なぜこの革新的サービスは失敗したのか。
Google Stadia が2023年1月にサービス終了することが発表される(日本には上陸すら出来ず…)
Googleは2019年のスタート以来、半年を過ぎた2020年7月時点で、2023年1月にGoogle Stadiaサービスを終了するということを発表しました。
ゲーム業界関係者の反応は「残念」だったものの、やっぱり近くなってきていたこともあり、しっかりと受け止められたようです。
そんな背景には致命的な戦略ミスが存在していたことが考えられます。Stadiaを利用したプレイヤーの皆さんには大変な状況だと思います。
そもそも「Stadia」とは?
Stadiaは、Googleが2019年にスタートしたクラウドゲーミングサービスです。ユーザーはコントローラーをPCに接続してプレイできるだけでなく、ゲームの実行処理自体はネットの向こう側(クラウド側)にある「ゲームサーバー」で行われる仕組みとなっています。
この状態であれば、手元の機器を高性能な物にする必要がなくなり、安定したネット回線さえ用意出来ればブラウザ上なんかからもプレイが可能になります。
当初Googleから本サービスが公開された際には、大きな反響を呼び、Sonyや任天堂の覇権を揺るがすのではないかと騒がれました。
またPCゲーム業界においても、SteamやEpicなどのプラットフォーマーにとって脅威の存在であったことは間違いありません。Googleが提供しているYoutube上で簡単にゲームを購入して(ダウンロードやインストール等はクラウドサーバー側に既にあるので勿論なしで)、即プレイ開始できてしまうという手軽さから、ゲームはYoutubeでやるものという当たり前を作ってしまうのではないかと騒がれました。
しかしそんなStadiaは正式終了。期待していたユーザーにとっては残念な気もしますが、Stadiaはゲームのゲームチェンジャーにはなれませんでした。
では、なぜこの革新的な技術を持ったサービスが失敗した?
理由1:そもそもクラウドゲーミングで「大成功」した前例はない。
クラウドゲーミングは古くから提唱されてきた概念であり、2000年代に入ると数多くの企業がサービスを開始してきました。
2013年にNVIDIAがGeForce Nowを、2014年にSIEがPlayStation Nowを、2018年にMicrosoftもXbox Cloud Gamingを開始してきました。
しかしそれら全てのサービスで「家庭用ゲーム機やゲーミングPCを不要にする」ことはできてきませんでした。
そもそも爆発的な人気で高収益が見込めるレベルであれば各プラットフォーマーの端くれのサブスクリプション・サービスの一部としてビジネス化することも自然の成り行きだろうが、実際の状況は違うようです。
Google Stadiaを例に出すなら、厳密に言うと彼もまた「成功」しなかったことになる。既存のクラウドゲーミングサービスの挑戦者たちと同様の結果になってしまっただけとも言えるかもしれない。
高く、誰も越えられなかった壁を超えるのはGoogleですら難しいようですね。
しかし、そうはいってもGoogleならそれを超えられるだけの技術と、力(プラットフォーム)はあったのではないかという気もしてきます。もう少し深堀してみましょう。
理由2:クラウドゲーミングはビジネスモデルとして収益化が難しい?
Googleがプロモーションを図るなか、世界中で注目されたStadiaでも、多額の投資をGoogleという巨大資本から受けたのにも関わらずうまくいかなかったということは、結局クラウドゲーミングがビジネスとして「収益化」が難しかったのではないかと仮説が経つのではないでしょうか。
最近のゲームはレベルが本当に高く、それにともないユーザーの”当たり前”の水準も滅茶苦茶に高いのが現状です。
だからクラウドゲーミングの特徴上にある「操作の遅延」や「接続の安定性」の問題がネックとなり、ある程度の技術的配慮をしていても快適なプレイ体験に至るのが難しく、技術的にもユーザーがクラウドゲーミングに課金を進んでしたいと思えるほどには至らなかった可能性は考えられます。
また、家庭用ゲーム機と比べても、Stadiaの環境では既存の画質・サウンドに劣るままのようで、Kotakuの記事にも「なんだったら家庭用機使った方がいい」との意見が紹介されています。
理由3:Googleのプラットフォーム(特にYoutube)の力を最大限使えてなかったのでは?
当初はGoogleがYoutubeのプラットフォームを活用して「実況プレイ動画」などを見たユーザーがその場でそのゲームをYoutube上で購入し即時にプレイする…といった流れでユーザーがYoutube上でクラウドゲームサービスを利用していくという想像を関係者の誰もが想像していました。
でも実際にはYoutubeでのプロモーション活動がそこまで熱心だったとは言い難く、日頃からYoutubeを利用している、もっと言えばゲーム好きのユーザーですらStadiaの存在も認知していなかったというケースは米国内でも多かったようです。
Googleが本気を出してYouTube上でのプロモーション活動を行えばもしかしたら結果は変わっていたのかもしれませんが、案外Youtubeのプラットフォームをうまく活かせていなかったという声が挙がっています。
これはGoogle社内でうまく連携を取れなかったからなのか、理由の実態は分かりませんが、結果的にはStadiaはYoutubeという巨大プラットフォームとのシナジーをうまく獲得するに至れなかったようです。
しかし、Stadiaが終了してもクラウドゲーミングサービスの戦争は終わらない
もしかしたら、Sonyや任天堂などの国内ゲームプラットフォーマー、もしくはテンセントなどの外資も含め、競合企業の関係者にとってStadiaのサービス終了はほっと胸を撫でおろすようなニュースだったかもしれません。
しかし、Stadiaが終了したからといって、クラウドゲーミングサービス自体がオワコン化したわけではないでしょうし、実際かなり高い水準を要求するコアゲーマーを除いて多くの方にとってクラウドで十分じゃないかというゲームをわざわざお手持ちのPC・スマホに毎度ダウンロードさせている現状は非効率ではあるわけで、そこに一石と投じるチャレンジャーは今後も増えてほしいと思っています。
Googleは今回Stadiaを見放しましたが、同じ分野でGeForceNOW ( GPU大手のNVIDIA開発)などは現行でサービスしていますし、テンセントやSONYなどもこの分野に投資を続けています。
”クラウド”という言葉をここ数年は現場で聞く機会が増えて、いまやエンジニアでなくとも認知されたキーワードになりましたが、今後もクラウドゲーム市場についても注目されるでしょうし、筆者も動向を追っていきたいと思います!
最終更新日:2023年1月28日 (運営者情報)