Pathfinder: Wrath of the Righteous|圧倒的な自由度と物語の密度を誇るCRPGの頂点
「また最初からやり直してしまった」——Pathfinder: Wrath of the Righteousをプレイした人間なら、この感覚を必ずどこかで経験するはずだ。
聖騎士として魔王軍に立ち向かった最初のプレイ。世界を救う使命感と、仲間たちとの絆。エンディングを見終わって満足感に浸りながらも、頭の中に「あのとき別の神話的力を選んでいたら?」「もっと悪辣なルートをたどったら物語はどう変わっていたのか?」という問いが残る。気づいたら2週目、3週目のセーブデータを作っている。
2021年にリリースされたこのゲームは、CRPGというジャンルの中でも「情報量と選択肢の密度が異常」として知られる作品だ。本編だけで100時間以上。DLC含みでの全要素を遊び尽くすには300時間でも足りないという声もある。Steamのレビュー件数は3万件を超え、評価は「非常に好評」。ゲームシステムの複雑さと物語の重厚さが、プレイヤーを選ぶ一方で、ハマった人間を長期間離さない。この記事では、何がそれほど特別なのかを正直に書いていく。
こんな人に読んでほしい
Pathfinder: Wrath of the Righteousは、万人に向けて作られたゲームではない。向いている人と向いていない人がはっきり分かれるタイトルなので、先に整理しておきたい。
こんな人には強くおすすめする:
- BaldurʼsGate 3やPillars of Eternity、Divinity: Original Sinなど重厚なCRPGが好きな人
- D&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)やTableTopRPGの経験があり、ルールベースの戦術が好きな人
- 「自分の選択が物語を変える」体験を何より重視している人
- キャラクタービルドを深く考えてゼロから作り上げるプロセスが楽しい人
- 複数周回で全く異なるプレイ体験を楽しむのが好きな人
- 100時間以上かけて密度の高い世界を掘り下げたい人
- 仲間キャラクターとの会話や人間関係の描写を楽しみたい人
- 王道ファンタジーでありながら倫理的に複雑な選択を味わいたい人
正直きつい場面があるかもしれない人:
- 複雑なルールやステータスを理解する前に戦闘を楽しみたい人(初期の難易度の壁は高い)
- リアルタイム戦闘のアクション性を重視している人(このゲームは戦術系RPGに近い)
- 日本語ローカライズを強く求める人(現時点では日本語対応なし)
- ストーリーより探索・収集・サンドボックスを優先する人
- チュートリアルが不親切なゲームにストレスを感じやすい人
「BaldurʼsGate 3が好きだった。同じ系統で次の一本を探している」という人に特に強くすすめたい。WotR(Wrath of the Righteous、以下WotR)はBG3より先に出たタイトルで、システムの複雑さはむしろ上だ。取っつきにくさはあるが、一度波に乗れると、その深みはBG3と比肩するどころか上回る部分もある。特に「キャラクターが文字通り神話的な力を得て世界を変える」という体験のスケール感は、WotRでしか味わえないものだ。
ゲーム概要
Pathfinder: Wrath of the Righteousは、Owlcat Gamesが開発・発売したコンピュータRPGだ。2021年9月2日にPC(Steam)でリリース。SteamのAppIDは1184370、WordPressの投稿IDは67755。その後2022年には家庭用ゲーム機版も展開されている。
ベースとなっているのは、Paizo社のテーブルトップRPG「Pathfinder」のルールセット——特に第1版の「Pathfinder RPG」だ。Pathfinderは元々D&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)3.5版のルールを引き継ぐ形で誕生したシステムで、膨大なクラスやスペル、フィートによる深いカスタマイズ性が特徴として知られる。WotRはそのルールをコンピューターゲームとして忠実に再現した作品だ。
同じONwlcat製品としては前作「Pathfinder: Kingmaker」(2018年)があり、WotRはその続編にあたる。Kingmakerでは「王国を建設・管理する」システムが中心だったが、WotRではそれが「十字軍の指揮」に変わり、より物語の軸に沿った形に進化している。前作を知らなくても問題なく楽しめるが、Kingmakerのエンディングに登場するキャラクターがWotRに関わるため、前作経験者は小さな喜びを感じられる場面がある。
舞台はGolarionという世界の「ケネブレス」地域。100年前に突如現れた亀裂「傷(the Wound)」から悪魔(デーモン)が溢れ出し、人間世界を侵食し続けてきた。世界各地の騎士団や冒険者が集まり「十字軍」を結成して悪魔に対抗しているが、戦況は長年に渡り膠着状態にある。プレイヤーは謎の力に目覚めた一人の冒険者として、この戦いの中心に立つことになる。
ジャンルはCRPG(コンピュータRPG)。見下ろし視点のパーティープレイで、最大6人のキャラクターを同時に操作する。戦闘はリアルタイムポーズという方式——デフォルトではリアルタイムで進むが、いつでも一時停止して各キャラクターに行動を指示できる。ターン制に切り替えるオプションもある。
Steamでの現在の評価は3万件以上のレビューで「非常に好評」。リリース直後はバグが多く評価が揺れたが、大型アップデートとDLCの追加を経て、CRPGファンのあいだで「ジャンル最高峰の一本」として確固たる地位を得ている。
開発元・Owlcat Gamesについて
Owlcat Gamesはロシア出身の開発スタジオで、前作Kingmakerを大ヒットさせたチームだ。Pathfinderの版元Paizoとのライセンス契約のもと、テーブルトップRPGのルールを高い精度でデジタル化することに力を注いでいる。
Kingmakerはリリース当初、バグと難易度の高さで批判を受けたが、長期にわたるサポートで評価を回復した。WotRはその経験を活かし、DLCや無料アップデートによる継続的な改善が行われてきた。スタジオの規模はAAA開発会社より小さいが、CRPGへの理解と情熱で補っている——そういう評判を持つスタジオだ。
2022年にはウクライナ侵攻の影響でロシアから拠点を移転するなど、政治的な混乱の中でも開発を継続してきた。その姿勢もファンから支持を受けている側面がある。
ゲームシステムの詳細
WotRのゲームシステムを理解することは、このゲームを楽しむうえで不可欠だ。表面的にはファンタジーRPGに見えるが、内側には複雑なルールシステムが動いている。最初はとっつきにくいが、仕組みを理解するほど選択肢が広がり、「自分のキャラクター」らしさが増す。
クラスシステム:圧倒的な選択肢の数
ゲームを始めるときに最初に直面する選択がクラス(職業)の選択だ。WotRで選べるクラスの数は39種類以上。さらにそれぞれのクラスに「アーキタイプ(サブクラス)」と呼ばれる変形バリエーションが多数ある。
主要なクラスをざっと見ても、戦士系だけで「Fighter」「Barbarian」「Paladin」「Cavalier」「Warpriest」「Bloodrager」と多様だ。魔法使い系は「Wizard」「Sorcerer」「Arcanist」「Witch」「Oracle」など、魔法を使えるクラスだけで10種類以上ある。盗賊系は「Rogue」「Investigator」「Slayer」など、器用さや隠密を活かすスタイルに細分化されている。
さらに面白いのが「マルチクラス」だ。WotRではキャラクターレベルが上がるごとに、別のクラスを取得していくことができる。「Paladin(聖騎士)」をベースに「Sorcerer(魔法使い)」を混ぜた聖魔法使い。「Rogue(盗賊)」と「Alchemist(錬金術師)」を組み合わせた毒殺と爆弾の専門家。組み合わせは理論上膨大で、「最適ビルドを考える」楽しさが別ゲームのように存在する。
ただし、この自由度には落とし穴もある。知識なしでランダムにマルチクラスすると、中途半端な能力値になって後半の難易度に対応できなくなることがある。初プレイでは1〜2クラスに絞って理解を深めるのが安全だ。
アビリティスコアと判定システム
キャラクターには6つの基本能力値がある。「Strength(筋力)」「Dexterity(敏捷)」「Constitution(耐久)」「Intelligence(知性)」「Wisdom(知恵)」「Charisma(魅力)」だ。これはD&D/Pathfinderの標準的なシステムをそのまま再現している。
この能力値が各スキルチェックに影響する。たとえば「Persuasion(説得)」スキルはCharismaを基本とし、「Arcana(魔法知識)」はIntelligenceを参照する。「Perception(知覚)」はWisdomに依存する。会話中に選択肢を選ぶとき、自分のステータスが高ければ特殊な選択肢が開くという構造だ。
戦闘においても、攻撃命中率「Attack Roll」は「d20(20面ダイス)の結果 + 各種ボーナス vs 敵のAC(防御値)」という計算式で決まる。WotRはコンピューターがサイコロを振り計算を自動処理するが、そのロジックはテーブルトップゲームと同じだ。命中率が低いキャラクターは当たらず、防御が高い敵には当たらない——運の要素が常に介在する。
フィートとスペル:成長の細かい積み上げ
レベルアップのたびに「フィート(特技)」を取得できる。フィートはキャラクターに特殊なボーナスや能力を付与するもので、「Power Attack(強打)」を取ると攻撃力が上がり命中率が下がるトレードオフが生まれる、「Combat Reflexes(戦闘反射)」を取ると敵の移動に対して機会攻撃できるようになる、「Weapon Focus(武器熟練)」を特定の武器に取ると命中率に恒久ボーナスが入るなど、効果は多岐にわたる。
魔法系クラスはスペルリストの成長がある。Wizardなら毎レベルごとに使えるスペルの種類が増え、強力な高レベルスペルに辿り着くまでの過程を育て上げる楽しさがある。「Magic Missile(マジックミサイル)」から始まり、「Disintegrate(分解)」「Summon Monster IX(最高位モンスター召喚)」へと進化するロードマップが見えているのは、テーブルトップRPG由来のシステムならではだ。
戦闘システム:リアルタイムポーズとターン制
デフォルトの戦闘はリアルタイムポーズ(RTWP)形式だ。全キャラクターと敵がリアルタイムで動き続けるが、Spaceキーを押すといつでも一時停止できる。停止中に各キャラクターの行動を指示し、再開すると全員が同時に動く。BaldurʼsGate 2と同じ方式で、CRPG好きには慣れ親しんだスタイルだ。
Ver2.0のアップデートからターン制モードが正式実装された。戦略的に各キャラクターの行動順を確認しながら進められるため、複雑な戦闘でも落ち着いて対応できる。筆者のおすすめはターン制モード——特に初プレイ時はリアルタイムの混乱に飲み込まれる前に、じっくりターン制で戦闘の仕組みを覚えたほうが後々楽になる。
パーティーは最大6人。プレイヤーキャラクター以外は仲間NPCを連れ歩く。仲間も独自のクラスと専門性を持っており、「前衛3人、後衛魔法使い2人、回復1人」といったパーティー構成を考えるのもゲームの楽しさのひとつだ。
神話の力:物語を超えたキャラクターの変容
WotRで最も独自性が高いシステムがこれだ。「神話パス(Mythic Path)」と呼ばれる選択で、プレイヤーキャラクターが「神話的存在」に変容するルートが分岐する。
選べる神話パスは以下の通りだ。
- Angel(天使):天の使いとして悪魔を浄化する力を得る。神聖な力に特化した正義のルート
- Demon(悪魔):悪魔の力を取り込み、悪魔を超える悪魔となる。「悪の力で悪に立ち向かう」逆説のルート
- Lich(リッチ):死の魔法使いとして不死の存在になる。強大な魔法力を得るが、生者としての自分を捨てる
- Azata(アザタ):自由と喜びの精霊として、遊び心と力を兼ね備えた存在になる
- Aeon(アイオン):宇宙の法と秩序を体現する超存在。時間と因果を操作できる
- Trickster(トリックスター):欺きと混沌の力を使う道化。メタ的なジョークも含む、コミカルなルート
- Legend(レジェンド):神話的力を拒否し、純粋に人間として限界を超える選択
- Swarm-That-Walks(群れ歩くもの):虫の群れと同化する、最も異質なルート(DLCで追加)
- Gold Dragon(金竜):竜として覚醒するルート(DLCで追加)
神話パスは単なるパワーアップではない。物語の分岐に直接影響する。Angelを選ぶと救済と浄化の物語が深まり、Demonを選ぶと周囲のNPCが恐れや疑念を示す。Lichを選ぶと仲間の一部が離れていく。Tricksterを選ぶと物語が変な方向に崩壊していく(意図的に)。
「100時間プレイして天使ルートを終えたあと、悪魔ルートで全然違う体験ができる」——この神話パスの差異こそが、WotRの複数周回率の高さを支えている最大の要因だ。
十字軍システム:戦略レイヤーの存在
WotRには通常のRPGにはない「十字軍管理」という戦略レイヤーが存在する。プレイヤーは悪魔との戦いを指揮する十字軍の指揮官として、軍隊を編成・育成し、マップ上の悪魔の拠点を攻略していく。
具体的には、軍隊に「将軍(General)」を任命し、部隊に経験値を与えて強化し、特定の地域を制圧して悪魔の侵攻を食い止めるという作業だ。「征服した地域が悪魔に奪い返される前に強化する」「補給線を確保する」「複数の前線を同時に管理する」という戦略的思考が必要になる。
ただし正直に言うと、この十字軍システムの評価はプレイヤーによってかなり分かれる。RPG部分のゲームプレイと分断されている感覚がある、育成が面倒なだけで難しくない、逆に詰まったとき何をすべきかわかりにくいといった批判がある。一方で「RPGに戦略ゲームのレイヤーが加わった」と歓迎するプレイヤーも多い。
初回プレイでは「自動管理」オプションを使って十字軍部分をある程度スキップし、RPGパートに集中するのも悪くない選択だ。
クラフト・探索・世界観の広さ
WotRの世界は広い。メインクエストだけでなく、無数のサブクエスト、隠しエリア、ランダムエンカウント、時間制限のあるイベントが世界各地に散らばっている。
クラフトシステムでは素材を集めて装備品を強化したり、スクロール(一回使い切りの魔法書)を作成したりできる。「Alchemist」クラスは爆弾や毒を自作する。こうした「装備を整える」楽しみもゲームの中に組み込まれている。
世界観(ロア)の量も尋常ではない。ゲーム内には膨大な量の本・日記・碑文・メモが置かれており、それを読み込んでいくとGolarion世界の歴史・神話・政治が立体的に見えてくる。テーブルトップRPGの世界観を引き継いでいるため、背景設定の量がコンピューターゲームの域を超えている。
人気の理由:なぜこのゲームがCRPGファンを引きつけるのか
物語の「重さ」と選択の実感
WotRで最もよく語られるのが「物語の重さ」だ。善悪が単純に分かれない世界で、プレイヤーは常に難しい選択を迫られる。
十字軍の指揮官として、あるクエストで「一人の仲間を見捨てれば多くの命を救える」という選択が生まれる。別のクエストでは、長年悪魔と戦い疲弊した兵士たちが略奪を始め、それを見て見ぬふりをするか正義を貫くか問われる。「正しい選択肢」が存在しない場面で、プレイヤーは自分の価値観で決断する。その決断がゲームの世界に具体的な影響を与え、何十時間か後に「あのとき選んだことがここに繋がった」と実感する瞬間が来る。
神話パスが物語に統合されている点も大きい。「Lichとして不死になったとき、生きている仲間との関係はどう変わるのか」「Angelとして神に近い力を得ることで、人間としての共感能力を失っていくのか」——神話パスはキャラクターの内面変化の物語でもある。
39クラス以上が生む「自分だけのキャラクター」
WotRのクラスシステムの幅は、現在のCRPGの中でもトップクラスだ。「魔法剣士(Magus)」「吟遊詩人(Bard)」「シャーマン」「モンクとパラディンのハイブリッド」など、作れるキャラクターの幅が広い。
テーブルトップRPGのPathfinderは「カスタマイズの自由度と深さ」で知られるシステムで、WotRはそれをほぼ完全にデジタル化している。コミュニティ内では「最適ビルド論」が活発に議論されており、「このクラス構成で難易度Unfairをクリアした」という報告スレッドが常時存在する。「ビルドを考えること自体が楽しい」と感じる人には、その情報量が宝の山になる。
圧倒的なボリューム:コンテンツが尽きない
本編だけでクリアまで80〜120時間(寄り道の量による)。さらにDLCが複数あり、中でも「The Last Sarkorians」「Through the Ashes」「Inevitable Excess」「A Dance of Masks」は物語に新たな視点を加える大型コンテンツだ。
神話パスが9種類(DLC込み)あり、それぞれで体験が異なるため「1回クリアしたからもういい」とならないのがWotRの特徴だ。「天使ルートと悪魔ルートは全く別のゲームとして楽しめた」というコメントがコミュニティで繰り返し見られる。
また仲間キャラクター(コンパニオン)の数も多く、それぞれに個別のクエストラインがある。初回プレイでは出会えない仲間、選んだ神話パスによっては仲間にできないキャラクター——こういった要素が「次はどう組み合わせようか」という動機を常に生み出している。
コンパニオンの質:単なる戦力以上の存在
WotRの仲間キャラクターは、個人の物語を持ちプレイヤーの選択に反応する。
たとえばSeelahというパラディンのキャラクターは、過去の失敗から立ち直れずにいる女性騎士で、プレイヤーの判断(正義を貫くか、妥協を選ぶか)を見て、彼女の心境が少しずつ変わる。Ember(エンバー)というオラクルの少女は、幼少期に魔女として迫害された経験を抱えており、そのトラウマと向き合うクエストは感情的な深みがある。
一部のコンパニオンはロマンス関係を発展させることもできる。ただし完全に自由なわけではなく、選んだ神話パスや会話の選択肢が特定のコンパニオンの好感度に影響するため、「このキャラクターと一緒にいたいなら、この選択肢を選び続ける必要がある」というゲームデザインになっている。
難易度の幅広さ:初心者から上級者まで
WotRの難易度設定はかなり細かい。「Story(ストーリー)」から「Swarm(難易度最高)」まで複数段階あり、戦闘の難しさだけでなく「体験モード」という戦闘を自動スキップするオプションも存在する。「物語を読みたいだけ」という人から「Pathfinderルールを完全理解した上でパズルを解くように戦いたい」という上級者まで、同じゲームで対応できるようになっている。
この幅広さがWotRを「複雑なシステムに怖気づかなくていい」タイトルにしている。最初はStoryモードで進めながらルールを理解し、2周目でNormalやハードに挑戦するという進め方が現実的だ。
注意点・気になるポイント
WotRを手放しで絶賛するだけでは不誠実なので、気になる点も正直に書いておく。
日本語対応なし(2024年時点)
WotRに日本語の公式ローカライズは存在しない。ゲーム内テキストは英語のみだ。物語の深みはテキスト量の多さから来ており、英語読解が苦手な場合にはゲームの本質的な魅力にアクセスしにくい。
有志による日本語化MODのプロジェクトが存在し、一定程度まで翻訳が進んでいるが、完全ではない。「英語が読める(ある程度)」か「翻訳MODで補完する」という準備が必要になる。
チュートリアルの不親切さ
WotRはPathfinderのルールを前提に作られており、初心者向けの丁寧なチュートリアルは少ない。「なぜ攻撃が全然当たらないのか」「なぜ特定の魔法が効かないのか」——こういった疑問に対して、ゲームが親切に答えてくれない場面がある。
コミュニティのWikiや解説動画を並行して参照することが事実上必須に近い。「ゲームを外部情報なしで攻略したい」というプレイヤーにはストレスになる可能性がある。一方で「調べながら理解を深める」過程が楽しいというプレイヤーには問題にならない。
十字軍システムの賛否
前述の通り、十字軍管理システムへの評価はプレイヤーによって大きく分かれる。「RPGの主軸にならない戦略要素が中途半端に存在する」という批判は多い。
ゲームオーバーにつながる場面があるため完全に無視もできないが、「自動管理オプションをONにすると快適になった」という意見は多い。どう付き合うかを先に知っておくと良い。
序盤の難易度の壁
WotRの序盤——特に最初の数時間——はゲームの中で最も難しい時間帯のひとつだ。キャラクターのレベルが低く、使えるスキルも少ないなかで、ゲームのルールも十分理解していない状態で敵と戦う。この段階で挫折するプレイヤーが相当数いる。
「序盤さえ超えれば良くなる」という評判は本物だが、その序盤の壁は無視できない。後述する初心者向けのアドバイスを参考に、難易度設定を気軽に変更しながら進めることをおすすめしたい。
バグとパフォーマンス
WotRはリリース当初かなりのバグがあり、パッチを重ねて安定してきた。現在(2024年)は多くの問題が解消されているが、長時間プレイすればバグに遭遇することはある。特定のクエストが進行不能になるバグの報告も散見される。
こまめなセーブが習慣になると安心だ。異なるスロットに複数セーブを残す「ローリングセーブ」が推奨されている。
初心者へのアドバイス
WotRに初めて触れる人が「壁にぶつかって諦める」よりも「深みを味わい始める」ための実践的なアドバイスをまとめる。
まず難易度設定を気にしない
WotRの最初の難関は「難易度へのプライド」だ。「ノーマルでプレイするべきだ」と思って序盤の理不尽な難しさに悩む必要はない。ゲームの途中でも難易度は自由に変更できる。
CRPGが初めてなら「Story」か「Easy」から始めることをためらわないでほしい。システムへの理解が深まったら、難易度を上げるのはいつでもできる。「難易度を下げることはゲームの楽しみを下げない」——WotRにはその考えが設計に組み込まれている。
最初のクラス選びは「単一クラス」がおすすめ
最初のキャラクターで複雑なマルチクラスビルドを目指すのは難易度が高い。おすすめは「Paladin(聖騎士)」または「Cleric(聖職者)」の単一クラス。どちらも序盤の生存力が高く、回復魔法があるため軌道修正がきく。物語の方向性とも合いやすい。
「Wizard(魔法使い)」は序盤は脆く難易度が高いが、中盤以降の化け方は圧巻なのでリスクを承知で選ぶのもあり。「Barbarian(バーバリアン)」は序盤から強く、シンプルに戦えるので戦闘の仕組みを学ぶのに向いている。
マルチクラスは2周目以降で試すのが現実的だ。
「Toybox」MODの活用を検討する
PCでプレイするなら「Toybox」というMODの導入を検討したい。Toyboxはゲームの数値を確認・調整できるツールで、「誤ったビルドで行き詰まったキャラクターの能力値を修正する」「特定のバグでフラグが壊れたクエストをリセットする」といった使い方ができる。
「Modを使うとゲームが壊れる」という懸念があるかもしれないが、Toyboxは主にデバッグ的な用途に使われており、ゲームの核心的な楽しみを損なわない使い方ができる。初プレイでビルドの誤りに気づいたとき、最初からやり直すかToyboxで修正するかは個人の判断だが、選択肢として知っておくと助かる場面がある。
ターン制モードで戦闘に慣れる
設定からターン制モードに変更することをおすすめする。デフォルトのリアルタイムポーズでは、慣れないうちに画面が混乱し「何が起きているかわからないまま全滅した」という体験になりがちだ。
ターン制にすると、各キャラクターが何をしているか、なぜ当たらないのか、どの魔法が有効かを落ち着いて考えられる。戦闘の仕組みを理解したあとでリアルタイムに戻すかどうかは好みで決めれば良い。
コンパニオンの装備と能力は定期的に確認する
パーティーメンバーの装備は自動では更新されない。新しい防具や武器を拾ったとき、主人公だけでなく仲間の装備も確認する習慣をつけたい。仲間が古い装備のまま進んでいると、気づかないうちにパーティー全体が弱体化している。
また仲間のレベルアップ処理も「ランクアップを保留」できる設定があるが、放置し続けると弱いまま進む。定期的にパーティー画面を確認しよう。
メインクエストの優先順位を意識する
WotRにはメインクエストに時間制限がある場面がある。「○○の前に△△を完了させろ」という制約が隠れていることがあり、気づかずに寄り道しすぎると特定のイベントが消滅することがある。
明示的な「このクエストは時間制限あり」という表示が常にあるわけではないため、初回プレイでは進めながら不安になったら攻略情報で確認するのが安全だ。「完璧にクリアしなければ」という強迫観念は持たず、「1周目は学習の旅」と割り切るのが精神的に楽だ。
神話パスはAngelかAzataから入るのが無難
初回プレイの神話パス選択に迷ったら、「Angel(天使)」か「Azata(アザタ)」がおすすめだ。物語的に見て主人公の行動規範として自然に受け入れやすく、仲間との関係も壊れにくい。LichやDemonは面白いが、物語の見え方を「CRPGに慣れた状態」で体験したほうが深みがある。
「Trickster(トリックスター)」は独特のユーモアセンスに満ちた体験ができるが、物語の真剣なトーンが崩れる場面も多い。「変化球を楽しみたい」2〜3周目以降向けだ。
まとめ:Pathfinder: Wrath of the Righteousはこんなゲームだ
Pathfinder: Wrath of the Righteousは、「重厚なCRPGを探している」「キャラクタービルドを深く考えたい」「物語の選択に実際の重みを感じたい」という人間が、最終的にたどり着く一本だ。
入口は確かに広くない。英語対応が必要で、序盤の難易度は高く、チュートリアルは不親切で、十字軍システムは賛否が分かれる。「すぐに楽しめる」ゲームではない。
しかし一度システムへの理解が追いついてくると、そのあとに広がる体験の密度はCRPGジャンルの中でもトップクラスだ。「天使として悪魔と戦う物語」と「悪魔の力を取り込んで同族を倒す物語」が、同じゲームの中に両方存在している。同じクエストを「説得」で解決するか「暴力」で解決するかで、NPCの反応も物語の流れも変わる。仲間キャラクターが自分の選択を見て、喜んだり、失望したり、信頼を深めたりする。
100時間かけた初プレイのエンディングを見終わったとき、「次は悪魔ルートを試してみよう」という気持ちが自然に生まれるならば——そのゲームを「傑作」と呼んで差し支えない。
WotRはそういう作品だ。
複数のセーブスロットを用意して、最初の難易度設定は気にせず、英語テキストをなるべく読みながら進んでほしい。20時間ほどで「このゲームの本質」が見えてくる。そこに辿り着いた人間は、長くこのゲームと付き合うことになるだろう。
Pathfinder: Wrath of the Righteous - Enhanced Edition
| 価格 | ¥2,599-70% ¥779 |
|---|---|
| 開発 | Owlcat Games |
| 販売 | META Publishing, Owlcat Games |
| 日本語 | 非対応 |
| 対応OS | Windows / Mac |
| プレイ形式 | シングル |

