エレクトロニック・アーツ(EA)が開発した『Apex Legends』(以下、APEX)は、2019年にリリースされ、瞬く間にバトルロイヤルゲームの人気タイトルの仲間入りを果たしました。リリースから1か月で5000万人ものユーザーを獲得してきた超人気作品。しかしその裏で、本作はサービスから5年間「APEXはもうオワコン」と言われ続けてきた歴史もあります。
それでも本当の意味でこれまで「オワコン化」してこなかったのは何故なのか。そして2024年下半期に入り、急激にユーザー数が減少してきているのはなぜなのか。考察していきます。
2024年10月以降にAPEXのアクティブユーザー数が大きく減少している。
Steamでアクティブユーザー数が確認できるためPCデバイスでAPEXをプレイしている人口推移は概ねこちらで把握できる。
参照元:Steam チャート https://steamcharts.com/app/1172470#All
厳密に言えばRiot GamesなどSteam以外を使用しているユーザーもいるし、PCユーザー以外の動向については把握できないが、Steam上でプレイしているPCユーザーのAPEX人口はこちらで把握でき、母数としては十分なデータではあります。
2024年10月のSteamでのAPEX月間ユーザー数は前年同月比と比較して-60%ほど減少しています。
43.5万人(2023/10) → 15.8万人(2024/10)
2023年上半期には月間60万人のアクティブユーザーがいたことからユーザーは大きくAPEX離れを起こしており、2024/8の夏休みシーズンでも数字は上がらず、2024/10以降は現象が顕著になっています。
以下、どうしてこうなってしまったのか。
逆に、どうしてこれまでオワコンと言われ続けても減少せず5年間やってこれたのか、ここを考察していきます。
なぜサービス開始から5年間「オワコン」にならなかったのか
【答え:有力な移行先がなかった】
APEXがリリースされて5年間、数々のFPSゲームがリリースされてきましたが、
結局のところAPEXキラーになるタイトルというのはなく、ユーザーがどんなにAPEXに不満を抱えていても結局APEXから離れられる有力な代替手段がなかったのが現状であったと思います。
『VALORANT』はPCユーザーのみの対象で、対してAPEXはマルチデバイスで遊べること。そして操作性やゲーム性もAPEXとは大きく異なります。
APEXのような派手なキャラコンはVALORANTにはなく、どちらかといえばVALORANTは2000年代に流行したFPSのような、カウンターストライクやサドンアタックのような操作性で楽しむゲームであったため、うまく棲み分けはできていてキャラコンを楽しみたいユーザー層とは被りづらかったことも大きいのでしょう。
『Overwatch 2』も有力タイトルでしたが、こちらもAPEXユーザーが移行したという話はあまり聞かなかったですね。(OW2がサービス開始された2023年8月以降にAPEXのアクティブユーザー数はSteamでは極端に減ってはいませんでした)
ということで、APEXと競合するタイトルがなかった。
という点がAPEXがこれまでオワコンだと言われ続け、ユーザーからも多くの不満が挙げられながらも本格的に衰退してこなかった理由であったように考えられます。
では、なぜ2024年下半期になって急激にユーザーが減っているのか。
理由をいくつか考察してみたいと思います。
理由その1 「チーター問題」
APEXの歴史はチーターとの戦いの歴史でもあったと言えます。
人気ゲームですからチーターは湧いてくるもので、これがユーザビリティを大きく損なってきました。
チーターが蔓延っていて、高ランク帯でもBANされずにチートが残っていたりすることから、
運営はチート対策をしっかりと行っていないというのがユーザーの一般的な見解で、
こちらは真偽はわかりませんが、いずれにしてもAPEXユーザーの不満があったことは間違いありません。
しかし、これは2024年下半期に始まった話でもないでしょう(サービス開始当初からチータはいましたから…)
実際、Steamのユーザー数を見ると2023年上半期が最高アクティブユーザー数であったことから、チーター対策を理由にするのは少し弱い根拠にも思います。
理由その2 「デュオ」がしばらくなかった
APEXといえばメインコンテンツはランクマッチですが、リア友と一緒にプレイする場合、カジュアルの「デュオ」で楽しむ方も多いのではないでしょうか。
しかし2024年下半期にはデュオが消えている時期がありました。 (2024/10アプデ後にはデュオは復活しています)
代わりにクワッドなど新モードが採用されたりはしていたのですが、2人で遊べないとリア友と一緒にプレイするのは難しく、フルパで楽しめないから離れてしまったユーザーはいたのかもしれません。(結果、デュオが復活してもユーザーは戻ってきてませんが…)
筆者はこれが有力候補の一つとして考えています。
理由その3 「飽きてしまった」
サービス開始から5年も経てば大抵のゲームは新規参入勢はほとんどおらず、既存の古参ユーザーだけでゲームを回していくというのはAPEXに限らず一般的です。
だから、「飽きてしまった」を言ってしまうと元も子もない理由ですが、APEXも例外ではないのかもしれません。
FPSの場合、RPGのようなレベリング要素があるわけではなく、達成欲を掻き立てられるものといえば、シーズンごとに「マスターランク」になること。
あとはAPEXでは、バッジを集めること(ハンマー、爪痕など)があるでしょうか。
しかし、5年間もサービスしてれば古参ユーザーは大抵の達成欲はある程度に満たされてしまい、新たな達成欲を掻き立てられるものは不足している、ゲームをプレイして達成したい目標のようなものが、もうAPEXにはないという現状があるかもしれません。
さらにAPEXはシーズンごとにランク達成の難易度が大きく異なり、過去には参加賞と言われるほどマスターランク到達が簡単であったシーズンもありました。(筆者もこのシーズンだけマスターを達成しています)
もちろん、多少なりともプレイ時間とランクマッチ回数を積み上げる必要はありますが、過去に一度マスターランクを取ってしまったユーザーは、次のシーズンでランク難易度が上がったとしても、わざわざマスターをもう一度取りに行くことを目指すでしょうか。
配信者の方の中には全シーズンでマスターを達成していく強者もいますが、大多数の一般ユーザーにとっては、そこまで前向きにはなれそうにありません。
プレイする目標欲がもうAPEXにはなく、自然と離れてしまったことは影響していそうです。
まだプレイ人口は減ったとは言え、十分に多いが….
APEXはSteamのアクティブユーザー数も2024/10ベースで依然として8位のタイトルではあります。
昨年は2~3位をうろうろしていましたが、それでも8位なら人気タイトルであることには変わりありません。
しかし、60人同時マッチングで行われる大規模な同時接続ゲームであることから、プレイ人口が減少してしまうとマッチング速度が低下したり、ユーザー減少そのものがユーザー満足度を落としてしまう危険性もはらんでいます。
筆者はAPEXはライトユーザーですが、配信者の方の中には最近のAPEXは体感ではマッチング速度が落ちてきている気がするといった声も聞きます。
今後はどうなってしまうのか、PUBGキラーだったAPEXは何に殺されてしまうのか、この辺も目が離せませんね。