「Path Out」シリアスな内容にコミカルな本人解説!?気軽に楽しめる無料PCゲーム!

シリア内戦を体験した作者の軌跡をまさかの本人解説で辿るドキュメンタリーADV『Path Out』。シリアスなはずが解説のおかげでかなりコミカルになっており、当時起こったことを気軽に体験できるようになっています。無料で楽しめるノンフィクションゲーム!

 

まずはこのおすすめアドベンチャーの公式動画をご覧ください

 

実在の人物の体験をゲーム化

 

『Path Out』は2014年に始まったシリア内戦に巻き込まれた少年

Abdullah Karam(アブドラ・カラム)氏の体験を描いた作品です。

同氏は実在の人物であり製作者でもあります。

 

画面構成はRPGのユーザーインターフェースとなっていますが

RPG要素は薄めで、どちらかというとゲームジャンルはアドベンチャーとなります。

またSteamにて無料で公開されているので誰でもすぐにプレイできます。

開発は「Causa Creations」

 

この無料PCゲームを手がけるのはドイツの南西、

バーデン=ヴュルテンベルク州の都市カールスルーエで

活動を続けている「Causa Creations」です。

 

小さなインディースタジオとして2014年に設立されてから

様々なゲームをリリースしてきました。

 

全体的にアート色の強いコンパクトな作品が多く、

リサイクル問題について提起するアプリやテキストノベルなどを発表しています。

 

ゲームらしいゲームを作るというよりは

何かしら社会的意義のある作品を制作することに挑んでいるスタジオのようです。

RPG Maker製の作品

 

この無料PCゲームは『RPG Maker』というゲーム制作ツールを用いた作品です。

特にオリジナルの要素を入れ込んだというわけではなく、

多くのツクール作品に共通したプレイ感覚となるでしょう。

 

また特にRPG的なゲームシステムではなく

あくまでアドベンチャー作品となっています。

そのため様々な人物と会話し、

目的地へ移動するということを繰り返すことになるでしょう。

 

ゲーム自体の難易度は低く、

簡単にプレイできるので誰でも楽しむことができるはずです。

 

こうした作りはゲーム性に乏しいと感じられるかもしれません。

ですがゲーム性ではなくストーリーを中心的な要素に据える場合、

このように簡素な作りを採用することは効果的といえるでしょう。

 

もしゲーム性を導入しようとしたならそのために調整が必要となり

伝えたいことにプレイヤーが集中しなくなる恐れも考えられます。

 

ゲーム性を乏しくすることで

逆に中心的な要素であるストーリーに注目が集まりやすくなる

という好例といえるかもしれません。

まさかの本人による解説

 

ゲームをプレイしていると左上に青年の映像が流れ何かを英語で語りかけてきます。

この人こそがアブドラ・カラム氏であり本作の主人公のモデルなのです。

 

がっつり顔を映してレコーディングに望んでいる彼の姿は

まるでオーディオコメンタリー付きの映像を見ているような気分になるわけですが、

斬新過ぎる作りといえます。

 

何せ自分の操っているプレイヤーも彼なら

解説をするのがそのモデルとなった彼であり、

このおすすめアドベンチャーはアブドラ・カラム氏が体験したことなので

不思議な感覚に陥るかもしれません。

 

しかもその語り口調がなかなか陽気で

「この黄色いシャツ来た男の子いるっしょ?それオレ」のような感じで喋るのです。

シリアスなテーマではあるのですが

全体的に軽妙な印象を受けるのは彼の映像が流れるからでしょう。

 

こうしたオーディオコメンタリー的な形、

いわゆる「ゲーム実況」のような形で

実写映像を導入しているゲーム作品は珍しいといえます。

 

少なくともゲーム作品に実写映像を使用するという時点でも珍しいのに

場面に合わせて主人公のモデルが語りかけてくるという体験は

なかなかできるものではありません。

ユニークな作品という意味でも本作をプレイする価値は十分にあります。

完全に史実というわけではない

 

このおすすめアドベンチャーはアブドラ・カラム氏も製作に参加しているのですが、

ちょくちょく「いや本当はちょっと違うんだけどね」ということを喋ってきます。

 

例えば自宅の庭が映る場面では

 

「おーいマジかよ。いかにもシリアっぽいダッセえ庭だな。

いや確かに古めの家はこんな感じだけどさぁ、

オレの家はもうちょいモダンだったぜ。

まあ…んなこたいいか、続き楽しんでよ!」

 

と言うのです。

「おめーが作ったんだろ!」というツッコミを入れたくなるかもしれません。

 

ともかくこのような感じで、

忠実にアブドラ・カラム氏の体験した内容に沿って物語が展開されるわけではなく、

あくまでも同氏の体験をモデルとしている形です。

 

そのため深くシリアスに受け止めるよりも

もっと軽い気持ちでプレイすると良いかもしれません。

 

というかアブドラ・カラム氏が登場するたびに緊張が緩和されるので

シリアスにはなりにくい作りとなっています。

リスニング力が試される

 

上記のようにこの人気PCゲームのユニークで面白い要素は

アブドラ・カラム氏の語りに他ならないのですが、

同氏はもちろん音声で語りかけてきます。

 

そのため英語のリスニング力がかなり試されるので、

英語の勉強代わりにプレイしてみるのも良いでしょう。

 

英語のゲームをプレイする方であっても大抵は字幕付きでプレイするのが普通なので

音声の聞き取りには慣れていないものです。

自分のリスニング力はどの程度なのか、

図らずもこのおすすめアドベンチャーで知らしめられることになるはずです。

 

彼の語る内容が分かればより本作を楽しむことができるので

頑張ってみる価値はあります。

ちなみにもちろん登場人物の会話はテキストで表示されるので

リスニングに自信がなくてもストーリーを進めることに問題はありません。

ゲーマーが作るユニークな戦争体験

 

戦争体験を伝えるメディアには様々なものがあります。

テレビ、映画、音楽、ルポ、各種記録文書などなど、

あらゆる媒体が存在しています。

 

またそれらの媒体にはフィクションもあればノンフィクションもあり、

ときには何が真実で何が虚構なのか判断のつかないものもあります。

 

ゲームはこれまで主にフィクションという形で戦争を取り扱ってきました。

 

シミュレーションゲームでは司令部を運営する立場となって

敵国の本拠地を攻撃したり、

FPSでは1人の兵士になったり敵対勢力となって相手を撃つものです。

またファンタジー世界での架空の戦争を舞台にしたRPGもたくさんあります。

 

ですがノンフィクションな戦争をテーマとしたゲーム作品は少ないといえるでしょう。

 

この人気PCゲームは正にノンフィクションな戦争を伝える作品です。

アブドラ・カラム氏は小さい頃からゲーマーで

日本の作品にも親しんでいたとのこと。

 

そんなゲーマーならではの生々しさもゲーム中に垣間見ることができるのです。

ゲーマーが語る戦争体験はゲーマーにとって相応しい表現手段といえるかもしれません。

ゲームの可能性を示唆する作品

 

ゲームはメディアの中でも希少な双方向メディアという性質を備えています。

テレビや映画はただ見るだけですが、

ゲームはプレイヤー自身が移動し、会話し、目的を達成することで

物語を進めていくということを必要とするのです。

 

プレイヤー側の入力とゲーム側の出力が交互に絡み合う特殊なメディアといえるでしょう。

 

そのためよりプレイヤーは物語の世界へと没入することになります。

自分が入力したとおりに主人公が動くわけですから、

いわばゲームの主人公はプレイヤーの分身ともいえるでしょう。

 

主人公に自分を投影できる場合、

彼が傷つけば嫌な気分になりますし、彼が喜べば嬉しくなるものです。

 

こうした双方向メディアならではの没入感というものは

ノンフィクションな作品にうってつけの性質といえるでしょう。

 

ただ没入感が高いということは

理想的なフィクションの世界にも入り込めるわけなので、

過酷なノンフィクションものの需要が少ないのは自然なことなのかもしれません。

 

またノンフィクションとなると政治的な配慮も必要となるため

大手の制作会社が手をつけることは難しいといえるでしょう。

 

このおすすめアドベンチャーはゲームの可能性を広げること作品となるかもしれません。

現代のしかもシリア内戦というセンシティブなテーマをゲーム化するということは

珍しい試みであり、これからの活動が楽しみなところです。

 

なお本作はチャプター1であり、続編も開発中とのこと。

気になる方はアブドラ・カラム氏及び「Causa Creations」の活動に注目してみましょう。

軽い気持ちでプレイできる作品

 

 

『Path Out』はRPG風のインターフェイスを備えたアドベンチャーゲームです。

全体的に簡単な作りとなっているため誰でもプレイすることができますが

日本語には対応していないので英語力が試されるでしょう。

 

また主人公のモデルとなったアブドラ・カラム氏の語りを聞くには

リスニング力が必要となります。

 

ゲームのテーマは「シリア内戦からの脱出を目指す少年」というなかなか重いものですが、

アブドラ・カラム氏の語りによって緊張は随時緩和されるようになっています。

そのため軽い気持ちでプレイするのが正しいのでしょう。

 

あるゲーマーが内戦に巻き込まれていくという

同氏でなければ描くことのできない物語がそこにはあります。

無料なので興味をもった方はプレイしてみて下さい。

このPCゲームの基本情報

タイトル Path Out
ジャンル 2Dアドベンチャーゲーム
開発元 Causa Creations
パブリッシャー Causa Creations
リリース日 2017年11月2日
料金 無料
日本語 非対応
オンライン 非対応
OS Windows/Mac OS X

スペック/動作環境

OS: Windows 10, 8.1, 7, Vista
プロセッサー: 2 GHZ
メモリー: 4 GB RAM
ストレージ: 845 MB 利用可能