さりまくるが、万人向けではない」ゲームだ。
刺さる人の条件として、まず「和風・神楽の世界観に惹かれること」は大前提だ。この美術的・文化的なテーマに興味がない状態でプレイすると、ゲームの根幹部分の魅力が半減してしまう。加えて、タワーディフェンスというジャンルへの親和性も重要だ。配置を考えて、試して、失敗から学ぶという反復サイクルを楽しめる人にとっては、このゲームは非常に高い完成度を持つ作品に映る。
一方で「合わない」と感じやすいのは、「常に新しい刺激を求めるプレイヤー」だ。昼夜サイクルというゲームの基本構造がエンドゲームまで大きく変わらないため、変化が少ないと感じる人には後半が苦痛になり得る。また純粋なアクションゲームとして見ると物足りなく感じる人も一定数いた。
「個人的にはドハマりしたが、タワーディフェンスに興味がない友人に勧めたら『繰り返し感が強くて向いてない』と言われた。その差は正直あると思う」
Steamレビューより
一度無料体験版(デモ)があれば試してほしいところだが、2024年のプレイ環境では製品版のみの提供だった。Steamでセール時に25%オフになることがあるため、気になる人はウィッシュリストに入れておいて値下がりを待つのもよい選択だ。
カプコンの「実験作」としての意義
Kunitsu-Gamiはカプコンという大手パブリッシャーが送り出した作品にしては、非常に実験的なタイトルだ。バイオハザードやモンスターハンターのような看板IPではなく、完全新規IPで独自ジャンルに挑んでいる。この姿勢は正直、プレイヤーとしてうれしかった。
REエンジンという同社の最先端技術を使いながら、ゲームデザインは「大作らしい規模」ではなく「テーマを絞り込んだ深さ」を選んでいる。この選択の結果、4,990円という価格帯で15〜25時間という密度が実現されている。AAA作品と比べればボリュームは少ないが、「やり切った満足感」という点では遜色ないという評価が多かった。
Steam同接は最盛期で2,000〜3,000人規模と大ヒットとは言えなかったが、92%という高評価率はゲームの完成度の高さを示している。「売れなかったがクオリティは本物」という立ち位置のゲームが、後から再評価を受けるパターンは珍しくない。Kunitsu-Gamiも、和風ゲームの文脈で長く語られていく作品になると思っている。
Kunitsu-Gamiに近い体験ができるゲーム
Kunitsu-Gamiの「和風世界観×戦略×アクション」という組み合わせに近い体験ができるゲームをいくつか挙げる。
まずタワーディフェンスとアクションの融合という点では、「Orcs Must Die!」シリーズが近い感覚だ。罠を設置して敵の進路を誘導しつつ、自らも武器で戦うというデザインが共通している。ただしこちらはファンタジー・コメディ路線なので世界観は正反対だ。
和風世界観という点で挙げるなら「Ghost of Tsushima」は当然として、インディー寄りでは「Trek to Yomi」も日本の美学を重視したゲームとして興味深い。いずれも直接的なゲームプレイの類似はないが、「和の空気感を求めている人」には参考になるはずだ。
タワーディフェンス純粋路線なら「Kingdom Two Crowns」も独自の昼夜サイクルと拠点防衛を持っており、ゲームの基本構造に近さを感じる作品だ。アクション要素はないが、昼に準備して夜に守るという緊張感は共通している。
穢れの種類と敵のデザイン——「日本の怪異」としての完成度

Kunitsu-Gamiで「敵」にあたる「穢れ」たちのデザインは、プレイを通してずっと気になり続けた要素だ。西洋ファンタジーのモンスターとは明確に異なる「異形」としての造形で、民俗学や神話の文脈を感じさせるビジュアルが多い。
序盤に登場する穢れは比較的シンプルな人型の変形体だが、ステージが進むにつれて「複数の顔を持つもの」「逆さに歩くもの」「巨大な口だけが浮かんでいるもの」など、どんどん奇妙さが増していく。怖いというよりも「気持ち悪い」という感覚に近く、これが神事・浄化という文脈と見事に噛み合っている。穢れとはそういうものだ——プレイ中にそう腑に落ちる瞬間が何度もあった。
各穢れには弱点や行動パターンがあり、単純な数の暴力だけでは対処できない種類も出てくる。飛行する穢れ、バリケードを破壊する大型穢れ、素早く動いてヨシロに直接迫る小型穢れ——それぞれへの対策を配置に組み込む必要があり、ステージごとに「今回はどの穢れが来るのか」を意識させる設計になっている。
「穢れのデザインが独特で、最初は気持ち悪いと感じたが、日本の妖怪や怪談を知ると『ああ、そういう解釈か』と納得できた。文化的な文脈があってこそのビジュアルだと思う」
Steamレビューより
ボス格の穢れは特に印象的で、神楽の演目に登場する神や鬼を歪めたような姿をしている。戦闘前に演出がしっかり入り、「これはただのザコではない」という緊張感の切り替えが的確だった。ボス戦はアクション比重が高くなり、村人の配置に頼れない分、プレイヤー自身の腕が問われる場面だ。この緩急がゲーム全体のリズムを保っていた。
ヨシロというキャラクターについて

Kunitsu-Gamiにおける中心人物は、プレイヤーが操作するソロ(剣士)ではなく、護衛対象である巫女・ヨシロだ。ゲームの目的は彼女を守り、山の穢れを祓わせることであり、物語の語り手としても重要な役割を担っている。
ヨシロは自分では戦わない。ただ前へ進み、封印の前で舞い、儀式を行う。その無防備さが、守護すべき対象としての説得力を生み出している。プレイ中ずっと「彼女を死なせてはいけない」という感情が自然に生まれてくるのは、ゲームデザインとキャラクター設計が一致しているからだと思った。
日本語フルボイスでのヨシロのセリフは、儀式の言葉や村人への言葉が多く、神楽の様式美を感じさせる語り口になっている。英語圏のレビューでも「彼女のビジュアルと声の演技が没入感を作り出している」という評価が多く見られた。直接戦闘しないキャラクターがここまで存在感を持つのは珍しい。
「ヨシロを守るためだけに必死になれるのが不思議だった。彼女が何も言わなくても、その存在が『守らなければ』という気持ちにさせる」
Steamレビューより
ゲームのストーリー自体は長くない。各ステージに短い物語が差し込まれ、山の上で何が起きていたのか、穢れはどこから来たのかが断片的に明かされていく。セリフが多いゲームではないが、語られる内容の密度は高く、和の静けさの中に深みを感じさせる作りになっていた。
REエンジンが作り出す和の映像美——技術的な側面

カプコンのREエンジンはバイオハザードシリーズやデビルメイクライ5などで培われた同社の看板技術だ。Kunitsu-Gamiではこのエンジンを使って、和のビジュアルをリアルタイムで描き出している。
特に印象的だったのは光の表現だ。昼間のステージでは木漏れ日や神社の朱色が鮮やかに描かれ、夜のステージでは松明の炎と月明かりだけが照らす暗闇の中でのバトルが展開する。この昼夜の光の差が、ゲームプレイのフェーズ切り替えと完全に連動しており、「昼→夜」の転換が視覚的にも感情的にも強く機能していた。
衣装や建物のディテールも丁寧に作り込まれており、神社建築・鳥居・石畳・石灯篭といった日本的なモチーフが正確な形で再現されている。和風ゲームにありがちな「なんとなくそれっぽい」ではなく、実際の神社建築や神道の様式を参考にした設計が随所に見える。日本人プレイヤーとして「これは本物だ」と感じる場面が多かった。
「グラフィックのクオリティは本当に高い。特に夜のステージで松明の炎が揺れる中で戦うシーンは絵になる」
Steamレビューより
PC版のパフォーマンスについても触れておく。REエンジンはPC向けの最適化が高いことで知られており、Kunitsu-Gamiも比較的スペックが低い環境でも安定して動作するという報告が多かった。グラフィック設定の幅も広く、ロースペックPCから高解像度環境まで対応できる設計は、カプコン作品らしい丁寧さを感じさせた。
奉納ポイントとアップグレードツリーの設計
Kunitsu-Gamiの成長要素は「奉納ポイント」を中心に設計されている。ステージをクリアするたびにポイントが貯まり、村人の役割をアップグレードしたり、ソロの能力を強化したりするために使う。
アップグレードの内容は単純なステータス強化だけでなく、「特定の役割に新しい能力を追加する」というものも多い。例えば弓使いを強化すると炎矢を使えるようになったり、巫女補佐を強化すると回復範囲が広がったりする。こうした変化がゲームプレイに実際の影響を与えるため、アップグレードを選ぶ瞬間に「次のステージでの戦略が変わる」という手応えがあった。
ソロ自身のアップグレードも用意されており、剣技の追加・スタミナ強化・スローモーション発動条件の変更など、アクション部分の手応えを変える選択肢がある。タワーディフェンス寄りのプレイスタイルを選ぶ人は村人のアップグレードに集中し、アクション寄りのプレイスタイルを選ぶ人はソロの強化に投資する——という分岐が自然に生まれる設計だ。
「アップグレードの選択で明確にプレイスタイルが変わるのが面白い。戦略重視か自分で動くか、毎回どちらを選ぶか悩む」
Steamレビューより
一度のプレイで全てのアップグレードを開放できない設計になっているため、「このプレイでは弓使い特化」「次は巫女補佐ルート」というような試行錯誤が自然に発生する。これがリプレイ性の下地を作っている要素のひとつだ。完全制覇を目指す人には周回の動機になるが、メインクリアだけを目指す人には「どれを優先するか」という悩みとして機能する。
ゲームパスでの配信と価格の話
Kunitsu-Gamiはリリース当日からXbox Game Passに収録されて配信が始まったタイトルでもある。これはゲームの普及という意味で重要な点だ。Game Passサブスクライバーは追加費用なしでプレイできる環境が整っており、「試しに遊んでみる」ハードルが大きく下がった。
一方Steam版はGame Passとは別に購入が必要で、定価は4,990円。カプコンの大作タイトル(8,000〜9,000円台)と比べると価格は抑えられており、ボリュームを考えると妥当な設定だという意見が多かった。セール時は25%オフ(約3,740円)になることがあり、このタイミングを狙う人も多かったようだ。
「Game Passで試したら思いのほか気に入って、Steamでも買い直した」という声がコミュニティで見られたのが印象的だった。Game Passでの配信がいわゆる「口コミの起点」になったケースで、クオリティが高いからこそ成立した動線だと思う。
「Game Passで試して2時間でハマった。これは買い切りでも出して欲しいクオリティ。Steamでも購入した」
Steamレビューより
発売後の反響——受け取られ方と評価の変遷

Kunitsu-Gamiは2024年7月の発売直後から、ゲームメディアとプレイヤーコミュニティの双方で高い評価を受けた。Metacriticのスコアは80点台中盤で、「完璧ではないが明確に優れている」という水準の評価が並んでいた。
発売直後のSteam同接ピークは数千人規模で、カプコンの大作タイトルと比べると控えめな数字だった。しかしレビューの質という観点では際立っており、「2024年のベストゲームのひとつ」と断言するレビューが日本語・英語ともに多く書かれた。「隠れた名作」という評価がじわじわと広がっていった印象だ。
特に和風・神楽・神道という文化的コンテキストを持つ日本人プレイヤーからの反響は大きく、「ここまで神楽を丁寧にゲームに落とし込んだ作品は初めて見た」という声が目立った。文化を生きている側からの評価として、これは単純な称賛以上の意味がある。
「神楽や神道をゲームにするとこうなるのか、という驚きがあった。外国向けに作った『和風』ではなく、日本人が作った本物の和を感じた」
Steamレビューより
欧米のプレイヤーからも「日本の文化を深く知る機会になった」という声が複数見られた。ゲームとしての楽しさに加えて「文化体験」としての価値を評価する声は、和風ゲームとして一段上の評価軸だ。Kunitsu-Gamiはその評価軸でも十分に応えていたと思う。
プレイ開始前に知っておきたいこと——事前準備と心構え
Kunitsu-Gamiをこれからプレイする予定の人に向けて、実際にプレイして「最初に知っておけばよかった」と感じた点をまとめておく。
まず「チュートリアルはしっかり読む」ことを勧める。このゲームはUIが独特で、昼フェーズのリソース管理の仕組みや村人への役割割り当ての操作感が、慣れるまでに少し時間がかかる。チュートリアルを飛ばすと序盤から詰まりやすいので、丁寧に読み進めることが最初の近道だ。
次に「バリケードを積極的に使う」こと。序盤は「戦士を多く置けばなんとかなる」という場面が多いが、中盤以降は敵の進入経路を絞り込まないと人数で押し切れなくなってくる。木こりによるバリケード設置と弓使いの組み合わせが攻略の基本パターンになることが多いので、早めに覚えておくと後半が楽になる。
そして「失敗してもやり直しのコストが低い」という点も覚えておいてほしい。夜のフェーズで全滅しても、昼の配置を変えてすぐに再挑戦できる。タワーディフェンス系ゲームに慣れていない人は「配置を変える→試す→また変える」という試行錯誤のサイクルを恐れずに繰り返すことが、上達への最短ルートだ。
「最初は難しく感じたが、失敗してもすぐやり直せるから諦めずに試行錯誤できた。気がついたら配置の理屈がわかってきて、詰まらなくなった」
Steamレビューより
難易度設定についても改めて触れておく。ゲーム開始時に「アクション難度」と「ストラテジー難度」を別々に選べる。アクションが苦手ならアクション難度を下げてストラテジーに集中するのが最もストレスなくゲームを楽しめる方法だ。逆にタワーディフェンスに自信があるならストラテジー難度を上げて、配置の精度を試すのも楽しみ方のひとつ。
Kunitsu-Gamiに似たゲームとの比較——ジャンルの中での立ち位置
タワーディフェンスとアクションを組み合わせたゲームは過去にもいくつか存在するが、Kunitsu-Gamiのポジションはその中でも独自だ。比較されやすいタイトルとの違いを整理しておく。
「Orcs Must Die!」シリーズはタワーディフェンス×アクションの代表格だが、罠設置とシューター操作が中心のゲームプレイはKunitsu-Gamiとは別物に近い。Kunitsu-Gamiは罠ではなく「人」を配置し、その人々と連携して戦う設計なので、より「仲間と一緒に守っている」感覚が強い。
「Hades」などのローグライク系アクションと比較されることもあるが、Kunitsu-Gamiにローグライク要素はない。ステージ単位でクリアしていく構成で、失敗しても前の状態に戻るのは該当ステージの昼フェーズのみだ。「同じダンジョンを何度も攻略する」タイプのゲームではなく、「一段ずつ山を登る」イメージに近い。
アクションRPGとして有名な「仁王」シリーズとも和風ゲームとして並べられることがあるが、Kunitsu-Gamiはソウルライク要素がなく、難しさのベクトルが違う。死んだらペナルティが重い仁王と、失敗してもすぐ試行錯誤できるKunitsu-Gamiでは、プレイ感覚が根本的に異なる。「和風ゲームが好き」という共通点はあるが、ゲーム体験としては別の方向を向いている。
この比較を踏まえると、Kunitsu-Gamiは「タワーディフェンスとアクションの中間」という独自ポジションにあることが改めてわかる。どちらかに割り切っていない分、純粋なタワーディフェンスファンにも純粋なアクションファンにも「帯に短し」と感じられる可能性はある。その代わり「両方のいいとこ取り」を求める人には刺さる——という狭い的の中で高精度を出しているゲームだ。
まとめ——「唯一無二」という言葉が似合うゲーム
Kunitsu-Gami: Path of the Goddessをひとことで表すなら「唯一無二」だと思う。タワーディフェンスとアクションを融合させたゲームは他にもあるが、日本の神楽・神道という文化的バックグラウンドを丸ごと使って、ここまで一貫したゲーム体験に仕上げた作品はない。
昼の静けさの中で配置を整える時間、夜の緊張感の中で剣を振るう手応え、朝が来たときの「また山を登れた」という達成感——この繰り返しが、気がつくと10時間以上続いていた。カプコンがREエンジンで作ったビジュアルの完成度と、日本語フルボイスの没入感が、その体験を支えていた。
万人向けではない。タワーディフェンスが苦手な人、変化の少ないループ構造が退屈に感じる人には合わないかもしれない。でも、刺さる人には「2024年のベスト作品のひとつ」と断言できる一本だ。和風ゲームが好きで、少し変わったゲームデザインを探しているなら、迷わず試してほしい。
こんな人に特におすすめ
・和風・神楽の世界観が好きな人
・タワーディフェンスとアクションの両方が楽しめる人
・「昼夜サイクル」という独自構造を試してみたい人
・カプコンの新規IPを応援したい人
